【実施例】
【0065】
実施例1.CRM197遺伝子のクローン
ATCCから得たジフテリア・バチルス(Diphtheria bacillus)C7(β197)菌株(NO53281)から抽出したゲノムDNAを、PCR反応のための鋳型として使用し、順方向プライマーが、CRM197F(配列番号19)であり、逆方向プライマーが、CRM197R(配列番号20)であった。PCR反応を、PCR装置(Biometra T3)中、以下の条件下で実施して、CRM197をコードする完全長の遺伝子を調製した。
【表2】
【0066】
PCR増幅の後に、約1.6kbの長さの生成物を得た。配列決定の後に、増幅生成物(すなわち、CRM197の完全長の遺伝子)のヌクレオチド配列(配列番号1)を得、配列番号1がコードするアミノ酸配列を、配列番号2に記載した。
【0067】
実施例2.CRM197又はその断片及びHEVキャプシドタンパク質の断片を含む融合タンパク質の設計及びクローン
実施例では、融合タンパク質を発現するベクターを、例として構築した。構築した種々の例示的な融合タンパク質のクローン設計を、
図1に示し、図中、融合タンパク質はそれぞれ、CRM197又はその断片及びHEVキャプシドタンパク質の断片を、場合によりリンカーを使用して含む。
【0068】
リンカーを含む融合タンパク質のクローン
実施例1で得た増幅生成物(すなわち、CRM197の完全長の遺伝子)を、鋳型として使用した。順方向プライマーが、CRM197F(配列番号19)であり、当該プライマーの5’末端に、制限エンドヌクレアーゼNdeI部位CAT ATGを導入し、ATGは、イー・コライ系における開始コドンであった。逆方向プライマーは、CRM197−リンカーR(配列番号21)、389−リンカーR(配列番号22)、及びA−リンカーR(配列番号23)であり、それぞれ、当該プライマーの5’末端に、制限エンドヌクレアーゼBamHI部位GGA TCCを導入した。PCR反応を、PCRサーモサイクラー(Biometra T3)中、以下の条件下で実施した。使用したプライマーの配列を、表1に示した。
【表3】
【0069】
増幅生成物はそれぞれ、約1600bp、1200bp及び600bpの長さのDNA断片であった。
【0070】
さらに、pTO−T7−E2(Liら、JBC、2005、28(5):3400〜3406)も、鋳型として使用した。順方向プライマーが、E2F(配列番号24)及びE2sF(配列番号25)であり、それぞれ、当該プライマーの5’末端に、制限エンドヌクレアーゼBamHI部位GGA TCCを導入した。逆方向プライマーが、Drp59R(配列番号26)であり、当該プライマーの5’末端に、制限エンドヌクレアーゼEcoRI部位GAA TTCを導入した。PCR反応を、PCRサーモサイクラー(Biometra T3)中、以下の条件下で実施した。
【表4】
【0071】
増幅生成物はそれぞれ、約600bp及び450bpの長さのDNA断片であった。
【0072】
上記で得た増幅生成物をそれぞれ、商業的に入手可能なpMD18−Tベクター(TAKARA Co.製)中に連結し、pMD18−T−CRM197−L、pMD18−T−389−L及びpMD18−T−A−L、並びにpMD18−T−E2及びpMD18−T−E2sと名付けた。NdeI/BamHI及びBamHI/EcoRI酵素切断により同定して、それぞれ、陽性クローンのpMD18−T−CRM197−L、pMD18−T−389−L、pMD18−T−A−L、pMD18−T−E2及びpMD18−T−E2sを得た。
【0073】
M13(+)プライマーにより確認すると、目的の正しいヌクレオチド配列が、得られたpMD18−T−CRM197−L、pMD18−T−389−L、pMD18−T−A−L、pMD18−T−E2及びpMD18−T−E2sのそれぞれ中に挿入されていた。
【0074】
プラスミドのpMD18−T−CRM197−L、pMD18−T−389−L及びpMD18−T−A−Lを、NdeI/BamHI酵素により消化した。酵素切断により得られた断片を、NdeI/BamHI酵素により消化した原核生物発現ベクターpTO−T7(Luo Wenxinら、Chinese Journal of Biotechnology、2000、16:53〜57)中に連結し、(Invitrogen Co.から購入した)イー・コライER2566中に形質転換した。プラスミドの抽出の後、NdeI/BamHI酵素切断により同定して、CRM197−L、389−L及びA−Lが挿入されている、陽性プラスミドのpTO−T7−CRM197−L、pTO−T7−389−L及びpTO−T7−A−Lをそれぞれ得た。
【0075】
pTO−T7−CRM197−L、pTO−T7−389−L、pTO−T7−A−L、pMD18−T−E2及びpMD18−T−E2sを、BamHI/EcoRI酵素により消化した。得られたE2断片及びE2s断片のそれぞれを、BamHI/EcoRI酵素により消化したベクターのpTO−T7−CRM197−L、pTO−T7−389−L及びpTO−T7−A−Lのそれぞれ中に連結した。NdeI/EcoRI酵素切断により同定して、CRM197−L−E2(配列番号3、4)、CRM197−L−E2s(配列番号5、6)、389−L−E2(配列番号7、8)、389−L−E2s(配列番号9、10)、A−L−E2(配列番号11、12)又はA−L−E2s(配列番号13、14)が挿入されている、陽性の発現ベクターのpTO−T7−CRM197−L−E2、pTO−T7−CRM197−L−E2s、pTO−T7−389−L−E2、pTO−T7−389−L−E2s、pTO−T7−A−L−E2及びpTO−T7−A−L−E2sをそれぞれ得た。
【0076】
リンカーを有さない融合タンパク質389−E2s及び融合タンパク質A−E2sのクローン
389−E2s及びA−E2sを発現するベクターを、3つのPCR反応により構築した。第1のPCR反応のために、CRM197の完全長の遺伝子を、鋳型として使用した。順方向プライマーが、CRM197Fであり、当該プライマーの5’末端に、制限エンドヌクレアーゼNdeI部位CAT ATGを導入し、ATGは、イー・コライ系における開始コドンであった。逆方向プライマーがそれぞれ、389−E2sR(配列番号27)及びA−E2sR(配列番号28)であった。増幅を実施して、融合タンパク質のN−末端断片を得た。第2のPCR反応のために、CRM197の完全長の遺伝子を、鋳型として使用した。順方向プライマーがそれぞれ、389−E2sF(配列番号29)及びA−E2sF(配列番号30)であった。逆方向プライマーが、DrP59Rであり、当該プライマーの5’末端に、制限エンドヌクレアーゼEcoRI部位GAA TTCを導入した。増幅を実施して、融合タンパク質のC−末端断片を得た。第1及び第2のPCR反応を、PCRサーモサイクラー(Biometra T3)中、以下の条件下で実施した。
【表5】
【0077】
第3のPCR反応のために、第1及び第2のPCR反応の増幅生成物を、鋳型として使用し(例えば、389−E2sF及び389−E2sRをプライマーとして使用することによって得た2つの断片を鋳型として使用して、389−E2sの増幅を行った)、CRM197F及びDrP59Rを、プライマーとして使用した。増幅を、PCRサーモサイクラー(Biometra T3)中、以下の条件下で実施した。
【表6】
【0078】
増幅生成物はそれぞれ、約1600bp及び1000bpの長さのDNA断片であった。上記で得た増幅生成物をそれぞれ、商業的に入手可能なpMD18−Tベクター(TAKARA Co.製)中に連結した。NdeI/EcoRI酵素切断により同定して、陽性クローンのpMD18−T−389−E2s及びpMD18−T−A−E2sを得た。
【0079】
M13(+)プライマーにより確認すると、配列番号15及び配列番号17の正しいヌクレオチド配列(当該ヌクレオチド配列はそれぞれ、配列番号16及び配列番号18のアミノ酸配列をコードした)がそれぞれ、得られたpMD18−T−389−E2s及びpMD18−T−A−E2s中に挿入されていた。
【0080】
プラスミドのpMD18−T−389−E2s及びpMD18−T−A−E2sを、NdeI/EcoRI酵素により消化した。次いで、酵素切断により得られた断片を、NdeI/EcoRI酵素により消化した原核生物発現ベクターpTO−T7中に連結した(Luo Wenxinら、Chinese Journal of Biotechnology、2000、16:53〜57)。NdeI/EcoRI酵素切断により同定して、389−E2s及びA−E2sが挿入されている、陽性プラスミドのpTO−T7−389−E2s及びpTO−T7−A−E2sをそれぞれ得た。
【0081】
実施例で使用したプライマーの配列を、表1に示した。
【表7】
【0082】
プラスミドのpTO−T7−CRM197−L−E2、pTO−T7−CRM197−L−E2s、pTO−T7−389−L−E2、pTO−T7−389−L−E2s、pTO−T7−389−E2s、pTO−T7−A−L−E2、pTO−T7−A−L−E2s及びpTO−T7−A−E2s(0.15mg/ml)の1μLを、別個に使用して、塩化カルシウム法により調製したコンピテントな(Invitrogenから購入した)イー・コライER2566の40μLを形質転換し、次いで、細菌を、カナマイシン(100mg/mlの最終濃度;以下、同じ)を含有する固体LB培地(LB培地の構成成分:10g/Lペプトン、5g/L酵母粉末及び10g/L NaCl;以下、同じ)上に蒔いた。プレートを、個々のコロニーを明らかに観察することができるようになるまで、37℃で約10〜12時間静止状態でインキュベートした。個々のコロニーを、プレートから、カナマイシンを含有する液体LB培地の4mlを含有するチューブに移動させた。培養物を、振とうインキュベーター中、180rpm、37℃で10h時間インキュベートし、次いで、1mlの細菌溶液を採取し、−70℃で保存した。
【0083】
実施例3.実施例2において構築した融合タンパク質の発現及び精製
融合タンパク質の発現及び封入体の精製
−70℃の極低温フリーザーから取った5μLの細菌溶液を、カナマイシンを含有する液体LB培地の5mLに播種し、次いで、OD600が約0.5に達するまで、180rpmで振とうしながら、37℃で培養した。得られた溶液を、カナマイシンを含有するLB培地の500mlに移動させ、次いで、180rpmで振とうしながら、37℃で4〜5時間培養した。OD600が約1.5に達したら、IPTGを添加して、0.4mMの最終濃度を得、細菌を、振とうしながら37℃で4時間誘発した。
【0084】
誘発後に、遠心分離を8000gで5分間実施して、細菌を収集し、次いで、細菌を、氷浴中で、溶解用溶液(20mM Tris緩衝液、pH7.2、300mM NaCl)中に、1gの細菌対10mLの溶解用溶液の比で再懸濁させた。細菌を、超音波処理器(Sonics VCX750 Type Sonicator)を用いて処理した(条件:作動時間:15分、パルス:2秒、中断:4秒、アウトプット出力:55%)。細菌の溶解液を、12000rpm、4℃で5分間遠心分離し(以下、同じ)、上清を廃棄し、沈殿物(すなわち、封入体)を残した。同じ体積の2%Triton−100を使用して、洗浄し、結果として得た混合物を、振動下に30分間置き、遠心分離し、上清を廃棄した。沈殿物を、緩衝液I(20mM Tris−HCl、pH8.0、100mM NaCl、5mM EDTA)中に、振動下で30分かけて再懸濁させ、遠心分離し、上清を廃棄した。次いで、沈殿物を、2M尿素中に、振動下、37℃で30分かけて再懸濁させ、遠心分離し、上清及び沈殿物を得た。上清を残し、沈殿物を、同じ体積の4M尿素中に、振動下、37℃で30分かけて再懸濁させ、12000rpm、4℃で15分間遠心分離して、上清及び沈殿物を得た。上清(すなわち、4M尿素で溶解させた上清)を残し、沈殿物を、同じ体積の8M尿素中に、振動下、37℃で30分かけてさらに再懸濁させ、遠心分離し、上清(すなわち、8M尿素で溶解させた上清)を残した。
【0085】
得られた画分のSDS−PAGE解析の結果を、
図2に示した(クーマシーブリリアントブルー染色を使用して、可視化した。以下、同じ。The Molecular Cloning Experiment Guide、2版中の方法を参照されたい)。結果から、融合タンパク質が封入体中で発現し(
図2Aを参照されたい)、CRM197−L−E2、389−L−E2、A−L−E2及びA−E2sは、主として4M尿素中に溶解し(
図2Bを参照されたい)、CRM197−L−E2s、389−L−E2s、A−L−E2s及び389−E2sは、主として8M尿素中に溶解する(
図2Cを参照されたい)ことが示された。融合タンパク質を含有する4M尿素で溶解させた上清又は8M尿素で溶解させた上清をそれぞれ、PBSに対して透析して、約80%の純度を有する融合タンパク質を得た(
図2Dを参照されたい)。
【0086】
融合タンパク質A−L−E2の、アニオン交換クロマトグラフィーによる精製
試料:上記で得た、約80%の純度を有するA−L−E2タンパク質の溶液。
機器:GE Healthcare(すなわち、元々は、Amershan Pharmacia Co.)製のAKTA Explorer 100調製用液体クロマトグラフィーシステム
クロマトグラフィー用の媒体:Q Sepharose Fast Flow(GE Healthcare Co.)
カラム体積:15mm×20cm
緩衝液:20mMリン酸緩衝液、pH7.7+4M尿素
20mMリン酸緩衝液、pH7.7+4M尿素+1M NaCl
流速:6mL/分
検出器の波長:280nm
溶出プロトコール:目的のタンパク質を、150mM NaClを用いて溶出し、望まれないタンパク質を、300mM NaClを用いて溶出し、150mM NaClを用いて溶出した画分を収集する。
【0087】
融合タンパク質A−L−E2の、疎水性相互作用クロマトグラフィーによる精製
機器:GE Healthcare(すなわち、元々は、Amershan Pharmacia Co.)製のAKTA Explorer 100調製用液体クロマトグラフィーシステム
クロマトグラフィー用の媒体:Phenyl Sepharose Fast Flow (GE Healthcare Co.)
カラム体積:15mm×20cm
緩衝液:20mMリン酸緩衝液、pH7.7+4M尿素+0.5M(NH
4)
2SO
4
20mMリン酸緩衝液、pH7.7+4M
流速:5mL/分
検出器の波長:280nm
試料:以前のステップにおいて得た、150mM NaClを用いて溶出した画分を、緩衝液(20mMリン酸緩衝液、pH7.7+4M尿素+0.5M(NH
4)
2SO
4)に対して透析し、次いで、試料として使用した。
溶出プロトコール:望まれないタンパク質を、0.3M(NH
4)
2SO
4を用いて溶出し、目的のタンパク質を、0.1M及び0Mの(NH
4)
2SO
4を用いて溶出し、0.1M及び0Mの(NH
4)
2SO
4を用いて溶出した画分を収集する。
【0088】
0.1M及び0Mの(NH
4)
2SO
4を用いて溶出した画分を、PBS中に透析及び再生し、次いで、10μlを取って、SDS−PAGE解析を行い、電気泳動バンドを、クーマシーブリリアントブルー染色により可視化した。結果から、上記の精製ステップの後に、融合タンパク質A−L−E2は、90%超の純度を有することが示された(
図3を参照されたい)。
【0089】
実施例4.実施例2において構築した融合タンパク質の特性の解析
融合タンパク質の抗体との反応性の、ウエスタンブロッティングによる決定
HEV中和モノクローナル抗体8C11(Zhangら、Vaccine、23(22):2881〜2892(2005)を参照されたい)及び抗CRM197ポリクローナル抗血清(当該血清は、当技術分野で周知の方法を通して、CRM197を用いてマウスを免疫化することによって調製し、血清の反応性を、商業的に入手可能なCRM197により確認した)との融合タンパク質の反応性を、ウエスタンブロッティングにより決定した。透析及び再生した試料を、SDS−PAGE分離の後に、ニトロセルロース膜に移動させて、ブロッティングを行った。5%脱脂粉乳を使用して、膜を2時間ブロックし、次いで、特定の比に希釈したモノクローナル抗体8C11を添加し(モノクローナル抗体を1:500に希釈し、ポリクローナル抗血清を1:1000に希釈した)、反応を1時間行った。膜を、TNT(50ミリモル/L Tris−Cl(pH7.5)、150ミリモル/L NaCl、0.05%Tween20)を用いて、各回10分3回にわたり洗浄した。次いで、ヤギ抗マウスアルカリホスファターゼ(KPL製)を添加し、反応を1時間行い、次いで、膜を、TNTを用いて、各回10分3回にわたり洗浄した。NBT及びBCIP(PROTOS製)を使用して、可視化した。融合タンパク質及びHEV中和モノクローナル抗体8C11を使用してウエスタンブロッティングにより決定した結果を、
図4に示した。結果から、試験した融合タンパク質は全て、HEV中和モノクローナル抗体8C11との顕著な反応性を有することが示された。
【0090】
融合タンパク質の種々のHEV特異的抗体との反応性の、ELISAによる決定
融合タンパク質並びに対照タンパク質であるE2及びHEV−239の、種々のHEV特異的抗体(Gu Yingら、Chinese Journal of Virology、19(3):217〜223(2003))との反応性を、間接ELISAにより決定した。透析及び再生した試料を、1×PBS(1μg/ml)中に希釈し、次いで、96ウエルマイクロプレート(Beijing Wantai Co.)に100μl/ウエルで添加し、37℃で2時間インキュベートした。コーティング溶液を廃棄し、プレートを、PBST(PBS+0.05%Tween−20)を用いて1回洗浄し、次いで、ブロッキング溶液(PBS中の2%ゼラチン、5‰カゼイン、1‰プロクリン300)を、200μl/ウエルで添加し、37℃で2時間インキュベートした。ブロッキング溶液を廃棄して、検出を実施し、特定の比に希釈したHEVモノクローナル抗体(E2s及びE2sの融合タンパク質を検出する場合、それらを1:10000に希釈した。E2及びE2の融合タンパク質を検出する場合、それらを1:100000に希釈した。A−L−E2、239及びE2タンパク質の反応性を比較する場合、モノクローナル抗体は、10倍段階希釈に付し、1mg/mlを、最初の濃度として使用し、ポリクローナル抗体は、その最初の濃度から、同じように希釈に付した)を、100μl/ウエルで添加した。混合物を、37℃で1〜2時間インキュベートした。次いで、プレートを、PBSTを用いて5回にわたり洗浄し、次いで、HRP標識ヤギ抗マウス(KPL製)(1:5000)を、100μl/ウエルで添加し、37℃で30分間インキュベートした。次いで、プレートを、PBSTを用いて5回にわたり洗浄し、次いで、HRPの基質(Beijing Wantai Co.)を、100μl/ウエルで添加し、37℃で15分間インキュベートした。2M硫酸を50μl/ウエルで添加して、反応を止め、次いで、マイクロプレートリーダー(Sunrise Type、Tecan Co.製)を使用して、OD450/620の値を読み取った。融合タンパク質とモノクローナル抗体とを使用したELISAの結果を、
図5に示す。結果から、E2sタンパク質のCRM197又はその断片との融合の後に、E2sタンパク質のモノクローナル抗体との反応性が顕著に増強され、A−L−E2s及びA−E2sの反応性が最も顕著に増強され、E2タンパク質のCRM197又はその断片との融合の後に、E2タンパク質のHEVに特異的なモノクローナル抗体との反応性は、保持されるか又は増強されることが示された。
【0091】
クロマトグラフィーにより精製した融合タンパク質A−L−E2の反応性の解析
二段階クロマトグラフィーにより精製した融合タンパク質A−L−E2の反応性を、間接ELISAにより解析した(以前のステップにおける具体的なプロセスを参照されたい)。ELISAの結果を、
図6に示した。結果から、A−L−E2のHEVに特異的なモノクローナル抗体との反応性は、対照タンパク質のHEV−239及びE2の反応性に匹敵することが示された。
【0092】
融合タンパク質A−L−E2の沈降速度(SV)の解析
実験で使用する装置は、米国のBeckman XL−A解析用超遠心分離機であり、当該遠心分離機には、光学的検出システム、並びにAn−50Ti回転子及びAn−60Ti回転子が装備されていた。沈降速度(SV)法(c(s)アルゴリズム、P.Schuckら、Biophys J、78:1606〜1619(2000)を参照されたい)を使用して、融合タンパク質A−L−E2の沈降係数を解析した。解析の結果を、
図7に示す。結果から、融合タンパク質A−L−E2は、主として二量体の形態で存在し、二量体の中には、さらに重合して、四量体を形成することができるものがあることが示された。
【0093】
実施例5.実施例2において構築した融合タンパク質の免疫原性の解析
融合タンパク質が誘発する抗体価
実験で使用したマウスは、雌、6週齢のBALB/Cマウスであった。アルミニウムアジュバントを使用することによって、マウスを、実施例3の方法により調製し、PBSに再生した融合タンパク質並びに対照タンパク質のHEV−239、E2及びE2sそれぞれの腹腔内注射により免疫化した。注射体積は1mlであり、2つの投与群(5μg用量群又は0.5μg用量群)を使用した。一次免疫化を第0週に実施し、追加免疫化を、第2及び4週に実施した。
【0094】
HEV−239を使用して、プレートをコーティングし、融合タンパク質及び対照タンパク質が誘発した血清中の抗体価を、上記したアッセイに類似する間接ELISAアッセイにより測定した。免疫化後3カ月以内の血清抗体価の検出結果を、
図8に示した。結果から、マウス血清中の血清転換が、5μg用量群及び0.5μg用量群の両方において、第4週に生じ、抗体価は、第5又は6週に、最も高い値に達することが示された。特に、5μg用量群では、A−L−E2を使用する場合に、最も高い抗体価が得られ、抗体価は、第6週に10
6に達し、融合タンパク質が誘発した抗体価は、HEV−239タンパク質が誘発した抗体価より高いか又はHEV−239タンパク質が誘発した抗体価に匹敵した。0.5μg用量群では、融合タンパク質の抗体価は、HEV−239の抗体価よりも顕著に高く、A−L−E2タンパク質が誘発した抗体価は、第5週に10
6に達した。さらに、5μg用量群においても0.5μg用量群においても、E2及びE2sを使用した場合、免疫血清中の血清転換は生じなかった。上記の結果から見られるように、構築した融合タンパク質の免疫原性は、抗原タンパク質(E2及びE2s)単独よりも顕著に高く、当該結果は、本発明のCRM197又はその断片は、CRM197又はその断片と融合させた抗原タンパク質の免疫原性を顕著に増強し、分子内アジュバントとして使用することが可能であることを示した。
【0095】
融合タンパク質A−L−E2の有効用量の中央値(ED50)に関する検討
実験において、融合タンパク質の免疫原性を、有効用量の中央値(ED50)を決定することによって検討した。使用した実験動物は、3〜4週齢の雌BALB/Cマウスであった。A−L−E2は、アルミニウムアジュバントと混合し、初回用量は、1μg/マウスであり、1:3の段階希釈に付し、結果として、全部で8つの投与群を得た。さらに、HEV−239(HEV組換えワクチン)を、対照として使用し、初回用量は、1.6μg/マウスであり、1:4の段階希釈に付し、結果として、全部で4つの投与群も得た。6匹のマウスを、各群で使用した。免疫化を、単回の腹腔内注射により実施した。
【0096】
末梢静脈血を、免疫化の4週間後に採取し、血清を分離し、血清転換率を、上記したELISAアッセイにより決定した。100倍希釈した血清のELISAの値が、カットオフ値(すなわち、陰性の値の平均の3倍)よりも高い場合、血清を陽性とみなした。有効用量の中央値(ED50)を、リード−ミュンヒの方法により計算した。融合タンパク質A−L−E2の血清転換率を、表2に示し、HEV−239ワクチンの血清転換率を、表3に示した。
【0097】
【表8】
【0098】
【表9】
【0099】
結果から、HEV−239のED50は、A−L−E2のED50の11倍であることが示され、当該結果は、本発明のCRM197又はその断片は、CRM197又はその断片と融合させた抗原タンパク質の免疫原性を顕著に増強し、分子内アジュバントとして使用することが可能であることを示した。同時に、融合タンパク質A−L−E2の免疫原性は、ウイルス様粒子の形態をとるHEV−239ワクチンの免疫原性よりも顕著に高かったことから、融合タンパク質を使用して、E型肝炎により有効である新しいワクチンを調製することもできるであろう。
【0100】
実施例6.CRM197又はその断片及びインフルエンザウイルスM2eタンパク質を含む融合タンパク質の設計及びクローン
実施例では、融合タンパク質を発現するベクターを、例として構築した。構築した例示的な融合タンパク質のクローン設計を、
図9に示し、図中、融合タンパク質はそれぞれ、CRM197又はその断片及びインフルエンザウイルスM2eタンパク質を、場合によりリンカーを使用して含む。
【0101】
融合タンパク質のクローン
CRM197又はその断片のC−末端に融合させたM2e
実施例1で得た増幅生成物(すなわち、CRM197の完全長の遺伝子)を、鋳型として使用した。順方向プライマーが、CRM197F1(配列番号45)であり、当該プライマーの5’末端に、制限エンドヌクレアーゼNdeI部位CAT ATGを導入し、ATGは、イー・コライ系における開始コドンであった。逆方向プライマーが、CRM197−リンカーR1(配列番号46)、389−リンカーR1(配列番号47)、及びA−リンカーR1(配列番号48)であり、それぞれ、当該プライマーの5’末端に、制限エンドヌクレアーゼBamHI部位GGA TCCを導入した。PCR反応を、PCRサーモサイクラー(Biometra T3)中、以下の条件下で実施した。使用したプライマーの配列を、表4に示した。
【表10】
【0102】
増幅生成物はそれぞれ、約1600bp、1200bp及び600bpの長さのDNA断片であった。
【0103】
さらに、(我々の研究室に保存されている、M2の完全長の遺伝子を含む)プラスミドPHW2000も、鋳型として使用した。順方向プライマーが、M2eF1(配列番号49)であり、当該プライマーの5’末端に、制限エンドヌクレアーゼBamHI GGA TCCを導入した。逆方向プライマーが、M2eR(配列番号50)であり、当該プライマーの5’末端に、制限エンドヌクレアーゼEcoRI部位GAA TTCを導入した。PCR反応を、PCRサーモサイクラー(Biometra T3)中、以下の条件下で実施した。使用したプライマーの配列を、表4に示した。
【表11】
【0104】
増幅生成物はそれぞれ、約70bpの長さのDNA断片であった。
【0105】
上記で得た増幅生成物をそれぞれ、商業的に入手可能なpMD18−Tベクター(TAKARA Co.製)中に連結し、pMD18−T−CRM197−L1、pMD18−T−389−L1及びpMD18−T−A−L1、並びにpMD18−T−M2eと名付けた。NdeI/BamHI及びBamHI/EcoRI酵素切断により同定して、それぞれ、陽性クローンのpMD18−T−CRM197−L1、pMD18−T−389−L1、pMD18−T−A−L1及びpMD18−T−M2eを得た。
【0106】
M13(+)プライマーにより確認すると、目的の正しいヌクレオチド配列が、得られたプラスミドのpMD18−T−CRM197−L1、pMD18−T−389−L1、pMD18−T−A−L1及びpMD18−T−M2e中に挿入されていた。
【0107】
プラスミドのpMD18−T−CRM197−L1、pMD18−T−389−L1及びpMD18−T−A−L1を、NdeI/BamHI酵素により消化した。酵素切断により得られた断片を、NdeI/BamHI酵素により消化した原核生物発現ベクターpTO−T7(Luo Wenxinら、Chinese Journal of Biotechnology、2000、16:53〜57)中に連結し、(Invitrogen Co.から購入した)イー・コライER2566中に形質転換した。プラスミドの抽出の後、NdeI/BamHI酵素切断により同定して、断片のCRM197−L1、389−L1及びA−L1が挿入されている、陽性プラスミドのpTO−T7−CRM197−L1、pTO−T7−389−L1及びpTO−T7−A−L1をそれぞれ得た。
【0108】
pTO−T7−CRM197−L1、pTO−T7−389−L1、pTO−T7−A−L1及びpMD18−T−M2eを、BamHI/EcoRI酵素により消化した。得られたM2e断片を、BamHI/EcoRI酵素により消化したベクターのpTO−T7−CRM197−L1、pTO−T7−389−L1及びpTO−T7−A−L1のそれぞれ中に連結した。NdeI/EcoRI酵素切断により同定して、CRM197−L−M2e(配列番号33、34)、389−L−M2e(配列番号35、36)又はA−L−M2e(配列番号37、38)が挿入されている、陽性の発現ベクターのpTO−T7−CRM197−L−M2e、pTO−T7−389−L−M2e及びpTO−T7−A−L−M2eをそれぞれ得た。
【0109】
CRM197又はその断片のN−末端に融合させたM2e。
(我々の研究室に保存されている、M2の完全長の遺伝子を含有する)プラスミドPHW2000を、鋳型として使用した。順方向プライマーが、M2eF2(配列番号51)であり、当該プライマーの5’末端に、制限エンドヌクレアーゼNdeI部位CAT ATGを導入し、ATGは、イー・コライ系における開始コドンであった。逆方向プライマーが、M2e−リンカーR(配列番号52)であり、当該プライマーの5’末端に、制限エンドヌクレアーゼBamHI GGA TCCを導入した。PCR反応を、PCRサーモサイクラー(Biometra T3)中、以下の条件下で実施した。
【表12】
【0110】
増幅生成物は、約100bpの長さのDNA断片であった。
【0111】
さらに、実施例1で得た増幅生成物(すなわち、CRM197の完全長の遺伝子)を、鋳型として使用した。順方向プライマーが、CRM197F2(配列番号53)であり、当該プライマーの5’末端に、制限エンドヌクレアーゼBamHI GGA TCCを導入した。逆方向プライマーが、CRM197R2(配列番号54)、389R(配列番号55)及びAR(配列番号56)であり、当該プライマーの5’末端に、制限エンドヌクレアーゼEcoRI部位GAA TTCを導入した。PCR反応を、PCRサーモサイクラー(Biometra T3)中、以下の条件下で実施した。使用したプライマーの配列を、表4に示した。
【表13】
【0112】
増幅生成物はそれぞれ、約1600bp、1200bp及び600bpの長さのDNA断片であった。
【0113】
上記で得た増幅生成物をそれぞれ、商業的に入手可能なpMD18−Tベクター(TAKARA Co.製)中に連結し、それぞれ、pMD18−T−M2e−L、並びにpMD18−T−CRM197、pMD18−T−389及びpMD18−T−Aと名付けた。NdeI/BamHI及びBamHI/EcoRI酵素切断により同定して、陽性クローンのpMD18−T−CRM197、pMD18−T−389、pMD18−T−A及びpMD18−T−M2e−Lをそれぞれ得た。
【0114】
M13(+)プライマーにより確認すると、目的の正しいヌクレオチド配列が、得られたプラスミドのpMD18−T−CRM197、pMD18−T−389、pMD18−T−A及びpMD18−T−M2e−Lのそれぞれ中に挿入されていた。
【0115】
プラスミドpMD18−T−M2e−Lを、NdeI/BamHI酵素により消化した。次いで、酵素切断により得られた断片を、NdeI/BamHI酵素により消化した原核生物発現ベクターpTO−T7(Luo Wenxinら、Chinese Journal of Biotechnology、2000、16:53〜57)中に連結し、(Invitrogen Co.から購入した)イー・コライER2566中に形質転換した。プラスミドの抽出の後、NdeI/BamHI酵素切断により同定して、断片M2e−Lが挿入されている、陽性プラスミドpTO−T7−M2e−Lを得た。
【0116】
pTO−T7−M2e−L、pMD18−T−CRM197、pMD18−T−389及びpMD18−T−Aを、BamHI/EcoRI酵素により消化した。得られた断片のCRM197、389及びAをそれぞれ、BamHI/EcoRI酵素により消化したベクターpTO−T7−M2e−L中に連結した。NdeI/EcoRI酵素切断により同定して、M2e−L−CRM197(配列番号39、40)、M2e−L−389(配列番号41、42)及びM2e−L−A(配列番号43、44)がそれぞれ挿入されている、陽性の発現ベクターのpTO−T7−M2e−L−CRM197、pTO−T7−M2e−L−389及びpTO−T7−M2e−L−Aを得た。
【0117】
実施例で使用したプライマーの配列を、表4に列挙する。
【表14】
【0118】
プラスミドのpTO−T7−CRM197−L−M2e、pTO−T7−389−L−M2e、pTO−T7−A−L−M2e、pTO−T7−M2e−L−CRM197、pTO−T7−M2e−L−389及びpTO−T7−M2e−L−A(0.15mg/ml)の1μLを、別個に使用して、塩化カルシウム法により調製したコンピテントな(Invitrogenから購入した)イー・コライER2566の40μLを形質転換し、次いで、細菌を、カナマイシン(100mg/mlの最終濃度;以下、同じ)を含有する固体LB培地(LB培地の構成成分:10g/Lペプトン、5g/L酵母粉末及び10g/L NaCl;以下、同じ)上に蒔いた。プレートを、個々のコロニーを明らかに観察することができるようになるまで、37℃で約10〜12時間静止状態でインキュベートした。個々のコロニーを、プレートから、カナマイシンを含有する液体LB培地の4mlを含有するチューブに移動させた。培養物を、振とうインキュベーター中、180rpm、37℃で10時間インキュベートし、次いで、1mlの細菌溶液を採取し、−70℃で保存した。
【0119】
実施例7.実施例6において構築した融合タンパク質の発現、単離及び再生
−70℃の極低温フリーザーから取った5μLの細菌溶液を、カナマイシンを含有する液体LB培地の5mLに播種し、次いで、OD600が約0.5に達するまで、180rpmで振とうしながら、37℃で培養した。得られた溶液を、カナマイシンを含有するLB培地の500mlに移動させ、次いで、180rpmで振とうしながら、37℃で4〜5時間培養した。OD600が約1.5に達したら、IPTGを添加して、0.4mMの最終濃度を得、細菌を、振とうしながら37℃で4時間誘発した。
【0120】
誘発後に、遠心分離を8000gで5分間実施して、細菌を収集し、次いで、細菌を、氷浴中で、溶解用溶液(20mM Tris緩衝液、pH7.2、300mM NaCl)中に、1gの細菌対10mLの溶解用溶液の比で再懸濁させた。細菌を、超音波処理器(Sonics VCX750 Type Sonicator)を用いて処理した(条件:作動時間:15分、パルス:2秒、中断:4秒、アウトプット出力:55%)。細菌の溶解液を、12000rpm、4℃で5分間遠心分離し(以下、同じ)、超音波処理による細菌の破壊の後の上清及び沈殿物(すなわち、封入体)をそれぞれ収集した。同じ体積の2%Triton−100を使用して、沈殿物を洗浄し、結果として得た混合物を、振動下に30分間置き、遠心分離し、上清を廃棄した。沈殿物を、緩衝液I(20mM Tris−HCl、pH8.0、100mM NaCl、5mM EDTA)中に、振動下で30分かけて再懸濁させ、遠心分離し、上清を廃棄した。次いで、沈殿物を、2M尿素中に、振動下、37℃で30分かけて再懸濁させ、遠心分離し、上清及び沈殿物を得た。上清を残し、沈殿物を、同じ体積の4M尿素中に、振動下、37℃で30分かけて再懸濁させ、12000rpm、4℃で15分間遠心分離して、上清及び沈殿物を得た。上清(すなわち、4M尿素で溶解させた上清)を残し、沈殿物を、同じ体積の8M尿素中に、振動下、37℃で30分かけてさらに再懸濁させ、遠心分離し、上清(すなわち、8M尿素で溶解させた上清)を残した。
【0121】
得られた画分を、SDS−PAGEにより解析した(クーマシーブリリアントブルー染色を使用して、可視化した。以下、同じ。The Molecular Cloning Experiment Guide、2版中の方法を参照されたい)。結果から、融合タンパク質が封入体中で発現し(
図10A及び10Bを参照されたい)、CRM197−L−M2e、389−L−M2e、M2e−L−CRM197及びM2e−L−389は、主として8M尿素中に溶解し、A−L−M2e及びM2e−L−Aは、主として4M尿素中に溶解することが示された。A−L−M2e若しくはM2e−L−Aを含有する、4M尿素で溶解させた上清、又はCRM197−L−M2e、389−L−M2e、M2e−L−CRM197若しくはM2e−L−389を含有する、8M尿素で溶解させた上清をそれぞれ、PBSに対して透析して、約80%の純度を有する融合タンパク質を得た(
図10C〜10Fを参照されたい)。
【0122】
実施例8.実施例6において構築した融合タンパク質の特性の解析
融合タンパク質の抗体との反応性の、ウエスタンブロッティングによる決定
融合タンパク質の、インフルエンザウイルスM2eモノクローナル抗体5D1及びCRM197モノクローナル抗体1E6(実験室で調製した)との反応性を、ウエスタンブロッティングにより決定した。透析及び再生した試料を、SDS−PAGE分離の後に、ニトロセルロース膜に移動させて、ブロッティングを行った。5%脱脂粉乳を使用して、膜を2時間ブロックし、次いで、1:500に希釈したモノクローナル抗体5D1を添加した。反応を1時間行った。次いで、膜を、TNT(50ミリモル/L Tris−Cl(pH7.5)、150ミリモル/L NaCl、0.05%Tween20)を用いて、各回10分3回にわたり洗浄した。次いで、ヤギ抗マウスアルカリホスファターゼ(KPL製)を添加した。反応を1時間行い、次いで、膜を、TNTを用いて、各回10分3回にわたり洗浄した。NBT及びBCIP(PROTOS製)を使用して、可視化した。融合タンパク質及びインフルエンザウイルスM2eモノクローナル抗体5D1(
図11A〜11D)又はCRM197モノクローナル抗体1E6(
図11E〜11H)を使用してウエスタンブロッティングにより決定した結果を、
図11に示した。結果から、試験した融合タンパク質は全て、インフルエンザウイルスM2eに特異的なモノクローナル抗体5D1及びCRM197に特異的なモノクローナル抗体1E6との顕著な反応性を有することが示された。
【0123】
融合タンパク質の種々のM2eに特異的なモノクローナル抗体及びCRM197に特異的な抗体との反応性の、ELISAによる決定
融合タンパク質及び対照タンパク質GST−M2eの、種々のM2eに特異的な抗体、及びCRM197に特異的なモノクローナル抗体1E6(実験で使用する抗体は、先行技術で公知であり、若しくは商業的に入手可能であるか、又は実験室で調製した)との反応性を、間接ELISAにより決定した。例えば、O19抗体は、先行技術で公知のインフルエンザに対する防御抗体である(Fuら、Virology、2009、385:218〜226を参照されたい)。透析及び再生した試料を、1×PBS(1μg/ml)中に希釈し、次いで、96ウエルマイクロプレート(Beijing Wantai Co.)に100μl/ウエルで添加し、37℃で2時間インキュベートした。コーティング溶液を廃棄し、プレートを、PBST(PBS+0.05%Tween−20)を用いて1回洗浄し、次いで、ブロッキング溶液(PBS中の2%ゼラチン、5‰カゼイン、1‰プロクリン300)を、180μl/ウエルで添加し、37℃で2時間インキュベートした。ブロッキング溶液を廃棄して、検出を実施し、特定の比に希釈した(0.002mg/mlを最初の濃度として使用して、2倍勾配による希釈を行った)抗M2e抗体又はCRM197抗体を、100μl/ウエルで添加した。混合物を、37℃で1時間インキュベートした。プレートを、PBSTを用いて5回にわたり洗浄し、次いで、HRP標識ヤギ抗マウス(KPL製)(1:5000)を、100μl/ウエルで添加し、37℃で30分間インキュベートした。プレートを、PBSTを用いて5回にわたり洗浄し、次いで、HRPの基質(Beijing Wantai Co.)を、100μl/ウエルで添加し、37℃で15分間インキュベートした。2M硫酸を50μl/ウエルで添加して、反応を止め、次いで、マイクロプレートリーダー(Sunrise Type、Tecan Co.製)を使用して、OD450/620の値を読み取った。融合タンパク質と抗体とを使用したELISAの結果を、
図12A及び12Bに示した。結果から、M2eタンパク質単独と比較して、M2eタンパク質のCRM197又はその断片との融合の後に、M2eタンパク質の種々の抗M2e特異的モノクローナル抗体との反応性は、保持されるか又は増強されることが示された。
【0124】
融合タンパク質の沈降速度(SV)の解析
実験で使用する装置は、米国のBeckman XL−A解析用超遠心分離機であり、当該遠心分離機には、光学的検出システム、並びにAn−50Ti回転子及びAn−60Ti回転子が装備されていた。沈降速度(SV)法(c(s)アルゴリズム、P.Schuckら、Biophys J、78:1606〜1619(2000)を参照されたい)を使用して、融合タンパク質の沈降係数を解析した。解析の結果を、
図13A〜13Fに示した。結果から、実施例6において構築した融合タンパク質のうち、A−L−M2e及びM2e−L−Aは、主として単量体及び四量体の形態で存在し、389−L−M2eは、主として二量体及びポリマーの形態で存在し、M2e−L−389は、主として単量体及びポリマーの形態で存在し、CRM197−L−M2eは、主として二量体及びポリマーの形態で存在し、M2e−L−CRM197は、主として単量体及びポリマーの形態で存在することが示された。
【0125】
実施例9.実施例6において構築した融合タンパク質の免疫原性の解析
実験で使用したマウスは、雌、6週齢のBALB/Cマウスであった。アルミニウムアジュバントを使用することによって、マウスを、実施例6において構築し、PBSに再生した融合タンパク質及び対照タンパク質GST−M2eそれぞれの腹腔内注射により免疫化した。注射体積は1mlであり、2つの投与群(5μg用量群又は0.5μg用量群)を使用した。一次免疫化を第0週に実施し、追加免疫化を、第2及び4週に実施した。
【0126】
GST−M2eを使用して、プレートをコーティングし、融合タンパク質及び対照タンパク質が誘発した血清中の抗体価を、上記したアッセイに類似する間接ELISAアッセイにより測定した。免疫化後4カ月以内の血清抗体価の検出結果を、
図14A及び14Bに示した。結果から、第2の追加免疫化後の、構築した融合タンパク質の免疫原性は、抗原タンパク質(GST−M2e)単独よりも顕著に高いことが示され、当該結果は、本発明のCRM197又はその断片は、(融合タンパク質のN−末端及びC−末端に位置する物質がない)CRM197又はその断片と融合させた抗原タンパク質の免疫原性を顕著に増強し、分子内アジュバントとして使用することが可能であることを示した。
【0127】
本発明の特定の実施形態を、詳細に記載してきたが、当業者であれば、本明細書に開示されている教示に従って、種々の改変形態及び変化形態を、一般的に記載する本発明の精神又は範囲から逸脱することなく作製することができ、そのような改変形態及び変化形態は、本発明の範囲に属することを理解するであろう。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びあらゆるその均等物により示される。