(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2樹脂が発泡性樹脂であって、第2射出充填工程の開始後に、前記金型キャビティ拡張部を、また更に所定量だけ拡張させ、前記金型キャビティ拡張部内の前記第1樹脂内に射出充填させた前記第2樹脂を発泡させる金型キャビティ第3拡張工程を備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の射出成形方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1乃至
図3を参照しながら、本発明の実施例1に係る射出成形方法を説明する。
図1(a)乃至
図1(c)は、実施例1に係る射出成形方法の成形工程の前半を示す金型の概略断面図である。
図1(a)が基材成形工程、
図1(b)が金型キャビティ第1拡張工程、
図1(c)が第1射出充填工程を示す。
図2(a)乃至
図2(c)は、実施例1に係る射出成形方法の成形工程の後半を示す金型の概略断面図である。
図2(a)が金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程の開始時、
図2(b)が金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程の完了時、
図2(c)が製品取出工程を示す。
図3(a)乃至
図3(c)は、実施例1に係る射出成形方法の各成形工程中のサンドイッチ成形品を示す概略断面図である。
図3(a)が第1射出充填工程完了後のサンドイッチ成形品、
図3(b)が金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程の開始時のサンドイッチ成形品、
図3(c)が製品冷却工程の完了後のサンドイッチ成形品を示す。
図10は、実施例1に係る射出成形方法の基材層の別の形態を示す金型の概略断面図である。
【0020】
実施例1に係る射出成形方法に用いる射出成形機は、
図1(a)に示すように、金型キャビティ9aを形成可能な固定金型2(第1金型)及び可動金型4(第2金型)と、サンドイッチ成形品9の表層の一部を形成する基材層樹脂8bを可塑化(溶融化)して金型キャビティ9a内に射出充填可能な基材層射出ユニット16と、同じく、サンドイッチ成形品9の表層の一部を形成する非発泡性の第1樹脂9bを可塑化(溶融化)して後述する金型キャビティ拡張部90a内に射出充填可能な第1射出ユニット17と、内層を形成する非発泡性の第2樹脂10bを可塑化して、同じく金型キャビティ拡張部90a内に射出充填可能な第2射出ユニット18とを備える。ここで、
図1他において、第2射出ユニット18が、固定金型2の上方に配置され、基材層射出ユニット16及び第1射出ユニット17が、固定金型2の金型キャビティ9aを形成する側の面の反対面(図面右側)に並行に配置されているが、基材層射出ユニット16、第1射出ユニット17及び第2射出ユニット18は、それぞれが、固定金型2に射出充填可能に配置されれば、並行型配置、V字型配置、W字型配列、斜め型配置及びL字型配置等の公知の配置が可能であり、3つの射出ユニットの配置について本発明に係る制約はない。市販されている後付け用の射出ユニットにより必要な射出充填量が確保できるのであれば、汎用の射出成形機にそれら後付け用の射出ユニットを追加する形態であっても良い。
【0021】
固定金型2は、ベース(図示せず)に立設された固定盤(図示せず)に取り付けられている。また、固定金型2は、基材層射出ユニット16から射出された基材層樹脂8bが金型キャビティ9a内に向けて流動する基材層樹脂流路8cと、この基材層樹脂流路8cの金型キャビティ9a内に連通されるゲート部分に設けられたゲートバルブ(樹脂遮断開放切替弁)8dと、第1射出ユニット17から射出された第1樹脂9bが金型キャビティ拡張部90a内に向けて流動する第1樹脂流路9cと、この第1樹脂流路9cの金型キャビティ拡張部90a内に連通されるゲート部分に設けられたゲートバルブ(樹脂遮断開放切替弁)9dと、第2射出ユニット18から射出された第2樹脂10bが、金型キャビティ拡張部90a内に向けて流動する第2樹脂流路10cと、この第2樹脂流路10cの金型キャビティ拡張部90a内に連通されるゲート部分に設けられたゲートバルブ10dとを有している。可動金型4は、可動盤(図示せず)に、固定金型2に対向するように取り付けられ、図示しない型開閉機構により射出成形機の長手方向(以下、型開閉方向という)に移動可能に配置されている。尚、本実施例1において、基材層樹脂流路8c、第1樹脂流路9c及び第2樹脂流路10cは、すべてホットランナーで構成されているものとする。
【0022】
固定金型2及び可動金型4は、それぞれの金型の分割面(金型分割面、パーティング面、割面と呼称されることもある)がシェアエッジ構造となっており、射出成形機の型開閉機構による型開閉動作で、金型キャビティの容積を可変させることができる。シェアエッジ構造とは、くいきり構造、あるいはインロー構造等と呼称されることもあり、金型の分割面を形成する嵌合部の構造として一般的に知られた構造であり、型開閉方向に伸びて、互いに摺動しながら挿脱することのできる嵌合部を、固定金型と可動金型の間に形成することによって、金型キャビティ内に射出充填された溶融樹脂が、所定量、金型を型開きさせても金型外に漏れ出すのを防止することができる構造である。
【0023】
本実施例1においては、型締めにより、固定金型2及び可動金型4の間に形成される金型キャビティ9aに対して、金型を型開きさせ、同金型キャビティ9a内で成形された基材層9g及び可動金型4の間に新たに形成される空間を、その型開き量に依らず、金型キャビティ拡張部90aと呼称するものとする。また、この金型キャビティ拡張部90a内で成形させる成形体を、射出充填させる樹脂に依らず、サンドイッチ成形部9hと呼称するものとする。
【0024】
実施例1に係る射出成形方法は、
図1(a)に示すように、型締めにより、固定金型2及び可動金型4との間に形成される金型キャビティ9a内に、サンドイッチ成形品9の表層の一部を形成する基材層樹脂8bを射出充填させて、基材層9gを成形する基材成形工程により成形サイクルが開始される。具体的には、可動金型4を図示しない型開閉機構により固定金型2に型閉じさせた後、型締力を付与させる。次に、型締力を付与させた状態において、基材層樹脂流路8cのゲートバルブ8dを開放させて、基材層射出ユニット16から基材層樹脂流路8cを介して、非発泡性の基材層樹脂8bを金型キャビティ9aに射出充填させる。このまま、金型キャビティ9a内の基材層樹脂8bを冷却固化させ、金型キャビティ9a内で基材層9gを成形させる。
【0025】
基材成形工程による基材層9gの成形は、一般的な射出成形方法によるため、詳細な説明は省略するが、金型キャビティ9a内が基材層樹脂8bで略100%満たされる、所謂、フルパック状態で行われる。また、基材成形工程において、必要あれば、射出圧縮方法や射出プレス成形方法、あるいは、基材層樹脂8bを発泡性の樹脂とし、可動金型4を微小型開きさせて、金型キャビティ9a内に射出充填させた基材層樹脂8bを発泡させる拡張発泡成形方法を行っても良い。後述するように、最初に成形される基材層樹脂8bからなる基材層9gには、サンドイッチ成形部9hが積層され、サンドイッチ成形品9の表層となるため、サンドイッチ成形部9hの表層となる第1樹脂9bとの融着(固着)強度が十分に得られる樹脂が採用されることが好ましい。この基材層9gは、サンドイッチ成形品9の表面及び裏面(意匠面及び非意匠面)のいずれの面であっても良い。このように、この基材層9gをサンドイッチ成形品9の表面及び裏面のいずれかの表層とすることにより、サンドイッチ成形品9において、表層の厚みが部分的に、すなわち、表面と裏面とで異なるように成形することができる。
【0026】
また、本実施例1においては、説明及び図を簡単にするため、基材層9gを平板状とし、且つ、後述するサンドイッチ成形部9hが、型開閉方向と直交する面全体に積層されるものとしたが、当然ながら、実際の成形において、基材層9gが、固定金型2側及び可動金型4の少なくとも一方の側に凹凸を有する所定の形状であっても良い。更に、
図10に示すように、基材層9gが、サンドイッチ成形品の表側面及び裏面側のいずれか一方の面の部分的な厚肉の表層、例えば、取付部位等となるような形状であっても良い。このように、サンドイッチ成形部9hに対して、基材層9gの配置や形状に特に制約はなく、サンドイッチ成形品の表側と裏側とだけでなく、基材層9gをサンドイッチ成形品の表層の一部とすることにより、任意で、表層の厚みを部分的に異なるように成形することができる。
【0027】
本実施例1の説明に戻る。基材成形工程後、
図1(b)に示すように、可動金型4を図示しない型開閉機構により固定金型2から距離α(アルファ)型開きさせ、固定金型2側に保持させた基材層9g及び可動金型4の間に、金型キャビティ拡張部90aを形成させる。この金型キャビティ第1拡張工程において、第1樹脂流路9cのゲートバルブ9dと、第2樹脂流路10cのゲートバルブ10dとが、金型キャビティ拡張部90a内に開放可能な状態となる(金型キャビティ第1拡張工程)。
【0028】
本実施例1においては、基材成形工程後、基材層9gを固定金型2に保持させた状態で金型キャビティ第1拡張工程を行うものとしたが、基材層9gを可動金型4に保持させた状態で金型キャビティ第1拡張工程を行っても良い。この場合、金型キャビティ拡張部90aは、可動金型4側に保持された基材層9g及び固定金型2の間に形成され、第1樹脂流路9cのゲートバルブ9dと、第2樹脂流路10cのゲートバルブ10dとが、金型キャビティ拡張部90a内に開放可能に配置される。そして、金型キャビティ9a及び金型キャビティ拡張部90aの重複位置に、これらのゲートバルブが配置される場合は、基材成形工程における金型キャビティ9a内への基材層樹脂8bの射出充填時に、これらのゲートバルブを閉じ、それぞれの樹脂流路への基材層樹脂8bの逆流を防止する。
【0029】
本実施例1の説明に戻る。金型キャビティ第1拡張工程の後、
図1(c)に示すように、第1樹脂流路9cのゲートバルブ9dを開放させて、第1射出ユニット17から第1樹脂流路9cを介して、第1樹脂9bを金型キャビティ拡張部90a内に射出充填させる(第1射出充填工程)。この第1射出充填工程は、前述したサンドイッチ成形部9hの表層のなる第1樹脂9bを射出充填させる工程である。第2樹脂流路10cのゲートバルブ10dは閉じられており、金型キャビティ拡張部90a内に射出充填させた第1樹脂9bが第2樹脂流路10cに逆流することはない。尚、この第1射出充填工程は、金型キャビティ第1拡張工程の後ではなく、金型キャビティ第1拡張工程による金型キャビティ拡張部90aの容積拡張に連動させて行わせても良い。また、この金型キャビティ第1拡張工程中及び同工程後において、第1射出充填工程の間、可動金型4には第1射出充填工程による射出圧力に対抗する型締力が維持される。
【0030】
ここで、金型キャビティ第1拡張工程における型開き量である距離αは、この金型キャビティ第1拡張工程の距離αの型開き動作において形成される金型キャビティ拡張部90aが、第1射出充填工程により、金型キャビティ拡張部90aに射出充填される第1樹脂9bで略100%満たされる値とする。すなわち、第1射出充填工程も、金型キャビティ拡張部90a内が第1樹脂9bで略100%満たされるフルパック状態で行われる。これにより、金型キャビティ拡張部90aに射出充填させた第1樹脂9b(サンドイッチ成形部9h)は、
図3(a)に示すように、金型キャビティ拡張部90aの意匠(金型内面)との接触面(外周面)及び基材層9gとの接触面に形成されるスキン層9eと、その内部がまだ溶融状態の溶融層9fで構成される状態となる。
【0031】
また、基材成形工程に連続する第1射出充填工程において、基材層9gに連続する金型キャビティ拡張部90aに、サンドイッチ成形部9hの表層用樹脂として射出充填させる第1樹脂9bに対して、先に説明したように、基材層9gを形成する基材層樹脂8bに、第1樹脂9bとの融着(固着)強度が十分に得られる樹脂を採用することにより、基材層9gとサンドイッチ成形部9hとの融着(固着)性に問題はない。更に、第1射出充填工程後のサンドイッチ成形部9hの冷却固化収縮を鑑み、第1射出充填工程では、金型キャビティ拡張部90aの容積より、少なくとも冷却固化収縮分だけ多く第1樹脂9bを射出充填させる方が、基材層9gとサンドイッチ成形部9hのスキン層9eとの融着(固着)強度、及び、サンドイッチ成形部9hのスキン層9eへの高い転写性を確保する上で好ましい。
【0032】
次に、第1射出充填工程の完了後に、
図2(a)に示すように、金型キャビティ拡張部90aの容積を、金型キャビティ9aの容積と合わせて製品容積になるまで拡張させる(金型キャビティ第2拡張工程)。具体的には、
図1(c)に示す状態(型開き量:距離α)から、可動金型4を図示しない型開閉機構により固定金型2から、更に距離β(ベータ)まで型開きさせる。そして、この金型キャビティ第2拡張工程の開始後に、第2樹脂流路10cのゲートバルブ10dを開放させ、第2射出ユニット18から第2樹脂流路10cを介して、内層を形成する非発泡性の第2樹脂10bをサンドイッチ成形部9h内に射出充填させる(第2射出充填工程)。この第2射出充填工程の開始時における内層用の第2樹脂10bの流動状態を
図3(b)に示す。
【0033】
金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程は、金型キャビティ第2拡張工程に連動させて、すなわち、金型キャビティ拡張部90aの容積拡張率に連動させて、第2射出充填工程において射出充填させる内層用の第2樹脂10bの射出充填量が制御されても良い。また、逆に、第2射出充填工程に連動させて、すなわち、内層用の第2樹脂10bの射出充填量に連動させて、金型キャビティ第2拡張工程における金型キャビティ拡張部90aの容積拡張率が制御されても良いし、双方が連動するように制御され、第2射出充填工程による第2樹脂10bの射出充填がフルパック状態で行われれば良い。また、この金型キャビティ第2拡張工程中及び同工程後において、第2射出充填工程の間、可動金型4には、第2射出充填工程による射出圧力に対抗する型締力が維持される。
【0034】
このように、金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程が連動制御されることにより、第2樹脂流路10cのゲートバルブ10dと、金型キャビティ拡張部90aの意匠(金型内面)及び基材層9gとの接触面に形成された、サンドイッチ成形部9hのスキン層9eとを密着させた状態を維持させることができる。これにより、ゲートバルブ10d部分及びサンドイッチ成形部9hのスキン層9eにおける樹脂反転不良の発生を防止しつつ、表層用の第1樹脂9bのスキン層9eを内層用の第2樹脂10bの射出圧力により貫通させて、同樹脂を第1樹脂9b内に射出充填させることができる。更に、金型キャビティ拡張部90aの容積拡張により、第1樹脂9b内への第2樹脂10bの射出充填抵抗を、金型キャビティ内における溶融樹脂の自由流動と同程度まで軽減させることができ、サンドイッチ成形部9hの容積に対する内層用の第2樹脂10bの充填比率の向上を図ることができる。
【0035】
また、サンドイッチ成形部9hの外周面に形成されたスキン層9eは、金型キャビティ拡張部90aの意匠(金型内面)や、冷却固化させた基材層9gの可動金型4側の面と接触により瞬時に冷却固化された薄い層である。このスキン層9eは、サンドイッチ成形部9h内に射出充填させる第2樹脂10bの樹脂反転不良を防止できる強度を有するものの、完全に固化している層ではなく、その温度が樹脂軟化点温度、あるいは、ガラス固化温度以上で、冷却固化が進行中の、層方向にゴム状の弾性挙動を示す薄膜のような層である。そのため、金型キャビティ第2拡張工程における金型キャビティ拡張部90aの容積拡張(サンドイッチ成形部9hの体積拡張)に追従可能である。一方、サンドイッチ成形部9hのスキン層9eに連続する、溶融状態部分を含む第1樹脂9b部分は、スキン層9eから進行する冷却固化により、最終的には、サンドイッチ成形部9hの表層となる。
【0036】
ここで、第1射出充填工程と同様に、サンドイッチ成形部9hの冷却固化収縮を鑑み、金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程の連動制御においては、両工程を略同時に完了させるか、金型キャビティ第2拡張工程の完了後、第2射出充填工程を完了させることが好ましい。また、第2射出充填工程においても、金型キャビティ第2拡張工程後の金型キャビティ拡張部90aの容積より、少なくともそれら冷却固化収縮分だけ多く第2樹脂10bを射出充填させる方が、基材層9gと、サンドイッチ成形部9hのスキン層9eとの融着(固着)強度、及び、サンドイッチ成形部9hのスキン層9e及び基材層9gへの高い転写性を確保する上でより好ましい。
【0037】
金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程の完了後、
図2(b)に示すように、第2樹脂流路10cのゲートバルブ10dを閉じ、金型キャビティ9a及び金型キャビティ拡張部90a内の基材層9g及びサンドイッチ成形部9hに所定の型締力を付与させた状態で、これらを冷却固化させると、固定金型2側の表層(基材層9g+サンドイッチ成形部9hの表層)と、可動金型4側の表層(サンドイッチ成形部9hの表層)との厚みが異なるサンドイッチ成形品9が成形される(製品冷却固化工程)。この製品冷却固化工程の完了後のサンドイッチ成形品9を
図3(c)に示す。図の関係上、冷却固化状態の内層用の第2樹脂10bを溶融状態と同じ斜線で示す。
【0038】
サンドイッチ成形品9の冷却固化が完了した後、
図2(c)に示すように、可動金型4を図示しない型開閉機構により固定金型2から型開きさせ、図示しない製品取出手段によりサンドイッチ成形品9を射出成形機外へ搬出させ、成形サイクルが終了する。
【0039】
以上説明したように、
図1(a)乃至
図2(c)までの工程を繰り返すことにより、固定金型2側の表層(基材層9g+サンドイッチ成形部9hの表層)と、可動金型4側の表層(サンドイッチ成形部9hの表層)の厚みが異なるサンドイッチ成形品9を連続して成形させることができる。また、サンドイッチ成形部の容積に対する内層用の第2樹脂の充填比率の向上を図ることができるため、表層を薄く制御するのに好適である。実施例1においては、サンドイッチ成形品9の構成上、基材層9g+サンドイッチ成形部9hの表層で構成される固定金型2側の表層の方が、サンドイッチ成形部9hの単一の表層で構成される可動金型4側の表層より厚いサンドイッチ成形品、すなわち、第2樹脂10bからなる内層が、型開閉方向の可動金型4側に偏芯したサンドイッチ成形品となる。
【0040】
本発明に係る射出成形方法においては、サンドイッチ成形品9の表層を異なる樹脂により形成させることができる。これにより、基材層9gからなる表層とサンドイッチ成形部9hの表層とに異なる機能を持たせることが可能となる。具体的には、サンドイッチ成形部9hの表層側を意匠面とし、軟質系樹脂材料を採用することによりソフト感を付与させる場合に、非意匠面側の表層となる基材層9gに同じ軟質系樹脂を使用して、取付剛性を確保することは難しい。しかしながら、非意匠面側の表層となる基材層9gに、意匠面側の表層に採用した樹脂よりも、高い剛性を有する樹脂を採用すれば、非意匠面側の表層の厚肉化を抑えながら、必要な取付剛性を確保することが可能となる。また、サンドイッチ成形品において、表層の一部の色を変えたい場合、基材層9gに、サンドイッチ成形部9hの表層と同種類の樹脂であっても色違いの樹脂を採用すれば、サンドイッチ成形品の表裏が色違い、あるいは、
図10に示すように、サンドイッチ成形品の表裏いずれかの面が部分的に色違いのサンドイッチッチ成形品が成形できる。同様に、表層の一部の機能を変えたい場合、基材層9gに、サンドイッチ成形部9hの表層と異なる機能を有する樹脂を採用すれば、サンドイッチ成形品の表裏が、あるいは、
図10に示すように、サンドイッチ成形品の表裏いずれかの面が、部分的に異なる機能を有するサンドイッチッチ成形品、例えば、表層の一部にのみ、すべり止め機能や、静電気防止の導通性等の機能を持たせたサンドイッチ成形品の成形が可能である。
【0041】
また、基材成形工程、第1射出充填工程及び第2射出充填工程における射出充填がフルパック状態で行われるため、このサンドイッチ成形品9の表層は、表裏両面(固定金型2側及び可動金型4側)共に、金型キャビティ9aの意匠の高い転写性が確保され、表層用の第1樹脂9b内へ内層用の第2樹脂10bを射出充填させる際の樹脂反転不良の発生も防止できる。更に、表層用の第1樹脂9b及び内層用の第2樹脂10bはそれぞれ独立したゲート(ゲートバルブ)から金型キャビティ9aや金型キャビティ拡張部90a内に射出充填させるため、2種類の樹脂を層流にするミキシングノズル等が不要であり、内層用の第2樹脂10bの射出圧力で、表層用の第1樹脂9bのスキン層9eを貫通させるため、内層用の第2樹脂10b用の特殊なゲート構造やゲートバルブ等も不要である。したがって、これらゲート部やゲート部に連通する樹脂流路の配置の制約が少なく、金型の設計が容易となる。
【実施例2】
【0042】
次に、
図4及び
図5を参照しながら、本発明の実施例2に係る射出成形方法を説明する。
図4(a)乃至
図4(c)は、実施例2に係る射出成形方法の金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程を示す金型の概略断面図である。
図4(a)が金型キャビティ第2拡張工程、
図4(b)が第2射出充填工程の開始時、
図4(c)が第2射出充填工程の完了時を示す。
図5(a)乃至
図5(e)は、実施例2に係る射出成形方法の金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程他の各成形工程中のサンドイッチ成形品を示す概略断面図である。
図5(a)が第1射出充填の完了後のサンドイッチ成形品、
図5(b)が金型キャビティ第2拡張工程中のサンドイッチ成形品、
図5(c)が第2射出充填工程開始時のサンドイッチ成形品、
図5(d)が第2射出充填工程の完了時のサンドイッチ成形品、
図5(e)が製品冷却工程の完了後のサンドイッチ成形品を示す。
を示す。
【0043】
実施例2に係る射出成形方法が実施例1に係る射出成形方法と異なる点は、第1樹脂が発泡性の樹脂である点と、この点に起因して、金型キャビティ第1拡張工程及び第2射出充填工程の実施タイミングが若干異なる点である。これらの点以外は、実施例1に係る射出成形方法と基本的に同じであるため、その詳細な説明は省略、又は、実施例1を引用して説明し、相違点についてのみ詳細に説明する。また、金型及び射出成形機においても、非発泡性の第1樹脂9bが発泡性の第1樹脂9b’に変更される以外は実施例1において説明したものと基本的に同じものを用いることができるため、説明を省略する。尚、この非発泡性の第1樹脂9b及び発泡性の第1樹脂9b’の差異に起因して、実施例1の説明と区別する対象については、実施例1と同じ符号に”’(アポストロフィ)”を付して区別するものとする。
【0044】
ここで、本実施例2においては、第1樹脂9b’が化学発泡剤を含む発泡性の樹脂であることを前提に説明する。第1樹脂9b’が物理発泡剤を含む発泡性の樹脂であっても良いが、その場合、表層用の第1樹脂9b’に適宜、物理発泡剤を混入させるための構成要件が、金型、あるいは、射出成形機に必要となる。しかしながら、これらの構成要件は本発明に直接関係ないため、その説明は省略する。
【0045】
実施例2に係る射出成形方法は、まず、実施例1に係る射出成形方法と同様の方法により基材成形工程を行い、金型キャビティ9a内で基材層9gを成形させる。また、同じく、実施例1と同様の方法により、金型キャビティ第1拡張工程及び第1射出充填工程を行い、固定金型2側に保持させた基材層9g及び可動金型4の間に金型キャビティ拡張部90aを形成させ、第1射出ユニット17から、発泡性の第1樹脂9b’を金型キャビティ拡張部90a内に射出充填させる(第1射出充填工程)。これら工程の説明及び図示は省略する。
【0046】
ここで、一般的なサンドイッチ成形品の射出成形方法では、発泡セルのスキン層への表出等の問題で、表層用に発泡性の樹脂材料は採用されることが少ない。同様に、表層の一部となる基材層9gを成形させる基材成形工程において、あえて発泡性の樹脂を採用する必然性はない。しかしながら、実施例1と同様に、基材成形工程における基材層樹脂8bの射出充填をフルパック状態で行わせることにより、例え、基材層樹脂8bが発泡性の樹脂であっても、金型キャビティ9a内に射出充填させた基材層樹脂8b(基材層9g)の略全面に型締力を略均一に付与させて、基材層樹脂8b内での発泡セルの発生及びスキン層形成時における発泡セルのスキン層への表出を抑制させ、発泡性の樹脂であっても、非発泡性の樹脂と同様に、表層用の樹脂として採用することができる。また、基材成形工程において、所定の型締力を付与させた状態で冷却固化させれば、発泡ガスは基材層9g内に圧縮状態で封じ込められ、発泡ガスや発泡セルが成形後の基材層9gから表出する虞はない(未発泡状態のまま冷却固化される)。また、本実施例2においては、基材層9gを発泡層のない成形体(表層)としたが、実施例1において説明したように、基材層成形工程において、基材層樹脂8bを発泡させる拡張発泡成形方法を行って、基材層9gを、発泡層を内包する発泡成形体(表層)とすることも可能である。一方、上記のような、発泡性の樹脂を採用したフルパック状態での射出充填は、サンドイッチ成形部9h’の表層に発泡性の第1樹脂9b’を採用する場合にも有効である。
【0047】
すなわち、第1射出充填工程においても、金型キャビティ拡張部90cへの発泡性の第1樹脂9b’の射出充填をフルパック状態で行わせるため、金型キャビティ拡張部90c内の第1樹脂9b’(サンドイッチ成形部9h’)内での発泡セルの発生及びスキン層9e’形成時における発泡セルのスキン層9e’への表出を抑制させることができる。そのため、
図5(a)に示すように、第1射出充填工程の完了後、サンドイッチ成形部9h’は、発泡セルが表出していないスキン層9e’と、その内部が、発泡セルの発生が抑制された、まだ溶融状態の第1樹脂9b’とで構成される状態である。
【0048】
本実施例2の第1射出充填工程における、第1樹脂9b’内での発泡セルの発生及び発泡セルのスキン層9e’への表出をより確実に抑制させるため、金型キャビティ9aや金型キャビティ拡張部90c内を、空気、窒素等の加圧ガスを注入することにより、発泡性の第1樹脂9b’の発泡膨張圧力以上の圧力で予め与圧させ、その後、発泡性の第1樹脂9b’を射出充填させる、所謂、ガス・カウンター・プレッシャー法を併用して採用しても良い。
【0049】
次に、
図4(a)に示すように、第1射出充填工程の開始後(すなわち、第1射出充填工程の途中、又は、第1射出充填工程の完了後)に、金型キャビティ拡張部90aの容積を、金型キャビティ9aの容積と合わせて製品容積になるまで拡張させ、金型キャビティ拡張部90a内の、溶融状態の発泡性の第1樹脂9b’(サンドイッチ成形部9h’)を発泡させる(金型キャビティ第2拡張工程)。具体的には、実施例1の
図1(c)に示す状態(型開き量:距離α)から、可動金型4を図示しない型開閉機構により固定金型2から、更に距離β(ベータ)まで型開きさせる。
【0050】
この金型キャビティ第2拡張工程により、サンドイッチ成形部9h’のスキン層9e’は、スキン層9e’に連続する、発泡セルの発生が抑制された、まだ溶融状態の第1樹脂9b’側へ冷却固化が進行し、その厚みをわずかに増して(0.1〜0.5mm程度)、最終的にサンドイッチ成形部9h’の表層となる(未発泡状態)。説明上、以後も、このサンドイッチ成形部9h’の表層をスキン層9e’と呼称する。一方、サンドイッチ成形部9h’のスキン層9e’内部の、発泡セルの発生が抑制された、まだ溶融状態の第1樹脂9b’は、その略全部において発泡セルが発生・成長する。その結果、サンドイッチ成形部9h’は、
図5(b)に示すように、金型キャビティ拡張部90aの意匠(金型内面)及び基材層9gとの接触面に形成されるスキン層9e’(表層)及び同スキン層9e’に連続する、発泡セルを含む発泡層9f’とで構成される状態となる。
【0051】
次に、第1射出充填工程の完了後で、かつ、金型キャビティ第2拡張工程の開始後(すなわち、金型キャビティ第2拡張工程の途中、又は、金型キャビティ第2拡張工程の完了後)に、
図4(b)に示すように、第2樹脂流路10cのゲートバルブ10dを開放させ、第2射出ユニット18から第2樹脂流路10cを介して、内層を形成する非発泡性の第2樹脂10bをサンドイッチ成形部9h’(表層用の第1樹脂9b’)内に射出充填させる(第2射出充填工程)。この第2射出充填工程の開始時における内層用の第2樹脂10bの流動状態を
図5(c)に示す。
【0052】
ここで、本実施例2に係る射出成形方法の第1射出充填工程及び金型キャビティ第2拡張工程において成形させたサンドイッチ成形部9h’内の発泡層9f’は、実施例1に係る射出成形方法の第1射出充填工程において、フルパック状態で金型キャビティ拡張部90a内に射出充填させた非発泡性の第1樹脂9bに対して、その強度及び密度が低い。そのため、
図5(c)にも示すように、サンドイッチ成形部9h’のスキン層9e’をその射出圧力で貫通させた内層用の第2樹脂10bは、そのまま、その射出圧力と樹脂流動により、発泡層9f’内の発泡セル内の発泡ガスを圧縮しながら、発泡セル内に充填され、又は、発泡層9f’の強度及び密度が低い部位から順次、発泡セルを破壊しながら、第1樹脂9b’に代わって置換されていく。一方、サンドイッチ成形部9h’のスキン層9e’が、その厚みをわずかに増してサンドイッチ成形部9h’の表層(未発泡状態)となることは先に説明したとおりである。
【0053】
この、発泡層9f’が内層用の第2樹脂10bに置換される工程をもう少し詳細に説明する。化学発泡剤を使用した場合、形成された発泡層内の発泡セル内の発泡ガス圧力は、化学発泡剤の種類や成形条件により相違するが、一般的に0.3〜0.5MPa(樹脂温度200℃)とされている。これに対して、射出充填樹脂圧力(射出圧力)は、樹脂の種類や成形条件により相違するが、一般的に30MPa〜50MPa、あるいは、それ以上とされている。
【0054】
先に説明した第2射出充填工程においては、このような発泡層9f’内の発泡セル内の発泡ガス圧力と、内層用の第2樹脂10bの射出充填圧力との大きな圧力差により、第2樹脂10bのサンドイッチ成形部9h’内への射出充填時に、発泡セル内の発泡ガスがその射出充填抵抗を増加させる要因となることはなく、発泡セル内のほとんどの発泡ガスは、製品品質に全く影響しない程度の容積まで容易に圧縮され、内層用の第2樹脂10b内に残留する。また、ごく一部が、破壊された発泡セルの残骸と共に、第2樹脂10b中に再融解され、第2樹脂10b中に取り込まれたまま冷却固化され、発泡ガスとしては存在しなくなる。
【0055】
その結果、使用する樹脂の組み合わせや、製品形状及び成形条件により、
図5(d)に示すように、サンドイッチ成形部9h’の発泡層9f’の容積(発泡層9f’が発泡層でない溶融層である場合に対する、発泡層9f’の発泡セルによる密度低下分、又は、発泡倍率分)を略完全に、内層用の第2樹脂10bに置換させることが可能となる。そのため、発泡層9f’の容積(密度低下分、又は、発泡倍率分)から、サンドイッチ成形部9h’の未発泡部分の容積、すなわち、サンドイッチ成形部9h’の表層の厚みを所定精度で制御することが可能になる。一方、サンドイッチ成形品9’の表面及び裏面のいずれ一方の表層となる基材層9gは、型開閉方向の固定金型2側に、任意の形状で、且つ、任意の肉厚で成形させることが可能であるため、本実施例2に係る射出成形方法においては、サンドイッチ成形品において、表層の厚みが部分的に異なるように成形することができるだけでなく、それぞれの表層の厚みを所定精度で制御することが可能となる。
【0056】
また、サンドイッチ成形部9h’の発泡層9f’の容積を略完全に、内層用の第2樹脂10bに置換させることが困難で、サンドイッチ成形部9h’の表層が、未発泡の第1樹脂9b’及び発泡層9f’の外周面部分の一部が混在する場合であっても、発泡層9f’の容積から、サンドイッチ成形部9h’の表層の厚みを所定精度で推測することは可能である。
【0057】
金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程の完了後、
図4(c)に示すように、金型キャビティ9a及び金型キャビティ拡張部90a内の基材層9g及びサンドイッチ成形部9h’に所定の型締力を付与させた状態で、これらを冷却固化させると、サンドイッチ成形品9’が成形される(製品冷却固化工程)。この製品冷却固化工程の完了後のサンドイッチ成形品9’を
図5(e)に示す。図の関係上、冷却固化状態の内層用の第2樹脂10bを溶融状態と同じ斜線で示す。
【0058】
サンドイッチ成形品9’の冷却固化が完了した後、図示はしていないが、可動金型4を図示しない型開閉機構により、固定金型2から型開きさせ、図示しない製品取出手段によりサンドイッチ成形品9’を射出成形機外へ搬出させ、成形サイクルが終了する。
【0059】
以上説明したように、実施例1と同様の基材成形工程、金型キャビティ第1拡張工程及び第2射出充填工程の後、
図4(a)乃至
図4(c)に至る工程を繰り返すことにより、固定金型2側の表層(基材層9g+サンドイッチ成形部9h’の表層)と、可動金型4側の表層(サンドイッチ成形部9h’の表層)の厚みが異なるサンドイッチ成形品9’を連続して成形させることができる。
【0060】
このように、実施例2に係る射出成形方法は、第2射出充填工程において、強度及び密度が低い、サンドイッチ成形部9h’の発泡層9f’に内層用の第2樹脂10cを射出充填させるため、実施例1のように、表層用に非発泡性の第1樹脂9bを採用した場合に対して、内層用の第2樹脂10cの射出充填抵抗を更に低下させることができる。これにより、内層用の第2樹脂10cによる樹脂反転不良を防止しつつ、サンドイッチ成形部9h’の容積に対する内層用の第2樹脂10cの充填比率の更なる向上を図ることができるため、表層を薄く制御するのに更に好適である。また、サンドイッチ成形品の表面と裏面とで、それぞれの表層の厚みが異なるように成形することができるだけでなく、それぞれの表層の厚みを所定精度で制御することが可能となる。
【実施例3】
【0061】
次に、
図6及び
図7を参照しながら、本発明の実施例3に係る射出成形方法を説明する。
図6(a)及び
図6(b)は、実施例3に係る射出成形方法の金型キャビティ第2拡張工程、第2射出充填工程及び金型キャビティ第3拡張工程を示す金型の概略断面図である。
図6(a)が金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程の完了時、
図6(b)が金型キャビティ第3拡張工程を示す。
図7(a)乃至
図7(c)は、実施例3に係る射出成形方法の金型キャビティ第2拡張工程、第2射出充填工程及び金型キャビティ第3拡張工程他の各成形工程中のサンドイッチ成形品を示す概略断面図である。
図7(a)が金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程完了時のサンドイッチ成形品、
図7(b)が金型キャビティ第3拡張工程中のサンドイッチ成形品、
図7(c)が製品冷却工程の完了後のサンドイッチ成形品を示す。
【0062】
実施例3に係る射出成形方法が実施例1に係る射出成形方法と異なる点は、第2樹脂が発泡性の樹脂である点と、この点に起因して、第2射出充填工程の開始後に、金型キャビティ拡張部を更に所定量だけ拡張させる金型キャビティ第3拡張工程を備える点である。これらの点以外は、実施例1に係る射出成形方法と基本的に同じであるため、その詳細な説明は省略、又は、実施例1を引用して説明し、相違点についてのみ詳細に説明する。また、金型及び射出成形機においても、非発泡性の第2樹脂10bが発泡性の第2樹脂10b’に変更される以外は実施例1において説明したものと基本的に同じものを用いることができるため、説明を省略する。尚、この非発泡性の第2樹脂10b及び発泡性の第2樹脂10b’の差異に起因して、実施例1の説明と区別する対象については、実施例1と同じ符号に”’(アポストロフィ)”を付して区別するものとする。
【0063】
ここで、本実施例3においては、第2樹脂10b’が化学発泡剤を含む発泡性の樹脂であることを前提に説明する。第2樹脂10b’が物理発泡剤を含む発泡性の樹脂であっても良いが、その場合、表層用の第2樹脂10b’に適宜、物理発泡剤を混入させるための構成要件が、金型、あるいは、射出成形機に必要となる。しかしながら、これらの構成要件は本発明に直接関係ないため、その説明は省略する。
【0064】
実施例3に係る射出成形方法は、まず、実施例1に係る射出成形方法と同様の方法により基材成形工程を行い、金型キャビティ9a内で基材層9gを成形させる。また、同じく、実施例1と同様の方法により、金型キャビティ第1拡張工程及び第1射出充填工程を行い、固定金型2側に保持させた基材層9g及び可動金型4の間に金型キャビティ拡張部90aを形成させ、再び、第1射出ユニット17から、非発泡性の第1樹脂9bを金型キャビティ拡張部90a内に射出充填させる(第1射出充填工程)。これら工程の説明及び図示は省略する。
【0065】
次に、実施例1と同様の方法により、金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程を連動制御にて行わせる。ここで、本実施例3の金型キャビティ第2拡張工程においては、金型キャビティ拡張部90aの容積を、金型キャビティ9aの容積と合わせて製品容積になるまで拡張させず、製品容積未満までの拡張に留める。この時の型開き量をβ’(β’<β)とする。このようにして、
図6(a)に示すように、金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程を完了させる。
図6(a)は、本実施例3において、実施例1の
図2(b)に相当する状態である。
【0066】
尚、実施例1と同様に、金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程が連動制御され、第2射出充填工程による第2樹脂10b’の射出充填がフルパック状態で行われるため、サンドイッチ成形部9h’内に射出充填させた内層用の第2樹脂10b’は、この段階においては未発泡状態である。金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程の完了時のサンドイッチ成形品9’(基材部9g+サンドイッチ成形部9h’)を
図7(a)に示す。
図7(a)は、本実施例3において、実施例1の
図3(b)に示す、内層用の第2樹脂10bをサンドイッチ成形部内に射出充填する第2射出充填工程の開始状態が進行し、同工程が完了した状態に相当する。
【0067】
次に、
図6(b)に示すように、第2射出充填工程の開始後(すなわち、第2射出充填工程の途中、又は、第2射出充填工程の完了後)に、金型キャビティ拡張部90aの容積を、金型キャビティ9aの容積と合わせて製品容積になるまで拡張させ、サンドイッチ成形部9h’内の発泡性の第2樹脂10b’を発泡させる(金型キャビティ第3拡張工程)。具体的には、
図6(a)に示す状態(型開き量:距離β’)から、可動金型4を図示しない型開閉機構により固定金型2から、更に距離β(ベータ)まで型開きさせる。これにより、サンドイッチ成形部9h’は、
図7(b)に示すように、金型キャビティ拡張部90aの意匠(金型内面)及び基材層9gとの接触面に形成されるスキン層9e及び同スキン層9eに連続する、冷却固化が進行中の、溶融状態部分を含む第1樹脂9bと、発泡セルを含む発泡層10f’とで構成される状態となる。
【0068】
金型キャビティ第3拡張工程の完了後、図示はしていないが、金型キャビティ9a及び金型キャビティ拡張部90a内の基材層9g及びサンドイッチ成形部9h’に所定の型締力を付与させた状態で、これらを冷却固化させると、サンドイッチ成形品9’が成形される(製品冷却固化工程)。この製品冷却固化工程の完了後のサンドイッチ成形品9’を
図7(c)に示す。図の関係上、冷却固化状態の内層用の第2樹脂10b’の発泡層10f’を発泡時と同じ表記で示す。
【0069】
サンドイッチ成形品9’の冷却固化が完了した後、図示はしていないが、可動金型4を図示しない型開閉機構により、固定金型2から型開きさせ、図示しない製品取出手段によりサンドイッチ成形品9’を射出成形機外へ搬出させ、成形サイクルが終了する。
【0070】
以上説明したように、実施例1と同様の基材成形工程、金型キャビティ第1拡張工程、及び第1射出充填工程、金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程の後、
図6(a)及び
図6(b)に至る工程を繰り返すことにより、固定金型2側の表層(基材層9g+サンドイッチ成形部9h’の表層)と、可動金型4側の表層(サンドイッチ成形部9h’の表層)の厚みが異なり、且つ、内層が発泡層10f’(第2樹脂10b’)から成るサンドイッチ成形品9’を連続して成形させることができる。
【0071】
このように、実施例3に係る射出成形方法は、内層用の第2樹脂に発泡性の樹脂を採用し、第2射出充填工程の開始後に、金型キャビティ第3拡張工程を行わせることにより、サンドイッチ成形品の表面と裏面とで、それぞれの表層の厚みが異なるように成形することができるだけでなく、内層を発泡層とすることができる。このようなサンドイッチ成形品は、実施例1及び実施例2に係る射出成形方法により成形させるサンドイッチ成形品より、更に軽量化等、発泡層の機能を有する機能を必要とする場合に好適である。
【実施例4】
【0072】
次に、
図8及び
図9を参照しながら、本発明の実施例4に係る射出成形方法を説明する。
図8(a)及び
図8(b)は、実施例4に係る射出成形方法の金型キャビティ第2拡張工程、第2射出充填工程及び金型キャビティ第3拡張工程を示す金型の概略断面図である。
図8(a)が金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程の完了時、
図8(b)が金型キャビティ第3拡張工程を示す。
図9(a)及び
図9(b)は、実施例4に係る射出成形方法の金型キャビティ第2拡張工程、第2射出充填工程及び金型キャビティ第3拡張工程の各成形工程中のサンドイッチ成形品を示す概略断面図である。
図9(a)が金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程完了時のサンドイッチ成形品、
図9(b)が金型キャビティ第3拡張工程中のサンドイッチ成形品を示す。
【0073】
実施例4に係る射出成形方法が実施例1に係る射出成形方法と異なる点は、第1樹脂及び第2樹脂が共に発泡性の樹脂である点と、この点に起因して、第2射出充填工程の開始後に、金型キャビティ拡張部を更に所定量だけ拡張させる金型キャビティ第3拡張工程を備える点である。すなわち、実施例4に係る射出成形方法は、実施例2に係る射出成形方法において、第2樹脂に発泡性の樹脂を採用し、第2射出充填工程の開始後に、金型キャビティ拡張部を更に所定量だけ拡張させる金型キャビティ第3拡張工程を行うものである。
【0074】
よって、これらの点以外は、実施例2に係る射出成形方法及び実施例3に係る射出成形方法の金型キャビティ第3拡張工程と基本的に同じであるため、その詳細な説明は省略、又は、実施例2及び実施例3を引用して説明し、相違点についてのみ詳細に説明する。また、金型及び射出成形機においても、非発泡性の第2樹脂10bが発泡性の第2樹脂10b’に変更される以外は実施例2において説明したものと基本的に同じものを用いることができるため、説明を省略する。尚、この非発泡性の第2樹脂10b及び発泡性の第2樹脂10b’の差異に起因して、実施例2の説明と区別する対象については、実施例2と同じ符号に”’(アポストロフィ)”を付して区別するものとする。
【0075】
実施例4に係る射出成形方法も、まず、実施例2に係る射出成形方法と同様の方法により基材成形工程を行い、金型キャビティ9a内で基材層9gを成形させる。また、同じく、実施例2と同様の方法により、金型キャビティ第1拡張工程及び第1射出充填工程を行い、固定金型2側に保持させた基材層9g及び可動金型4の間に金型キャビティ拡張部90aを形成させ、再び、第1射出ユニット17から、発泡性の第1樹脂9b’を金型キャビティ拡張部90a内に射出充填させる(第1射出充填工程)。これら工程の説明及び図示は省略する。
【0076】
次に、実施例2と同様の方法により、第1射出充填工程の開始後(すなわち、第1射出充填工程の途中、又は、第1射出充填工程の完了後)に、金型キャビティ拡張部90aの容積を拡張させ、金型キャビティ拡張部90a内の発泡性の第1樹脂9b’を発泡させる。ここで、本実施例4の金型キャビティ第2拡張工程においては、金型キャビティ拡張部90aの容積を、金型キャビティ9aの容積と合わせて製品容積になるまで拡張させず、製品容積未満までの拡張に留める。この時の型開き量をβ’(β’<β)とする。
【0077】
次に、実施例2と同様も方法により、第1射出充填工程の完了後で、かつ、金型キャビティ第2拡張工程の開始後(すなわち、金型キャビティ第2拡張工程の途中、又は、金型キャビティ第2拡張工程の完了後)に、第2射出ユニット18から内層を形成する発泡性の第2樹脂10b’をサンドイッチ成形部9h’(表層用の第1樹脂9b’)内に射出充填させる(第2射出充填工程)。このようにして、
図8(a)に示すように、金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程を完了させる。
図8(a)は、本実施例3において、実施例2の
図4(c)に相当する状態である。
【0078】
尚、実施例2と同様に、第2射出充填工程による第2樹脂10b’の射出充填がフルパック状態で行われるため、サンドイッチ成形部9h’内に射出充填させた内層用の第2樹脂10b’は、この段階においては未発泡状態である。金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程の完了時のサンドイッチ成形品9(基材部9g+サンドイッチ成形部9h’)を
図9(a)に示す。
【0079】
次に、
図8(b)に示すように、第2射出充填工程の開始後(すなわち、第2射出充填工程の途中、又は、第2射出充填工程の完了後)に、サンドイッチ成形部9h’内の発泡性の第2樹脂10b’を発泡させる(金型キャビティ第3拡張工程)。具体的には、実施例3における金型キャビティ第3拡張工程と基本的に同じため、詳細な説明は省略する。金型キャビティ第3拡張工程中のサンドイッチ成形部9h’は、
図9(b)に示すように、金型キャビティ拡張部90aの意匠(金型内面)及び基材層9gとの接触面に形成されるスキン層9e’と、発泡セルを含む発泡層10f’とで構成される状態となる。実施例2で説明したように、金型キャビティ第2拡張工程において、このスキン層9e’は、その厚みをわずかに増してサンドイッチ成形部9h’の表層(未発泡状態)を形成するが、金型キャビティ第3拡張工程における金型キャビティ拡張部90aの容積拡張(サンドイッチ成形部9h’の体積拡張)に追従可能である。この金型キャビティ第3拡張工程の完了後、実施例3と同様の工程により、サンドイッチ成形品9’が成形される(製品冷却固化工程)。この製品冷却固化工程の完了後のサンドイッチ成形品9’は、実施例3の
図7(c)において、非発泡性の第1樹脂9bを発泡性の第1樹脂9b’からなるスキン層9e’(未発泡状態)に読み替えたものと同じため、図示は省略する。
【0080】
以上説明したように、実施例2と同様の基材成形工程、金型キャビティ第1拡張工程及び第1射出充填工程、金型キャビティ第2拡張工程及び第2射出充填工程の後、
図8(a)及び
図8(b)に至る工程を繰り返すことにより、固定金型2側の表層(基材層9g+サンドイッチ成形部9h’の表層)と、可動金型4側の表層(サンドイッチ成形部9h’の表層)の厚みが異なり、且つ、内層が発泡層10f’(第2樹脂10b’)から成るサンドイッチ成形品9’を連続して成形させることができる。
【0081】
このように、実施例4に係る射出成形方法は、内層用の第2樹脂に発泡性の樹脂を採用し、第2射出充填工程の開始後に、金型キャビティ第3拡張工程を行わせることにより、サンドイッチ成形品の表面と裏面とで、それぞれの表層の厚みが異なるように成形することができるだけでなく、表層用に発泡性の樹脂を採用することにより、サンドイッチ成形部9h’の容積に対する内層用の第2樹脂10c’の充填比率の更なる向上を図ることができる。そのため、実施例3と同様に、内層用に発泡性樹脂を採用する場合、実施例3に係る射出成形方法により成形させるサンドイッチ成形品より、更に軽量化等、発泡層の機能を有する機能を必要とする場合に好適である。
【0082】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく色々な方法で実施できる。例えば、実施例1乃至実施例4に係る射出成形方法において、説明及び図面を簡単にするために、シェアエッジ構造の金型を前提に、射出成形機の型開閉機構による型開閉動作で金型キャビティの容積を拡張させるものとしたが、金型キャビティの容積を拡張させる手段はこれに限定されるものではなく、金型内可動部の移動動作等、金型キャビティ内の樹脂圧力に対抗して、その容積、拡張速度、容積拡張位置保持力等を任意で制御可能な手段であれば良い。
【0083】
また、実施例1乃至実施例4に係る射出成形方法において、金型キャビティ第2拡張工程、あるいは、金型キャビティ第3拡張工程により、金型キャビティと合わせた金型キャビティ拡張部の容積が製品容積になるまで拡張させるものとしたが、実施例1及び実施例2に係る射出成形方法のように、金型キャビティ第2拡張工程まで行われる場合は、金型キャビティ第2拡張工程において、また、実施例3及び実施例4に係る射出成形方法のように、金型キャビティ第3拡張工程まで行われる場合は、2回の拡張工程の内、少なくとも一方の拡張工程において、当初設定した容積以上に金型キャビティ拡張部の容積を拡張させて、より多くの樹脂を射出充填、あるいは、発泡させた後、当初設定した容積まで金型キャビティ拡張部の容積を縮小させて、最終的に所望の製品が得られるようにしても良い(金型キャビティ縮小工程)。これにより、サンドイッチ成形品の一方の表層となる基材層のスキン層及び他方の表層となるサンドイッチ成形部のスキン層への、金型キャビティの意匠の転写性を更に向上させたり、サンドイッチ成形部の容積に対する内層用の第2樹脂の充填比率を更に向上させたりすることができる。