特許第6048723号(P6048723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048723
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】モータステータコア及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/04 20060101AFI20161212BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H02K1/04 Z
   H02K15/02 D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-158016(P2012-158016)
(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公開番号】特開2014-23224(P2014-23224A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100086391
【弁理士】
【氏名又は名称】香山 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100110799
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 温道
(72)【発明者】
【氏名】中井 基生
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−119297(JP,A)
【文献】 特開2008−060506(JP,A)
【文献】 特開2000−209792(JP,A)
【文献】 特開2006−265685(JP,A)
【文献】 特開2011−193622(JP,A)
【文献】 特開平05−284697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00−1/16
H02K 1/18−1/26
H02K 1/28−1/34
H02K 15/00−15/02
H02K 15/04−15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性板の表面に絶縁膜と磁性材料膜とが交互に積層されたステータコア片を複数重ね合わせた構造を有するモータステータコアであって、
前記絶縁膜は、エアロゾルデポジション法にて絶縁物粒子を10μm〜50μmの厚さに形成した膜であり、
前記ステータコア片は打ち抜きによって、所定形状に成型され、
複数の前記所定形状に成型されたステータコア片どうしが、ステータコア片の周囲の一部において、溶接により接合されて重ね合わされていることを特徴とするモータステータコア。
【請求項2】
前記磁性材料膜は、エアロゾルデポジション法にて磁性体粒子を10μm〜100μmの厚さに形成した膜である、請求項1に記載のモータステータコア。
【請求項3】
前記絶縁物粒子は、セラミック材料を主成分とする粒子である、請求項1又は請求項2に記載のモータステータコア。
【請求項4】
磁性板の表面に絶縁膜と磁性材料膜とが交互に積層されたステータコア片を複数重ね合わせた構造を有するモータステータコアの製造方法であって、
前記磁性板の表面に、エアロゾルデポジション法にて、絶縁物粒子を10μm〜50μmの厚さに形成する工程と、磁性材料膜を形成する工程とを交互に行ってステータコア片を作製し、
前記ステータコア片を打ち抜きによって、所定形状に成型し、
前記所定形状に成型されたステータコア片の周囲の一部においてレーザ溶接により接合して重ね合わせることを特徴とするモータステータコアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータステータコア及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシレス直流モータ等の各種モータに用いられるステータコアは、渦電流の発生を抑えるため、電磁鋼板又はフェライト板等の薄い磁性板を積層して作製されている。そして、作製されたステータコアのティース部に巻線を巻きつけて固定子を形成し、さらに回転子を支軸に組み付けてモータを構成している。
特許文献1に開示されたモータ用コアは、磁性板の表面にシリカ・コロイド粒子を含むリン酸塩系の溶液をコーティングし、焼き付けした後、所定形状に打ち抜いて成型し、成型された各金属板を積層して製作されている。このモータ用コアによれば、積層される金属板どうしが、コーティングされ焼き固められた絶縁層で絶縁される。この構成によって、金属板と金属板との間の渦電流の漏れを抑え、その結果コアの鉄損を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-41778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術によれば、コートされた絶縁層の厚みを無視することはできず、このため、正味の金属板の厚みが減少してしまい、十分な磁束を発生させることができず、モータの高効率化が図れないという問題がある。
また絶縁層の耐衝撃性が十分でないために、モータの耐用期間も短縮してしまう。
またモータの回転時の固有振動のために、モータ用コアを構成する各金属板の間で芯ずれが起きることがあり、この芯ずれを防止するために、図5に示すように、金属板間を溶接しているが、この溶接部W′の長さ(積層方向に沿った長さ)が、積層されたモータ用コア片の最下層から最上層までにわたり、溶接に手間がかかるという問題もある。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み、磁束を効率よく発生させることができ、耐用期間が長く、小型で軽量なモータステータコアを提供するものである。また本発明はこのモータステータコアの簡単な製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータステータコアは、磁性板の表面に絶縁膜と磁性材料膜とが交互に積層されたステータコア片を複数重ね合わせた構造を有し、前記絶縁膜は、エアロゾルデポジション法にて絶縁物粒子を10μm〜50μmの厚さに形成した膜であり、前記ステータコア片は打ち抜きによって、所定形状に成型され、複数の前記所定形状に成型されたステータコア片どうしが、ステータコア片の周囲の一部において、溶接により接合されて重ね合わされているものである。
【0007】
この構成であれば、エアロゾルデポジション法を採用することにより、塗付法や重ね合わせシートなどで形成する場合と比べて、薄くて、緻密で、強度・密着力の高い絶縁膜を形成することができる。
このため、所定形状に打ち抜いて成型する時に絶縁膜にクラックなどを生じさせることなく成型することができる。そして、モータステータコアとしての必要な厚さを得るために、打ち抜かれたこれらのモータステータコア片を複数枚積層し、溶接で接合するようにしているが、モータステータコア片には、エアロゾルデポジション法にて薄くて緻密で強度・密着力の高い絶縁膜が形成されていることから、この溶接時においても、溶接の対象となる領域は非常に小さい範囲で済む。
【0008】
またエアロゾルデポジション法を採用することにより、前記磁性材料膜として、磁性体粒子を10μm〜100μmの厚さに形成することができる。
エアロゾルデポジション法で用いる絶縁物粒子は、セラミック材料を主成分とする粒子であることが好ましい。
また本発明のモータステータコアの製造方法は、前述したモータステータコアに係る本発明と、実質同一発明に属する製造方法の発明である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来より薄肉のモータステータコア片を形成できるので、モータの鉄損を低減でき、高速回転化が可能になるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電磁鋼板又はフェライト板の表面に絶縁膜と磁性材料膜とを交互に積層して、モータステータコアを製造する方法を説明するための工程図である。
図2】各磁性板10の表面に絶縁膜11、磁性体膜12、絶縁膜11を積層したモータステータコア片13a,13bどうしを重ね合わせて、溶接して固着させた状態を示す斜視図である。
図3】4つのモータステータコア片131〜134を組み合わせて作製したモータステータコア1を示す正面図である。
図4】絶縁物粒子としてセラミックス粒子を採用する場合の、モータステータコア1の製造例を説明するための工程図である。
図5】モータ用コアを構成する各金属板の間で起こる芯ずれを防止するために、金属板間を溶接した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、ベースとなる電磁鋼板又はフェライト板(以下「磁性板10」という)の表面に絶縁膜と磁性材料膜とを交互に積層して、モータステータコア片13を製造する方法を説明するための工程図である。
まず図1(a)に示す磁性板10の表面に、図1(b)のように、各モータステータコア片13の形を繰り抜いたマスクMを当て、エアロゾルデポジション法にて、ノズルNを通して絶縁物粒子を、磁性板10の表面に吹き付ける。
【0012】
エアロゾルデポジション法とは、粒子を基板に吹き付けることにより、機械的な衝撃力によって基板に、緻密、高強度、高密着力の被膜を形成する方法である。粒子をガスと混合し、煙草の煙のようなエアロゾル状態にし、チャンバー内でノズルを通して基板に噴射して被膜を形成する。粒子は基板上に吹き付けられ衝突した時、微結晶粒子に破砕・変形され、基板上に緻密な膜が形成される。
【0013】
このようにして絶縁物粒子を吹き付けて磁性板10に絶縁膜11を形成した後マスクMを除去し、図1(c)に示すように、エアロゾルデポジション法にて、磁性体粒子を表面に吹き付ける。これにより、磁性体粒子は、吹き付けられ衝突した時、微粒子に破砕・変形され、緻密な磁性体膜12が形成される。
さらに磁性体膜12の上からマスクMを当てて、図1(d)に示すように、エアロゾルデポジション法にて、ノズルNを通して絶縁物粒子を磁性板10の表面に吹き付ける。このようにして、積層シート16を作製し、最後に図1(e)に示すように、積層シート16を、プレス機械等によって打ち抜いて、モータステータコア片13を製造する。
【0014】
なお、図1では、磁性板10の表面に絶縁膜11、磁性体膜12、絶縁膜11を積層した例を示したが、積層回数はこれに限られるものではない。必要であれば、さらに絶縁膜11を形成する工程と磁性体膜12を形成する工程とを所定回数繰り返し行ってもよい。
図2は、それぞれ磁性板10の表面に絶縁膜11、磁性体膜12、絶縁膜11を積層したモータステータコア片13a,13bどうしを重ね合わせて、溶接して固着させた状態を示す斜視図である。図2右下の拡大図に示すように、一方のモータステータコア片13aの絶縁膜11を、他方のモータステータコア片13bの磁性板10に対向させて重ね合わせ、モータステータコア片13の内周の、重ね合わせた個所W1をレーザ溶接して、一枚のモータステータコア片13としている。溶接個所はモータステータコア片13の周囲に位置していればよく、その位置、数は限定されない。例えば、図2に示すように、モータステータコア片13の外周上の所定個所W2、ティース部14の側片上の所定個所W3,W4をレーザ溶接しても良い。
【0015】
このようにモータステータコア片13aの絶縁膜11と、他方のモータステータコア片13bの磁性板10とを、複数個所において固着するだけで良いので、積層方向に沿った溶接の範囲は極めて短くて済む。
図3は、4つのモータステータコア片131〜134を組み合わせて作製したモータステータコア1を示す正面図である。モータステータコア1は、図3に示すように、モータステータコア1のティース部141〜144にコイル線Cを巻いてコイルを形成し、各モータステータコア片131〜134の端面どうしを接合して、回転体形状としたものである。各モータステータコア片131〜134の端面は互いに90度の角度を形成し、4つのモータステータコア片131〜134を組み合わせて接合することによって、回転体形状のモータステータコア1が製作される。モータステータコア1の中心部には軸穴が開口され、ここに磁石を含むロータ15が配置される。
【0016】
各モータステータコア片131〜134を組み合わせて接合するには、一方のモータステータコア片、たとえば131の端面と他方のモータステータコア片、たとえば132の端面とを対向させて重ね合わせ、周囲部をレーザ溶接している。溶接個所はモータステータコア片13の端面における外周上の複数の個所である。なおレーザ溶接をしないで、単に機械的に接合するだけの実施も可能である。
【0017】
このようにして製作されたモータステータコア1をケースに収容し、ロータ15を軸受けに通し、コイル線Cの端末を外部端子若しくは起動回路基板に接続することにより、本発明のモータステータコア1を用いたモータが完成する。
次に、絶縁物粒子としてセラミックス粒子を採用する場合の、モータステータコア1の製造例について述べる。
【0018】
図4を参照して、厚さ50〜100μmの磁性板10をエアロゾルデポジション・チャンバ内に設置する(図4(a))。磁性板10としては、ケイ素鋼板又はフェライト板を採用することができる。ケイ素鋼板は、鉄にケイ素(Si)を1〜7重量%含む組成を有する鋼板である。フェライト板は、たとえばM2+OFe23(MはFe,Co,Zn,Baから選ばれる1種又はそれ以上の元素)の組成を有するフェライト板である。
【0019】
エアロゾルデポジション法により、マスクM(図示せず)を通してAl23,AlN,Si34,SiO2などのセラミックス粒子を吹き付ける(図4(b))。セラミックス粒子の粒径は1.0〜50μm、温度は0〜200℃である。吹き付け圧は0.1MPa〜100Pa、粉体の衝突速度は100〜800m/secである。形成されるセラミックス絶縁膜11の厚さは10μm〜50μmという範囲の中から選ばれる所定の厚さになるように、吹き付ける時間、ノズルと磁性板10との距離、吹き付け圧、衝突速度などを調節する。セラミックス絶縁膜11の厚さが10μm未満であれば、強度が不足するとともに絶縁性が低下するおそれがある。50μmを超えてしまうと、磁束量が低下するおそれがある。
【0020】
次に、マスクMを取り外して、前述した磁性板10と同様の成分からなる粒子を、エアロゾルデポジション法により吹き付ける(図4(c))。吹き付けの条件は、前述したセラミックス粒子と同様であり、粒径1.0〜50μm、温度0〜200℃、吹き付け圧0.1MPa〜100Pa、粉体の衝突速度100〜800m/secである。形成される磁性体膜12の厚さが10μm〜100μmという範囲の中から選ばれる所定の厚さになるように、吹き付ける時間、ノズルNと磁性板10との距離、吹き付け圧、衝突速度などを調節する。磁性体膜12の厚さが10μm未満であれば、強度が不足し打ち抜き時に割れ部分が発生するというおそれがある。100μmを超えてしまうと、鉄損が増え効率が低下する恐れがある。
【0021】
さらに、前述したセラミックス粒子の吹き付けと同様の条件で、マスクM(図示せず)を通して、エアロゾルデポジション法により、Al23,AlN,Si34,SiO2などのセラミックス粒子を吹き付ける(図4(d))。このようにして積層シート16を完成する。
最後に、プレス機械によって、積層シート16をモータステータコア片13の形状に打ち抜く(図4(e))。
【0022】
以上のように、磁性板10の表面にエアロゾルデポジション法にて、絶縁物粒子を10μm〜50μmの厚さに形成する工程と、磁性板10と同様の成分からなる粒子を10μm〜100μmの厚さに形成する工程とを交互に行って積層シート16を作製するようにしたので、絶縁膜11を、塗付法や重ね合わせシートなどで形成する場合と比べて、薄くて、緻密で、強度・密着力の高い絶縁膜11や磁性体膜12を形成することができる。
【0023】
このプレス機で打ち抜きの対象となる積層シート16は比較的薄いものであるので、打ち抜き時に絶縁膜11にクラックなどを生じさせることなく、打ち抜くことができる。そして、モータステータコア片13の必要な厚さを得るために、打ち抜かれたこれらのモータステータコア片13を複数枚積層し、レーザ溶接で接合するようにしているが、モータステータコア片13には、薄くて緻密で強度・密着力の高い絶縁膜11や磁性体膜12が形成されていることから、このレーザ溶接時においても、溶接の対象となる領域は非常に小さい範囲で済む。
【0024】
以上に説明した本発明のモータステータコアの形状は、図1〜3に示すものには限られず、ステータのコアとして用いることができる限り、任意の形状とすることができる。以上の実施形態では4相モータを示したが、例えば、ステータの分割数を変えることにより、3相モータ、5相以上のモータにも応用することができる。またモータステータコア片13の積層枚数、モータステータコア1を構成するモータステータコア片13の分割数も前述した各本数には限られない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0025】
1…モータステータコア、10…磁性板、11…絶縁膜、12…磁性体膜、13…モータステータコア片、16…積層シート
図1
図2
図3
図4
図5