(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、プリンターやコピー機などの画像形成装置には、カセット式の給紙トレイが広く用いられている。このような給紙トレイには、用紙のサイド方向の位置を規制するためのサイド規制板が設けられる。各種サイズの用紙に対応可能とするため、一般的に、サイド規制板はサイド方向へ位置調節可能となっている。
【0003】
サイド規制板の位置を固定するための手法として、例えば、サイド規制板に設けられたロック用部材を、トレイ本体に設けられたラックに噛合させる手法が挙げられる。この手法によれば、ラック歯のピッチに応じた精度で、サイド規制板の位置が調節可能となる。しかし、この場合は比較的衝撃に弱く、例えば給紙トレイが画像形成装置本体へ勢いよく装着されたときに衝撃で歯飛びが生じ、サイド規制板の位置がずれて用紙スキューの原因となる。
【0004】
衝撃に強い手法としては、給紙トレイ本体に定形サイズの用紙に合わせた穴を開けておき、この穴と別部材を利用してサイド規制板を強固に固定する手法が挙げられる。しかし、この手法によれば、不定形サイズの用紙に対応した位置には強固にロックできず、また、部品点数が増えてコストアップを招くという問題がある。
【0005】
また、例えば特許文献1では、給紙トレイ本体に一対の噛合歯列を設け、サイド規制板側の部材をこれら双方へ噛合わせるようにした手法が提案されている。この手法によれば、サイド規制板の位置を固定するロック力が増強され、不定形サイズの用紙に対応した位置にもロック可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、一対の噛合歯列を設ける手法の場合、両方の噛合歯列へ部材を噛合わせるためには、位相差を合わせる等のために高い操作力を要する。そのため解除とロックの2段切り替えとなり、ユーザのロック操作し忘れによって解除状態で給紙トレイが装着され易く、この場合にはサイド規制板が極めて容易に動いてしまうという問題がある。
【0008】
なお、ロックを解除してサイド規制板を移動させる際、ロックを解除する操作とサイド規制板を移動させる操作との間に、持ち替え操作が必要となる。利便性の観点から、このような操作は省略可能となることが望まれる。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑み、強固なロックが可能であるとともに、ロック操作し忘れによる不具合の回避等が容易となる給紙トレイの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る給紙トレイは、所定の通紙方向へ給紙可能に用紙を保持するトレイ本体と、通紙方向と直交するサイド方向へ移動可能であり、前記保持されている用紙のサイド方向の位置を規制する規制板と、を備えた給紙トレイであって、前記トレイ本体には、サイド方向へ噛合歯が並んだ第1の噛合歯列と第2の噛合歯列が、向い合うように設けられ、前記規制板には、前記噛合歯列の高さ方向に可動であり、前記噛合歯列に係合することで該規制板のサイド方向への移動を抑止する係合部材が設けられ、第1の噛合歯列は、第2の噛合歯列より高くなって
おり、前記係合部材は、第1の噛合歯列と第2の噛合歯列の両方に係合するロック位置と、第1の噛合歯列と第2の噛合歯列の何れにも係合しない解除位置と、第1の噛合歯列に係合して第2の噛合歯列には係合しない半ロック位置とに可動であり、前記係合部材は、解除位置から半ロック位置へ向かう方向に付勢されている構成とする。
【0011】
本構成によれば、強固なロックが可能であるとともに、ロック操作し忘れによる不具合の回避等が容易となる。
【0013】
また、上記構成において、前記規制板には、サイド方向を軸として回動可能に支持された回動部材が設けられており、前記係合部材は、前記回動部材の回動に連動して、前記高さ方向へ移動するように形成されており、前記回動部材は、前記係合部材の位置が半ロック位置となる第1回動位置と、前記係合部材の位置が解除位置となる第2回動位置と、前記係合部材の位置がロック位置となる第3回動位置とに回動可能である構成としてもよい。
【0014】
また、上記構成としてより具体的には、前記回動部材は、第2回動位置から第1回動位置へ向かう方向に、付勢されている構成としてもよい。
【0015】
また、上記構成において、前記回動部材は、前記規制板に向けて突出した弾性を有する突起を備え、前記規制板は、前記回動部材が第1回動位置と第2回動位置との間で回動する際に、前記突起との干渉を回避させる第1孔と、前記回動部材が第3回動位置にあるときに、前記突起との干渉を回避させる第2孔と、を備え、前記回動部材が第1回動位置と第3回動位置との間で回動する際に、前記突起が前記規制板に干渉する構成としてもよい。
【0016】
また、上記構成としてより具体的には、第1の噛合歯列は、第2の噛合歯列よりも前記回動の支点に近い位置に配置されている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る給紙トレイによれば、強固なロックが可能であるとともに、ロック操作し忘れによる不具合の回避等が容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について、各図面を参照しながら以下に説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る給紙トレイXの全体的な斜視図である。また、
図2は、給紙トレイXの要部に関する詳細な斜視図である。なお、
図2では見易さを考慮して、
図1に示す配線部材の表示を省略している。
【0021】
これらの図に示すように、給紙トレイXは、カセット式の給紙トレイ本体1(以下、「カセット1」と表記することがある)、一対のサイド規制板(手前側のサイド規制板2と奥側のサイド規制板3)、ピニオンギア4、および持手Gなどを備えている。なお、以下の説明において、通紙方向、サイド方向(通紙方向と直交する)、および上下の方向は
図1に示す通りである。なお、サイド方向について、
図1での左下方向が手前側(ユーザに近い側)であり、右上方向が奥側である。
【0022】
給紙トレイXは、不図示の画像形成装置本体に着脱自在となっている。ユーザは持手Gを掴んで、給紙トレイXをサイド方向へ自在に移動させることができ、用紙の補給などを行うことが可能である。給紙トレイXは、画像形成装置本体に装着された状態で、通紙方向へ用紙を供給することが可能である。
【0023】
カセット1は、通紙方向へ給紙可能に用紙を保持するように形成されている。カセット1は多数の用紙を上下方向へ積み重ねて保持し、上側の用紙から順に画像形成装置本体へ供給することが可能である。
【0024】
また、一対のサイド規制板(2、3)は、サイド方向へ移動可能であり、カセット1に保持されている用紙のサイド方向の位置を規制する。ピニオンギア4は、これらのサイド規制板(2、3)を繋ぐように配置されている。
【0025】
すなわちピニオンギア4は、手前側のサイド規制板2に繋がったラックと奥側のサイド規制板2に繋がったラックとの間に介在し、ラックアンドピニオン機構を構成している。これにより、ユーザが手前側のサイド規制板2をサイド方向へ移動させると、奥側のサイド規制板3はこれと同じ量だけ逆向きに移動する。
【0026】
次に、カセット1およびサイド規制板2の構成等について、より詳細に説明する。
図3は、
図2にPで示す方向に見た場合の、カセット1およびサイド規制板2の構成(矢視図)を示している。また、
図4は、
図3に示すラッチ係合部1Aの詳細図であり、
図5は、ラッチ係合部1Aを上側から見た図である。
【0027】
各図に示すように、カセット1は、第1噛合歯列11と第2噛合歯列12を有している。これらの噛合歯列は、何れもサイド方向へ噛合歯が並んだものであり、第1噛合歯列11と第2噛合歯列12は向い合うように設けられている。これらの噛合歯列は、互いに向い合う一対のラックであると見ることも出来る。
【0028】
そして
図4に示すように、第1噛合歯列11の高さは、第2噛合歯列12の高さに比べてΔhだけ高くなっている。換言すれば、第1噛合歯列11の上端は、第2噛合歯列12の上端よりもΔhだけ大きく突出している。
【0029】
また、サイド規制板2は、操作部2A、第1貫通孔2B、第2貫通孔2C、操作レバー5、ロックレバー6、およびバネ7を有している。操作部2Aは、操作部5Cとともにユーザの操作に利用される部分であり、サイド規制板2の表面から手前側へ少し突き出した形態となっている。第1貫通孔2Bおよび第2貫通孔2Cは、サイド規制板2を貫通するように設けられた孔(切欠き)である。
【0030】
操作レバー5は、回動支点5A、突起5B、操作部5C、および切欠き5Dを有しており、サイド方向を軸として回動可能に支持された部材(回動部材)である。回動支点5Aは、サイド規制板2に支持されている部分であり、回動の支点となる。突起5Bは、サイド規制板2に向けて突出した弾性を有する突起である。突起5Bは、サイド規制板2側の第1貫通孔2Bまたは第2貫通孔2Cへ嵌まり込むように突出している。
【0031】
操作部5Cは、操作部2Aの近くに配置されており、操作部2Aと同様に手前側へ少し突き出した形態となっている。そのためユーザは、操作部2Aと操作部5Cを挟み込むようにして持つことが容易である。切欠き5Dはロックレバー6の上側先端部に連係し、この上側先端部が、切欠き5D内で可動となっている。切欠き5Dの形状は、操作レバー5の回動に連動して、ロックレバー6がほぼ上下方向(先述した各噛合歯列の高さ方向)へ移動するように設定されている。
【0032】
このようにロックレバー6は、各噛合歯列(11、12)の高さ方向に可動である。また、ロックレバー6の下側先端部は、各噛合歯列(11、12)の噛合歯と噛合う形状になっている。これにより、ロックレバー6が少なくとも一方の噛合歯列に係合する(噛合うことによりラッチ係合する)ことで、サイド規制板2のサイド方向への移動が抑止される。
【0033】
ロックレバー6は、第1噛合歯列11と第2噛合歯列12の両方に係合するロック位置(
図7を参照)と、第1噛合歯列11と第2噛合歯列12の何れにも係合しない解除位置(
図6を参照)と、第1噛合歯列11に係合して第2噛合歯列12には係合しない半ロック位置(
図3を参照)とに可動である。
【0034】
また、バネ7は、一端がサイド規制板2へ繋がるとともに、他端が操作レバー5に繋がっており、操作レバー5を一方の回動方向(
図3での時計回り方向)へ付勢する。
【0035】
なお、操作レバー5は、ロックレバー6の位置が半ロック位置となる第1回動位置と、ロックレバー6の位置が解除位置となる第2回動位置と、ロックレバー6の位置がロック位置となる第3回動位置とに回動可能である。
【0036】
そして先述した第1貫通孔2Bは、操作レバー5が第1回動位置と第2回動位置との間で回動する際に、突起5Bの通り道となる形状になっており、サイド規制板2と突起5Bとの干渉を回避させるように設けられている。第1回動位置と第2回動位置との間で回動する際、操作レバー5は第1貫通孔2Bにならって回動する。
【0037】
また、第2貫通孔2Cは、突起5Bの先端形状に合わせた形状(本実施形態では概ね真円形状)となっている。第2貫通孔2Cは、操作レバー5が第3回動位置にあるときに、突起部5Bが嵌まり込み、サイド規制板2と突起5Bとの干渉を回避させるように設けられている。
【0038】
なお、第1貫通孔2Bと第2貫通孔2Cは連続していない。そのため、操作レバー5が第1回動位置と第3回動位置との間で回動する際には、突起5Bがサイド規制板2へ干渉することになる。
【0039】
次に、第1〜第3の各回動位置についてより詳細に説明する。
図3は、操作レバー5が第1回動位置にある状態を表している。この状態では、バネ7によって操作レバー5が時計回り方向に付勢されているが、突起5Bが第1貫通孔2Bの縁へ当接することによって、操作レバー5はその位置に留まっている。そしてこの状態では、ロックレバー6は半ロック位置にある。
【0040】
半ロック位置にあるとき、ロックレバー6は第1噛合歯列11に係合するため、ロックレバー6が解除状態にある場合に比べて、サイド規制板2の移動が抑止される。なお、このとき、バネ7による付勢方向は、ロックレバー6を噛合歯へ押付ける向きの回動方向に一致している。そのためこの付勢力の分だけ、より強固なロックが実現される。
【0041】
図6は、操作レバー5が第2回動位置にある状態を表している。ユーザが操作部2Aと操作部5Cを挟み込むように持ち、バネ7の付勢力に抗した操作力(反時計周り方向に回す力)を操作レバー5に与えると、操作レバー5は第2回動位置へ回動する。この状態では、操作レバー5はユーザの力によって反時計回り方向に押されているが、突起5Bが第1貫通孔2Bの縁へ当接することによって、操作レバー5はその位置に留まっている。
【0042】
そして
図6に示す状態ではロックレバー6は解除位置にあり、何れの噛合歯列とも係合しないため、ユーザは、サイド規制板2を容易にサイド方向へ動かすことが出来る。このときユーザは、操作レバー5を操作したそのままの状態(操作部2Aと操作部5Cを挟み込むように持った状態)で、サイド規制板2のサイド方向(用紙幅方向)への移動操作を連続的に行うことが出来る。このように給紙トレイXでは、持ち替え操作を行うことなくサイド規制板2を動かすことができ、操作性に優れている。
【0043】
操作レバー5が第2回動位置にある状態でユーザが手を放すと、バネ7の付勢力によって操作レバー5は第1回動位置に戻る。そのため、ユーザが操作レバー5を第1回動位置へ戻すこと意識しなくても、操作レバー5は自然に第1回動位置へ戻る。これにより、ユーザがロック操作をし忘れても、ロックレバー6が解除位置のまま給紙トレイXが画像形成装置本体へ装着されることは防がれる。
【0044】
また、第2噛合歯列12より高く形成された第1噛合歯列11は、第2噛合歯列12よりも回動支点5Aに近い位置に配置されているため、ロックレバー6の回動軌跡が阻害されることはない。また、第1貫通孔2Bがあることにより、操作レバー5の第1回動位置と第2回動位置との間における回動が、突起5Bによって妨げられることはない。
【0045】
また、
図7は、操作レバー5が第3回動位置にある状態を表している。操作レバー5が第1回動位置にあるとき、ユーザが操作レバー5へ時計回り方向の操作力を与えると、突起5Bは第1貫通孔2Bの右側の縁へ押されて縮むように弾性変形し、第1貫通孔2Bを乗り越えて第2貫通孔2Cへ嵌まり込む。
【0046】
これにより操作レバー5は、第3回動位置へ留まることになる。なお、突起5Bの長さや先端形状は、ユーザの操作力によって第1貫通孔2Bを適切に乗り越えることが出来るように設定されていることが望ましい。例えば、突起5Bの先端形状は、半球状となっていることが望ましい。
【0047】
図7に示す状態ではロックレバー6はロック位置にあり、ロックレバー6が両方の噛合歯列(11、12)に係合する。そのため、ロックレバー6は強力なロック力を発揮し、サイド規制板2のサイド方向への移動は堅牢にロックされる。これにより、ユーザによって給紙トレイXが勢いよく画像形成装置本体へ装着されても、その衝撃によるサイド規制板の位置ずれは極力回避される。
【0048】
なお、
図7に示すようにロックレバー6を両方の噛合歯列(11、12)へ係合させる際には、歯の位相を合わせる必要があるため、ユーザ操作による押し込みの力が必要となる。また、この状態において、ユーザが操作レバー5へ反時計回り方向へ操作力を与えると、突起5Bは第2貫通孔2Cを乗り越えて第1貫通孔2Bへ戻り、操作レバー5を第1回動位置へ戻すことが出来る。
【0049】
以上説明した通り、本実施形態に係る給紙トレイXは、所定の通紙方向へ給紙可能に用紙を保持するカセット1(トレイ本体)と、通紙方向と直交するサイド方向へ移動可能であり、前記保持されている用紙のサイド方向の位置を規制するサイド規制板2とを備えている。
【0050】
そして、カセット1には、サイド方向へ噛合歯が並んだ第1の噛合歯列と第2の噛合歯列(11、12)が、向い合うように設けられている。また、サイド規制板2には、各噛合歯列(11、12)の高さ方向に可動であり、噛合歯列に係合することでサイド規制板2のサイド方向への移動を抑止するロックレバー6(係合部材)が設けられている。また、第1噛合歯列11は、第2噛合歯列12より高くなっている。
【0051】
更にロックレバー6は、先述した通り、ロック位置、解除位置、および半ロック位置に可動である。そのため、ロックレバー6をロック位置に配置して強固なロックを得ることが可能であるとともに、例えば解除位置から半ロック位置へ自然に移動するようにして、ロック操作し忘れによる不具合が回避されるようにすることも可能である。
【0052】
また、給紙トレイXによれば、不定形サイズの用紙に対しても強くロック可能であり、カセット1の装着時の耐衝撃性が向上する。更に給紙トレイXによれば、比較的少ない部品点数で構成できるため製造コストを下げ易く、また、先述したように、持ち替え操作不要で、ロック解除から用紙幅方向へのサイド規制板の移動操作を連続で行うことが可能である。
【0053】
なお、本発明の内容は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲において種々の変形を加えて実施され得る。