【実施例】
【0042】
本実施例で行った各種測定は、以下の方法に従って実施した。
色相: JOCS 2.2.1.4−1996に準拠して測定した。
酸価: JIS K−0070に準拠して測定した。
全酸価: JIS C−2101に準拠して測定した。
動粘度: JIS K−2283に準拠して測定した。
水酸基価: JIS K−0070に準拠して測定した。
【0043】
本発明で実施した合成例を以下に説明する。本発明の実施例と比較例は、以下の3つの合成例のいずれかに従って行った。
【0044】
(合成例1)
温度計、窒素導入管、攪拌機およびジムロート冷却管と容量30mLの油水分離管を取り付けた2Lの4つ口フラスコに、所定量のアルコールを仕込み、所定量の
イソ酪酸と炭素数7〜9の
飽和脂肪酸を反応器に仕込んだ。必要に応じて触媒を仕込んだ後、窒素気流下、規定の温度で反応するため反応器をマントルヒーターで加熱した。規定の温度に達した後、エステルの水酸基が3以下となるまで反応した。
【0045】
その後、反応器内を50Torrまで減圧して酸価が5mgKOH/g以下となるまで過剰の脂肪酸を留去した。85℃まで反応器を冷却した後、酸価から算出される水酸化カリウム量の1.5当量をイオン交換水で希釈して10%の水溶液を作成し、それを反応液に加えて1時間撹拌した。撹拌を止めた後、30分静置して下層に分離した水層を除去した。次に、反応液に対しての20質量%のイオン交換水を加えて85℃で10分撹拌して、15分静置した後、分離した水層を除去する操作を5回繰り返した。その後、100℃、30Torrで1時間撹拌することで脱水した。最後に、反応液に対して2質量%の活性白土を加え、80℃、30Torrの条件で1時間撹拌し、ろ過して吸着剤を除去することで所望のエステルを得た。
【0046】
(合成例2)
温度計、窒素導入管、攪拌機およびジムロート冷却管と容量30mLの油水分離管を取り付けた2Lの4つ口フラスコに、所定量のアルコールを仕込み、所定量の
イソ酪酸と炭素数7〜9の
飽和脂肪酸を反応器に仕込んだ。その後、所定量の炭素数7〜9の
飽和脂肪酸を油水分離器に仕込み、必要に応じて触媒を仕込んでから、窒素気流下、規定の温度で反応するため反応器をマントルヒーターで加熱した。規定の温度に達した後、エステルの水酸基価が3以下となるまで反応した。
その後の精製は合成例1に従って行った。
【0047】
(合成例3)
温度計、窒素導入管、攪拌機およびジムロート冷却管と容量30mLの油水分離管を取り付けた2Lの4つ口フラスコに、所定量のアルコールを仕込み、所定量の
イソ酪酸と炭素数7〜9の
飽和脂肪酸を反応器に仕込んだ。必要に応じて触媒を仕込んだ後、窒素気流下、規定の温度で反応するため反応器をマントルヒーターで加熱した。昇温の途中、水と脂肪酸の留出が始まったところから、10g/hrの流速で規定量の炭素数7〜9の
飽和脂肪酸を油水分離器に導入した。規定の温度に達した後、エステルの水酸基が3以下となるまで反応した。
その後の精製は合成例1と同じ方法で行った。
【0048】
以下に、それぞれの実施例と比較例で行った実験結果を説明する。
【0049】
(比較例1)
合成例1に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、イソノナン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、脂肪酸が反応器に戻り始めたところで165℃まで反応器の温度が低下した。その後、約1時間165℃から170℃の範囲で推移した後、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から5時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は15時間であった。
【0050】
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は60(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は2.9mgKOH/gであった。
【0051】
(実施例1−1)
合成例2に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、イソノナン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に、油水分離器にイソノナン酸を仕込んで反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から3時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は12時間であった。
【0052】
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は50(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は1.5mgKOH/gであった。
【0053】
(実施例1−2)
合成例3に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、イソノナン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、イソノナン酸を規定の流量で油水分離器に導入した。反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から2.5時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は11.5時間であった。
【0054】
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は40(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は1.6mgKOH/gであった。
【0055】
(比較例2)
合成例1に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、2−エチルヘキサン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、脂肪酸が反応器に戻り始めたところで164℃まで反応器の温度が低下した。その後、約1時間165℃から170℃の範囲で推移した後、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から6時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は18時間であった。
【0056】
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は70(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は2.7mgKOH/gであった。
【0057】
(実施例2)
合成例2に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、2−エチルヘキサン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に、油水分離器に2−エチルヘキサン酸を仕込んで反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から4時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は14時間であった。
【0058】
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は60(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は2.0mgKOH/gであった。
【0059】
(比較例3)
合成例1に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、n−ノナン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、脂肪酸が反応器に戻り始めたところで165℃まで反応器の温度が低下した。その後、約1時間165℃から170℃の範囲で推移した後、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から5時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は14時間であった。
【0060】
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は60(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は2.0mgKOH/gであった。
【0061】
(実施例3)
合成例2に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、n−ノナン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に、油水分離器にn−ノナン酸を仕込んで反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から3.5時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は11.5時間であった。
【0062】
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は50(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は1.8mgKOH/gであった。
【0063】
(比較例4)
合成例1に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、イソノナン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、脂肪酸が反応器に戻り始めたところで165℃まで反応器の温度が低下した。その後、約1時間165℃から170℃の範囲で推移した後、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から7時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は16時間であった。
【0064】
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は70(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は2.0mgKOH/gであった。
【0065】
(実施例4−1)
合成例2に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、イソノナン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に、油水分離器にイソノナン酸を仕込んで反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から4時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は12時間であった。
【0066】
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は50(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は1.8mgKOH/gであった。
【0067】
(実施例4−2)
合成例2に対し表1に示すアルコール、イソ酪酸、イソノナン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に、油水分離器にイソノナン酸を仕込んで反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から4.5時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は12.5時間であった。
【0068】
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は60(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は1.9mgKOH/gであった。
【0069】
(比較例5)
合成例1に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、イソノナン酸を反応器に仕込み、反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、脂肪酸が反応器に戻り始めたところで165℃まで反応器の温度が低下した。その後、約1時間165℃から170℃の範囲で推移した後、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から8時間後に反応器の温度が240℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は19時間であった。
【0070】
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は80(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は2.7mgKOH/gであった。
【0071】
(実施例5)
合成例2に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、イソノナン酸を反応器に仕込み、油水分離器にイソノナン酸を仕込んで反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から4.5時間後に反応器の温度が240℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は15.5時間であった。
【0072】
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は60(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は2.5mgKOH/gであった。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
表2には、各実験例における反応開始から規定の反応温度に達するまでの時間と、反応開始から反応終了までにかかった時間をまとめた。また、
図2には比較例1と実施例1における、時間−温度曲線を示した。
【0076】
実施例においては、対応する比較例に比べて、必要な反応時間が短くなり、更に色相、水酸基価も改善されていた。
【0077】
このように、本法によれば、エステル化反応の反応時に速やかに所望の反応温度に到達し、反応時間を短縮することで効率よくエステルを製造できる。