特許第6048801号(P6048801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6048801ポリアミドポリアミン縮合物、ポリアミドポリアミン架橋性変性物、エポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂硬化物、水性接着剤組成物および湿潤紙力剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048801
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】ポリアミドポリアミン縮合物、ポリアミドポリアミン架橋性変性物、エポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂硬化物、水性接着剤組成物および湿潤紙力剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/34 20060101AFI20161212BHJP
   C08L 77/08 20060101ALI20161212BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20161212BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20161212BHJP
   C09J 177/06 20060101ALI20161212BHJP
   D21H 17/55 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   C08G69/34
   C08L77/08
   C08L63/00 A
   C09J163/00
   C09J177/06
   D21H17/55
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-200307(P2012-200307)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-55223(P2014-55223A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 邦彦
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−040605(JP,A)
【文献】 特開2002−173889(JP,A)
【文献】 特開昭49−057904(JP,A)
【文献】 特開平06−025408(JP,A)
【文献】 特開昭50−123200(JP,A)
【文献】 特開昭50−151998(JP,A)
【文献】 特開2002−201266(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/086655(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G69、C08K、C09J、D21H1−27
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸成分およびポリアルキレンポリアミン成分を縮合させてなるポリアミドポリアミン縮合物であって、該ジカルボン酸成分中に重合ロジンおよび/または重合ロジン低級エステルを20モル%以上含有するものであることを特徴とするポリアミドポリアミン縮合物(A)。
【請求項2】
前記重合ロジンおよび/または重合ロジン低級エステルが二量化ロジンおよび/または二量化ロジン低級エステルを40重量%以上含有するものである請求項1記載のポリアミドポリアミン縮合物(A)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリアミドポリアミン縮合物(A)とエピハロヒドリンとを反応させて得られるポリアミドポリアミン架橋性変性物(B)。
【請求項4】
請求項1または2記載のポリアミドポリアミン縮合物(A)を含んでなるエポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項5】
請求項4に記載のエポキシ樹脂用硬化剤を用いてエポキシ樹脂を硬化させて得られるエポキシ樹脂硬化物。
【請求項6】
請求項3に記載のポリアミドポリアミン架橋性変性物(B)を含んでなる水性接着剤組成物。
【請求項7】
請求項3に記載のポリアミドポリアミン架橋性変性物(B)を含んでなる湿潤紙力剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境配慮型でありしかも優れた諸特性を有する、重合ロジン系ポリアミドポリアミン縮合物およびその架橋性誘導体、ならびにそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドポリアミン縮合物は、エポキシ樹脂用硬化剤として用いられることが知られており、また該硬化剤とエポキシ樹脂からなる組成物や硬化物が、例えば塗料、接着剤などの各種用途に適用できることも知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、ポリアミドポリアミン縮合物とエピハロヒドリンとの反応生成物である架橋性変性物は、例えば水性接着剤の配合成分として使用され(例えば、特許文献2)、また湿潤時の紙製品の強度を向上させるための湿潤紙力剤などの用途で賞用されている(例えば、特許文献3〜5)。
【0004】
近年、環境保護・環境配慮の要請から、バイオマス利用による新規なバイオベースプラスチックの合成技術や、天然素材に着目したグリーン化技術などの開発努力が、多方面でなされている。
【0005】
しかしながら、天然素材を単純に配合した組成物では、強度や耐水性などの性能が一般的に低下する傾向がある。そのため、天然素材を配合成分ではなく反応成分として導入することが望ましい。ところで、天然素材として脂肪酸やロジンがあげられるが、これらはいずれも一官能のカルボン酸であるため、各種プラスチックや樹脂の側鎖や末端部として導入できるものの、主鎖中に導入することは容易でなかった。そのため、例えば、ロジンを不飽和脂肪酸で変性したり、重合または二量化することにより多官能化合物に誘導して、これらを主鎖に組み入れる試みもなされている。しかしながら、該重合体や二量化物の純度が低いために、得られる目的物が所望の性能を発揮できないなどの課題がある。
【0006】
そのため、斯界においては、従来の石油系素材から得られる用途物と比べて何ら遜色のない、天然系素材から得られる目的物の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−73570号公報([0030])
【特許文献2】特開昭60−124675号公報
【特許文献3】特開平5−209159号公報([0008])
【特許文献4】特開2005−208456号公報([0056])
【特許文献5】特開平6−1842号公報([0002])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、環境配慮の観点から、天然素材である重合ロジン成分を含んでなるポリアミドポリアミン縮合物およびその架橋性変性物を提供し、各種用途にこれらを利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は前記従来技術の課題を解決すべく、重合ロジンまたはその低級エステルの使用量または純度と、目的物性能との相関に着目して、鋭意検討を重ねた。その結果、前記重合ロジン類を特定量以上含有してなるポリアミドポリアミン縮合物や該縮合物の架橋性変性物が前記課題を解決しうること、更には二量化物を特定量以上含有する重合ロジン類を用いてなるポリアミドポリアミン縮合物や該縮合物の架橋性変性物が、前記課題をより好適に解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、ジカルボン酸成分およびポリアルキレンポリアミン成分を縮合させてなるポリアミドポリアミン縮合物であって、該ジカルボン酸成分中に重合ロジンおよび/または重合ロジン低級エステルを20モル%以上含有するものであることを特徴とするポリアミドポリアミン縮合物(A)に係る。また本発明は、前記ポリアミドポリアミン(A)とエピハロヒドリンとを反応させて得られるポリアミドポリアミン架橋性変性物(B)に係る。また本発明は、ポリアミドポリアミン縮合物(A)を含んでなるエポキシ樹脂用硬化剤に係る。また本発明は、前記エポキシ樹脂用硬化剤を用いてエポキシ樹脂を硬化させて得られるエポキシ樹脂硬化物に係る。更に本発明は、ポリアミドポリアミン架橋性誘導体(B)を含んでなる水性接着剤組成物および湿潤紙力剤に係る。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、環境配慮型であり、しかも諸特性に優れたポリアミドポリアミン縮合物(A)およびポリアミドポリアミン架橋性誘導体(B)を提供できる。本発明で得られるポリアミドポリアミン縮合物(A)は、各種用途、例えばエポキシ樹脂用硬化剤として、エポキシ樹脂硬化物(塗料、接着剤など)用に使用できる。また本発明のポリアミドポリアミン架橋性変性物(B)は、例えば、水性接着剤組成物、湿潤紙力剤などに好適である。しかも本発明の縮合物(A)、架橋性変性物(B)を用いてなる用途物はいずれも、従来の石油系各用途物に比べて性能面で遜色がなく、環境保護などの目的にも資するものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリアミドポリアミン縮合物(A)(以下、縮合物(A)という)は、後述のような二塩基酸および/またはその誘導体(以下、ジカルボン酸成分という)とポリアルキレンポリアミン(以下、ポリアミン成分という)との脱水縮合物であって、該ジカルボン酸成分中に重合ロジンおよび/または重合ロジン低級エステル(以下、重合ロジン類という)をそれらの合計で20モル%以上含有するもの、好ましくは40モル%以上含有するものである。なお、重合ロジン低級エステルにおける「低級」とは、メチル、エチル、プロピル基を意味する。
【0013】
本発明で用いる重合ロジン類としては、特に限定はされないが、二量化物(二量化ロジン、二量化ロジン低級エステル)の含有率が40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上であるものを用いるのがよい。目的用途において、色調が重視される場合には、該重合ロジン類としては、蒸留ロジンを出発原料とする重合ロジン類や、該水素化物などを使用することがより好ましい。前記の重合ロジン類の製造法としては、特に限定されず、公知各種の方法を採用できる。
【0014】
前記二塩基酸としては、本発明での特徴部分となる重合ロジンの他、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族二塩基酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族二塩基酸などがあげられる。該二塩基酸の誘導体としては、本発明での特徴部分となる重合ロジン低級エステルの他、前記二塩基酸の無水物や低級エステルなどがあげられる。これらジカルボン酸成分としては、重合ロジン類を前記のように特定量以上使用することが必要であるが、他のジカルボン酸成分については、任意使用でき、いずれか1種単独でまたは適宜に組み合わせて用いられる。
【0015】
縮合物(A)に用いられる前記ポリアミン成分としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビスプロピルアミンなどがあげられる。これらポリアミン成分は1種単独でまたは適宜に組み合わせて使用できる。
【0016】
縮合物(A)は、前記ジカルボン酸成分とポリアミン成分とを、公知の方法で脱水縮合や脱アルコール縮合させることにより容易に製造できる。例えば、硫酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などの触媒の存在下または不存在下に、反応温度110〜250℃程度で、2〜24時間程度の条件で反応させればよい。ジカルボン酸成分とポリアミン成分の使用割合は、格別限定されないが、通常は前者:後者が1:0.9〜1.2程度(モル比)の範囲で使用するのが好ましい。
【0017】
縮合物(A)の性状や一般恒数については、特に限定はされず、その用途に応じて適宜に設定すればよい。縮合物(A)の重量平均分子量は、通常は1000〜3000程度、好ましくは1200〜2500である。縮合物(A)のアミン価は、固形分換算で10〜50mgKOH/g程度、好ましくは20〜40mgKOH/gである。該アミン価が前記下限値より過小であればエポキシ樹脂の硬化性が低下する傾向があり、また該アミン価が前記上限値より過大であれば、得られるエポキシ硬化物の接着強度が低下する傾向がある。なお、縮合物(A)は、後述のポリアミドポリアミン架橋性変性物(B)の製造におけるエピハロヒドリンとの反応にあたっては、水性液の形態であることが好ましく、該水性液とは水溶液または水分散液をいう。また、該水性液に用いる溶媒としては、水の他、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。
【0018】
本発明のポリアミドポリアミン架橋性変性物(B)(以下、変性物(B)という)は、前記縮合物(A)とエピハロヒドリンとを反応させて得られる。エピハロヒドリンとしては、例えばエピクロロヒドリン、エピブロムヒドリンなどが用いられる。縮合物(A)に対するエピハロヒドリンの使用割合は、特に限定されないが、低分子有機ハロゲン化合物の生成量を低減させるなどの観点から、通常、縮合物(A)の第2級アミノ基とエピハロヒドリンのエポキシ基の当量比(エポキシ基/第2級アミノ基)が0.8〜2.0の範囲内となるように用いるのが好ましい。低分子有機ハロゲン化合物の生成量を低減させるには、前記当量比は1.5以下とするのがより好ましく、また得られる変性物(B)の水性液としての保存安定性や、目的物の諸性能(接着性、耐水化効果、湿潤紙力効果など)を考慮すれば、前記当量比は0.9以上とするのがより好ましい。
【0019】
変性物(B)の性状や一般恒数については、特に限定はされず、その用途に応じて適宜に設定すればよい。変性物(B)を、例えば水性接着剤や湿潤紙力剤に用いる場合には、該分子量は格別限定されないが、25℃における50重量%水性液の粘度が100〜1000mPa・s程度のものが、取り扱い性や性能面で好ましい。
【0020】
縮合物(A)とエピハロヒドリンとの反応は、縮合物(A)にエピハロヒドリンを付加させる工程と、更に架橋により増粘させる工程を含む。かかる反応温度は、通常、5〜80℃程度が好ましく、反応液は通常、20〜70重量%程度とするのが好ましい。かかる反応条件は適宜に調整できるが、低分子有機ハロゲン化合物の生成を抑え易く、また反応の制御が容易なことから、反応温度は、縮合物(A)にエピハロヒドリンを付加させる温度(5〜40℃:1次保温)と、更に増粘させる温度(40〜80℃:2次保温)の2段階に設定して行なうのが好ましい。反応温度を2段階に設定する場合、反応液濃度は、前記1次保温の濃度に比べて2次保温の濃度が同等またはそれ以下となるようにするのが好ましい。反応液の濃度は、たとえば、1次保温では30〜70重量%程度、2次保温では20〜40重量%程度に調整するのが好ましい。
【0021】
本発明の縮合物(A)は、エポキシ樹脂用硬化剤として好適である。適用されるエポキシ樹脂については格別限定されず、各種公知のものが使用できる。例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などがあげられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。エポキシ樹脂に対する該硬化剤の配合割合は、格別限定されないが、通常は固形分換算で、エポキシ樹脂100重量部に対し該硬化剤は10〜150重量部程度、好ましくは20〜100重量部とされる。別言すると、該硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して硬化剤の残存アミノ基として0.5〜1.5当量が好ましく、特に0.7〜1.2当量が好ましい。
【0022】
また前記のエポキシ樹脂組成物の調製に際して、必要に応じて、各種公知の硬化促進剤を使用してもよい。例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系化合物、2−(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの第3級アミン系化合物、トリフェニルフォスフィン化合物などが使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硬化促進剤を用いる場合、その使用量はエポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜15重量部の範囲が好ましく、特に0.1〜10重量部の範囲が好ましい。また、当該調製に際しては、必要に応じて各種公知の有機溶剤を用いて、エポキシ樹脂組成物の粘度を適宜に調整することができる。
【0023】
本発明の縮合物(A)は、例えば脂肪酸ダイマー系ポリアミドポリアミン縮合物などに比べて、耐熱性に優れたエポキシ樹脂硬化物を提供できる。縮合物(A)に見られる該効果の発現理由は定でないが、ジカルボン酸成分として構造的にバルキーな重合ロジン類が特定量以上使用されていることが一因であると思われる。
【0024】
本発明の変性物(B)は、各種の水性接着剤組成物における配合成分として好適に使用できる。具体的には、澱粉系水性接着剤に添加される耐水化剤、水溶性エポキシ化合物に適用可能な硬化剤、合成樹脂エマルジョンなどと併用可能な耐水化剤、偏光板用の接着剤成分などがあげられるが、これらに限定されるものではない。水性接着剤組成物における変性物(B)の使用量は、一概に限定できないが、例えば、澱粉系水性接着剤用の耐水化剤として用いる場合は、通常、澱粉100重量部に対して0.1〜15重量部(固形分換算)程度であり、好ましくは1〜10重量部の割合で配合される。また、合成樹脂エマルジョンなどと併用可能な耐水化剤として用いる場合は、通常、合成樹脂エマルジョンの固形分100重量部に対して0.1〜30重量部(固形分換算)程度であり、好ましくは1〜20重量部の割合で配合される。
【0025】
また本発明の変性物(B)は、湿潤紙力剤として好適であり、例えばパルプ繊維の抄造のみならず、該繊維と鉱物繊維(石綿、岩綿など)や合成繊維(ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンなど)とを混抄することにより、紙、板紙、繊維板などの製造に際して有利に適用できる。変性物(B)の使用量は、公知の湿潤紙力剤と同様、紙の用途により必要な物性が異なるため、用途に応じて適宜決定する必要があるが、通常、パルプ100重量部に対し、0.05〜1.0重量部程度が適当である。
【実施例】
【0026】
以下に実施例および比較例をあげて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、部および%は特記しない限り重量基準である。
【0027】
実施例1(ポリアミドポリアミン縮合物(A)の合成)
温度計、冷却器、攪拌機および窒素導入管を備えた反応装置に、重合ロジン(二量体含有率:40%)420部(1モル)、アジピン酸584部(4モル)およびジエチレントリアミン516部(5モル)を仕込み、窒素気流下180℃まで昇温し、生成水を系外に除去しながら約8時間を要して縮合反応させて、重量平均分子量が1600のポリアミドポリアミン縮合物を得た(A−1という)。次いで、所定量の水で希釈し、固形分濃度50%、粘度300mPa・s(25℃)のポリアミドポリアミン縮合物水溶液を得た(A−1’という)。
【0028】
実施例2〜4(ポリアミドポリアミン縮合物(A)の合成)
実施例1において、重合ロジンの種類、その使用割合のいずれかにつき、表1記載のように変更した他は、同様に縮合反応させて各種のポリアミドポリアミン縮合物(A)を得た(順にA−2〜A−4という)。次いで、これらを水で希釈し、各種の縮合物(A)水性液を得た(順に、A−2’〜A−4’という)。これらの重量平均分子量、粘度は表2に示す。
【0029】
【表1】

表1中、重合ロジンNo.1とは実施例1で用いたもの、No.2とは二量化物の含有率が50%のもの、No.3とは二量化物の含有率が40%であって水素化されたものをいう。
【0030】
比較例1(比較用ポリアミドポリアミン縮合物の合成)
実施例1で用いたと同様の反応装置に、アジピン酸730部(5モル)およびジエチレントリアミン516部(5モル)を仕込み、窒素気流下180℃まで昇温し、生成水を系外に除去しながら約8時間を要して縮合反応させて比較用ポリアミドポリアミン縮合物を得た(AC−1という)。次いで、所定量の水で希釈し、比較用ポリアミドポリアミン縮合物水性液を得た(AC−1’という)。これらの重量平均分子量、粘度は表2に示す。
【0031】
比較例2(比較用ポリアミドポリアミン縮合物の合成)
実施例1で用いたと同様の反応装置に、脂肪酸ダイマー1122部(2モル)、アジピン酸438部(3モル)、およびジエチレントリアミン516部(5モル)を仕込み、窒素気流下180℃まで昇温し、生成水を系外に除去しながら約8時間を要して縮合反応させて比較用縮合物を得た(AC−2という)。次いで、所定量の水で希釈し、比較用ポリアミドポリアミン縮合物水性液を得た(AC−2’という)。これらの重量平均分子量、粘度は表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
実施例5(ポリアミドポリアミン架橋性変性物(B)の合成)
実施例1で用いたと同様の反応装置に、実施例1で得られたA−1’を540部および水238部を仕込み(反応液濃度40%に調整)、系内温度を15℃に保持しながらエピクロロヒドリン92部(エピクロロヒドリンのエポキシ基:ポリアミドポリアミンの第2級アミノ基(当量比)=1.1:1)を2時間かけて滴下した後、30℃で5時間保温した。次いで、水90部を加えた後、60℃に昇温し2時間保温した。更に、水423部、62.5%硫酸50部を加えて冷却し、固形分濃度25%、粘度250mPa・s(25℃)、pH3.0のポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水性液を得た(変性物B−1という)。
【0034】
実施例6〜8
実施例5において、A−1’と該使用量を、表3に記載のように縮合物水性液の種類および使用量に変えた他は同様に反応を行い、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン変性物水溶液を得た(順に、変性物B−2〜B−4という)。これらの固形分濃度、粘度およびpHを表4に示す。
【0035】
比較例3〜4
実施例5において、A−1’と該使用量に代えて、表3に記載のように変えた他は同様に反応を行い、比較用ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン変性物水溶液を得た(順に、変性物BC−1およびBC−2という)。これらの固形分濃度、粘度およびpHを表4に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
以下、本発明の縮合物および架橋性変性物を用いた特定用途における性能評価例を示す。
【0039】
(エポキシ樹脂接着剤組成物の調製)
実施例1〜4で得られた変性物(A−1〜A−4)および比較例1〜2で得られた比較用変性物(AC−1およびAC−2)について、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名「EP828」)100部に対して、それぞれ50部および硬化促進剤(トリフェニルフォスフィン)1部を配合し、均一に混合し、硬化条件(150℃×2時間+180℃×8時間)でトランスファー成形して樹脂成形体を得た。これにより得られた硬化物のガラス転移温度(TMA 昇温度速度2℃/分)、熱変形温度(JIS K7207準拠)を測定した。結果を表5に示す。
【0040】
【表5】
【0041】
表5から、各実施例の縮合物を用いてなるエポキシ樹脂硬化物は、比較用のエポキシ樹脂硬化物に比べてガラス転移温度、熱変形温度ともに高い値を示し、硬化物特性に優れることが明らかである。
【0042】
(水性接着剤組成物の調製)
実施例5〜8で得られた変性物(B−1〜B−4)および比較例3〜4で得られた比較用変性物(BC−1およびBC−2)について、以下の方法で耐水接着剤を調製し、耐水化剤としての性能を評価した。結果を表6に示す。
【0043】
40℃の温水585部にコーンスターチ240部を懸濁させ、ついで15%水酸化ナトリウム水溶液44.6部を添加し、その後硼酸3.2gを加えて糊液を得た。これに、スチレンブタジエンラテックス(固形分51%、Tg−5℃、平均粒子径130nm)150部、および耐水化剤として前記変性物24部を添加して、耐水接着剤を調製した。得られた接着剤を、坪量200g/m、撥水度(JIS P8137)R0の耐水中芯を貼合した片面段ボールの段頂に着糊量が固形分として10g/mになるように塗布し、これに耐水ライナーSKを貼り合わせて、熱圧着(160℃×5秒)した。貼合後の段ボールシートは温度23℃、湿度50%で24時間放置し、JIS−Z−0402に基づき常態接着力および耐水接着力(試験片を20℃の水に1時間浸漬後の接着力)を測定した。
【0044】
【表6】
【0045】
表6から、各実施例の変性物を用いてなる水性接着剤組成物は、比較用の水性接着剤組成物に比べて常態接着力、耐水接着力のいずれの点でも優れることが明らかであり、耐水化剤としての優位性が認められる。
【0046】
(湿潤紙力剤としての性能評価)
実施例5〜8で得られた変性物(B−1〜B−4)および比較例3〜4で得られた比較用変性物(BC−1およびBC−2)について、以下の方法で湿潤紙力剤としての性能を評価した。結果を表7に示す。
【0047】
(湿潤紙力強度)
パルプ(L−BKP/N−BKP=1/1)を離解し、濾水量が500mlになるまで叩解したパルプスラリーに、前記の架橋反応物を0.4%(対パルプ固形分換算)加えた。こうして得られたパルプスラリーについて、TAPPIスタンダードシートマシン(角型)にて坪量60g/mとなるように抄紙した。得られた湿紙を、ロールプレスにて線圧15kg/cmでプレス脱水した。次いで、回転型乾燥機で110℃において4分間乾燥し、23℃、50%R.H.の条件下に24時間調湿して、手抄きシートを作成した。得られた手抄きシートの湿潤紙力強度(裂断長:Km)をJIS P8135に準じて測定した。
【0048】
【表7】
【0049】
表7から、各実施例の変性物を含有する本発明の湿潤紙力剤は、比較例のものに比べて、湿潤強度を向上させうることが明らかである。