(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
図1を参照して、脈波測定装置1の構成について説明する。
脈波測定装置1は、椅子型の装置本体10、上肢測定部40、下肢測定部50、密着装置60、制御部70、検出部80、操作部91、および表示部92を有する。なお、上肢測定部40および下肢測定部50は、「体肢測定部」に相当する。検出部80は、「高さ位置検出部」に相当する。操作部91は、「体格情報入力部」に相当する。
【0018】
装置本体10は、背もたれ部11、座部13、オットマン14、肘掛16、背もたれ部傾動機構20(
図2参照)、およびオットマン傾動機構30(
図2参照)を有する。
以下では、座部13の背もたれ部11が取り付けられる側からオットマン14が取り付けられる側に向かう方向を「後方Z2」とする。また、座部13のオットマン14が取り付けられる側から背もたれ部11が取り付けられる側に向かう方向を「後方Z2」とする。また、前方Z1および後方Z2を含む方向を「奥行方向Z」とする。
【0019】
背もたれ部11は、背もたれ部11の幅方向の両端部にレール12を有する。レール12は、背もたれ部11の高さ方向(以下、「背もたれ高さ方向Y」)に延びる。
座部13は、座部固定部13A(
図2参照)を有する。座部固定部13Aは、座面の奥行き方向の中間部分から下方に向けて突出する。
【0020】
オットマン14は、幅方向に隣り合う下肢配置部14Aを有する。各下肢配置部14Aは、レール15を有する。レール15は、オットマン14の高さ方向(以下、「オットマン高さ方向W」)に延びる。
【0021】
図2を参照して、背もたれ部傾動機構20およびオットマン傾動機構30の構成について説明する。
背もたれ部傾動機構20は、モーター21、回転部22、および伸縮部23を有する。背もたれ部傾動機構20は、座部13の内部に配置される。背もたれ部傾動機構20は、背もたれ部11の座部13に対する傾き角度を変更する。
【0022】
回転部22は、背もたれ部11および座部13を取り付ける。伸縮部23は、背もたれ部11の下端部および座部固定部13Aに接続される。モーター21は、伸縮部23の中間部分に取り付けられる。モーター21が駆動するとき、伸縮部23は、伸縮する。伸縮部23が縮むとき、背もたれ部11の下端部が前方Z1に引き込まれ、背もたれ部11は回転部22周りで座部13に対して回転する。このため、背もたれ部11の上端部がより後方Z2に向かって傾く。
【0023】
オットマン傾動機構30は、モーター31、回転部32、および伸縮部33を有する。オットマン傾動機構30は、座部13の内部に配置される。オットマン傾動機構30は、オットマン14の座部13に対する傾き角度を変更する。
【0024】
回転部32は、オットマン14および座部13を取り付ける。伸縮部33は、オットマン14の背面かつ上方側の部分および座部固定部13Aに接続される。モーター31は、伸縮部33の中間部分に取り付けられる。モーター31が駆動するとき、伸縮部33は、伸縮する。伸縮部33が伸びるとき、オットマン14が前方Z1に押され、オットマン14は回転部32周りで座部13に対して回転する。このため、オットマン14の下端部がより前方Z1に向う。なお、回転部22および回転部32の高さ位置は一致する。以下では、回転部22および回転部32の高さ位置を「支持高さ位置」とする。
【0025】
図3に示されるように、背もたれ部11およびオットマン14は、最も回転部22,32周りで回転したとき、座部13の座面、背もたれ部11の表面、およびオットマン14の下肢の背面を乗せる面が一直線になる。すなわち、背もたれ高さ方向Y、オットマン高さ方向W、および奥行方向Zが一致する。このとき、上肢測定部40の高さ位置および下肢測定部50の高さ位置も一致する。
【0026】
図1を参照して、上肢測定部40および下肢測定部50の構成について説明する。
各上肢測定部40は、上肢ガイド部41、カフ42、および圧力センサー43を有する。各上肢測定部40は、背もたれ部11に取り付けられる。このため、背もたれ部11が座部13に対して傾くとき、各上肢測定部40は座部13に対して傾く。換言すれば、各上肢測定部40は、座部13に対して傾き可能に取り付けられる。なお、各上肢測定部40に対する座部13は、「取付部」に相当する。
【0027】
各上肢ガイド部41は、断面がC字形状を有する。各上肢ガイド部41は、背もたれ部11の幅方向の右側のレール12および左側のレール12にそれぞれ取り付けられる。各上肢ガイド部41は、図示しないモーターの駆動によりレール12に沿って背もたれ高さ方向Yに移動する。カフ42は、上肢ガイド部41の内部に配置される。カフ42は、密着装置60から供給されるエアーにより、膨張する。圧力センサー43は、カフ42にかかる圧力を検出する。圧力センサー43は、カフ42および密着装置60のエアーポンプ61を接続するチューブ62に配置される。圧力センサー43は、チューブ62内の圧力を検出することにより、カフ42にかかる圧力を検出する。
【0028】
各下肢測定部50は、下肢ガイド部51、カフ52、および圧力センサー53を有する。各下肢測定部50は、オットマン14に取り付けられる。このため、オットマン14が座部13に対して傾くとき、各測定部50は座部13に対して傾く。換言すれば、各下肢測定部50は、座部13に対して傾き可能に取り付けられる。なお、各下肢測定部50に対する座部13は、「取付部」に相当する。
【0029】
各下肢ガイド部51は、断面がC字形状を有する。各下肢ガイド部51は、右側のレール15および左側のレール15にそれぞれ取り付けられる。各下肢ガイド部51は、図示しないモーターの駆動によりレール15に沿ってオットマン高さ方向Wに移動する。カフ52は、下肢ガイド部51の内部に配置される。カフ52は、密着装置60から供給されるエアーにより、膨張する。圧力センサー53は、カフ52にかかる圧力を検出する。圧力センサー53は、カフ52および密着装置60のエアーポンプ61を接続するチューブ62に配置される。圧力センサー53は、チューブ62内の圧力を検出することにより、カフ52にかかる圧力を検出する。
【0030】
密着装置60は、エアーポンプ61およびチューブ62を有する。密着装置60は、制御部70からの指令に基づいて、チューブ62を介して、エアーポンプ61からカフ42,52にエアーを供給する。
【0031】
検出部80は、上肢移動量検出部81、下肢移動量検出部82、上肢傾き角度検出部83、および下肢傾き角度検出部84を有する。
上肢移動量検出部81は、レール12に対する上肢ガイド部41の移動量(以下、「上肢移動量ΔLA」)を検出する。上肢移動量検出部81としては、例えばリニアエンコーダーが採用される。
【0032】
下肢移動量検出部82は、レール15に対する下肢ガイド部51の移動量(以下、「下肢移動量ΔLL」)を検出する。下肢移動量検出部82としては、例えばリニアエンコーダーが採用される。
【0033】
上肢傾き角度検出部83は、座部13に対する背もたれ部11の傾き角度の変化量(以下、「角度変化量ΔθA」)を検出する。上肢傾き角度検出部83としては、例えばロータリーエンコーダーが採用される。なお、上肢傾き角度θAは、水平面と上肢測定部40のなす角度に等しい。
【0034】
下肢傾き角度検出部84は、座部13に対するオットマン14の傾き角度の変化量(以下、「角度変化量ΔθL」)を検出する。下肢傾き角度検出部84としては、例えばロータリーエンコーダーが採用される。なお、下肢傾き角度θLは、水平面と直交する垂直面と下肢測定部50とのなす角度と等しい。
【0035】
制御部70は、被測定者の操作部91の操作に基づいて上肢測定部40および下肢測定部50による脈波情報の測定を行う。制御部70は、検出部80の検出値に基づいて上肢測定部40および下肢測定部50の高さ位置を算出する。制御部70は、被測定者の操作部91の操作に基づいて、背もたれ部傾動機構20およびオットマン傾動機構30を駆動させる。操作部91は、被測定者が脈波測定装置1の電源を制御するためのボタン(図示略)、および身長を入力するボタン(図示略)を有する。表示部92は、脈波情報を表示する。なお、身長は、「入力情報」に相当する。
【0036】
図4および
図5を参照して、脈波の測定時の上肢測定部40および下肢測定部50の動作について説明する。なお、
図4には、上肢測定部40の動作を示すが、下肢測定部50についても同様に動作する。
【0037】
図4に示されるように、上肢測定部40は、電源がオフの状態のとき上肢基準位置に位置する。下肢測定部50は、電源がオフの状態のとき下肢基準位置に位置する。
制御部70は、脈波情報の測定を行うとき、被測定者の身長に基づいて上肢ガイド部41および下肢ガイド部51をレール12,15に沿って移動させる。脈波の測定を行うとき、上肢測定部40の高さ位置は、身長により推定される被測定者の心臓103の高さ位置と一致する。なお、上肢測定部40の高さ位置は、カフ42の背もたれ高さ方向Yの中央部分40Cの高さ位置と対応する。下肢測定部50の高さ位置は、カフ52のオットマン高さ方向Wの中央部分50Cの高さ位置と対応する。
【0038】
図5に示されるように、密着装置60(
図1参照)は、カフ42,52にエアーを供給し、上肢101または下肢102を圧迫する。制御部70(
図1参照)は、カフ42,52へのエアーの供給を制御し、カフ42,52を徐々に収縮させて圧力を下げる。圧力センサー43,53は、
図9に示されるカフ42,52の収縮時の圧力変動を感知する。制御部70は、圧力センサー43,53により検出された圧力変動、およびアルゴリズムを用いて上肢の血圧(以下、「上肢血圧PA」)および下肢の血圧(以下、「下肢血圧PL」)を算出する。
【0039】
図6〜
図8を参照して、上肢測定部40および下肢測定部50の高さ位置の算出方法について説明する。
図6に示されるように、上肢測定部40は、上肢基準位置にあるとき、支持高さ位置よりも基準上肢高さHA(cm)だけ高い位置に位置する。
【0040】
また、上肢測定部40は、上肢基準位置にあるとき、レール12に対する位置が上肢基準スライド位置に位置し、座部13に対して基準の上肢傾き角度(以下、「基準上肢傾き角度θAX」)で傾く。上肢基準スライド位置にあるとき、回転部22から上肢測定部40までの距離を「上肢基準距離LA」とする。
【0041】
下肢測定部50は、下肢基準位置にあるとき、支持高さ位置よりも基準下肢高さHL(cm)だけ低い位置に位置する。
下肢測定部50は、下肢基準位置にあるとき、レール15に対する位置が下肢基準スライド位置に位置し、座部13に対して基準の下肢傾き角度(以下、「下肢傾き角度θLX」)で傾く。下肢基準スライド位置にあるとき、回転部32から下肢測定部50までの距離を「下肢基準距離LL」とする。
【0042】
図7を参照して、上肢測定部40および下肢測定部50がレール12,15に対して移動したときの上肢測定部40および下肢測定部50の高さ位置の変化について説明する。
上肢測定部40は、レール12に対して上肢移動量ΔLA分だけ移動する。制御部70は、上肢移動量ΔLAおよび基準上肢傾き角度θAXに基づいて高さ位置の変化量(以下、「上肢高さ変化量ΔAX」)を算出する。制御部70は、基準上肢高さHAおよび上肢高さ変化量ΔAXにより、上肢測定部40の高さ位置と支持高さ位置との高さの差(以下、「上肢高さHAX」)を算出する。具体的には、制御部70は、下記式(1)および式(2)により上肢高さHAXを算出する。
【0043】
ΔAX=ΔLA×sinθAX …(1)
HAX=HA+ΔAX …(2)
下肢測定部50は、レール15に対して下肢移動量ΔLL分だけ移動する。制御部70は、下肢移動量ΔLLおよび基準下肢傾き角度θLXに基づいて高さ位置の変化量(以下、「下肢高さ変化量ΔLX」)を算出する。制御部70は、基準下肢高さHLおよび上肢高さ変化量ΔLXにより、下肢測定部50の高さ位置と支持高さ位置との高さの差(以下、「下肢高さHLX」)を算出する。具体的には、制御部70は、下記式(3)および式(4)により下肢高さHLXを算出する。
【0044】
ΔLX=ΔLL×cosθLX …(3)
HLX=HL+ΔLX …(4)
図8を参照して、背もたれ部11およびオットマン14の座部13に対する傾きが変更されたときの上肢測定部40および下肢測定部50の高さ位置の変化について説明する。
【0045】
上肢測定部40は、基準上肢傾き角度θAXから傾き角度変化量ΔθAX分だけ回転する。制御部70は、基準上肢傾き角度θAXおよび傾き角度変化量ΔθAXに基づいて最終的な上肢傾き角度(以下、「上肢傾き角度θA」)を算出する。具体的には、制御部70は、下記式(5)により上肢傾き角度θAを算出する。
【0046】
θA=θAX+ΔθAX …(5)
制御部70は、上肢基準距離LAおよび上肢移動量ΔLAに基づいて、回転部22から上肢測定部40までの距離(以下、「上肢測定距離LAX」)を算出する。具体的には、制御部70は、下記式(6)により上肢測定距離LAXを算出する。
【0047】
LAX=LA+ΔLA …(6)
制御部70は、上肢傾き角度θAおよび上肢測定距離LAXに基づいて、上肢高さHAYを算出する。具体的には、制御部70は、下記式(7)により上肢高さHAYを算出する。
【0048】
HAY=LAX×sinθA …(7)
下肢測定部50は、基準下肢傾き角度θLXから傾き角度変化量ΔθLX分だけ回転する。制御部70は、基準下肢傾き角度θLXおよび傾き角度変化量ΔθLXに基づいて最終的な下肢傾き角度(以下、「下肢傾き角度θL」)を算出する。具体的には、制御部70は、下記式(8)により下肢傾き角度θLを算出する。
【0049】
θL=θLX+ΔθLX …(8)
制御部70は、下肢基準距離LLおよび下肢移動量ΔLLに基づいて、回転部22から下肢測定部50までの距離(以下、「下肢測定距離LLX」)を算出する。具体的には、制御部70は、下記式(9)により下肢測定距離LLXを算出する。
【0050】
LLX=LL+ΔLL …(9)
制御部70は、下肢傾き角度θLおよび下肢測定距離LLXに基づいて、下肢高さHLYを算出する。具体的には、制御部70は、下記式(10)により下肢高さHLYを算出する。
【0051】
HLY=LLX×cosθL …(10)
制御部70は、上肢高さHAYおよび下肢高さHLYに基づいて心臓103の高さから下肢の高さまでの差(以下、「下肢高さHX」)を算出する。具体的には、制御部70は、下記式(11)により下肢高さHXを算出する。
【0052】
HX=HAY+HLY …(11)
ここで、上肢測定部40および下肢測定部50により測定される血圧は、静水圧の影響を受ける。上肢測定部40および下肢測定部50の測定時の高さ位置が心臓103の高さ位置よりも高いとき、血圧は心臓103の高さ位置で測定する血圧よりも低くなる。具体的には、上肢測定部40および下肢測定部50の測定時の高さ位置が心臓103の高さ位置よりも10cm高いとき、血圧は心臓103の高さ位置で測定する血圧よりも約7mmHg低い。
【0053】
また、上肢測定部40および下肢測定部50の測定時の高さ位置が心臓103の高さ位置よりも低いとき、血圧は心臓103の高さ位置で測定する血圧よりも高くなる。具体的には、上肢測定部40および下肢測定部50の測定時の高さ位置が心臓103の高さ位置よりも10cm低いとき、血圧は心臓103の高さ位置で測定する血圧よりも約7mmHg高い。
【0054】
制御部70は、脈波の測定時に上肢測定部40の高さ位置を、心臓103の高さ位置と一致させる。一方、下肢測定部50の高さ位置は、被測定者が装置本体10に座った状態で測定する場合、心臓103の高さ位置よりも低い。このため、下肢血圧PLは、正確な下肢血圧よりも高くなる。そこで、制御部70は、下肢高さHXに基づいて、下肢血圧PLを補正する。具体的には、制御部70は、下記(12)式により最終的な下肢血圧PLXを算出する。
【0055】
PLX=PL−HX×7/10…(12)
図4、および
図10〜12を参照して、脈波伝播速度の算出方法について説明する。
【0056】
制御部70(
図1参照)は、上肢測定部40および下肢測定部50の測定値を用いて脈波伝播速度を算出する。
図4に示されるように、密着装置60は、カフ42,52にエアーを供給し、上肢101または下肢102を一定の圧力で所定時間圧迫する。圧力センサー43,53は、圧力変動を感知する。制御部70は、圧力センサー43,53により検出された圧力変動(
図10参照)、およびアルゴリズムを用いて脈波伝播速度を算出する。
【0057】
図11は、上肢測定部40の圧力センサー43により検出される値および下肢測定部50の圧力センサー53により検出される脈波変動を示す。なお、
図11は、
図10に示される圧力変動のうちの一部と対応する。
【0058】
圧力センサー43の検出値が上昇を開始するタイミングT1は、圧力センサー53の検出値が上昇を開始するタイミングT2よりも時間差(以下、「時間差TX」)分だけ早い。
図12に示されるように、時間差TXは、心臓103から上肢測定部40までの血管の距離DAと、心臓103から下肢測定部50までの血管の距離DLとの差に起因する。
【0059】
制御部70は、操作部91により入力された身長と、予め設定されたデータベースとに基づいて脈波伝播速度(以下、「脈波伝播速度PWV」)を算出する。具体的には、制御部70は、下記式(13)式により脈波伝播速度PWVを算出する。
【0060】
PWV=(DL−DA)/TX …(13)
制御部70は、上肢血圧PAに対する下肢血圧PLXの値、および脈波伝播速度PWVを表示部92に表示する。上肢血圧PAに対する下肢血圧PLXの値は、動脈硬化による下肢の狭窄および閉塞を診断する指標として用いられる。脈波伝播速度PWVは、血管の硬さを診断する指標として用いられる。このため、被測定者は、表示部92の表示を確認することにより、自身の血管の状態を把握しやすくなる。なお、上肢血圧PAに対する下肢血圧PLXの値は、「上肢血圧と下肢血圧との比」に相当する。
【0061】
本実施形態の脈波測定装置1は、以下の効果を奏する。
(1)脈波測定装置1は、検出部80の検出値に基づいて下肢高さHXを算出し、下肢血圧PLXを補正する。このため、正確に下肢血圧PLXを測定できる。
【0062】
(2)脈波測定装置1は、下肢高さHXに基づいて下肢血圧PLXを補正する。このため、被測定者の姿勢が仰臥姿勢に限定されない。このため、楽な姿勢で測定を行うことができる。
【0063】
(3)脈波測定装置1は、上肢測定部40および下肢測定部50の高さ位置が変更可能に座部13に取り付けられる。このため、体格の異なる複数の被測定者において、被測定者の身体における測定位置が互いにずれることを抑制できる。
【0064】
(3)脈波測定装置1は、身長に応じて上肢測定部40および下肢測定部50の位置を移動させる。このため、被測定者の使い勝手が向上する。また、被測定者が自分で上肢測定部40および下肢測定部50の位置を移動させる場合と比較して、被測定者の身体における測定位置が測定毎にずれることを抑制できる。
【0065】
(4)脈波測定装置1は、傾き角度検出部83,84により検出された傾き角度を用いて下肢血圧PLXを補正する。このため、より正確に下肢高さHXを算出することができる。また、脈波測定装置1は、背もたれ11およびオットマン14が座部13に対して傾くため、被測定者が楽な姿勢で測定を行うことができる。
【0066】
(5)脈波測定装置1は、上肢血圧と下肢血圧との比を算出する。このため、被測定者は、自身の血管の状態を把握しやすい。
(6)脈波測定装置1は、密着装置60を有する。このため、手動でカフを巻く構成と比較して、被測定者の使い勝手が向上する。また、制御部70は、被測定者の体格に合わせてカフ42,52へのエアーの供給を行う。このため、被測定者の使い勝手がさらに向上する。
【0067】
(7)脈波測定装置1は、装置本体10を一直線に維持することができる。このため、被測定者が寝た状態で脈波の測定を行うことができる。このため、脈波測定装置1による脈波の測定結果と、従来の被測定者が寝た状態における脈波の測定による測定結果との比較が行いやすい。
【0068】
(8)脈波測定装置1は、上肢測定部40および下肢測定部50により測定された脈波を用いて脈波伝播速度PWVを算出する。このため、被測定者は、自身の血管の状態、例えば血管壁の硬さを把握しやすい。
【0069】
(第2実施形態)
本実施形態の脈波測定装置1は、第1実施形態の脈波測定装置1と比較して次の部分において異なる構成を有し、その他の部分において同一の構成を有する。すなわち、上肢測定部40が、肘掛16に取り付けられる。
【0070】
図13に示されるように、肘掛16は、上面にレール17を有する。上肢測定部40の上肢ガイド部41は、レール17に取り付けられる。
図15に示されるように、肘掛16は、後方Z2側の端部において回転部18回りで座部13に回転可能に取り付けられる。
【0071】
図14および
図15を参照して、上肢測定部40の高さ位置の算出方法について説明する。
図14に示されるように、電源がオフのとき、上肢測定部40は、上肢基準位置に位置する。なお、上肢測定部40の高さ位置は、カフ42のレール17に沿う方向(以下、「肘掛高さ方向V」)の中央部分40Dの高さ位置と対応する。
【0072】
制御部70は、身長に基づいて心臓103の高さ位置を推定する。
上肢測定部40は、上肢基準位置にあるとき、心臓103の高さ位置よりも低い位置に位置する。制御部70は、推定した心臓103の高さ位置と、上肢測定部40の高さ位置との差(以下、「基準上肢高さHR(cm)」を算出する。また、上肢測定部40は、上肢基準位置にあるとき、レール12に対する位置が上肢基準スライド位置に位置し、座部13に対して基準の上肢傾き角度θR(以下、「基準上肢傾き角度θRX」)で傾く。上肢基準スライド位置にあるとき、回転部22から上肢測定部40までの距離を「上肢基準距離LR」とする。
【0073】
図15を参照して、肘掛16の座部13に対する傾きが変更されたときの上肢測定部40の高さ位置の変化について説明する。
上肢測定部40は、基準上肢傾き角度θRXから傾き角度変化量ΔθRX分だけ回転する。制御部70は、基準上肢傾き角度θRXおよび傾き角度変化量ΔθRXに基づいて上肢傾き角度θRを算出する。具体的には、制御部70は、下記式(21)により上肢傾き角度θRを算出する。
【0074】
θR=θRX+ΔθRX …(21)
制御部70は、上肢基準距離LRおよび上肢移動量ΔLRに基づいて、回転部22から上肢測定部40までの距離(以下、「上肢測定距離LRX」)を算出する。具体的には、制御部70は、下記式(22)により上肢測定距離LRXを算出する。
【0075】
LRX=LR+ΔLR …(22)
制御部70は、上肢傾き角度θRおよび上肢測定距離LRXに基づいて、上肢高さHRYを算出する。具体的には、制御部70は、下記式(23)により上肢高さHRYを算出する。
【0076】
HRY=LRX×sinθR …(23)
下肢測定部50の高さ位置は、心臓103の高さ位置よりも低い。このため、上肢血圧PRは、正確な下肢血圧よりも高くなる。そこで、制御部70は、上肢高さHRYに基づいて、上肢血圧PRを補正する。具体的には、制御部70は、下記(24)式により最終的な上肢血圧PRXを算出する。
【0077】
PRX=PR−HRY×7/10…(24)
本実施形態の脈波測定装置1は、第1実施形態の(1)〜(8)の効果、および以下の効果を奏する。
【0078】
(9)脈波測定装置1は、肘掛16が座部13に対して回転する。このため、被測定者は、肘掛16が座部13に対して回転しない構成と比較して、より楽な姿勢で測定を行うことができる。
【0079】
(その他の実施形態)
本脈波測定装置1は、上記第1実施形態および第2実施形態以外の実施形態を含む。以下、本脈波測定装置1のその他の実施形態としての変形例を示す。なお、以下の各変形例は、互いに組み合わせることもできる。
【0080】
・第1実施形態の脈波測定装置1は、カフ42の背もたれ高さ方向Yの中央部分40Cを基準として上肢測定部40の高さ位置および上肢傾き角度を算出する。ただし、脈波測定装置1の構成はこれに限られない。例えば、変形例の脈波測定装置1は、カフ42の背もたれ高さ方向Yの中央部分40Cの上端部または下端部を基準として上肢測定部40の高さ位置および傾き角度を算出している。要するに、上肢測定部40の高さ位置および傾き角度の基準とする位置は、カフ42のうちのいずれの位置に変更することもできる。
【0081】
・第2実施形態の脈波測定装置1は、カフ42の肘掛高さ方向Vの中央部分40Dを基準として上肢測定部40の高さ位置および傾き角度を算出する。ただし、脈波測定装置1の構成はこれに限られない。例えば、変形例の脈波測定装置1は、カフ42の肘掛高さ方向Vの上端部または下端部を基準として上肢測定部40の高さ位置および傾き角度を算出する。要するに、上肢測定部40の高さ位置および傾き角度の基準とする位置は、カフ42のうちのいずれの位置に変更することもできる。
【0082】
・第2実施形態の上肢測定部40は、手首の脈波を測定する。ただし、脈波測定装置1の構成はこれに限られない。例えば、変形例の上肢測定部40は、指の脈波を測定する。
・各実施形態の脈波測定装置1は、カフ52のオットマン高さ方向Wの中央部分50Cを基準として下肢測定部50の高さ位置および傾き角度を算出する。ただし、脈波測定装置1の構成はこれに限られない。例えば、変形例の脈波測定装置1は、カフ52のオットマン高さ方向Wの中央部分50Cの上端部または下端部を基準として下肢測定部50の高さ位置および傾き角度を算出している。要するに、下肢測定部50の高さ位置および傾き角度の基準とする位置は、カフ52のうちのいずれの位置に変更することもできる。
【0083】
・各実施形態の脈波測定装置1は、各下肢測定部50がオットマン14に対してスライドする。ただし、脈波測定装置1の構成はこれに限られない。例えば、
図16に示される変形例の脈波測定装置1は、各下肢測定部50がオットマン114に固定される。オットマン114は、座部13に対してスライドする。
【0084】
・各実施形態の脈波測定装置1は、上肢測定部40および下肢測定部50の測定値に基づいて脈波情報を測定する。ただし、脈波測定装置1の構成はこれに限られない。例えば、
図17に示される変形例の脈波測定装置1は、心音測定部75およびマイク支持部76を有する。心音測定部75は、心音を測定するマイクを有する。マイク支持部76は、曲げることができる。被測定者は、マイク支持部76を曲げることにより、心音測定部75を心臓103に近い位置に配置して、心音を測定する。制御部70は、心音測定部75により測定された心音の第II音と、上肢測定部40および下肢測定部50の測定値とに基づいて脈波伝播速度PWVを算出する。このため、心臓103から上肢101までの間の血管、心臓103から下肢102までの間の血管壁の硬さに関する情報を得ることができる。このため、より部位を特定した診断を行うことができる。
【0085】
・
図17に示される変形例のさらなる変形例を
図18に示す。
図18に示される脈波測定装置1は、心音測定部75に胸当部77が取り付けられる。胸当部77は、心音測定部75よりも大きい。また、被測定者の胸の表面形状に沿う形状を有する。このため、被測定者は、心音測定部75を胸当部77に配置しやすい。
【0086】
・各実施形態の脈波測定装置1は、上肢測定部40および下肢測定部50の測定値に基づいて脈波情報を測定する。ただし、脈波測定装置1の構成はこれに限られない。例えば、
図19に示される変形例の脈波測定装置1は、手首電極78および足首電極79を有する。制御部70は、手首電極78および足首電極79の検出値に基づいて、心電図を測定する。制御部70は、心電図により心音の第II音を正確に測定する。このため、より正確に脈波伝播速度PWVを算出することができる。また、心音はノイズが多い。このため、心音測定部75を有し、心音を測定する脈波測定装置1において、心電図を測定することにより、心電図と対応させて心音の第II音を判定するアルゴリズムを備えることもできる。
【0087】
・各実施形態の脈波測定装置1に、
図20に示すようにマッサージ機構200を備えることもできる。この脈波測定装置1は、マッサージ機構200のマッサージにより使用者をよりリラックスさせることができる。また、血流および血管の機能を改善するマッサージを行うことができる。
【0088】
・各実施形態の脈波測定装置1のカフ42,52を上肢および下肢をマッサージするマッサージ機構として用いることもできる。具体的には、密着装置60によりカフ42,52にエアーを供給し、上肢および下肢を加圧によりマッサージする。
【0089】
・各実施形態の脈波測定装置1は、密着装置60を有する。ただし、脈波測定装置1の構成はこれに限られない。例えば、変形例の脈波測定装置1は、密着装置60を省略している。この場合、被測定者は手動のポンプでカフ42,52にエアーを供給する。
【0090】
・各実施形態の上肢測定部40は、上肢ガイド部41の内部にカフ42が配置される。ただし、上肢測定部40の構成はこれに限られない。例えば、上肢ガイド部41を省略することもできる。この場合、被測定者は、自身でカフ42を上肢に巻きつける。
【0091】
・各実施形態の下肢測定部50は、下肢ガイド部51の内部にカフ52が配置される。ただし、下肢測定部50の構成はこれに限られない。例えば、下肢ガイド部51を省略することもできる。この場合、被測定者は、自身でカフ52を上肢に巻きつける。
【0092】
・各実施形態の脈波測定装置1は、制御部70が上肢測定部40および下肢測定部50を被測定者の身長に基づいてレール12,15上を移動させる。ただし、脈波測定装置1の構成はこれに限られない。例えば、変形例の脈波測定装置1は、被測定者が上肢測定部40および下肢測定部50を被測定者の上肢および下肢の位置に合わせてレール12,15上を移動させる。
【0093】
・各実施形態の脈波測定装置1は、身長を入力するための操作部91を有する。ただし、脈波測定装置1の構成はこれに限られない。例えば、変形例の脈波測定装置1は、身長、または上肢および下肢の位置を検出するための検出体格情報検出部を有する。制御部70は、検出体格情報検出部の検出情報に基づいて上肢測定部40および下肢測定部50を移動させる。
【0094】
・各実施形態の脈波測定装置1は、上肢測定部40および下肢測定部50の移動量および回転量に基づいて高さ位置を算出する。ただし、脈波測定装置1の構成はこれに限られない。例えば、変形例の上肢測定部40および下肢測定部50は、高さセンサーを有する。高さセンサーは、水平面からの高さを検出する。この場合、脈波測定装置1は、装置本体10を寝台にすることもできる。また、脈波測定装置1は、装置本体10を省略することもできる。
【0095】
・各実施形態の圧力センサー43,53は、チューブ62に配置される。ただし、圧力センサー43,53の構成はこれに限られない。例えば、変形例の圧力センサー43,53は、カフ42,52の内部に配置される。要するに、カフ42,52の圧力変動を検出できる位置であれば、圧力センサー43,53はいずれの位置に配置することもできる。
【0096】
・各実施形態の背もたれ部傾動機構20は、各実施形態の伸縮部23の伸縮により背もたれ部11の傾き角度が変化する。ただし、背もたれ部傾動機構20の構成はこれに限られない。例えば、回転部22がモーターの回転により直接的に回転する背もたれ部傾動機構20とすることもできる。要するに、背もたれ部11の座部13に対する傾き角度を変更できる背もたれ部傾動機構であれば、いずれの背もたれ部傾動機構を採用することもできる。
【0097】
・各実施形態のオットマン傾動機構30は、各実施形態の伸縮部33の伸縮によりオットマン14の傾き角度が変化する。ただし、オットマン傾動機構30の構成はこれに限られない。例えば、回転部32がモーターの回転により直接的に回転するオットマン傾動機構30とすることもできる。要するに、オットマン14の座部13に対する傾き角度を変更できるオットマン傾動機構であれば、いずれのオットマン傾動機構を採用することもできる。
【0098】
・各実施形態の脈波測定装置1は、表示部92を有する。ただし、脈波測定装置1の構成はこれに限られない。例えば、変形例の脈波測定装置1は、表示部92を省略している。この場合、脈波測定装置1は、算出結果を他の記憶装置に出力するための情報出力部を有する。
【0099】
・第1実施形態の脈波測定装置1は、検出部80の検出値に基づいて下肢血圧PLを補正し、第2実施形態の脈波測定装置1は、上肢血圧PRおよび下肢血圧PLを補正する。ただし、脈波測定装置1はこれに限られない。例えば、変形例の脈波測定装置1は、検出部80の検出値に基づいて脈波伝播速度を補正する。
【0100】
・各実施形態の脈波測定装置1は、検出部80が測定部40,50の移動量および回転量を検出する。ただし、脈波測定装置1の構成はこれに限られない。例えば、変形例の脈波測定装置1は、制御部70からモーターへの指令値に基づいて移動量および回転量を検出する。