(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048687
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】フィールド機器
(51)【国際特許分類】
G08C 19/00 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
G08C19/00 G
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-210652(P2014-210652)
(22)【出願日】2014年10月15日
(65)【公開番号】特開2016-81222(P2016-81222A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2015年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】沖田 宏則
(72)【発明者】
【氏名】古賀 泉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆泰
(72)【発明者】
【氏名】稲富 雅彰
【審査官】
櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−110275(JP,A)
【文献】
米国特許第04198621(US,A)
【文献】
特開平09−081883(JP,A)
【文献】
特開昭59−122247(JP,A)
【文献】
特開昭55−087021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00−25/04
G01L 7/00−23/32
27/00−27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサの検出信号を所定の電圧に変換して出力する検出信号変換部とこの検出信号変換部の出力信号を増幅する増幅部を備えたフィールド機器において、
ノイズフィルタを備え、
前記検出信号変換部は前記ノイズフィルタの一次側の電圧を基準電圧とすることを特徴とするフィールド機器。
【請求項2】
センサの検出信号を所定の電圧に変換して出力する検出信号変換部とこの検出信号変換部の出力信号を増幅する増幅部を備えたフィールド機器において、
前記フィールド機器の内部駆動用電源としてのスイッチング電源と、ノイズフィルタを備え、
前記増幅部は前記ノイズフィルタの一次側の電圧を基準電圧とすることを特徴とするフィールド機器。
【請求項3】
前記フィールド機器は圧力伝送器であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフィールド機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィールド機器に関し、詳しくは、センサの検出信号を所定の電圧に変換して出力するように構成されたフィールド機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィールド機器は、プロセス制御システムにおける現場設置計器として、いろいろなものが用いられている。このようなフィールド機器の一種に、低電流で動作するように構成された消費電力の少ない電圧出力形の伝送器がある。
【0003】
図4は、従来の電圧出力形の伝送器Tの一例を示すブロック図である。センサ1のアナログ出力信号は、測定制御部2に入力されて国際的な機関により規格化されている所定の電圧範囲(1−5V)に規準化するためのデジタル演算処理が施された後、D/A変換器3に入力され、再び1−5Vのアナログ信号に変換される。
【0004】
なお、測定制御部2は、センサ1のアナログ出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換器21、測定制御部2の動作を総括的に制御するCPU22、外部と信号を授受するためのモデム23などで構成されている。
【0005】
D/A変換器3から変換出力される1−5Vのアナログ信号は、アンプ4およびノイズフィルタ5を介して出力信号として外部に出力される。なお、ノイズフィルタ5は、インダクタンスやコンデンサや抵抗などを組み合わせて所望のノイズ除去特性が得られるように構成されるが、図では抵抗のみを示している。
【0006】
リニア安定化電源6は、直流電源7の出力電圧を各部に応じた所定の駆動電圧として安定化させた状態で、各部に供給する。電圧計8は、アンプ4の出力電圧を測定監視する。
【0007】
図4の回路構成によれば、電圧出力であることから4−20mAの電流信号を出力する必要はなく、伝送器T自体に必要な約3mAの電流で動作することから低消費電力化が図れる。
【0008】
特許文献1には、3線式低電力伝送器の構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5245333号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のように、
図4に示す従来の低電力伝送器Tでは、機器の内部各部に駆動電圧を供給する電源として一般的なリニア安定化電源6が使われていて、一次側供給電源電圧の高低によらず、一定電流を消費するように構成されている。
【0011】
これにより、二次側へは伝送器に必要な約3mAの電流を安定して供給できるが、常に同じ電流を消費することから、消費電力で比較すると、一次側の電圧が高い場合には、効率が悪くなってしまう。
【0012】
これを防ぐためには、リニア安定化電源6に代えて、スイッチング電源を搭載することが考えられる。
【0013】
ここで、リニア安定化電源の動作電流は二次側の出力電流で決まることから、一次側の電圧が変化しても動作電流は変化せず、一次側から見た入力インピーダンスは高い。
【0014】
一方、スイッチング電源の動作電流Iは、一次側の電源が高い時は少なくなり、電源が低い時は多くなるように動作する。つまり、動作電流Iが電源電圧に応じて変化することから、一次側から見た入力インピーダンスがリニア安定化電源に比較すると低く見える。
【0015】
また、スイッチング電源は文字通り入力電圧をスイッチングすることでエネルギー伝送を行うが、このスイッチング動作によって入力電圧に大きな変動が生じないように、静電容量の大きなコンデンサを入れるなどして入力インピーダンスを下げる必要がある。
【0016】
このように、リニア安定化電源をスイッチング電源に変更すると、一次側の電源部の入力インピーダンスが低くなってしまう。また、1−5V出力の伝送器の信号出力は低インピーダンスであることから、外部からのノイズNが機器内部に侵入して誤動作の原因となることも考えられる。
【0017】
これらを防ぐためには、たとえば出力部にノイズ除去を目的としたフィルタなどを配置すればよい。
【0018】
ところが、
図4に示す低電力伝送器Tでは、電源と出力電圧とでグラウンド配線Gを共用している。この結果、グラウンド配線Gに設けられているノイズフィルタ5の抵抗成分とこの抵抗成分に流れる動作電流Iに起因する誤差電圧が発生し、出力電圧の精度を落としてしまう。
【0019】
また、アンプ4に着目すると、アンプ4の出力は共通電位点を基準としている。したがって、グラウンド配線Gに誤差電圧があると出力電圧の基準がずれてしまい、電圧計8で測定される電圧は誤差を含むことになる。
【0020】
本発明は、これらの従来の問題点に着目したものであり、その目的は、低消費電力でノイズに強いフィールド機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
センサの検出信号を所定の電圧に変換して出力する検出信号変換部とこの検出信号変換部の出力信号を増幅する増幅部を備えたフィールド機器において、
ノイズフィルタを備え、
前記検出信号変換部は前記ノイズフィルタの一次側の電圧を基準電圧とすることを特徴とする。
【0022】
請求項2の発明は、
センサの検出信号を所定の電圧に変換して出力する検出信号変換部とこの検出信号変換部の出力信号を増幅する増幅部を備えたフィールド機器において、
前記フィールド機器の内部駆動用電源としてのスイッチング電源と、ノイズフィルタを備え、
前記増幅部は前記ノイズフィルタの一次側の電圧を基準電圧とすることを特徴とする。
【0023】
請求項3の発明は、
請求項1または請求項2に記載のフィールド機器において、
前記フィールド機器
は圧力伝送器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
これらにより、低消費電力でノイズに強いフィールド機器が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】本発明の他の実施例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の他の実施例を示すブロック図である。
【
図4】従来の電圧出力形の伝送器の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、
図4と共通する部分には同一の符号を付けている。
図1において、
図4の回路構成で機器の内部各部に駆動電圧を供給する電源として用いられるリニア安定化電源6に代えて、スイッチング電源9が設けられている。
【0028】
そして、D/A変換器3とアンプ4の間は、減算器10が接続されている。この減算器9の一方の入力端子にはD/A変換器3の出力端子が接続され、他方の入力端子にはグラウンド配線Gにおけるノイズフィルタ5と電圧計8と直流電源7のマイナス端子との接続点Pが接続されている。
【0029】
このような構成において、スイッチング電源9は、一次側の電源が高い時は動作電流Iが少なくなり、電源が低い時は動作電流Iが多くなるように動作する。すなわち、一次側の電源電圧が変わった場合でも、消費電力がほぼ一定になるように動作する。
【0030】
スイッチング電源9を使うことで電源電圧に応じて動作電流Iが変化することから、伝送器の入力インピーダンスに着目すると、
図4に示す従来例と比較すると低く見える。
【0031】
この結果、外部からノイズNが侵入してグラウンド配線Gにノイズ電流I
Nとして流れ、動作電流Iが変化し、誤差電圧E
errorを生じることになる。
【0032】
ところが、
図1の回路構成によれば、減算器10により、D/A変換器3の出力電圧から誤差電圧E
errorが減算されて誤差電圧E
errorの影響は補償されることになり、電圧計8には誤差電圧E
errorの影響が補償された正確な電圧が出力されることになる。
【0033】
センサ1の検出信号を所定の電圧に変換して出力する電圧出力形のフィールド機器の内部駆動用電源としてスイッチング電源9を搭載することにより、直流電源7の電圧が高い場合であっても、
図4に示す従来の構成に比べてより低い消費電力で動作させることができる。
【0034】
誤差電圧E
errorの影響を補正するように機能する減算器10を設けることで、ノイズフィルタ5を使用しても、正確な出力電圧が得られる。
【0035】
これまでは、十分な耐ノイズ性能が確保できないという視点から、電圧出力形のフィールド機器の内部駆動用電源としてスイッチング電源が搭載されることはなかったが、本発明のような回路構成にすることにより、これを実現できる。
【0036】
図2は本発明の他の実施例を示すブロック図であり、
図1と共通する部分には同一の符号を付けている。
図1と
図2の相違点は、
図2では
図1の減算器10を不要にしていることと、グラウンド配線Gにおけるノイズフィルタ5と電圧計8と直流電源7のマイナス端子との接続点PがD/A変換器3およびアンプ4の基準電圧として接続されていることである。
【0037】
図2のように構成することにより、アンプ4の基準電圧が誤差電圧E
errorの影響を受けることはなく、
図1の構成と同様に、電圧計8には誤差電圧E
errorの影響のない正確な電圧が出力されることになる。
【0038】
そして、
図2の構成によれば、
図1の減算器10が不要になることから、
図1の構成よりも部品点数を削減できるという効果も得られる。
【0039】
図3も本発明の他の実施例を示すブロック図であり、
図1と共通する部分には同一の符号を付けている。
図1と
図3の相違点は、
図3では
図1の減算器10を不要にしていることと、グラウンド配線Gにおけるノイズフィルタ5と電圧計8と直流電源7のマイナス端子との接続点Pの誤差電圧E
errorがA/D変換器11でデジタル信号に変換されて測定制御部2に帰還入力されていることである。
【0040】
測定制御部2は、A/D変換器11を介してデジタル信号として帰還入力される誤差電圧E
errorの値をD/A変換器3の設定値から差し引く演算を行う。
【0041】
図3のように構成することで、
図1および
図2と同様に、耐ノイズ性と出力精度を両立させた電圧出力の伝送器が実現できる。
【0042】
なお、上記各実施例では、フィールド機器として電圧出力形の伝送器の例について説明したが、伝送器に限るものではなく、たとえば流量計であってもよい。
【0043】
以上説明したように、本発明によれば、低消費電力でノイズに強いフィールド機器を実現できる。
【符号の説明】
【0044】
1 センサ
2 測定制御部
3 D/A変換器
4 アンプ
5 ノイズフィルタ
7 直流電源
8 電圧計
9 スイッチング電源
10 減算器
11 A/D変換器
T 伝送器(フィールド機器)