特許第6048690号(P6048690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048690
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】円形の嚢熱切開用器具及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   A61F9/007 130H
【請求項の数】29
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-500537(P2014-500537)
(86)(22)【出願日】2012年3月21日
(65)【公表番号】特表2014-515656(P2014-515656A)
(43)【公表日】2014年7月3日
(86)【国際出願番号】IL2012000126
(87)【国際公開番号】WO2012127465
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2015年3月23日
(31)【優先権主張番号】13/053,259
(32)【優先日】2011年3月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507326559
【氏名又は名称】ヴァレンス アソシエィテッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ベン‐ヌン, ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】レレ, アダム
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−538306(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0145447(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0094278(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0106929(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嚢切開を行う器具であって;
(a)近位端及び遠位端を有する主ハウジング;
(b)水晶体を焼灼する拡縮可能な焼灼用要素であって、前記主ハウジングの前記遠位端に結合されるとともに、収縮形態と拡張形態との間で切り換えられるように構成されている、拡縮可能な焼灼用要素;
(c)前記主ハウジングを通って長手方向に延在するとともに前記主ハウジングの前記遠位端から延出する内側ロッドであって、前記焼灼用要素が該内側ロッドの端に位置決めされる、内側ロッド;
(d)前記主ハウジングを通って長手方向に延在するとともに前記主ハウジングの前記遠位端から延出する外側チューブであって、前記内側ロッドは該外側チューブの内部に配置され、前記内側ロッドは、前記焼灼用要素を拡縮させるように該外側チューブに対して移動可能である、外側チューブ;
(e)摺動可能な成形要素であって、前記外側チューブ上で摺動可能であるとともに前記焼灼用要素によって包囲されるように前記外側チューブに接続されており、前記焼灼用要素を成形する、摺動可能な成形要素;及び
(f)前記主ハウジングに結合して、電流を前記焼灼用要素に供給するとともに移動の制御を提供し、前記焼灼用要素の拡縮を制御する嚢切開・移動制御手段
を備え、前記収縮可能な焼灼用要素は、該焼灼用要素が収縮形態にあるときに小さい角膜切開部を通して眼内に挿入可能であり、前記焼灼用要素は、拡張形態にあって電流が印加されると所定のサイズの嚢切開を行うように構成されている、嚢切開を行う器具。
【請求項2】
前記焼灼用要素は、前記内側ロッドの端と前記外側チューブの先端部との間に取り付けられる、閉じた連続的な円周を有する円形の焼灼部を作る少なくとも1つの導電性バンドを含み、少なくとも1つの前記導電性バンドは、ともに同じ位置にある開始地点及び終端地点を有する、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記焼灼用要素は、前記内側ロッドの端と前記外側チューブの先端部との間に取り付けられる、全体に閉じた連続的な円周を有する円形の焼灼部を作る封止された隙間のないリングを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記焼灼用要素は2つの前記導電性バンドを含み、2つの前記導電性バンドはそれぞれ、前記内側ロッドの端と前記外側チューブの先端部との間にそれぞれ接続される開始地点及び終端地点を有する、請求項に記載の器具。
【請求項5】
前記外側チューブは前記内側ロッドから電気的に絶縁され、前記外側チューブ及び前記内側ロッドのそれぞれは電気回路の反対の極を画定する、請求項1に記載の器具。
【請求項6】
前記外側チューブは、その端領域に外周方向に切り欠かれた延長部を含み、前記外側チューブは、前記切り欠かれた延長部が終端する位置である先端部を更に含む、請求項1に記載の器具。
【請求項7】
前記収縮形態では、2つの前記導電性バンドは互いに対して実質的に平行に、前記切り欠かれた延長部の上に位置決めされ、前記拡張形態では、2つの前記導電性バンドは互いに実質的な円を形成するように凹状にアーチ状になっている、請求項に記載の器具。
【請求項8】
前記導電性バンドは、前記内側ロッドの高さよりも高い高さを有する、請求項2、4、7のいずれかに記載の器具。
【請求項9】
前記外側チューブの前記先端部に向かう前記内側ロッドの移動によって、前記焼灼用要素が前記収縮形態から前記拡張形態に切り換わる、請求項に記載の器具。
【請求項10】
前記焼灼用要素は使用前に取り出し可能であり、前記嚢切開のサイズを選択するために種々のサイズの焼灼用要素から選択することができる、請求項1に記載の器具。
【請求項11】
前記摺動可能な成形要素は生体適合性の非導電性材料から作られる、請求項1に記載の器具。
【請求項12】
前記摺動可能な成形要素は非導電性材料によって絶縁される、請求項1に記載の器具。
【請求項13】
前記摺動可能な成形要素は、前記焼灼用要素の実質的に完全な円形を提供するように終端地点に対して前進されて押し当てられる、請求項1に記載の器具。
【請求項14】
前記摺動可能な成形要素は前記焼灼用要素の楕円形状を提供する、請求項1に記載の器具。
【請求項15】
2つの前記導電性バンドのそれぞれは3つのブレードを含み、該ブレードは2つの外側ブレード及び1つの中間ブレードを含み、2つの前記導電性バンドは互いに重なる、請求項4に記載の器具。
【請求項16】
前記外側ブレードは、温度をおよそ41℃未満に維持する生体適合性の断熱材によってコーティングされる、請求項15に記載の器具。
【請求項17】
前記中間ブレードは、その長さに沿って前記外側ブレードから突出するように該外側ブレードの上に位置決めされ、それによって効果的な焼灼のために前記水晶体と接触し、前記中間ブレードは、該中間ブレードの電気抵抗を高め、したがって前記水晶体と接触する該中間ブレードの熱伝達を高めるように狭まった幅を有する、請求項15に記載の器具。
【請求項18】
前記内側ロッドは前記開始地点付近に溝を有し、該溝は、適切な焼灼を達成するために前記開始地点の温度を上昇させるように該開始地点における電気抵抗を高める、請求項15に記載の器具。
【請求項19】
前記外側チューブは、その端領域に外周方向に切り欠かれた延長部を含み、前記外側チューブの遠位端が上方に90度曲げられて、単一の前記導電性バンドにはんだ付けされるプレート延長部を形成し、該プレートによって前記導電性バンドが円形形態をとる、請求項に記載の器具。
【請求項20】
2つの前記導電性バンドは前記開始地点及び前記終端地点において互いに重なり、前記焼灼用要素の各端に旗形の領域を形成し、前記重なりによって、閉じた連続的な円周を有する円形の焼灼部を作ることが可能となる、請求項に記載の器具。
【請求項21】
前記内側ロッドは、ユーザーが前記嚢切開の領域の位置を特定することを助けるために、前記拡張した焼灼用要素の中央に位置付けられる、該内側ロッドに印が付される位置確認地点を有する、請求項1に記載の器具。
【請求項22】
前記電流は、少なくとも1つの比較的短い持続時間のパルス、それに続く少なくとも1つの比較的長い持続時間のパルスを含む波形に従って供給される、請求項1に記載の器具。
【請求項23】
前記比較的短い持続時間のパルスは、各パルス間に可変の時間間隔を含む、請求項22に記載の器具。
【請求項24】
嚢切開処置を行うシステムであって;
(a)請求項1に記載の前記嚢切開用器具;及び
(b)嚢切開・移動制御ユニット;
を備え、前記器具は、前記焼灼用要素が拡張して加熱されると水晶体嚢に開口部が焼灼されるように、前記焼灼用要素に電流及び移動の制御を提供する前記嚢切開・移動制御ユニットに接続される、嚢切開処置を行うシステム。
【請求項25】
前記器具と前記嚢切開・移動制御ユニットとの間を接続するハンドルを更に備える、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記電流は、少なくとも1つの比較的短い持続時間のパルス、それに続く少なくとも1つの比較的長い持続時間のパルスを含む波形に従って供給される、請求項24に記載のシステム。
【請求項27】
前記比較的短い持続時間のパルスは、各パルス間に可変の時間間隔を含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記波形は、前記比較的長い持続時間のパルスのみを含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記波形は、前記少なくとも1つの比較的短い持続時間のパルスのみを含む、請求項26に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白内障手術の分野に関する。より詳細には、本発明は、嚢切開処置を行うためのシステム及び器具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在まで、米国では毎年100万件を超える白内障手術が行われており、白内障手術の場合、水晶体前嚢を開いて水晶体核へのアクセスを得て、変性した皮質物質を除去することが可能でなければならない。水晶体内部に入って内部から内容物を引き出すためには、水晶体嚢に比較的大きな円形の開口部を形成する必要がある。この開口部の形成は嚢切開として知られている。開口部が滑らかな縁を有し、開口部が引き裂けにくく、それによって、水晶体の中身を開口部から容易に取り出すことができるようにすることが重要である。水晶体の開口部は通常、およそ4ミリメートル〜7ミリメートルの直径であるが、これは変わり得る。
【0003】
現在では、前嚢切開の2つの技法:「缶オープナー」技法及び破嚢術が広く用いられている。缶オープナー式嚢切開では、強膜又は周辺角膜を小さく切開し、次に、水晶体切開刀、ナイフ又は針を、切開部から挿入して、水晶体前嚢に円形のパターンの小さな連接する切離部を作る。切離部同士を連接させることによって完全な円を作った後で、前嚢の円形片を鉗子で把持して切取線に沿って引き剥がす。残念ながら、嚢を多くの小さい嚢切離部によって開く場合、小さい垂下部分が残存し、それが局所的に最も耐性の低くなる領域となり、切離を半径方向に後嚢まで後方に広げる可能性がある。こうした有害な結果により、嚢の構造的安定性が損なわれ、硝子体が前房へと脱出する可能性が高くなる。
【0004】
破嚢術は、前嚢に円形の中心開口部を作ることを意味する。この連続的な開口部は、上述した缶オープナー式技法に共通する、残存する垂下部分を排除する。破嚢術では、水晶体切開刀によって嚢の切開部が作られ、この切開部は、切離したばかりの嚢の前縁を水晶体切開刀によって切り取ることなく押すか、又は前縁を鉗子で把持することによって円形形状を形成するようにされる。この処置は、執刀医にとって制御するのが困難である。切離動作は、水晶体赤道及び後嚢に向かう望ましくない切離につながる可能性があり、開口部のサイズを決定するのが難しい。破嚢術は、常に成功裏の結果を得るためには相当な技量及び経験を必要とする。
【0005】
前嚢をどちらの前述した前嚢切開法で開口させるにしても、細心の注意を要する処置となり、白内障手術で最も難しい段階の1つであると広く考えられている。前嚢切開を上手く行うことができなければ、その後の手術段階の大きな妨げとなり、手術による合併症の可能性が高まる。不十分な嚢切開に起因する合併症としては、チン氏帯の応力とその後の後嚢の破損、硝子体の損失、及び効率的な水晶体の除去を妨げる大きな嚢垂下部分が挙げられる。不十分な嚢切開はまた、不適切に画定された嚢構造に起因して眼内レンズの嚢袋内への配置を妨げる。手術時間が長くなり、患者の不快感が増す可能性があり、加えて、術後の合併症及び視力が低下するというリスクが生じる。
【0006】
前嚢切開の上述した技法のいずれにしても、嚢の開口部のサイズ又は位置が理想的ではない場合が多い。切開部の位置、サイズ及び形態は、重大な影響を及ぼすものである。例えば、小さすぎる嚢の開口部によって、水晶体核及び皮質の安全な除去ができなくなる可能性があり、水晶体嚢内への適切な眼内レンズの挿入を妨げる。加えて、小さいか又は偏心した嚢の開口部は、手術中に水晶体嚢に対して過度の応力をかけ、眼が、チン氏帯及び嚢の破損というリスクに曝される。
【0007】
従来の前嚢切開技法に関連する問題を克服するために特定の装置が提案されている。例えば、Smirmaulに発行された特許文献1、並びにCozean Jr他に発行された特許文献2及び特許文献3はそれぞれ、前嚢を切開する円形の切り込み部材を含む器具類を開示している。しかし、小さい切開部の白内障手術におけるそのような装置の使用は、それらのサイズに起因して限界がある。具体的には、眼の水晶体前嚢は角膜及び強膜によって保護されているため、通路となる創口を角膜組織又は強膜組織に切り込まなければ、いずれの手術装置も前嚢に達することができない。角膜組織に切開される通路となる創口の幅は、好ましくは1ミリメートル〜3ミリメートルに制限されることが望ましい。小さい創口であれば、手術の縫合処置の範囲が減り、迅速な治癒が促され、乱視が最低限に抑えられ、感染症の可能性が低くなり、迅速な視力リハビリテーションを提供する。したがって、白内障手術において用いられる器具類は、小さい創口を通ることが可能である必要がある。従来技術の切り込み部材は、1mm〜3mmの小さい角膜切開部を通ることができない。
【0008】
熱を先端部に集中させ、先端部を手術部位に接触させて焼灼させる焼灼用器具が存在する。白内障手術にそのような焼灼用器具を用いる場合、角膜に切開部を作り、器具の先端を切開部を通して挿入して嚢と接触させ、そこで器具を作動して嚢を熱焼する。従来技術の焼灼用器具の使用は、前述したように、所望の熱焼エリアの適切なサイズの円形形状を有する大きい先端部の導入を阻む切開部の小さいサイズによって限界がある。
【0009】
本発明者による特許文献4は、小径のシャフトの端に斜角で存在する焼灼用リングを記載している。焼灼用リングはしたがって、小さい切開部を通して挿入することができ、斜角によって比較的大きい楕円形の焼灼が可能となり、焼灼部の最大軸はシャフトの直径よりも大きい。
【0010】
Sheffer他への特許文献5は、ハンドル内から収縮可能である熱焼用焼灼器を記載しており、それによって、焼灼器を角膜切開部を通して挿入した後でその最終的なサイズに拡張させることができる。特許文献5には、焼灼用リングが、図1bにおいて明らかなように完全な円形に閉じず、ハンドル付近のエリアを熱焼しないという不都合点がある。したがって、依然として、残りのエリアを鉗子で把持し、制御が難しい切離部を形成する必要がある。加えて、熱焼用リングはハンドルの奥まで実質的に延在する単一の金属ワイヤから形成されるため、ワイヤを電気的に加熱するときに、器具を断熱して望ましくないエリアの加熱を防止するのが難しい。器具のハンドルが発熱し得るため、また器具を眼の中に相当挿入する必要があるため、眼の水晶体に隣接する他の部分で焼灼が過って生じ得る。
【0011】
小径の先端部を有し、切開部を通して挿入され、かつ、後に鉗子で把持されるとともに切離されて円形の開口部にされる、嚢に環状に配置される一連の孔を熱焼するのに用いられる他の焼灼用器具が存在する。確実に環状であるとともに所望の位置に存在する一連の熱焼部を形成し、また所望のサイズの輪を形成するように焼灼用器具を操作することは難しい。また、白内障手術では、処置は通常、複数の器具類:切断具、水圧入口、角膜の形状を保持する手段、並びに関連の手術機器及び電気機器が必要であることによって複雑になる。
【0012】
同様に本発明者による特許文献6には、規則的な加熱及び手術部位に方向付けられる空気流圧力の双方を提供する手術器具が開示されている。この器具は、比較的小さい角膜切開部を通ることが可能であり、嚢に大径の環状の開口部を容易に形成することができる。
【0013】
この器具は、規則的な加熱及び手術部位に方向付けられる空気流圧力の双方を提供するため、白内障手術における複数の器具類の必要性を克服した。さらに、この器具は、取扱いが簡便であり、角膜の小径(1ミリメートル〜2.8ミリメートル)の切開部に挿入することができ、水晶体嚢におよそ4ミリメートル〜7ミリメートルの均一な円形の開口部を確実に形成することが可能である。しかし、空気圧によって角膜の内皮細胞に損傷を与える可能性があることも分かっており、したがって、角膜の構造を維持するのに空気以外の手段を用いることが有利である。
【0014】
特許文献6に記載されている手術器具は、従来技術の器具に関連する重大な問題を克服する。しかし、器具が眼内にある間に破損するというシナリオについては、本発明者の先願では対処しなかった。
【0015】
本発明者による特許文献7は、前述した概念を詳述し、手術中の器具の破損の場合に、眼に損傷を与えることなく器具を眼から簡単に取り出すことを可能にする設計の態様を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第4,766,897号
【特許文献2】米国特許第5,269,787号
【特許文献3】米国特許第5,873,883号
【特許文献4】PCT国際出願第PCT/IL2005/000461号(国際公開第2006/117772号)
【特許文献5】米国特許第6,066,138号
【特許文献6】PCT国際出願第PCT/IL2006/000384号(国際公開第06/109290号)
【特許文献7】米国特許出願第11/911,111号(CIP出願)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の主な目的は、電流の短いパルスを用いることによって水晶体嚢に開口部を形成する嚢切開を行うための熱的システム及び器具を提供することである。電流から発生した熱は、水晶体嚢に所定のサイズの開口部を即座に熱焼する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
加えて、本発明のシステム及び器具は、例えば約4ミリメートル〜7ミリメートルの直径を有する嚢切開が可能でありながらも、小さい角膜切開部(約1.5ミリメートル)を通して水晶体に近づくことを可能にする拡縮可能な焼灼用要素を有する。
【0019】
本発明は、以前の器具を改良し、以前のほぼ円形の焼灼用リングとは対照的に、焼灼用リングのバンドを完全な円形に開くことを可能にする設計の態様について記載する。新たな形状の焼灼用リングは、水晶体に、実質的に完全な円形の、したがって、均質な焼灼部を作ることで、水晶体の引き裂きの原因となり得る脆弱点の形成を防止する。加えて、本発明はまた、焼灼用リングの温度を上昇させ、したがって、脆弱点の形成の防止にもつながる水晶体のより完全な焼灼をもたらす。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によると、嚢切開処置を行うシステムであって、遠位端を有する主ハウジング、及び主ハウジングの遠位端に結合される拡縮可能な焼灼用要素を更に含む嚢切開用器具、並びに、嚢切開・移動制御ユニットを含む、嚢切開処置を行うシステムが提供される。嚢切開用器具は、焼灼用要素が拡張して加熱されると水晶体嚢に開口部が焼灼されるように、焼灼用要素に電流及び移動の制御を提供する嚢切開・移動制御ユニットに接続される。
【0021】
嚢切開処置の間は、角膜が潰れないように角膜の形状を保たなければならない。このために、本発明の装置の外部の、眼への任意の生体適合性材料の注入、眼内に方向付けられる空気流、又は当業者に既知である任意の他の手段等の角膜の形状を保つ手段を用いなければならない。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によると、焼灼用要素は、内側ロッドの端と外側チューブの先端部との間に接続されている両端を有する第1の導電性バンド及び第2の導電性バンドを含む。これらのバンドは、内側ロッドの高さよりも高いおよそ50nm〜250nmの高さを有するため、バンドの縁が水晶体に接触するときに、嚢切開用器具の他の要素は水晶体に接触しない。
【0023】
好ましい実施形態では、第1のバンド及び第2のバンドはそれぞれ溝を有し、この溝は所定の脆弱点を表す。電流が過度に高い望ましくないシナリオでは、これらの所定の脆弱点において破断が生じる。器具が眼内にある間にこれが生じる場合、バンド上の溝の位置は、それにもかかわらず破断したバンドを眼から後退させることを可能にするようなものである。器具は、眼に損傷を与えることなく眼からすぐに取り出すことができる。好ましくは、各バンドには単一の溝が存在し、各溝は、外側チューブの先端部の近くのそのそれぞれのバンドの端付近に位置付けられる。したがって、破断したバンドは内側ロッドの端に接続されたままであり、眼から後退させて取り出すことができる。
【0024】
加えて、本発明のシステム及び器具は、摺動可能な成形要素を有し、摺動可能な成形要素は、それに形成されているキャビティを通して挿入されるピンによって外側チューブ延長部に接続されており、成形要素がバンドを押しておよそ4mm〜7mmの直径を有する完全な円形にすることを可能にする。成形要素は、任意の他の好適な接続手段によって外側チューブに接続してもよい。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によると、システムは、器具と嚢切開・制御ユニットとの間を接続するハンドルも含む。嚢切開を行う焼灼用要素は、嚢切開用器具部分からハンドルを超えて後退し、この器具部分は1回の使用後に処分可能である。
【0026】
本発明の別の好ましい実施形態によると、嚢切開を行う器具であって;
(a)近位端及び遠位端を有する主ハウジング;
(b)水晶体を焼灼する拡縮可能な焼灼用要素であって、上記主ハウジングの上記遠位端に結合されるとともに、収縮形態と拡張形態との間で切り換えられるように構成されている、拡縮可能な焼灼用要素;
(c)上記主ハウジングを通って長手方向に延在するとともに上記主ハウジングの遠位端から延出する内側ロッドであって、上記焼灼用要素が当該内側ロッドの端に位置決めされる、内側ロッド;
(d)上記主ハウジングを通って長手方向に延在するとともに上記主ハウジングの上記遠位端から延出する外側チューブであって、上記内側ロッドは当該外側チューブの内部に配置される、外側チューブ;
(e)摺動可能な成形要素であって、外側チューブ上で摺動可能であるとともに上記焼灼用要素によって包囲されるように上記外側チューブに接続されており、上記焼灼用要素を成形する、摺動可能な成形要素;及び
(f)主ハウジングに結合して、電流を焼灼用要素に供給するとともに移動の制御を提供し、焼灼用要素の拡縮を制御する嚢切開・移動制御手段
を備え、上記収縮可能な焼灼用要素は、当該焼灼用要素が収縮形態にあるときに小さい角膜切開部を通して眼内に挿入可能であり、上記焼灼用要素は、拡張形態にあって電流が印加されると所定のサイズの嚢切開を行うように構成されている、嚢切開を行う器具が提供される。
【0027】
本発明の別の好ましい実施形態によると、焼灼用要素は、外側チューブの端において内方に接続されている、それらの両端を有する第1の導電性バンド及び第2の導電性バンドを含む。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態によると、焼灼用要素は単一のバンドを含む。
【0029】
本発明のまた別の好ましい実施形態によると、焼灼用要素は、互いに重なるそれらの両端を有する第1の導電性バンド及び第2の導電性バンドを含み、ブレード間に隙間を生じさせないようにし、水晶体に閉じた連続的な円周を有する円形の焼灼部を形成するようにする。
【0030】
本発明の更に好ましい実施形態によると、焼灼用要素は、一方の側が外側チューブに、他方の側が内側ロッドにはんだ付けされる閉リングを含み、水晶体に、リングに沿う閉じた連続的な円周を有する円形の焼灼部を形成するようにする。
【0031】
本発明の別の好ましい実施形態によると、開リングの中央に位置付けられる、外側チューブに位置する位置確認地点があり、これは、器具のユーザーが焼灼前に焼灼用リングをどこに配置するのかを決めるのに役立つ。
【0032】
本発明の別の好ましい実施形態によると、焼灼用要素は、第1の導電性バンド及び第2の導電性バンドを含み、各バンドは3つのブレードから構成されているが、その中間ブレードは外側ブレードに対して幅が狭まっており、また、外側ブレードよりも高くに位置決めされる。中間ブレードの狭まった幅によって、その電気抵抗が高まり、それによって、効果的な焼灼のために水晶体に密接する中間ブレードの熱伝達を高める。2つの外側ブレードの温度は、眼内の粘性物質との接触によって下がる。粘性物質はブレード間に浸透することができないため、中間ブレードの温度は高いままであり、2つの外側ブレードの温度よりも高い。実際、外側ブレードは、中間ブレードに対する断熱材としても機能する。
【0033】
バンドの3つのブレードのそれぞれは、本発明の代替的な実施形態による単一のブレードよりも幅狭であり、この特徴によってブレードがより可撓性であることが可能となる。この可撓性の特徴によって、焼灼用要素が拡張形態に開かれるときの繰り返しの伸縮によって生じるブレードへのクラックの形成のリスクが減る。また、ブレードが幅狭であることに起因して、曲げ半径が単一のブレードの半径よりも小さくなり、これによってバンドがより曲げられるため、バンドの接合部がより平坦になり、これがバンドをより完全な円形にすることを可能にする。
【0034】
嚢切開中の、焼灼用リングを囲む眼球組織への直接的な接触又は熱伝達によるいかなる熱損傷も回避するために、2つの外側ブレードを、それらの温度を41℃未満に保つように生体適合性の断熱材によってそれぞれコーティングする。断熱材によって、外側ブレードからの熱は眼の嚢に向かって下方向へのみ方向付けられ、側方へは方向付けられず、側方では、虹彩に接触することで虹彩を熱焼して虹彩に損傷を与える可能性がある。
【0035】
ブレードのコーティングは、薬学的な拡張に対する瞳孔の反応が限られている眼内で嚢切開を行う場合に特に効果的である。通常、白内障手術の前には、瞳孔を目薬の形態の薬剤によって拡張させることで水晶体嚢への自由なアクセスを可能にしなければならない。眼によってはこれらの液滴に対する反応が限られており、6.0mmよりも小さい瞳孔サイズとなる不十分な虹彩の拡張となる。そのような場合、破嚢術を含むいかなる種類の嚢切開も行うのが非常に難しい。水晶体嚢表面を露出させて破嚢術又はレーザー嚢切開を行うために、手術の最初に、特別な虹彩拡張器によって虹彩を機械的に引っ張らなければならない。コーティングされた焼灼用リングの外面の温度は安全に41℃未満であるため、焼灼用リング自体が、細長い形状から円形形状に変形しながら、虹彩の縁を押しやり、執刀医が嚢切開を行うことを可能にする。
【0036】
本発明の別の好ましい実施形態によると、焼灼用要素は、第1の導電性バンド及び第2の導電性バンドを含み、各バンドは2つのブレード、すなわち内側ブレード及び外側ブレードから構成されているが、内側ブレードは外側ブレードに対して狭まった幅を有し、また、外側ブレードよりも高くに位置決めされる。
【0037】
本発明の好ましい実施形態の付加的な特徴は、内側ロッドに形成される溝であり、この溝は、2つのバンドが互いに重なる地点における電気抵抗を高め、それによってその地点の温度を上昇させるため、適した完全な焼灼を達成することができる。
【0038】
本発明の更なる付加的な特徴は、焼灼用リングを加熱するように印加される電気パルスの波形のパターンであり、これによって焼灼の有効性が改善される。焼灼を行う主なパルスの前に、可変の回数及び電圧の一連のプレパルスがあり、これによってそのエリアを乾燥させるとともに予熱するため、最終的なパルスが活性化されると、焼灼が一層効果的で完全なものとなる。
【0039】
焼灼は、いずれのプレパルスも伴うことなく行うことができるか、又はプレパルスの多くを伴って、各プレパルス間に異なる間隔を置いて行うことができる。
【0040】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明のセクションからより容易に明らかとなり、理解されるであろう。
【0041】
本発明の、その実施形態に関するより良い理解のために、図面を通して同様の符号が対応する要素又はセクションを指す添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の好ましい実施形態による嚢切開用器具の側面図である。
図2】本発明の好ましい実施形態による嚢切開用器具の側断面図である。
図3】完全に収縮した形態の器具の焼灼用要素を示す、実施形態の部分側断面図である。
図4】拡張形態の焼灼用要素を示す、嚢切開用器具の斜視図である。
図5】部分的に開いた形態の焼灼用要素の拡張を示す嚢切開用器具の部分図である。
図6】完全に開いた形態の焼灼用要素を示す、嚢切開用器具の部分図である。
図7a】最初の形態にあり、成形要素を特徴とする焼灼用要素の拡張を示す嚢切開用器具の部分図である。
図7b】成形要素を特徴とする完全に開いた形態の焼灼用要素の拡張を示す嚢切開用器具の部分図である。
図8】本発明の好ましい実施形態による、ブレードの接合部が内方に接続されている、完全に開いた形態の焼灼用要素を示す、嚢切開用器具の部分図である。
図9】本発明の好ましい実施形態による、焼灼用要素を完全に開いた形態の単一のブレードとして示す、嚢切開用器具の部分図である。
図10a】本発明の好ましい実施形態による、ブレードが互いに重なっている、部分的に開いた形態の焼灼用要素を示す、嚢切開用器具の部分図である。
図10b】本発明の好ましい実施形態による、ブレードが互いに重なっている、完全に開いた形態の焼灼用要素を示す、嚢切開用器具の部分図である。
図11a】焼灼用要素が封止された隙間のないリングから作られる、部分的に開いた形態の焼灼用要素を示す、嚢切開用器具の部分図である。
図11b】焼灼用要素が封止された隙間のないリングから作られる、完全に開いた形態の焼灼用要素を示す、嚢切開用器具の部分図である。
図12a】本発明の好ましい実施形態による、バンドがそれぞれ3つのブレードから構成されている、部分的に開いた形態の焼灼用要素を示す、嚢切開用器具の斜視図である。
図12b図12aのより大きい図である。
図12c】部分的に開いた形態の焼灼用要素を示す、図12aの嚢切開用器具の部分上面図である。
図12d図12aの嚢切開用器具の側面図である。
図12e】断熱材を示す、図12aの焼灼用要素のバンドのうちの1つの断面図である。
図13a】ブレードが互いに重なっている、完全に開いた形態の焼灼用要素を示す、図12aの嚢切開用器具の斜視図である。
図13b】完全に開いた形態の焼灼用要素を示す、図12aの嚢切開用器具のより大きい斜視図である。
図13c】完全に開いた形態の焼灼用要素を示す、図12aの嚢切開用器具の部分上面図である。
図14a】外側チューブに接続されている成形要素を特徴とする、完全に開いた形態の焼灼用要素を示す、図12aの嚢切開用器具の斜視図である。
図14b】外側チューブに接続されている成形要素を特徴とする、部分的に開いた形態の焼灼用要素を示す、図12aの嚢切開用器具の斜視図である。
図15a】本発明の好ましい実施形態による、バンドがそれぞれ2つのブレードから構成される、部分的に開いた形態の焼灼用要素を示す、嚢切開用器具の斜視図である。
図15b】断熱材を示す、図15aの焼灼用要素のバンドうちの1つの断面図である。
図16a】本発明の好ましい実施形態による、嚢切開を行うシステムの一部の概略図である。
図16b】本発明の好ましい実施形態による、嚢切開を行うシステムの全体的な概略図である。
図17a】本発明のシステムの一部の代替的な実施形態の斜視図である。
図17b】本発明のシステムの一部の代替的な実施形態の斜視図である。
図18】電気パルスを表す波形のパターンを示す図である。
図19a】白内障手術における第1段階として角膜切開部を形成する処置を示す図である。
図19b】白内障手術における第1段階として角膜切開部を形成する処置を示す図である。
図20】嚢切開を完成させるための水晶体の熱焼前の瞬間の、水晶体上に位置決めされている本発明の完全に拡張した円形の焼灼用要素を示す図である。
図21】最終的な嚢切開、及び水晶体から取り出すために収縮した焼灼用要素を示す図である。
図22】眼から取り出される完全に後退した器具、及び形成された最終的な嚢切開部を示す図である。
図23】各バンドが所定の脆弱点を画定する溝を有する、拡張形態の焼灼用要素を示す嚢切開用器具の部分図である。
図24】器具が依然として眼内にある間に所定の脆弱点が破断した後のバンドの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、焼灼用要素としても知られる、収縮可能な焼灼リングを有する嚢切開用器具を開示する。器具を嚢切開部を越えて挿入した後で、焼灼用要素が完全に開いて完全な円形の焼灼器に拡張し、次に加熱されて水晶体を熱焼する。したがって、完全な円形の熱焼によって、潜在的に危険であり行うのが難しい、鉗子による引き裂きの必要がなくなる。
【0044】
本発明では、加熱は焼灼用要素に限定されるため、眼の不適切なエリアを熱焼する危険性がない。焼灼用要素が収縮可能であることによって、焼灼用要素を小さい嚢切開部を通して導入することが可能となり、その上、小さい嚢切開部の直径よりも大きい直径の水晶体を焼灼する。
【0045】
図1図6は、本発明の原理に従って構成及び操作される嚢切開用器具10の好ましい実施形態を示している。
【0046】
図1を参照すると、嚢切開用器具10は、遠位端14及び近位端16を有する主ハウジング12を含む。主ハウジング12は、嚢切開用器具10に電流を供給するように嚢切開・移動制御ユニットに動作可能に接続されているハンドルへの主ハウジング12の接続を容易にするために近位端16にコネクター40を含む。これについては図10a及び図10bに関して本明細書において更に説明する。
【0047】
図2を参照すると、また図3に最も良く示されているように、嚢切開用器具10は遠位端44を有する外側チューブ18を含む。端44は、先端部46、並びに外側チューブ18及び先端部46の完全に管状の領域(切り欠かれた(truncated)外周を有しない領域)間に延在する切り欠かれた外周を有する外側チューブ延長部48を含む。外側チューブ18が完全に管状の構成から延長部48に変化する領域は、外側チューブ延長部48に更なる構造的な支持を提供する斜角を付けた縁50を有するため、延長部48は可能な限り薄くすることができる。斜角を付けた縁50には、延長部48に最大の支持を提供するように任意の好適な角度の斜角を付けることができる。
【0048】
嚢切開用器具10は、主ハウジング12の中心軸を通るとともに、主ハウジング12の遠位端14から外側チューブ18を通って延在する内側ロッド20も含む。
【0049】
図2を参照すると、内側ロッド20及び外側チューブ18はともに、外側チューブ18内での内側ロッド20の移動を可能にするように主ハウジング12内に位置するばね機構54に結合されている。これについては本明細書において更に説明する。なお、図2に示されているように、内側ロッド20は外側チューブ18の内部に位置決めされている。
【0050】
好ましい実施形態によると、図2に示されている要素は全て処分可能であり、使い捨てであることが意図されている。これには、ハウジング12、ばね機構54、内側ロッド20、外側チューブ18、及び(本明細書において以下で説明する)焼灼用要素30aが含まれる。
【0051】
図3を参照すると、拡縮可能な焼灼用要素30aが、内側ロッド20の端に接続されている。図3は、焼灼用要素30aをその収縮した状態で示している。
【0052】
焼灼用要素30aは、限定はされないがタングステン合金等の生体適合性の導電性材料から形成される第1のバンド34及び第2のバンド36を含む。各バンド34、36の両端は、本明細書では接合部と称される、内側ロッド20の端と外側チューブ18の先端部46との間の近位接合部47及び遠位接合部49である2つの点において垂直に接続されている。外側チューブ18の先端部46の方向への内側ロッド20の移動によって、第1のバンド34及び第2のバンド36が、図6に示されているように互いに円を実質的に形成する拡張し開いた形態をとる。内側ロッド20及び外側チューブ18の移動を可能にするようにばね機構54が設けられている。電気の短いパルスが工具を通して送られることで、焼灼用要素のバンド34、36が加熱されて水晶体嚢に開口部を焼灼する。
【0053】
内側ロッド20及び外側チューブ18を外方へ移動させるのに、当該技術分野において既知であるような他の機構を用いてもよいことが認識されるであろう。
【0054】
収縮形態では、焼灼用要素30aのバンド34、36は、外側チューブ18の延長部48の上に直接、実質的に平坦に互いに対して平行に位置決めされる。図1図2及び図3では、焼灼用要素30aは収縮形態にある(図1では焼灼用要素は見えない)。この位置において、嚢切開用器具10の端を、およそ1ミリメートル〜2ミリメートルの比較的小さい角膜切開部に挿入することができる。
【0055】
図4図6を参照すると、拡張し開いた形態が示されているが、図5では、バンド34、36は部分的にしか開いていない。
【0056】
バンド34、36の高さは、内側ロッド20及び先端部46の高さよりも高いおよそ50ミクロン〜200ミクロンの範囲内であるため、バンド34、36の縁が嚢に接触するときには、嚢切開用器具10の他の要素は嚢には接触しない。内側ロッド20には、バンド34、36の付加的な高さに対応するようにその端の上縁に形成されるスロット60が設けられている。
【0057】
以下の図及び記載は、焼灼用要素の焼灼側について扱う向きで嚢切開用器具を示している。
【0058】
図5及び図6を参照すると、第1のバンド34及び第2のバンド36の長さは、必要とされる嚢切開のサイズに従って設計される。例えば、4ミリメートル〜5ミリメートルの嚢切開の場合、約7ミリメートルのバンド長が必要である。このバンド長は、必要とされる嚢切開の外周のおよそ半分である。外側チューブ18の延長部48も、バンド34、36が平坦な収縮した形態にあるときにバンド34、36に対応するように十分な長さを有しなければならない。斜角を付けた縁50の角度は、延長部48の長さに応じてより大きく又はより小さくすることができる。
【0059】
任意選択的に、嚢切開のサイズを選択するために焼灼用要素のサイズを選択することができるように、使用前に焼灼用要素30aを器具10から取り外す。好ましくは、4mm〜7mmの最も好ましい直径から選択される直径を有する嚢切開を行うために、より長いか又はより短いバンドを有する幾つかの取り外し可能な焼灼用要素を設計することができる。他のサイズの取り外し可能な焼灼用要素も想定することができる。
【0060】
第1のバンド34及び第2のバンド36は、タングステン合金又は任意の他の好適な要素等の導電性の生体適合性材料から形成される。内側ロッド20及び外側チューブ18はともに、少なくとも部分的に導電性材料から形成される。外側チューブ18の延長部48及び先端部46は同様に同じ材料から形成される。内側ロッド20及び外側チューブ18は、電気回路の反対の極を画定し、互いから絶縁されるように設計されている。
【0061】
嚢切開を行うために、短い低電圧電気パルスをバンド34、36に通す。電流が内側ロッド20、バンド34、36、先端部46、延長部48を通って外側チューブ18を通じて戻ると、バンド34、36が加熱される(又は極性に応じて逆もまた同様)。
【0062】
焼灼用要素30aが拡張形態にあるときにのみ電気回路を完成させ、焼灼用要素30aの尚早な加熱を防止することができるように、スイッチが設けられることが認識されるであろう。
【0063】
バンドの両端のそれらの最終的な形状及び/若しくは形態、並びに/又は各バンドのブレードの数によってそれぞれ区別される、30b、30c、30d、30e、30f、30g、30h、30i、30j及び30kとして示される焼灼用要素の種々の構成を示す更なる図をここで提示する。
【0064】
図7a及び図7bは、本発明の原理に従って構成及び操作される嚢切開用器具10の代替的な実施形態を示しており、実質的に完全に円形の焼灼用要素を達成するために摺動可能な成形要素110aが加わっている。
【0065】
図7bでは、内側ロッド20は外側チューブ18の先端部46に向かって移動し、それによってバンド34、36が内側ロッド20から拡張する。このように、近位接合部47が摺動接触によって成形要素110aの近位端111に押し当てられる。ピン112が静止したままであるため、成形要素110aは、先端部46に達して更なる移動が制限されるまで外側チューブ延長部48に沿って前進する。この段階で、成形要素110aの遠位端113の形状が、遠位接合部49に押し当たり、バンド34、36の円形形態と同じ半径を有する。したがって、バンド34、36のそれぞれは、強制的に実質的に完全な円形の形態をとるようにされる。
【0066】
当業者には、成形要素110aのサイズ及び形状を変更して他の焼灼用リングの形状(すなわち楕円形)を可能にすることができることが認識されるであろう。
【0067】
図8では、内側ロッド20は、図7において記載したものと同じように外側チューブ18の先端部46に向かって移動する。この特定の実施形態では、バンド34、36は、外側チューブ延長部48の先端部46の内方で接合されている。この特定の実施形態は成形要素110を含んでいても又は含んでいなくてもよい。
【0068】
図9では、内側ロッド20は、図7において記載したものと同様に外側チューブ18の先端部46に向かって移動する。本発明のこの特定の実施形態では、焼灼用要素30fは、閉じた連続的な円周を有する円形の焼灼部を作る単一のバンド119から形成される。外側チューブ延長部48の遠位端の一部が上方に90度曲げられて、バンド119にはんだ付けされるプレート延長部122を形成する。焼灼用要素30Fを外側チューブ延長部48に沿って前進させると、プレート延長部122は、バンド119に強制的に円形形態をとらせる。この特定の実施形態は成形要素110を含んでいても又は含んでいなくてもよい。
【0069】
図10a及び図10bは、本発明の原理に従って構成及び操作される嚢切開用器具10の代替的な実施形態を示しており、水晶体に閉じた連続的な円周を有する円形の焼灼部を作るために焼灼用要素30gの2つのブレードが両端で互いに重なっている。
【0070】
図10bでは、内側ロッド20は、図7において記載したものと同様に外側チューブ18の先端部46に向かって移動する。本発明のこの特定の実施形態では、バンド34、36は、それらの両端において互いに重なり、旗形の領域91及び93を形成する。重なるバンドは、前述の実施形態においてそれらの間に形成される隙間をなくし、そうすることによって、水晶体に閉じた連続的な円周を有する円形の焼灼部を作る。
【0071】
図11a及び図11bは、本発明の原理に従って構成及び操作される嚢切開用器具10の代替的な実施形態を示しており、水晶体に、焼灼部に沿う隙間のない閉じた連続的な円周を有する円形の焼灼部を作るために焼灼用要素30hが封止リングを含む。
【0072】
図11bでは、内側ロッド20は、図7において記載したものと同様に外側チューブ18の先端部46に向かって移動する。焼灼用要素30hは、一方の側では内側ロッド20に、他方の側では外側チューブ18にはんだ付けされるリング121から作られる。リング121は、封止されており、隙間がなく、水晶体に、焼灼部に沿う閉じた連続的な円周を有する焼灼部を作る。
【0073】
図12a〜図12eは、本発明の原理に従って構成及び操作される嚢切開用器具10の代替的な実施形態を示しており、焼灼用要素30iの2つのバンド34、36が互いに重なっており、それぞれ3つのブレードを含み、これは、より効果的な完全な焼灼を達成するようにブレードの熱伝達を高めるためである。
【0074】
図12b〜図12dでは、内側ロッド20の遠位端に、近位接合部47における電気抵抗を高める溝38が形成されており、それによってその地点の温度を上昇させることで適切な焼灼を達成することができる。
【0075】
図12eは、双方の外側ブレード31b、33bの幅が同一であるが中間ブレード32bの幅はより小さく、ブレード32bが外側ブレードよりも高くに位置決めされていることを示す、バンド36の断面図を示している。ブレード31b及び33bの外面をコーティングする断熱材120が示されている。
【0076】
図13a〜図13cは、完全に開いた形態の図12の実施形態を示している。内側ロッド20は、図7において記載したものと同様に外側チューブ18の先端部46に向かって移動する。焼灼用要素30iは2つのバンド34、36から作られ、この場合、バンドはそれぞれ3つのブレード31a、32a、33a及び31b、32b、33bからそれぞれ構成される。バンド34、36の中間ブレード32a、32bは、中間ブレード32a及び32bのより高い温度につながるよう電気抵抗を高めるように外側ブレード31a及び31b、33a及び33bに対して狭い幅を有する。中間ブレード32a及び32bは、中間ブレード32a及び32bを眼内の粘性物質によって冷却されることから保護するために、外側ブレード31a及び31b、33a及び33bによって断熱されている。中間ブレード32a及び32bを両側から保護することによって、ブレード31a及び31b、33a及び33bがブレード間には浸透しない粘性物質と接触して粘性物質によって冷却され、中間ブレード32a及び32bは焼灼に理想的な高温にあるままである。これらの全て、また中間ブレード32a及び32bが外側ブレード31a及び31b、33a及び33bに対してより高くに位置決めされていることによって、中間ブレード32a及び32bが眼の嚢により近接して接触し、より効果的な焼灼に寄与する。
【0077】
嚢切開中の、焼灼用リング30を囲む眼球組織への直接的な接触又は熱伝達によるいかなる熱損傷も回避するために、2つの外側ブレード31a及び31b、33a及び33bを、それらの温度をおよそ41℃未満に保つように生体適合性の断熱材120によってそれぞれ全体的にコーティングする。断熱材120によって、外側ブレード31a及び31b、33a及び33bからの熱は眼の嚢に向かって下方向へのみ方向付けられ、側方へは方向付けられず、側方では、虹彩に接触することで虹彩を熱焼して虹彩に損傷を与える可能性がある。
【0078】
ブレードのコーティングは、薬学的な拡張に対する瞳孔の反応が限られている眼内で嚢切開を行う場合に特に効果的である。通常、白内障手術の前には、瞳孔を目薬の形態の薬剤によって拡張させることで水晶体嚢への自由なアクセスを可能にしなければならない。眼によってはこれらの液滴に対する反応が限られており、6.0mmよりも小さい瞳孔サイズとなる不十分な虹彩の拡張となる。そのような場合、破嚢術を含むいかなる種類の嚢切開も行うのが非常に難しい。水晶体嚢表面を露出させて破嚢術又はレーザー嚢切開を行うために、手術の最初に、特別な虹彩拡張器によって虹彩を機械的に引っ張らなければならない。コーティングされた焼灼用リング30の外面の温度はおよそ41℃未満であるため、焼灼用リング30自体が、細長い形状から円形形状に変形しながら、虹彩の縁を押しやり、虹彩を拡張した焼灼用リングのサイズに開く。このように、瞳孔は、執刀医が嚢切開を行うことを可能にするほど十分なサイズになる。
【0079】
加えて、各ブレード31〜33がそれぞれおよそ0.2mmと幅狭であることに起因して、曲げ半径が減少し、焼灼用要素30iをより円形にする。
【0080】
図14a及び図14bは、本発明の原理に従って構成及び操作される嚢切開用器具10の代替的な実施形態を示しており、焼灼用要素30jが成形要素110aを特徴とする。
【0081】
図14bは、外側チューブ18に取り付けられている成形要素110を示している。成形要素110は、図7bにおいて上述した成形要素110aと同じ目的及び機能を特徴とする。
【0082】
図15aは、本発明の原理に従って構成及び操作される嚢切開用器具10の代替的な実施形態を示しており、焼灼用要素30kの2つのバンド34、36が互いに重なっており、より効果的な完全な焼灼を達成するためにブレード31a、32a及び31b、32bの熱伝達を高めるようにそれぞれ2つのブレード31a、32a及び31b、32bを含む。
【0083】
図15bは、外側ブレード31bの幅が内側ブレード32bの幅よりも大きく、ブレード32bが外側ブレード31bよりも高くに位置決めされていることを示す、バンド36の断面図を示している。ブレード31bをコーティングする断熱材120が示されている。
【0084】
ここで、図16a及び図16b、並びに上述した嚢切開用器具を用いて嚢切開を行うシステムを参照する。
【0085】
嚢切開用器具10は、執刀医による器具10の操作を容易にするハンドル72に結合されている。ハンドル72は、外側チューブ18、内側ロッド20の可逆的な移動、及び焼灼用要素30の拡縮を可能にするように主ハウジング12のばね機構54(図2を参照のこと)に接続されているモーター(図示せず)を収容する。
【0086】
ハンドル72は、嚢切開用器具10に電流及び移動の制御を提供するように、その端にコネクター94を有する電力ケーブル84を介して嚢切開・移動制御ユニット82に結合されている。嚢切開・移動制御ユニット82は、電力ケーブル84を通じて嚢切開用器具10に印加される電流の量を決める制御部86及びディスプレイ88も含む。電力ケーブル84は、嚢切開用器具10の外側チューブ18及び内側ロッド20の移動を容易にするようにハンドル72の内部のモーターに接続されている。
【0087】
フットペダル制御スイッチ90もコード92を介して嚢切開・移動制御ユニット82に接続されている。フットペダル制御スイッチ90は、執刀医が、内側チューブ20及び外側チューブ18の移動並びに焼灼用要素30の拡縮、並びに電流の印加を自身の足で制御することを可能にする。
【0088】
図17を参照すると、(図15に示されているような)ハンドル72の代替的な実施形態が示されている。ハンドル172は、互いに対向する、遠位端114の近位に位置付けられる一対の指で押下可能なアクチュエーター151a、151bを有する。アクチュエーター151a及び151bが執刀医の親指及び人差し指によって同時に押されると、ブレード34、36が拡張して焼灼用要素30を形成する。
【0089】
図18を参照すると、バンド34、36を加熱するのに用いられる電気パルスの波形のパターンが示されている。電流は短い持続時間のパルス(A幅)で流れ始め、これによって、焼灼を行う持続時間のパルス(C幅)を印加する前にブレードを加熱する。
【0090】
短い持続時間のパルスのA幅は、実際の焼灼を行う前に焼灼エリアを乾燥させるためのものであり、それによって焼灼がより効果的になる。
【0091】
1回又は複数回の短い持続時間のA幅のパルスがあってもよく、なくてもよい。A幅のパルスとA幅のパルスとの間の間隔Bは変わり、ミリ秒の長さである。全体的な電気的シーケンスは1秒以下であるものとすることができる。
【0092】
焼灼は、複数回のパルスAのみを印加し、パルスCは印加することなく行ってもよい。代替的には、パルスCのみが用いられる。電流の電圧Vは1アンペア〜6アンペアでおよそ0.6Vである。
【0093】
白内障手術中に熱焼される嚢切開の開口部を形成するのに用いられる場合の嚢切開用器具10の動作をここで説明する。
【0094】
図19図21では、図は概略図であり、相対的なサイズは必ずしも正確ではない。実際には、嚢切開の開口部は、水晶体のエリアのおよそ半分から3分の2を含み、嚢切開の開口部は通常は4mm〜7mmの範囲内である。
【0095】
図19a及び図19bを参照すると、執刀医は最初に、標準的な外科用メス104を用いて、眼102の角膜100に、好ましくはおよそ1ミリメートル〜2ミリメートル径の小さい切開部を作る。
【0096】
図20を参照すると、角膜100に切開部を形成することに続いて、嚢切開用器具10の端を切開部を通して挿入し、嚢切開用器具10は図1に示される形態にある。眼に入った後で、内側ロッド20を外側チューブ18内で前進させ、焼灼用要素30を拡張させてその拡張可能な位置にする。
【0097】
図17bの指で押下可能なアクチュエーター151a及び151bの実施形態では、外側チューブ18は静止させたままで、焼灼用要素30のバンド34、36が外側チューブ18の先端部46に向かって押されるように、内側ロッド20を前進させる。これによって、焼灼用要素30のバンド34、36が、(図3に示されている)実質的に平坦な形態から(図17bに示されている)実質的に円形の形態に切り換わり、ここで、焼灼用要素30のバンド34、36は互いに円を実質的に形成する(図6にも示されている)。
【0098】
焼灼用要素30がこのように拡張して円形になった状態で、執刀医は、水晶体嚢106に焼灼用要素30のバンド34、36が接触するように器具10を下げる。
【0099】
次に、フットペダル制御スイッチ90(図16b)を用いて低電圧電気パルスを印加し(図18を参照のこと)、バンド34、36が位置決めされている水晶体嚢106において嚢切開の開口部を焼灼するようにバンド34、36を加熱する。
【0100】
図21を参照すると、バンド34、36を次に内側ロッド20の後方移動によって収縮形態に戻す。本発明を用いて熱焼された嚢切開の開口部108は図22の中央に見える。バンド34、36を閉じることによって、嚢切開108のエリアから熱焼されたいずれの余分な嚢及び皮質水晶体物質もバンド34、36内に保持され、この余分な物質の除去が可能となる。
【0101】
図22を参照すると、器具10は眼102から取り出されている。眼の中央に見えるのは、本発明の嚢切開用器具及びシステムを用いて形成された最終的な嚢切開の開口部108である。器具10を取り出した後で、熱焼された嚢切開の開口部108を介して白内障手術の残りを行うことができる。
【0102】
図23及び図24は、電流が電圧の所望の範囲を超えてサージし、バンドの一方又は双方が眼からの器具の取り出しを妨げるように破断している、生じる可能性がある危機的状況に対する解決策を記載している。器具を1ミリメートル〜2ミリメートルの小さい開口部を通して挿入し、次に焼灼用リングを開いてより大きい円形形態にすることを思い起こされたい。その後、焼灼用リングがより大きい形態で破断する場合、それを眼から取り出すのは難しい。
【0103】
電気サージに起因してランダムな破断が各バンドの中央において生じる場合、この破断によって、バンドが、2対のセグメント(図示せず):内側ロッド20の端に接続されたままであるバンドセグメント、及び外側チューブ18の先端部46に接続されたままであるバンドセグメントになる可能性がある。これらのバンドセグメントは互いに緩く接触したままであり、無傷のままであるような見た目を与える。しかし、内側ロッド20を外側チューブ18内に引っ張ることによって焼灼用要素の破断したバンドを後退させようとすると、内側ロッド20の端に接続されたままであるバンドセグメントは、工具の中心線に向かって移動し、後退することができる。しかし、外側チューブ18の先端部46に接続されたままであるバンドセグメントは開いたままであり、後退することができない。
【0104】
この状況を克服するために、焼灼用要素のバンドに所定の脆弱点が設計されている。
【0105】
図23を参照すると、焼灼用要素30の各バンド34、36はそれぞれ先端部46の近くに溝45、43を有する。電流が過剰である場合、溝45、43において破断が生じるが、この理由は、これらの所定の脆弱点において、材料質量の減少が電流に対する抵抗の増大につながり、結果として金属が溝45、43において溶解するためである。
【0106】
図24を参照すると、所定の脆弱点(すなわちバンドの遠位端の溝43、45)において破断が生じた後の焼灼用要素30のバンド34、36が示されている。したがって、この場合、分かるように、バンドは焼灼用要素の近位端において内側ロッド20に接続されたままである。破断したバンド34、36によって形成される反り返った矢印の形状によって、眼102からの破断したバンド34、36の簡単な後退が可能となる。破断したバンド34、36は、水平線に対して平行に器具の中心線に向かって移動することができ、外側チューブ18内へ後退した後は、破断したバンド34、36は眼に作られた最小サイズの切開部を越えて突出することがない。
【0107】
前述した所定の脆弱点の構成は、図示した全ての上述の実施形態に適用することができる。
【0108】
したがって、好ましくは遠位先端部46付近に存在する所定の脆弱点を有する、図23及び図24に示されている改良された設計は、焼灼用要素のバンドにおいて望ましくない破断が生じた後で器具の容易な取り出しを可能にする。
【0109】
システム及び器具は、水晶体に効果的かつ再現可能な嚢開口部を提供し、水晶体超音波乳化吸引術又は同様の処置等の白内障手術の更なる段階、及び白内障物質の除去を可能にする。
【0110】
したがって、本発明の器具は、従来技術の嚢切開用器具と比較した場合に非常に重要な利点を提供する。拡縮可能な焼灼用要素は、嚢切開を迅速かつ効率的に行い、傷付いておらず引き裂けにくい嚢開口部を残すことを可能にする。その上、拡縮可能な焼灼用要素は、例えば5ミリメートル〜7ミリメートルの大きい嚢切開を可能としながらも、およそ1ミリメートル〜2ミリメートルの角膜切開部を介して眼内に入ることが可能である。本発明の嚢切開用器具を用いると、手術手順が簡略化される。
【0111】
本発明を用いる場合、完全な円又は完全な楕円形状の熱焼が生じるため、行うこと及び制御することが難しい、鉗子を用いた水晶体の引き裂きを行う必要がない。
【0112】
本発明をその或る特定の実施形態に関して説明したが、更なる変更形態が現時点で当業者には明らかであろうため、その説明は限定であるものとは意図されないことが理解され、そのような変更形態を添付の特許請求の範囲の範囲内に入るものとして包含することが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10a
図10b
図11a
図11b
図12a
図12b
図12c
図12d
図12e
図13a
図13b
図13c
図14a
図14b
図15a
図15b
図16a
図16b
図17a
図17b
図18
図19a
図19b
図20
図21
図22
図23
図24