特許第6048799号(P6048799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6048799重合液、この重合液から得られた導電性ポリマーフィルム及び固体電解コンデンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048799
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】重合液、この重合液から得られた導電性ポリマーフィルム及び固体電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/028 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   H01G9/02 331G
   H01G9/02 331H
【請求項の数】12
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-195599(P2012-195599)
(22)【出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2014-53386(P2014-53386A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115509
【弁理士】
【氏名又は名称】佐竹 和子
(72)【発明者】
【氏名】町田 健治
(72)【発明者】
【氏名】玉光 賢次
(72)【発明者】
【氏名】室井 諒
【審査官】 小池 秀介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−288342(JP,A)
【文献】 特開2012−089542(JP,A)
【文献】 特開平03−167815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G9/02−9/022
9/028−9/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100〜80質量%の水と0〜20質量%の有機溶媒とから成る溶媒と、
少なくとも一種の支持電解質と、
少なくとも一種の、式(I)
【化1】
(式中、aは0又は1を表し、
bは0又は1以上の整数を表し、
cは0又は1以上の整数を表し、
dは0又は1以上の整数を表し、
eは0又は1以上の整数を表し、
ただし、0≦b+e≦100、0≦c+d≦100であり、
は、水素又はメチル基を表し、
、R及びRは、同一であっても異なっていても良く、互いに独立に、炭素原子数が1〜8個の直鎖状又は分枝状のアルキル基又はアルケニル基を表し、
は、炭素原子数が1〜4個の直鎖状又は分枝状のアルキレン基又はアルケニレン基を表し、
は、水素、メチル基又はエチル基を表わす。)
で表されるアセチレンオール系界面活性剤と、
少なくとも一種の、前記アセチレンオール系界面活性剤以外の水溶性ノニオン界面活性剤と、
から成る、複合化ノニオン界面活性剤と、
該複合化ノニオン界面活性剤により前記溶媒と乳化させた、π−共役二重結合を有する少なくとも一種のモノマーと、
を含むことを特徴とする、前記モノマーの電解重合のための重合液。
【請求項2】
前記式(I)におけるaが0を表す、請求項1に記載の重合液。
【請求項3】
前記式(I)で表されるアセチレンオール系界面活性剤が、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールである、請求項2に記載の重合液。
【請求項4】
前記アセチレンオール系ノニオン界面活性剤以外の水溶性ノニオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルから成る群から選択された少なくとも一種の化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合液。
【請求項5】
前記溶媒が水のみから成る、請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合液。
【請求項6】
前記モノマーが、3位と4位に置換基を有するチオフェンから選択された少なくとも一種の化合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の重合液。
【請求項7】
前記支持電解質が、非スルホン酸系有機支持電解質であって該支持電解質のアニオンの分子量が200以上である支持電解質から成る群から選択された少なくとも一種の化合物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の重合液。
【請求項8】
前記支持電解質がボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物である、請求項7に記載の重合液。
【請求項9】
ニトロベンゼン及びニトロベンゼン誘導体から成る群から選択された少なくとも一種の安定化剤をさらに含む、請求項8に記載の重合液。
【請求項10】
少なくとも表面に導電性部分を有する基体を請求項1〜9のいずれか1項に記載の重合液に導入して電解重合を行うことにより得られた導電性ポリマーフィルム。
【請求項11】
表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、該陽極上に設けられた導電性ポリマー層と、を含む固体電解コンデンサであって、
前記導電性ポリマー層が、前記陽極を請求項1〜9のいずれか1項に記載の重合液に導入して電解重合を行うことにより形成されたものであることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項12】
表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、弁金属箔からなる陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置された導電性ポリマー層を保持したセパレータと、を含む固体電解コンデンサであって、
前記導電性ポリマー層が、前記陽極と前記陰極とこれらの間に配置されたセパレータとを含むコンデンサ素子を請求項1〜9のいずれか1項に記載の重合液に導入し、該コンデンサ素子に前記重合液を含浸させ、電解重合を行うことにより形成されたものであることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い電導度と高い耐熱性とを有する導電性ポリマー層を迅速に形成することができる電解重合用の重合液に関する。本発明はまた、この重合液から得られた導電性ポリマーフィルム及び固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
チオフェン、アニリン、ピロールのようなπ−共役二重結合を有するモノマーの重合により得られる導電性ポリマーは、導電性に優れ、様々な電気化学的用途に適しており、固体電解コンデンサをはじめとして、ポリマー電池、帯電防止フィルム、表示素子、センサー、電極材料等の幅広い分野に応用されてきた。例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ等の弁金属箔の表面に誘電体としての酸化皮膜が設けられている陽極と、酸化皮膜と接しており、真の陰極として作用する導電性ポリマー層とを含む固体電解コンデンサにおいて、上記導電性ポリマーが好適に使用されている。
【0003】
これらの導電性ポリマーは、電解重合法又は化学重合法により得ることができる(例えば特許文献1(特開平1−313521号公報)参照)が、電解重合法によると、少量のモノマーから機械的強度に優れた導電性ポリマーフィルムが短時間で電極上に形成される。電極上に形成された導電性ポリマーフィルムは、電極から剥離された形態でも使用され、電極上に配置されたままの形態でも使用される。
【0004】
ところで、これらの導電性ポリマーを得るために使用される電解重合用の重合液には、通常、π−共役二重結合を有するモノマーと、支持電解質と、これらを溶解するための溶媒とが含まれている。そして、重合液の溶媒はモノマーの溶解性等を考慮して適宜選択されている。
【0005】
例えば、特許文献1は、3,4−エチレンジオキシチオフェン(以下、3,4−エチレンジオキシチオフェンを「EDOT」と表わし、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を「PEDOT」と表わす)等の3位と4位が置換されたチオフェンの電解重合により導電性ポリマーを得る方法を開示しているが、実施例では重合液の溶媒としてアセトニトリルが使用されている。特許文献2(特開昭61−239617号公報)は、アルキル基又はアルコキシル基で置換されたアニリンの電解重合により導電性ポリマーを得る方法を開示しているが、実施例では重合液の溶媒として水が使用されている。
【0006】
特許文献3(特開平3−18009号公報)は、モノマーとしての無置換ピロールと支持電解質としてのp−トルエンスルホン酸塩とを含む重合液を用いた電解重合により固体電解コンデンサの導電性ポリマー層を形成することを開示しているが、実施例ではアセトニトリル又は水が重合液の溶媒として使用されている。特許文献4(特開平2−58818号公報)は、有機溶媒と、ピロール、チオフェン、アズレン等のモノマーと、支持電解質としてのボロジサリチル酸アルキル置換アンモニウムとを含む重合液を用いた電解重合により固体電解コンデンサの導電性ポリマー層を形成することを開示している。この文献はまた、有機溶媒に対する溶解度が低いボロジサリチル酸アンモニウムを支持電解質とし、有機溶媒に水を添加した溶媒を使用した重合液からは、熱安定性の点で問題を有する重合膜が得られることを記載している。
【0007】
これらの特許文献から理解されるように、電解重合用の重合液の溶媒として、水と有機溶媒の両方が適宜選択されて使用されてきた。しかしながら、有機溶媒の使用は、水溶媒の使用に比較して、一般に環境負荷を増大させ、経済的にも不利である。さらに、有機溶媒の中には人体に有害なものも多く、可燃性溶媒を使用した電解重合の場合には電気火花による火災を防止する措置をとる必要がある。特許文献2及び特許文献3に示されているアニリン誘導体又は無置換ピロールは水に対する溶解度が比較的高いため、これらの重合のための溶媒として水を使用することができるが、特許文献1に示されているチオフェン誘導体のように水に不溶又は難溶であるモノマーの重合においては、有機溶媒を使用せざるを得なかった。
【0008】
そこで、水に不溶又は難溶であるモノマーの重合においても、環境負荷が小さく、経済性に優れた水を溶媒として使用するために、アニオン界面活性剤又はノニオン界面活性剤を使用してモノマーを水と乳化させた重合液がこれまで検討されてきた。
【0009】
例えば、特許文献5(特開2000−269087号公報)は、EDOTのようなチオフェン誘導体をアルキルナフタレンスルホン酸系界面活性剤により乳化した水媒体の重合液を用いた電解重合を報告している。ドーパントとして導電性ポリマー層に取り込まれたアルキルナフタレンスルホン酸アニオンの嵩が大きいため、脱ドープが抑制され、高温・高湿中で安定な導電性ポリマー層が得られている。また、非特許文献1(Synthetic Met.(2009),159(5−6),406−414)は、EDOT及びアニオン系界面活性剤としてのポリスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解させた水溶液を用いた電解重合を報告している。ポリスチレンスルホン酸ナトリウムの作用により、EDOTの水への溶解度が増加し、EDOTが酸化されやすくなり、Pt電極上に均一なフィルムが形成されている。
【0010】
しかし、アニオン界面活性剤から発生したアニオンを導電性ポリマーのドーパントとする場合には問題がないが、それ以外のアニオンを導電性ポリマーのドーパントとしたい場合には問題が発生する。重合液においてドーパントを発生する支持電解質とアニオン界面活性剤とを併用すると、支持電解質のアニオンが導電性ポリマー層にドーパントとして取り込まれるのがアニオン界面活性剤によって阻害されるため、得られる導電性ポリマー層の導電性、耐熱性等の特性に影響が現れる。
【0011】
出願人は、特許文献6(WO2011/108254A1)、特許文献7(WO2011/108255A1)、本出願時には未公開であるPCT/JP2012/55284及びPCT/JP2012/55285において、支持電解質としてボロジサリチル酸塩、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸塩を含む水性重合液を用いた電解重合が、嵩が大きく脱ドープしにくいドーパントを発生するアルキルナフタレンスルホン酸塩やポリスチレンスルホン酸塩を含む重合液を用いた電解重合に比較して、耐熱性に優れた導電性ポリマーを与えることを報告している。特許文献4が有機溶媒に水を添加した溶媒を使用した重合液からは熱安定性の点で問題を有する重合膜が得られることを記載しているが、上述の好適な支持電解質の使用により、水性重合液から熱安定性に優れた導電性ポリマー層が得られている。しかし、重合液においてこの好適な支持電解質とアニオン界面活性剤とを併用すると、この好適な支持電解質のアニオンが導電性ポリマー層にドーパントとして取り込まれにくくなるため、導電性ポリマー層の耐熱性が低下してしまう。
【0012】
一方、ノニオン界面活性剤はイオン化しないため、支持電解質とノニオン界面活性剤とを含む重合液を用いて電解重合を行っても、ノニオン界面活性剤がドーパントとして導電性ポリマー層に取り込まれることがなく、また、支持電解質のアニオンが導電性ポリマー中にドーパントとして取り込まれるのがノニオン界面活性剤によって阻害されることがない。特許文献8(特開平2−235321号公報)は、この点に着目し、ノニオン界面活性剤を含む重合液を用いた固体電解コンデンサの製造方法を開示している。導電性ポリマー用のモノマーと、ドーパントとなるアニオンと、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等のノニオン界面活性剤とを溶解した重合液を用いて、誘電体酸化皮膜が形成された陽極箔をアノードとして電解することにより、誘電体酸化皮膜に良く密着した平滑な導電性ポリマー層が得られている。
【0013】
また、特許文献9(特開2008−37975号公報)には、導電性ポリマー用のモノマーと、支持電解質と、ノニオン界面活性剤としてのポリオキシアルキレン基を有する(ポリ)スチリル化フェノール型ポリオキシアルキレン化合物、(ポリ)スチリル化フェノールホルムアルデヒド縮合物型ポリオキシアルキレン化合物、(ポリ)アルキル置換フェノールホルムアルデヒド縮合物型ポリオキシアルキレン化合物等から選択された化合物と、を含有する重合液を電解重合反応に供することにより導電性ポリマーを製造する方法が開示されている。ポリオキシアルキレン基を有する特定範囲のノニオン界面活性剤を使用することにより、優れた安定性を有する重合液が得られ、また、優れた均一性と導電性とを有する導電性ポリマーフィルムが得られている。特許文献10(特開2008−118060号公報)には、導電性ポリマー用のモノマーと、ドーパントとしての芳香族スルホン酸イオンと、特許文献9に開示されたのと同じノニオン界面活性剤と、を含有する重合液を用いた電解重合により固体電解コンデンサの固体電解質層を得る方法が開示されている。上記重合液の使用により、均一で緻密な固体電解質層を有し、低い等価直列抵抗(ESR)と漏れ電流とを有する固体電解コンデンサが得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平1−313521号公報
【特許文献2】特開昭61−239617号公報
【特許文献3】特開平3−18009号公報
【特許文献4】特開平2−58818号公報
【特許文献5】特開2000−269087号公報
【特許文献6】WO2011/108254A1
【特許文献7】WO2011/108255A1
【特許文献8】特開平2−235321号公報
【特許文献9】特開2008−37975号公報
【特許文献10】特開2008−118060号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Synthetic Met.(2009),159(5−6),406−414
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
一般に、電解重合用の重合液におけるモノマーの含有量が高いほど、迅速に電解重合を進行させることができ、緻密な導電性ポリマー層を得ることができる。重合液にノニオン界面活性剤を含有させてモノマーを水と乳化させることにより、重合液におけるモノマーの含有量を増加させることができ、また、ノニオン界面活性剤の作用により、得られる導電性ポリマー層の均一性、緻密性を向上させることもできる。均一で緻密な導電性ポリマー層は、不均一或いは多孔質のポリマー層に比較して、高い電導度と高い耐熱性とを有する。
【0017】
しかしながら、従来のノニオン界面活性剤によっては、重合液中のモノマーの含有量を大幅に増加させることができなかった。例えば、EDOT(純水に対する溶解度:1.1×10−2(±0.3×10−2)M)について発明者らが検討したところ、水に従来のノニオン界面活性剤と支持電解質と乳化限界量のEDOT、すなわち、油滴として分離しない限界量のEDOTとを添加した液におけるEDOTの含有量は、水に支持電解質と飽和溶解量のEDOTとを添加した液におけるEDOTの含有量の、2倍程度に過ぎなかった。特許文献9においても、実施例25ではチオフェンがノニオン界面活性剤と支持電解質を含む水に添加され、実施例28ではEDOTがノニオン界面活性剤と支持電解質を含む水に添加されているが、いずれもモノマー濃度は0.02モル/リットルに過ぎない(この文献の表1参照)。したがって、重合液におけるモノマーの含有量を大幅に増加させることができる上に、モノマーの含有量を大幅に増加させてもなお均一で導電性に優れた導電性ポリマー層を与えることができ、したがって高い電導度と高い耐熱性とを有する導電性ポリマー層を与えることができるノニオン界面活性剤は知られていない。
【0018】
そこで、本発明の目的は、水を主体とした溶媒を用いた重合液において、モノマーの含有量を大幅に増加させることができ、高い電導度と高い耐熱性とを有する導電性ポリマー層を形成することができる電解重合用の重合液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明者らは、鋭意検討した結果、モノマーを水を主体とした溶媒と乳化させるためのノニオン界面活性剤として、特定のアセチレンオール系界面活性剤と、このアセチレンオール系界面活性剤以外の水溶性ノニオン界面活性剤とを併用することにより、上記目的が解決されることを発見した。
【0020】
したがって、本発明はまず、
100〜80質量%の水と0〜20質量%の有機溶媒とから成る溶媒と、
少なくとも一種の支持電解質と、
少なくとも一種の、式(I)
【化1】
(式中、aは0又は1を表し、
bは0又は1以上の整数を表し、
cは0又は1以上の整数を表し、
dは0又は1以上の整数を表し、
eは0又は1以上の整数を表し、
ただし、0≦b+e≦100、0≦c+d≦100であり、
は、水素又はメチル基を表し、
、R及びRは、同一であっても異なっていても良く、互いに独立に、炭素原子数が1〜8個の直鎖状又は分枝状のアルキル基又はアルケニル基を表し、
は、炭素原子数が1〜4個の直鎖状又は分枝状のアルキレン基又はアルケニレン基を表し、
は、水素、メチル基又はエチル基を表わす。)
で表されるアセチレンオール系界面活性剤と、
少なくとも一種の、前記アセチレンオール系界面活性剤以外の水溶性ノニオン界面活性剤と、
から成る、複合化ノニオン界面活性剤と、
該複合化ノニオン界面活性剤により前記溶媒と乳化させた、π−共役二重結合を有する少なくとも一種のモノマーと、
を含むことを特徴とする、前記モノマーの電解重合のための重合液に関する。
【0021】
100〜80質量%の水と0〜20質量%の有機溶媒とから成る溶媒を、以下「水リッチ溶媒」と表わす。水リッチ溶媒において、水と有機溶媒との合計量は100質量%である。水リッチ溶媒中の水の含有量は、80質量%以上であればよいが、90質量%以上であるのが好ましく、95質量%以上であるのがより好ましく、100質量%であるのが特に好ましい。水リッチ溶媒における有機溶媒の含有量が増加すると、ポリマー粒子が緻密に充填された導電性ポリマー層が電解重合により電極上に形成されにくくなり、有機溶媒の含有量が溶媒全体の20質量%を超えると、得られた導電性ポリマーフィルム及び固体電解コンデンサの耐熱性が顕著に低下する。
【0022】
本発明の重合液には、複合化ノニオン界面活性剤として、式(I)で表されるアセチレンオール系ノニオン界面活性剤と、このアセチレンオール系界面活性剤以外の水溶性ノニオン界面活性剤と、の組み合わせが使用される。
【0023】
アセチレンオール系ノニオン界面活性剤には、式(I)のaが0であるアセチレンジオールと式(I)のaが1であるジアセチレンテトラオールとが含まれるが、aが0であるアセチレンジオールを使用すると、本発明の効果をより良好に得ることができるため好ましい。アセチレンジオールの中でも、Rがメチル基を表し、R及びRがイソブチル基を表し、Rが水素を表す化合物が好ましく、b+eの値は、好ましくは0≦b+e≦30、より好ましくは0≦b+e≦10、特に好ましくはb+e=0である。a=0及びb+e=0であるアセチレンジオールは、炭素炭素三重結合に隣接する炭素原子と結合しているヒドロキシ基とアルキル基又はアルケニル基により、炭素炭素三重結合の周辺の電子密度が特に高くなるため好ましい。中でも、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールが特に好ましい。
【0024】
上記複合化ノニオン界面活性剤において、式(I)で表されるアセチレンオール系ノニオン界面活性剤と組み合わせるノニオン界面活性剤としては、水溶性であれば特に限定なく使用することができるが、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルから成る群から選択すると、本発明の効果をより良好に得ることができるため好ましい。
【0025】
上記式(I)で表されるアセチレンオール系界面活性剤と、該アセチレンオール系界面活性剤以外の水溶性ノニオン界面活性剤と、のいずれか一方のノニオン界面活性剤のみでは、重合液におけるモノマーの乳化限界量を大幅に増加させることができない。上記アセチレンオール系ノニオン界面活性剤は、炭素炭素三重結合の周辺の高い電子密度のために高い極性を有する点で特徴的であるが、この特徴的なアセチレンオール系ノニオン界面活性剤と他の水溶性ノニオン界面活性剤とを組み合わせることにより、重合液におけるモノマーの乳化限界量を大幅に増加させることができるようになる。
【0026】
より詳細に説明すると、水リッチ溶媒に支持電解質と飽和溶解量のモノマーを添加した液におけるモノマーの含有量をW、水リッチ溶媒にx質量%の上記アセチレンオール系ノニオン界面活性剤と支持電解質と乳化限界量のモノマーとを添加した液におけるモノマーの含有量をX、水にy質量%の上記水溶性ノニオン界面活性剤と支持電解質と乳化限界量のモノマーとを添加した液におけるモノマーの含有量をY、水リッチ溶媒にx質量%の上記アセチレンオール系ノニオン界面活性剤とy質量%の上記水溶性ノニオン界面活性剤と支持電解質と乳化限界量のモノマーとを添加した液におけるモノマーの含有量をZ、とすると、上記アセチレンオール系ノニオン界面活性剤と上記水溶性ノニオン界面活性剤との組み合わせにより増加したモノマーの含有量(Z−W)は、上記アセチレンオール系ノニオン界面活性剤の使用により増加したモノマーの含有量(X−W)と、上記水溶性ノニオン界面活性剤の使用により増加したモノマーの含有量(Y−W)と、の合計よりも多くなる。
【0027】
このことから、上記アセチレンオール系ノニオン界面活性剤と上記水溶性ノニオン界面活性剤との相乗効果により重合液におけるモノマーの乳化限界量が大幅に増加したものと考えられた。そして、この大幅に増加した量のモノマーを含む本発明の重合液を用いて電解重合を行うことにより、均一で緻密な導電性ポリマー層を迅速に形成することができる。その結果、高い電導度と高い耐熱性とを有する導電性ポリマーフィルムを得ることができ、低いESRと高い耐熱性とを有する固体電解コンデンサを得ることができる。
【0028】
上記ノニオン界面活性剤により水リッチ溶媒と乳化させるモノマーとしては、π−共役二重結合を有しているものであれば、特に限定なく使用することができる。アニリン誘導体又は無置換ピロールのような水に対する溶解性が比較的高いモノマーであっても、上述した複合化ノニオン界面活性剤の使用により、さらに多くのモノマーを溶媒に乳化させることができるため、本発明の効果を得ることができる。しかしながら、本発明の重合液には水不溶性又は水難溶性のモノマーを使用するのが好ましい。このようなモノマーの電解重合は進行しにくく、不均一で低導電性のポリマーが得られる場合が多いが、本発明の重合液によると、上述した複合化ノニオン界面活性剤により重合液中のモノマー含有量を大幅に増加させることができるため、電解重合を迅速に進行させることができ、均一で緻密なポリマー層を得ることができる。3位と4位に置換基を有するチオフェンから選択された化合物、特にEDOT、をモノマーとして使用すると、透明で環境安定性が高い導電性ポリマー層が得られるため好ましい。
【0029】
本発明の重合液では公知の支持電解質を特に限定なく使用することができるが、支持電解質が、非スルホン酸系有機支持電解質であって該支持電解質のアニオンの分子量が200以上である支持電解質から成る群から選択された化合物であると、特に耐熱性に優れた導電性ポリマーフィルム及び固体電解コンデンサが得られるため好ましい。ここで、「非スルホン酸系有機支持電解質」とは、スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基を有していない有機物の支持電解質を意味する。非スルホン酸系有機支持電解質であってそのアニオンの分子量が200以上である支持電解質のなかでも、ボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩は、安価で経済的に有利である上に、特に優れた耐熱性と平滑性とを有する導電性ポリマー層を与えるため好ましい。
【0030】
但し、ボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩に含まれるボロジサリチル酸イオンが水中で水への溶解度が極めて小さいサリチル酸とホウ酸とに加水分解することがわかっている。そのため、ボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩を支持電解質として使用すると、徐々に重合液中に沈殿が生じて使用に耐えなくなる。このことを回避するため、ボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩を支持電解質として使用する場合には、この支持電解質を液に添加した後沈殿生成前に電解重合を行うか、或いは、ボロジサリチル酸イオンの加水分解を抑制する作用を有するニトロベンゼン及びニトロベンゼン誘導体から成る群から選択された安定化剤と併用する。この安定化剤としては、水易溶性の安定化剤が好ましく、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、及びp−ニトロフェノールから成る群から選択された少なくとも一種の化合物が特に好ましい。
【0031】
本発明の重合液の使用により、優れた導電性と耐熱性とを有する導電性ポリマーフィルムを得ることができる。したがって、本発明はまた、導電性部分を有する基体を本発明の重合液に導入して電解重合を行うことにより得られた導電性ポリマーフィルムに関する。
【0032】
本発明の重合液はさらに、アルミニウム、タンタル、ニオブ等の弁金属箔の表面に誘電体としての酸化皮膜が設けられている陽極と、酸化皮膜と接しており、真の陰極として作用する導電性ポリマー層とを含む固体電解コンデンサを製造するために好適に使用することができる。本発明の重合液の使用により、低いESRを有する上に耐熱性に優れたコンデンサを得ることができる。したがって、本発明はまた、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、該陽極上に設けられた導電性ポリマー層と、を含む固体電解コンデンサであって、上記導電性ポリマー層が上記陽極を本発明の重合液に導入して電解重合を行うことにより形成されたものであることを特徴とする、第1の形態の固体電解コンデンサに関する。導電性ポリマー上に導電層(見かけの陰極)が設けられ、第1の形態の固体電解コンデンサが構成される。
【0033】
本発明はまた、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、弁金属箔からなる陰極と、上記陽極と上記陰極との間に配置された導電性ポリマー層を保持したセパレータと、を含む固体電解コンデンサであって、上記導電性ポリマー層が、上記陽極と上記陰極とこれらの間に配置されたセパレータとを含むコンデンサ素子を本発明の重合液に導入し、該コンデンサ素子に上記重合液を含浸させ、電解重合を行うことにより形成されたものであることを特徴とする、第2の形態の固体電解コンデンサに関する。電解重合により、導電性ポリマー層がセパレータに保持される。この方法により、巻回型或いは積層型の固体電解コンデンサを得ることができる。
【発明の効果】
【0034】
水リッチ溶媒と、支持電解質と、式(I)で表されるアセチレンオール系界面活性剤と該アセチレンオール系界面活性剤以外の水溶性ノニオン界面活性剤とから成る複合化ノニオン界面活性剤と、該複合化ノニオン界面活性剤により上記溶媒と乳化させたπ−共役二重結合を有するモノマーと、を含む本発明の重合液によると、上記複合化ノニオン界面活性剤の作用により、大幅に増加した量のモノマーを上記溶媒と乳化させることができるため、電解重合により均一で緻密な導電性ポリマー層を迅速に形成することができる。その結果、高い電導度と高い耐熱性とを有する導電性ポリマーフィルムを得ることができ、低いESRと高い耐熱性とを有する固体電解コンデンサを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(1)重合液
本発明の電解重合用の重合液には、水リッチ溶媒と、支持電解質と、複合化ノニオン界面活性剤と、該複合化ノニオン界面活性剤により上記溶媒と乳化させたπ−共役二重結合を有するモノマーと、が必須成分として含まれる。
【0036】
本発明の重合液では、環境負荷が小さく、経済的にも優れる水が主溶媒として使用される。本発明の重合液には、水に加えて、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸メチルなどの有機溶媒が含まれていてもよいが、溶媒全体の80質量%以上は水である。水は溶媒全体の90質量%以上であるのが好ましく、溶媒全体の95質量%以上であるのがより好ましく、溶媒が水のみから成るのが特に好ましい。水リッチ溶媒における有機溶媒の含有量が増加すると、ポリマー粒子が緻密に充填された導電性ポリマー層が電解重合により電極上に形成されにくくなり、有機溶媒の含有量が溶媒全体の20質量%を超えると、得られた導電性ポリマーフィルム及び固体電解コンデンサの耐熱性が顕著に低下する。
【0037】
本発明の重合液には、モノマーとして、π−共役二重結合を有するモノマーが含まれる。モノマーとしては、水リッチ溶媒に安定であれば、従来導電性ポリマーの製造のために用いられているπ−共役二重結合を有するモノマーを特に限定なく使用することができる。以下に代表的なモノマーを例示する。
【0038】
まず、チオフェン及びチオフェン誘導体、例えば、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェンなどの3−アルキルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジエチルチオフェンなどの3,4−ジアルキルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェンなどの3−アルコキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェンなどの3,4−ジアルコキシチオフェン、3,4−メチレンジオキシチオフェン、EDOT、3,4−(1,2−プロピレンジオキシ)チオフェンなどの3,4−アルキレンジオキシチオフェン、3,4−メチレンオキシチアチオフェン、3,4−エチレンオキシチアチオフェン、3,4−(1,2−プロピレンオキシチア)チオフェンなどの3,4−アルキレンオキシチアチオフェン、3,4−メチレンジチアチオフェン、3,4−エチレンジチアチオフェン、3,4−(1,2−プロピレンジチア)チオフェンなどの3,4−アルキレンジチアチオフェン、チエノ[3,4−b]チオフェン、イソプロピルチエノ[3,4−b]チオフェン、t−ブチル−チエノ[3,4−b]チオフェンなどのアルキルチエノ[3,4−b]チオフェン、を挙げることができる。
【0039】
また、ピロール及びピロール誘導体、例えば、N−メチルピロール、N−エチルピロールなどのN−アルキルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロールなどの3−アルキルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロールなどの3−アルコキシピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジエチルピロールなどの3,4−ジアルキルピロール、3,4−ジメトキシピロール、3,4−ジエトキシピロールなどの3,4−ジアルコキシピロールを使用することができる。
【0040】
また、アニリン及びアニリン誘導体、例えば、2,5−ジメチルアニリン、2−メチル−5−エチルアニリンなどの2,5−ジアルキルアニリン、2,5−ジメトキシアニリン、2−メトキシ−5−エトキシアニリンなどの2,5−ジアルコキシアニリン、2,3,5−トリメトキシアニリン、2,3,5−トリエトキシアニリンなどの2,3,5−トリアルコキシアニリン、2,3,5,6−テトラメトキシアニリン、2,3,5,6−テトラエトキシアニリンなどの2,3,5,6−テトラアルコキシアニリンを使用することができる。
【0041】
また、フラン及びフラン誘導体、例えば、3−メチルフラン、3−エチルフランなどの3−アルキルフラン、3,4−ジメチルフラン、3,4−ジエチルフランなどの3,4−ジアルキルフラン、3−メトキシフラン、3−エトキシフランなどの3−アルコキシフラン、3,4−ジメトキシフラン、3,4−ジエトキシフランなどの3,4−ジアルコキシフランを使用することができる。
【0042】
モノマーとしては、3位と4位に置換基を有するチオフェンから選択されたモノマーを使用すると、透明で環境安定性が高い導電性ポリマー層が得られるため好ましい。チオフェン環の3位と4位の置換基は、3位と4位の炭素と共に環を形成していても良い。特に、EDOTを使用するのが好ましい。
【0043】
モノマーは、単独の化合物であっても良く、2種以上の化合物の組み合わせであっても良いが、ノニオン界面活性剤を含まない液に対する飽和溶解量を超える量のモノマーが使用される。飽和溶解量を超えるモノマーが、複合化ノニオン界面活性剤の作用により水リッチ溶媒と乳化する。モノマーの使用量は、重合液における乳化限界量、すなわち、油滴として分離しない限界量であるのが好ましい。乳化限界量は簡単な予備実験により知ることができる。
【0044】
本発明の重合液には、重合液中でドーパントを発生する支持電解質が含まれる。支持電解質のアニオンが、以下に示す電解重合の過程でドーパントとして導電性ポリマー層に取り込まれる。支持電解質としては、従来導電性ポリマーの製造のために用いられている支持電解質を特に限定なく使用することができる。以下に代表的な支持電解質を例示するが、固体電解コンデンサの導電性ポリマー層を形成するためには、ハロゲン原子を含まない支持電解質が好ましく使用される。
【0045】
まず、ヨウ化水素、臭化水素、塩化水素等のハロゲン化水素;ホウ酸、硝酸、硫酸、リン酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロ砒酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、過塩素酸、モリブドリン酸、タングストリン酸、タングストモリブドリン酸等の無機酸;酢酸、シュウ酸、アスコット酸、カプリル酸、ラウリン酸等のカルボン酸;スクアリン酸、ロジゾン酸、クロコン酸等のオキソカーボン酸;乳酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸等のヒドロキシカルボン酸;モノプロピルリン酸エステル、ジプロピルリン酸エステル、モノヘキシルリン酸エステル、ジヘキシルリン酸エステル、モノドデシルリン酸エステル、ジドデシルリン酸エステル等の有機リン酸エステル;メチル硫酸エステル、ドデシル硫酸エステル等の有機硫酸エステル;ボロジ蓚酸、ボロジ酒石酸、ボロジクエン酸、ボロジサリチル酸、オキサラトサリチラトホウ酸、ボロジピロカテコール等のホウ素錯体;及びこれらの塩が挙げられる。
【0046】
また、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、1,2−ジヒドロキシ−3,5−ベンゼンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,7−ナフタレンジスルホン酸、ナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、アントラセンスルホン酸、アントラキノン−2−スルホン酸、アントラキノン−1,5−ジスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、ビフェニルジスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合体等のスルホン酸;スルホ安息香酸、スルホイソフタル酸、スルホコハク酸、ジオクチルスルホコハク酸等のスルホカルボン酸;ビス(トルフルオロメタンスルホニル)イミド酸、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド酸、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1,3−ジスルホニルイミド酸等のスルホニルイミド酸;及びこれらの塩が挙げられる。
【0047】
塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ブチルアンモニウム塩などのアルキルアンモニウム塩;ジエチルアンモニウム塩、ジブチルアンモニウム塩などのジアルキルアンモニウム塩;トリエチルアンモニウム塩、トリブチルアンモニウム塩などのトリアルキルアンモニウム塩;テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩などのテトラアルキルアンモニウム塩;テトラメチルホスホニウム塩、トリエチルメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩等のテトラアルキルホスホニウム塩;を挙げることができる。
【0048】
支持電解質は、単独の化合物であっても良く、2種以上の化合物の組み合わせであっても良い。支持電解質は、重合液に対する飽和溶解量以下の濃度で且つ電解重合のために充分な電流が得られる量で使用され、好ましくは10mM以上、特に好ましくは30mM以上の濃度で使用される。
【0049】
本発明の重合液では、非スルホン酸系有機支持電解質であって該支持電解質のアニオンの分子量が200以上である支持電解質を使用するのが好ましく、特に、ボロジサリチル酸、ボロジサリチル酸塩、式(II)又は式(III)
【化2】
(式中、mが1〜8の整数、好ましくは1〜4の整数、特に好ましくは2を意味し、nが1〜8の整数、好ましくは1〜4の整数、特に好ましくは2を意味し、oが2又は3を意味する)で表わされるスルホニルイミド酸及びこれらの塩を好ましく使用することができる。これらの支持電解質は、特に耐熱性に優れた導電性ポリマーを与える。中でも、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸の塩、例えばカリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩は、極めて高い耐熱性を有する導電性ポリマーを与える。また、ボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩は、安価で経済的に有利である上に、平滑で耐熱性に優れた導電性ポリマー層を与えるため好ましい。
【0050】
但し、ボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩に含まれるボロジサリチル酸イオンが水中で水への溶解度が極めて小さいサリチル酸とホウ酸とに加水分解することがわかっている。そのため、ボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩を支持電解質として使用すると、徐々に重合液中に沈殿が生じて使用に耐えなくなる。このことを回避するため、ボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩を支持電解質として使用する場合には、この支持電解質を液に添加した後沈殿生成前に電解重合を行うか、或いは、ニトロベンゼン及びニトロベンゼン誘導体から成る群から選択された安定化剤と併用する。この安定化剤がボロジサリチル酸イオンと複合体を形成するため、ボロジサリチル酸イオンの加水分解が抑制される。
【0051】
上記安定化剤は、単独の化合物であっても良く、2種以上の化合物の組み合わせであっても良い。ニトロベンゼン誘導体としては、ニトロフェノール、ニトロベンジルアルコール、ニトロ安息香酸、ジニトロ安息香酸、ジニトロベンゼン、ニトロアニソール、ニトロアセトフェノンを例示することができる。上記安定化剤は、水易溶性の化合物であるのが好ましく、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、及びこれらの混合物が特に好ましい。
【0052】
上記安定化剤は、重合液に対する飽和溶解量以下の濃度で使用され、一般に、ボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩から成る群から選択された支持電解質の1モルに対して1/8モルを超える量で使用される。重合液における飽和溶解量が上記支持電解質1モルに対して1/8モル以下である化合物は、他の化合物と混合して使用される。上記安定化剤の量が上記支持電解質1モルに対して1/8モル以下であると、沈殿生成抑制効果が十分でない場合がある。上記安定化剤の含有量は、上記支持電解質1モルに対して1/4以上であるのが好ましく、1/2モル以上であるのがより好ましく、1モル以上であるのが特に好ましい。
【0053】
本発明の重合液には、水リッチ溶媒、π−共役二重結合を有するモノマー、支持電解質に加えて、モノマーと水リッチ溶媒を乳化するための複合化ノニオン界面活性剤が含まれる。この複合化ノニオン界面活性剤により大幅に増加した量のモノマーがノニオン界面活性剤のミセル中に濃縮されるため、速やかに電解重合が進行し、均一で緻密な、したがって高い電導度と高い耐熱性とを有する導電性ポリマー層が得られる。その上、ノニオン界面活性剤自体はイオン化せず、支持電解質のアニオンによるポリマーへのドーピングを阻害することが無く、上記安定化剤とボロジサリチル酸イオンとの複合体形成を阻害することもない。そのため、高い耐熱性を有する導電性ポリマー層へと導く上記非スルホン酸系有機支持電解質と複合化ノニオン界面活性剤とを併用しても、電解重合により得られる導電性ポリマーの耐熱性が低下することがない。
【0054】
本発明の重合液における複合化ノニオン界面活性剤は、少なくとも一種の、式(I)
【化3】
(式中、aは0又は1を表し、
bは0又は1以上の整数を表し、
cは0又は1以上の整数を表し、
dは0又は1以上の整数を表し、
eは0又は1以上の整数を表し、
ただし、0≦b+e≦100、0≦c+d≦100であり、
は、水素又はメチル基を表し、
、R及びRは、同一であっても異なっていても良く、互いに独立に、炭素原子数が1〜8個の直鎖状又は分枝状のアルキル基又はアルケニル基を表し、
は、炭素原子数が1〜4個の直鎖状又は分枝状のアルキレン基又はアルケニレン基を表し、
は、水素、メチル基又はエチル基を表わす。)
で表されるアセチレンオール系界面活性剤と、
少なくとも一種の、上記アセチレンオール系界面活性剤以外の水溶性ノニオン界面活性剤と、
から成る。上記式(I)で表されるアセチレンオール系界面活性剤及び該アセチレンオール系界面活性剤以外の水溶性ノニオン界面活性剤は、それぞれ、単独の化合物であっても良く、2種以上の化合物であっても良い。
【0055】
上記式(I)で表されるアセチレンオール系界面活性剤と、該アセチレンオール系界面活性剤以外の水溶性ノニオン界面活性剤と、のいずれか一方のノニオン界面活性剤のみでは、重合液におけるモノマーの乳化限界量を大幅に増加させることができない。上記アセチレンオール系ノニオン界面活性剤と上記水溶性ノニオン界面活性剤との相乗効果により、重合液におけるモノマーの乳化限界量を大幅に増加させることができる。
【0056】
式(I)において、Rとしてはメチル基が好ましい。R、R及びRとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−エチルペンチル基、1−エチルヘキシル基、オクチル基、2−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、4−メチル−3−ペンテニル基が例示されるが、炭素原子数が4〜6個の分枝状のアルキル基、特にイソブチル基が好ましい。Rとしては、メチレン基、エチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、エテニレン基が例示されるが、エチレン基が好ましい。また、b,c,d,eが2以上である場合には、一本の鎖中に含まれる複数のRは、同一であっても異なっていても良く、水素、メチル基、及びエチル基から選択された2つ以上の基が一本の鎖中に含まれていても良い。一本の鎖中に含まれる全てのRが水素であるのが好ましい。
【0057】
アセチレンオール系ノニオン界面活性剤には、式(I)のaが0であるアセチレンジオールと、式(I)のaが1であるジアセチレンテトラオールと、が含まれるが、aが0であるアセチレンジオールが好ましく使用される。b+eの値は、好ましくは0≦b+e≦30、より好ましくは0≦b+e≦10、特に好ましくはb+e=0である。a=1の場合には、c+dの値は、好ましくは0≦c+d≦30、より好ましくは0≦c+d≦10、特に好ましくはc+d=0である。a=0及びb+e=0である化合物は、炭素炭素三重結合に隣接する炭素原子と結合しているヒドロキシ基とアルキル基又はアルケニル基により、炭素炭素三重結合の周辺の電子密度が特に高くなるため好ましい。
【0058】
上記アセチレンオール系界面活性剤の例としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、4,7−ジメチル−5−デシン−4,7−ジオール、5−デシン−4,7−ジオール、2,5,8,11−テトラメチル−3,9−ドデカジイン−2,5,8,11−テトラオール、2,3,6,7−テトラメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、5,8−ジメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール、7−テトラデシン−6,9−ジオール、8−ヘキサデシン−7,10−ジオール、7,10−ジメチル−8−ヘキサデシン−7,10−ジオール、2,6,9,13−テトラメチル−2,12−テトラデカジエン−7−イン−6,9−ジオール、2,6,9−トリメチル−2−デセン−7−イン−6,9−ジオール、5,10−ジエチル−7−テトラデシン−6,9−ジオール、及びこれらのエトキシル化物、プロポキシル化物、ブトキシル化物が挙げられる。
【0059】
式(I)で表されるアセチレンオール系界面活性剤のうちの非アルコキシル化物(b,c,d,e=0である化合物)は、所定のケトン又はアルデヒドを塩基性触媒の存在下でアセチレンと反応させることによって得ることができる。アルコキシル化物は、非アルコキシル化物に所定のモル数のアルキレンオキサイドを塩基性触媒下で反応させることにより得ることができる。また、これらはAir Products and Chemicals Inc.によりSurfynol(登録商標)界面活性剤として市販されている。
【0060】
式(I)で表されるアセチレンオール系ノニオン界面活性剤は、該アセチレンオール系ノニオン界面活性剤以外のノニオン界面活性剤と併用される。併用されるノニオン界面活性剤としては、水溶性であれば特に限定なく使用することができる。例としては、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン付加アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシアルキレン付加スチリルフェノールホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシアルキレン付加ベンジルフェノールホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンひまし油、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらを単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。ポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル分岐型のようなポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを上記式(I)で表されるアセチレンオール系ノニオン界面活性剤と併用するのが好ましい。
【0061】
上記式(I)で表されるアセチレンオール系ノニオン界面活性剤は、水リッチ溶媒に対して0.05〜2質量%、好ましくは0.1〜1質量%の量で使用される。また、水溶性ノニオン界面活性剤は、質量比で、上記アセチレンオール系ノニオン界面活性剤の1〜5倍、好ましくは2〜5倍の量で使用される。
【0062】
重合液の調製は、以下のような方法により行う。重合液製造用の容器に、水リッチ溶媒、π−共役結合を有するモノマー、支持電解質、式(I)で表されるアセチレンオール系界面活性剤と該アセチレンオール系界面活性剤以外の水溶性界面活性剤とからなる複合化ノニオン界面活性剤を導入し、手作業により或いは機械的な攪拌手段を使用して或いは超音波を照射して、支持電解質及び複合化ノニオン界面活性剤を水リッチ溶媒に溶解させ、同時にモノマーを乳化させることにより、重合液を調製する。また、重合液製造用の容器に、水リッチ溶媒、π−共役結合を有するモノマー、式(I)で表されるアセチレンオール系界面活性剤と該アセチレンオール系界面活性剤以外の水溶性界面活性剤とからなる複合化ノニオン界面活性剤を導入して、複合化ノニオン界面活性剤を水リッチ溶媒に溶解させ、同時にモノマーを乳化させた液を調製した後、電解重合直前に、この液に支持電解質を添加して溶解させても良い。これらの方法において、式(I)で表されるアセチレンオール系界面活性剤と、該アセチレンオール系界面活性剤以外の水溶性界面活性剤は、別々に液に添加しても良く、同時に液に添加しても良い。別々に液に添加する場合には、いずれを先に液に添加しても良い。重合液における各成分が安定であれば、調製時の温度に制限は無い。
【0063】
支持電解質としてボロジサリチル酸及び/又はその塩を使用する場合には、好ましくは安定化剤としてのニトロベンゼン及び/又はその誘導体がさらに重合液に添加される。上記安定化剤は、ボロジサリチル酸イオンとの複合体を形成させてボロジサリチル酸イオンの加水分解による沈殿生成を抑制するために使用されるものであるから、少なくともボロジサリチル酸及び/又はその塩とほぼ同時に水リッチ溶媒に添加され、好ましくはボロジサリチル酸及び/又はその塩よりも前に水リッチ溶媒に添加される。
【0064】
本発明の重合液には、水リッチ溶媒と、支持電解質と、複合化ノニオン界面活性剤と、該ノニオン界面活性剤により上記溶媒に乳化させたπ−共役二重結合を有するモノマーと、が必須成分として含まれるが、本発明の効果に悪影響を及ぼさない限り、他の成分が含まれていても良い。このような成分の例としてはpH調整剤が挙げられる。
【0065】
(2)電解重合
本発明の重合液を用いた電解重合により、均一で緻密であり、高い電導度と高い耐熱性とを有する導電性ポリマー層が形成される。本発明の重合液を用いた電解重合は、固体電解コンデンサにおける導電性ポリマー層の形成の他、さまざまな用途における導電性ポリマーフィルムの形成のために実施される。以下、一般的な導電性ポリマーフィルムの形成のための電解重合と、固体電解コンデンサにおける導電性ポリマー層を形成するための電解重合とを分けて説明する。
【0066】
(a)一般的な導電性ポリマーフィルムの形成
本発明の重合液中に導入する作用極(導電性ポリマーフィルムの基体)としては、少なくとも表面に導電性部分を有する材料が使用され、白金、ニッケル、チタン、鋼、カーボン等の導電体の板、箔、網、焼結体、発泡体等を用いることができる。また、透明で絶縁性のガラス又はプラスチックの表面にスズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズなどの半導体セラミックスの蒸着層を設けた透明基体を作用極とすることもできる。モノマーとしてEDOTを使用すると、この透明基体の使用により、透明なPEDOTフィルムを備えた透明電極を得ることができる。対極としては、白金、ニッケルなどの板を用いることができる。
【0067】
電解重合は、本発明の重合液を用いて、定電位法、定電流法、電位掃引法のいずれかの方法により行われる。定電位法による場合には、モノマーの種類に依存するが、飽和カロメル電極に対して1.0〜1.5Vの電位が好適であり、定電流法による場合には、モノマーの種類に依存するが、1〜10000μA/cmの電流値が好適であり、電位掃引法による場合には、モノマーの種類に依存するが、飽和カロメル電極に対して0〜1.5Vの範囲を5〜200mV/秒の速度で掃引するのが好適である。電解重合により、導電性ポリマーフィルムが好ましくは0.001〜〜50μmの厚みで基体上に形成される。重合温度には厳密な制限がないが、一般的には10〜60℃の範囲である。重合時間は、一般的には0.6秒〜10時間の範囲である。
【0068】
極めて透明度の高いPEDOTフィルムを得るためには、定電流法による重合を、5〜500μA/cm、好ましくは10〜100μA/cmの電流値で、0.6〜120秒間、好ましくは6〜60秒間行うのが好ましい。この条件の電解重合により、0.001〜0.05μm、好ましくは0.003〜0.035μmの厚さの極めて透明度が高いPEDOTフィルムが得られる。
【0069】
電解重合後の導電性ポリマーフィルムを水、エタノール等で洗浄し、乾燥することにより、導電性に優れ、耐熱性に優れた導電性ポリマーフィルムを基体上に得ることができる。本発明の導電性ポリマーフィルムは、基体との接着性に優れるため、基体上に配置されたままの形態で使用することもでき、比較的厚い導電性ポリマーフィルムは基体から剥離して使用することもできる。
【0070】
基体として上述した透明基体を使用し、透明なPEDOTフィルムを基体上に形成すると、基体上に配置されたままの形態で、耐熱性に優れ、高い電導度と高い電気化学容量とを有する透明電極が得られ、この透明電極は有機エレクトロルミネッセンス装置、タッチパネル式ディスプレー等の各種電子機器の構成要素として好適に使用することができる。また、PEDOTフィルムを基体から剥離して導電性透明フィルムとし、自立性で可撓性の透明電極として好適に使用することができる他、絶縁性のプラスチックトレーやプラスチックシートの上に透明性の高いPEDOTフィルムを貼付することにより、これらの外観に影響を与えることなく帯電を防止することができる。
【0071】
(b)第1の形態の固体電解コンデンサ
表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、この陽極上に設けられた導電性ポリマー層とを含む、本発明の第1の形態の固体電解コンデンサの製造では、陽極として、アルミニウム箔、タンタル箔、ニオブ箔、チタン箔のような弁金属箔、好適にはアルミニウム箔、に化学的或いは電気化学的な手法によりエッチング処理を施して拡面し、さらに、アジピン酸アンモニウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液等を用いて化成処理し、弁金属箔の表面に酸化皮膜を形成したものが使用される。
【0072】
導電性ポリマー層は、陽極の酸化皮膜の漏れ電流を利用して酸化皮膜上に直接形成しても良く、また、予め酸化皮膜上に導電性膜を設け、その上に形成しても良い。例えば、陽極の酸化皮膜をハロゲンガス等の腐食性気体又は酸水溶液等の腐食性液体に接触させて酸化皮膜中に電気的な微小欠陥を形成した後、導電性ポリマー層を形成しても良く、陽極の酸化皮膜を硝酸マンガン水溶液に浸漬した後300〜400℃で熱分解して酸化皮膜表面にマンガン酸化物層を形成した後、導電性ポリマー層を形成しても良いが、酸化皮膜の安定性、導電性ポリマーの重合効率を考慮すると、酸化皮膜上に上記モノマーの化学重合膜を設け、化学重合膜上に導電性ポリマー層を形成するのが好ましい。
【0073】
化学重合膜の形成は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトニトリル等の溶媒にモノマーと酸化剤の両方を溶解させた液を用意し、この液を刷毛塗り、滴下塗布、浸漬塗布、スプレー塗布等により陽極の酸化皮膜上に適用し、乾燥する方法、又は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトニトリル等の溶媒にモノマーを溶解させた液と、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトニトリル等の溶媒に酸化剤を溶解させた液とを用意し、これらの液を交互に刷毛塗り、滴下塗布、浸漬塗布、スプレー塗布等により陽極の酸化皮膜上に適用し、乾燥する方法により行うことができる。酸化剤としては、パラトルエンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)、アントラキノンスルホン酸鉄(III)等の三価の鉄塩、若しくは、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、などを使用することができ、単独の化合物を使用しても良く、2種以上の化合物を使用しても良い。
【0074】
次いで、酸化皮膜に導電性を付与した陽極を対極と共に本発明の重合液に導入し、電解重合を行う。電解重合のための対極としては、白金板、ニッケル板等を用いることができる。
【0075】
電解重合は、定電位法、定電流法、電位掃引法のいずれかの方法により行われる。定電位法による場合には、モノマーの種類に依存するが、飽和カロメル電極に対して1.0〜1.5Vの電位が好適であり、定電流法による場合には、モノマーの種類に依存するが、1〜10000μA/cmの電流値が好適であり、電位掃引法による場合には、モノマーの種類に依存するが、飽和カロメル電極に対して0〜1.5Vの範囲を5〜200mV/秒の速度で掃引するのが好適である。重合温度には厳密な制限がないが、一般的には10〜60℃の範囲である。重合時間は、一般的には1分〜10時間の範囲である。
【0076】
陽極上に形成された導電性ポリマー層を、水、エタノール等で洗浄し、乾燥した後、カーボンペースト、銀ペースト等により導電性ポリマー層上に導電層(見かけの陰極)を形成し、耐熱性に優れた第1の形態の固体電解コンデンサを得ることができる。
【0077】
(c)第2の形態の固体電解コンデンサ
表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、弁金属箔からなる陰極と、陽極と陰極との間に配置された導電性ポリマー層を保持したセパレータとを含む第2の形態の固体電解コンデンサの製造では、電解重合に先立って、表面に酸化皮膜を有する弁金属箔からなる陽極と、弁金属箔からなる陰極と、上記陽極と上記陰極との間に配置されたセパレータとを含むコンデンサ素子を得る。
【0078】
陽極としては、第1の形態の固体電解コンデンサの陽極と同様に、アルミニウム箔、タンタル箔、ニオブ箔、チタン箔のような弁金属箔、好適にはアルミニウム箔、に化学的或いは電気化学的な手法によりエッチング処理を施して拡面し、さらに、アジピン酸アンモニウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液等を用いて化成処理し、弁金属箔の表面に酸化皮膜を形成したものが使用される。陰極としては、アルミニウム箔、タンタル箔、ニオブ箔、チタン箔のような弁金属箔、好適にはアルミニウム箔、に化学的或いは電気化学的な手法によりエッチング処理を施して拡面したものが使用される。セパレータとしては、マニラ紙、クラフト紙、合成繊維紙、ガラスペーパー、ガラスペーパーとマニラ紙、クラフト紙との混抄紙等を使用することができる。
【0079】
陽極及び陰極を、セパレータを介して巻回或いは積層し、コンデンサ素子を得る。次いで、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトニトリル等の溶媒にモノマーと酸化剤の両方を溶解させた液を用意し、この液にコンデンサ素子を浸漬し、加熱乾燥することにより、陽極表面及び陰極表面に化学重合膜を形成する。酸化剤としては、パラトルエンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)、アントラキノンスルホン酸鉄(III)等の三価の鉄塩、若しくは、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、などを使用することができ、単独の化合物を使用しても良く、2種以上の化合物を使用しても良い。
【0080】
この素子を水、エタノール等で洗浄し、乾燥した後、本発明の重合液に導入し、電解重合を行う。
【0081】
電解重合は、定電位法、定電流法、電位掃引法のいずれかの方法により行われる。定電位法による場合には、モノマーの種類に依存するが、飽和カロメル電極に対して1.0〜1.5Vの電位が好適であり、定電流法による場合には、モノマーの種類に依存するが、1〜10000μA/cmの電流値が好適であり、電位掃引法による場合には、モノマーの種類に依存するが、飽和カロメル電極に対して0〜1.5Vの範囲を5〜200mV/秒の速度で掃引するのが好適である。重合温度には厳密な制限がないが、一般的には10〜60℃の範囲である。重合時間は、一般的には1分〜10時間の範囲である。
【0082】
電解重合後、セパレータに保持された導電性ポリマー層を水、エタノール等で洗浄し、乾燥することにより、耐熱性に優れた第2の形態の固体電解コンデンサを得ることができる。
【0083】
本発明における第1の固体電解コンデンサ及び第2の固体電解コンデンサは、低下したESRを有する上に優れた耐熱性を示す。
【実施例】
【0084】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0085】
(1)界面活性剤の影響
(a)重合液の製造
【0086】
実施例1
ガラス容器に蒸留水50mLを導入し、この液にアセチレンオール系ノニオン界面活性剤である2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールを0.4質量%と水溶性ノニオン界面活性剤であるポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル分岐型を1.0質量%の量で添加し、さらにEDOT0.57g(濃度0.08M)、p−ニトロフェノール0.35g(濃度0.05M)、及びボロジサリチル酸アンモニウム1.08g(濃度0.08M)を添加し、均一に攪拌して重合液を得た。上記モノマー量は、上記界面活性剤を含む水溶液と乳化させることができるモノマー量のほぼ最大量に相当する。
【0087】
比較例1
ガラス容器に蒸留水50mLを導入し、この液に2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールを0.4質量%の量で添加し、さらにEDOT0.18g(濃度0.025M)、p−ニトロフェノール0.35g(濃度0.05M)、及びボロジサリチル酸アンモニウム1.08g(濃度0.08M)を添加し、均一に攪拌して重合液を得た。上記モノマー量は、上記界面活性剤を含む水溶液と乳化させることができるモノマー量のほぼ最大量に相当する。
【0088】
比較例2
ガラス容器に蒸留水50mLを導入し、この液にポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル分岐型を1.0質量%の量で添加し、さらにEDOT0.21g(濃度0.03M)、p−ニトロフェノール0.35g(濃度0.05M)、及びボロジサリチル酸アンモニウム1.08g(濃度0.08M)を添加し、均一に攪拌して重合液を得た。上記モノマー量は、上記界面活性剤を含む水溶液と乳化させることができるモノマー量のほぼ最大量に相当する。
【0089】
比較例3
ガラス容器に蒸留水50mLを導入し、この液にEDOTを0.104g(濃度0.0147M)添加し、25℃で60分間攪拌し、EDOTの全量が水に溶解した液を得た。この液に、p−ニトロフェノール0.35g(濃度0.05M)、及び、ボロジサリチル酸アンモニウム1.08g(濃度0.08M)を、この順番で添加し、均一に攪拌して重合液を得た。
【0090】
比較例4
ガラス容器に水50mLを導入し、この液にアニオン系界面活性剤であるブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムを2.7質量%の量で添加し、さらにEDOT0.21g(濃度0.03M)を添加し、均一に攪拌して重合液を得た。上記モノマー量は、上記界面活性剤混合物を含む水溶液と乳化させることができるモノマー量のほぼ最大量に相当する。
【0091】
実施例1、比較例1〜3から把握されるように、0.4質量%の2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールの作用による重合液中のEDOT含有量の増加分は、0.025−0.0147=0.0103Mであり、1.0質量%のポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル分岐型の作用による重合液中のEDOT含有量の増加分は、0.03−0.0147=0.0153Mであるのに対し、0.4質量%の2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールと1.0質量%のポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル分岐型の作用による重合液中のEDOT含有量の増加分は、0.08−0.0147=0.0653Mである。この値は、0.4質量%の2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールの作用による増加分と、1.0質量%のポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル分岐型の作用による増加分との合計量である0.0103+0.0153=0.0256Mの2.5倍以上である。このことから、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールとポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル分岐型の相乗効果により、重合液中のEDOT含有量が大幅に増加したことがわかる。
【0092】
2.7質量%のブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムの作用による重合液中のEDOT含有量の増加分は、1.0質量%のポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル分岐型の作用による重合液中のEDOT含有量の増加分と同等であり、重合液中のEDOT含有量の大幅に増加は、このアニオン界面活性剤によっては達成されなかった。
【0093】
(b)固体電解コンデンサの製造及び評価
実施例2
エッチングを施したアルミニウム箔を皮膜耐圧3Vに化成した後、投影面積1×1cmに打ち抜き、陽極とした。この陽極を、20質量%のEDOTを含むエタノール溶液に浸漬した後、室温で乾燥した。次いで、酸化剤であるパラトルエンスルホン酸鉄(III)を20質量%の濃度で含むエタノール溶液に浸漬し、室温での10分間の乾燥の後、高温処理した。この化学酸化重合工程を繰り返し、陽極の酸化皮膜上にPEDOTの化学重合膜を形成した。得られたPEDOTの化学重合膜を有する陽極について、アジピン酸アンモニウム水溶液中で再化成処理を行った後、水洗し、乾燥した。
【0094】
次いで、実施例1の重合液を用いて、PEDOTの化学重合膜を備えた陽極を作用極とし、面積4cm×4cmのPt箔を対極とし、銀−塩化銀電極を参照電極として、1mA/cmの電流条件下で30分間定電流電解重合を行った。重合後の膜をエタノールで洗浄し、水洗した後、乾燥した。最後に、PEDOTの電解重合層の上に、グラファイトペーストを塗布し、乾燥し、次いで銀ペーストを塗布し、乾燥して、皮膜耐圧3Vの陽極を備えた固体電解コンデンサを得た。
【0095】
比較例5
実施例1の重合液の代わりに比較例1の重合液を使用し、実施例2の手順を繰り返した。
【0096】
比較例6
実施例1の重合液の代わりに比較例2の重合液を使用し、実施例2の手順を繰り返した。
【0097】
比較例7
実施例1の重合液の代わりに比較例3の重合液を使用し、実施例2の手順を繰り返した。
【0098】
比較例8
実施例1の重合液の代わりに比較例4の重合液を使用し、実施例2の手順を繰り返した。
【0099】
実施例2及び比較例5〜8のコンデンサについて、120HzにおけるReal−容量出現率、100kHzにおけるESRの値を測定した。次いで、大気中150℃にて200時間及び600時間熱エージングを行い、ESRの変化を調査した。結果を表1に示す。なお、「Real−容量出現率」とは、PEDOTの化学重合膜及び電解重合層を形成した後の酸化皮膜の容量を基準として算出した容量出現率を意味する。また、「熱エージング」とは、予め定められた温度で所定時間加熱することを意味する。
【0100】
【表1】
【0101】
ノニオン界面活性剤又はアニオン界面活性剤を含む重合液を用いて製造した実施例2及び比較例5,6,8の固体電解コンデンサは、界面活性剤を含まない重合液を用いて製造した比較例7の固体電解コンデンサよりも、高いReal−容量出現率を示した。これは、モノマーが界面活性剤のミセル中に濃縮されるため、速やかに電解重合が進行し、陽極箔の酸化皮膜のエッチングピットの内部にまで均一に導電性ポリマー層が形成されたためであると考えられた。
【0102】
また、ノニオン界面活性剤を含む重合液を用いて製造した実施例2及び比較例5,6の固体電解コンデンサは、ノニオン界面活性剤を含まない重合液を用いて製造した比較例7の固体電解コンデンサよりも、著しく低いESRを示したのに対し、アニオン界面活性剤を含む重合液を用いて製造した比較例8の固体電解コンデンサのESRは、ノニオン界面活性剤を含まない重合液を用いて製造した比較例7の固体電解コンデンサのESRよりは低いものの、実施例2及び比較例5,6のコンデンサのESRよりも高かった。このことから、モノマーがノニオン界面活性剤又はアニオン界面活性剤のミセル中に濃縮されるため、速やかに電解重合が進行し、緻密で高電導度を示す導電性ポリマー層が得られるものの、ボロジサリチル酸アンモニウムから発生したドーパント(ボロジサリチル酸イオン)がアニオン系界面活性剤であるブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムから発生したドーパント(ブチルナフタレンスルホン酸イオン)よりも導電性ポリマー層の電導度を向上させる効果が大きいと判断された。また、ノニオン界面活性剤がボロジサリチル酸イオンによるドーピングに悪影響を与えないため、固体電解コンデンサの低いESRが達成されたと判断された。
【0103】
モノマー濃度が顕著に増加する重合液を用いて製造した実施例2の固体電解コンデンサは、最も低いESRと最も高いReal−容量出現率とを示した。これは、複合化ノニオン界面活性剤の使用により重合液中のモノマー含有量を著しく増加させることができたため、特に均一で緻密であり、特に高い電導度を示す導電性ポリマー層が形成されたためであると考えられた。
【0104】
耐熱性試験において、アニオン界面活性剤を含む重合液を用いて製造した比較例8の固体電解コンデンサは、ノニオン界面活性剤を含まない重合液を用いて製造した比較例7の固体電解コンデンサよりも、低い耐熱性を示した。これは、ボロジサリチル酸アンモニウムから発生したドーパント(ボロジサリチル酸イオン)がアニオン系界面活性剤であるブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムから発生したドーパント(ブチルナフタレンスルホン酸イオン)よりも導電性ポリマー層の耐熱性を向上させる効果が大きいためである。
【0105】
一方、200時間の耐熱性試験において、ノニオン界面活性剤を含む重合液を用いて製造した実施例2、比較例5,6の固体電解コンデンサは、ノニオン界面活性剤を含まない重合液を用いて製造した比較例7の固体電解コンデンサよりも、優れた耐熱性を示した。これは、ノニオン界面活性剤により、p−ニトロフェノールとボロジサリチル酸イオンとの複合体形成が阻害されず、ボロジサリチル酸アニオンの導電性ポリマー層へのドーピングも阻害されなかったためであると考えられた。また、ノニオン界面活性剤により重合液中のモノマー含有量が増加したため、緻密で耐熱性に優れた導電性ポリマー層が得られたためであると考えられた。
【0106】
600時間の耐熱性試験において、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールとポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル分岐型とからなる複合化ノニオン界面活性剤を含む重合液を用いて製造した実施例2の固体電解コンデンサは、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及びポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル分岐型の一方しか含まない重合液を用いて製造した比較例5,6の固体電解コンデンサに比較して、著しく向上した耐熱性を示した。これは、複合化ノニオン界面活性剤の作用により特に緻密で均一な、したがって特に耐熱性に優れた導電性ポリマー層が形成されたためであると考えられた。
【0107】
(2)水リッチ溶媒における水含有量の影響
(a)重合液の製造
実施例3
ガラス容器に蒸留水:エタノールを質量比で95:5の割合で混合した混合溶媒50mLを導入し、この液にアセチレンオール系ノニオン界面活性剤である2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールを0.4質量%と水溶性ノニオン界面活性剤であるポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル分岐型を1.0質量%の量で添加し、さらにEDOT0.57g(濃度0.08M)、p−ニトロフェノール0.35g(濃度0.05M)、及びボロジサリチル酸アンモニウム1.08g(濃度0.08M)を添加し、均一に攪拌して重合液を得た。
【0108】
実施例4
ガラス容器に、蒸留水:エタノールを質量比で80:20の割合で混合した混合溶媒50mLを導入し、この液にアセチレンオール系ノニオン界面活性剤である2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールを0.4質量%と水溶性ノニオン界面活性剤であるポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル分岐型を1.0質量%の量で添加し、さらにEDOT0.57g(濃度0.08M)、p−ニトロフェノール0.35g(濃度0.05M)、及びボロジサリチル酸アンモニウム1.08g(濃度0.08M)を添加し、均一に攪拌して重合液を得た。
【0109】
(b)固体電解コンデンサの製造及び評価
実施例5
実施例1の重合液の代わりに実施例3の重合液を使用し、実施例2の手順を繰り返した。
【0110】
実施例6
実施例1の重合液の代わりに実施例4の重合液を使用し、実施例2の手順を繰り返した。
【0111】
実施例2,5,6のコンデンサについて、100kHzにおけるESR(ESR)を測定した後、空気中、150℃で150時間熱エージングを行い、熱エージング後に再び100kHzにおけるESR(ESR150)を測定した。熱エージング前後におけるESRの値を表2に示す。
【0112】
【表2】
【0113】
水リッチ溶媒中の水含有量が増加するほど、耐熱性に優れたコンデンサが得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の重合液から得られた導電性ポリマーは、固体電解コンデンサをはじめとして、ポリマー電池、帯電防止フィルム、表示素子、センサー、電極材料等の幅広い分野に応用される。