(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048769
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】船舶平衡水のTRO測定装置及びその設置構造
(51)【国際特許分類】
G01N 27/38 20060101AFI20161212BHJP
G01N 27/403 20060101ALI20161212BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20161212BHJP
G01N 27/27 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
G01N27/38 361
G01N27/38 355
G01N27/403 371C
G01N27/416 341G
G01N27/416 353Z
G01N27/27 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-106194(P2015-106194)
(22)【出願日】2015年5月26日
(65)【公開番号】特開2016-206168(P2016-206168A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2015年5月27日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0055550
(32)【優先日】2015年4月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515136443
【氏名又は名称】パク,ジェ ヨン
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジェ ヨン
【審査官】
櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0036799(US,A1)
【文献】
特開2001−235443(JP,A)
【文献】
特開2001−237289(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0090054(US,A1)
【文献】
特開2012−007969(JP,A)
【文献】
特開2006−284178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/49
G01N 33/18
B63B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶平衡水の内部のTROとpHを感知する複数の電極(21)と、船舶平衡水の温度を測定する温度センサ(22)とが一端に露出して内設されたセンサ本体(2)と、
前記センサ本体(2)に設けられた前記複数の電極(21)と前記温度センサ(22)の露出端部を保護するように、前記センサ本体(2)の一端に結合された保護キャップ(3)と、
前記保護キャップ(3)により、前記保護キャップ(3)と前記センサ本体(2)との間に形成されたセンシングチェンバ(4)と、
前記保護キャップ(3)の一部または全体に、内外に貫設され、内部の前記センシングチェンバ(4)に船舶平衡水が流入する複数の入出孔(5)と、
前記センサ本体(2)の一端において、前記複数の電極(21)と前記温度センサ(22)の内側に固定設置され、前記センシングチェンバ(4)に流入した船舶平衡水をキャビテーション原理に基づいて前記保護キャップ(3)の前記複数の入出孔(5)から噴出させる超音波発生器(6)と、を備えることを特徴とする船舶平衡水のTRO測定装置(1)。
【請求項2】
さらに、前記超音波発生器(6)で発生した超音波による振動、または前記センシングチェンバ(4)の内部に収納された数個のビーズの流動により、前記複数の電極(21)と前記温度センサ(22)の露出端部に凝着するスケールを洗浄する洗浄手段(7)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の船舶平衡水のTRO測定装置(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のTRO測定装置(1)が、船舶平衡水の流入及び排出の移送管(10)に設けられる構造において、
前記移送管(10)の一側に、ホットタッピングにより、前記移送管(10)の内外に貫通した取付孔(11)が形成され、
前記取付孔(11)にフランジ結合または螺合され、前記移送管(10)に連設され、調節レバー(81)により開閉される接続弁(8)が設けられ、
前記接続弁(8)の一端に、内側に前記センシングチェンバ(4)が形成された前記センサ本体(2)の一端の前記保護キャップ(3)が前記移送管(10)の内側に位置するように、前記TRO測定装置(1)が結合されたことを特徴とする船舶平衡水のTRO測定装置の設置構造。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のTRO測定装置(1)が、船舶平衡水の流入及び排出の移送管(10)から分岐した補助移送管(10’)に設けられる構造において、
前記補助移送管(10’)の一側に、ホットタッピングにより、前記補助移送管(10’)の内外に貫通した補助取付孔(11’)が形成され、
前記補助取付孔(11’)にフランジ結合または螺合され、前記補助移送管(10’)に連設され、調節レバー(81)により開閉される接続弁(8)が設けられ、
前記接続弁(8)の一端に、内側に前記センシングチェンバ(4)が形成された前記センサ本体(2)の一端の前記保護キャップ(3)が前記補助移送管(10’)の内側に位置するように、前記TRO測定装置(1)が結合されたことを特徴とする船舶平衡水のTRO測定装置の設置構造。
【請求項5】
前記接続弁(8)は、中央に球形のディスク(82)が位置するとともに、両側に前記ディスク(82)の中央の貫通孔に連通する流入口(83)と流出口(84)がそれぞれ形成されたボール弁構造からなり、
前記接続弁(8)において、移送管(10)または補助移送管(10’)と結合される前記流入口(83)の内側と、前記TRO測定装置(1)が結合される前記流出口(84)の内側に、前記TRO測定装置(1)が通過して結合されるとき、前記TRO測定装置(1)の前記センサ本体(2)の外面に密着し、前記移送管(10)または前記補助移送管(10’)の内部の船舶平衡水の流出を防止するように、密着リング(9)がそれぞれ内設されたことを特徴とする請求項3または4に記載の船舶平衡水のTRO測定装置の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶平衡水のTRO測定装置及びその設置構造に関し、より詳しくは、船舶の平衡水移送管(main ballast pipe)を流れる殺菌処理された平衡水中の総残留酸化物(TRO;Total Residual Oxidant)を測定するための船舶平衡水のTRO測定装置及びその設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
このような船舶平衡水のTRO測定装置及びその設置構造において、一般に、船舶平衡水は、バラスト水ともいい、これは、船舶の運航時、平衡を維持し、最適の速度と効率を出すために、船舶内のバラストタンクに載せる淡水や海水を称するものであって、このような船舶平衡水を船舶のバラストタンクに満たす地域において生息する各種の細菌やプランクトン等の海洋生物が、船舶の航行経路を通じて、他の地域の海岸等に移動され、船舶の浮力を調節するために、船舶平衡水を排出するとき、別途の殺菌及び浄化処理をせずに排出すると、当該地域の深刻な土着生態系の撹乱と破壊を引き起こしてしまうため、入港する船舶の平衡水の管理及び統制により、このような問題を解決しようとし、国際海事機関(International Maritime Organization:IMO)は、2004年2月に「船舶平衡水管理協約」を採用し、2009年から順次に船舶平衡水の殺菌処理に必要な装置を義務的に搭載させ、IMOの船舶排出水の殺菌基準(IMO D−2 Standard)を違反すると、当該船舶の入港を禁止させるなど、厳しいペナルティーを科している。
【0003】
ここに、造船業界では、様々な種類の船舶平衡水の殺菌処理装置及び方法を開発しており、このような船舶平衡水の殺菌処理装置及び方法には、オゾン処理、電気分解、紫外線処理、各種のろ過処理等があり、代表的には、特許文献1及び特許文献2に記載のような、オゾン処理及び電気分解による平衡水の殺菌及び浄化処理方式が多く用いられるが、このようなオゾン処理と電気分解により船舶平衡水を殺菌、浄化するとき、特定の化学反応により、船舶平衡水の内部に多量の酸化物(消毒副産物)が生成及び残留し、また船舶平衡水中の有機物によっても酸化物が残存し、このような船舶平衡水をシーチェストから船舶のバラストタンクに流入し、または船舶の外部に排出するとき、特許文献3に記載されたように、TRO測定装置を用いて、船舶平衡水に残存する毒性物質(=酸化物)の濃度を測定し、その結果に応じて、殺菌効率を見計らい、または船舶平衡水を排出するときは、残った酸化物の濃度を排出許容範囲まで下げるために、中和剤を投入するような技術が開発されており、これにより、オゾン処理や電気分解で殺菌処理された船舶平衡水を排出するとき、平衡水中に生成して残留している酸化物を適正量の中和剤で迅速に中和させ、排出水の毒性を制御することにより、海洋生態系を保護しようとした。
【0004】
このとき、平衡水移送管を通じて流入移送及び排出移送される船舶平衡水の総酸化物の測定のためのTRO測定装置は、通常、特許文献4に記載のように、船舶平衡水が引き込まれる主配管から分岐された試料採取管に連設されるので、主配管に比べて直径の狭い試料採取管から、全船舶平衡水の一部のみを試料採取し、総残留酸化物を測定するので、主配管の全船舶平衡水中の残留酸化物の濃度と、試料採取管の一部の船舶平衡水中の残留酸化物の濃度との誤差が大きく、正しい船舶平衡水のTRO測定に限界があり、試料採取管は、その両端が主配管の2箇所に連結されていなければならず、TRO測定装置を船舶平衡水の流入と排出の際に、それぞれ2つを設置すると、船舶平衡水が移送される主配管の4箇所に、それぞれ2つの試料採取管を連結しなければならないので、船舶平衡水の殺菌及び浄化処理のためのオゾン供給装置や電気分解装置が設置され、複雑な船舶の内部が、前記試料採取管により、さらに複雑となるような多くの問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国登録特許第769834号公報
【特許文献2】韓国登録特許第1050396号公報
【特許文献3】韓国公開特許第2010−105012号公報
【特許文献4】韓国公開特許第2013−123769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、船舶平衡水中の総残留酸化物を測定するために、船舶平衡水の流入移送及び排出移送が行われる移送管にTRO測定装置を直接挿入して設置し、または、必要に応じて前記移送管から分岐されたバイパス管(補助移送管)に挿入して設置することにより、設置構造を単純にし、TRO測定装置のチップ構造において、多孔のキャップを用いて、TRO測定装置の内部に船舶平衡水が流入する圧力を減らしながら、船舶平衡水中の異物をろ過し、TRO測定装置のチップ構造において、船舶平衡水の流入及び排出を、ポンプでポンピングせず、超音波発生器を用いた超音波による噴出により、円滑に行わせることはもとより、電極の端部に生成したスケールを自動にクリーニングさせるようにした、船舶平衡水のTRO測定装置及びその設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明による船舶平衡水のTRO測定装置は、センサ本体の一端に、船舶平衡水の内部のTROとpHを感知する多数の電極と、船舶平衡水の温度を測定する温度センサとが露出して内設され、前記センサ本体の一端に、センサ本体に内設された多数の電極と温度センサの露出端部を保護する保護キャップが結合され、前記保護キャップにより、センサ本体の端部における保護キャップとセンサ本体との間にセンシングチェンバが形成されるとともに、保護キャップの一部または全体に、船舶平衡水が内側のセンシングチェンバに流入するように、内外に数個の入出孔が貫設され、前記センサ本体の一端において、多数の電極と温度センサの内側に超音波発生器が固定設置され、センシングチェンバに流入した船舶平衡水を保護キャップに形成された数個の入出孔から排出させることを特徴とし、前記TRO測定装置では、超音波発生器またはセンシングチェンバに収納された数個のビーズからなる洗浄手段により、多数の電極と温度センサの露出端部に凝着されるスケールを洗浄するようにしてもよい。
【0008】
また、前記TRO測定装置の設置構造は、前記移送管または補助移送管の一側に、ホットタッピングにより、移送管または補助移送管の内外に貫通した取付孔または補助取付孔が設けられ、前記取付孔または補助取付孔にフランジ結合または螺合され、移送管または補助移送管に連通するとともに、調節レバーにより開閉される接続弁が設けられ、接続弁の一端に、センシングチェンバが内側に形成された保護キャップが移送管または補助移送管の内側に位置するように、TRO測定装置が結合されることを特徴とし、ここで、前記接続弁をボール弁構造とし、球形のディスクの両側の流入口と流出部の各内側にTRO測定装置が結合されるとき、TRO測定装置のセンサ本体の外面に密着する1対の密着リングがそれぞれ内設され、船舶平衡水の流出を防止するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、センサ本体の一端に数個の入出孔が貫設された保護キャップを結合し、内側にセンシングチェンバを有し、センサ本体の一端に超音波発生器を固定設置することにより、船舶平衡水中の総残留酸化物を随時に測定することができるが、保護キャップの入出孔により、平衡水の移送管または補助移送管の内部を、一定の圧力で流れる平衡水の圧力がダウンされて流入されるので、多数の電極により、TROとpHの感知時、測定精度を向上させ、このような数個の入出孔を有する保護キャップで船舶平衡水中の異物を遮断し、TROの濃度の測定時、測定精度をより倍加させるとともに、多数の電極及び温度センサを保護することができ、このような本発明によると、保護キャップの内側のセンシングチェンバへ船舶平衡水を流入及び排出させる別途のポンプがなくても、保護キャップの一部または全体に設けられた数個の入出孔に船舶平衡水が自然に流入された後、決められた時間毎に作動する超音波発生器の噴出及び噴霧により、入出孔から保護キャップの外部への船舶平衡水の排出も円滑に行われるので、構造の単純化と作動信頼度の向上等の効果がある。
【0010】
また、前記数個の入出孔が設けられた保護キャップにより、内側にセンシングチェンバが形成されるTRO測定装置を、船舶平衡水の流入移送及び排出移送が行われるメインの移送管または補助移送管にホットタッピングで結合された接続弁を用いて、保護キャップが結合されたセンサ本体の一側のチップを直接挿入されるように結合することにより、総残留酸化物(TRO)の測定がより円滑かつ正確に行われ、メインの移送管または補助移送管にTRO測定装置を直ちに挿入することにより、設置構造も単純化させることができるので、設置場所が縮小され、内部の狭い船舶に極めて適合した構造であり、極めて容易に設置することができる。
【0011】
また、TROとpHを感知する多数の電極と温度を測定する温度センサの露出端部において、船舶平衡水のオゾン処理や電気分解により、船舶平衡水を殺菌、浄化するとき、多量で生成する酸化物や船舶平衡水中の有機物等による酸化物が凝着されたスケールを、超音波発生器による振動により、決められた時間毎にクリーニングし、またはセンシングチェンバの内部に収納された数個のビーズが船舶平衡水の流入及び排出による流動によりクリーニングすることができ、多数の電極と温度センサのクリーニングが自動に行われ、測定精度を一定に維持する等、その期待される効果が多大である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明によるTRO測定装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明によるTRO測定装置の要部を示す部分断面図である。
【
図3】本発明によるTRO測定装置の設置構造を示す一部断面図である。
【
図4】本発明によるTRO測定装置が移送管に設けられた例示図である。
【
図5】本発明における接続弁及び取付孔を抜粋した斜視図である。
【
図6】本発明によるTRO測定装置が、移送管から分岐された補助移送管に設けられた例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、船舶の運航時、平衡を維持し、最適の速度と効率を出すために、船舶内のバラストタンクに載せる船舶平衡水(バラスト水)をシーチェストからバラストタンクに流入移送し、または船舶の外部に排出移送するとき、それぞれの移送管に連設され、移送管を流れる船舶平衡水中の総残留酸化物(TRO)を測定する船舶平衡水のTRO測定装置及びその設置構造に関し、以下、これについて、図面を参照してより具体的に説明する。
【0014】
本発明による船舶平衡水のTRO測定装置1及びその設置構造において、船舶平衡水のTRO測定装置1は、
図1に示すように、センサ本体2の一端に保護キャップ3が結合され、保護キャップ3が結合された反対側の他端にジャンクションボックスが結合されている。
【0015】
前記TRO測定装置1において、センサ本体2の一端には、
図2に示すように船舶平衡水の内部のTROとpHを感知するための多数の電極21が、端部が露出して内設され、センサ本体2の内部のPCB23と電気的に配線連結されるようになり、前記多数の電極21は、1つの金電極と3つの白金電極からなり、金電極と白金電極からなる1対の電極21が、電位差によりTROを検出し、2つの白金電極からなる一対の電極21が、電位差によりpHを検出するとともに、センサ本体2の一端には、前記TROとpHを感知する多数の電極21と一緒に端部が露出して内設され、同様に、センサ本体2の内部のPCB23と電気的に配線連結され、船舶平衡水の温度を測定するための温度センサ22が設けられている。
【0016】
このような技術的説明は、TROを測定することが主な目的であるが、本発明における多数の電極21と温度センサ22を用いて、小さな変化により電気伝導度を同時に測定することにより、塩度の検出機能が加えられてもよい。
【0017】
このように船舶平衡水のTROとpHを感知する多数の電極21と、温度を測定する温度センサ22とが露出して内設されたセンサ本体2の一端には、多数の電極21と温度センサ22の露出端部を保護する保護キャップ3が結合され、前記保護キャップ3は、センサ本体2において多数の電極21と温度センサ22が設けられた一端に結合されるので、保護キャップ3とセンサ本体2との間に船舶平衡水が流入貯蔵されるセンシングチェンバ4が形成される。
【0018】
このとき、前記保護キャップ3の一部または全体には、保護キャップ3の内外に貫設された数個の入出孔5が形成され、このような数個の入出孔5は、センサ本体2が移送管10に結合され、保護キャップ3が移送管10の内部に位置するとき、移送管10を流れる船舶平衡水が保護キャップ3の内側のセンシングチェンバ4に流入されるようにする。
【0019】
前記保護キャップ3が結合され、内側にセンシングチェンバ4が形成されたセンサ本体2の一端において、多数の電極21と温度センサ22の内側に超音波発生器6が固定設置され、このような超音波発生器6は、PCB23と電気的に連結され、電気を供給して作動すると、センシングチェンバ4に流入した船舶平衡水に、超音波を放出し、キャビテーション原理により、船舶平衡水を、保護キャップ3に設けられた多数の入出孔5から保護キャップ3の
外側である移送管10に排出させる。
【0020】
前記超音波発生器6は、一定の間隔で決められた時間毎に作動させ、保護キャップ3内のセンシングチェンバ4に流入した船舶平衡水のTROとpH、及び温度を測定した後、保護キャップ3の入出孔5から移送管10に排出し、好ましくは75秒に一回ずつ超音波発生器6を作動させて、保護キャップ3内のセンシングチェンバ4に流入した船舶平衡水を排出させ、75秒単位でTROとpH、及び温度を実時間で測定し、TRO測定値が排出許容範囲を超えたとき、別途に中和剤を移送管10の内部の船舶平衡水に投入するものであって、このような中和剤としては、チオ硫酸ナトリウム(Na
2S
2O
3)、石灰または消石灰(CaOまたはCa(OH)
2)、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、アンモニアガス等が用いられる。
【0021】
本発明では、TROとpHを感知する多数の電極21と温度を測定する温度センサ22の露出端部に、船舶平衡水の殺菌及び浄化処理のために、オゾン処理または電気分解処理をするときに生成する酸化剤や、船舶平衡水の内部の有機物による酸化剤が凝着して、センシング感度を阻害することを防ぐために、多数の電極21と温度センサ22に凝着するスケールをクリーニングする洗浄手段7がさらに設けられている。
【0022】
前記電極21と温度センサ22に凝着したスケールをクリーニングする洗浄手段7は、センシングチェンバ4から保護キャップ3の外部へ、入出孔5を通じて船舶平衡水を排出させるように、センサ本体2の一端に内設された超音波発生器6において超音波を発生させるとき、生成する振動によりクリーニングされ、または、図示してはいないが、保護キャップ3の内部のセンシングチェンバ4に入出孔5よりも大径の数個の小形ビーズを入れ、船舶平衡水がセンシングチェンバ4に流入され、または保護キャップ3の外部に排出されるとき、ビーズの流動によりクリーニングされるようにしてもよい。
【0023】
これとともに、本発明において、船舶平衡水のTRO測定装置1の設置構造は、
図3及び
図4に示すように、船舶平衡水のTROとpHを感知するための多数の電極21と船舶平衡水の温度を測定するための温度センサ22が一端に内設されたセンサ本体2の一端に、数個の入出孔5が貫設された保護キャップ3が結合され、センシングチェンバ4が内側に形成されたTRO測定装置1を、船舶平衡水の流入及び排出の移送管10に挿入したものであって、
図5に示すように、移送管10の一側にホットタッピングにより、移送管10の内外に貫通した取付孔11が形成され、このような取付孔11には、フランジ結合または螺合(図面では、フランジ結合を示す。)され、移送管10に連通する接続弁8が設けられ、前記接続弁8の一側には、90°角度で回転操作されるように突設された調節レバー81が設けられ、この調節レバー81により接続弁8が開閉され、前記接続弁8は、その中央に球形のディスク82が位置し、両側にディスク82の中央の貫通孔に連通する流入口83と流出口84がそれぞれ形成されたボール弁構造からなっている。
【0024】
前記接続弁8の一端にセンシングチェンバ4が内側に形成されるように、センサ本体2の一端に結合された保護キャップ3が移送管10の内側に位置するように、TRO測定装置1が結合されるものであって、このとき、接続弁8において、移送管10と結合される流入口83の内側とTRO測定装置1と結合される流出口84の内側にTRO測定装置1が通過して結合されるとき、TRO測定装置1のセンサ本体2の外面に密着する1対の密着リング9がそれぞれ内設され、前記流入口83と流出口84の内側にそれぞれ1対ずつ内設された密着リング9は、センサ本体2の外面と接続弁8の内面との間に、移送管10の内部の船舶平衡水が流出することを防止するためのものであって、前記密着リング9は、移送管10の内部の圧力が低い場合は、流入口83と流出口84にそれぞれ1つずつ設けてもよい。
【0025】
また、本発明による船舶平衡水のTRO測定装置1の設置構造において、他の実例として、船上の特殊な環境により、移送管10に直接挿入設置されTRO測定装置1のセンシングチェンバ4の内部に充分な平衡水の流入が行われず、または、好適なセンシングが誘導されなかったとき、
図6に示すように、船舶平衡水の流入及び排出の移送管10から分岐された補助移送管10’にTRO測定装置1が挿設されてもよいが、具体的には、移送管10の下部に移送管10よりも小径のバイパスされる補助移送管10’が設けられ、このとき、補助移送管10’の流入側の先端を「フ」字状に内向して突設し、移送管10の内部の平衡水が円滑に流入するようになり、前記補助移送管10’の一部を拡管させ、拡管の一側にホットタッピングにより、補助移送管10’の内外に貫通した補助取付孔11’が形成され、補助取付孔11’にフランジ結合または螺合され、補助移送管10’に連通するようになり、調節レバー81で開閉される接続弁8が設けられ、接続弁8の一端に、内側にセンシングチェンバ4が形成されたセンサ本体2の一端の保護キャップ3が補助移送管10’の内側に位置するように、TRO測定装置1が結合されるものである。
【0026】
このように構成された船舶平衡水のTRO測定装置1及びその設置構造は、センサ本体2の一端に数個の入出孔5が形成された保護キャップ3が結合されるとともに、保護キャップ3の内側のセンシングチェンバ4に流入した船舶平衡水を排出するための手段として、超音波発生器6が設けられたTRO測定装置1であり、このようなTRO測定装置1を、平衡水の移送管10または補助移送管10’にホットタッピングにより形成された取付孔11にフランジ結合または螺合されるボール弁構造の接続弁8を介して、移送管10または補助移送管10’の内部に保護キャップ3及びセンシングチェンバ4が位置するように、移送管10または補助移送管10’に挿入した設置構造であって、その作用についてより具体的に後述する。
【0027】
先ず、船舶平衡水が流入移送及び排出移送される移送管10の下部の両側に、一例として、90°程度の角度で、1対のTRO測定装置1を設置するとき、各TRO測定装置1が設けられた一側に、ホットタッピングにより、移送管10の内外に貫通する取付孔11を形成した後、接続弁8の結合構造により、取付孔11に結合フランジを取り付け、またはねじタッピングを行い、フランジ結合や螺合で、接続弁8を取付孔11に結合した後、調節レバー81を操作して接続弁8を閉めた状態とし、移送管10または補助移送管10’に固定設置されるようにする。
【0028】
以降、センサ本体2の一端に数個の入出孔5が形成された保護キャップ3が結合され、内側のセンシングチェンバ4において、センサ本体2の一端に超音波発生器6が固定設置されたTRO測定装置1を、接続弁8を介して移送管10に挿入し、接続弁8が閉めた状態で、移送管10の取付孔11または補助移送管10’の補助取付孔11’に結合された接続弁8の流入口83の反対側の流出口84に、TRO測定装置1の保護キャップ3が結合された一端を挿入し、この際、TRO測定装置1のセンサ本体2に、保護キャップ3が接続弁8の球形のディスク82に当接する直前の位置に表示線Lを形成し、流出口84にTRO測定装置1を挿入するとき、前記表示線Lまで挿入後、接続弁8の調節レバー81を操作し、接続弁8を開放してから、TRO測定装置1を接続弁8にさらに挿入し、保護キャップ3が流入口83を通過し、移送管10または補助移送管10’の内部に位置するまで挿入すると、保護キャップ3が移送管10の内部に位置し、入出孔5から内側のセンシングチェンバ4に自然に船舶平衡水が流入し、このとき、多数の電極21により、移送管10を流れる船舶平衡水のTROとpHを感知するとともに、温度センサ22により、船舶平衡水の温度を測定するものである。
【0029】
以降、周期的に作動するTRO測定装置1の超音波発生器6により、センシングチェンバ4の内部の船舶平衡水を保護キャップ3の入出孔5から移送管10または補助移送管10’に排出させ、排出後、さらに移送管10または補助移送管10’を流れる船舶平衡水が自然に流入するものであって、超音波発生器6により周期的に排出後、入出孔5から移送管10または補助移送管10’の内部の船舶平衡水が自然に流入することを繰り返し、バラストタンクに流入移送され、またはバラストタンクから船舶の外部に排出移送されるように、移送管10または補助移送管10’を流れる船舶平衡水のTROとpH、及び温度を周期毎に直接測定し、実時間でモニタリングが可能であるので、船舶の外部に排出される船舶平衡水を中和剤で中和して排出させることにより、海洋汚染を防止するとともに、生態系破壊等を最小化することができる。
【0030】
このように移送管10または補助移送管10’に挿入されたTRO測定装置1を、交替や修理のために分離する場合は、接続弁8からTRO測定装置1を徐々に引き抜いてから、表示線Lが流出口84の外側に現れると、調節レバー81を操作し、接続弁8を閉鎖させた後、TRO測定装置1を接続弁8から完全に引き抜くと、船舶平衡水の流出を最小化することができる。
【0031】
これとともに、本発明のTRO測定装置1は、数個の入出孔5が形成された保護キャップ3と超音波発生器6により、移送管10または補助移送管10’内の船舶平衡水が流入及び排出されるので、別途のポンプとポンピング構造等が必要なく、そのものの構造が単純になるので、製造コストを顕著に節減するとともに、移送管10または補助移送管10’にTRO測定装置1を装着及び分離する作業が極めて容易に行われ、作業性が向上するなど、多くの効果を与える。
【0032】
以上、本発明の詳細な説明では、具体的な実施例について説明しているが、本発明の技術範疇を外れない範囲内で、様々な変形が可能であることはもとより、そのため、本発明の保護範囲は、説明された実施例に限られて定められてはならず、後述する特許請求の範囲のみならず、これと均等なものにより定められなければならない。