特許第6048739号(P6048739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048739
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】風呂装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   F24H1/00 602M
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-2360(P2013-2360)
(22)【出願日】2013年1月10日
(65)【公開番号】特開2014-134341(P2014-134341A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】朝野 公明
(72)【発明者】
【氏名】跡部 嘉史
(72)【発明者】
【氏名】井上 晴喜
(72)【発明者】
【氏名】北野 能之
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−193961(JP,A)
【文献】 特開2001−215054(JP,A)
【文献】 特開平03−079950(JP,A)
【文献】 特開平05−157349(JP,A)
【文献】 特開2006−010146(JP,A)
【文献】 特開2003−042534(JP,A)
【文献】 特開平9−250809(JP,A)
【文献】 特開平5−264101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
F24H 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽内の水位を検知可能な水位検知手段を備え、
前記水位検知手段が検知した水位が予め設定された設定水位を下回り、前記設定水位に基づいて決定される補水開始水位を下回ったことを条件として、前記浴槽に湯水を供給する補水運転を実施する風呂装置であって、
補水運転開始時の浴槽内の水位を基準水位として取得し、取得した基準水位と、記憶しておいた前回の補水運転開始時の基準水位とを比較するものであり、
比較した基準水位の差が所定値を下回る状況が複数回発生したことを条件として、現在の前記浴槽内の水位が補水開始水位を下回らないように前記設定水位を変更することを特徴とする風呂装置。
【請求項2】
浴槽内の水位を検知可能な水位検知手段を備え、
前記水位検知手段が検知した水位が予め設定された設定水位を下回り、前記設定水位に基づいて決定される補水開始水位を下回ったことを条件として、前記浴槽に湯水を供給する補水運転を実施する風呂装置であって、
補水運転開始時に、前記浴槽内の水位を前記設定水位とするために必要な不足湯量を算出し、算出した不足湯量と、記憶しておいた前回の補水運転開始時の不足湯量とを比較するものであり、
比較した不足湯量の差が所定値を下回る状況が複数回発生したことを条件として、現在の前記浴槽内の水位が補水開始水位を下回らないように前記設定水位を変更することを特徴とする風呂装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定した水位となるように自動で湯張りが可能な風呂装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂自動湯張り機能を備えた風呂装置が広く知られている。自動湯張り機能とは、使用者がスイッチ操作等を実施するだけで、浴槽内の湯水が設定水位となるように、浴槽に設定温度の湯水を自動供給する機能である。
【0003】
この種の風呂装置には、単に空の浴槽に湯張りするものだけでなく、一旦浴槽に湯張りした後に浴槽の水位が低下したとき、自動で補水を行う補水機能を備えたものがある。つまり、この種の風呂装置では、使用者がかけ湯等をすることによって浴槽の湯水が減少したとき、再び設定水位となるように設定温度の湯水を自動で追加している。このことにより、使用者は適切な湯量による快適な入浴を常時楽しむことができる。
【0004】
ここで、浴槽の排水栓が抜けている状況下で湯張りを実施してしまった場合について考える。この場合、湯張りを実施しても水位が上昇せず、設定水位となることはない。そのため、このような状況下で湯張りを実施してしまうと、延々と湯張りを継続してしまい、湯水が無駄になってしまう。
【0005】
そこで、このような問題を解決するための技術として、特許文献1に開示されている技術がある。特許文献1に開示されている風呂装置(風呂給湯装置)では、累積補水量が上限に達したときに補水を中止する制御構成となっている。すなわち、一定量以上の湯水を供給したことを条件に湯水の供給を中止し、湯水が延々と供給され続けないようにしている。このことにより、何らかの原因により水位が上昇しない場合であっても、湯張りが延々と継続されることがなく、湯水が無駄になってしまうことがない。
【0006】
ところで、このような風呂装置では、使用者が誤って設定水位を高くしすぎてしまう場合がある。この場合もまた、浴槽から湯水が溢れているにも関わらず、湯張りや補水を継続して実施してしまう可能性がある。
【0007】
そこで、このような問題を解決するための技術として、特許文献2に開示されている技術がある。特許文献2に開示されている自動風呂釜の湯張り注湯制御では、過去最大の水位をピーク水位として記憶すると共に、このピーク水位よりも所定量低い水位をあふれ防止水位として設定している。そして、浴槽の水位があふれ防止水位となるまで注湯されると、それ以降の注湯を停止する制御構成が開示されている。このことにより、延々と湯張りや補水が実施されるということがなく、浴槽から湯水が無駄に溢れ続けるということがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−42534号公報
【特許文献2】特許第3132788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術のように、累積補水量が上限に達したときに補水を中止する制御構成によると、風呂装置が正常に使用されている状況下であっても補水が中止されてしまうという可能性があった。
【0010】
例を挙げて具体的に説明すると、一般家庭で風呂装置を使用する場合、家族を構成する各人が順番に入浴していくことがある。この場合、それぞれの人がかけ湯をしたり体を洗ったりするために浴槽の湯水を使用すると、湯水の減少量の累積値は大きくなってしまう。そして、湯水の減少量の累積値が大きくなってしまうと、累積補水量が上限に達してしまい、補水が中止されてしまうことになる。このように、風呂装置が正常に使用されている状況下であるにもかかわらず、補水が中止されてしまうと、使用者に不用な混乱を与えてしまうおそれがある。
【0011】
また、特許文献2に開示されている技術では、浴槽の水位を満水となるまで貯留できないという不満がある。
詳細に説明すると、過去最大の水位をピーク水位とする場合、ピーク水位の最大値は浴槽を満水としたときの水位となる。したがって、ピーク水位よりも所定量低い水位をあふれ防止水位として設定し、あふれ防止水位まで注湯されると注湯動作を停止する制御構成によると、貯湯された湯水の水位が満水時の水位よりも必ず低くなってしまう。ここで、使用者には、満水まで湯張りした状態で浴槽を使用したいといった要求を持つものもおり、このような構成では、必ずしも使用者の要求を満たすことができないという不満があった。
【0012】
そこで本発明は、上記した従来技術の問題に鑑み、浴槽への不必要な湯水の供給を防止可能であり、使用者がさらに快適に使用可能な風呂装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、浴槽内の水位を検知可能な水位検知手段を備え、前記水位検知手段が検知した水位が予め設定された設定水位を下回り、前記設定水位に基づいて決定される補水開始水位を下回ったことを条件として、前記浴槽に湯水を供給する補水運転を実施する風呂装置であって、補水運転開始時の浴槽内の水位を基準水位として取得し、取得した基準水位と、記憶しておいた前回の補水運転開始時の基準水位とを比較するものであり、比較した基準水位の差が所定値を下回る状況が複数回発生したことを条件として、現在の前記浴槽内の水位が補水開始水位を下回らないように前記設定水位を変更することを特徴とする風呂装置である。
【0014】
本発明の風呂装置では、補水運転開始時の浴槽内の水位を基準水位として取得し、取得した基準水位と、記憶しておいた前回の補水運転開始時の基準水位とを比較する。そして、比較した基準水位の差が所定値を下回る状況が複数回発生したことを条件に、現在の水位では補水運転が開始されないように設定水位を変更している。
このため、浴槽の湯水が減少していき、浴槽の水位が変更後の設定水位に基づく新たな補水開始水位を下回った場合は、補水運転が実施されることとなる。したがって、従来の制御構成のように、補水した総水量が所定以上となったときに補水を中止するような動作とは異なり、補水を複数回実施しても、突然補水が停止してそれ以降の補水が実施されないということはない。そのため、使用者に不用な不安感を与えることはない。
【0015】
また、本発明の風呂装置では、基準水位の差が小さい状況下で補水運転が実施されるということが複数回に亘って発生するまでは、設定水位が自動的に変更されることはない。換言すると、設定水位が変更されるまでは、浴槽の湯水が満水となるまで補水することが可能である。
したがって、従来の制御構成のように、満水よりも低水位となる所定水位まで補水すると補水を中止するような動作とは異なり、浴槽に満水となるまで補水することも可能となる。このため、より汎用性の高い風呂装置を提供することが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、浴槽内の水位を検知可能な水位検知手段を備え、前記水位検知手段が検知した水位が予め設定された設定水位を下回り、前記設定水位に基づいて決定される補水開始水位を下回ったことを条件として、前記浴槽に湯水を供給する補水運転を実施する風呂装置であって、補水運転開始時に、前記浴槽内の水位を前記設定水位とするために必要な不足湯量を算出し、算出した不足湯量と、記憶しておいた前回の補水運転開始時の不足湯量とを比較するものであり、比較した不足湯量の差が所定値を下回る状況が複数回発生したことを条件として、現在の前記浴槽内の水位が補水開始水位を下回らないように前記設定水位を変更することを特徴とする風呂装置である。
【0017】
本発明の風呂装置は、補水運転の開始時に、浴槽内の水位を設定水位とするために必要な不足湯量を算出し、この不足湯量と、前回の補水運転の開始時に算出した不足湯量を比較する構成であってもよい。すなわち、不足湯量の差が所定値を下回る状況が複数回発生したことを条件として、上記した設定水位を変更する動作を実施してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の風呂装置は、浴槽の湯水が減少していき、浴槽の水位が変更後の設定水位に基づく新たな補水開始水位を下回った場合は、補水運転が実施されることとなる。したがって、補水を複数回実施しても、突然補水が停止してそれ以降の補水が実施されないということはなく、使用者に不用な不安感を与えることはない。
さらに、本発明の風呂装置では、比較した基準水位又は不足湯量の差が所定値を下回る状況が複数回発生しない限り、設定水位が変更されることはなく、浴槽に満水となるまで補水運転が可能となる。このため、より汎用性の高い風呂装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る熱源機を示す作動原理図である。
図2図1の熱源機で実施される補水動作の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態にかかる熱源機1(風呂装置)について詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0021】
本実施形態の熱源機1は、図1で示されるように、浴槽16が配管接続された状態となっている。
【0022】
熱源機1は、図1に示すように、燃焼部3と、燃焼部3に燃焼用の空気を供給する送風機4と、主に顕熱を回収する一次熱交換器5と、主に潜熱を回収する二次熱交換器6とを備えた所謂潜熱回収型と称されるものである。
【0023】
また、熱源機1は、制御装置7を備えており、この制御装置7は熱源機1内の各種センサからの信号を受信可能となっている。そして、この制御装置7が熱源機1の各部に動作指令を送信することにより、熱源機1が各種運転を実施可能な構成となっている。
【0024】
さらに、この熱源機1は、給湯系統10、風呂落とし込み系統11、風呂系統12の各系統を備えている。ここで、給湯系統10では、湯水を給湯栓(図示せず)から出湯させる一般給湯運転を実施可能となっている。また、風呂落とし込み系統11では、浴槽16へ湯水を注湯する落とし込み運転を実施可能となっている。さらにまた、風呂系統12では、浴槽16の湯水を循環させて適宜加熱する追い焚き運転を実施可能となっている。
【0025】
燃焼部3は、バーナ3aによって外部から供給されるガス等の燃料を燃焼することにより、高温の燃焼ガスを発生させることができる構成となっている。
【0026】
送風機4は、内部に図示しないモータと羽根車を内蔵し、燃焼部3のバーナ3aの燃焼状態に応じて回転数を変化させ、送風量及び送風圧を調整可能となっている。
【0027】
一次熱交換器5は、公知の気・液熱交換器であって、燃焼部3より燃焼ガスの流れ方向下流側に配置されている。この一次熱交換器5は、主要部分が銅製であり、内部に湯が流れるフィンアンドチューブ式の熱交換器である。
【0028】
二次熱交換器6は、公知の気・液熱交換器であって、一次熱交換器5において回収しきれなかった燃焼ガスの熱エネルギーを回収する部分であり、一次熱交換器5より燃焼ガスの流れ方向下流側に配置されている。この二次熱交換器6は、箱状体の内部に湯水が流れる配管(図示せず)を内蔵して形成されるものであり、この配管の原料に耐腐食性が高いステンレス鋼等を採用することで、一次熱交換器5と比べて耐腐食性に優れた構造となっている。
【0029】
制御装置7は、演算手段としてのCPU、記憶手段としてのメモリを備えており、このメモリに熱源機1の制御に必要なプログラムが記憶されている。また、この記憶手段としてのメモリは、不揮発性のメモリと揮発性のメモリから構成されている。
そして、制御装置7は、各センサ等により検知された情報、各センサ等が検知した情報に基づいて演算手段が算出した情報を記憶可能となっている。
【0030】
次に、熱源機1の各系統について詳細に説明する。
【0031】
給湯系統10は、入水管20と、出湯管21と、バイパス管22と、一般給湯管23とを備えている。
【0032】
入水管20は、図示しない給水源から供給される湯水を二次熱交換器6及び一次熱交換器5(以下単に熱交換器とも称す)に流すための配管である。
【0033】
出湯管21は、湯水の流れ方向下流側で一般給湯管23と、風呂落とし込み系統11の風呂落とし込み管25とに分岐している。すなわち、一般給湯管23及び風呂落とし込み管25に湯水を供給するものである。このとき、出湯管21の一般給湯管23と風呂落とし込み管25に分岐している部分には、出湯流量調整弁26が設けられており、一般給湯管23及び風呂落とし込み管25に流れる湯水の流量を調整可能となっている。
【0034】
バイパス管22は、入水管20と出湯管21とを結んで熱交換器をバイパスする配管である。
【0035】
一般給湯管23は、熱交換器を通過した湯水をシャワーやカラン等の給湯栓(図示せず)に供給するものである。
【0036】
風呂落とし込み系統11は、風呂落とし込み管25と、風呂系統12とにより、外部の給水源から浴槽16へ連なる流路を形成している。
【0037】
風呂落とし込み管25は、上記した出湯管21と、風呂系統12の風呂戻り管33とを接続するものである。また、この風呂落とし込み管25には、上流側から、落とし込み用流量センサ28、注湯電磁弁29、逆止弁等によって構成される逆流防止装置30が設けられている。さらに、風呂落とし込み管25の下流端近傍には、浴槽16に貯留した湯水の水位を検知するための水位センサ31(水位検知手段)が設けられている。
【0038】
風呂系統12は、図1で示されるように、浴槽16を含む循環流路を形成する風呂戻り管33と、風呂往き管34とを備えている。
【0039】
風呂戻り管33は、浴槽16側から熱交換器側に湯水を戻す配管である。この風呂戻り管33には、浴槽16側から熱交換器側へ向かって、渦巻きポンプ40と、水流スイッチ41と、水温センサ42とが設けられている。
風呂往き管34は、熱交換器側から浴槽16側に湯水を送りだす配管である。
風呂戻り管33と風呂往き管34とは、熱交換器を介して連続しており、浴槽16を含む循環流路(風呂循環経路)を形成している。
【0040】
次に、本実施形態の熱源機1が実施可能な各種動作について詳細に説明する。
【0041】
本実施形態の熱源機1は、上記したように、一般給湯運転、落とし込み運転、追い焚き運転を実施可能となっている。
【0042】
[一般給湯運転]
図示しない給湯栓等が操作されて出湯要求があると、図示しない給水源から供給された湯水が入水管20を流れ、二次熱交換器6及び一次熱交換器5を経て加熱され、出湯管21へ出湯される。さらに、出湯管21では、熱交換器を経て加熱された湯水と、バイパス管22を通過した湯水とが混合されることとなる。そして、この混合された湯水が一般給湯管23へと出湯され、一般給湯管23から給湯栓(図示せず)へと供給される。
【0043】
[落とし込み運転]
図示しないリモコン等で落とし込み運転が要求されると、風呂落とし込み系統11の注湯電磁弁29が開いた状態となる。すると、図示しない給水源から供給された湯水が入水管20を流れ、熱交換器を経て加熱され、出湯管21へ出湯される。このとき、出湯管21では、熱交換器を経て加熱された湯水と、バイパス管22を通過した湯水とが混合されることとなる。そして、この混合された湯水が出湯管21から風呂落とし込み管25へと出湯され、風呂落とし込み管25から風呂戻り管33へと流入する。この風呂戻り管33へ流入した湯水は、風呂戻り管33と、風呂戻り管33と連なる風呂往き管34から浴槽16へ落とし込まれる。
ここで、本実施形態の落とし込み運転では、予め使用者が図示しないリモコン等で設定した水位(以下、単に設定水位と称す)となるまで、浴槽16に湯水を注湯する動作を実施している。なお、この設定水位の変更は多段切替式となっており、使用者は、それぞれ異なる水位が割り当てられた各段の中から1つを選択し、選択した段の水位を設定水位とするものである。
【0044】
[追い焚き運転]
図示しないリモコン等で追い焚き運転が要求されると、渦巻きポンプ40が駆動され、浴槽16内の湯水が風呂戻り管33を介して二次熱交換器6及び一次熱交換器5に送られる。そして、二次熱交換器6及び一次熱交換器5を通過することで加熱された湯水は、風呂往き管34を介して浴槽16に戻される。
【0045】
ここで、本実施形態では、落とし込み運転を実施して浴槽16に湯張りした後、水位センサ31によって浴槽16の湯水が減少したことが検知されると、再び設定水位となるように湯水を注湯する補水運転を実施する。本実施形態の特徴的な動作であるところの補水運転につき、以下で詳細に説明する。
【0046】
図2で示されるように、浴槽16の湯水が使用され、浴槽水位Laが補水開始水位L1を下回ったとき(ステップ1でYesの場合)、補水運転が開始されることとなる。ここで、補水開始の基準となる補水開始水位L1は、設定水位よりも所定量Q(例えば、30mm)だけ低い水位としている。つまり、本実施形態の補水運転では、浴槽水位Laが設定水位よりも所定量Qだけ低い水位を下回ったとき、補水運転が開始される構成となっている。
なお、所定量Qは、上記した設定水位を切替える際の基準となる各段、すなわち、設定水位が割り当てられた複数段のそれぞれのうち、連続する2つの段の水位の差よりも小さな値とすることができる。
【0047】
補水運転が開始されると、補水運転開始時の浴槽水位La(基準水位)が制御装置7に記憶される(ステップ2)。そして、前回の補水運転開始時の浴槽水位Lx(前回の補水運転開始時の基準水位)と今回の補水運転開始時の浴槽水位Laの差(以下、単に基準水位の差とも称す)を算出し、基準水位の差と基準量Qα(例えば、10mm)を比較する(ステップ3)。具体的には、今回の補水運転開始時の浴槽水位Laから前回の補水運転開始時の浴槽水位Lxを引いた値の絶対値(以下単に水位差とも称す)と、基準量Qα(例えば、10mm)とを比較する。
なお、基準量Qαは十分に小さい値となっており、所定量Qよりも少ない値となっている。
【0048】
そして、基準水位の差が基準量Qαより小さい場合(ステップ3でYesの場合)に限り、微差での補水開始数Nに規定値X1(本実施形態では「1」)を追加する(ステップ4)。
つまり、本実施形態の熱源機1は、基準水位の差が十分小さい状況下で補水を開始した回数を記憶している。より詳細には、熱源機1は、基準水位の差が所定の値(例えば、10mm)よりも小さい所定の範囲(例えば、0mmから9mm)に属する状況下で補水を開始すると、その補水の開始数を微差での補水開始数Nとして記憶している。
【0049】
続いて、微差での補水開始数Nと規定値T1(本実施形態では「3」)とを比較する(ステップ5)。そして、微差での補水開始数Nが規定値T1以上である場合(ステップ5でYesの場合)は、ステップ6へと移行して設定水位を変更する。
【0050】
ここで、変更された後の新たな設定水位は、浴槽水位Laに所定量Qを加えた水位よりも小さい水位のうちで、最大の水位となる。本実施形態では、上記したように、設定水位の変更が多段切替式となっており、それぞれ異なる水位が割り当てられた各段の中から1つを選択し、選択した段の水位を設定水位としている。つまり、本実施形態では、設定水位を変更する場合、浴槽水位Laに所定量Qを加えた水位よりも小さい水位のうちで最大の水位が割り当てられた段に切り替えている。
【0051】
そして、このような設定水位の切り替えを実施すると、現在の浴槽水位Laまで湯水が貯留されている状況下では、補水が実施されない状態となる。
具体的に説明すると、補水は、上記したように、浴槽水位Laが設定水位よりも所定量Qだけ低い水位である補水開始水位L1を下回ったときに開始される。つまり、現在の浴槽水位Laは、変更前の設定水位よりも所定量Qだけ低い水位である補水開始水位L1を下回った水位となっている。ここで、現在の浴槽水位Laに所定量Qを加えた水位よりも小さい水位のうちで最大の水位を新たな設定水位とすると、新たな補水開始水位L2は、新たな設定水位よりも所定量Qだけ低い水位となり、現在の浴槽水位Laを下回ることとなる。
すなわち、本実施形態では、設定水位を引き下げるように変更し(ステップ6)、現在の浴槽水位Laが新たな補水開始水位L2以上の水位となるようにしている。別言すると、補水開始の基準となる閾値を引き下げ、補水が開始されないようにしている。このことにより、現在の浴槽水位Laが維持されている間、新たな補水開始水位L2を基準とした補水は実施されないこととなる。
【0052】
さらに詳細に説明すると、本実施形態では、補水が複数回(3回)に亘って実施され、その全てが今回の補水開始時の浴槽水位と前回の補水開始時の浴槽水位の差が小さい状態で実施された場合、設定水位を引き下げるように変更している。すなわち、このような場合、浴槽16の水位が変わらない(又は殆ど変らない)状態で補水が複数回に亘って実施されており、浴槽16が満水であるにもかかわらず補水が複数回実施された可能性が高い。そこで、このような場合、設定水位を引き下げ、現在の浴槽水位Laが維持されている間は補水が実施されないようにしている。このことより、不必要な補水の実施を防止できるので、湯水が無駄になってしまうことがない。
【0053】
また、このような構成によると、浴槽16に貯留した湯水が減少していき、新たな補水開始水位L2を下回った場合は、補水が実施されることとなる。
つまり、従来の制御構成のように、補水を複数回実施し、補水した水量が所定以上となったことを条件として補水を中止するような動作とは異なり、突然補水が停止し、それ以降の補水が実施されないということがない。そのため、使用者に不用な不安感を与えることはない。
【0054】
さらにまた、このような構成によると、基準水位の差が小さい状況下での補水が複数回に亘って実施されるまでは、設定水位が自動的に引き下げられることはない。別言すると、設定水位が引き下げられるまでは、浴槽16の湯水が満水となるまで補水することが可能である。また、設定水位が引き下げられた後も、新たな設定水位は、必然的に現在の浴槽水位Laと同じ又は近い値となる。そのため、浴槽16の湯水が減少したとき、満水又は満水に近い水位まで補水できる。
したがって、従来の制御構成のように、満水よりも低水位となる所定水位まで補水すると補水を中止するような動作とは異なり、浴槽16に満水(又は満水に極めて近い位置)となるまで補水することも可能となる。このため、より汎用性の高い熱源機1を提供することが可能となる。
【0055】
補水運転の手順についての説明に戻ると、このように設定水位が変更された場合(ステップ5でYesの場合)であっても、そうでない場合(ステップ5でNoの場合)であっても、ステップ7へと移行し、現在の浴槽水位Laを設定水位とするために不足している湯量である不足湯量を算出する。なお、例を挙げて具体的に説明すると、仮に設定水位が400mmであり、現在の浴槽水位Laが350mmであったとすると、不足湯量は水位を50mm上昇させるために必要な湯量となる。
また、設定水位が変更された場合(ステップ5でYesの場合)は、新たな設定水位を用いて不足湯量を算出する。
【0056】
そして、算出した不足湯量が0より大きい場合(ステップ8でYesの場合)、すなわち、現在の浴槽水位Laが設定水位となっていない場合は、補水を開始する。対して、不足湯量が0以下である場合(ステップ8でNoの場合)、すなわち、現在の浴槽水位Laが設定水位であるか設定水位を上回っている場合は、補水を開始せず、再び浴槽水位が補水開始水位(補水開始水位L1又は補水開始水位L2、あるいは他の補水開始水位)を下回る(ステップ1でYesとなる)まで待機する。
【0057】
補水が開始される場合(ステップ8でYesの場合)、まず注湯動作が開始されることとなる(ステップ9)。注湯動作は、上記した落とし込み運転と同様の手順で湯水を浴槽16に供給する動作であり、算出した不足湯量と同量の湯水を浴槽16へ供給するための動作である。すなわち、この注湯動作は、浴槽16に供給した湯水の量(注湯量)が不足湯量以上となる(ステップ10でYesとなる)まで継続され、その後に終了する(ステップ11)。より詳細には、落とし込み用流量センサ28によって浴槽16に供給した湯水の量が検知され、検知された湯水の量が不足湯量以上となったことを条件として、注湯動作が停止される。
【0058】
そして、注湯動作に引き続き、追い焚き動作が実施される(ステップ12)。この追い焚き動作は、上記した追い焚き運転と同様の手順で浴槽16に貯留された湯水を加熱する動作であり、浴槽16に貯留した湯水の温度が設定温度となるように加熱する動作である。すなわち、この追い焚き動作は、浴槽16に貯留した湯水(浴槽水)が設定温度以上となる(ステップ13でYesとなる)まで継続され、その後に終了する(ステップ14)。より詳細には、風呂系統12の水温センサ42によって浴槽16内の湯温を検知し、検知した温度が設定温度以上となったことを条件として、追い焚き動作を停止している。
そして、この追い焚き動作の停止をもって、浴槽16への補水が完了する。
【0059】
さらに本実施形態の補水動作では、補水が完了した後、水位が安定するまで待機する時間を設けている(ステップ15)。すなわち、補水が完了してから所定時間が経過するまでの間を待機状態とし、仮に浴槽水位が補水開始水位を下回ってもさらなる補水を実施しないようにしている。
【0060】
詳細に説明すると、追い焚き動作が実施された直後は、浴槽16に貯留した湯水の水面が揺れ動き、短い時間に水位が大きく変化している可能性が高い。このため、浴槽16の水位を検知しようとしても、一時的に低水位となった水位を浴槽16の通常の水位として誤検知してしまう等により、正確な水位が検知できないおそれがある。そして、このような状況下では、浴槽16の水位を誤検知することで、本来は不必要であるにもかかわらず補水を実施してしまう可能性がある。
そこで、本実施形態の補水運転では、補水が完了した後に水位が安定するまでの間、すなわち、所定時間が経過するまでの間は待機状態としている。このことにより、不必要な補水の実施を防止している。
【0061】
そして、水位が安定するまで待機(ステップ15)した後、再び浴槽水位が補水開始水位(補水開始水位L1又は補水開始水位L2、あるいは他の補水開始水位)を下回る(ステップ1でYesとなる)まで待機する。
【0062】
上記したように、本実施形態では、基準水位の差が十分小さい状況下で補水を開始した回数を微差での補水開始数Nとして記憶している。そして、この微差での補水開始数Nは、所定の状況下において初期値(例えば、「0」)とすることが好ましい。例えば、設定水位が変更された(ステップ6)ことを条件として初期値としてもよく、規定値X1が追加されて(ステップ4)から所定時間が経過する間にさらに規定値X1が追加されなかったことを条件として初期値としてもよい。
【0063】
上記した実施形態では、補水運転が開始されると(ステップ1でYes)、補水運転開始時の浴槽水位Laを制御装置7に記憶した(ステップ2)。さらに、前回の補水運転開始時の浴槽水位Lxと今回の補水運転開始時の浴槽水位Laの差を算出し、基準量Qαと比較した(ステップ3)。そして、算出した基準水位の差が基準量Qαより小さい場合、微差での補水開始数Nに規定値X1を追加した(ステップ4)。
つまり、浴槽16の水位を基準として、今回の補水運転開始時の状況下と前回の補水運転開始時の状況下とを比較した。しかしながら、本発明はこれに限るものではない。
【0064】
例えば、浴槽16に注湯する湯量を基準として、今回の補水運転開始時の状況下と前回の補水運転開始時の状況下とを比較してもよい。
例を挙げて具体的に説明すると、補水運転が開始されたとき(ステップ1でYes)、上記したステップ2に代わって、現在の浴槽水位Laと設定水位から、現在の浴槽水位Laを設定水位とするために不足している湯量である不足湯量を算出し、記憶してもよい。
そして、上記したステップ3に代わって、前回の補水運転開始時の不足湯量と今回の補水運転開始時の不足湯量の差を算出し、基準量Qβ(例えば、5リットル)を比較してもよい。具体的には、今回の不足湯量から前回の不足湯量を引いた値の絶対値と、基準量Qβとを比較することが好ましい。
そして、今回の補水運転開始時の不足湯量と前回の補水運転開始時の不足湯量の差が基準量Qβより小さい場合に限り、微差での補水開始数Nに規定値X1を追加(ステップ4)し、ステップ5以降の処理を実施してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 熱源機(風呂装置)
16 浴槽
31 水位センサ(水位検知手段)
図1
図2