(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048675
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス用プロテクタ
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20161212BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
H02G3/04 018
H02G3/04 037
B60R16/02 623T
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-139949(P2013-139949)
(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公開番号】特開2015-15797(P2015-15797A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2015年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】長橋 直也
【審査官】
石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−065399(JP,A)
【文献】
特開2007−228776(JP,A)
【文献】
特開2003−134634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスが挿通されるプロテクタ本体に、該プロテクタ本体の開口部を覆蓋する蓋部がヒンジを介して開閉可能に連結されていると共に、該プロテクタ本体と該蓋部の一方に突設された係合片が、該プロテクタ本体と該蓋部の他方に設けられた被係合部と係合されることにより、該蓋部が閉状態に保持されるロック機構を備えたワイヤハーネス用プロテクタにおいて、
前記蓋部には、該蓋部に設けられた蓋部ヒンジを介して、前記ヒンジによる前記蓋部の前記プロテクタ本体に対する回動方向とは異なる方向に回動可能とされた付加回動部が設けられており、該付加回動部に前記係合片又は前記被係合部が設けられていると共に、
前記プロテクタ本体における長さ方向の端部を覆う位置に前記付加回動部が設けられていると共に、該プロテクタ本体の該端部および該付加回動部のそれぞれに、前記ワイヤハーネスに外挿されたコルゲートチューブの外周面の凹部に差し込まれて該コルゲートチューブを係止する離脱防止片が設けられている一方、該プロテクタ本体の該端部と該付加回動部のそれぞれにおける幅方向の両側に、前記ロック機構が設けられており、且つ、
前記プロテクタ本体の長さ方向の端部又は前記付加回動部に設けられた前記係合片が、他の部位に設けられた前記係合片よりも大きくされている
ことを特徴とするワイヤハーネス用プロテクタ。
【請求項2】
前記係合片および前記被係合部が、前記プロテクタ本体および前記蓋部において前記ヒンジと連結された端縁部に形成されている
請求項1に記載のワイヤハーネス用プロテクタ。
【請求項3】
前記ヒンジ部と連結されて、前記蓋部の開状態で互いに平行に延びる前記プロテクタ本体の前記端縁部と前記蓋部の前記端縁部とに前記係合片および前記被係合部がそれぞれ形成されている
請求項2に記載のワイヤハーネス用プロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスを保護するワイヤハーネス用プロテクタに関し、特に、プロテクタ本体に対して蓋部がヒンジで開閉可能とされてロック機構でロックされるワイヤハーネス用プロテクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等において、ワイヤハーネスを他部材との干渉から保護したり、車内の所定の箇所で保持するために、ワイヤハーネス用プロテクタ(以下、適宜プロテクタと称する)が用いられている。ワイヤハーネス用プロテクタは、例えば実開昭63−153713号公報(特許文献1)に記載のように、ワイヤハーネスを挿通するプロテクタ本体と、プロテクタ本体の開口部を覆蓋する蓋部とを備えている。蓋部は、部品点数の削減や、取り扱い性を向上するために、プロテクタ本体にヒンジで連結されたものが多く用いられている。
【0003】
ところで、蓋部は、ワイヤハーネスがプロテクタから飛び出すことのないように、プロテクタ本体に対して閉状態に保持される必要がある。そこで、特許文献1にも記載されているように、突片状の係合片と、係合片が係合される被係合部とによるロック機構を設けて、蓋部をプロテクタ本体にロックすることが行われている。特に、特開2007−228776号公報(特許文献2)に記載のように、コルゲートチューブと係合する離脱防止片を設けて、コルゲートチューブをプロテクタ本体と蓋部で挟むような場合には、蓋部をより強固に固定するために、コルゲートチューブを挟持する部分において蓋部の幅方向の両側をロック機構で固定することも行われている。
【0004】
ところが、特許文献1に記載のように、蓋部がヒンジでプロテクタ本体に対して回動される構造においては、ロック機構を構成する係合片と被係合部が、ヒンジの回動中心軸を挟んで互いに接近していると、突片形状とされた係合片の回動軌跡が被係合部から外れてしまい、相互に係合することが不可能となる。そこで、従来では、特許文献1に記載のように、蓋部の展開状態で係合片と被係合部とを相互に離隔して、即ち、係合片の回動半径を大きく確保することで、係合片と被係合部を係合可能にせざるを得なかった。しかし、このような方策では、蓋部の展開状態でプロテクタが大型化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−153713号公報
【特許文献2】特開2007−228776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、ヒンジによる回動では相互にロック不可能な位置でも、ロック機構を設けることのできる、新規な構造のワイヤハーネス用プロテクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、ワイヤハーネスが挿通されるプロテクタ本体に、該プロテクタ本体の開口部を覆蓋する蓋部がヒンジを介して開閉可能に連結されていると共に、該プロテクタ本体と該蓋部の一方に突設された係合片が、該プロテクタ本体と該蓋部の他方に設けられた被係合部と係合されることにより、該蓋部が閉状態に保持されるロック機構を備えたワイヤハーネス用プロテクタにおいて、前記蓋部には、該蓋部に設けられた蓋部ヒンジを介して、前記ヒンジによる前記蓋部の前記プロテクタ本体に対する回動方向とは異なる方向に回動可能とされた付加回動部が設けられており、該付加回動部に前記係合片又は前記被係合部が設けられている
と共に、前記プロテクタ本体における長さ方向の端部を覆う位置に前記付加回動部が設けられていると共に、該プロテクタ本体の該端部および該付加回動部のそれぞれに、前記ワイヤハーネスに外挿されたコルゲートチューブの外周面の凹部に差し込まれて該コルゲートチューブを係止する離脱防止片が設けられている一方、該プロテクタ本体の該端部と該付加回動部のそれぞれにおける幅方向の両側に、前記ロック機構が設けられており、且つ、前記プロテクタ本体の長さ方向の端部又は前記付加回動部に設けられた前記係合片が、他の部位に設けられた前記係合片よりも大きくされていることを、特徴とする。
【0008】
本発明に従う構造とされたワイヤハーネス用プロテクタにおいては、ヒンジでプロテクタ本体に対して回動可能とされた蓋部に対して、更に蓋部ヒンジが設けられており、該蓋部ヒンジを介して、係合片又は被係合部が設けられた付加回動部が回動可能とされている。これにより、付加回動部の回動方向を、蓋部のプロテクタ本体に対する回動方向と異なる方向に設定することができ、プロテクタ本体と蓋部を連結するヒンジのみでは相互に係合できない位置でも、付加回動部とプロテクタ本体に設けられた係合片と被係合部を、相互に係合させることができる。その結果、ロック機構の配設自由度を向上して、所望の位置で蓋部のプロテクタ本体に対する固定力を強固に得ることができる。
【0009】
そして、係合片の回動軌跡を被係合部と合わせるために、係合片と被係合部を、プロテクタ本体と蓋部を連結するヒンジを挟んで相互に大きく離隔させることが不要となることから、係合片と被係合部を相互に接近して設けることも可能となり、蓋部の展開状態におけるプロテクタの小型化を図ることができる。更に、従来構造のように、係合片と被係合部を係合可能とするために、蓋部を複数に分割して構成する必要を低減することができて、蓋部形状を簡素化して製造コストの低減を図ることもできる。
【0010】
なお、蓋部ヒンジおよび付加回動部の数は限定されない。例えば、蓋部に複数の付加回動部を設けても良いし、1つの付加回動部が、複数の蓋部ヒンジを介して回動可能とされていても良い。
【0011】
上記本発明の第
一の態様
に係るワイヤハーネス用プロテクタにおいて
は、前記プロテクタ本体における長さ方向の端部を覆う位置に前記付加回動部が設けられていると共に、該プロテクタ本体の該端部および該付加回動部のそれぞれに、前記ワイヤハーネスに外挿されたコルゲートチューブの外周面の凹部に差し込まれて該コルゲートチューブを係止する離脱防止片が設けられている一方、該プロテクタ本体の該端部と該付加回動部のそれぞれにおける幅方向の両側に、前記ロック機構が設けられている
態様が、採用されている。
【0012】
本態様においては、プロテクタ本体の端部において、プロテクタ本体と付加回動部に設けられた離脱防止片がコルゲートチューブと係合することにより、コルゲートチューブのプロテクタからの抜け出しが阻止される。そして、付加回動部の両側にロック機構が設けられていることから、付加回動部をプロテクタ本体に強固に固定することができる。その結果、付加回動部の開きを抑えて、コルゲートチューブをより強固に保持することができる。
【0013】
上記本発明の第
一の態様
に係るワイヤハーネス用プロテクタにおいて
は、前記プロテクタ本体の長さ方向の端部又は前記付加回動部に設けられた前記係合片が、他の部位に設けられた前記係合片よりも大きくされている
態様が、採用されている。
【0014】
本態様において、係合片が大きいとは、被係合部に対する接触面積が大きいことをいう。本態様によれば、付加回動部の係合片を大きく形成することによって、コルゲートチューブを保持する付加回動部のプロテクタ本体に対する固定強度をより大きく確保することができる。そして、本発明によれば、係合片の配設自由度が向上されることから、大型の係合片でも、回動軌跡を被係合部に容易に合わせて、係合可能とすることができる。
【0015】
本発明の第
二の態様は、前記第一
の態様に記載のものにおいて、前記係合片および前記被係合部が、前記プロテクタ本体および前記蓋部において前記ヒンジと連結された端縁部に形成されているものである。
【0016】
プロテクタ本体と蓋部のそれぞれにおいて、ヒンジに連結された端縁部は、ヒンジを挟んで互いに隣接することから、相互に接近し易い。それ故、従来構造において、ヒンジを挟んで隣接する端縁部に係合片と被係合部を設ける場合には、係合片の回動軌跡を被係合部と合わせるために、係合片と被係合部をヒンジから大きく離隔して位置させる必要があり、蓋部の展開状態でプロテクタが大型化する原因となっていた。しかし、本発明によれば、付加回動部の回動方向を、プロテクタ本体と蓋部を連結するヒンジの回動方向と異ならせて、係合片の回動軌跡をより柔軟に設定可能としたことによって、係合片と被係合部がヒンジを挟んで相互に接近して配設されていても、ロックを可能とすることができる。その結果、プロテクタの小型化を図ることができる。
【0017】
本発明の第
三の態様は、前記第
二の態様に記載のものにおいて、前記ヒンジ部と連結されて、前記蓋部の開状態で互いに平行に延びる前記プロテクタ本体の前記端縁部と前記蓋部の前記端縁部とに前記係合片および前記被係合部がそれぞれ形成されているものである。
【0018】
上述のように、本発明によれば、プロテクタ本体と蓋部においてヒンジと連結された端縁部に係合片と被係合部を設けて、係合片と被係合部がヒンジを挟んで相互に近接配置されていても、相互にロックすることが可能とされる。そこで、プロテクタ本体と蓋部において、ヒンジに連結されて蓋部の開状態で互いに平行に近接して延びる端縁部にも、係合片と被係合部を形成することができる。その結果、プロテクタを略ストレート形状にコンパクトに形成しつつ、ヒンジに連結された端縁部にもロック機構を設けることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、プロテクタ本体にヒンジを介して連結された蓋部に対して、蓋部ヒンジを介して前記ヒンジとは異なる方向に回動可能とされた付加回動部を設け、蓋部をプロテクタ本体に固定するロック機構を付加回動部に設けた。これにより、ヒンジによる回動軌跡では相互にロックすることができない位置にもロック機構を設けることが可能となる。その結果、ロック機構の配設自由度を向上して、所望の位置で強固な固定力を得ることができると共に、ワイヤハーネス用プロテクタのコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態としてのワイヤハーネス用プロテクタの、蓋部の展開状態の斜視図。
【
図2】
図1に示したワイヤハーネス用プロテクタの上面図。
【
図3】
図1に示したワイヤハーネス用プロテクタの正面図。
【
図4】
図1に示したワイヤハーネス用プロテクタの、蓋部を閉じる途中状態の斜視図。
【
図5】
図1に示したワイヤハーネス用プロテクタの、蓋部の閉状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
先ず、
図1〜
図3に、本発明の一実施形態としてのワイヤハーネス用プロテクタ(以下、適宜にプロテクタと称する)10を示す。プロテクタ10は、合成樹脂から形成された一体成形品とされており、プロテクタ本体12に、蓋部14がヒンジ16を介して連結された構造とされている。なお、以下の説明において、プロテクタ10の幅方向とは、
図2中の上下方向を言い、長さ方向とは、
図2中の左右方向を言うものとする。
【0023】
プロテクタ本体12は、底壁18の両端縁部から一対の側壁20a,20bが突出された、略コの字の断面をもって延びる形状とされている。プロテクタ本体12には、側壁20a,20bの対向面間において、開口部22がプロテクタ本体12の全長に亘って形成されている。更に、プロテクタ本体12の長さ方向の両端部には、プロテクタ本体12の長さ方向に開口するハーネス取出口24a,24bが形成されている。
【0024】
プロテクタ本体12には、必要に応じて、他部材への固定部が設けられる。本実施形態においては、固定部として、プロテクタ本体12の長さ方向の一方の端部にクリップ26が形成されていると共に、他方の端部に、取付板部28が形成されている。クリップ26は、底壁18から垂直に突出する突起形状とされている。一方、取付板部28は、側壁20bから垂直に突出する板形状とされており、ボルト挿通孔30が貫設されている。そして、例えば車両内に設けられた他部材としてのブラケットの貫通孔にクリップ26が挿通されて係止されると共に、取付板部28がブラケットに重ね合わされて、ボルト挿通孔30に挿通されたボルトでブラケットに固定されることにより、プロテクタ10がブラケットに固定されるようになっている。
【0025】
さらに、プロテクタ本体12における一方のハーネス取出口24bには、テープ巻突片32が形成されている。テープ巻突片32は、側壁20aと底壁18とから連続して延びる略L字の断面形状をもって、ハーネス取出口24bからプロテクタ本体12の長さ方向の外側に突出されている。なお、テープ巻突片32において、底壁18からの延出部分は、底壁18からプロテクタ本体12の内側に僅かに突出位置されている。
【0026】
一方、蓋部14は、プロテクタ本体12の開口部22の形状と対応する板形状とされている。そして、蓋部14における幅方向一方の端縁部34aと、プロテクタ本体12の側壁20aにおける開口部22側の端縁部36aが、薄肉で屈曲可能に形成されたヒンジ16で相互に連結されている。これにより、蓋部14は、ヒンジ16を介してプロテクタ本体12に対して開閉可能に連結されて、ヒンジ16の中心軸:O
1 回りでプロテクタ本体12に対して回動可能とされている。なお、ヒンジ16は、プロテクタ本体12の長さ方向で、ハーネス取出口24b側に形成されており、プロテクタ本体12の端縁部36aと蓋部14の端縁部34aは、ハーネス取出口24a側においてヒンジ16が形成されておらず相互に非連結とされている。
【0027】
さらに、蓋部14の長さ方向で、ハーネス取出口24a側には、薄肉で屈曲可能とされた蓋部ヒンジ40が形成されている。蓋部ヒンジ40は、蓋部14の幅方向の全長に亘って形成されている。これにより、蓋部14には、蓋部ヒンジ40からハーネス取出口24a側の端部において、蓋部ヒンジ40を介して回動可能とされた付加回動部42が一体形成されている。なお、蓋部ヒンジ40の中心軸:O
2 は、ヒンジ16の中心軸:O
1 に対して直交して形成されており、付加回動部42は、蓋部14においてヒンジ16が連結された基部44のプロテクタ本体12に対する回動方向と直交する方向で、基部44に対して回動可能とされている。
【0028】
また、プロテクタ本体12の両側の端縁部36a,36bと、蓋部14の両側の端縁部34a,34bには、それぞれ、ロック機構を構成する被係合部46a〜46dと係合片48a〜48dが形成されている。以下、被係合部46a〜46dおよび係合片48a〜48dのそれぞれについて、特に区別する必要の無い場合には、被係合部46および係合片48として説明する。被係合部46は、側壁20a又は側壁20bから外側に突出する枠形状とされている。被係合部46における側壁20a又は側壁20bとの対向部分には、側壁20a又は側壁20bに向けて突出する係止突部50が形成されている。これら被係合部46a〜46dは、被係合部46aと被係合部46bが、それぞれ、端縁部36aと端縁部36bの長さ方向におけるハーネス取出口24a側の端縁部に形成されて、ハーネス取出口24aの幅方向の両側に形成されている。また、被係合部46cが、端縁部36bにおける長さ方向の中間部分に形成されていると共に、被係合部46dが、端縁部36bの長さ方向でハーネス取出口24b側の端縁部に形成されている。
【0029】
一方、蓋部14に形成された係合片48a〜48dは、端縁部34a又は端縁部34bから突出する突片形状とされており、その突出先端縁部には、係止爪52が形成されている。係合片48a〜48dは、蓋部14の両側の端縁部34a,34bにおいて、被係合部46a〜46dとそれぞれ対応する位置に形成されている。本実施形態においては、係合片48aが、端縁部34aの長さ方向におけるハーネス取出口24a側の端縁部に形成されている一方、係合片48bが、端縁部34bの長さ方向におけるハーネス取出口24a側の端縁部に形成されており、これら係合片48aと係合片48bが、付加回動部42の幅方向の両側に形成されている。また、係合片48cが、端縁部34bにおける長さ方向の中間部分に形成されていると共に、係合片48dが、端縁部34bの長さ方向におけるハーネス取出口24b側の端縁部に形成されている。
【0030】
これにより、プロテクタ10の長さ方向でハーネス取出口24a側の端部には、プロテクタ本体12の幅方向の両側に被係合部46aと被係合部46bが形成されていると共に、蓋部14の付加回動部42の幅方向の両側に、係合片48aと係合片48bとが形成されている。特に、係合片48aが形成された蓋部14の端縁部34aと、被係合部46aが形成されたプロテクタ本体12の端縁部36aは、蓋部14を閉状態から180°回動した、
図2に示す展開状態において、ヒンジ16の中心軸:O
1 を挟んで、互いに略平行に接近して延伸されている。それ故、
図3に示すように、蓋部14において、ヒンジ16に連結されていない端縁部34bに形成された係合片48bは、ヒンジ16の中心軸:O
1 回りの回動軌跡:r
1 が、プロテクタ本体12においてヒンジ16に連結されていない端縁部36bに形成された被係合部46bに合わせられる一方、蓋部14において、ヒンジ16に連結された端縁部34aに形成された係合片48aは、ヒンジ16の中心軸:O
1 回りの回動軌跡:r
2 が、プロテクタ本体12においてヒンジ16と連結された端縁部36aに形成された被係合部46aから外れており、ヒンジ16による回動のみでは被係合部46aと係合できない位置に形成されている。なお、被係合部46c,46dと係合片48c,48dは、ヒンジ16による回動のみで相互に係合可能な位置に形成されている。
【0031】
また、
図2に示すように、ハーネス取出口24aの幅方向両側に設けられた係合片48a,48bの係止爪52の長さ寸法:L
1 は、その他の係合片48c,48dの係止爪52の長さ寸法:L
2 に比して大きくされていると共に、これに対応して、係合片48a,48bと係合する被係合部46a,46bは、係合片48c,48dと係合する被係合部46c,46dに比して大きく形成されている。これにより、被係合部46a,46bと、係合片48a,48bとの係合状態における相互の接触面積(係止突部50と係止爪52との接触面積)は、被係合部46c,46dと係合片48c,48dとの係合状態における相互の接触面積よりも大きくされており、より大きな係合力が発揮されるようになっている。
【0032】
また、プロテクタ本体12におけるハーネス取出口24a側の端部と、これに対応する蓋部14におけるハーネス取出口24a側の端部には、複数の離脱防止片54a,54bがそれぞれ形成されている。離脱防止片54a,54bは、プロテクタ10の長さ方向に直交して広がる板形状とされており、プロテクタ10の長さ方向で所定間隔を隔てて形成されている。離脱防止片54aは、プロテクタ本体12において、底壁18および両側の側壁20a,20bから、プロテクタ本体12の内側に突出して形成されている。一方、離脱防止片54bは、蓋部14において、閉状態でプロテクタ本体12の内側に向けて突出するように形成されている。離脱防止片54aにおける底壁18からの突出先端縁部と、離脱防止片54bにおける蓋部14からの突出先端縁部は、後述するコルゲートチューブ60の外周面に対応する凹状の円弧形状とされている。なお、プロテクタ本体12の離脱防止片54aと、蓋部14の離脱防止片54bは、プロテクタ10の長さ方向で互いに同位置に形成されており、蓋部14の閉状態で、相互に対向位置されるようになっている。
【0033】
このような構造とされたプロテクタ10は、
図1に示したように、蓋部14の開状態で、複数の電線56を図示しないビニールテープ等で巻き付けて束ねられたワイヤハーネス58が、プロテクタ本体12の開口部22から挿入されて、プロテクタ本体12内に挿通される。なお、ワイヤハーネス58には、コルゲートチューブ60が外挿されて、図示しないビニールテープ等でワイヤハーネス58に固定されている。コルゲートチューブ60は、外周面が凹凸形状とされた蛇腹形状とされており、外周面の凹部62に、プロテクタ本体12の離脱防止片54aが差し込まれるようになっている。
【0034】
そして、蓋部14がヒンジ16を介してプロテクタ本体12に向けて回動される。これにより、
図4に示すように、蓋部14の基部44に形成された係合片48c,48dが、プロテクタ本体12の被係合部46c,46dにそれぞれ挿通されて、係合片48c,48dの係止爪52が、被係合部46c,46dの係止突部50と係合される。その結果、蓋部14の基部44が、プロテクタ本体12の開口部22の一部を覆蓋した状態でプロテクタ本体12に対して固定される。
【0035】
次に、
図5に示すように、蓋部14の付加回動部42が、蓋部ヒンジ40を介してプロテクタ本体12に向けて回動される。これにより、付加回動部42に形成された係合片48a,48bが、プロテクタ本体12の被係合部46a,46bにそれぞれ挿通されて、相互に係合される。その結果、付加回動部42が、プロテクタ本体12の開口部22のハーネス取出口24a側の端部を覆蓋した状態で、プロテクタ本体12に固定される。このようにして、蓋部14でプロテクタ本体12の開口部22が塞がれる。また、付加回動部42をプロテクタ本体12側に回動することにより、付加回動部42の離脱防止片54bが、コルゲートチューブ60の外周面の凹部62に差し込まれる。そして、付加回動部42が係合片48a,48bと被係合部46a,46bでプロテクタ本体12に固定されることにより、コルゲートチューブ60、延いてはコルゲートチューブ60に固定されたワイヤハーネス58が、プロテクタ本体12の離脱防止片54aと蓋部14の離脱防止片54bで係止されて、プロテクタ10からの抜け出しが阻止されるようになっている。このようにして、ワイヤハーネス58がプロテクタ10に挿通されて、プロテクタ10のハーネス取出口24a,24bから外部に延び出されている。なお、ハーネス取出口24bから取り出されたワイヤハーネス58は、必要に応じて、テープ巻突片32に重ね合わされてテープ巻きで固定される。
【0036】
本実施形態に従う構造とされたワイヤハーネス用プロテクタ10においては、蓋部14に、蓋部ヒンジ40を介して回動可能とされた付加回動部42を設け、付加回動部42にロック機構を構成する係合片48a,48bを設けた。これにより、蓋部14を閉じる際の係合片48a,48bの回動軌跡を、ヒンジ16のみによる回動軌跡と異ならせて、ヒンジ16のみでは相互に係合不可能な位置でも、係合片48aと被係合部48aを相互に係合することができる。その結果、係合片48と被係合部48の配設自由度を向上することができて、例えば本実施形態のように、プロテクタ本体12と蓋部14において、ヒンジ16に連結されて相互に接近された端縁部36aと端縁部34aでも、従来構造のように蓋部14の展開状態でY字形状に形成して、相互の離隔距離を大きく確保せずとも、係合片48aと被係合部48aを形成して相互に係合させることが可能となり、プロテクタ10を略ストレート形状にコンパクトに形成することができる。
【0037】
そして、所望の位置に係合片48と被係合部46を形成できることから、蓋部14をプロテクタ本体12に強固に固定したい位置に、係合片48と被係合部46を形成することができる。したがって、本実施形態のように、コルゲートチューブ60を係止して抜けを防止する離脱防止片54a,54bが形成されたハーネス取出口24aの幅方向の両側に係合片48a,48bと被係合部46a,46bを形成して、ハーネス取出口24aにおいて蓋部14の閉状態を強固に保持することにより、離脱防止片54a,54bでコルゲートチューブ60を強固に保持することができる。更に、係合片48と被係合部46の配設自由度が向上される結果、必要とされる固定力に応じて、係合片48と被係合部46を大型に形成することも可能であり、本実施形態においては、ハーネス取出口24aに形成された係合片48a,48bと被係合部46a,46bを、他の係合片48c,48dと被係合部46c,46dよりも大きく形成して、より大きな固定力を得ることが可能とされている。
【0038】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、プロテクタ本体および蓋部の具体的形状は、ワイヤハーネス用プロテクタの配設箇所等に応じて各種の形状が採用され得ることは勿論である。また、ロック機構を構成する係合片と被係合部の具体的形状についても、前記実施形態の如き形状に限定されるものではなく、例えば被係合部として、前記実施形態の如き枠形状を有することなく、係合片と係合する突起形状を採用する等しても良い。更に、プロテクタ本体側に係合片を設けて、蓋部側に被係合部を設けても良い。
【0039】
また、蓋部に設けられる蓋部ヒンジおよび付加回動部の数は限定されない。例えば、蓋部に複数の蓋部ヒンジと付加回動部を設けても良いし、1つの付加回動部が、複数の蓋部ヒンジを介して回動可能とされていても良い。更に、蓋部ヒンジおよび付加回動部は、蓋部においてプロテクタ本体とヒンジで連結された基部に対して、別体として形成されて、基部に組み付けられたものでも良い。
【0040】
更にまた、本発明のワイヤハーネス用プロテクタは、コルゲートチューブが外挿されたワイヤハーネスに限定して用いられるものではなく、コルゲートチューブを有さないワイヤハーネスにも勿論適用可能である。したがって、前記実施形態においてコルゲートチューブ60を係止する離脱防止片54a,54bは必ずしも必要ではない。
【符号の説明】
【0041】
10:ワイヤハーネス用プロテクタ、12:プロテクタ本体、14:蓋部、16:ヒンジ、22:開口部、24a:ハーネス取出口(長さ方向の端部)、24b:ハーネス取出口、34a,b:端縁部(蓋部)、36a,b:端縁部(プロテクタ本体)、40:蓋部ヒンジ、42:付加回動部、46a〜d:被係合部(ロック機構)、48a〜d:係合片(ロック機構)、54a,b:離脱防止片、56:電線、58:ワイヤハーネス、60:コルゲートチューブ、62:凹部