【文献】
Sharp,UL RS Proposed Enhancements in Rel-11,3GPP TSG RAN WG1 Meeting #65 R1-111479,3GPP,2011年 5月 9日
【文献】
NTT DoCoMo et al.,Necessity of Multiple Bandwidths for Sounding Reference Signals,3GPP TSG RAN WG1 Meeting #48 R1-070853,3GPP,2007年 2月12日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
3GPP LTE(3rd Generation Partnership Project Long-term Evolution、以下では、単に、LTEという)の上り回線では、PAPR(Peak-to-Average Power Ratio)が小さく、端末の電力利用効率が高いSC-FDMA(Single-Carrier Frequency-Division Multiple Access)が採用された。また、LTEの上り回線では、パスロスやチャネル周波数応答等の様々な情報を含むCSI(Channel State Information)を得るためにSRS(Sounding Reference Signal)が用いられる(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
各端末は、予め割り当てられた時間及び周波数リソースにおいて、予め設定された周期でSRSを送信する。基地局では、セル内の各端末から周期的に受信するSRSに基づき上り回線のCSIを測定し、各端末のCSIを参照することによりPUSCH(
Physical Uplink Shared Channel)の周波数スケジューリング(周波数領域のリソース割り当て)を行う。
【0004】
広帯域のLTEの上り回線は、周波数により利得が大きく異なる周波数選択性フェージングチャネルとなる。したがって、基地局が、利得の大きい周波数リソースにPUSCHを割り当てることにより、高い回線品質を維持することができる。
【0005】
基地局がPUSCHの周波数スケジューリングを行うためには、端末は、使用可能な全ての帯域についてSRSを送信する必要がある。
【0006】
端末が基地局の近傍に存在する場合、端末は、広帯域で電力密度が小さいSRSを送信する。基地局は、一つのSRSを受信するだけで、PUSCHのスケジューリングに必要な広帯域のCSIを測定することができる。
【0007】
一方、端末がセル端等の基地局の遠方に存在する場合、伝搬路におけるパスロスが大きいため、端末から送信された信号は基地局に到達するまでに電力が著しく減衰してしまう。したがって、基地局において所望の受信品質を得るためには、端末は送信電力を大きくしなければならない。
【0008】
しかしながら、端末の送信電力には上限があり、広帯域で電力密度を大きくすると上限値を超えてしまう。このため、端末は、狭帯域(全帯域をn分割した帯域、ここで、nは2以上の整数)で電力密度が大きいSRSを、帯域を変更しながら複数回送信する(周波数ホッピング)。これにより、基地局は、複数のSRSを受信し、これらを時間的に累積することにより、PUSCHのスケジューリングに必要な全帯域のCSIを測定することができる。
【0009】
なお、LTEの進化版であるLTE-AdvancedのRelease 10(以下、「Rel.10」と記載する)では、周期的に送信されるSRS(Periodic-SRS、以下、「P-SRS」という)に加え、A-SRS(Aperiodic-SRS)が導入された(例えば、非特許文献2参照)。A-SRSは、基地局から送信された送信要求に応じて一度だけ端末から送信される。基地局は、所定の帯域のCSIを得たいときにだけ送信要求を端末に送信すれば良いので、Rel.10では、リソースの消費を最小限に抑えた運用を行うことができるようになった。
【0010】
ところで、次のLTE-AdvancedであるRelease 11(以下、「Rel.11」と記載する)では、
図1に示すように、カバーエリアの大きさが異なる複数の基地局が存在するヘテロジーニアスセルネットワーク(HetNet:Heterogeneous Network)において、複数の基地局が協調送受信を行うCoMP(Coordinated Multi-Point)送受信が検討されている(例えば、非特許文献3参照)。HetNetは、マクロ基地局およびピコ基地局から構成される。マクロ基地局は、送信電力およびカバレッジが大きい基地局(ノード)であり、ピコ基地局は、送信電力およびカバレッジが小さい基地局(ノード)である。特に、Rel.11は、上り回線では端末の近傍に存在する基地局で受信を行うことができるため、マクロ基地局しか存在しないRel.10までと比較して、端末の所要送信電力を低減しつつ、高品質な伝送を実現することができる。
【0011】
ここで、HetNetでは距離が大きく異なる多地点での送受信が行われるため、端末と送受信を行う基地局を適切に選択し(以下、端末と送受信を行う基地局を「送受信参加基地局」という)、かつ、端末の移動に合わせて送受信参加基地局を適宜切り替えていかなければならない。この送受信参加基地局の選択は、マクロ基地局が行う。
【0012】
送受信参加基地局の選択および切り替えには、上り回線および下り回線で送信される参照信号(CRS、CSI-RS、およびSRS)の利用が検討されている。下り回線で送信されるCRSやCSI-RSを用いる場合、端末が各基地局までのCSIを測定し、上り回線を用いてフィードバックする。フィードバックされたCSIに基づいて、マクロ基地局が送受信参加基地局を決定する。一方、上り回線で送信されるSRSを用いる場合、端末が送信するSRSにより基地局は直接CSIを測定することができる。したがって、CRSまたはCSI-RSを用いる場合に比べて、端末が基地局にフィードバックする情報量を少なくすることができる。
【0013】
以上のように、CoMPが導入されるRel.11以降においては、SRSを用いた送受信参加基地局の選択が採用される可能性が高い。この場合、SRSは、(1)PUSCHの周波数スケジューリング、に加えて、(2)送受信参加基地局の選択、という2つの用途に用いられることになる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0035】
[実施の形態1]
[ネットワークシステムの構成]
本発明の実施の形態1に係るネットワークシステムは、HetNetであり、
図1に示すように、マクロ基地局(Macro eNB)100、ピコ基地局(Pico eNB)200、および端末(UE)300から構成される。各セルには、1つのマクロ基地局100と1つ又は複数のピコ基地局200が設置される。マクロ基地局100と各ピコ基地局200とは、光ファイバなど低遅延大容量のインターフェースで接続されている。セル内のマクロ基地局100および各ピコ基地局200は、同一セルIDを使用し、セル内に存在する各端末300に割り当てられたSRSの送信パラメータを共有し、そのSRSを受信してCSIを測定する。各端末300は、マクロ基地局100によって選択された当該マクロ基地局100および/またはピコ基地局200と無線通信を行う。
【0036】
なお、各端末300において、データを送信する基地局とデータを受信する基地局は異なっていても良い。また、マクロ基地局100は、Rel.11の仕様に対応している端末300aおよびRel.10以前の仕様に対応している端末300bのどちらとも通信を行うことができる。以下の説明では、Rel.11の仕様に対応している端末300(
図1の端末300a)について説明する。
【0037】
本実施の形態では、各端末300は、マクロ基地局100から通知された送信パラメータに基づいて、周期的に、広帯域で電力密度の低い第1P-SRSと狭帯域で電力密度の高い第2P-SRSの2種類のSRSを時間多重送信する。
【0038】
[マクロ基地局の構成]
図2は、本実施の形態に係るマクロ基地局100の要部構成を示すブロック図である。
図2に示すマクロ基地局100は、受信部101と、測定部102と、基地局間インターフェース部(IF)103と、制御部104と、送信部105と、から主に構成されている。
【0039】
受信部101は、各端末300から送信され、アンテナを介して受信された無線信号に対して受信無線処理(ダウンコンバートや復調、復号等)を行い、P-SRSやPUSCH、上り制御信号(PUCCH:Physical Uplink Control Channel)等を抽出する。受信部101は、P-SRSを測定部102に出力する。なお、端末300がマクロ基地局100の近傍に位置する場合、受信部101は、第1P-SRSおよび第2P-SRSの両方を抽出する。一方、端末300がマクロ基地局100の遠方に位置する場合、受信部101は、第2P-SRSを抽出する。
【0040】
測定部102は、P-SRSによりCSIを測定し、測定結果を制御部104に出力する。なお、端末300がマクロ基地局100の近傍に位置する場合、測定部102は、第1P-SRSおよび第2P-SRSのそれぞれによりCSIを測定する。一方、端末300がマクロ基地局100の遠方に位置する場合、測定部102は、第2P-SRSによりCSIを測定する。
【0041】
基地局間インターフェース部103は、ピコ基地局200との間で有線通信を行う。具体的には、基地局間インターフェース部103は、制御部104によって選択された送受信参加基地局に対し、送受信への参加指示を示す情報を送信する。また、基地局間インターフェース部103は、PUSCHを受信するピコ基地局200に対し、スケジューリングの情報および端末300のPUSCH送信パラメータを送信する。また、基地局間インターフェース部103は、ピコ基地局200から送信されたCSI測定結果を受信し、制御部104に転送する。また、基地局間インターフェース部103は、ピコ基地局200から転送された端末300からのデータを受信する。
【0042】
制御部104は、PUSCHの周波数スケジューリングや送受信参加基地局の選択等、各種の制御を行う。具体的には、制御部104は、互いに異なる送信パラメータ(帯域幅、電力オフセット、周期、および周波数ホッピングの有無)を持つ複数のP-SRS候補の中から、広帯域で電力密度が低く、チャネル変動に追従可能な送信周期のP-SRSを第1P-SRSとして選択し、狭帯域で電力密度が高く、端末300の移動に伴う基地局切替に追従可能な送信周期のP-SRSを第2P-SRSとして選択する。なお、P-SRS候補はリスト化されテーブル上に記憶され、各P-SRS候補には番号が付されている。そして、制御部104は、選択した2種類のP-SRSを示す番号の情報(以下、「P-SRS選択セット」という)、および、2種類のP-SRSの送信タイミングを示す情報を、送信部105を介して端末300に送信し、基地局間インターフェース部103を介して各ピコ基地局200に送信する。
【0043】
また、制御部104は、各ピコ基地局200から基地局間インターフェース部103を介して報告されるCSI、および、測定部102から出力されたCSIに基づいてSINRを算出し、SINRに基づいて下り回線送信または上り回線受信に参加する基地局(送受信参加基地局)を選択する。そして、制御部104は、選択した送受信参加基地局を示す情報を、送信部105を介して端末300に送信し、基地局間インターフェース部103を介して各ピコ基地局200に送信する。
【0044】
また、制御部104は、マクロ基地局100自身がPUSCH受信に参加する場合、測定部102から出力された第1P-SRSのCSI測定結果、および、PUSCH受信に参加するピコ基地局200から基地局間インターフェース部103を介して報告される第1P-SRSのCSI測定結果に基づいて、PUSCHの周波数スケジューリングおよび端末300のPUSCH送信パラメータの決定を行う。また、制御部104は、マクロ基地局100自身がPUSCH受信に参加しない場合、PUSCH受信に参加するピコ基地局200から基地局間インターフェース部103を介して報告される第1P-SRSのCSI測定結果に基づいて、PUSCHの周波数スケジューリングおよび端末300のPUSCH送信パラメータの決定を行う。そして、制御部104は、PUSCHの周波数スケジューリングの結果を示す情報および端末300のPUSCH送信パラメータを示す情報を、送信部105を介して端末300に送信し、基地局間インターフェース部103を介してPUSCH受信に参加するピコ基地局200に送信する。
【0045】
なお、第2P-SRSのCSI測定結果は、チャネルの周波数選択性の影響を受けてばらつく場合がある。これを緩和するため、周波数ホッピングが導入される。制御部104では、各ピコ基地局200が第2P-SRSにより測定されたCSIを逐次平均できる。例えば、新たに第2P-SRSを1つ受信する毎に測定したCSIを時間平均することにより、CSIのばらつきを抑えつつ端末300の移動などで生じるCSIの変動に追従することができる。
【0046】
送信部105は、制御部104から出力されたP-SRS選択セットおよび各情報(送受信参加基地局を示す情報や、PUSCHスケジューリングの結果を示す情報、端末300のPUSCH送信パラメータを示す情報等)や、PDSCH(Packet Downlink Shared Channel)、下り制御信号(PDCCH:Physical Downlink Control Channel)等に対して送信無線処理(符号化や変調、アップコンバート等)を行い、アンテナを介して各端末300に送信する。なお、P-SRSの選択セットは、端末個別のRRC制御情報として通知しても良いし、MACヘッダに含めても良い。
【0047】
[ピコ基地局の構成]
図3は、本実施の形態に係るピコ基地局200の要部構成を示すブロック図である。
図3に示すピコ基地局200は、受信部201と、測定部202と、基地局間インターフェース部203と、送信部204と、から主に構成されている。
【0048】
受信部201は、各端末300から送信され、アンテナを介して受信された無線信号に対して受信無線処理を行い、P-SRSや制御信号等を抽出し、P-SRSを測定部202に出力する。さらに、受信部201は、マクロ基地局100からPUSCH受信に参加することを指示された場合、マクロ基地局100から指示された端末300のPUSCH送信パラメータに従って、受信信号に含まれるPUSCHを処理する。なお、端末300がピコ基地局200の近傍に位置する場合、受信部201は、第1P-SRSおよび第2P-SRSの両方を抽出する。一方、端末300がピコ基地局200の遠方に位置する場合、受信部201は、第2P-SRSを抽出する。
【0049】
測定部202は、P-SRSによりCSIを測定し、基地局間インターフェース部203を介して測定結果をマクロ基地局100に送信する。なお、端末300がピコ基地局200の近傍に位置する場合、測定部202は、第1P-SRSおよび第2P-SRSのそれぞれによりCSIを測定する。一方、端末300がピコ基地局200の遠方に位置する場合、測定部202は、第2P-SRSによりCSIを測定する。
【0050】
基地局間インターフェース部203は、マクロ基地局100との間で有線通信を行う。具体的には、基地局間インターフェース部203は、マクロ基地局100から送信されたP-SRS選択セットを受信して測定部202に転送する。また、基地局間インターフェース部203は、測定部202から出力されたCSI測定結果をマクロ基地局100に送信する。また、基地局間インターフェース部203は、マクロ基地局100から送受信への参加指示を示す情報を受信する。また、基地局間インターフェース部203は、PUSCH受信に参加することを指示された場合、端末300から受信したPUSCHをマクロ基地局100に送信する。
【0051】
送信部204は、マクロ基地局100からPDSCH送信に参加することを指示された場合、マクロ基地局100から指示された送信パラメータに従ってPDSCHに対して送信無線処理を行い、当該処理後の信号をアンテナを介して各端末300に送信する。
【0052】
[端末の構成]
図4は、本実施の形態に係る端末300の要部構成を示すブロック図である。
図4に示す端末300は、受信部301と、制御部302と、送信部303と、から主に構成されている。
【0053】
受信部301は、マクロ基地局100およびピコ基地局200から送信され、アンテナを介して受信された無線信号に対して受信無線処理を行い、P-SRS選択セットや、送受信参加基地局を示す情報、PUSCHスケジューリングの結果を示す情報、端末300のPUSCH送信パラメータを示す情報、PDSCH、下り制御信号等を抽出し、P-SRS選択セット、PUSCHスケジューリングの結果を示す情報、および端末300のPUSCH送信パラメータを示す情報を制御部302に出力する。
【0054】
制御部302は、受信部301から出力されたP-SRS選択セットに従い、第1P-SRSおよび第2P-SRSの送信パラメータ(帯域幅、電力オフセット、周期、および周波数ホッピングの有無)を送信部303に指示する。また、制御部302は、受信部301から出力されたPUSCHのスケジューリングの結果を示す情報および端末300の送信パラメータの情報に従い、PUSCHの送信パラメータを送信部303に指示する。
【0055】
送信部303は、第1P-SRSや第2P-SRS、PUSCH、上り制御信号等に対して送信無線処理を行い、当該処理後の信号をアンテナを介して各端末300に送信する。なお、送信部303は、制御部302から指示された送信パラメータに従って第1P-SRS、第2P-SRSおよびPUSCHに対して送信無線処理を行う。
【0056】
なお、端末300は、第1P-SRS、第2P-SRS、およびPUSCHに対して送信電力制御を行う。具体的には、端末300は、まず、通信相手の基地局100、200と端末300との間の伝搬路におけるパスロスに応じて開ループの送信電力制御を行い、その後、基地局100、200から送信されたTPCコマンドによる閉ループの送信電力制御を行う。
【0057】
[動作フロー]
次に、本実施の形態に係る各装置の主要な処理手順について
図5を用いて説明する。
【0058】
まず、マクロ基地局100が、
図6に示すようなリストに載っているP-SRSの候補の中から、広帯域で電力密度が低い第1P-SRSと狭帯域で電力密度が高い第2P-SRSとの2種類のP-SRSを選択する。そして、マクロ基地局100が、選択した2種類のP-SRSを示す番号の情報であるP-SRS選択セットを端末300に送信する(ST501)。
【0059】
次に、端末300が、マクロ基地局100から受信したP-SRS選択セットに基づいて第1P-SRSおよび第2P-SRSの送信リソースを設定する。そして、端末300が、各基地局100、200に向けて、設定した送信リソースに従って第1P-SRSと第2P-SRSを時間多重送信する(ST502)。例えば、
図6において、第1P-SRSとしてSRS no. 0が選択され、第2P-SRSとしてSRS no. 5が選択された場合、端末300は、
図7に示すような、送信パラメータ(帯域、送信タイミング、および周期)に基づいて第1P-SRSおよび第2P-SRSを送信する。
【0060】
次に、各基地局100、200が、受信したP-SRSを用いてCSIを測定する。そして、マクロ基地局100が、各基地局100、200で測定されたCSIに基づいてPUSCHの周波数スケジューリングおよび送信パラメータを決定する。また、マクロ基地局100が、各基地局100、200で測定されたCSIに基づいてSINRを算出し、SINRに基づいて送受信参加基地局を選択する。そして、マクロ基地局100は、選択した送受信参加基地局を示す情報を、端末300および各ピコ基地局200に通知する。また、マクロ基地局100は、端末300およびPUSCH受信に参加するピコ基地局200に、PUSCHの周波数スケジューリングおよびPUSCH送信パラメータを通知する(ST503)。
【0061】
次に、端末300が、通知されたPUSCH送信パラメータに基づき、PUSCHの送信を行う(ST504)。
【0062】
なお、マクロ基地局100は、各基地局100、200のCSI測定結果の監視を継続し、CSI測定結果の変化に応じて、送受信参加基地局の切り替えおよびPUSCHをスケジューリングする周波数リソースの変更を行う。
【0063】
[効果]
以上の通り、本実施の形態では、端末300が、マクロ基地局100から通知された送信パラメータに基づいて、広帯域で電力密度が低い第1P-SRSと狭帯域で電力密度が高い第2P-SRSとの2種類のSRSを時間多重送信する。これにより、送受信参加基地局の選択、および、PUSCHの周波数スケジューリングの両方の処理を行うために必要な送信周期でP-SRSを送信することができる。
【0064】
[バリエーション1]
なお、本実施の形態では、
図8に示すように、第1P-SRSおよび第2P-SRSとしてペアで選択される可能性が高い、あるいは、第1P-SRSおよび第2P-SRSとしてペアで選択することによる効果が高いP-SRS候補の組み合わせを予め選定しても良い。この際、各P-SRS候補に対して番号を付す代わりに、P-SRS候補の組み合わせに対して番号(
図8のSet. No)を付すようにしても良い。
【0065】
この場合、マクロ基地局100が、選択したP-SRSを端末300に通知するために必要なオーバーヘッドを削減することができる。
【0066】
[バリエーション2]
ところで、SRSの帯域幅や周期、周波数ホッピングパターン等は、Rel.10の仕様において既に規定されている。そこで、本実施の形態では、新たにテーブルを作成せず、既に存在するRel.10のSRSリストから、マクロ基地局100が2種類のP-SRSを選択するようにしても良い。例えば、マクロ基地局100は、
図9および
図10のテーブルの中から、互いに衝突しない2種類のP-SRSを選択する。ただし、この場合、2種類のP-SRSのカバレッジを異ならせるための電力オフセット情報は、端末個別のRRC制御情報またはMACヘッダなどから別途通知する必要がある。
【0067】
この場合、送信するP-SRSは、Rel.10以前の端末が用いているP-SRSの組み合わせに電力オフセットを与えたものであるため、Rel.10以前の端末との共存(直交多重)を容易に図ることができる。
【0068】
[バリエーション3]
また、本実施の形態では、端末300が、2種類のP-SRSの電力オフセットを以下の数式に基づいて決定するようにしても良い。
【数1】
【0069】
上記の式(1)において、P
W-SRS,c(i)は、第1P-SRSの送信電力であり、Rel.10で定められた電力式と同じである。また、P
N-SRS,c(i)は、第2P-SRSの送信電力である。上記の式(1)は、第1P-SRSの送信電力をRel.10の電力式に基づいて定め、これを基準として第2P-SRSを同じ送信電力とすることを表している。送信電力は帯域幅×電力密度で与えられる。したがって、例えば、第2P-SRSの帯域幅が第1P-SRSの4分の1である場合、第2P-SRSの電力密度は第1P-SRSの4倍となる。
【0070】
この場合、マクロ基地局100から端末300に電力オフセットを通知することなく、端末300が帯域幅および電力密度が異なる2種類のP-SRSを送信することができ、異なる2つのカバレッジを形成することができる。
【0071】
[バリエーション4]
また、本実施の形態では、
図11に示すように、端末300が、第1P-SRSの一部の送信を周期的に停止し、その代わりに、第2P-SRSを送信するようにしても良い。この場合、P-SRSの送信周期を一定にすることができる。
【0072】
[実施の形態2]
実施の形態2では、端末300が送信する2種類のP-SRSのそれぞれに対して、閉ループの送信電力制御を行う場合について説明する。なお、実施の形態2のネットワークシステムの構成は、実施の形態1の場合と同一である。また、実施の形態2において、マクロ基地局100、ピコ基地局200、および端末300の主要な構成は、実施の形態1の場合と同一である。実施の形態2では、マクロ基地局100の制御部104および送信部105、ならびに、端末300の受信部301および制御部302の各機能が、実施の形態1の場合と異なる。
【0073】
[マクロ基地局の追加機能]
本実施の形態において、マクロ基地局100の制御部104は、実施の形態1で説明した処理を行い、さらに、受信されたP-SRSのSINRと目標SINRとの大小関係に基づいて、下り回線制御信号(PDCCH)のTPCコマンド(2ビット)を生成し、送信部105に出力する。また、制御部104は、PDCCHを送信部105に出力し、TPCコマンドが所望のP-SRSに適用されるタイミングで送信されるよう送信部105を制御する。
【0074】
送信部105は、実施の形態1で説明した処理を行い、さらに、制御部104からの指示に基づき、TPCコマンドを含むPDCCHを送信する。
【0075】
本実施の形態では、マクロ基地局100がTPCコマンドを送信する時間に応じて、このTPCコマンドが適用される信号が変わる。TPCコマンドの送信時間とそのTPCコマンドが適用される信号との関係は、予め、マクロ基地局100と端末300との間で決めておく。
【0076】
図12の例では、第2P-SRSの直前に送信される第1P-SRSの送信タイミングと第2P-SRSの送信タイミングとの間の時間601の中でマクロ基地局100から送信されるTPCコマンドのみを第2P-SRSの閉ループ制御に適用し、その他の時間602の中でマクロ基地局100から送信されるTPCコマンドを第1P-SRSおよびPUSCHの閉ループ制御に適用する。
【0077】
[端末の追加機能]
端末300の受信部301は、実施の形態1で説明した処理を行い、さらに、受信信号からTPCコマンドを含むPDCCHを抽出し、TPCコマンドを制御部302に出力する。
【0078】
制御部302は、実施の形態1で説明した処理を行う。さらに、制御部302は、受信部301がPDCCHを受信するタイミングを監視し、PDCCHに含まれるTPCコマンドの適用対象の信号を判断する。そして、制御部302は、TPCコマンドで指示された送信電力制御を適用対象の信号に対して実施する。
【0079】
[効果]
本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加えて、さらに、TPCコマンドの拡張を最小限に抑えつつ、複数種類の閉ループ電力制御を独立に実行することができるという効果を奏する。例えば、本実施の形態によれば、Rel.10のTPCコマンドをそのまま用いることもできる。なお、第1P-SRS、第2P-SRS、およびPUSCHのうち、第2P-SRSは端末300の遠方に位置する基地局100、200での受信を目的とした信号であり、第1P-SRSとPUSCHは端末300の近傍に位置する基地局100、200での受信を目的とした信号である。したがって、本実施の形態では、
図12のように、第2P-SRSの閉ループ制御と、第1P-SRSおよびPUSCHの双方を連動させる閉ループ制御との2種類の独立した制御を行えば良い。また、本実施の形態では、2種類のP-SRSの周期の組み合わせを変えることで、TPCコマンドの適用先に重みづけを行うことができる。例えば、
図12の例では、TPCコマンドを第1P-SRSおよびPUSCHに適用させる時間602は、第2P-SRSに適用させる時間601の7倍となる。
【0080】
[バリエーション1]
なお、本実施の形態では、TPCコマンドの適用対象の信号を、TPCコマンドを含むPDCCHがマッピングされる周波数リソース(サーチスペース)によって切り替えることもできる。この場合、時間的制約を生じずに複数の制御を行うことができる。
【0081】
[バリエーション2]
また、本実施の形態では、閉ループ制御を導入したうえでPDCCHをマッピングする周波数リソースを複数準備し、TPCコマンドを含むPDCCHが送受信される時間および周波数リソースに応じて制御を切り替えこともできる。ただし、時間と周波数に優劣をつけても良い。例えば、通常は、
図12と同様に時間の区分けを利用してTPCコマンドの適用対象を切り替える。しかし、第2P-SRSをTPCコマンドの対象とする時間601において、第1P-SRSおよびPUSCHの電力調整をする場合に限り、TPCコマンドを含む制御信号を特定の周波数リソース(サーチスペース)の位置にマッピングする。すなわち、時間601において,場合によっては第2P-SRSの電力調整をする制御信号と第1P-SRSおよびPUSCHの電力調整をする制御信号とが周波数リソース上では多重化され,時間的には同時に送信されることもある。例えば、
図13のように、第2P-SRSをTPCコマンドの対象とする時間601において、第1P-SRSおよびPUSCHの電力調整をする場合に限り、TPCコマンドを含む制御信号を周波数リソースの位置B(Position B)にマッピングする。これにより、第2P-SRSをTPCコマンドの対象とする時間601において、周波数リソースの位置A(Position A)にマッピングされた第2P-SRSの電力調整をする制御信号と周波数リソースの位置Bにマッピングされた第1P-SRSおよびPUSCHの電力調整をする制御信号とが周波数リソース上では多重化され、時間的には同時に送信される。これは、時間の区分けを利用したTPCコマンドの適用対象の切り替えを優先し、必要に迫られた場合のみ特定の周波数リソースに制御信号をマッピングする場合を表している。
【0082】
[バリエーション3]
基地局100、200との接続品質が十分良く、かつ、CSIの変動が緩やかな端末300に対しては、基地局100は、第1P-SRSさえ受信できれば、十分に、送受信参加基地局の選択、および、PUSCHの周波数スケジューリングの両方の処理を行うことができる。このような端末300に対し、本発明では、上記実施の形態1および2において、特定のA-SRSの送信要求(以下、「A-SRSトリガー」という)を特定のタイミングで端末300が受信した場合に限り、第2P-SRSの送信を停止しても良い。
【0083】
例えば、
図14に示すように、端末300は、現在送信中の第2P-SRSと同一の帯域幅のA-SRSを、第2P-SRSと同一タイミングで送信するように指示するA-SRSトリガーを受信した場合、それ以降の第2P-SRSの送信を停止する。
【0084】
あるいは、
図15に示すように、端末300は、上記A-SRSトリガーを受信した場合、そのタイミングの第2P-SRSのみの送信を停止する。
【0085】
これにより、端末数の急激な増加や多数の端末にA-SRSを送信させたい場合など、SRSのリソースが不足する場合に、第2P-SRSリソースを解放させることができるので、リソース不足を解消することができる。
【0086】
[バリエーション4]
本発明は、マクロ基地局100およびピコ基地局200が互いに異なるセルIDのセルを構成する場合にも適用することができる。この場合、マクロ基地局100およびピコ基地局200に対し、個別のセルIDとは別に、同一セル内の全ての基地局で共通に定義される共通セルID(バーチャルセルIDとも呼ぶ)を定義する(
図16)。個別のセルIDで生成したベース系列およびホッピングパターンを用いるSRSは、互いに直交せず、干渉となる。一方、共通セルIDで生成したベース系列およびホッピングパターンを用いるSRSは、セル内の全ての基地局で容易に直交させることができる。
【0087】
本実施の形態では、2層構造を持つヘテロジーニアスネットワークにおいて、端末300が、個別セルIDにより生成されるベース系列およびホッピングパターンを用いて第1P-SRSを生成し、共通セルIDにより生成されるベース系列およびホッピングパターンを用いて第2P-SRSを生成する。
【0088】
これにより、第1P-SRSおよびPUSCHは、従来のヘテロジーニアスネットワークと同様に、接続する基地局100、200(
図17の例ではCell ID #5の基地局)のみが測定に用いることができる。一方、第2P-SRSは、周囲の基地局100、200でも直交させることができ、干渉を生じず精度の良い測定に用いることができる。したがって、スムーズなハンドオーバーを実現することができる。
【0089】
(実施の形態3)
上記実施の形態1および2では、端末300が、マクロ基地局100から通知された送信パラメータに基づいて、広帯域で電力密度が低い第1P-SRSと狭帯域で電力密度の高い第2P-SRSの2種類のSRSを時間多重送信する場合について説明した。
【0090】
実施の形態3では、端末300が、マクロ基地局100から通知された送信パラメータに基づいて、広帯域で電力密度が低い第1A-SRSと狭帯域で電力密度が高い第2A-SRSとの2種類のSRSを時間多重送信する場合について説明する。なお、実施の形態3のネットワークシステムの構成は、実施の形態1の場合と同一である。また、実施の形態3において、マクロ基地局100、ピコ基地局200および端末300の主要な構成は、実施の形態1の場合と同一である。実施の形態3では、マクロ基地局100の受信部101、測定部102、制御部104および送信部105、ピコ基地局200の受信部201および測定部202、ならびに、端末300の受信部301、制御部302および送信部303の各機能が、実施の形態1の場合と異なる。
【0091】
[マクロ基地局の追加機能]
受信部101は、実施の形態1で説明した処理と比較して、P-SRSの抽出処理の代わりに、A-SRSの抽出処理を行う。また、受信部101は、A-SRSを測定部102に出力する。なお、端末300がマクロ基地局100の近傍に位置する場合、受信部101は、第1A-SRSと第2A-SRSの両方を抽出する。一方、端末300がマクロ基地局100の遠方に位置する場合、受信部101は、第2A-SRSを抽出する。
【0092】
測定部102は、A-SRSによりCSIを測定し、測定結果を制御部104に出力する。なお、端末300がマクロ基地局100の近傍に位置する場合、測定部102は、第1A-SRSおよび第2A-SRSのそれぞれによりCSIを測定する。一方、端末300がマクロ基地局100の遠方に位置する場合、測定部102は、第2A-SRSによりCSIを測定する。
【0093】
制御部104は、実施の形態1で説明した処理と比較して、第1P-SRSおよび第2P-SRSの選択処理の代わりに、第1A-SRSおよび第2A-SRSの選択処理を行う。具体的には、制御部104は、互いに異なる送信パラメータ(帯域幅、周波数位置、電力オフセット、周期、およびタイミング)を持つ複数のA-SRS候補中から、広帯域で電力密度が低く、チャネル変動に追従可能な送信周期のA-SRSを第1A-SRSとして選択し、狭帯域で電力密度が高く、端末300の移動に伴う基地局切替に追従可能な送信周期のA-SRSを第2A-SRSとして選択する。そして、制御部104は、第1A-SRSおよび第2A-SRSを含む複数のA-SRSの送信パラメータを示す情報(以下、「A-SRSパラメータセット」という)を、送信部105を介して端末300に送信し、基地局間インターフェース103を介して各ピコ基地局200に送信する。なお、A-SRSの送信パラメータは、P-SRSの場合と同じでも良いし異なっても良い。
【0094】
また、制御部104は、マクロ基地局100自身がPUSCH受信に参加する場合、測定部102から出力された第1A-SRSのCSI測定結果、および、PUSCH受信に参加するピコ基地局200から基地局間インターフェース部103を介して報告される第1A-SRSのCSI測定結果に基づいて、PUSCHの周波数スケジューリングおよび端末300のPUSCH送信パラメータの決定を行う。また、制御部104は、マクロ基地局100自身がPUSCH受信に参加しない場合、PUSCH受信に参加するピコ基地局200から基地局間インターフェース部103を介して報告される第1A-SRSのCSI測定結果に基づいて、PUSCHの周波数スケジューリングおよび端末300のPUSCH送信パラメータの決定を行う。そして、制御部104は、PUSCHの周波数スケジューリングの結果を示す情報および端末300のPUSCH送信パラメータを示す情報を、送信部105を介して端末300に送信し、基地局間インターフェース部103を介してPUSCH受信に参加するピコ基地局200に送信する。
【0095】
送信部105は、実施の形態1で説明した処理と比較して、P-SRS選択セットの代わりに、A-SRSパラメータセットに対して送信無線処理(符号化や変調、アップコンバート等)を行い、アンテナを介して各端末300に送信する。なお、A-SRSパラメータセットは、端末個別のRRC制御情報として通知しても良いし、MACヘッダに含めても良い。また、送信部105は、次のA-SRS送信可能タイミングおいてA-SRSの送信を要求するか否かを個別の端末ごとに決定し、1または2ビットのA-SRSトリガーをPDCCHに含めて送信する。
【0096】
[ピコ基地局の追加機能]
受信部201は、実施の形態1で説明した処理と比較して、P-SRSの抽出処理の代わりに、A-SRSの抽出処理を行う。また、受信部201は、A-SRSを測定部202に出力する。端末300がピコ基地局200の近傍に位置する場合、受信部201は、第1A-SRSおよび第2A-SRSの両方を抽出する。一方、端末300がピコ基地局200の遠方に位置する場合、受信部201は、第2A-SRSを抽出する。
【0097】
測定部202は、A-SRSによりCSIを測定し、基地局間インターフェース部203を介して測定結果をマクロ基地局100に送信する。なお、端末300がピコ基地局200の近傍に位置する場合、測定部202は、第1A-SRSおよび第2A-SRSのそれぞれによりCSIを測定する。一方、端末300がピコ基地局200の遠方に位置する場合、測定部202は、第2A-SRSによりCSIを測定する。
【0098】
[端末の追加機能]
受信部301は、実施の形態1で説明した処理と比較して、P-SRS選択セットの抽出処理の代わりに、A-SRSパラメータセットの抽出処理を行う。受信部301は、抽出したA-SRSパラメータセットを制御部302に出力する。また、受信部301は、PDCCHからA-SRSトリガーを検出して制御部302に出力する。
【0099】
制御部302は、受信部301から出力されたA-SRSパラメータセットに従い、第1A-SRSおよび第2A-SRSの送信パラメータ(帯域幅、周波数位置、電力オフセット、周期、およびタイミング)を送信部303に指示する。また、制御部302は、受信部301から出力されたA-SRSトリガーに応じて送信部303に第1A-SRSまたは第2A-SRSの送信を指示する。
【0100】
送信部303は、実施の形態1で説明した処理と比較して、第1P-SRSおよび第2P-SRSの送信無線処理の代わりに、第1A-SRSおよび第2A-SRSの送信無線処理を行う。具体的には、送信部303は、制御部302から第1A-SRSまたは第2A-SRSの送信を指示された場合、当該A-SRSトリガーが検出された時点から一定時間(例えば、4ms)経過後を起点として、その時点から後の一番近い送信可能タイミングにおいて当該A-SRSに対して送信無線処理を行う。
【0101】
また、端末300は、実施の形態1で説明した処理と比較して、第1P-SRSおよび第2P-SRSに対する送信電力制御の代わりに、第1A-SRSおよび第2A-SRSに対する送信電力制御を行う。
【0102】
[動作フロー]
次に、本実施の形態における処理に係る各装置の主要な処理手順について説明する。
【0103】
まず、マクロ基地局100が、広帯域で電力密度が低い第1A-SRSと、狭帯域で電力密度が高い第2A-SRSとを選択する。そして、マクロ基地局100が、選択した2種類のA-SRSを含む複数のA-SRSの送信パラメータを示す情報であるA-SRSパラメータセットを端末300に送信する。
【0104】
次に、端末300が、マクロ基地局100から受信したA-SRSパラメータセットに基づいて第1A-SRSおよび第2A-SRSの送信リソースをあらかじめ設定する。
図18は、あらかじめ設定されたA-SRS送信リソースの一例を示す図である。
【0105】
マクロ基地局100は、必要に応じて、A-SRSトリガーをPDCCHに含めて端末300に送信する。
【0106】
端末300は、A-SRSトリガーを受信した場合、各基地局100、200に向けて、あらかじめ設定したA-SRSの送信リソースの中で、A-SRSトリガーを検出した時点から一定時間(例えば、4ms)経過後を起点として、その時点から後の一番近い送信リソースにおいて第1A-SRSまたは第2A-SRSを送信する。
図19は、本実施の形態3に係る端末から送信されるA-SRSの一例を示す図である。
図19には、A-SRSトリガーに応じて、第1A-SRSおよび第2A-SRSのそれぞれが複数回送信される様子が示されている。第1A-SRSおよび第2A-SRSは、あらかじめ設定されたそれぞれの周期およびタイミングでしか送信されない。したがって、第1A-SRSと第2A-SRSとが重複して送信されることはない。
【0107】
次に、各基地局100、200が、受信したA-SRSを用いてCSIを測定する。そして、マクロ基地局100が、各基地局100、200で測定されたCSIに基づいてPUSCHの周波数スケジューリングおよび送信パラメータを決定する。また、マクロ基地局100が、各基地局100、200で測定されたCSIに基づいてSINRを算出し、SINRに基づいて送受信参加基地局を選択する。そして、マクロ基地局100は、選択した送受信参加基地局を示す情報を、端末300および各ピコ基地局200に通知する。また、マクロ基地局100は、端末300およびPUSCH受信に参加するピコ基地局200に、PUSCHの周波数スケジューリングおよびPUSCH送信パラメータを通知する。
【0108】
次に、端末300が、通知されたPUSCH送信パラメータに基づき、PUSCHの送信を行う。
【0109】
なお、マクロ基地局100は、各基地局100、200のCSI測定結果の監視を継続し、CSI測定結果の変化に応じて、送受信参加基地局の切り替えおよびPUSCHをスケジューリングする周波数リソースの変更を行う。
【0110】
[効果]
以上の通り、本実施の形態では、端末300が、マクロ基地局100から通知された送信パラメータに基づいて、広帯域で電力密度が低い第1A-SRSと狭帯域で電力密度が高い第2A-SRSとの2種類のSRSを時間多重送信する。これにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施の形態では、端末300が、A-SRSトリガーを受信した場合にのみ第1A-SRSまたは第2A-SRSを送信するため、各基地局100、200において不要な場合にはSRSが送信されない。これにより、端末300の電力消費および他セルに与える干渉を抑えることができる。また、本実施の形態では、マクロ基地局100が、A-SRSトリガーにより、端末300に送信させるA-SRSを選択することができるので、A-SRSの送信パラメータの設定を変更しなくても、第1A-SRSと第2A-SRSの送信比率を自由に変えることができる。
【0111】
[バリエーション1]
本実施の形態においては、上記実施の形態2のバリエーション4と同様に、端末300が、個別セルIDにより生成されるベース系列およびホッピングパターンを用いて第1A-SRSを生成し、共通セルIDにより生成されるベース系列およびホッピングパターンを用いて第2A-SRSを生成しても良い。
【0112】
これにより、端末300の近傍に位置する基地局100、200のみが、第1A-SRSを測定に用いることができる。一方、第2A-SRSは、セル内の全ての基地局100、200で容易に直交させることができるので、全ての基地局100、200は、第2A-SRSを用いて精度の良い測定を行うことができる。したがって、スムーズなハンドオーバーおよび広域でのA-SRS直交化を実現することができる。
【0113】
[バリエーション2]
本実施の形態においては、バリエーション1とは反対に、端末300が、共通セルIDにより生成されるベース系列およびホッピングパターンを用いて第1A-SRSを生成し、個別セルIDにより生成されるベース系列およびホッピングパターンを用いて第2A-SRSを生成しても良い。
【0114】
ここで、第2A-SRSが異なるセルIDにより生成されると、各基地局100、200は、第2A-SRSを分離することができなくなる。しかしながら、端末数がA-SRSの直交容量を上回る状況では、単一のセルIDでA-SRSを生成するよりも、異なるセルIDでA-SRSを生成した方が、干渉をランダム化して低減することができる。したがって、端末数が非常に多く、A-SRSの直交容量が不足するような状況において、広域でA-SRSの干渉ランダム化を実現することができる。
【0115】
[バリエーション3]
本実施の形態においては、あらかじめ設定されるA-SRS送信リソースの周波数ホッピングを行っても良い。すなわち、A-SRS送信リソースの周波数位置をあらかじめ設定されるパターンに従ってホッピングさせておき、トリガーがあった場合には、ホッピングによって決定される周波数位置でA-SRSを送信しても良い。
【0116】
これにより、第2A-SRS、すなわち狭帯域のA-SRSでも複数回トリガーすることで広帯域のCSI測定を行うことができるので、端末300の遠方に位置する基地局100、200においても広帯域かつ高精度なCSIを得ることができる。
【0117】
(実施の形態4)
実施の形態4では、端末300が送信する2種類のA-SRSのそれぞれに対して、閉ループの送信電力制御を行う場合について説明する。なお、実施の形態4のネットワークシステムの構成は、実施の形態3の場合と同一である。また、実施の形態4において、マクロ基地局100、ピコ基地局200、および端末300の主要な構成は、実施の形態3の場合と同一である。実施の形態4では、マクロ基地局100の制御部104および送信部105、ならびに、端末300の受信部301および制御部302の各機能が、実施の形態3の場合と異なる。
【0118】
[マクロ基地局の追加機能]
本実施の形態において、マクロ基地局100の制御部104は、実施の形態3で説明した処理を行い、さらに、受信されたA-SRSのSINRと目標SINRとの大小関係に基づいて、下り回線制御信号(PDCCH)のTPCコマンド(2ビット)を生成し、送信部105に出力する。また、制御部104は、PDCCHを送信部105に出力し、TPCコマンドが所望のA-SRSに適用されるタイミングで送信されるよう送信部105を制御する。
【0119】
送信部105は、実施の形態3で説明した処理を行い、さらに、制御部104からの指示に基づき、TPCコマンドを含むPDCCHを送信する。
【0120】
本実施の形態では、マクロ基地局100がTPCコマンドを送信する時間に応じて、このTPCコマンドが適用される信号が変わる。TPCコマンドの送信時間とそのTPCコマンドが適用される信号との関係は、予め、マクロ基地局100と端末300との間で決めておく。
【0121】
図20の例では、第2A-SRSの直前に送信される第1A-SRSの送信タイミングと第2A-SRSの送信タイミングとの間の時間1001の中でマクロ基地局100から送信されるTPCコマンドのみを第2A-SRSの閉ループ制御に適用し、その他の時間1002の中でマクロ基地局100から送信されるTPCコマンドを第1A-SRSおよびPUSCHの閉ループ制御に適用する。
【0122】
[端末の追加機能]
端末300の受信部301は、実施の形態3で説明した処理を行い、さらに、受信信号からTPCコマンドを含むPDCCHを抽出し、TPCコマンドを制御部302に出力する。
【0123】
制御部302は、実施の形態3で説明した処理を行い、さらに、受信部301がPDCCHを受信するタイミングを監視し、PDCCHに含まれるTPCコマンドの適用対象の信号を判断する。そして、制御部302は、TPCコマンドで指示された送信電力制御を適用対象の信号に対して実施する。
【0124】
[効果]
本実施の形態によれば、実施の形態3の効果に加えて、さらに、TPCコマンドの拡張を最小限に抑えつつ、複数種類の閉ループ電力制御を独立に実行することができるという効果を奏する。例えば、本実施の形態によれば、Rel.10のTPCコマンドをそのまま用いることもできる。なお、第1A-SRS、第2A-SRS、およびPUSCHのうち、第2A-SRSは端末300の遠方に位置する基地局100、200での受信を目的とした信号であり、第1A-SRSとPUSCHは端末300の近傍に位置する基地局100、200での受信を目的とした信号である。したがって、本実施の形態では、第1A-SRSおよびPUSCHの双方を連動させる閉ループ制御と、第2A-SRSの閉ループ制御との2種類の独立した制御を行えば良い。また、本実施の形態では、2種類のA-SRSの周期の組み合わせを変えることで、TPCコマンドの適用先に重みづけを行うことができる。例えば、
図20の例では、TPCコマンドを第1A-SRSおよびPUSCHに適用させる時間1002は、第2A-SRSに適用させる時間1001の7倍となる。
【0125】
[バリエーション1]
なお、本実施の形態では、TPCコマンドの適用対象の信号を、TPCコマンドを含むPDCCHがマッピングされる周波数リソース(サーチスペース)によって切り替えることもできる。この場合、時間的制約を生じずに複数の制御を行うことができる。
【0126】
[バリエーション2]
また、本実施の形態では、閉ループ制御を導入したうえでPDCCHをマッピングする周波数リソースを複数準備し、TPCコマンドを含むPDCCHが送受信される時間および周波数リソースに応じて制御を切り替えることもできる。この場合、時間と周波数に優劣をつけても良い。
【0127】
[バリエーション3]
また、本実施の形態では、A-SRSトリガーを送信する場合のみ、そのトリガーが対応するA-SRSに対して閉ループ制御を適用しても良い。すなわち、それぞれのA-SRSトリガーの送信を指示するPDCCHのTPCコマンドのみ、対応するA-SRSの閉ループ制御に適用する。
【0128】
これにより、A-SRSを送信しない場合に、A-SRSに対して不要な送信電力制御が行われることを回避することができる。
【0129】
[バリエーション4]
また、本実施の形態およびバリエーション1〜3のTPCコマンド適用先の設定ルールは、基地局および端末、または、システムにおいてあらかじめ定められたルールであっても良いし、複数のルールの中から基地局が選択し、それぞれの端末に通知することで適用されるルールであっても良い。
【0130】
これにより、基地局の配置、端末の分布、トラフィック、および干渉状態に応じて、TPCコマンドの適用条件を変更することができる。
【0131】
[他の実施の形態]
(1)上記各実施の形態ではアンテナを例にとって説明したが、本発明はアンテナポート(antenna port)でも同様に適用できる。
【0132】
アンテナポートとは、1本又は複数の物理アンテナから構成される、論理的なアンテナを指す。すなわち、アンテナポートは必ずしも1本の物理アンテナを指すとは限らず、複数のアンテナから構成されるアレイアンテナ等を指すことがある。
【0133】
例えば3GPP LTEにおいては、アンテナポートが何本の物理アンテナから構成されるかは規定されず、基地局が異なる参照信号(Reference signal)を送信できる最小単位として規定されている。
【0134】
また、アンテナポートはプリコーディングベクトル(Precoding vector)の重み付けを乗算する最小単位として規定されることもある。
【0135】
(2)上記各実施の形態では、本発明をハードウェアで構成する場合を例にとって説明したが、本発明はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0136】
また、上記各実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されても良いし、一部または全てを含むように1チップ化されても良い。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、またはウルトラLSIと呼称されることもある。
【0137】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現しても良い。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続および設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用しても良い。
【0138】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行っても良い。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0139】
2011年10月3日出願の特願2011−219540および2012年5月10日出願の特願2012−108449の日本出願に含まれる明細書、図面及び要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。