特許第6048859号(P6048859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6048859導電線、導電線の製造方法及び導電線の配索構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048859
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】導電線、導電線の製造方法及び導電線の配索構造
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20161219BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20161219BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20161219BHJP
   H02G 15/08 20060101ALI20161219BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20161219BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20161219BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20161219BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   H01B7/00 301
   H01B7/00 306
   H01B7/18 Z
   H02G1/14
   H02G15/08
   B60R16/02 620A
   B60R16/02 623U
   B60K6/40
   B60L11/18
   H01R4/02 C
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-525228(P2015-525228)
(86)(22)【出願日】2014年7月1日
(86)【国際出願番号】JP2014067503
(87)【国際公開番号】WO2015002180
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2015年7月23日
(31)【優先権主張番号】特願2013-140918(P2013-140918)
(32)【優先日】2013年7月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金川 収一
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/102005(WO,A1)
【文献】 特開2013−025997(JP,A)
【文献】 特開2013−069623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
B60K 6/40
B60L 11/18
B60R 16/02
H01B 7/17
H01R 4/02
H02G 1/14
H02G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一本の導体を被覆で包囲してなる単芯線電線と、
複数本の素線が撚られ、これらが被覆で包囲されてなる撚線電線と、を接続してなる導電線であって、前記単芯線電線と前記撚線電線との接続部位が、端部に金属編組部が接続されているシールドパイプの内部に収められるものであり、
前記単芯線電線における長さ方向の両端部のうち少なくとも一方の端部には前記撚線電線が電気的に接続され、
前記単芯線電線の前記端部は前記被覆が剥がされて前記導体が露出されるとともに、この露出された前記導体が厚さ方向において片側へ寄せられるように圧潰されて平板状の圧潰部が形成され、この圧潰部に前記撚線電線の素線が接続されていることを特徴とする導電線。
【請求項2】
前記単芯線電線と前記撚線電線との接続部位はシール部材によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の導電線。
【請求項3】
前記シール部材は、前記接続部位を覆いつつ前記単芯線電線の被覆と前記撚線電線の被覆との間を接続する熱収縮チューブであることを特徴とする請求項2に記載の導電線。
【請求項4】
一本の導体を被覆で包囲してなる単芯線電線と、
複数本の素線が撚られ、これらが被覆で包囲されてなる撚線電線と、を接続してなる導電線の製造方法であって、前記単芯線電線と前記撚線電線との接続部位が、端部に金属編組部が接続されているシールドパイプの内部に収められるものであり、
前記単芯線電線における長さ方向の両端部のうち少なくとも一方の前記導体の端部と前記撚線電線の前記素線の端部とをパイプに挿入してその端面同士を突き合わせた状態にする工程と、突き合わせた端面同士を溶接して電気的に接続する工程と、前記パイプを割って除去する工程と、を経る導電線の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の導電線、または請求項に記載の導電線の製造方法により製造された導電線の配索構造であって、
ハイブリッド車あるいは電気自動車の床下に配されて前記単芯線電線が挿通されるシールドパイプを備え、前記撚線電線は少なくともその一部が前記シールドパイプから突出した状態で前記単芯線電線に対し電気的に接続されていることを特徴とする導電線の配索構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電線、導電線の製造方法及び導電線の配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車あるいは電気自動車においては、バッテリとモータ(インバータ)との間が導電線によって接続されている。そのような導電線の配索構造として、下記特許文献1のものが知られている。ここに開示された配索構造では、自動車のリヤ側に設けられたバッテリとエンジンルーム内に設けられたインバータとの間は3本の電線によって接続されている。車両の床下には金属製のシールドパイプが配されていて、導電線はこのシールドパイプ内に挿通されている。シードパイプは予め定められた配索経路の形状に沿って曲げ加工されており、その前端側はエンジンルーム内に導入され、インバータの近くまで延びている。シールドパイプからインバータに至るまでの間の配索経路は比較的短く、自由に曲げができないと接続作業が困難になってしまうため、シールドパイプの前端側には金属素線を筒状に網組してなる金属編組部が接続され、容易に屈曲できるようになっている。同様に、内部の導電線も金属編組部の曲げに追従できなければならないから、バッテリとモータ(インバータ)との間を接続する各導電線は、その全配索経路間が屈曲性に優れる撚線電線を用いるのが通常であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−173456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シールドパイプの径は内部に挿通される導電線の外径に依存する。しかし、上記した撚線電線は細径化が図りにくく、また、複数本の金属素線を撚り合わせる工程を必要とすることから、コスト高を招きやすい、という問題点も指摘されていた。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、導電線の端部は自由な屈曲性を確保し必要部については細径化することができる導電線、導電線の製造方法及び導電線の配索構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る導電線は、一本の導体を被覆で包囲してなる単芯線電線と、複数本の素線が撚られ、これらが被覆で包囲されてなる撚線電線と、を接続してなる導電線であって、前記単芯線電線と前記撚線電線との接続部位が、端部に金属編組部が接続されているシールドパイプの内部に収められるものであり、単芯線電線における長さ方向の両端部のうち少なくとも一方の端部には撚線電線が電気的に接続され、前記単芯線電線の前記端部は前記被覆が剥がされて前記導体が露出されるとともに、この露出された前記導体が厚さ方向において片側へ寄せられるように圧潰されて平板状の圧潰部が形成され、この圧潰部に前記撚線電線の素線が接続されていることを特徴とする。
第2の発明に係る導電線の製造方法は、一本の導体を被覆で包囲してなる単芯線電線と、複数本の素線が撚られ、これらが被覆で包囲されてなる撚線電線と、を接続してなる導電線の製造方法であって、前記単芯線電線と前記撚線電線との接続部位が、端部に金属編組部が接続されているシールドパイプの内部に収められるものであり、前記単芯線電線における長さ方向の両端部のうち少なくとも一方の前記導体の端部と前記撚線電線の前記素線の端部とをパイプに挿入してその端面同士を突き合わせた状態にする工程と、突き合わせた端面同士を溶接して電気的に接続する工程と、前記パイプを割って除去する工程と、を経ることを特徴とする。
【0007】
また、このような導電線を用いた第3の発明に係る配索構造は、ハイブリッド車あるいは電気自動車の床下に配されて前記単芯線電線が挿通されるシールドパイプを備え、前記撚線電線は少なくともその一部がシールドパイプから突出した状態で単芯線電線に対し電気的に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導電線の端部は撚線電線によって構成されるため、端部の配索区間は良好な屈曲性を確保することができる。また、必要な配索区間は単芯線電線によって構成されるため、撚線電線に比較して細径化することができ、狭隘なスペースでの配索に有利となる。
【0009】
また、このような導電線をハイブリッド車あるいは電気自動車に適用すれば、次のような効果が得られる。すなわち、車両床下に配されたシールドパイプは曲げの度合いも小さくかつ予め定められた配索経路に沿って曲げ加工されているため、曲げ性がさほどに高くない単芯線電線を十分に利用可能である。そして、単芯線電線は上記したように、撚線電線に比較して細径化が図りやすい。したがって、シールドパイプの細径化に寄与し設置スペースの効率化と軽量化を達成することができる。シールドパイプは、ハイブリッド車両等においては導電線の配索経路中の大半部分を占めるものであるため、設置スペースの効率化と軽量化の意義は大きい。
【0010】
また、シールドパイプから外部に出た部分には撚線電線が位置しているため、自由に屈曲させることで接続作業を容易に行うことができる。
また、単芯線電線の端部は被覆が剥がされて導体が露出されるとともに、この露出された導体は平板状に圧潰されて圧潰部が形成され、この圧潰部に撚線電線の素線が接続されているから、撚線電線との接続が、例えば超音波溶着、抵抗溶接、半田付け等の接合手段によって容易かつ確実になされる。
また、前記圧潰部が、厚さ方向において片側へ寄せられるように圧潰されている。ここで、例えば圧潰部が中心に寄せられるように圧潰されている場合には、単芯線電線の導体のうち撚線電線の素線が重ね合わされる側とは反対側に、圧潰部よりも突出した部分が形成される。しかしながら、前述のような構成によれば、単芯線電線の導体のうち撚線電線の素線が重ね合わされる側とは反対側には、そのような突出部が形成されないので、その分接続部の幅寸法を小さくすることができる。
また、本発明の導電線の製造方法によって製造された導電線は、前記単芯線電線と前記撚線電線とが、前記導体の端面と前記素線の端面とを突き当てて溶接することで電気的に接続されている。このような構成によれば、単芯線電線の導体と撚線電線の素線とを幅方向に重ね合わせて接続する場合に比して、接続部の幅寸法を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ハイブリッド車両において導電線を配索した状況を示す概略図
図2】導電線において、撚線電線と単芯線電線との接続部位の周辺を拡大して示す正面図
図3】同じく平面図
図4】導電線がシールドパイプ、金属編組部及びコルゲートチューブ内に挿通されている状況を示す断面図
図5】実施例2に係る導電線において、単芯線電線の導体と撚線電線の芯線とがかしめによって接続されている状況を示す断面図
図6】実施例3に係る導電線において、単芯線電線の導体と撚線電線の芯線とがかしめによって接続されている状況を示す断面図
図7】実施例4に係る導電線において、単芯線電線と撚線電線との接続部位を示す一部拡大断面図であって、(A)は、単芯線電線の導体と撚線電線の芯線とを突き当てて溶接する様子を示す断面図、(B)は、単芯線電線の撚線電線との接続部に熱収縮チューブあるいはホットメルトが被せ付けられた状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
(1)本発明の導電線は、単芯線電線と撚線電線との接続部位がシール部材によって覆われている構成とすることが好ましい。シール部材としては、例えば接続部位を覆いつつ単芯線電線の被覆と撚線電線の被覆との間を接続する熱収縮チューブが挙げられる。その他、接続部位をモールドあるいはホットメルトを施して覆ってもよい。
このような構成によれば、シール部材によって絶縁性が確保されるとともに、止水性も確保される。
【0016】
次に、本発明の導電線を具体化した実施例1〜実施例4について、図面を参照しつつ説明する。
<実施例1>
本実施例の導電線Lはハイブリッド車に適用されたものである。車両のリヤ側に搭載されたバッテリ1とエンジンルーム内に設けられたインバータ2との間はワイヤハーネスWHによって接続されている。本実施例の場合、図4に示すように、ワイヤハーネスWHは3本の導電線Lによって構成されている。
【0017】
ワイヤハーネスWHは車両の床下に配されたシールドパイプ3内に一括して挿通されている。より具体的には、シールドパイプ3の後端側は車室のリヤサスペンション側に導入され、バッテリ1との間には後述する金属編組部13が介在されている。シールドパイプ3の途中は車両の床下を前後方向に沿って略水平に延びている。その前端側は上方へ屈曲してエンジンルーム内に導入され、インバータ2へ向けて延出している。
【0018】
シールドパイプ3はアルミニウムあるいはアルミニウム合金製であり、断面円形状の長尺パイプによって構成されている。シールドパイプ3は所定の配管経路に沿った形状に曲げ加工されている。
【0019】
図2に示すように、各導電線Lは単芯線電線4と撚線電線5とを長さ方向に電気的に接続した構成となっている。単芯線電線4は一本の導体6を絶縁材料よりなる被覆7で包囲した構成となっている。本実施例の場合、導体6は銅あるいは銅合金によって断面円形状に形成されている。各単芯線電線4の前端側は所定長さ範囲に亘って被覆7が剥がされ、導体6が露出されている。露出された導体6は、図2図3に示すように、上方から平板状に圧潰されて圧潰部8が形成されている。この圧潰部8は単芯線電線4の中心から片側へ寄せられるように圧潰され、圧潰方向の上下両面が略平面をなし、かつ首部(被覆7から露出する付け根部分)より幅広に形成されている。
【0020】
一方、撚線電線5は複数の素線9を芯線とし、これらを絶縁材料よりなる被覆10で包囲した構成となっている。各素線9は銅あるいは銅合金によって形成されている。その両端はそれぞれ所定長さ範囲に亘って被覆10が剥がされ、素線9が露出されている。露出された素線9の前端側には図示しない端子金具が接続されている。各撚線電線5の前端部に接続された端子金具(図示しない)はコネクタ11のハウジング内にそれぞれ収容され、インバータ2側のコネクタのハウジングと嵌合することで、インバータ2側との電気的接続がとられるようになっている。一方、撚線電線5の後端側に露出された素線9は単芯線電線4の圧潰部8と超音波接合機によって接合される。この超音波溶着により、露出された素線9の端部と圧潰部8の接触部位が金属間接合し、この接合状況によって両者の電気的接続がとられる。
【0021】
図4に示すように、導電線Lがシールドパイプ3内に挿通された状態では、単芯線電線4と撚線電線5との接続部位はシールドパイプ3の端部近くでかつシールドパイプ3の内部に位置するようにしてある。また、図2に示すように、単芯線電線4と撚線電線5との接続部位は熱収縮チューブあるいはホットメルト(シール部材)12によって覆われている。熱収縮チューブあるいはホットメルト12は、単芯線電線4の被覆7と撚線電線5の被覆10との間に架け渡されるようにして各導電線Lを挿通しており、これによって各導電線L間の絶縁状態が保持される。また、熱収縮チューブあるいはホットメルト12は単芯線電線4の被覆7と撚線電線5の被覆10のそれぞれの外周面と密着してシール状態を保持している。
【0022】
図1図4に示すように、シールドパイプ3の前端部には金属編組部13の後端側が金属製のかしめリング19をかしめ付けることで接続されている。金属編組部13は導電金属素線を筒状に網組みして形成したものであり、良好な屈曲性を有している。各撚線電線5の前端に装着されたコネクタ11は、図示しないシールドシェル内に組込まれている。金属編組部13の前端側はこのシールドシェルに接続されている。かくして、各導電線Lはシールドパイプ3、金属編組部13内に挿通されることで、全配索経路に亘ってシールド状態が保持される。
【0023】
さらに、図4に示すように、金属編組部13はシールドパイプ3との接続部位から先がコルゲートチューブ14内に挿通されて保護がなされている。コルゲートチューブ14は合成樹脂製であり、山部と谷部とが交互に繰り返す蛇腹状に形成され、良好な可撓性を有している。
【0024】
また、コルゲートチューブ14とシールドパイプ3との間にはシール用のグロメット15が被せられている。グロメット15はゴム材によって形成され、両端部は共に筒状に形成され、一端側(後端側)に形成された筒部はシールドパイプ3の外周部へ嵌合可能であり、他端側(前端側)に形成された筒部はコルゲートチューブ14の外周部へ嵌合可能である。後端側の筒部の内周面にはシールドパイプ3の外周面に沿って密着可能なシールリップ16が複数条、それぞれ全周に沿って形成されている。また、前端側の筒部の内周面にはコルゲートチューブ14の谷部に入り込んで谷部の底面に密着可能なシール縁17が複数条、それぞれ全周に沿って形成されている。さらに、両筒部の外周面は結束バンド18によって締め上げられるようにしてあり、これによってシールドパイプ3及びコルゲートチューブ14とグロメット15との接続がなされる。
【0025】
次に、上記のように構成された本実施例1の作用効果について説明する。前述したように、実施例1においてワイヤハーネスWH(導電線L)の配索区間は、概略2つの区間に分けることができる。第1の区間はシールドパイプ3が配された区間であり、直線的に配索される範囲が長く、曲げ領域においても曲げの度合いが小さい区間である。これに対し、第2の区間はエンジンルーム内における金属編組部13が配された区間であり、曲げ部分の度合いが大きい区間である。
【0026】
本実施例においては、比較的曲げ性に乏しい単芯線電線4を第1の区間であるシールドパイプ3内に配している。上記したように、第1の区間は直線区間が長く、曲げ区間においても曲げの度合いが小さいため、単芯線電線4を第1区間に適用しても無理な曲げ応力が作用することはない。また、単芯線電線4は撚線電線5と比較した場合、導体部分の断面積と全素線の総断面積を同一とすれば、単芯線電線4の外径は撚線電線5の外径よりも小さくなる。したがって、これを収容するシールドパイプ3の外径を小さくすることができるため、車両の床下スペースの効率化を図ることができる。また、導電線Lの配索範囲の大半を撚線電線5に比較して安価な単線断線4を使用することができるため、導電線L全体のコストを低減することにも寄与する。
【0027】
また、第2の区間は狭隘なエンジンルーム内においてシールドパイプ3の前端部とインバータ2とを接続する区間であるため、屈曲性に優れる撚線電線5をこの区間内に配索することは電線配索の取り回しが簡単になるため、接続作業上、好都合である。
【0028】
また、本実施例1では単芯線電線4と撚線電線5との接続部位が、被覆7と被覆10との間を接続する熱収縮チューブあるいはホットメルト12によって覆われるようにしている。これによって、導電線L間の絶縁性が確保されるとともに、各接続部位における止水性も確保することができる。
【0029】
さらに、本実施例1では単芯線電線4から露出した導体6を平板状に圧潰して圧潰部8を形成するようにしたため、撚線電線5の素線9を圧潰部8の表面に安定してセットすることができ、もって接合状況を安定化させることができる。
【0030】
さらにまた、本実施例1では単芯線電線4の導体6と撚線電線5の素線9との接続部位をシールドパイプ3内に収めるようにしたため、金属編組部13を、シールドパイプ3の先で直ちに屈曲させても導体6と素線9との接続部位に、直接、曲げ応力が作用する事態を回避することができる。
【0031】
<実施例2>
図5は本発明の実施例2を示している。実施例1では単芯線電線4の前端部に露出した導体6と撚線電線5の後端部に露出した素線9とを超音波溶着によって接合して接続する方式を示したが、実施例2ではかしめによって接続するようにしたものである。すなわち、単芯線電線4から露出させた導体6部分を圧潰して幅方向に充分に展張させて一対のかしめ部6Aを形成しておく。こうして形成された圧潰部8に撚線電線5の素線9部分を載せて幅方向両側部を共に内側へ曲げてかしめ付ける。このような方法によっても、単芯線電線4と撚線電線5とを接続することができる。
他の構成は実施例1と同様であり、同様の作用効果を発揮することができる。
【0032】
<実施例3>
図6は本発明の実施例3を示している。実施例2では導体6を断面方形状にして素線9をかしめ付けたが、実施例3では断面円形状にして素線9をかしめ付けるようにしたものである。
他の構成は実施例1,2と同様であり、もって同様の作用効果を発揮することができる。
【0033】
<実施例4>
次に、本発明を具体化した実施例4に係る導電線を図7によって説明する。
本実施例の導電線Lは、単芯線電線4と撚線電線5とが、導体6の端面6Eと素線9の端面9Eとを突き当てて溶接することで電気的に接続されている点で、実施例1とは相違する。なお、実施例1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0034】
本実施例に係る導電線Lは、実施例1と同様に、一本の導体6を被覆7で包囲してなる単芯線電線4と、複数本の素線9が撚られてなる芯線が被覆10で包囲されてなる撚線電線5とからなり、単芯線電線4における長さ方向の両端部のうち少なくとも一方の端部に撚線電線5が電気的に接続されたものである。
【0035】
そして、単芯線電線4と撚線電線5とは、抵抗溶接の一種である付き合わせ溶接により接合されている。この接続作業においては、図7(A)に示すように、単芯線電線4の導体6の端部と撚線電線5の素線9の端部とを、セラミックスまたはガラス等からなるパイプPに挿入して、端面6E,9E同士を突き合わせた状態にする。このように、パイプPに素線9の端部を挿入することで、素線9がばらけることを防ぐことができる。そして、単芯線電線4の導体6と撚線電線5の素線9との接触部に電流を流し、突き合わせた端面6E,9E同士が離れないように導体6と素線9とを軸方向に強く押し付けて溶接する。溶接後、パイプPを割って除去し、実施例1と同様に、単芯線電線4と撚線電線5との接続部位を熱収縮チューブあるいはホットメルト12によって覆う(図7(B)参照)。こうして、単芯線電線4と撚線電線5との接続作業が完了する。
【0036】
以上のように本実施例においては、単芯線電線4と撚線電線5とが、導体6の端面6Eと素線9の端面9Eとを突き当てて溶接することで電気的に接続されているから、単芯線電線4の導体6と撚線電線5の素線9とを幅方向に重ね合わせて接続する場合に比して、接続部の幅寸法を小さくすることができる。
【0037】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、導電線Lをシールド部材(シールドパイプ3及び金属編組部13)内に挿通したが、シールド手段を備えず単独で使用することも勿論可能である。
(2)上記実施例では、単芯線電線4の導体6と撚線電線5の芯線との溶着を超音波溶着によって行ったが、これに代えて抵抗溶接、半田付け等によって行ってもよい。
(3)上記実施例では、シールドパイプ3は金属製とされ、金属編組部13は金属素線を編組したものとされているが、これに限らず、例えば、シールドパイプは金属製パイプ以外に導電性の樹脂パイプであってもよく、また、金属編組部13のかわりに金属箔や金属箔にスリットを形成したもので包囲してもよい。
(4)上記実施例では、単芯線電線4の導体6及び撚線電線5の素線9を共に銅あるいは銅合金製としたが、共にアルミニウムあるいはアルミニウム合金製としてもよい。また、単芯線電線4側を銅あるいは銅合金製とし、撚線電線5側をアルミニウムあるいはアルミニウム合金製としてもよく、さらにはこの逆の組み合せであってもよい。
(5)上記実施例では、一本のシールドパイプ3内に3本の単芯線電線4を一括して収容したが、3本のシールドパイプ3を用いて個別に収容してもよい。
(6)上記実施例では、シール部材として熱収縮チューブあるいはホットメルト12を例示したが、これに代えてモールドあるいはテープ巻き等を行ってもよい。これら手段も本発明のシール部材に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
3…シールドパイプ
4…単芯線電線
5…撚線電線
6…導体
6E…端面
7…被覆
8…圧潰部
9…素線
9E…端面
10…被覆
12…熱収縮チューブあるいはホットメルト(シール部材)
13…金属編組部
L…導電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7