(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048733
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】ブラインドリベット及びそれを使用した封止構造
(51)【国際特許分類】
F16B 19/10 20060101AFI20161212BHJP
F16B 13/06 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
F16B19/10 F
F16B13/06 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-240006(P2012-240006)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-178837(P2015-178837A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2015年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025243
【氏名又は名称】ポップリベット・ファスナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100103849
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 誠
(72)【発明者】
【氏名】牧野 敬範
(72)【発明者】
【氏名】迫田 寛司
【審査官】
保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−145167(JP,A)
【文献】
特開2004−340334(JP,A)
【文献】
特公昭47−039837(JP,B1)
【文献】
実開昭58−167306(JP,U)
【文献】
特開平10−141342(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第738741(GB,A)
【文献】
特表2000−505526(JP,A)
【文献】
特表2010−535987(JP,A)
【文献】
特許第4451989(JP,B2)
【文献】
米国特許第3136203(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B13/00−13/14
17/00−19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する基体に締結するためのブラインドリベットであって、
厚みのある円板状の大径のフランジと、前記フランジに隣接し前記フランジから距離が離れると外径が小さくなるテーパ部と、前記テーパ部から軸方向に延びるスリーブとを有し、前記フランジの表面から前記スリーブの底部に有底孔が形成されたリベット本体と、 頭部と、前記頭部より小さい外径で前記頭部から延びる細長い軸部とを有するマンドレルと、を備え、
前記マンドレルの前記頭部は、前記リベット本体の前記有底孔の底部に配置され、前記軸部は、前記リベット本体の前記フランジの上面から延び出るように組み合わされ、前記リベット本体の前記スリーブには、前記マンドレルの前記頭部に隣接する位置に前記頭部の外径より小さい内径の肉厚部が形成され、前記頭部は、前記肉厚部により、前記リベット本体の前記有底孔から抜き出すことができないように保持されていて、
前記リベット本体の中心軸を含む断面において、前記テーパ部のテーパ面と、前記ブラインドリベットの前記中心軸と直交する直線との角度は15〜35°であり、
前記リベット本体の前記フランジの厚さは、前記スリーブの外径の15〜75%であり、
変形した前記テーパ部のテーパ面が、前記開口部の上縁部と線状に当接していることを特徴とするブラインドリベット。
【請求項2】
請求項1に記載のブラインドリベットを含む封止構造であって、
前記マンドレルの前記頭部により、前記リベット本体の前記スリーブの材料が外方へ押されて拡径した前記リベット本体の拡径部と、前記テーパ部との間に前記基体が挟まれて前記基体に締結されている封止構造。
【請求項3】
請求項2に記載の封止構造であって、前記テーパ部と、前記基体の上面の前記開口部の縁部との間に、線状のシール部が形成されている封止構造。
【請求項4】
請求項3に記載の封止構造であって、前記基体に締結された状態において、前記マンドレルの前記軸部の小径の破断した破断可能部から前記頭部までの部分は締結部に残留している封止構造。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れか1項に記載の封止構造であって、
前記開口部の上縁部がエッジ状に形成され、前記ブラインドリベットが前記開口部に締結された状態において、変形した前記テーパ部と前記開口部の前記上縁部とが線状に接触して前記開口部が封止されている封止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラインドリベットに関する。特に、ブラインドリベットのフランジの裏側にテーパ部を設け、取付け応力を高めて、ブラインドリベット単体で十分な水密性を得ることが出来るブラインドリベット及びブラインドリベットを使用した封止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スリーブと、スリーブの一端のフランジとを有する中空の金属製リベット本体と、頭部と、頭部から延びる軸部とを有する金属製マンドレルとを備えるブラインドリベットは良く知られている。ブラインドリベットは、複数のパネルを一方の側からだけの作業で連結できるという利点がある。
【0003】
用途により、ブラインドリベットを締結した後に、リベットと、パネル等の基体(被取付部材)との間に、十分なシール性と、高い水密性を求められる場合がある。
ブラインドリベットには、2種類ある。1つは、締結するときリベット本体を変形させるためのマンドレルの頭部が、リベット本体の中に収められ、基体に締結した後にマンドレルの残留頭部が作業側と反対側のブラインド側に露出しないタイプ(シールドタイプ)である。他の1つは、マンドレルの頭部がリベットの外に出ていて、基体に締結した後にマンドレルの残留頭部がブラインド側に露出するタイプ(オープンタイプ)である。
【0004】
オープンタイプのブラインドリベットは、締結後にブラインド側にリベット本体と、マンドレルの残留頭部が露出するので、リベット本体と、マンドレルの残留頭部との間から液漏れが生じやすく、水密性が十分ではない。
シールドタイプのブラインドリベットは、締結後にブラインド側にリベット本体のみが露出するので、バルブドタイプと比較して液漏れは生じにくく、水密性は優れている。
【0005】
特許文献1は、密封式電池の開口部を封止するシールドタイプのブラインドリベットと樹脂性スリーブとからなる封止具を開示する。封止具は、軸部と、大径部とを有する金属芯と、有底でつば付きの金属製筒状部材と、開口側から金属製筒状部材の一部が挿入された有底でつば付きの樹脂性スリーブとを備える。金属芯を金属製筒状部材から引き抜いていくと、大径部により金属製筒状部材は径方向に押し広がられて変形する。樹脂性スリーブは、金属製筒状部材の変形により径方向に押し広げられて密封式電池の開口部を封止する。
【0006】
特許文献1の封止具は、樹脂性スリーブと電池容器との密着が保たれていれば、電池の密封を保持することが出来る。しかし、ブラインドリベット以外に有底の樹脂性スリーブを用いるので、部品点数が多くなり、コストが高くなる。
【0007】
特許文献2は、マンドレルとリベットとからなるシールドタイプのブラインドリベットを開示する。マンドレルは、丸棒状で一端部に径が大きい頭部を有する。リベットは、円筒状で一端が閉じられたリベット本体(スリーブ)と、リベット本体の他端に有るフランジとを有する。リベットは、頭部を閉じられた一端側に位置させて頭部を封止することにより、マンドレルを抜き出し不能に収容する。リベット本体は、フランジとの連続部分から一端側に向かって外形が徐々に小さくなるテーパ部を有する。
【0008】
特許文献2のブラインドリベットは、テーパ部があるので、リベット本体と板材のリベット用孔との密着面積が大きくなり、高い水密性を得ることが出来るとしている。
しかし、このテーパ部はリベット本体に小さい角度で設けられていて、板材のリベット用孔に密着させることを想定しているので、板材のリベット用孔の内径のばらつきが大きいと、特許文献2のブラインドリベットは、板材のリベット用孔に密着しない部分が生じやすく、必ずしも高い水密性を得ることは出来ない。
【0009】
特許文献3は、頭部と、頭部から延びるシャンクとを有し軸孔が形成された外側部分と、ステム頭部と、軸孔内に配置されるステムとを有する内側部分とからなるブラインドリベットを開示する。シャンクは、テーパ付の締りばめシャンク部を有する。
特許文献3のブラインドリベットは、シャンクがワークピースの孔に確実に係合し、頭部下の不十分な孔充填の問題を解決するとしている。
【0010】
しかし、特許文献3のブラインドリベットは、オープンタイプであり、マンドレルの残留頭部がブラインド側に露出するので、リベット本体と、マンドレルの残留頭部との間から液漏れが生じやすく、水密性が十分ではないというオープンタイプに固有の問題がある。
【0011】
そのため、ワッシャ、Oリング等を使用せず、ブラインドリベット単体で十分なシール性が得られ、高い水密性が得られるブラインドリベットが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2012−9288号公報
【特許文献2】特開2012−145167号公報
【特許文献3】特表2002−529663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、ブラインドリベット単体で十分なシール性を得られるブラインドリベットを提供することである。
本発明の別の目的は、このブラインドリベットを使用した封止構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するため、本発明では、ブラインドリベットのリベット本体のフランジの裏面にテーパを付け、基体の開口部の縁部とフランジの裏面との接触面積を小さくし、小さい接触部分の接触応力を高くし、確実にシールするものである。
【0015】
本発明の1態様は、開口部を有する基体に締結するためのブラインドリベットであって、
厚みのある円板状の大径のフランジと、前記フランジに隣接し前記フランジから距離が離れると外径が小さくなるテーパ部と、前記テーパ部から軸方向に延びるスリーブとを有し、前記フランジの表面から前記スリーブの底部に有底孔が形成されたリベット本体と、
頭部と、前記頭部より小さい外径で前記頭部から延びる細長い軸部とを有するマンドレルと、を備え、
前記マンドレルの前記頭部は、前記リベット本体の前記有底孔の底部に配置され、前記軸部は、前記リベット本体の前記フランジの上面から延び出るように組み合わされ、前記リベット本体の前記スリーブには、前記マンドレルの前記頭部に隣接する位置に前記頭部の外径より小さい内径の肉厚部が形成され、前記頭部は、前記肉厚部により、前記リベット本体の前記有底孔から抜き出すことができないように保持されていることを特徴とするブラインドリベットである。
【0016】
このブラインドリベットは、シールドタイプのブラインドリベットで、シール性が良い。また、リベット本体のフランジに隣接してテーパ部があると、テーパ部と、基体の開口部の縁部とが、確実に接触することが出来る。厚みのある円板状のフランジは、剛性を有し変形しにくい。
【0017】
前記リベット本体の中心軸を含む断面において、前記テーパ部のテーパ面と、前記ブラインドリベットの前記中心軸と直交する直線との角度は3〜80°である。
前記角度は15〜35°であることが好ましい。
【0018】
テーパ部がこの角度で傾斜していると、リベット本体のテーパ部と、基体の開口部の縁部とが、適切な角度で接し、狭い適切な幅で接触することが出来る。
【0019】
前記リベット本体の前記フランジの厚さは、前記スリーブの外径の15〜75%であることが好ましい。
フランジが十分厚いと十分な剛性を有し、フランジと隣接するテーパ部との全体の変形が小さく、確実に狭い適切な幅でシールされる。
【0020】
前記リベット本体の前記フランジを保持して、前記マンドレルの前記軸部を引き抜くとき、前記マンドレルの前記頭部により、前記リベット本体の前記スリーブの材料が外方へ押されて拡径し、拡径部が形成され、
前記リベット本体の前記拡径部と、前記テーパ部との間に前記基体を挟んで前記基体に締結されることが好ましい。
【0021】
前記テーパ部と、前記基体の上面の前記開口部の縁部との間に、線状のシール部が形成されることが好ましい。
リベット本体のテーパ部と、基体の開口部の縁部とが、狭い幅で確実にメタルシールされる。
【0022】
前記基体に締結するとき、前記マンドレルは、前記軸部の小径の破断可能部で破断し、前記破断可能部から前記頭部までの部分は締結部に残留することが好ましい。
【0023】
本発明の別の態様は、基体の開口部を封止する封止構造であって、
前記開口部の上縁部がエッジ状に形成され、前記ブラインドリベットが前記開口部に締結された状態において、前記テーパ部と前記開口部の前記上縁部とが接触して前記開口部が封止される封止構造である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ブラインドリベット単体で十分なシール性が得られ、高い水密性が得られるブラインドリベットを得ることができる。
また、このブラインドリベットを使用した封止構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1の実施形態のブラインドリベットの一部を断面とした正面図である。
【
図2】
図1のブラインドリベットを基体の開口部に挿入した状態を示す一部を断面とした正面図である。
【
図3】
図1のブラインドリベットを基体に締結した状態の一部を断面とした正面図である。
【
図4】従来のワッシャ付ブラインドリベットを基体に締結した状態の一部を断面とした正面図である。
【
図5】従来のテーパのないブラインドリベットを基体に締結した状態の一部を断面とした正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態によるブラインドリベットについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態のブラインドリベット1の一部を断面とした正面図である。本発明の説明では、
図1の上方を上方向、下方を下方向という。ブラインドリベット1は、リベット本体10と、マンドレル30とを備える。リベット本体10の有底孔18にマンドレル30の頭部31と軸部の一部が挿入され、固定されている。
【0027】
(マンドレル)
マンドレル30は、一端部に頭部31を有する。頭部31は、大きい外径の円板状の形状である。マンドレル30は、頭部31に続く細長い軸部を有する。軸部は、軸基部32と、破断可能部33と、小径部34と、円柱部35と、把持部36とを有する。軸部の、頭部31に隣接する部分は、頭部31より外径が小さい円柱状の軸基部32である。軸基部32に隣接して、軸基部32より外径が小さい破断可能部33がある。破断可能部33は、ブラインドリベット1を組み立てた状態で、リベット本体10の有底孔18に収容される部分にある。締結機械でマンドレル30の軸部を引き抜くとき、ある引抜力を超えると、マンドレル30は破断可能部33で破断するようになっている。
【0028】
破断可能部33に隣接して、破断可能部33よりは外径が大きい小径部34がある。小径部34の外径は軸基部32の外径とほぼ等しい。小径部34に隣接して、小径部34より外径が大きく且つ頭部31より外径が小さく長い円柱状の円柱部35がある。円柱部35に隣接して、円柱部35とほぼ同じ外径の把持部36がある。把持部36には、円周方向に一定間隔で係止溝が多数形成されていて、締結機械の把持部材で把持するときスリップしないようになっている。
マンドレル30の材質はスチール、アルミ、ステンレス等であり、リベット本体10より硬質の材料で形成されている。
【0029】
(リベット本体)
リベット本体10は全体として円筒形であり、一端部のフランジ16とテーパ部15とスリーブとを有する。スリーブの他端部は閉じられている。スリーブは、底部11と、薄肉部12と、厚肉部13と、円筒部14とを有する。他端部のスリーブの端部は、底部11であり、底部11の下面は平らな円形の面である。底部11に隣接して、マンドレル30の頭部31を取り囲む薄肉部12がある。薄肉部12に隣接して、マンドレル30の軸基部32と破断可能部33と小径部34とを取り囲む厚肉の厚肉部13がある。厚肉部13に隣接して、マンドレル30の円柱部35の一部を取り囲む円筒部14がある。スリーブ(薄肉部12、厚肉部13、円筒部14の部分)の外径は、基体51の開口部53の内径とほぼ等しいか、少し小さく、開口部53に挿入可能な大きさである。
なお、基体51の開口部53は、一般に断面が円形であり、封止する必要のある孔である。開口部53の上縁部は、エッジ状に形成され、テーパ部は形成されていない。
【0030】
円筒部14に隣接して、円錐台形のテーパ部15がある。ブラインドリベット1の底部11を先頭にして基体51の開口部53に挿入していくと、テーパ部15の円筒部14との境界部の近くが開口部53の縁部に当接して止まるようになっている。円筒部14とテーパ部15との間は、曲線で連続せず、急激に角度が変化する。テーパ部15は、円筒部14からフランジ16に向かって外径が大きくなるように傾斜している。
【0031】
テーパ部15は、リベット本体10の中心軸と直交する面となす角度αは、3〜80°である。即ち、リベット本体10の中心軸を含む断面において、テーパ部15のテーパ面の直線と、リベット本体10の中心軸と直交する直線とが、3〜80°で交差する(テーパ面の直線と、リベット本体10の中心軸との角度(90°‐α)は、20〜87°)。この角度αは15〜35°が好ましい。
テーパ部15に隣接して、大径のフランジ16がある。フランジ16の上面は平面である。フランジ16は、厚みのある円板状であり、上面からテーパ部15との境界部まで外径は一定である。フランジ16は、十分な剛性を有している。フランジ16の厚さTfは、スリーブの外径Dsの15〜75%である。ここに、寸法TfとDsとは、
図1に示すようにリベット本体10とマンドレル30とを組付けた状態での寸法とする。
リベット本体10の材質はスチール、アルミ、ステンレス、銅等であり、マンドレル30より軟質の材料で形成されている。
【0032】
リベット本体10の内側には、フランジ16の上面から軸方向下方に延びる有底孔18が形成されている。有底孔18には、底部11の上面にマンドレル30の頭部31が隣接して、軸基部32と、破断可能部33と、小径部34の一部とが収容されている。マンドレル30の頭部31は、リベット本体10の厚肉部13により、上縁部を押えられていて、有底孔18から抜けないようになっている。
【0033】
マンドレル30を挿入する前のリベット本体10の有底孔18の内径は、フランジ16の端面から有底孔18の底部まで、マンドレル30の頭部31の外径と等しいかやや大きい均一な内径であり、有底孔18に頭部31を先頭にしてマンドレル30を挿入することが出来る。マンドレル30を挿入する前のリベット本体10のスリーブ(薄肉部12、厚肉部13、円筒部14になる部分)の外径は、均一である。
【0034】
(ブラインドリベット)
図1に示すリベット本体10とマンドレル30とが組み合わされたブラインドリベットにするには、リベット本体10の有底孔18に、頭部31を先頭にしてマンドレル30を挿入する。マンドレル30の頭部31がリベット本体10の底部11の内面に当接する位置まで挿入する。この状態では、有底孔18の内周面と頭部31とは密着するか小さい隙間があいている。有底孔18の内周面と、マンドレル30の軸基部32、破断可能部33、小径部34との間には、隙間があいている。
【0035】
有底孔18にマンドレル30を挿入した後に、ローリング加工、絞り加工などにより、底部11からテーパ部15の下までのスリーブ部分を一定の外径になるように細くし、有底孔18の内周面と、マンドレル30の軸基部32、破断可能部33、小径部34との間の隙間にスリーブの材料を移動させる。
図1に示すように、有底孔18の内周面と、マンドレル30の軸基部32、破断可能部33、小径部34との間の隙間がなくなる。リベット本体10の厚肉部13と、円筒部14との形状が成形される。
こうして、頭部31の上面に厚肉部13が接し、頭部31は有底孔18から抜けることが出来なくなる。
【0036】
図2は、
図1のブラインドリベット1を基体51の開口部53に挿入した状態を示す一部を断面とした正面図である。
図2の下側がブラインド側であり、上側からブラインドリベット1を取り付ける作業をする。
基体51は、1枚であるが、基体51を複数枚とすることも出来、その場合は、各基体51の開口部53の位置が合うように重ね合わされる。
リベット本体10とマンドレル30とを組み合わせた
図1のブラインドリベット1を基体51の開口部53に
図2の上側から挿入していくと、リベット本体10のテーパ部15が基体51の開口部53の周りの表面に当接して、
図2の状態になる。
【0037】
(締結動作)
図2、3を参照して、本発明の実施形態のブラインドリベット1を、基体51に締結する動作について説明する。
図2の状態から、リベット本体10のフランジ16の上面を支持して、マンドレル30の把持部36を締結機械の把持部材で把持して上方に引き抜いていく。マンドレル30の頭部31が、リベット本体10の厚肉部13を内側から押し広げながら、上方へ移動していく。頭部31は、厚肉部13の上側に隣接する円筒部14も内側から押し広げながら、上方へ移動していく。厚肉部13と円筒部14との外径は、頭部31により押し広げられて大きくなり、厚肉部13と円筒部14との長さは短くなる。厚肉部13と円筒部14とは、変形して拡径部21を形成する。拡径部21の外径は開口部53の内径より大きくなり、内径はほぼ頭部31の外径と等しくなる。
【0038】
基体51の開口部53の内側にある円筒部14の部分は、開口部53により外径を規制されて、膨径することが出来ない。マンドレル30の頭部31が、基体51に近づくと、頭部31は円筒部14を押し広げることができず、それ以上上昇することが出来なくなる。
更に、マンドレル30の把持部36を上方へ引くと、マンドレル30は破断可能部33で破断する。頭部31と軸基部32とはリベット本体10内に残り、円柱部35と把持部36とは、リベット本体10の有底孔18から引き抜かれる。こうして、基体51は、リベット本体10の拡径部21とテーパ部15との間に挟まれて、ブラインドリベット1が締結される。
【0039】
テーパ部15の下端部と基体51の上面の開口部53の内縁とが、狭い線状に高い応力でシールされる。基体51の開口部53の上縁部はエッジ状に形成され、テーパは形成されていない。そのため、開口部53の上縁部と、リベット本体10のテーパ部15とが、広い幅で接触することはない。
また、拡径部21の上端部と、基体51の下面の開口部52の内縁とが、幅の狭い線状に高い応力でシールされる。リベット本体10の金属と、基体51の金属とが、密着してシールされる。
【0040】
本発明の実施形態によれば、リベット本体10のテーパ部15が、基体51の開口部53の内縁に接触する面積が小さく、強い応力で接触する。そのため、テーパ部15又は開口部53の内縁又は双方が変形して密着、十分なシール性と、高い水密性を得ることが出来る。
【0041】
また、本発明の実施形態によるブラインドリベットと、基体51の開口部53とにより、基体51の開口部53を封止する封止構造が形成される。この封止構造では、開口部53の上縁部がエッジ状に形成され、ブラインドリベットが開口部53に締結された状態において、テーパ部15と開口部53の上縁部とが接触して開口部53が封止される。
【0042】
(比較例1)
図4は、樹脂製のワッシャ70を使用し、従来のフランジの底面が平面のリベット本体60を、基体51に締結した後の一部を断面とする平面図である。マンドレル30は本発明の実施形態のマンドレル30と同じであり、同じ参照番号で示す。基体51は本発明の実施形態で使用した基体51と同じであり、同じ参照番号で示す。比較例1のリベット本体60は、底部61と、薄肉部62と、拡径部67と、開口部53内の円筒部64と、フランジ66とを有する。
【0043】
リベット本体60の拡径部67とワッシャ70との間に、基体51が挟まれて、ブラインドリベット6が基体51に締結される。
比較例1のブラインドリベット6を締結した後は、フランジ66の裏面とワッシャ70の上面との間、ワッシャ70の下面と基体51との間等、接触する面が広く、部材間の接触圧力が低く、十分なシール性を得ることが出来ない。また、ブラインドリベット6以外に樹脂製のワッシャ70が必要で、コストが高くなる。
【0044】
(比較例2)
図5は、従来のフランジの底面が平面で上面が球面のリベット本体60'を、基体51に締結した場合の一部を断面とする平面図である。マンドレル30は本発明の実施形態のマンドレル30と同じであり、同じ参照番号で示す。基体51は本発明の実施形態で使用した基体51と同じであり、同じ参照番号で示す。リベット本体60'は、底部61'と、薄肉部62'と、拡径部67'と、開口部53内の円筒部64'と、フランジ66'とを有する。
【0045】
基体51は、リベット本体60'の拡径部67'とフランジ66'との間に挟まれて、ブラインドリベット6'が締結される。
比較例2のブラインドリベット6'を締結した後は、フランジ66'の裏面と、基体51との間等、接触する面が広く、部材間の接触圧力が低く、十分なシール性を得ることが出来ない。
【0046】
比較例1、2と比較して、本発明の実施形態によるブラインドリベットは、フランジ下面にテーパが有るので、小さい面積で高い応力で基体の開口部の縁部に接触する。そのため、ブラインドリベット単体で十分なシール性が得られ、高い水密性が得られるブラインドリベットを得ることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ブラインドリベット
6 ブラインドリベット
10 リベット本体
11 底部
12 薄肉部
13 厚肉部
14 円筒部
15 テーパ部
16 フランジ
18 有底孔
21 拡径部
30 マンドレル
31 頭部
32 軸基部
33 破断可能部
34 小径部
35 円柱部
36 把持部
51 基体
53 開口部
60 リベット本体
61 底部
66 頭部
67 拡径部
70 ワッシャ