(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発光素子を搭載した磁気ヘッドスライダが実装される磁気ヘッドスライダ実装領域を有し、前記磁気ヘッドスライダ実装領域は、前記発光素子が挿通する開口を有する金属基板と、前記金属基板上に前記開口を囲んで設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に設けられた配線層と、を備える、サスペンション用基板の製造方法であって、
前記配線層に、複数の配線と、各配線の先端に接続され、前記開口の近傍に配置されて前記磁気ヘッドスライダに電気的に接続される端子と、を形成する工程と、
前記金属基板上に、前記磁気ヘッドスライダの裏面を前記端子側とは反対側において支持する支持部であって、前記金属基板上に設けられた追加絶縁層と、前記追加絶縁層上に設けられた追加配線層と、前記追加絶縁層及び前記追加配線層の上に設けられたカバー層と、を備える支持部を形成する工程と、
前記端子の前記発光素子側の側面及び上面に、第1金属層を形成する工程と、
前記第1金属層の上面に、少なくとも前記発光素子側の側面側の前記第1金属層が外方へ露出するように、前記第1金属層より半田の濡れ性が高い第2金属層を形成する工程と、を備える
ことを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のサスペンション用基板において、端子の上面とスライダパッドとを半田付けする時に、半田が端子の発光素子側の側面に回り込んでしまう。このため、磁気ヘッドスライダの発光素子は回り込んだ半田に接触する。高温の半田に接触した発光素子は、破損してしまう恐れがある。また、半田が硬化した後、振動などによって半田を介して力が加わることで、発光素子が破損してしまう恐れもある。このように、従来のサスペンション用基板では、熱アシスト記録方式に対応する磁気ヘッドスライダの実装信頼性が低下してしまう。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、熱アシスト記録方式に対応する磁気ヘッドスライダの実装信頼性を向上させることができるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブおよびサスペンション用基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によるサスペンション用基板は、
発光素子を搭載した磁気ヘッドスライダが実装される磁気ヘッドスライダ実装領域を有するサスペンション用基板であって、
前記磁気ヘッドスライダ実装領域は、
前記発光素子が挿通する開口を有する金属基板と、
前記金属基板上に前記開口を囲んで設けられた絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた配線層と、を備え、
前記配線層は、複数の配線と、各配線の先端に接続され、前記開口の近傍に配置されて前記磁気ヘッドスライダに電気的に接続される端子と、を有し、
前記端子の前記発光素子側の側面及び上面は、第1金属層により覆われ、
前記第1金属層の上面に、前記第1金属層より半田の濡れ性が高い第2金属層が設けられ、
少なくとも前記発光素子側の側面側の前記第1金属層は、外方へ露出する
ことを特徴とする。
【0009】
上記サスペンション用基板において、
前記配線層の前記端子は、前記開口上に突出し、
前記絶縁層は、前記開口上に突出すると共に前記配線層の前記端子を支持する、互いに離間する複数の突出部を有してもよい。
【0010】
上記サスペンション用基板において、
前記絶縁層の突出部間が前記発光素子の光導波路となっていてもよい。
【0011】
上記サスペンション用基板において、
前記金属基板は、金属基板本体と、前記絶縁層の前記突出部の裏面に設けられ、前記金属基板本体に離隔した放熱金属部と、を有してもよい。
【0012】
上記サスペンション用基板において、
前記第1金属層はニッケルめっき層であり、
前記第2金属層は金めっき層であってもよい。
【0013】
本発明の一態様によるサスペンションは、
ベースプレートと、
前記ベースプレートに、ロードビームを介して取り付けられた上記サスペンション用基板と、を備える。
【0014】
本発明の一態様によるヘッド付サスペンションは、
上記サスペンションと、
前記サスペンションに実装された前記磁気ヘッドスライダと、を備える。
【0015】
本発明の一態様によるハードディスクドライブは、
上記ヘッド付サスペンションを備える。
【0016】
本発明の一態様によるサスペンション用基板の製造方法は、
発光素子を搭載した磁気ヘッドスライダが実装される磁気ヘッドスライダ実装領域を有し、前記磁気ヘッドスライダ実装領域は、前記発光素子が挿通する開口を有する金属基板と、前記金属基板上に前記開口を囲んで設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に設けられた配線層と、を備える、サスペンション用基板の製造方法であって、
前記配線層に、複数の配線と、各配線の先端に接続され、前記開口の近傍に配置されて前記磁気ヘッドスライダに電気的に接続される端子と、を形成する工程と、
前記端子の前記発光素子側の側面及び上面に、第1金属層を形成する工程と、
前記第1金属層の上面に、少なくとも前記発光素子側の側面側の前記第1金属層が外方へ露出するように、前記第1金属層より半田の濡れ性が高い第2金属層を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
上記サスペンション用基板の製造方法において、
前記第1金属層は、第3金属層と第4金属層からなり、
前記第1金属層を形成する工程は、
前記端子の前記発光素子側の側面及び上面に、前記第3金属層を形成する工程と、
前記第3金属層の上面を酸洗浄する工程と、
酸洗浄された前記第3金属層の上面に、前記第3金属層と同一材料で前記第4金属層を形成する工程と、を有してもよい。
【0018】
上記サスペンション用基板の製造方法において、
前記第1金属層はニッケルめっき層であり、
前記第2金属層は金めっき層であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、熱アシスト記録方式に対応する磁気ヘッドスライダの実装信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るサスペンション用基板1の平面図である。
図1に示すように、サスペンション用基板1は、平面からみて発光素子55を搭載した磁気ヘッドスライダ50(
図5参照)が実装される実装領域2と、電極パッド3と、実装領域2及び電極パッド3を接続する配線層30とを備えている。配線層30は、複数の配線を有している。
図1はサスペンション用基板1を示す簡略化した平面図であり、
図1において複数の配線は1本の線で表示されている。また、
図1において電極パッド3を2つ示しているが、実際には配線に応じた数の電極パッド3が設けられる。電極パッド3は、サスペンション用基板1と外部回路との接続に用いられるものである。
【0023】
配線層30は、後述するディスク103(
図9参照)に対する書き込みデータや、ディスク103からの読み出しデータを伝送することができる。
【0024】
次に、実装領域2について説明する。まず、磁気ヘッドスライダ50が実装されていない状態について説明して、実装されている状態については後述する。
【0025】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るサスペンション用基板1の実装領域2の平面図である。
図3は、
図2の領域Aの拡大平面図である。
図3(a)は表面側を示す図であり、
図3(b)は裏面側を示す図である。
図4は、
図3のB−B線に沿った断面図である。
【0026】
図2から
図4に示すように、磁気ヘッドスライダ実装領域2は、発光素子55が挿通する開口10Aを有する金属基板10と、金属基板10上に開口10Aを囲んで設けられた絶縁層20と、絶縁層20上に設けられた配線層30と、を備える。
【0027】
配線層30は、読取配線および書込配線を含む複数の配線31と、各配線31の先端に接続された端子32と、を有する。複数の端子32は、開口10Aの近傍に配置されて、後述するように磁気ヘッドスライダ50に電気的に接続される。本実施形態では、複数の端子32は、一方向に並んで、発光素子55側に向けて開口10A上に突出している。1箇所の隣り合う2つの端子32間の間隔d2は、他の隣り合う2つの端子32間の間隔d1より広くなっている。
【0028】
また、
図2に示すように、配線層30は、発光素子配線35と、各発光素子配線35の先端に接続された発光素子端子36と、を有する。発光素子端子36は、開口10A上に配置されて、後述するように発光素子55に電気的に接続される。
【0029】
図3(b)及び
図4に示すように、絶縁層20は、開口10A上に突出すると共に配線層30の端子32を支持する、互いに離間する複数の突出部21を有する。
図4に示すように、絶縁層20の突出部21の発光素子55側の側面20Aよりも、端子32の発光素子55側の側面32Aは突出している。但し、側面20Aは、側面32Aに位置が一致していてもよく、側面32Aより突出していてもよい。絶縁層20の突出部21の幅は、端子32の幅とほぼ同一である。
【0030】
このような構成により、間隔d2で隣り合う2つの端子32間には、絶縁層20も設けられておらず、空間40となっている。
【0031】
図3(a)及び
図4に示すように、端子32の発光素子55側の側面32Aと、上面32Bと、突出部21よりも突出した下面32Cとは、ニッケル(Ni)めっき層(第1金属層)33により覆われている。
【0032】
ニッケルめっき層33の上面33Aに、ニッケルめっき層33より半田の濡れ性が高い金(Au)めっき層(第2金属層)34が設けられている。本実施形態では、ニッケルめっき層33の上面33Aの一部として凹部33Bが設けられており、この凹部33B上に金めっき層34が設けられている。後述するように、このような構成は、製造方法に起因したものである。
【0033】
金めっき層34は、ニッケルめっき層33の上面33Aの全面に設けられていてもよい。この場合、金めっき層34の発光素子55側の側面34Aは、ニッケルめっき層33の発光素子55側の側面33Cに位置が一致する。しかし、少なくとも発光素子55側の側面32A側のニッケルめっき層33は、外方へ露出する。即ち、ニッケルめっき層33の発光素子55側の側面33Cには、金めっき層34は設けられていない。
【0034】
なお、
図2では、説明を明確化するために、ニッケルめっき層33、金めっき層34および後述するカバー層70は省略されている。
【0035】
次に、この実装領域2に磁気ヘッドスライダ50が実装された状態について説明する。
【0036】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る磁気ヘッドスライダ50が実装された実装領域2の平面図である。
図6は、
図5のC−C線に沿った断面図である。なお、
図5では、説明を明確化するために、ニッケルめっき層33、金めっき層34および後述するカバー層70は省略されている。
【0037】
図5および
図6に示すように、磁気ヘッドスライダ50の裏面(下面)には、レーザーダイオード(LD)素子又は発光ダイオード(LED)素子55(以下、単に“発光素子55”と称する)が搭載されており、発光素子55が開口10Aを挿通するように、磁気ヘッドスライダ50が実装領域2に実装される。このように、本実施形態におけるサスペンション用基板1には、熱アシスト記録方式に対応する磁気ヘッドスライダ50が実装されるようになっている。発光素子55は光導波路56を有しており、この光導波路56は磁気ヘッドスライダ50の端子32側の側面に設けられている。データの書き込み時に、発光素子55から発せられた光が光導波路56に導かれて、磁気ヘッドスライダ50の表面(上面)側からディスク103に照射されて、ディスク103を加熱するようになっている。
【0038】
図5に示すように、絶縁層20の突出部21間(即ち端子32間)の空間40が発光素子55の光導波路56となっている。なお、光導波路56は、図示するような楕円筒状の形状を有していてもよく、単に光が導かれる空間であってもよい。
【0039】
図5および
図6に示すように、端子32上の金めっき層34は、半田60により磁気ヘッドスライダ50の端子32側の側面に設けられているスライダパッド51と電気的に接続されている。このようにして、配線31と磁気ヘッドスライダ50とが電気的に接続されている。
【0040】
磁気ヘッドスライダ50の裏面は、端子32側とは反対側において、支持部75によって支持されている。支持部75の上面は、ニッケルめっき層33の上面33Aとほぼ同一の高さになっている。支持部75は、金属基板10上に設けられた追加絶縁層27と、追加絶縁層27上に島状に設けられた追加配線層37と、追加絶縁層27及び追加配線層37の上に設けられたカバー層70と、を備えている。追加配線層37は電気的に接続された配線であっても、接続されていない配線(ダミー配線)であってもよい。また、追加絶縁層27は、絶縁層20と一体的に設けられていてもよいし、分離して設けられていてもよい。
【0041】
図6に示すように、支持部75と磁気ヘッドスライダ50の裏面と金属基板10とで3方を囲まれた空間76には、金属基板10と磁気ヘッドスライダ50の裏面とを接着して磁気ヘッドスライダ50を固定する接着部材61が設けられている。接着部材61には、接着剤、導電ペースト、半田等を用いることができる。接着部材61に導電性を有する材料を使用し、磁気ヘッドスライダ50裏面のグランドパッド(図示せず)に接続させることが好ましい。
【0042】
また、磁気ヘッドスライダ50の裏面は、
図2を参照して前述した2つの発光素子端子36によっても支持されている。発光素子端子36の上面には、ニッケルめっき層及び金めっき層がこの順に設けられている。その上で、発光素子端子36は、発光素子55の側面に設けられた発光素子パッド(図示せず)に、半田等を用いて電気的に接続されている(図示せず)。
【0043】
次に、サスペンション用基板1の各構成部材について説明する。
【0044】
電極パッド3は、例えば、配線層30上に形成されたニッケルめっき層と、このニッケルめっき層上に形成された金めっき層とを有する。
【0045】
金属基板10の材料としては、所望の導電性、弾力性、および強度を有するものであれば特に限定されることはないが、例えば、ステンレス、アルミニウム、ベリリウム銅、またはその他の銅合金を用いることができ、ステンレスを用いることが好適である。
【0046】
配線層30及び追加配線層37の材料としては、所望の導電性を有する材料であれば特に限定されることはないが、銅(Cu)を用いることが好適である。銅以外にも、純銅に準ずる電気特性を有する材料であれば用いることもできる。
【0047】
絶縁層20及び追加絶縁層27の材料としては、所望の絶縁性を有する材料であれば特に限定されることはないが、例えば、ポリイミド(PI)を用いることが好適である。
【0048】
カバー層70の材料としては、樹脂材料、例えば、ポリイミド(PI)を用いることが好適である。なお、カバー層70の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。
【0049】
次に、
図7により、本実施形態におけるサスペンション81について説明する。
図7に示すサスペンション81は、上述したサスペンション用基板1と、サスペンション用基板1の実装領域2とは反対側となる面(下面)に設けられ、上述の磁気ヘッドスライダ50を後述のディスク103(
図9参照)に対して保持するためのロードビーム82とを有している。
【0050】
次に、
図8により、本実施形態におけるヘッド付サスペンション91について説明する。
図8に示すヘッド付サスペンション91は、上述したサスペンション81と、サスペンション用基板1の実装領域2に実装され、複数のスライダパッド51が設けられた磁気ヘッドスライダ50とを有している。前述のように、この磁気ヘッドスライダ50の裏面には、発光素子55が搭載されている。
【0051】
次に、
図9により、本実施形態におけるハードディスクドライブ101について説明する。
図9に示すハードディスクドライブ101は、ケース102と、このケース102に回転自在に取り付けられ、データが記憶されるディスク103と、このディスク103を回転させるスピンドルモータ104と、ディスク103に所望のフライングハイトを保って近接するように設けられ、ディスク103に対してデータの書き込みおよび読み出しを行う磁気ヘッドスライダ50を含むヘッド付サスペンション91とを有している。このうちヘッド付サスペンション91は、ケース102に対して移動自在に取り付けられ、ケース102にはヘッド付サスペンション91の磁気ヘッドスライダ50をディスク103上に沿って移動させるボイスコイルモータ105が取り付けられている。また、ヘッド付サスペンション101とボイスコイルモータ105との間には、アーム106が連結されている。
【0052】
[サスペンション用基板1の製造方法]
次に、本実施形態に係るサスペンション用基板1の製造方法について説明する。ここでは、一例として、
図10,11を用いて、サブトラクティブ法によりサスペンション用基板1を製造する方法について説明する。
図10,11は、
図4の断面図に対応しているが、
図4よりも配線31側に広い範囲を図示している。なお、当然のことながら、サブトラクティブ法ではなく、アディティブ法によりサスペンション用基板1を製造することも可能である。
【0053】
まず、金属基板10と、絶縁層20と、配線層30と、を有する積層体を準備する(
図10(a)参照)。この場合、まず、ステンレスからなる厚さ約20μmの金属基板10を準備し、この金属基板10上に、非感光性ポリイミドを用いた塗工方法により絶縁層20が形成される。続いて、絶縁層20上に、ニッケル、クロム、および銅がスパッタ工法により順次コーティングされ、厚さ約300nmのシード層(図示せず)が形成される。その後、このシード層を導通媒体として、銅めっきにより厚さ約9μmの配線層30が形成される。このようにして、金属基板10と、絶縁層20と、配線層30と、を有する積層体が得られる。
【0054】
続いて、配線層30において、複数の配線31、端子32、発光素子配線35、発光素子端子36、電極パッド3および追加配線層37が形成されると共に、金属基板10に治具孔(図示せず)及び開口10Aが形成される(
図1,2および
図10(b)参照)。この場合、まず、配線層30の上面と、金属基板10の下面とに、フォトファブリケーションの手法により、ドライフィルムレジストを用いて、パターン状のレジスト(図示せず)が形成される。次に、配線層30及び金属基板10のうちレジストから露出された部分がエッチングされる。ここで、配線層30及び金属基板10をエッチングする方法は、特に限定されるものではないが、ウェットエッチングを行うことが好ましい。エッチング液は、配線層30や金属基板10の材料の種類に応じて適宜選択することが好ましいが、例えば、配線層30の材料が銅であり、金属基板10の材料がステンレスである場合には、エッチング液は、塩化第二鉄水溶液等の塩化鉄系エッチング液を用いることができる。エッチングが行われた後、レジストは除去される。
【0055】
次に、絶縁層20及び配線31上に、絶縁層20及び配線31を覆うカバー層70が形成される(
図10(c)参照)。この場合、まず、非感光性ポリイミドが、ダイコータを用いて、絶縁層20及び配線層30上にコーティングされる。続いて、コーティングされた非感光性ポリイミドを乾燥させて、カバー層70が形成される。次に、形成されたカバー層70上に、パターン状のレジスト(図示せず)が形成される。続いて、カバー層70が現像されてエッチングされ、エッチングされたカバー層70を硬化して、所望の形状のカバー層70が得られる。その後、レジストは除去される。
【0056】
カバー層70が形成された後、絶縁層20が外形加工される(
図10(d)参照)。この場合、まず、絶縁層20の上面及び下面と、カバー層70の上面とに、パターン状のレジスト(図示せず)が形成される。続いて、絶縁層20のうちレジストから露出された部分がエッチングされて、絶縁層20がパターン状に外形加工される。ここで、絶縁層20をエッチングする方法は、特に限定されるものではないが、ウェットエッチングを行うことが好ましい。とりわけ、エッチング液は、絶縁層20の材料の種類に応じて適宜選択することが好ましいが、例えば、絶縁層20がポリイミド樹脂からなる場合には、有機アルカリエッチング液等のアルカリ系エッチング液を用いることができる。エッチングが行われた後、レジストは除去される。
【0057】
絶縁層20が外形加工された後、端子32にニッケルめっきが施される(
図11(a)参照)。この場合、端子32表面のプラズマクリーニング処理後、再度、絶縁層20の上面と下面およびカバー層70の上面に、パターン状のレジスト(図示せず)が形成される。続いて、端子32の表面に膜厚が0.01〜0.05μmと極めて薄いニッケルストライクめっき層を形成し、このニッケルストライクめっき層を下地に電解ニッケルめっきを行う。なお、電解ニッケルめっき浴には標準的なスルファミン酸ニッケルめっき浴を用い、電解浸漬めっき(0.03A、2分)で電解ニッケルめっきを行う。これにより、ニッケルめっき層33が形成される。めっきが施された後、レジストは除去される。
【0058】
次に、端子32にニッケルめっき層33が形成された後、ニッケルめっき層33に、電解めっき法により金めっきが施される(
図11(b)参照)。この場合、再度、絶縁層20の上面と下面、カバー層70の上面およびニッケルめっき層33の上面33Aと側面33Cと下面33Dに、パターン状のレジスト(図示せず)が形成される。続いて、レジストから露出された部分のニッケルめっき層33の上面33Aを酸洗浄する。これにより、ニッケルめっき層33の上面33Aに凹部33Bが形成される。その後、電解金めっきを行う。これにより、ニッケルめっき層33の凹部33B上に金めっき層34が形成される。本実施形態においては、電解めっき法により金めっき層34を形成する。金めっき層34を形成する方法としては、治具めっき法を挙げることができる。めっきが施された後、レジストは除去される。
【0059】
ニッケルめっき層33及び金めっき層34は、カバー層70に覆われていない配線層30の表面上に形成されるものである。上述したように、本実施形態においては、磁気ヘッドスライダ50等の素子に接続される端子32及び発光素子端子36や、外部回路に接続される電極パッド3にニッケルめっき層33及び金めっき層34が形成されていることが好ましい。めっきの種類は特に限定されるものではないが、例えば、金めっき、ニッケルめっき、銀(Ag)めっき、銅(Cu)めっき等を挙げることができる。中でも、本実施形態のように、配線層30の表面側から、ニッケルめっき層33および金めっき層34がこの順番で形成されていることが好ましい。ニッケルめっき層33および金めっき層34の厚さは、例えば、0.1μm〜4.0μmの範囲内である。
【0060】
なお、電極パッド3等のニッケルめっき層及び金めっき層の厚さを、端子32のニッケルめっき層33及び金めっき層34と異なるようにする場合、端子32に対して
図11(a),(b)に示す上記端子めっき工程を行った後、電極パッド3等に対して再度
図11(a),(b)に示す上記端子めっき工程を行っても良い。
【0061】
その後、金属基板10が外形加工される(
図1参照)。この場合、まず、金属基板10の上面および下面に、ドライフィルムを用いて、パターン状のレジスト(図示せず)が形成される。次に、例えば、塩化鉄系エッチング液により、金属基板10のうちレジストから露出された部分がエッチングされ、金属基板10が外形加工される。その後、レジストは除去される。このようにして、本実施形態によるサスペンション用基板1が得られる。
【0062】
このようにして得られたサスペンション用基板1の下面に、ロードビーム82が取り付けられて
図7に示すサスペンション81が得られる。このサスペンション81の実装領域2に、発光素子55を搭載した磁気ヘッドスライダ50が実装されて
図8に示すヘッド付サスペンション91が得られる。このとき、
図5及び
図6に示すように、発光素子55は金属基板10の開口10Aに挿通され、磁気ヘッドスライダ50の下面が支持部75及び発光素子端子36に支持されると共に、磁気ヘッドスライダ50が接着部材61によって金属基板10に固定される。そして、配線層30の端子32は、半田60によって、磁気ヘッドスライダ50のスライダパッド51に電気的に接続されると共に、配線層30の発光素子端子36は、半田によって、発光素子55の発光素子パッドに電気的に接続される。半田付けの方法としては、例えば、SBB(Solder Ball Bonding)法やSJB(Solder Jet Bonding)法が挙げられる。
【0063】
さらに、このヘッド付サスペンション91がハードディスクドライブ101のケース102に取り付けられて、
図9に示すハードディスクドライブ101が得られる。
【0064】
このように、本実施形態によれば、端子32の発光素子55側の側面32A及び上面32Bはニッケルめっき層33により覆われ、ニッケルめっき層33の上面33Aに、ニッケルめっき層33より半田の濡れ性が高い金めっき層34が設けられ、発光素子55側の側面側のニッケルめっき層33は外方へ露出している。この構成により、磁気ヘッドスライダ50をサスペンション用基板1に実装する時に、溶解した半田60は金めっき層34に付着して、ニッケルめっき層33には付着し難い。従って、溶解した半田60が発光素子55とニッケルめっき層33の側面33Cとの間に回り込む(流れる)ことを防止できる。即ち、半田60が発光素子55に付着することを防止できる。
【0065】
これにより、発光素子55が半田60の熱により破損してしまう恐れがない。また、半田60が硬化した後、振動などによって半田60を介して発光素子55に力が加わることもないので、発光素子55の破損を防止できる。
【0066】
また、端子32を支持している絶縁層20の突出部21が互いに離間しているので、放熱性が高くなる。従って、溶解した半田60によって端子32に加えられた熱は突出部21を介して放熱され、半田60は迅速に硬化するので、より発光素子55とニッケルめっき層33の側面33Cとの間に回り込み難くなる。即ち、より確実に、半田60が発光素子55に付着することを防止できる。
【0067】
さらに、磁気ヘッドスライダ50の側面から端子32側に突出している光導波路56を、端子32間の空間40に配置できる。これにより、磁気ヘッドスライダ50を端子32に近づけて配置できるので、磁気ヘッドスライダ50のスライダパッド51と金めっき層34との間の距離が短くなり、さらに確実に半田60が発光素子55とニッケルめっき層の側面33Cとの間に回り込むことを防止できる。また、磁気ヘッドスライダ50をサスペンション用基板1に実装する際の位置決めや、実装後の位置の微調整が容易になる。
【0068】
以上のように、本実施形態によれば、磁気ヘッドスライダ50の実装信頼性を向上できる。
【0069】
(比較例)
ここで、発明者が知得する比較例について説明する。
図12は、比較例のサスペンション用基板の実装領域の平面図である。
図12は、第1の実施形態の
図2に対応する図である。
図13は、
図12のD−D線に沿った断面図である。
図14は、
図12のE−E線に沿った断面図である。
【0070】
図13に示すように、比較例においては、金めっき層34が、端子32の発光素子55側の側面側のニッケルめっき層33も覆っている。従って、磁気ヘッドスライダ50のスライダパッド51と端子32の金めっき層34を半田付けする時に、半田60は、金めっき層34の側面34Xを流れて、発光素子55と金めっき層34の側面34Xとの間に容易に回り込む。これにより、半田60が発光素子55に付着した状態で硬化する。このため、高温の半田60に接触した発光素子55は、破損してしまう恐れがある。また、半田60が硬化した後、振動などによって半田60を介して力が加わることで、発光素子55が破損してしまう恐れもある。
【0071】
また、
図12及び
図14に示すように、比較例においては、全ての端子32間に絶縁層20が設けられているため、光導波路56が、端子32付近の絶縁層20に接触している。そのため、磁気ヘッドスライダ50と端子32との間の距離が第1の実施形態よりも長くなり、半田60が発光素子55と金めっき層34の側面34Xとの間にさらに回り込み易くなる。また、磁気ヘッドスライダ50をサスペンション用基板に実装する際の位置決めや、実装後の位置の微調整が困難になる。
【0072】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、絶縁層20の突出部21の裏面に、放熱金属部12を設けた点が第1の実施形態と異なる。
【0073】
図15(a)は、本発明の第2の実施形態に係るサスペンション用基板1の実装領域2の拡大平面図(裏面図)である。
図15(a)は、
図3(b)の裏面図に対応する。
図15(b)は、
図15(a)のF−F線に沿った断面図である。
【0074】
図15(a),(b)に示すように、金属基板10は、金属基板本体11と、絶縁層20の突出部21の裏面に設けられ、金属基板本体11に離隔した放熱金属部12と、を有する。本実施形態では、放熱金属部12は、突出部21の裏面全体に設けられると共に、突出部21の付け根側の一体的に設けられている絶縁層20の裏面にも設けられている。但し、放熱金属部12は、突出部21の裏面の一部のみに設けられていてもよい。その他の構成は、
図2〜
図4の第1の実施形態と同一であるため、同一の要素に同一の符号を付して図示及び説明を省略する。
【0075】
このように、本実施形態によれば、絶縁層20の突出部21の裏面に放熱金属部12を設けているので、半田付けの際に半田60の熱が放熱金属部21を介して放熱される。従って、第1の実施形態よりも放熱性が高くなり、半田はより迅速に硬化するので、より確実に半田60が発光素子55とニッケルめっき層の側面33Cとの間に回り込むことを防止できる。即ち、より確実に、半田60が発光素子55に付着することを防止できる。
【0076】
ところで、一般的には、端子32の隣り合う端子32側の側面にも、ニッケルめっき層33及び金めっき層34が形成されている。本実施形態によれば、各放熱金属部12は、金属基板本体11に離隔しているので、仮に半田60が端子32の上面の金めっき層34から端子32の隣り合う端子32側の側面の金めっき層34を回り込んで放熱金属部12に付着した場合であっても、各端子32間の電気的な短絡を防止できる。
また、第1の実施形態と同様の効果も得られる。
【0077】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、端子32を支持する絶縁層20が一体的に設けられている点が第1の実施形態と異なる。
【0078】
図16は、本発明の第3の実施形態に係るサスペンション用基板1の実装領域2の拡大平面図である。
図16(a)は
図3(a)に対応して表面側を示す図であり、
図16(b)は
図3(b)に対応して裏面側を示す図である。
【0079】
図16(a),(b)に示すように、端子32を支持する絶縁層20は、一体的に設けられている。即ち、隣り合う端子32間にも絶縁層20が設けられている。但し、第1の実施形態と同様に、1箇所の隣り合う2つの端子32間には、空間40が設けられている。その他の構成は、
図2〜
図4の第1の実施形態と同一であるため、同一の要素に同一の符号を付して図示及び説明を省略する。
【0080】
このように、本実施形態によれば、端子32を支持する絶縁層20が一体的に設けられていて、端子32の数と同数の突出部を有していないので、第1の実施形態よりも製造が容易である。この構成によっても、第1の実施形態と同様に、半田60が発光素子55とニッケルめっき層33の側面33Cとの間に回り込むことを防止できる。即ち、半田60が発光素子55に付着することを防止できる。
【0081】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、ニッケルめっき層33の構成が第1の実施形態と異なる。
【0082】
図17は、本発明の第4の実施形態に係るサスペンション用基板1の実装領域2の断面図である。
図17(a)に示すように、ニッケルめっき層33は、第1ニッケルめっき層(第3金属層)38と第2ニッケルめっき層(第4金属層)39からなっている。
【0083】
具体的には、第1ニッケルめっき層38の上面38Aに設けられた凹部38Bに、第2ニッケルめっき層39が設けられ、その第2ニッケルめっき層39上に金めっき層34が設けられている。第2ニッケルめっき層39の上面39Aは、第1ニッケルめっき層38の上面38Aより高くなっている。
【0084】
図17(b)に示すように、第2ニッケルめっき層39の上面39Aは、第1ニッケルめっき層38の上面38Aとほぼ同一の高さでもよい。
【0085】
[サスペンション用基板1の製造方法]
本実施形態のサスペンション用基板1の製造方法は、ニッケルめっき層33を形成する工程のみが、第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と異なる工程を中心に説明して、同一の工程については説明を省略する。
【0086】
図18は、本発明の第4の実施形態に係るサスペンション用基板1の製造方法を示す断面図である。
図18は、
図17(a)の断面図に対応する。
【0087】
ニッケルめっき層33を形成する工程は、次の工程を有する。
まず、
図11(a)を参照して第1の実施形態で説明したように、絶縁層20が外形加工された後、端子32にニッケルめっきが施される。具体的な方法は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。これにより、端子32の発光素子55側の側面及び上面に、第1ニッケルめっき層38が形成される(
図11(a)参照)。
【0088】
次に、第1ニッケルめっき層38の上面38Aに、酸洗浄が施される(
図18(a)参照)。この場合、絶縁層20の上面と下面、カバー層70の上面および第1ニッケルめっき層38の上面38Aと側面38Cと下面38Dに、パターン状のレジスト(図示せず)が形成される。続いて、レジストから露出された部分の第1ニッケルめっき層38の上面38Aを酸洗浄する。これにより、第1ニッケルめっき層38の上面38Aに凹部38Bが形成される。
【0089】
次に、酸洗浄された第1ニッケルめっき層38の上面にニッケルめっきが施される(
図18(b)参照)。この場合、レジストから露出された第1ニッケルめっき層38の凹部38Bに、第1の実施形態と同様に膜厚が0.01〜0.05μmと極めて薄いニッケルストライクめっき層を形成し、このニッケルストライクめっき層を下地に電解ニッケルめっきを行う。これにより、凹部38Bに第2ニッケルめっき層39が形成される。つまり、第1ニッケルめっき層38及び第2ニッケルめっき層39からなるニッケルめっき層33が形成される。
【0090】
次に、第2ニッケルめっき層39に、電解めっき法により金めっきが施される(
図18(c)参照)。この場合、レジストから露出された第2ニッケルめっき層39に、第1の実施形態と同様に電解金めっきを行う。これにより、第2ニッケルめっき層39の上面に金めっき層34が形成される。金めっきが施された後、レジストは除去される。
【0091】
このように、本実施形態によれば、酸洗浄により形成された第1ニッケルめっき層38の凹部38Bに、さらに第2ニッケルめっき層39を形成するようにしている。これにより、第1ニッケルめっき層38が酸洗浄によって除去され過ぎて端子32の上面が露出した場合であっても、その後で形成された第2ニッケルめっき層39上に金めっき層34を形成できる。従って、金めっき層34を形成する際の信頼性を向上できる。
【0092】
仮に、酸洗浄によって露出した端子32の上面に直接金めっきを施すと、端子32の露出した部分には、金めっき層34が形成されない恐れがある。本実施形態では、このような状態を避けることができる。
また、第1の実施形態と同様の効果も得られる。
【0093】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0094】
例えば、磁気ヘッドスライダ50に搭載される発光素子55はレーザーダイオード素子や発光ダイオード素子に限定されず、レーザーダイオード素子又は発光ダイオード素子を搭載した光源ユニットでもよく、また、ハードディスクの磁気記録を行う部分を加熱できるものであれば、他の機能性素子でもよい。
【0095】
また、上記各実施形態では、第1金属層はニッケルめっき層であり、第2金属層は金めっき層である一例について説明したが、これに限られない。即ち、第2金属層は第1金属層より半田の濡れ性が高ければよい。例えば、第1金属層はニッケルめっき層であり、第2金属層は金-コバルト合金めっき層でもよい。また、第1金属層はニッケルめっき層であり、第2金属層は錫めっき層でもよい。また、第1金属層はニッケルめっき層であり、第2金属層は錫-ニッケル合金めっき層でもよい。さらに、第1金属層はニッケルめっき層であり、第2金属層は錫-コバルト合金めっき層でもよい。これらによっても、上記各実施形態と同様の効果が得られる。