特許第6048791号(P6048791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6048791ベルト制御装置、ローラユニット、および画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048791
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】ベルト制御装置、ローラユニット、および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20161212BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20161212BHJP
   B65H 5/02 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   G03G15/16
   G03G15/00 550
   B65H5/02 T
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-149477(P2012-149477)
(22)【出願日】2012年7月3日
(65)【公開番号】特開2014-10429(P2014-10429A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】穂積 功樹
(72)【発明者】
【氏名】浅岡 輝
(72)【発明者】
【氏名】澤井 雄次
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 和親
【審査官】 佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−019899(JP,A)
【文献】 特開平11−292338(JP,A)
【文献】 特開2009−186910(JP,A)
【文献】 特開2010−230958(JP,A)
【文献】 特開2005−343577(JP,A)
【文献】 特開平05−346746(JP,A)
【文献】 特開2009−237080(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0087231(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
B65H 5/02
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラに掛け渡されて前記複数のローラの回転とともに走行するベルトの、前記複数のローラのうち少なくとも一のローラの軸方向への移動を制御するベルト制御装置であって、
前記ベルトが前記ローラの軸方向に移動することによって前記軸方向に可動であり、前記ベルトの面と平行な面に対して傾斜している傾斜面を有している軸変位部と、
前記傾斜面に対向して固定して設置されている軸ガイド部と、
前記ベルトの張力によって前記軸変位部と前記軸ガイド部における前記傾斜面との接触維持される方向の回転モーメントが発生するように、支持中心部を中心に回動可能に前記軸変位部を保持する軸変位部保持部とを有し、
前記支持中心部は、前記ローラの軸から前記ベルトの張力の合力の方向に対して、前記軸ガイド部と前記軸変位部とが接している位置とは反対側にあることを特徴とするベルト制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のベルト制御装置であって、
前記支持中心部を中心に前記軸変位部保持部を前記回転モーメントが発生する方向へ回動させる力を加える弾性体を有することを特徴とするベルト制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のベルト制御装置であって、
前記支持中心部は、前記ベルトを架け渡すローラの位置が変わることによって前記回転モーメントが変化しても、前記ローラの軸から前記ベルトの張力の合力の方向に対して、前記軸ガイド部と前記軸変位部とが接している位置とは反対側にあることを特徴とするベルト制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のベルト制御装置であって、
前記ローラの軸から前記ベルトの張力の合力の方向への直線は前記ローラに架け渡されている前記ベルトがなす角の二等分線であることを特徴とするベルト制御装置。
【請求項5】
複数のローラに掛け渡されて前記複数のローラの回転とともに走行するベルトの、前記複数のローラのうち少なくとも一のローラの軸方向への移動を制御するベルト制御装置に用いられるローラユニットであって、
前記ベルトが前記ローラの軸方向に移動することによって前記軸方向に可動であり、前記ベルトの面と平行な面に対して傾斜している傾斜面を有している軸変位部と、
前記傾斜面に対向して固定して設置されている軸ガイド部と、
前記ベルトの張力によって前記軸変位部と前記軸ガイド部における前記傾斜面との接触維持される方向の回転モーメントが発生するように、支持中心部を中心に回動可能に前記軸変位部を保持する軸変位部保持部とを有し、
前記支持中心部は、前記ローラの軸から前記ベルトの張力の合力の方向に対して、前記軸ガイド部と前記軸変位部とが接している位置とは反対側にあることを特徴とするローラユニット。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のベルト制御装置または請求項に記載のローラユニットを有する画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のローラに掛け渡され、前記ローラの回転とともに走行するベルトの、前記ローラの軸方向への移動を制御するベルト制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置では、中間転写体、記録媒体搬送部あるいは画像定着部等として様々なベルトが用いられている。これらのベルトは、互いに平行に設けられている少なくとも2本のローラに架け渡された状態で、ローラの回転に伴って走行するように構成されている。しかし、ローラを回転させるために用いられる部品の劣化に起因して複数のローラが互いに平行でなくなることがある。複数のローラが互いに平行でなくなると、ベルトがローラの軸の方向(以降、ローラ軸方向という。)へ寄ってしまう所謂ベルト寄りが発生していた。このベルト寄りによって、ベルトがローラから外れて破損する問題が生じていた。
【0003】
このようにローラ軸方向に寄ったベルトを元の位置に戻すためのベルト位置補正技術が特許文献1に記載されている。ここで図7を用いて特許文献1に記載されている蛇行を補正する技術について説明する。図7は特許文献1に記載されている蛇行補正装置を表す図である。蛇行補正装置には用紙搬送ベルト90を張架する蛇行補正ロール91の一の端部に傾斜面93を有する回転体92が設けられている。また、回転体92の外周面に当接する固定部材94が設けられている。用紙搬送ベルト90に蛇行が生じない場合には図7(1)に示されるように両端の回転体92がそれぞれ固定部材94に対して同様に接している状態を保っている。
【0004】
用紙搬送ベルト90に蛇行が生じると用紙搬送ベルト90の端部が一の回転体92を押圧する。押圧された回転体92は蛇行補正ロール91の軸方向外側へ移動する。回転体92が軸方向外側へ移動すると、図7(2)に示されるように傾斜面93が固定部材94の方向に押し上げられる。これによって用紙搬送ベルト90は蛇行方向とは逆方向に変位し、用紙搬送ベルト90の蛇行が補正される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術において、張架された用紙搬送ベルト90が蛇行補正ロール91に加える張力によって回転体92と固定部材94が離れることがある。ここで、この状態となる原因について図8を用いて説明する。図8図7で示された蛇行補正装置を蛇行補正ロール91の軸の方向から見た図である。蛇行補正ロール91がF01およびF02に示される方向に用紙搬送ベルト90の張力を受ける。これらの張力の合力F0によって、蛇行補正ロール91の端部に設けられている回転体92に対してF0の方向へ力が加えられ、固定部材94から離れる。
回転体92が固定部材94から離れると回転体92は傾斜面93で固定部材94に当接して押し上げられなくなり、そのためベルト90の位置が補正されなくなるという課題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため本発明においては、複数のローラに掛け渡されて前記複数のローラの回転とともに走行するベルトの、前記複数のローラのうち少なくとも一のローラの軸方向への移動を制御するベルト制御装置であって、前記ベルトが前記ローラの軸方向に移動することによって前記軸方向に可動であり、前記ベルトの面と平行な面に対して傾斜している傾斜面を有している軸変位部と、前記傾斜面に対向して固定して設置されている軸ガイド部と、前記ベルトの張力によって前記軸変位部と前記軸ガイド部における前記傾斜面との接触維持される方向の回転モーメントが発生するように、支持中心部を中心に回動可能に前記軸変位部を保持する軸変位部保持部とを有し、前記支持中心部は、前記ローラの軸から前記ベルトの張力の合力の方向に対して、前記軸ガイド部と前記軸変位部とが接している位置とは反対側にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ベルトがローラの軸方向に移動することによって前記軸方向に可動であり、前記ベルトの面と平行な面に対して傾斜している傾斜面を有している軸変位部と、前記傾斜面に対向して固定して設置されている軸ガイド部と、前記軸変位部に対して前記軸ガイド部の方向へ力を加えることによって前記軸変位部と、前記軸ガイド部における前記傾斜面との接触を維持するため、ベルトの位置が補正されなくなるのを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例の概略構成図である。
図2】本実施形態に係るベルト制御装置を表す図である。
図3】本実施形態に係るベルト制御装置を表す図である。
図4】ベルト3のローラ軸6方向への移動を説明するための図である。
図5】支持中心部43aの位置と回転モーメントの方向について説明するための図である。
図6】支持中心部43aおよび軸変位部当接部42aの位置関係を説明するための図である。
図7】従来のベルト制御装置を表す図である。
図8】従来のベルト制御装置を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1はプリンタとして構成された画像形成装置の一例を示す概略構成図であり、ここに示した画像形成装置は、その本体の筐体内に第1乃至第4の4つの感光体1a、1b、1c、1dが設けられている。各感光体上には互いに異なる色のトナー像がそれぞれ形成され、これらの感光体1a、1b、1c、1d上に、ブラックトナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像及びイエロートナー像がそれぞれ形成される。
【0011】
第1乃至第4の感光体1a、1b、1c、1dに対向して中間転写体として構成された中間転写ベルト3が設けられ、各感光体1a、1b、1c、1dが中間転写ベルト3の表面に接している。この中間転写ベルト3は、駆動ローラ51、支持ローラ52、53、54に架け渡されている。なお、駆動ローラ51、支持ローラ52、53、54のうち任意のものをローラという。
【0012】
支持ローラ52の近傍にはベルト張架バネ52aが設けられている。駆動ローラ51および支持ローラ53から離れる方向に支持ローラ52に対して弾性力を加えるように設けられている。これによって、支持ローラ52に架け渡された中間転写ベルト3は弛むことなく張り詰めた状態が保持され、適切に用紙を搬送することができる。なお、ベルト張架バネ52aはバネ、板バネ、ゴム等によって実現される。
【0013】
駆動ローラ51が駆動源(図示せず)によって回転し、駆動ローラ51の回転により中間転写ベルト3が矢印Aで示される方向へ移動する。中間転写ベルト3は、多層構造、単層構造でも構わないが、多層構造であればベース層を例えば伸びの少ないフッ素樹脂やPVDFシート、ポリイミド系樹脂でつくり、表面をフッ素系樹脂等の平滑性のよいコート層で被ってなるものが好ましい。また、単層であればPVDF、PC、ポリイミド等の材質を用いるものがよい。
【0014】
感光体1a、1b、1c、1d上にトナー像を形成する構成と、その各トナー像を中間転写ベルト3上に転写する構成は実質的に全て同一であり、形成される各トナー像の色が異なるのみである。よって、第1の感光体1aにブラックトナー像を形成し、そのトナー像を中間転写ベルト3上に転写する構成のみを説明し、第2乃至第4の感光体1b、1c、1d上についての構成の説明を省略する。感光体1aは図1における矢印Bに示される方向に回転駆動される。このとき感光体表面に図示していない除電装置からの光が照射され、感光体1aの表面電位が初期化される。感光体1aの近傍には帯電装置8aが設置されており、表面電位が初期化された感光体表面は帯電装置8aによってマイナス極性に一様に帯電される。このようにして帯電された感光体表面に、露光装置9から出射する光変調されたレーザビームLが照射され、感光体1aの表面に書き込み情報に対応した静電潜像が形成される。本実施形態の画像形成装置においてはレーザビームLを出射するレーザ書き込み装置を有する露光装置9が用いられている。
【0015】
また、感光体1aの近傍には現像装置10aが設置されている。感光体1aに形成された静電潜像は、現像装置10aを通るときにブラックトナー像として可視像化される。一方、感光体1aに対向して中間転写ベルト3を挟むように転写ローラ11aが設けられている。
【0016】
上記転写ローラ11aには、感光体1a上に形成されたトナー像のトナー帯電極性と逆極性であるプラス極性の転写電圧が印加される。これにより、感光体1aと中間転写ベルト3との間に転写電界が形成され、感光体1a上のトナー像が感光体1aと同期して回転駆動される中間転写ベルト3上に静電的に転写される。トナー像を中間転写ベルト3に転写したあとの感光体1a表面に付着する転写残トナーは、クリーニング装置12aによって除去され、感光体1aの表面が清掃される。
【0017】
同様にして、第2乃至第4の各感光体1b、1c、1dにはマゼンタトナー像、シアントナー像及びイエロートナー像がそれぞれ形成される。そして、各色のトナー像は、ブラックトナー像の転写された中間転写ベルト3上に順次重ねて静電転写され、合成トナー像が形成される。
【0018】
また、図1に示されるように、画像形成装置内の下部には給紙装置14が設けられ、給紙ローラ15の回転によって、記録媒体Pが矢印C方向に送り出される。送り出された記録媒体Pは、レジストローラ対16によって駆動ローラ51と、駆動ローラ51に対向して設置された二次転写ローラ17との間に給送される。このとき、二次転写ローラ17には所定の転写電圧が印加され、これによって中間転写ベルト3上の合成トナー像が記録媒体Pに二次転写される。
【0019】
合成トナー像を二次転写された記録媒体Pは、さらに上方に搬送されて定着装置18を通る。このとき定着装置18は記録媒体P上のトナー像を熱と圧力の作用により定着させる。定着装置18を通過した記録媒体Pは、排紙部に設けられた排紙ローラ対19を介して画像形成装置外に排出される。
【0020】
また、トナー像転写後の中間転写ベルト3上に付着する転写残トナーはベルトクリーニング装置20によって除去される。本実施形態におけるベルトクリーニング装置20は、ウレタン等で構成されたブレード形状のクリーニングブレード21を有しており、このクリーニングブレード21は中間転写ベルト3に付着した転写残トナーを掻き取るように設けられている。ベルトクリーニング装置20には適宜様々な種類のものを用いることが可能であり、例えば、ベルトクリーニング装置20を導電性ファーブラシによる静電クリーニング方式のものとしても良い。
【0021】
次に、本実施形態におけるローラの軸方向への中間転写ベルト3の移動を制御するためのベルト制御装置について説明する。本実施形態のベルト制御装置は、図1における画像形成装置が有するローラのうち少なくとも一のローラに設けられている。なお、以降の説明において中間転写ベルト3をベルト3という。
【0022】
本実施形態のベルト制御装置は、図1における画像形成装置の支持ローラ52の片側に設けられている。したがって、図2以降は支持ローラ52の片側を示している。図2(1)は、本実施形態のベルト制御装置の断面概略図である。
【0023】
図2(1)に示されるように、ベルト制御装置は支持ローラ52の端部に支持ローラ52の軸と同軸であるローラ軸6を有している。ローラ軸6は支持ローラ52より直径が短い円柱の形状をしており、支持ローラ52、後述するベルト突当部30、ベルト位置補正部40の軸変位部41、ローラ軸支持部43を貫通している。また、ローラ軸6は支持ローラ52と一体となって設けられており、ローラ軸支持部43を貫通するように設けられている。
【0024】
また、ベルト突当部30が支持ローラ52の端部にローラ軸6方向に可動であるように設けられており、ベルト3の端部(ベルト端部3aという)が突き当たることによって支持ローラ52の軸の方向(図2(1)に示されるz方向。以降、ローラ軸6方向という)に移動する。ベルト突当部30はローラ軸6方向に対して略垂直な平面である平面部30aを有している。平面部30aの周縁は円を形成しており、その円の中心は支持ローラ52の軸上にある。また、平面部30aはベルト3がローラ軸6方向外方(支持ローラ52の中央部分から端部に向かう方向)に移動したときに、ベルト3の端部が接するベルト端部当接部として機能する。
【0025】
ベルト端部3aが移動して平面部30aに突き当たったときにベルト3がベルト突当部30に乗り上げて支持ローラ52から外れないように、図2(1)に示されるように平面部30aの周縁が形成する円の半径Daは、支持ローラ52の半径Dbにベルト3の厚さを加えた長さより長く構成される。半径8.78(mm)の支持ローラ52、厚さ80(μm)のベルト3が用いられる場合、ベルト突当部30は他の部品に干渉しないように平面部30aの周縁の半径D1を8.86(mm)より長く、たとえば9.00(mm)とすればよい。
【0026】
なお、平面部30aはベルト端部当接部として機能するものであればよく、その周縁が円でなく、長方形、多角形、その他任意の閉曲線を形成するものであってよい。その場合、支持ローラ52の軸からその長方形等の周縁までの距離Daは、支持ローラ52の半径にベルト3の厚さを加えた長さより長いものとする。また、平面部30aは凹凸や湾曲を有する面でもよく、ベルト端部当接部として機能するものであればその形状を問わない。
【0027】
また、ベルト突当部30は支持ローラ52、ローラ軸6に対して固定されず、図2(1)に示されるxy平面内で支持ローラ52の軸と同じ軸を中心として自由に回転するように設けられている。このため、ベルト突当部30は、ベルト3が平面部30aに接している状態で走行するときに、ベルト端部3aと平面部30aの摩擦力によりベルト3に従動して回転する。
【0028】
続いて、ローラ軸6方向に移動したベルト3を元の位置に戻すためのベルト位置補正部40について図2および図3を用いて説明する。図2(2)は図2(1)において支持ローラ52、ローラ軸6が傾斜している状態を表す図である。図3図2(1)に示されるベルト制御装置をz方向から見た概観図である。
【0029】
ベルト位置補正部40は、図2(1)に示される軸変位部41、軸ガイド部42、ローラ軸支持部43、固定部46、および図3に示されるローラ軸支持バネ45を有している。軸変位部41はベルト突当部30とローラ軸6方向内方で接するように設けられている。また、ベルト端部3aが突き当たってベルト突当部30が軸方向外方へ移動すると、軸変位部41はベルト突当部30に押されてローラ軸6方向外方へ移動する。また、軸変位部41はローラ軸6方向外方にベルト3の面と平行な面に対してローラ軸6方向外方を下にして傾斜している平面である傾斜面41aを有している。また、上述のローラ軸6は軸変位部41を貫通しているため、軸変位部41のx軸方向の移動に伴って移動する。
【0030】
さらに、図2(1)に示されるように軸変位部41の傾斜面41aに接して軸ガイド部42が設けられている。軸ガイド部42は、その一部である軸変位部当接部42aで軸変位部41の傾斜面41aに接している。また、ローラ軸6、軸変位部41が移動しても、軸ガイド部42は移動しないように固定されている。このような構成によって、軸変位部41がローラ軸6方向外方へ移動すると、図2(2)に示されるように軸変位部当接部42aが接する傾斜面41aの位置が上方にずれ、軸変位部41および軸変位部41を貫通しているローラ軸6が傾斜することになる。
【0031】
また、軸ガイド部42のローラ軸6方向外方に固定部46が設けられ、固定部46のローラ軸6方向外方にローラ軸支持部43が設けられている。ここで、ローラ軸支持部43、固定部46の詳細について図3を用いて説明する。
【0032】
図3に示されるようにローラ軸支持部43はローラ軸6が貫通するように設けられている。そのため、ローラ軸6が軸変位部41に伴ってその端部を下方にして傾斜すると、ローラ軸支持部43は支持中心部43aを中心とした円弧に沿って図3に示される矢印アの方向へ傾斜する。また、ローラ軸支持部43はローラ軸6の移動に伴って動くことのない固定部46とローラ軸支持バネ45によって連結されている。なお、ローラ軸支持バネ45は弾性体の一例であり、バネに代えて板バネ、ゴム等を用いてもよい。
【0033】
なお、上述した部材のうち支持ローラ52、ローラ軸6、ベルト突当部30、ベルト位置補正部40を有するものをローラユニットという。また、ローラ軸6、ローラ軸支持部43を有するものを軸変位部保持部という。
【0034】
次に、本実施形態の画像形成装置におけるベルト制御装置の動作について説明する。画像形成装置の駆動ローラ51が駆動源によって回転すると、ベルト3が駆動ローラ51の回転に伴って図2(1)に示されるy方向(以降、走行方向という。)へ走行し、ベルト3の走行に伴ってベルト3を架け渡している支持ローラ52が回転する。このとき、ベルト3は、例えば複数のローラが互いに平行でないことが原因となってローラ軸6方向へ移動することがある。ベルト3がローラ軸6方向外方へ移動してベルト端部3aが平面部30aに突き当たると、ベルト端部3aが平面部30aに接した状態で、ベルト3は走行方向へ走行する。
【0035】
一方、ベルト端部3aがベルト突当部30に突き当たると、ベルト突当部30がローラ軸6方向外方へ移動する。ベルト突当部30がローラ軸6方向外方へ移動すると、軸変位部41にはローラ軸6方向外方への力が加えられる。この力によって軸変位部41がローラ軸6方向外方へ移動しようとすると、図2(2)に示されるように軸ガイド部42の軸変位部当接部42aが接する傾斜面41aの位置が上方にずれて傾斜する。そして、軸変位部41の傾斜に伴って軸変位部41を貫通しているローラ軸6が傾斜する。
【0036】
ここで、複数のローラに架け渡されているベルト3のローラ軸6方向の移動について詳細に説明する。ここでは説明を容易にするため支持ローラ52および支持ローラ53に架け渡されている部分のベルト3の動作について説明する。
【0037】
図4(1)および図4(2)は支持ローラ52および53にベルト3が架け渡され、支持ローラ52の軸と支持ローラ53の軸とが互いに平行でない状態が表されている。特に、図4(1)には、支持ローラ52が紙面に対して平行で、支持ローラ53の左側の端部が右側の端部よりx軸方向の紙面手前となるよう傾いている状態が表されている。このように支持ローラ52の軸と支持ローラ53の軸とが互いに平行でないことによって、ベルト3が走行方向(y軸方向)に対して角度αで傾いている場合、ベルト3がy軸方向に距離Lだけ走行すると、ベルト3は+z方向(図4において右側に向かう方向)に距離Ltanαだけ移動する。
【0038】
ベルト3がローラ軸6方向に移動してベルト突当部30に突き当たると、軸変位部41はローラ軸6方向外方へ移動してローラ軸6および支持ローラ52が傾斜する。この動作について具体的に説明する。
【0039】
図2(1)に示されるように、ベルト端部3aがベルト突当部30の平面部30aに突き当たるとベルト突当部30はローラ軸6方向外方へ移動する。軸変位部41は、ベルト突当部30の軸方向外方でベルト突当部30に接するように設けられているので、ベルト突当部30の移動によって軸変位部41に対してローラ軸6方向外方への力が加えられる。この力によって軸変位部41がローラ軸6方向外方へ移動すると、図2(2)に示されるように軸ガイド部42の軸変位部当接部42aが接する傾斜面41aの位置が上方にずれて傾斜する。そして、軸変位部41の傾斜に伴って軸変位部41を貫通しているローラ軸6の端部が+x方向(図2(2)において下側へ向かう方向)へ移動する。
【0040】
ローラ軸6の端部が+x方向に移動すると、ローラ軸6が貫通している支持ローラ52は傾斜する。図2(2)において支持ローラ52が傾いた状態をx軸方向から見た図が図4(2)である。図4(2)に示されるように支持ローラ52の左側の端部は右側の端部よりx軸方向の紙面手前となるよう傾斜している。ここで、支持ローラ52が支持ローラ53の傾斜より大きく傾斜していると、支持ローラ52および支持ローラ53は図4(1)に示される状態とは相対的に逆の傾きを形成することになる。支持ローラ52および支持ローラ53が相対的に逆の傾きを形成するとベルト3は−z方向(図4(2)において左側に向かう方向)に移動し元の位置に戻っていく。
【0041】
具体的には、図4(2)に示されるように、支持ローラ52が傾斜することによってベルト3の進行方向が角度α’だけ傾斜した場合、ベルト3がy軸方向に距離Lだけ走行すると上述の動作と逆方向である−z方向へLtanα’の距離だけ移動する。すなわち、支持ローラ52に架け渡されているベルト3は軸方向内方へ戻っていき、ベルト3の位置がローラ軸6方向に対して元の位置に戻る方向に移動するようにベルト3の位置が補正される。
【0042】
上述のようにベルト3の位置を補正するためには、既に説明したように軸変位部41が傾斜面41aで軸ガイド部42の軸変位部当接部42aと接していなければならない。ここで、軸変位部41が軸ガイド部42と接しているように、軸変位部41が軸ガイド部42の方向に力を受けるための原理について説明する。
【0043】
支持ローラ52に架け渡されて走行しているベルト3に対しては、図3(1)に示されるように張力F11および張力F12が発生する。このため、支持ローラ52には張力F11および張力F12の合力Fが加えられる。よってローラ軸6を介してローラ軸支持部43には合力Fが加えられる。ここで、ローラ軸支持部43は支持中心部43aを中心として自由に回転するように設けられている。また、支持中心部43aは、支持ローラ52の軸から合力Fが働く方向に対して、軸変位部当接部42aとは反対側に設けられている。このため、ローラ軸支持部43とローラ軸6の移動に伴って移動する軸変位部41を軸変位部当接部42aに近づける方向に力が加わるようにローラ軸支持部43に回転モーメントF2が発生する。すなわち、ローラ軸支持部43を貫通して設けられているローラ軸6、およびローラ軸6が貫通している軸変位部41は軸変位部当接部42aに近づく方向に力が加えられる。そのため、軸変位部41は軸ガイド部42と軸変位部当接部42aで接している状態を保持することが可能となる。
【0044】
本実施形態の画像形成装置において、ベルト3を架け渡すローラの位置が変わることによって、ローラ軸支持部43に発生する回転モーメントF2が変化する。具体的には、たとえば、ブラック色のトナーのみを用いるブラック単色モードで画像を形成する場合には、図3(2)に示されるようにベルト3がシアン色、マゼンタ色、イエロー色のトナーを付着するための感光体1b、1c、1dには接することなく、ブラック色の感光体1aのみが接するようにベルト3を架け渡している。これに対し、ブラック色、シアン色、マゼンタ色、イエロー色の全てのトナーを用いるフルカラーモードで画像を形成する場合には、図3(1)に示されるように感光体1a、1b、1c、1dに接するようにベルト3を架け渡している。図3(2)に示されるブラック単色モードの場合と、図3(1)に示されるフルカラーモードの場合では、支持ローラ52に架け渡されたベルト3のなす角度が異なるためローラ軸支持部43に加えられる張力の方向は異なる。
【0045】
ここで、図3に示されるベルト位置補正装置において、ローラ軸支持部43の支持中心部43aを図5に示される位置に設置した場合について説明する。図5(1)および図5(2)はそれぞれ図3(1)および図3(2)に示されるベルト位置補正装置のうち支持ローラ52、ローラ軸6、ベルト当接部42a、ベルト3およびベルト3の張力によってローラ軸6が受ける合力Fを表したものであり、支持中心部43aを図3に示される場合に比べて上方にずらした点だけが異なる。また、図5(1)における支持中心部43aと図5(2)における支持中心部43aとは同じ位置にある。
【0046】
図5(1)および図5(2)で示される位置にローラ軸支持部43の回転の中心である支持中心部43aを設置すると、図5(2)に示されるブラック単色モードの場合には、上述したようにローラ軸支持部43が軸変位部当接部42aに近づく方向に回転モーメントF2を加えられる。一方、図5(1)に示されるフルカラーモードの場合には支持ローラ52の軸から合力Fの方向に対して軸変位部当接部42aと同じ側に支持中心部43aがあるので、ローラ軸支持部43には軸変位部当接部42aと離れる方向へ回転モーメントF2が加えられる。すなわち、フルカラーモードの場合には軸変位部41は軸ガイド部42の軸変位部当接部42aから離れてしまうことになる。
【0047】
このような問題を解決するために、図3(1)および(2)で示されるように、画像形成装置がフルカラーモードで動作する場合もブラック単色モードで動作する場合も、ベルト3の張力の合力Fの力点から合力の方向、すなわち支持ローラ52の軸から合力の方向に対して軸変位部当接部42aとは反対側に支持中心部43aが設けられる必要がある。なお、通常の画像形成装置では、図1に示されるように、支持ローラ52と駆動ローラ51の間を走行しているベルト3の部分31、および、支持ローラ52と支持ローラ53の間を走行しているベルト3の部分32に発生する張力の大きさは同じであるから、合力Fの力点から合力の方向への直線はベルト3の部分31とベルト3の部分32によってなす角を二等分する二等分線となる。
【0048】
以上のことを考慮して支持中心部43aを設けることによって、例えばブラック単色モードとフルカラーモードが変わることによって複数のローラ間の相対的な位置関係が変わっても軸変位部41を軸ガイド部42に近づける方向に力を加えることができ、適切にローラ軸6を傾斜させることが可能となる。
【0049】
また、本実施形態においては、図3に示されるようにローラ軸支持バネ45が設けられているので、軸変位部41に対してローラ軸6方向外方への力が加えられてローラ軸6が傾斜すると、ローラ軸支持部43は図3の矢印アで示される方向に支持中心部43aを中心とした円弧に沿って傾斜する。ローラ軸支持部43が傾斜することによって伸びたローラ軸支持バネ45の伸びを戻す方向に弾性力が働く。この弾性力によってローラ軸支持部43は元の位置の方(矢印イで示す方向)に戻ろうとするため、ローラ軸支持部43を貫通しているローラ軸6は上方に変位しようとする。このため、上述のように軸変位部41に対してローラ軸6方向外方への力が加えられたとき、軸変位部41はベルト3の張力によって軸ガイド部42から離れることなく傾斜面41aのいずれかの位置において軸変位部41が軸ガイド部42の軸変位部当接部42aと接した状態を保持することが可能となる。
【0050】
なお、本実施形態においては図2に示されるように軸ガイド部42の下方において軸変位部41が接するように設けられている。上述したように、このような構成において軸変位部41は軸ガイド部42の軸変位部当接部42aから離れないようにするため軸変位部41に軸変位部当接部42aの方向への力が加わるようにしなければならない。
【0051】
図6(1)は図2に示されるベルト制御装置をz軸方向から見た場合の、張力の合力Fの方向に対する軸変位部41、軸変位部当接部42a、および支持中心部43aの位置関係を示したものである。また、図6(2)は図6(1)における軸変位部41、軸変位部当接部42a、および支持中心部43aの位置関係を、合力Fの方向に対して逆にしたものを表している。
【0052】
既に上で述べたとおり、図6(1)に示されるように、軸変位部当接部42aがベルト3の張力の合力の方向(矢印F)に対して上側にある場合、支持中心部43aは張力の合力の方向に対して下側に設けられなければならない。支持中心部43aを有するローラ軸支持部43に軸変位部当接部42aに向かうような上方向の回転モーメントを発生させるためである。このように上方向の回転モーメントが発生することにより、軸変位部41に軸変位部当接部42aの方向への力が加わることになる。そのため、軸変位部41は軸変位部当接部42aとの接触を維持することが可能となる。
【0053】
ここで、本実施形態における画像形成装置1は、図6(2)に示されるように軸変位部当接部42aがベルト3の張力の合力の方向(矢印F)に対して下側に設けられる場合もある。この場合、支持中心部43aは張力の合力の方向に対して上側に設けられなければならない。支持中心部43aを有するローラ軸支持部43に対して軸変位部当接部42aに向かうような下方向の回転モーメントを発生させるためである。このように下方向の回転モーメントが発生することにより、軸変位部41に軸変位部当接部42aの方向への力が加わることになる。そのため、軸変位部41は軸変位部当接部42aとの接触を維持することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態において支持ローラ52の端部にベルト制御装置が設けられているとしたが、駆動ローラ51,支持ローラ52、53、54のいずれか二以上のローラの端部にベルト制御装置が設けられてもよい。
【0055】
また、本実施形態において、駆動ローラ51,支持ローラ52、53、54の一以上のローラの両側の端部にベルト制御装置が設けられてもよい。
【0056】
また、本実施形態において、ベルト端部支持部7とベルト突当部30とは、それぞれ別の部材であってもよいし、一体として設けられてもよい。
【0057】
また、本実施形態において、軸変位部41はローラ軸6方向外方にベルト3の面と平行な面に対してローラ軸6方向外方を下にして傾斜している平面である傾斜面41aを支持ローラ52の軸より上側に有しているとした。しかし、ローラ軸6方向外方にベルト3の面と平行な面に対してローラ軸6方向外方を上にして傾斜している平面である傾斜面41aを支持ローラ52の軸より下側に有しているとしてもよい。
【0058】
また、本実施形態において、ベルト端部3aが平面部30aに接した状態でベルト3が走行方向へ走行すると、ベルト端部3aと平面部30aの間で発生する摩擦力によってベルト突当部30はベルト3の走行に従動して回転する。これによって、ベルト端部3aが摩擦力によって受ける負荷を低減でき、ベルト3の破損、平面部30aの磨耗を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1 感光体
3 中間転写ベルト
6 ローラ軸
7 ベルト端部支持部
8 帯電装置
9 露光装置
10 現像装置
11 転写ローラ
12 クリーニング装置
14 給紙装置
15 給紙ローラ
16 レジストローラ対
17 二次転写ローラ
18 定着装置
19 排紙ローラ対
20 ベルトクリーニング装置
21 クリーニングブレード
30 ベルト突当部
30a 平面部
40 ベルト位置補正部
41 軸変位部
41a 傾斜面
42 軸ガイド部
42a 軸変位部当接部
43 ローラ軸支持部
43a 支持中心部
45 ローラ軸支持バネ
46 固定部
51 駆動ローラ
52 支持ローラ
53 支持ローラ
54 支持ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】特開2009−288426号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8