特許第6048785号(P6048785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048785
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】合成樹脂製アンプル容器とその成形方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/09 20060101AFI20161212BHJP
   B65D 47/36 20060101ALI20161212BHJP
   B65D 17/34 20060101ALI20161212BHJP
   A61J 1/06 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   B65D1/09 100
   B65D47/36 H
   B65D17/34
   A61J1/06 A
   A61J1/06 D
   A61J1/06 F
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-43631(P2012-43631)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-180764(P2013-180764A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】古澤 光夫
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 巧
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3151850(JP,U)
【文献】 特開2011−246137(JP,A)
【文献】 特開2000−037442(JP,A)
【文献】 特開平09−238525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/09
A61J 1/06
B65D 17/34
B65D 47/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液(N)を収容する有底筒状の本体部(H)と、該本体部(H)の上端に起立連設された有頂筒状の頭部(5)と、前記本体部(H)と頭部(5)の境界部に形成され、前記本体部(H)と頭部(5)の相対変動により破断される弱化部(11)と、前記頭部(5)内に位置する残留内容液(n)の下端液面(n1)の周端縁が付着する内周面部分(6)の一部に形成され、該内周面部分(6)に沿って前記残留内容液(n)の表面張力が均等に作用するのを阻害する突部(7)とを備え、該突部(7)はアンプル容器成形用の有底筒状のプリフォームの内周面に、前記内周面部分(6)から下の部分において突出高さが漸次低くなるように付形された縦リブ(8)が2軸延伸ブロー成形後も引き継がれて構成されており
前記頭部(5)から前記本体部(H)にかけて、内周面が、首部(3)から肩部(2)上端に向かい下方に拡径していることを特徴とする合成樹脂製アンプル容器。
【請求項2】
内容液(N)を収容する本体部(H)と、該本体部(H)の上端に起立連設された有頂筒状の頭部(5)と、前記本体部(H)と頭部(5)の境界部に形成され、前記本体部(H)と頭部(5)の相対変動により破断される弱化部(11)とを備え、前記頭部(5)内に位置する残留内容液(n)の下端液面(n1)の周端縁が付着する内周面部分(6)の一部に、該内周面部分(6)に沿って前記残留内容液(n)の表面張力が均等に作用するのを阻害する突部(7)を形成した合成樹脂製アンプル容器を成形するために、
アンプル容器成形用の有底筒状のプリフォームを、成形型面の一部に凸起を設けたブロー割金型を用いて2軸延伸ブロー成形し、該2軸延伸ブロー成形の際に前記凸起の相対的な押し込みにより前記突部(7)を構成する凸部(9)を成形することを特徴とする前記合成樹脂製アンプル容器の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤や栄養剤を収納する合成樹脂製アンプル容器とその成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬剤や栄養剤等を収納するアンプル容器として、例えば特許文献1に示されるような、有底円筒状の胴部の上端に、上方に縮径する肩部を連設し、この肩部から有頂筒状の小内径となった首部を起立設し、この首部と肩部の境界部分に切り込み部を形成し、胴部と肩部の組み合わせ部分を2軸延伸ブロー成形した樹脂製アンプル容器が知られている。このアンプル容器は、胴部側と首部側を相対的に変動させることにより、切り込み部により形成される弱化部で破断して容器が開封されるのであるが、予め切り込み部の形状および寸法を選択設定しておくことにより、切り込み部が形成する弱化部の破断を容易とし、これによる開封の際の衝撃による内容液の飛散が生じないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−037442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術にあっては、アンプル容器において、内容液の付着力および表面張力の作用により、首部内に残留内容液が位置したままであると云う従前からの問題が解消されておらず、このため開封時に、この首部の残留内容液が飛散もしくは流出する、と云う問題があった。
【0005】
すなわち、図7に示すように、従前からのアンプル容器は、一般的に、本体部Hに収納された内容液Nとは別に、首部相当部分である頭部5内に残留内容液nが、その付着力と表面張力の作用により、自重に逆らって本体部Hに流下することなく位置していることが多い。この状態は、内周面に付着している残留内容液nの下端液面n1の周端縁に、残留内容液nの表面張力が均等に作用している状態で発揮される。
【0006】
このように、残留内容液nが頭部5内に位置している状態で、弱化部11相当部分を破断すると、この衝撃により残留内容液nが飛散、もしくは容器外に流出するのである。
【0007】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、容器を正立状態では首部相当部分である頭部内に、残留内容液を位置させないことを技術的課題とし、もって開封時における内容液の飛散や流出を防止する、ことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の第1発明の主たる構成は、
内容液を収容する有底筒状の本体部と、この本体部の上端に起立連設された有頂筒状の頭部と、本体部と頭部の境界部に形成され、本体部と頭部の相対変動により破断される弱化部と、頭部内に位置する残留内容液の下端液面の周端縁が付着する内周面部分の一部に形成され、内周面部分に沿って残留内容液の表面張力が均等に作用するのを阻害する突部とを備えていること、
突部は、アンプル容器成形用の有底筒状のプリフォームの内周面に、内周面部分から下の部分において突出高さが漸次低くなるように付形された縦リブが2軸延伸ブロー成形後も引き継がれて構成されていること、
頭部から本体部にかけて、内周面が、首部から肩部上端に向かい下方に拡径していること、
にある。
また、上記課題を解決する本発明の第2発明の主たる構成は、
成形される合成樹脂製アンプル容器が、内容液を収容する本体部と、この本体部の上端に起立連設された有頂筒状の頭部と、本体部と頭部の境界部に形成され、本体部と頭部の相対変動により破断される弱化部とを備えていること、
頭部内に位置する残留内容液の下端液面の周端縁が付着する内周面部分の一部に、内周面部分に沿って残留内容液の表面張力が均等に作用するのを阻止する突部を形成したこと、
この容器を成形するために、アンプル容器成形用の有底筒状のプリフォームを、成形型面の一部に凸起を設けたブロー割金型を用いて2軸延伸ブロー成形し、2軸延伸ブロー成形の際に凸起の相対的な押し込みにより突部を構成する凸部を成形すること、
にある。
【0009】
内容液の密封収容は、頭部の開放状態となっている上端開口部から所定量の内容液を注入し、次いで頭部の上端開口部を熱加工により密閉し達成される。このため、本体部と頭部は連通した状態のまま、内容液を収容して取扱われるので、この頭部内には本体部から内容液が自由に出入りすることになる。
【0010】
頭部内に浸入した内容液は、アンプル容器が正立姿勢になった際に、その付着力により内周面に付着し、重力に逆らって頭部内に残留内容液として留まろうとする。
【0011】
この頭部内に浸入した残留内容液の付着力に対して、この残留内容液の下端液面が位置する内周面部分の一部には、内周面部分に沿って残留内容液の表面張力が均等に作用するのを阻害する突部が形成されているので、残留内容液は頭部内に留まる力を発揮することができない状態となり、このため頭部内から本体部に自然流下し、頭部内に残留内容液を生じさせることがない。
【0013】
突部を、アンプル容器成形用の有底筒状のプリフォームの内周面に付形された縦リブで構成したものにあっては、内周面の一部に縦リブが形成されることにより、内周面部分の形状の周方向に沿った均等性がなくなるで、周方向に沿った残留内容液の表面張力の作用の均等性が喪失し、これにより残留内容液は自然流下する。
【0015】
突部を、アンプル容器へのブロー成形の際に、ブロー金型からの相対押し込みにより成形される凸部で構成したものにあっては、内周面の一部に凸部が形成されることにより、内周面部分の形状の周方向に沿った均等性がなくなるので、周方向に沿った残留内容液の表面張力の作用の均等性が喪失し、これにより残留内容液は自然流下する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明におけるアンプル容器の主たる構成においては、頭部内に浸入した内容液は本体部内に必ず自然流下し、頭部内に残留内容液を生じさせることがないので、本体部から頭部を破断して開封した際に、頭部内の残留内容液が飛散したり流出して不都合を発生することが皆無となり、常に良好な開封操作を得ることができる。
【0017】
突部を、縦リブおよび凸部としたものにあっては、頭部内の内容液の、内周面部分に沿った表面張力の作用の均等性が喪失されて、頭部内の内容液は自然流下するので、頭部内の残留内容液の発生を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1発明の一実施形態例を示す、全体縦断面図である。
図2図1図示実施形態例の、要部縦断拡大図である。
図3図2中、A−A線に沿って切断矢視した、平面図である。
図4】本発明の第2発明の実施により成形されるアンプル容器の一形態例を示す、全体縦断面図である。
図5図4示形態例の、要部縦断拡大図である。
図6図5中、B−B線に沿って切断矢視した、平面図である。
図7】従来技術の概要を説明するための、全体縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1発明の実施形態例を、図1〜図を参照しながら説明し、本発明の第2発明の実施により成形される形態例を、図4図6を参照しながら説明する。
なお、上記各形態例では、本体部Hに対して頭部5が位置する側を上方とし、その反対側(図1における下側)を下方とする。
【0020】
合成樹脂製アンプル容器は、有底筒状に2軸延伸ブロー成形され、内容液Nを収容する本体部Hと、この本体部Hの上端に起立連設された有頂筒状の頭部5と、本体部Hと頭部5の境界部に形成され、本体部Hと頭部5の折れ曲がりなどの相対変動により破断される弱化部11とを備え、頭部5内に残留内容液nが位置した場合に、この残留内容液nの下端液面n1の周端縁が付着する内周面部分6の一部に、残留内容液nの表面張力が内周面部分6に沿って均等に作用するのを阻害する突部7を形成して構成されている。
【0021】
本体部H(図1図4参照)は、有底筒状の胴部1と、この胴部1の上端に、上方に段状に縮径しながら起立連設された肩部2と、この肩部2の上端に小外径の首部3を介して外鍔構造の口鍔部4を連設して構成されており、頭部5は、この口鍔部4に、外側からの切り込みにより肉薄に成形された弱化部11を介して連設されている。本体部Hの口鍔部4よりも下の部分は2軸延伸ブロー成形された部分であるのに対して、口鍔部4は、2軸延伸ブロー成形されない部分で、肉厚となっている。この口鍔部4は肉厚となっているので、後述する肉厚な頭部5との間に切り込みなどにより形成された弱化部11は、口鍔部4および頭部5により殆ど変形することなく支えられることなり、これにより安定して良好に破断されることになる。
【0022】
頭部5(図1図4参照)は、口鍔部4と同様に2軸延伸ブロー成形されない部分で、当初から比較的肉厚に成形されているが、この頭部5から本体部Hにかけての内周面は、首部3から肩部2上端にかけての部分で急に下方に拡径している。このため、頭部5から本体部Hにかけての内周面域には、頭部5内に残留内容液nが位置した場合には、この残留内容液nの下端液面n1(図7参照)が位置する内周面部分6が形成されることになる。
【0023】
この内周面部分6の一部には、内周面部分6に沿って残留内容液nの表面張力が均等に作用するのを阻害する突部7を形成しているが、図1ないし図3に示した第1発明の実施形態例では、この突部7は、アンプル容器成形用の有底筒状のプリフォーム(図1の二点鎖線図示参照)の内周面に付形された縦リブ8が2軸延伸ブロー成形後も引き継がれて構成されている。それゆえ、頭部5から口鍔部4そして首部3付近にかけての部分には、プリフォームに付形された縦リブ8がそのまま位置することになるが、延伸変形を受け始める首部3の内周面、すなわち内周面部分6から下の部分では、縦リブ8の突出高さは次第に低くなっている。
【0024】
この縦リブ8で構成される突部7は、図3に示されるように、3本の縦リブ8で構成されており、これにより形成された突部7の発揮する、残留内容液nの表面張力が均等に作用するのを阻害することを確実にしている。
【0025】
図4ないし図6に示した突部7の第2発明の実施により成形される形態例では、突部7は、首部3に対向するブロー割金型の成形型面部分の一部に、予め凸起を設けておき、プリフォーム(図示省略)のアンプル容器へのブロー成形の際に、ブロー変形する首部3の一部を相対的に押し込んで、内周面部分6の一部に凸部9を成形し、この凸部9で突部7を構成する。このように、ブロー割金型に予め付形された凸起の相対的な押し込みにより凸部9を成形するので、凸部9が形成された首部3の外周面部分には凹部10(図5参照)が付形されることになる。
【0026】
この第2発明の実施により成形される形態例の場合、突部7を構成する凸部9を、内周面部分6に限定して成形することができる。
【0027】
以上、第1発明の実施形態例及び第2発明の実施により成形される形態例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明した
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の第1発明の合成樹脂製アンプル容器及び本発明の第2発明により成形される合成樹脂製アンプル容器は、頭部内に残留内容液を生じさせないので、安全にかつ清潔に使用することができ、アンプル容器として広い分野での適用が可能とすることができる。
【符号の説明】
【0029】
H ;本体部
1 ;胴部
2 ;肩部
3 ;首部
4 ;口鍔部
5 ;頭部
6 ;内周面部分
7 ;突部
8 ;縦リブ
9 ;凸部
10;凹部
11;弱化部
N ;内容液
n ;残留内容液
n1;下端液面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7