(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ビーム照射工程が、前記荷電粒子ビーム用ノズルの前記先端部から放出された荷電粒子を、前記荷電粒子ビーム用ノズルに対して固定された追加のキャピラリーの基端部から入射させ該追加のキャピラリーの延長通路を通った荷電粒子の少なくとも一部を該追加のキャピラリーの先端部から放出させるものである
請求項5乃至請求項8のいずれか1項に記載の荷電粒子ビームの生成方法。
前記荷電粒子ビーム用ノズルは、前記荷電粒子ビーム用ノズルに対して固定され追加のキャピラリーの基端部を保持するようになっている保持部を有するシースをさらに備えるものであり、ここで、該追加のキャピラリーは、荷電粒子を通す延長通路を内部になし先端部が基端部より絞られた内径を有している筒状または管状の絶縁体側壁を備えているものであり、前記シースの前記保持部は、前記追加のキャピラリーの前記延長通路が前記荷電粒子ビーム用ノズルの前記通路の延長となるように前記追加のキャピラリーの前記基端部を保持するものであり、
前記荷電粒子ビーム用ノズルの前記先端部から放出された荷電粒子を前記追加のキャピラリーの前記基端部から入射させ該追加のキャピラリーの前記延長通路を通った前記荷電粒子の少なくとも一部を該追加のキャピラリーの前記先端部から放出させる
請求項10乃至請求項13のいずれか1項に記載の荷電粒子ビームの生成システム。
【背景技術】
【0002】
近年、量子線ビームなどの荷電粒子ビームの発生装置が、巨大加速器と比べ導入コストが比較的低いため、数多く導入されている。量子線ビームのうち、加速エネルギーが比較的小さいキロボルト(kV)からメガボルト(MV)程度で加速されたエネルギー領域のビームは、産業分野、研究分野を問わず、その重要性を増してきている。特に標的の表面の改質や、分析、ナノファブリケーションのためにこのエネルギー領域のビームが用いられる。
【0003】
この状況の下、ビーム径をマイクロメートルオーダーからナノメートルオーダーに成形したビーム(以下、ナノメートルオーダーのもの含め「マイクロビーム」と総称する)への要求が急速に高まりつつある。従来、径の小さい量子線ビームを生成する場合、電磁レンズおよびアパーチャの組み合わせを利用することが主流である。各種の量子線ビームの中でも電子ビームではナノメートル径までの極小のビームを生成可能なものが知られている。これは良いエミッタンスが得られるという電子ビームの特性が活かされたものである。その一方、ポテンシャルスパッタリングに用いられるような反応性の高い粒子の粒子線、特に、数keV程度で加速された多価イオンの粒子線(以下「低速多価イオンビーム(slow multivalent ion beam, or slow highly charged ion beam)」と呼ぶ)は、ビームを微細化することは未だ難しく、またそれ以外にも幾つかの側面で実用に耐え得る状況とはなっていない。
【0004】
ここで、低速多価イオンビームの一般的な性質をみると、第1に、低速多価イオンビームは材質の表面と衝突してもその材質の内部にはほとんど進入することができない。このことは、内部エネルギー(ポテンシャルエネルギー)が物質表面に付与されること、すなわち低速多価イオンビームでは、物質表面にのみ大きな影響を及ぼすことが可能となることを意味している。第2に、低速多価イオンビームはイオン種やその価数を選択することで、ポテンシャルエネルギーを幅広く制御することが可能である。ポテンシャルエネルギーの範囲は、例えば、Ar
8+であれば、約600eVとなり、U
92+ともなると約800keV、つまり電子の静止質量の1.6倍にも達する。これらの一般的性質のため、低速多価イオンビームは、物質表面を改質したり、表面の原子・分子をスパッタリングさせることで微量分析をしたりすることが期待され応用研究も進展しつつある。例えば、Si(001)面にフッ素原子を配位させたSi(001)−F表面におけるF−Si結合の方向を、低速多価イオンビームの照射によって飛び出したF
+イオンの3次元運動量分布から再構成できることが報告されている(非特許文献1)。また、グラファイト(非特許文献2〜4)やAl
2O
3表面(非特許文献2)の衝突箇所には多価イオン1個に付き1個の照射痕(ナノドット)が生成され、そのドットサイズは多価イオンの価数に依存することも報告されている(非特許文献5)。この現象は、1つの照射痕に1つの高分子を配向してピン止めすることにも適用されている。
【0005】
このように、上記一般的性質を活用する応用面からの要求が高まっているものの、実用的な低速多価イオンビームのマイクロビーム(Slow Highly Charged Ion Microbeam、以下「SHCIマイクロビーム」と呼ぶ)を生成する手法はいまだ知られていない。その理由の一つは、SHCIマイクロビームの生成がごく最近まで困難だったためである。低速多価イオンビームはイオン自体の生成数そのものが少ないばかりか、それを絞ってSHCIマイクロビームとするためにアパーチャを使用するとその大部分が失われてしまう。また、SHCIマイクロビームを取り出せてもアパーチャ内壁と接触することでイオンの価数が低くなってしまう。
【0006】
この課題に対し本願発明者らの一部により提案された手法が絶縁体管(ガラスキャピラリー)を採用する荷電粒子ビームの微細化である(特許文献1:特開2007−3418号公報)。ガラスキャピラリーを用いるこの手法では、ビームが内壁に対して非接触であることや、ナノビームを生成できるというメリットのほか、被照射物のサンプルに照射する観点からもいくつかのメリットがある。例えば、出射ビームの密度向上と出射ビームの拡がりを抑えられることなどを利用すれば、高価数のイオンをサンプル表面にサブミクロンオーダーの間隔で1個ずつ照射できる。また、1ミクロンオーダーの標的に対しては顕微鏡でビーム出射口位置を確認しながら照射できる。加えて、ガラスキャピラリーは従来の電磁レンズよりは低価格であるので、ナノビーム導入に対する初期投資の圧縮も期待される。また、エミッタンスがあまり良くない入射ビームであってもナノメートルオーダーに集束することが可能でもある。これは、最初の生成数が少なく、エミッタンスを切り出すことが難しい多価イオンには重要な性質である。
【0007】
なお、運動エネルギーとして数keV程度の荷電粒子以外の他のエネルギー領域についても簡便に取り扱うことができることから、ガラスキャピラリーを利用する手法はマイクロビームを生成する手法として有望視されている。実際、多数の研究チームがビーム輸送の学術的興味からガラスキャピラリーを採用しており、いずれのチームも、キャピラリーをマイクロビーム生成のための研究用の「ツール」として発展させるべく試行錯誤を続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ガラスキャピラリーを利用してSHCIマイクロビームの生成が可能となったものの、依然としてSHCIマイクロビームには実用性の観点から改良の余地がある。その一つが単位時間あたりの粒子数すなわちビーム強度を高められない点である。そしてこれが、有望視されているにもかかわらずSHCIマイクロビームが活用されていない大きな原因となっている。この点を主にSHCIマイクロビームを活用する観点から補足して説明する。
【0011】
低速多価イオンを含む量子線ビームを活用する場合、一般に、低速多価イオンビームの2つの性質が利用される。一つは、ビームそのもののエネルギー線としての性質を用いるものである。その場合の典型的な用途は、ターゲットとなる何らかの材質の表面に照射して表面改質が行う用途である。もう一つは、ビームによりターゲットからその表面の材質がスパッタリングされる性質を用いるものである。その場合の典型的な用途は、スパッタリングされて飛散する粒子を別の分析手段により分析するといった分析用途である。これらいずれの性質を用いる場合であっても、マイクロビームとしてSHCIマイクロビームが生成できれば、微小な領域が処理対象または分析対象となって有用なビームの用途となり得る。
【0012】
上記性質のいずれを利用する場合であっても、SHCIマイクロビームにおいてビーム強度が弱いと、ビームによる効果を得ることが難しくなる。例えば、部分的に表面改質を施しても、SHCIマイクロビームが微弱であればその改質の実質的な作用を利用するには長大な時間が必要となる。また、あまりに微弱な場合には、SHCIマイクロビームの正確な衝突強度を決定しにくくなり、再現が困難になったり、雑多な原因によるノイズとの区別ができなくなる。加えて、分析のために被測定試料にSHCIマイクロビームを照射してスパッタリングを施しても、SHCIマイクロビームが微弱すぎると、十分な分析シグナルを得ることはできない。スパッタリングされた粒子は、SHCIマイクロビームの衝突位置から四方八方に飛散するため、その一部のみを検出して分析せざるを得ないためである。
【0013】
本願の発明者らの検討によれば、従来のガラスキャピラリーによるSHCIマイクロビームの時間あたりの粒子数は、1000イオン/秒またはその桁程度の数だけ生成されるに過ぎない。仮に、十分な粒子数、例えば、10
6イオン/秒といった桁の粒子数が得られると、SHCIマイクロビームの上記観点での実用性は飛躍的に高まる。つまり10
6イオン/秒程度の粒子数となる場合、SHCIマイクロビームの流束がもたらす電荷の流れはpA程度の電流量となる。その程度の電流量が得られれば、さらに、ビーム強度を電流計によって決定することも可能となり、この面からもSHCIマイクロビームの実用性が大きく改善される。
【0014】
本発明は、かかる課題の少なくともいくつかを改善することを課題とする。本発明は、SHCIマイクロビームのビーム強度つまり時間あたりの粒子数を増大させ、または、安定して増大させることにより、SHCIマイクロビームの実用性を高め、SHCIマイクロビームを適用する各種分野の進展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の発明者らは、SHCIマイクロビームをガラスキャピラリーにて生成する特許文献1の技術を発展させた。まず、ガラスキャピラリーによるマイクロビームの粒子数が不十分となる理由について、作業仮説を立てその実証を試みた。具体的には、本願の発明者らは、ガラスキャピラリーではイオンまたはそのイオンの影響による電荷がキャピラリーの内側面に蓄積(buildup)しているものと推定した。ただし、微細なキャピラリー先端の内壁における電荷は適切な測定手段がなく、また、数値シミュレーションにより絶縁体のキャピラリー中の電荷の挙動や電荷の作る電界の分布を推定することも容易ではない。そこで、上記推定の正確性を確認すると同時に上記課題の解決策となり得るものと期待して実験を重ねた。その詳細は実施形態の欄において説明する。
【0016】
そして、電極を外側面に形成した絶縁体のキャピラリーを利用することにより、SHCIマイクロビームの粒子数を増大させることが可能となることを発見し本発明を完成させた。
【0017】
すなわち、本発明のある態様においては、荷電粒子を通す通路を内部になし先端部が基端部より絞られた内径を有している筒状または管状の絶縁体側壁と、該絶縁体側壁の外側面に接して配置された少なくとも1つの電極とを備える荷電粒子ビーム用ノズルが提供される。
【0018】
また、本発明のある態様においては、絞られた径の荷電粒子ビームを生成する方法であって、加速された荷電粒子を荷電粒子ビーム用ノズルの基端部から入射し該荷電粒子の少なくとも一部を該荷電粒子ビーム用ノズルの先端部から放出させるビーム照射工程と、ここで、該荷電粒子ビーム用ノズルは、荷電粒子を通す通路を内部になし前記先端部が前記基端部より絞られた内径を有している筒状または管状の絶縁体側壁と、該絶縁体側壁の外側面に接して配置された少なくとも1つの電極とを備えており、前記少なくとも1つの電極のいずれかを、所定の電位の電圧源に電気的に接続することまたは接地することを含む電極制御工程とを含む荷電粒子ビームの生成方法が提供される。
【0019】
さらに、本発明のある態様においては、絞られた径の荷電粒子ビームを生成するシステムであって、荷電粒子を通す通路を内部になし先端部が基端部より絞られた内径を有している筒状または管状の絶縁体側壁と、該絶縁体側壁の外側面に接して配置された少なくとも1つの電極とを備えている荷電粒子ビーム用ノズルと、前記少なくとも1つの電極のいずれかを、所定の電圧の電圧源に電気的に接続するための、または、接地源に接地するための電極制御部とを備え、加速された荷電粒子を前記荷電粒子ビーム用ノズルの前記基端部から入射し、前記通路を通った前記荷電粒子の少なくとも一部を前記先端部から放出させる荷電粒子ビームの生成システムが提供される。
【0020】
ここで、筒状または管状とは、典型的には、中空パイプの形状をいう。そして筒状または管状の側壁とは、内部が中空になっており、その側壁が囲む中空部分が中空の通路をなしていて、さらにその通路の両端が開放されているような形状の側壁を指す。上記中空の部分は、筒状または管状の側壁の内部において、基端部と先端部をつなぐ通路となる。本発明のすべての態様において、この通路を荷電粒子が通ってゆく。なお、側壁の内側面および外側面の代表的な形状は、例えば円筒状、テーパーの付けられた円筒状、円錐側面形状、および、これらの組み合わせである。ただし、側壁の形状は、筒状または管状であり、先端が基端より絞られた内径を有する限り、各部の断面の形状、断面形状の軸方向位置における変化、壁の厚みなどが特段限定されるものではない。また、本出願においては、発明を明瞭に記載するために、側壁とはパイプ形状の側壁を指すこととし、その側壁と電極とを含む部材をノズルと記すこととする。また、キャピラリーとの表現は、側壁のみの部材を指すこととする。
【0021】
本発明の各態様における絶縁体とは、最も端的にはガラスである。例えばボロシリケイトガラス(borosilicate glass)、石英ガラス、ソーダライムガラスは、各態様の絶縁体として好適なものである。また、荷電粒子とは、一般にイオンとなっている荷電粒子が典型であるが電子など電荷をもつレプトンも含まれる。本出願の荷電粒子は、例えば、陽子線、ヘリウムイオン(α線)、重粒子線、電子、陽電子などを含んでいる。これ以外にも、Ar
8+イオンなどの多価イオンをも含んでいる。本発明の各態様における荷電粒子の生成手段は、明示した場合を除き特段制限されない。例えば、荷電粒子を生成し加速する手段として、ECR(電子サイクロトロン共鳴)イオン源や、ペレトロン加速器を用いることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の各態様によれば、マイクロビームとしてノズルから照射される荷電粒子の粒子数を増大させたビーム、または増大させて安定させビームを生成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の説明に際し特に言及がない限り、全図にわたり共通する部分または要素には共通する参照符号が付されている。また、図中、各実施形態の要素のそれぞれは、必ずしも互いの縮尺比を保って示されてはいない。
【0025】
本発明の実施形態の説明においては、本発明において提供される荷電粒子ビーム用ノズルの構成を、荷電粒子ビームの生成システムと併せて説明する。その際、従来のキャピラリーによるSHCIマイクロビームにおいてビーム強度を増大させられなかったメカニズムについての検討結果を説明し、本実施形態を見出すに至った経緯についても述べる。
【0026】
[1 荷電粒子ビーム用ノズルの構造]
[1−1 基礎検討]
まず低速多価イオンによるマイクロビーム(SHCIマイクロビーム)を生成する装置構成およびそのビーム強度の測定系について説明し、従来のノズルであるガラスキャピラリーの場合の動作から着想の経緯にそって本実施形態を説明する。
【0027】
[1−1−1 従来のノズルの問題点]
図1は、従来のキャピラリーを用いてSHCIマイクロビームを生成しそのビーム強度を測定する装置セットアップの概略構成図である。また、
図2は、従来のノズルであるキャピラリー内部に蓄積した電荷によって、キャピラリー内部に静電界が形成される様子、および、イオンの通過が阻害される様子を示す推定図である。
【0028】
従来のガラス製のキャピラリーによりSHCIマイクロビームを生成するためには、真空槽(図示しない)の内部に対して、加速器などのビームソース(図示しない)からイオンビームB
0が伝達される。このイオンビームB
0は、低速多価イオン(例えばAr
8+)を1kV程度で加速することにより生成したものである。そのイオンビームB
0は、予備成形手段300により一旦小径化されイオンビームB
1とされる。予備成形手段300には、スクリーン310とマスク電極320がビーム径路を遮るようにして配置され、双方のアパーチャを重ねてビーム径路に合わせている。イオンビームB
1は、これらのアパーチャのみを通過することにより、この段階で例えば2mmφ程度の径となるようにビームが成形される。また、マスク電極320と接地端子の間には電流計330が接続され、低速多価イオンのビームの元々のビーム強度の変動(ビームソースの強度変動)が電流値として取得されている。これにより、以降の測定においてビームソースの強度の変動分の影響は、較正することにより排除することができる。
【0029】
予備成形手段300を通過したイオンビームB
1は、次にガラスキャピラリー700によりさらにマイクロビームB
Mへと絞られる。ガラスキャピラリー700は、ビームの通過径路に位置合わせして基部710が配置されている。ビームは基端部710から入射され、ガラスキャピラリー700内部の通路706を通って先端部720から放出されてマイクロビームB
Mとなる。ガラスキャピラリー700では先端部720の内径が基端部710の内径よりも絞られている。また、ガラスキャピラリー700は全体がガラスにより作製されている。必要に応じて、ガラスキャピラリー700の精密な位置合わせを行なうためのアライメント機構(機械式粗動・微動ステージなど)も装備されている。
【0030】
先端部720から放出されたマイクロビームB
Mの強度は、その先に設置される測定系500により電流量として測定される。測定系500は、電流計520を通じて接地端子に接続されているファラデーカップ510を有している。電流計520には、ファラデーカップ510に入射したマイクロビームB
Mのイオンの電荷を中和するように電流が流れる。
【0031】
図1に示した従来のガラスキャピラリー700により生成されるマイクロビームB
Mの強度は不十分である。その理由について本願の発明者は、イオンまたはイオンの影響による電荷が、内径が絞られているキャピラリー内側面に蓄積(buildup)しているためと考えた。これを第1の作業仮説として説明する。
【0032】
[1−1−2 第1の作業仮説]
以下の説明において、Ar
8+等の正イオンである場合を説明する。
図2(a)は、ガラスキャピラリー700の内部においてイオンビームによる帯電が生じた場合の理想的な動作の様子を模式的に示している。基端部710から入射したイオンビームは、ガラスキャピラリー700の絶縁体壁に内側から衝突すると、イオンと同極性の電荷をその部分に生じさせ帯電させる。すると、その後に入射するビームのイオンには、その帯電した電荷からのクーロン力が作用する。それ以降、ビームの径路はその付近で直進から曲がることとなる。この現象がガラスキャピラリー700の内壁のイオンビームが衝突する各位置で生じることから、イオンビームは次第にその進行方向に垂直な向き(径方向)の広がりを縮めてゆき、先端部720から放出されるマイクロビームB
Mはその径を先端部720の径にあわせることとなる。
【0033】
ところが、このままの状態でビーム強度を増大させようとすると不都合が生じる。ビーム強度を増大させ、
図2(b)に示すように、ガラスキャピラリー700の内壁に蓄積した電荷量が増大しすぎると、ビームにはより多くの電荷からのクーロン力が作用し、ビームが先端部720に到達することができなくなってしまう。つまり、本願の発明者らは、強いビームでは、壁面に多量の電荷が蓄積する結果、その電荷によるクーロン力すなわち静電界が過大となり、通過するビームの径方向のみならず、進行方向にも影響を及ぼしはじめ、ビーム強度が抑制されている、と考えている。このようなメカニズムが正しいなら、蓄積している電荷の状態を少なくとも電気的な手段によって制御することにより、ビーム強度を増大させられる可能性が高い。
【0034】
そこで、キャピラリーの外側面に電極を形成しその電極によりキャピラリーの内部に電界を作用させることにより、上記作業仮説を検証することとした。電極の電気的作用によりビーム強度にも影響が現われるとすれば、絶縁体内壁の電荷が電極の影響を受けていることとなる。したがって、ビーム強度を増大させる手段として、その電極を活用しうる可能性も期待できる。本願の発明者は、この考えを第1の作業仮説として実験的に確認することとした。その際、電極の効果には位置による違いが生じる可能性が高いと考えた。そして、荷電粒子ビーム用ノズル100の内部における電荷の蓄積が問題になるなら、最も内径が絞られている先端部付近に近いほど制御効果が大きくなるに違いない、と推測した。
【0035】
[1−1−3 実験的確認]
上記作業仮説を実験的に確認するため、キャピラリーの外側面に電極を形成した電極付キャピラリーにより作製した荷電粒子ビーム用ノズル100を準備し、その電極に与える電圧とビーム強度の関係を調査した。
図3に、荷電粒子ビーム用ノズル100の構造を正面図(
図3(a))および概略断面図(
図3(b))として示す。
図3(a)および(b)に示すように、形成した電極は、電極先端から電極A104a〜電極D104dとして互いに別電位を与えることが可能となるように区切られている。また、各電極はガラスによる絶縁体側壁の外側面に接して形成されている。
【0036】
上述した位置の効果を確認するため、
図3(b)に示す電極A104aに対して電圧を印加し電極B104b〜電極D104dを接地させながらビーム強度を測定する実験を実施した。測定は、
図1に示した装置セットアップにおけるガラスキャピラリー700に代えて荷電粒子ビーム用ノズル100を配置し、電流計520の値からビーム強度を調査した。この際、ビームソースの示すビーム強度の変動を較正するため、電流計330の値により、電流計520の値を除算した。
図4は、その結果を示すグラフである。横軸は電極A104aに印加した直流バイアス電圧であり、縦軸は電流計520により測定された較正済の電流値である。グラフの各測定点は、電流値の平均値をマークし、その上下に延びるバーにより、測定電流の変動の標準偏差を表現している。また、(a)〜(d)の表示は、時間的な測定の順序の概略を表しており、より詳細な順序は鎖線により表現されている。
【0037】
この測定により得られた知見は以下の通りである:
(1)電極A104aに絶対値が500V
DC以上の正負の電圧を印加すると、ビームによる電流が殆ど流れないこと、
(2)電極A104aに印加する電圧が300V
DCである場合、0V
DCである場合に比べて
図4では約1.4倍程度(最大で3倍程度)にビームによる電流が増大すること、
(3)電極A104aに印加する電圧が直流である場合、ビームによる電流は、大きく変動しており、時間的な揺らぎが大きく、また再度同じバイアス電圧をかけたとしても電流値の再現性が乏しいこと。
なお、加速電圧が1kVであることを考慮すれば、正および負の500V
DC程度の電圧を超えるとビームが観測できなくなることは不合理では無い。加速された電圧程度の高い電圧を電極A104aに印加すると、加速されて飛行しているイオンは先端部120の内部で電極A104aの作る電界を通過できないためである。
【0038】
このように、電極A104aに電圧を印加することにより、電流量つまりビーム強度を増加させうることを確認した。その一方、実用性の観点からは安定した電流量となっているとは言いがたいことも確認した。
【0039】
[1−1−4 第2の作業仮説]
本願発明者らは、上記不安定さの理由は上記第1の作業仮説のみでは十分に説明できず、この不安定さを克服するためにはさらなる検討を要するものと考えた。そして、蓄積する電荷量の不安定さがビーム強度の不安定さとなって現われているに違いないと推測し、さらなる作業仮説をもって実験的確認を進めることとした。
【0040】
本願発明者の推測は、端的には、もし、電極A104aに与えた電圧が上述したような振る舞いの原因となっているなら、電極A104aの付近内部に蓄積した電荷量には適正値があり、多すぎてもまた少なすぎてもいけない可能性が高い、というものである。逆に、電極A104aの付近内部に蓄積する電荷量を電極A104aにより制御し、電極A104a付近内部の電荷量をその適正値に安定させることができれば、ビーム強度を安定させる可能性が開けるとも推測した。これが第2の作業仮説である。
【0041】
そこで、先の実験で電極A104aに担わせた作用を電極B104b、電極C104cに担わせることとし、電極A104aには、電極A104a付近の内部において蓄積した電荷量を制御する作用を行なわせることとした。なお、電極D104dは接地したままとした。電極A104aによる蓄積した電荷量の制御は、先の実験においてDC電圧を印加しただけでは必ずしも適切に安定化しえなかったことを考慮した。また、電荷が位置する荷電粒子ビーム用ノズル100の内部からみると、たとえばGΩ程度の抵抗率の高抵抗の誘電体であるガラスが配置されているため、電荷の蓄積している位置から電極A104aの間には高い抵抗が配置されていると考えることができる。そこで、本願の発明者は、上記の電極A104aを適当な電源または端子に対して電気的に接続するか切り離すかを制御することが、電極A104aによる電荷量の制御として有望なものとなると推測した。なお、これ以外にも、電極A104aに適当な電圧の直流または交流電圧源を接続したりすることによっても電荷量を制御できる可能性がある。さらには、放電のための電気的径路に適当な抵抗を配置することも有用であると考えている。
【0042】
[1−1−5 実験的確認]
電極A104aを通じて電荷量の制御が可能であるかどうかを確認するため、リレーを通して電極A104aを接地端子に電気的に接続し、そのリレーをデューティー波形の制御信号により開閉させることとした。その典型的な結果を表すグラフが
図5である。
図5は、荷電粒子ビーム用ノズル100において、電荷を制御する実験において得られた、ビーム強度を示す電流値のグラフである。
図5においては、横軸を測定開始後の経過時間(単位:秒)、縦軸を測定系500による電流値(通過電流、単位:pA)としている。比較のため、マスク電極320に補えられ電流計330にて測定される電流(マスク電流、単位:nA)も
図5に明示している。電極B104b、電極C104cは、測定の期間を通じ、0V
DC出力に調整した高電圧電源V
Hに接続されていた。時間を追って説明すると、測定開始(0秒)の後、経過時間24秒にてビーム出力(B
0、B
1)を開始し、電極A104aは、リレーを開状態として電極A104aをいずれの電源にも接続しなかった。この動作を経過時間1200秒まで継続した。その間、電流値の最大値は160pA以上、最小値はほぼゼロであり変動が大きかった。次に、経過時間1200秒の時点において電極A104aを接地端子に対してリレーを介して間欠的に接続させる動作を開始した。リレーは0.07Hzの周期動作をさせ、0.01%の期間のみ閉(接続)、他の99.99%の期間が開(絶縁)とするためのデューティー波形により動作させた(0.07Hz、デューティー比0.01%の波形)。経過時間1200秒の時点からは、ビームによる電流値は約65pAで十分な安定性を示した。経過時間3500秒においてリレーの動作を停止させて開としたところ、再び不安定なビーム強度となった。さらに経過時間4213秒においてリレーを周期動作させたところ、ビームによる電流値は再び65pA程度で安定した。その後経過時間5101秒(測定終了)に至るまでその安定したビーム強度は維持された。
【0043】
この測定により得られた知見は以下の通りである:
(4)電極B104b、電極C104cを0V
DCとし、電極A104aを僅かな時間だけ接地させる動作を繰り返すことにより、高い再現性でビーム強度を安定化できること。
【0044】
以上より、本願の発明者らは、荷電粒子ビーム用ノズル100に設けた電極を利用することにより、ビーム強度を増大させ、さらにそのビーム強度を安定させることが可能であるとの結論に至った。
【0045】
[1−2 本実施形態の動作原理]
SHCIマイクロビームのビーム強度を高め、また安定化させるために有用な、荷電粒子ビーム用ノズル100の構造やそれを利用するビームの生成方法および荷電粒子ビーム用ノズルを利用するSHCIマイクロビーム生成システムについて説明する。
図6はSHCIマイクロビーム生成システム1000の構成を示す概略構成図である。SHCIマイクロビーム生成システム1000には、荷電粒子ビーム用ノズル100に加え、荷電粒子ビーム用ノズル100の電極A104a〜電極104dを独立して制御可能な電極制御部200を有している。SHCIマイクロビーム生成システム1000が利用される際には、先端部120の正面(下流)には処理対象物または分析対象物などのSHCIマイクロビームを照射する物体(被照射物)を配置する。必要に応じ、
図1と同様の測定系500を利用すればビーム強度を測定することができる。
【0046】
SHCIマイクロビーム生成システム1000の動作原理は、電極A104aの作用については上述した第2の作業仮説の通りであり、電極B104bおよび電極C104cについては第1の作業仮説における電極104aと同様の作用であると本願の発明者らは考えている。最も典型的には、荷電粒子ビーム用ノズル100における電極A104aは、内部に蓄積した電荷量を調整するために利用されるのに対し、電極B104b、電極C104cは、ビームの強度を増大させるために利用される。
【0047】
なお、SHCIマイクロビーム生成システム1000には、
図1を参照して説明したものと同様の予備成形手段300など、ある程度小径化されたイオンビームB
1を生成する手段から、そのイオンビームB
1が入射される。そして、荷電粒子ビーム用ノズル100によりマイクロビームB
Mが生成される。
【0048】
[1−3 ノズルの構造]
荷電粒子ビーム用ノズル100は、
図3に示したように、荷電粒子を通す通路106を内部になし先端部120が基端部110より絞られた内径を有している筒状または管状の絶縁体側壁102と、絶縁体側壁の外側面に接して配置された少なくとも1つの電極104とを備えている。
【0049】
[1−3−1 電極の個別化]
電極104は、好適には、少なくとも通路106の延びる向きの各位置を分けるように区切られた電極群をなしたものである。
図3に示した荷電粒子ビーム用ノズル100においては、電極104は、例えば電極A104a〜電極D104dのように、通路106の延びる方向の位置により指定可能な電極群とされている。その結果、典型的な荷電粒子ビーム用ノズル100は電極の構造も含めて回転対称性または軸対称性を有しているが、他の形状とすることもできる。また、少なくとも通路106の延びる向きの各位置を分けるように区切られているかぎり、さらに追加の区切り方によって電極が細分されていてもよい。
【0050】
[1−3−2 突端面の処理]
図3(c)および
図3(d)には、基端部110および先端部120の拡大図を示している。基端部110においては、その端面112の通路106の基端側の開口の縁にまで、電極群のうち最も基端部110に近い電極ものである基端電極つまり電極D104dが延びている。このため、基端部110における通路106の開口の外縁を画定しているのは、基端部110の荷電粒子ビーム用ノズル100の壁の内側であると同時に、電極D104dのその延びた部分である。同様に、先端部120においては、その端面122の通路106の先端側の開口の縁にまで、電極群のうち最も先端部120に近い電極ものである先端電極つまり電極A104aが延びている。
【0051】
端面112、122にまで電極D104dや電極A104aが延びていると、絶縁体側壁102をなす絶縁体表面のうち端面に電荷が蓄積されにくくなって、イオンビームの径路に悪影響を与える位置での不要な電界の生成を防止することが可能となる。
【0052】
[1−3−3 電極制御部200]
図7は、荷電粒子ビーム用ノズル100における荷電粒子ビーム用ノズルの電極制御部200の典型的な態様のいくつかの例を示す接続図である。典型的な接続態様は、
図7(a)〜(d)に共通して示すように、電極D104dを接地端子202に接続し、電極C104cおよび電極D104dを互いに接続しておき共通の電圧源に接続するものである。
図7(a)に示す態様の電極制御部200Aのように、電極A104aを電圧源206に接続してもよい。また
図7(b)に示す態様の電極制御部200Bのように、電極A104aをリレー210を介して接地端子212に接続してもよい。さらに
図7(c)の態様の電極制御部200Cのように、リレー210と抵抗214を介して接地端子212に接続してもよい。加えて、
図7(d)の態様の電極制御部200Dのように、リレー210と抵抗214を介して電圧源206に接続することもできる。
【0053】
[1−3−4 シース]
図8は、本実施形態の荷電粒子ビーム用ノズルにシースが備わっている構成を示す構造図である。シース150は、荷電粒子ビーム用ノズル100に対して固定されており、保持部152を有している。保持部152は、追加のキャピラリー160の基端部166を保持するようになっている。追加のキャピラリー160は、荷電粒子を通す延長通路164を内部になしその先端部168が追加のキャピラリー160の基端部166より絞られた内径を有している筒状または管状の絶縁体側壁162を備えているものである。また、シースの保持部152は、追加のキャピラリー160の延長通路164が荷電粒子ビーム用ノズルの通路の延長となるように追加のキャピラリー160の基端部166を保持するものである。
【0054】
シース150は、全体として、荷電粒子ビーム用ノズル100を真空槽内において固定するためにも利用される。典型的にはシース150はガラスにより作製されている。保持部152は、例えば先端部120を超えて延びていて、追加のキャピラリー160を保持するように作製されている。追加のキャピラリー160は、必ずしも電極が形成されている必要はない。先端部120の内径よりも絞られた内径の先端部168を有する追加のキャピラリー160を利用すればビーム径をさらに絞ることができる。また、電極を形成しない追加のキャピラリー160は、様々な先端の開口径のものが比較的安価に作製できるため、交換が必要なときには追加のキャピラリー160のみを取り替えることにより、実用性を高めることが可能となる。
【0055】
[1−4 SHCIマイクロビームの生成]
本実施形態は、絞られた径の荷電粒子ビームの生成方法としても実施される。その生成方法においては、加速された荷電粒子を荷電粒子ビーム用ノズル100の基端部110から入射し荷電粒子の少なくとも一部を荷電粒子ビーム用ノズル100の先端部120から放出させるビーム照射工程が実施され、電極制御工程も実施される。荷電粒子ビーム用ノズル100は、荷電粒子を通す通路106を内部になし先端部120が基端部110より絞られた内径を有している筒状または管状の絶縁体側壁と、絶縁体側壁の外側面に接して配置された少なくとも1つの電極とを備えている。電極制御工程では、少なくとも1つの電極のいずれかが、所定の電位の電圧源に電気的に接続したり接地したりされる。
【0056】
[1−4−1 区切られた電極ごとの作用]
再び
図3および
図5〜7を参照して、荷電粒子ビーム用ノズル100の各電極の動作について説明する。
図3に示した構造の荷電粒子ビーム用ノズル100においては、電極群に含まれる少なくとも2つの電極が、荷電粒子が先端部120から放出される期間の少なくとも一時期、互いに異なる電位または互いに異なる電気的接続状態にされる。
【0057】
[1−4−1−1 先端部からの放電動作による放出動作の安定化]
つまり、典型的には、電極制御工程において、電極群のうち最も先端部に近い先端電極である電極A104aを放電用電源に電気的に接続する放電動作と、先端電極を放電用電源から電気的に切り離す蓄積動作とを繰り返す。この繰り返しは、
図7(b)〜(d)のようにリレー210を利用することにより容易に実行することが可能である。
【0058】
この際の放電用電源は、蓄積した電荷を放電させることができる任意の電源である。ひとつ具体例をあげると、荷電粒子ビームをなす荷電粒子と同極性で荷電粒子ビームを加速した加速電圧より小さい絶対値の電位に維持された定圧電源とすることができる。荷電粒子ビームを1kV加速したAr
8+とすると、プラスの電位で、1kVよりも低い電位の電源を採用することができる。また、荷電粒子ビームをなす荷電粒子と逆極性の電位に維持された逆電圧源を採用することができる。さらには、接地端子も放電用電源として選択することができる。ただし、ここに例示したもの以外の電圧を採用する電源であっても、何らかの電気的作用により蓄積した電荷を放電させるものである限り、本実施形態の電源として採用することが可能である。
【0059】
[1−4−1−2 直流電圧によるビームの規制]
また、電極制御工程では、電極群のうち先端電極である電極A104aを除くいずれかの電極を収束制御用電源に電気的に接続する。この収束制御用電源の具体例も、荷電粒子ビームをなす荷電粒子と同極性で荷電粒子ビームを加速した加速電圧より小さい絶対値の電位に維持された定圧電源、荷電粒子ビームをなす荷電粒子と逆極性の電位に維持された逆電圧源、または接地端子のいずれかである。例えば収束制御用電源を直流電圧源としたものが、
図7(a)〜(d)に示した電極B104bおよび電極C104cの接続の態様である。
【0060】
[1−4−1−3 基端部への電圧印加による入射動作の安定化]
また、電極群のうち最も基端部110に近い基端電極である電極D104dは、
図7(a)〜(d)に示すように、接地端子に電気的に接続する。これは、基端部110に対して入射する荷電粒子ビームを安定化させる作用を持つ。
【0061】
[1−5 SHCIビームの照射]
被照射物(図示しない)は、通路106の延長の先端部120のさらに先(下流)に配置される。そして、先端部120から出射した後のマイクロビームB
Mは、荷電粒子ビーム生成システム1000が置かれている空間内を殆ど直進するため、荷電粒子ビーム用ノズル100と被照射物の相対的な位置を動かすことにより、被照射物の目的の位置にマイクロビームB
Mを照射することが可能となる。また、マイクロビームB
Mの出力または停止を制御するためには、適当な金属板などのシャッターをイオンビームのいずれかの位置に設けることが有用である。さらには、
図8に示したシース150を有する荷電粒子ビーム用ノズルを採用する場合、追加のキャピラリー160をさらに追加して、一層絞られた径のSHCIマイクロビームを生成することも可能である。
【0062】
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。上述の各実施形態および実施例は、発明を説明するために記載されたものであり、本出願の発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきものである。また、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。