【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下の実施例等における錯体の同定及び純度決定に用いたNMRスペクトルは、バリアンテクノロジージャパンリミテッド製Mercury Plus 300 4N型装置、又はBruker BioSpin Avance III 500 Systemで測定した。また、GC分析は、Chirasil-DEX CB(0.25mm×25m, 0.25μm)(バリアン社製)、InertCapPure-WAX(0.25mm×30m, 0.25μm)(ジーエルサイエンス社製)を、HPLC分析はCHIRALCEL OJ-H(0.46mm×25cm)(ダイセル社製)、ODS-3V(4.6mm×25cm, 5μm)(ジーエルサイエンス社)CHIRALPAK AD(4.6mm×25cm)を用いて測定した。
【0063】
なお、実施例中の記号は以下の意味を表す。
TsDPEN:N−(p−トルエンスルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン;
TIPPsDPEN:N−(2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン
o−TFTsDPEN:N−(2―トリフルオロメチルベンゼンスルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン
MESsDPEN:N−(2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン
TsCYDN:N−(p−トルエンスルホニル)−1,2−シクロヘキサンジアミン
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
DPPE:ジフェニルホスフィノエタン
ただし、錯体中でのジアミンは、ジアミンの1個又は2個の水素原子が脱離したものを表す。
S/Cは、基質モル数/触媒モル数の値を表す。
以下の合成1〜合成9は、一般式(1)で表されるルテニウム錯体を得るための合成方法を示す。
【0064】
[合成1]
N−[(1R,2R)−1,2−ジフェニル−2−(2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)エチルアミノ)エチル]−4−メチルベンゼンスルホンアミド(N-((1R,2R)-1,2-diphenyl-2-(2-(tetrahydro-2H-pyran-2-yloxy)ethylamino)ethyl)-4-methylbenzenesulfonamide)の製造
次に示す反応により目的の化合物(B)を製造した。
【0065】
【化14】
【0066】
50mlシュレンク管に、(R,R)−TsDPEN 5.0g(13.65mmol)と、アルキルブロマイド(A)2.85g(2.07ml)(13.65mmol)とをDMSO 10mlに混合し、60℃で29時間反応させた。その後、反応混合物にジクロロメタン50mlと飽和NaHCO
3水溶液50mlを入れ攪拌した後、有機層を分液し50mlの飽和NaHCO
3水溶液でさらに2回洗浄した。ジクロロメタンを回収し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して目的である化合物(B)を4.94g(72%収率)得た。
【0067】
1H−NMR(CDCl
3,300MHz)δ:
1.43-1.80(m, 6H), 2.32(s, 3H), 2.42-2.70(m, 2H), 3.40-3.55(m, 2H), 3.70-3.85(m, 2H) ,3.77(d, 1H), 4.30(m, 1H), 4.45 (d, 1H), 6.93-7.38(m, 14H)
【0068】
[合成2]
N−[(1R,2R)−2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−1,2−ジフェニルエチル]−4−メチルベンゼンスルホンアミド(N-((1R,2R)-2-(2-hydroxyethylamino)-1,2-diphenylethyl)-4-methylbenzenesulfonamide)の製造
次に示す反応により目的のジアミン(C)を製造した。
【0069】
【化15】
【0070】
前記合成1で得られた化合物(B)5.69gにエタノール135ml、及び1M HCl水溶液34.5mlを加え40℃で2時間反応させた。その後、反応混合物にNaHCO
3を3.45g加え、溶液を中和した後、水75mlとジエチルエーテル150mlを加え分液した。その後水50mlを加えエバポレーターでエーテルを除去することで、白色の結晶が析出した。氷冷した後、ろ過し、ろ物を水で洗浄後、減圧下、70℃にて乾燥することにより目的のジアミン(C)を4.33g(92%収率)得た。
【0071】
1H−NMR(CDCl
3,300MHz)δ:
2.31(s, 3H), 2.50-2.62(m, 2H), 3.58-3.75(m, 2H), 3.79(d, 1H), 4.40(d, 1H), 6.82-7.41(m, 14H)
【0072】
[合成3]
(4−メチルシクロヘキサ−1,4−ジエニル)メタノール((4-methylcyclohexa-1,4-dienyl)methanol)の製造
次に示す反応により目的の化合物(F)を製造した。
【0073】
【化16】
【0074】
500mL四つ口フラスコ内に、CoBr
2 1.73g(7.93mmol)、ZnI
2 8.4g(26.3mmol)、DPPE 3.47g(8.8mmol)、ジクロロメタン370mlを仕込んだ後、窒素置換を行い、30℃で30分攪拌した。その後、イソプレン78ml(53.1g,780mmol)、プロパルギルアルコール41ml(39.3g,701mmol)、及びBu
4NBH
4 2.2g(8.53mmol)を投入し、30℃で7時間反応させ、その後ジクロロメタン溶液を回収し、160℃にて減圧蒸留し、目的のジエン混合物(F)を27.7g(32%収率)得た。この混合物中の目的のジエンのガスクロマトグラフィー(GC)による純度は約98%であった。
【0075】
1H−NMR(CDCl
3,300MHz)δ:
1.67(s, 3H), 2.55-2.70(m, 4H), 4.02 (s, 2H), 5.44(m, 1H), 5.68(m, 1H)
【0076】
[合成4]
[RuCl
2(1−(ブロモメチル)−4−メチルベンゼン)]
2([RuCl
2(1-(bromomethyl)-4-methylbenzene)]
2)の製造
次に示す反応により目的の錯体化合物(G)を製造した。
【0077】
【化17】
【0078】
前記合成3で得られたジエン(F)4.75g(38.2mmol)と三塩化ルテニウム・三水和物2.0g(7.65mmol)、及びNaHCO
3 0.643g(7.65mmol)を2−メトキシエタノール40mlと水4mlに溶解させ、130℃にて1.5時間反応させた。その後エバポレーターで溶媒を留去した残渣に、濃臭化水素酸水溶液52mlと濃硫酸4mlを加え100℃で4時間撹拌した。反応後の溶液にジクロロメタンと水、2−メトキシエタノールを加えて攪拌、静置した後に析出した結晶をろ過することにより目的錯体(G)を1.9g(79%収率)得た。
【0079】
1H−NMR(DMSO−d
6,300MHz)δ:
2.23(s, 3H), 4.40(s, 2H), 5.84(d, 2H), 6.15(d, 2H)
【0080】
[合成5]
RuCl((R,R)−O−HT−TsDPEN)の製造
次に示す反応により目的の錯体RuCl((R,R)−O−HT−TsDPEN)を製造した。
【0081】
【化18】
【0082】
前記合成4で得られたアレーンダイマー(G)1.6g(2.24mmol)と、合成2で製造したジアミン(C)1.53g(3.73mmol)、トリエチルベンジルアンモニウムヨージド(Et
3BnNI)1.19g(3.73mmol)、ジクロロメタン52.8ml、及び水52.8mlを混合し、35℃で攪拌したところにKOH1.78g(26.9mmol)を加えて3時間反応させた。有機層が紫色の溶液になった。静置後、水層を除去し、水50mlを加えて攪拌した後、静置して分液を行った。この分液操作を3回行ったのち、0.1M HCl水溶液を65ml加え30分攪拌した。その後、NaHCO
3を0.034g加え溶液を中和した後、静置し、ジクロロメタン層のみを取り出し乾固させた。これをシリカゲルカラム(溶離液:CHCl
3/MeOH=20/1)にて精製することにより、目的錯体であるRuCl((R,R)−O−HT−TsDPEN)を1.1g(45%収率)得た(液体クロマトグラフィー(HPLC)による純度は約95%であった)。
【0083】
1H−NMR(CD
2Cl
2,300MHz)δ:
2.25(s,3H), 2.52(s,3H), 3.13(m,1H), 3.60(m,1H), 3.80-4.00(m,4H), 4.48(d,J=15.0Hz,1H), 4.52(brs,1H), 4.95(d,J=15.0 Hz, 1H), 5.45(d,J=5.2Hz,1H), 5.75(d,J = 6.2 Hz,1H), 6.05(d,J=5.2 Hz,1H), 6.60 (d,J=6.9 Hz,2H), 6.65-6.70(m,4H) , 6.88(d,J = 8.0 Hz,2H), 7.08-7.18(m,4H), 7.23(d,J=8.0 Hz,2H)
HRMS(ESI):
C
31H
33N
2O
3RuSとして、
計算値:[M−Cl]
+ 615.1258
実測値: 615.1258
【0084】
[合成6]
2−((4−メチルシクロヘキサ−1,4−ジエニル)メトキシ)エタノール及び2−((5−メチルシクロヘキサ−1,4−ジエニル)メトキシ)エタノール(2-((4-methylcyclohexa-1,4-dienyl)methoxy)ethanol及び2-((5-methylcyclohexa-1,4-dienyl)methoxy)ethanol)の製造
【0085】
【化19】
【0086】
1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン7.74g(0.019mol)、臭化コバルト4.05g(0.019mol)、ヨウ化亜鉛11.82g(0.037mol)、亜鉛2.42g(0.037mol)をTHF460mlに溶解し、70℃で15分攪拌した。室温まで冷却し、イソプレン74.89g(1.10mol)を加えた後、水浴下、アルキンアルコール92.70g(0.93mol)をゆっくりと滴下した。35℃で1時間攪拌した後、溶媒を減圧留去し得られた残渣にトルエン460ml、水460mlを加えた(攪拌10分、静置10分)。窒素雰囲気下、セライトろ過後、得られた溶液を分液した。溶媒を減圧留去し得られた粗生成物をクライゼン蒸留(101〜113℃/3torr)で精製することにより106.6gのジエンアルコールを無色油状物質として得た。収率68.5%(1,4type/1,5type=91/9)。
【0087】
1H−NMR(CDCl
3,300MHz)δ:
1.68 (s, 3H) , 2.31 (brs, 1H), 2.64 (brs, 4H), 3.48 - 3.52 (m, 2H), 3.70 - 3.75 (m, 2H), 3.93 (s, 2H), 5.43 - 5.45 (m, 1H), 5.70 - 5.71 (m, 1H);
HRMS(ESI):
C
10H
16O
2として、
計算値:[M+H]
+ 167.1430
実測値: 167.1432
【0088】
[合成7]
2−((4−メチルシクロヘキサ−1,4−ジエニル)メトキシ)エチル 4−メチルベンゼンスルホナート及び2−((5−メチルシクロヘキサ−1,4−ジエニル)メトキシ)エチル 4−メチルベンゼンスルホナート(2-((4-methylcyclohexa-1,4-dienyl)methoxy)ethyl 4-methylbenzenesulfonate及び2-((5-methylcyclohexa-1,4-dienyl)methoxy)ethyl 4-methylbenzenesulfonate)の製造
【0089】
【化20】
【0090】
合成6で得られたジエンアルコール100.00g(0.59mol)、トリエチルアミン90.29g(0.89mol)、1−メチルイミダゾール73.20g(0.89mol)、をトルエン400mlに溶解した。氷浴下、p−トルエンスルホニルクロリド130.33g(0.68mol)のトルエン溶液(400ml)をゆっくりと滴下した後、室温で1時間攪拌した。水を加え分液し、得られた有機層を15%硫酸、水、飽和重曹水の順に洗浄した。溶媒を減圧留去し、目的とするトシレート188.01gを無色油状物質として得た。収率98.1%(1,4type/1,5type=91/9)。
【0091】
1H−NMR(CDCl
3,300 MHz)δ:
1.67 (s, 3H), 2.44 (s, 3H), 2.58 (brs, 4H), 3.58 - 3.55 (m, 2H), 3.84 (s, 2H), 4.18 - 4.14 (m, 2H), 5.41 - 5.40 (m, 1H), 5.64 - 5.63 (m, 1H), 7.33 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.80 (d, J = 8.3 Hz, 1H);
HRMS(ESI):
C
17H
22O
4Sとして、
計算値:[M+H]
+ 323.1312
実測値: 323.1325
【0092】
[合成8]
2,4,6−トリイソプロピル−N−((1R,2R)−2−(2−((4−メチルシクロヘキサ−1,4−ジエニル)メトキシ)エチルアミノ)−1,2−ジフェニルエチル)ベンゼンスルホンアミド(2,4,6-triisopropyl-N-((1R,2R)-2-(2-((4-methylcyclohexa-1,4-dienyl)methoxy)etheylamino)-1,2-diphenylethy)benzenesulfonamide)の製造
【0093】
【化21】
【0094】
前記合成7で得られたトシレート6.03g(18.82mmol)をトルエン25mlに溶解し、DIPEA2.43g(18.82mmol)、(R,R)−TIPPsDPEN9.00g(18.80mmol)を加え、135℃で13時間攪拌した。その後溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=20/1→15/l)で精製することにより表題化合物10.53gを無色油状物質として得た。収率89.0%。
【0095】
1H−NMR(CDCl
3,300MHz)δ:
1.06(d, J = 6.9Hz, 3H), 1.21(d, J = 6.9Hz, 3H), 1.87(brs, 1H), 1.68(s, 3H), 2.60(brs, 4H), 2.71-2.48(m, 2H), 3.52-3.34(m, 2H), 3.55(d, J = 8.9Hz, 1H), 3.77(s, 2H), 3.95(septet, J = 6.7Hz, 3H), 4.40(d, J = 8.9Hz,1H), 5.44(m, 1H), 5.64(m, 1H),6.52(brs, 1H), 6.74-7.28(m, 12H);
HRMS(ESI):
C
39H
53N
2O
3Sとして、
計算値:[M+H]
+ 629.3771
実測値: 629.3771
【0096】
[合成9]
RuCl((R,R)−O−HT−TIPPsDPEN)の製造
【0097】
【化22】
【0098】
前記合成8で得られたスルホンアミド2.02g(3.21mmol)をメタノール8mlに溶解した。氷冷下で1M塩酸のメタノール溶液0.67g(6.42mmol)を加え、室温にて20分間攪拌した。その後、溶媒を減圧留去し得られた残渣を3−メトキシプロパノール30ml、水18mlに溶解した。三塩化ルテニウム・三水和物0.72g(2.75mmol)を加え、120℃で1時間攪拌した。溶媒を減圧留去し得られた残渣にIPA35ml、トリエチルアミン0.72g(7.15mmol)を加え、60℃で1時間攪拌した。溶媒を減圧留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=97/3→20/1)で精製することにより目的とするRu錯体1.28gを得た。収率52.3%。
【0099】
1H−NMR(CD
2Cl
2,500MHz)δ:
1.0-1.2 (m, 18H), 1.70(m, 1H), 2.41(s, 3H), 2.60(m, 1H), 3.05(m, 1H), 3.35(m, 1H),3.68(m, 1H), 3.75(t, 1H), 3.85(m, 2H), 4.18(d, 1H), 4.25(d, 1H), 4.85(brs, 1H), 5.02(d, 1H), 5.30(d, 1H), 5.48(d, 1H), 5.63(d, 1H), 6.35(d, 1H), 6.40-6.70(m, 10H), 6.90-7.05(m, 3H);
HRMS(ESI):
C
39H
50N
2O
3SClRuとして、
計算値:[M+H]
+ 763.2269
実測値: 763.2257
【0100】
[合成10]
N−((1R,2R)−2−(2−((4−メチルシクロヘキサ−1,4−ジエニル)メトキシ)エチルアミノ)−1,2−ジフェニルエチル)−2−(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホンアミド塩酸塩の製造
【0101】
【化23】
【0102】
前記合成7で得られたトシレート8.07g(26.1mmol)をトルエン31.6mlに溶解し、DIPEA3.38g(26.2mmol)、(R,R)−o−TFTsDPEN10.00g(23.8mmol)、ヨウ化カリウム4.34g(26.2mmol)を加え、135℃で6時間攪拌した。反応液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する事により、ジアミンを10.1g得た(収率74.5%)。その後、ジアミン10.1g(17.7mmol)に対して、ジクロロメタン110ml、HClメタノール溶液(1N)65.3mlを加えて、0.5時間攪拌した後、溶媒を除去することにより目的とするジアミン塩酸塩を11.1g得た。収率93.9%。
【0103】
1H−NMR(DMSO,300MHz)δ:
1.62(m, 3H), 2.60(s, 3H), 2.78-3.12(m, 2H), 3.52-3.70(m, 2H), 3.86(s, 2H) ,4.75(m, 1H), 4.92(m, 1H), 5.40(m, 1H), 5.68(m, 1H), 6.75-7.35(m, 10H), 7.40(t, 1H), 7.50(t, 1H), 7.60(d, 1H), 7.75(d, 1H), 8.90(m, 1H), 8.98(brd, 1H), 9.92(brd, 1H);
19F−NMR(DMSO)δ:-57.16;
HRMS(ESI):
C
31H
33N
2O
3F
3S・HClとして、
計算値:[M−Cl]
+ 571.2237
実測値: 571.2244
【0104】
[合成11]
RuCl((R,R)−O−HT−o−TFTs−DPEN)の製造
【0105】
【化24】
【0106】
合成10で製造したジアミン塩酸塩5.0g(8.25mmol)、を3−メトキシプロパノール66ml、水22mlに溶解した。三塩化ルテニウム・三水和物1.79g(6.86mmol)、炭酸水素ナトリウム0.58g(6.86mmol)を加え、120℃で2時間攪拌した。3−メトキシプロパノールを50ml回収後、MIBK75ml、トリエチルアミン2.78g(27.45mmol)を加え、60℃で1時間攪拌した。0.3M塩酸を加え分液し、得られた有機層を2回水洗した。溶媒を約60ml回収して、ヘプタン85mlを加え晶析を行った。析出した結晶をろ取し、目的とするRu錯体4.60gを得た。収率95.2%。
【0107】
1H−NMR(CD
2Cl
2,300MHz)δ:
2.50 (s, 3H), 3.15 - 3.20 (m, 1H), 3.70 - 3.82 (m, 2H), 4.00 (m, 2H), 4.15 (m, 1H), 4.40 (m, 1H), 4.80 (m, 1H), 5.10 (d, 1H), 5.45 (d, 1H), 5.62 (d, 1H), 5.70 (d, 1H), 6.38 (d, 1H), 6.50-7.50(m, 14H);
19F−NMR(DMSO)δ:
-58.45
HRMS(ESI):
C
31H
30ClN
2O
3F
3RuSとして、
計算値:[M+H]
+ 705.7034
実測値: 705.0758
【0108】
[合成12]
2,4,6−トリメチル−N−((1R,2R)−2−(2−((4−メチルシクロヘキサ−1,4−ジエニル)メトキシ)エチルアミノ)−1,2−ジフェニルエチル)ベンゼンスルホンアミドの製造
【0109】
【化25】
【0110】
前記合成7で得られたトシレート1.0g(3.0mmol)をトルエン5mlに溶解し、DIPEA0.39g(3.0mmol)、(R,R)−MESsDPEN1.3g(3.3mmol)を加え、120℃で8時間攪拌した。その後溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=4/1)で精製することにより表題化合物0.71gを無色油状物質色として得た。収率44.7%。
【0111】
[合成13]
RuCl((R,R)−O−HT−MESs−DPEN)の製造
【0112】
【化26】
【0113】
合成12で得られたスルホンアミド0.67g(1.2mmol)をメタノール5mlに溶解した。氷冷下で1M塩酸のメタノール溶液0.25g(2.4mmol)を加え、室温にて20分間攪拌した。その後、溶媒を減圧留去し得られた残渣を2−メトキシエタノール20ml、水2ml、炭酸水素ナトリウム0.09g(1.2mmol)に溶解した。三塩化ルテニウム・三水和物0.36g(1.35mmol)を加え、120℃で3時間攪拌した。溶媒を減圧留去し得られた残渣にエタノール40ml、トリエチルアミン0.5g(4.94mmol)を加え、80℃で2時間攪拌した。溶媒を減圧留去し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1)で精製することにより目的とするRu錯体0.13gを得た。収率16.0%。
【0114】
1H−NMR(CD
2Cl
2,500MHz)δ:
1.95 (s, 3H), 2.45(s, 6H), 2.46(s, 3H), 3.05(m, 1H), 3.70(m, 1H), 3.80(d, 1H), 3.85(m, 2H), 3.95(d, 1H), 4.25(d, 1H), 4.75(m, 1H), 5.00(d, 1H), 5.40(d, 1H), 5.50(d, 1H), 5.60(d, 1H), 6.30(s, 2H), 6.53(d, 1H), 6.40-7.00(m, 10H);
HRMS(ESI):
C
33H
37ClN
2O
3RuSとして、
計算値:[M+H]
+ 679.1335
実測値: 679.1327
【0115】
[合成14]
4−メチル−N−((1R,2R)−2−(2−((4−メチルシクロヘキサ−1,4−ジエニル)メトキシ)エチルアミノ)シクロヘキシル)ベンゼンスルホンアミド塩酸塩の製造
【0116】
【化27】
【0117】
前記合成7で得られたトシレート5.06g(16.4mmol)をトルエン26mlに溶解し、DIPEA2.12g(16.4mmol)、(R,R)−TsCYDN4.00g(14.9mmol)、ヨウ化カリウム2.72g(16.4mmol)を加え、135℃で20時間攪拌した。反応液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する事により、ジアミンを2.92g得た。収率46.9%。その後、ジアミン2.8g(6.69mmol)に対して、ジクロロメタン42ml、HClメタノール溶液(1N)24.6mlを加えて、0.5時間攪拌した後、溶媒を除去することにより目的とするジアミン塩酸塩を2.9g得た。収率94.7%。
【0118】
1H−NMR(DMSO,300MHz)δ:
0.95-1.30(m, 4H), 1.50(m, 2H), 1.63(s, 3H), 2.10(m, 2H), 2.40(s, 3H), 2.60(m, 2H), 2.95(brd, 1H), 3.18(m, 2H), 3.60(m, 2H), 3.90(s, 2H), 5.40(m, 1H), 5.70(m, 1H), 7.40(d, 1H), 7.75(d, 1H), 8.15(d, 1H), 8.23(brd, 1H), 9.10(brd, 1H)
HRMS(ESI):
C
23H
34N
2O
3Sとして、
計算値:[M−Cl]
+ 419.2363
実測値: 419.2365
【0119】
[合成15]
RuCl((R,R)−O−HT−Ts−cydn)の製造
【0120】
【化28】
【0121】
合成14で合成したジアミン塩酸塩0.5g(1.1mmol)、を3−メトキシプロパノール15ml、水3mlに溶解した。三塩化ルテニウム・三水和物0.25g(0.96mmol)、炭酸水素ナトリウム0.08g(0.96mmol)を加え、120℃で1時間攪拌した。3−メトキシプロパノールを12ml回収後、MIBK13ml、トリエチルアミン0.39g(3.82mmol)を加え、60℃で1時間攪拌した。0.3M塩酸を加え分液し、得られた有機層を2回水洗した。溶媒を約10ml回収して、ヘプタン15mlを加え晶析を行った。析出した結晶をろ取し、目的とするRu錯体0.24gを得た。収率45.5%。
【0122】
1H−NMR(CD
2Cl
2,500MHz)δ:
0.65-1.05 (m, 4H), 1.90 (m, 1H), 1.15 (m, 1H), 2.08 (m, 1H), 2.70 (m, 1H), 2.75 (s, 1H), 2.77 (s, 1H), 2.60 (m, 1H), 3.60-3.70 (m, 2H), 3.80 (m, 1H), 4.00 (m, 1H), 4.25 (m, 1H), 4.35 (d, 1H), 4.92 (d, 1H), 5.25 (d, 1H), 5.50 (d, 1H), 5.67 (d, 1H),5.83 (d, 1H), 7.20 (d, 1H), 7.80 (d, 1H);
HRMS(ESI):
C
23H
31N
2O
3RuSとして、
計算値:[M−Cl]
+ 517.1093
実測値: 517.1101
【0123】
[実施例1]
(2R,3R)−2−アセチルアミノ−3−ヒドロキシオクタデカン酸メチルの製造
合成5で製造したRuCl((R,R)−O−HT−TsDPEN)(6.5mg,0.01mmol)、2−アセチルアミノ−3−オキソオクタデカン酸メチル(0.93g,2.50mmol)、1,4−ジオキサン(4.6ml)の溶液にトリエチルアミン(0.758g,7.5mmol)とギ酸(0.345g,7.5mmol)を加え、90℃に加熱し、6時間撹拌を続けた。一部をサンプリングし、HPLCにて分析したところ、転化率は99%であった。またアンチ体((2R,3R)体)とシン体((2S,3R)体)の比率はアンチ体:シン体=90.5:9.5であった。
20℃まで冷却した後、水洗を行い、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下回収し、標題化合物を得た。得られた粗生成物を標品と比較分析した結果、標題化合物の含有量は0.88g、収率95%であった。またアンチ体の光学純度は97%eeであった。
【0124】
[実施例2]
(2R,3R)−2−アセチルアミノ−3−ヒドロキシオクタデカン酸メチルの製造
合成9で製造したRuCl((R,R)−O−HT−TIPPsDPEN)(7.6mg,0.01mmol)、2−アセチルアミノ−3−オキソオクタデカン酸メチル(0.93g,2.50mmol)、1,4−ジオキサン(4.6ml)の溶液にトリエチルアミン(0.758g,7.5mmol)とギ酸(0.345g,7.5mmol)を加え、90℃に加熱し、6時間撹拌を続けた。一部をサンプリングし、HPLCにて分析したところ、転化率は70%であった。またアンチ体((2R,3R)体)とシン体((2S,3R)体)の比率はアンチ体:シン体=92.5:7.5であった。また、アンチ体の光学純度は97%eeであった。
【0125】
[比較例]
(2R,3R)−2−アセチルアミノ−3−ヒドロキシオクタデカン酸メチルの製造
RuCl[(R,R)TsDPEN)](p−cymene)錯体(6.4mg,0.01mmol)、2−アセチルアミノ−3−オキソオクタデカン酸メチル(0.93g,2.50mmol)、1,4−ジオキサン(4.6ml)の溶液にトリエチルアミン(0.758g,7.5mmol)とギ酸(0.345g,7.5mmol)を加え、90℃に加熱し、6時間撹拌を続けた。一部をサンプリングし、HPLCにて分析したところ、転化率は65%であった。またアンチ体((2R,3R)体)とシン体((2S,3R)体)の比率はアンチ体:シン体=81.5:18.5であった。また、アンチ体の光学純度は97%eeであった。
実施例1及び2並びに比較例の結果を表1に示した。
【0126】
【表1】
ここで、本明細書中で、Deは(アンチ体−シン体)/(アンチ体+シン体)の質量割合を示す。
【0127】
実施例1及び2と比較例の内容から、反応条件(s/c、温度、反応時間)が同じである場合に、本願発明で使用するルテニウム錯体を選択することにより、顕著に転化率が上がることが分かった。また、高い立体選択性のもとアンチ体を得られることも分かった。
【0128】
[実施例3〜5]
(2R,3R)−2−アセチルアミノ−3−ヒドロキシオクタデカン酸メチルの製造
合成5で製造したRuCl((R,R)−O−HT−TsDPEN)(6.5mg,0.01mmol)、2−アセチルアミノ−3−オキソオクタデカン酸メチル(0.93g,2.50mmol)、テトラヒドロフラン(4.6ml)の溶液に、それぞれ異なるアミンを加え、さらにギ酸(0.345g,7.5mmol)を加え、30℃で20時間撹拌を続けた。
結果を表2に示した。
【0129】
【表2】
Et
3N:トリエチルアミン
nBu
3N:トリ-n-ブチルアミン
EtN(iPr)
2:ジイソプロピルエチルアミン
【0130】
実施例3〜5において、第3級有機アミンを用いることで、穏やかな温度条件(30℃)であっても、比較的短い反応時間(20時間)で反応を完了させることができ、かつ、高いアンチ:シン比を達成できることが分かった。
【0131】
[実施例6〜15]
(2R,3R)−2−アセチルアミノ−3−ヒドロキシオクタデカン酸メチルの製造
合成5で製造したRuCl((R,R)−O−HT−TsDPEN)(5.2mg,0.008mmol)、2−アセチルアミノ−3−オキソオクタデカン酸メチル(1.48g,4.00mmol)、テトラヒドロフラン(14.8ml)の溶液に、それぞれ異なるアミンを加え、さらにギ酸(0.552g,12.0mmol)を加え、60℃で20時間撹拌を続けた。
結果を表3に示した。
【0132】
【表3】
1-Me-pyrrolidine:1−メチルピロリジン
(i-Oct)
3N:トリ-iso-オクチルアミン
iPrMe
2N:イソプロピルジメチルアミン
1-Et-piperidine:1−エチルピペリジン
1-Me-piperidine:1−メチルピペリジン
Cy
2MeN:ジシクロヘキシルメチルアミン
【0133】
このように実施例6〜15において、様々な、第1級、第2級、もしくは第3級有機アミンを用いることで、実施例3〜5よりやや高い温度条件(60℃)にすることにより、基質触媒比(S/C)が500という少ない触媒量の条件であっても、比較的短い反応時間(20時間)で反応を完了させることができ、かつ、比較的高いアンチ:シン比を達成できることが分かった。
【0134】
[実施例16]
(2R,3R)−2−アセチルアミノ−3−ヒドロキシオクタデカン酸メチルの製造
合成5で製造したRuCl((R,R)−O−HT−TsDPEN)(2.6mg,0.004mmol)(S/C=1,000)、2−アセチルアミノ−3−オキソオクタデカン酸メチル(1.48g,4.00mmol)、酢酸エチル(14.8ml)の溶液に、トリエチルアミン(1.21g,12.0mmol)を加え、さらにギ酸(0.552g,12.0mmol)を加え、60℃で20時間撹拌を続けた。一部をサンプリングし、HPLCにて分析したところ、転化率は97%であった。またアンチ体((2R,3R)体)とシン体((2S,3R)体)の比率はアンチ体:シン体=88.3:11.7であった。
【0135】
[実施例17]
(2R,3R)−2−アセチルアミノ−3−ヒドロキシオクタデカン酸メチルの製造
合成5で製造したRuCl((R,R)−O−HT−TsDPEN)(2.6mg,0.004mmol)(S/C=1,000)、2−アセチルアミノ−3−オキソオクタデカン酸メチル(1.48g,4.00mmol)、酢酸メチル(14.8ml)の溶液に、トリエチルアミン(1.21g,12.0mmol)を加え、さらにギ酸(0.552g,12.0mmol)を加え、60℃で20時間撹拌を続けた。一部をサンプリングし、HPLCにて分析したところ、転化率は94%であった。またアンチ体((2R,3R)体)とシン体((2S,3R)体)の比率はアンチ体:シン体=88.5:11.5であった。
【0136】
実施例16、17のように、酢酸エチルや酢酸メチルなどの適切な溶媒を用い、60℃という温度条件で反応させることにより、基質触媒比(S/C)が1,000という非常に少ない触媒量の条件であっても、比較的短い反応時間(20時間)で反応を完了させることができ、かつ、比較的高いアンチ:シン比を達成できることが分かった。
【0137】
[実施例18]
(2R,3R)−2−アセチルアミノ−3−ヒドロキシオクタデカン酸メチルの製造
合成5で製造したRuCl((R,R)−O−HT−TsDPEN)(2.6mg,0.004mmol)(S/C=1,000)、2−アセチルアミノ−3−オキソオクタデカン酸メチル(1.48g,4.00mmol)、酢酸エチル(14.8ml)の溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(1.55g,12.0mmol)を加え、さらにギ酸(0.552g,12.0mmol)を加え、60℃で20時間撹拌を続けた。一部をサンプリングし、HPLCにて分析したところ、転化率は100%であった。またアンチ体((2R,3R)体)とシン体((2S,3R)体)の比率はアンチ体:シン体=87.8:12.2(75.7%de)であった。
【0138】
[実施例19]
(2R,3R)−2−アセチルアミノ−3−ヒドロキシオクタデカン酸メチルの製造
合成5で製造したRuCl((R,R)−O−HT−TsDPEN)(2.6mg,0.004mmol)(S/C=1,000)、ジイソプロピルエチルアミン(1.55g,12.0mmol)の酢酸エチル(14.8ml)の溶液を60℃に加温し攪拌したところに、2−アセチルアミノ−3−オキソオクタデカン酸メチル(1.48g,4.00mmol)とギ酸(0.552g,12.0mmol)を5mlのTHFに溶解させた溶液を、10時間かけて滴下した。そのままさらに10時間攪拌を続け、一部をサンプリングし、HPLCにて分析したところ、転化率は100%であった。またアンチ体((2R,3R)体)とシン体((2S,3R)体)の比率はアンチ体:シン体=91.7:8.3(83.3%de)であった。
【0139】
実施例18、19を比較して分かるように、実施例19において基質の溶液を触媒の溶液に対してゆっくり滴下させることにより、実施例18のように全ての基質を最初から触媒溶液と混合し反応させた時と比べてアンチ:シン比をさらに向上させることができることが分かった。
【0140】
[実施例20]
(2R,3R)−2−アセチルアミノ−3−ヒドロキシオクタデカン酸メチルの製造
合成11で製造したRuCl((R,R)−O−HT−o−TFTs−DPEN)(2.8mg,0.004mmol)(S/C=1,000)、2−アセチルアミノ−3−オキソオクタデカン酸メチル(1.48g,4.00mmol)、酢酸メチル(14.8ml)の溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(1.55g,12.0mmol)を加え、さらにギ酸(0.552g,12.0mmol)を加え、60℃で20時間撹拌を続けた。一部をサンプリングし、HPLCにて分析したところ、転化率は92%であった。またアンチ体((2R,3R)体)とシン体((2S,3R)体)の比率はアンチ体:シン体=91.0:9.0(82.0%de)であった。
【0141】
[実施例21]
(2R,3R)−2−アセチルアミノ−3−ヒドロキシオクタデカン酸メチルの製造
合成13で製造したRuCl((R,R)−O−HT−MESs−DPEN)(2.7mg,0.004mmol)(S/C=1,000)、2−アセチルアミノ−3−オキソオクタデカン酸メチル(1.48g,4.00mmol)、酢酸メチル(14.8ml)の溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(1.55g,12.0mmol)を加え、さらにギ酸(0.552g,12.0mmol)を加え、60℃で20時間撹拌を続けた。一部をサンプリングし、HPLCにて分析したところ、転化率は95%であった。さらに20時間攪拌を続け再びサンプリングし、HPLCにて分析したところ、転化率は100%であった。またアンチ体((2R,3R)体)とシン体((2S,3R)体)の比率はアンチ体:シン体=91.6:8.4(83.3%de)であった。
【0142】
[実施例22]
(2R,3R)−2−アセチルアミノ−3−ヒドロキシオクタデカン酸メチルの製造
合成15で製造したRuCl((R,R)−O−HT−Ts−cydn)(2.7mg,0.004mmol)(S/C=1,000)、2−アセチルアミノ−3−オキソオクタデカン酸メチル(1.48g,4.00mmol)、酢酸メチル(14.8ml)の溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(1.55g,12.0mmol)を加え、さらにギ酸(0.552g,12.0mmol)を加え、60℃で20時間撹拌を続けた。一部をサンプリングし、HPLCにて分析したところ、転化率は89%であった。さらに20時間攪拌を続け再びサンプリングし、HPLCにて分析したところ、転化率は98%であった。またアンチ体((2R,3R)体)とシン体((2S,3R)体)の比率はアンチ体:シン体=89.0:11.0(78.1%de)であった。
【0143】
医薬品、機能性材料の製造原料などとして有用な光学活性β-ヒドロキシ-α-アミノカルボン酸エステルを選択的に製造することができる。