(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記演算手段は、前後の魚と等距離の位置の前記放射線検出器が放射線を検出したと判定した場合、当該放射線検出器に頭部が近い魚の放射線検出としてカウントする、請求項1〜4のうち何れか一項に記載の魚の比放射能検査システム。
前記放射線検出器は、放射線の入射により発光するシンチレータ、前記シンチレータで生じた光を伝達するライトガイド、及び前記ライトガイドを通じて入力された光に応じて信号を出力する光電子増倍管を有し、
前記シンチレータ及び前記光電子増倍管は、鉛直方向から見て重ならないように配置されている、請求項1〜6のうち何れか一項に記載の魚の比放射能検査システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、原子力発電事故によって汚染された海で育った魚は、放射性セシウムを含んでいる可能性があり、時々、漁港において放射能汚染が基準値を超える魚が水揚げされ、水揚げした漁場の規制が行われている。このような魚の汚染の問題は、消費者の安全だけではなく、漁業関係者の就労意欲及び生計にも関わっている。このため、魚の放射線汚染を個別に効率良く検査することにより、消費者に安心を与えると共に、生産者に対して意欲を与え、漁港の復興に貢献する検査システムの開発が強く求められている。
【0005】
また、国による魚の出荷基準も震災後に厳しくなっており、自然放射線レベルと同程度の放射線について魚から生じたものか否かを適切に測定する必要がある。また、原子力発電所からの放射性物質(セシウム134,137)が微量とはいえ存在している環境下で測定することも考えられ、魚以外の放射性物質から放たれるバックグラウンド放射線をできるだけ遮蔽する必要がある。
【0006】
このような魚の放射線汚染の検査について、従来は容器の小さい放射線検出器を用いており、魚をすり潰して検査を行っていた。しかし、魚のすり潰し加工を行うと、放射線汚染が無かったとしても、その後に魚を市場へ戻すことができないため、魚の全数検査を行う上で問題となっていた。
【0007】
これに対し、魚の放射線汚染を検査するための装置として、ベルトコンベヤーを跨ぐように設けたゲートに放射線検出器を一つ備えたものが開発されている。この装置では、発泡スチロールの箱などに複数の魚を入れた状態でゲートの下を通過させることで、複数の魚の放射能汚染をまとめて検査可能としている。
【0008】
しかしながら、このような構成の装置では、箱単位に測定することを想定しているため、魚を一匹ずつ効率的に測定することができず、汚染した魚の一匹一匹を正確に突き止めるためには、何度も検査を繰り返す必要がある。また、放射線検出器が一つしかないため検査に時間がかかる上、バックグラウンド放射線について何ら対策が施されていないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、魚を個別に丸ごと、連続的に効率良く比放射能を検査し、精度良く魚を比放射能別に分別することができる魚の比放射能検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、複数の魚の比放射能を検査する比放射能検査システムであって、複数の魚の個別標識を行う個別標識手段と、複数の魚の個別の重量測定を行う重量測定手段と、複数の魚を所定の搬送方向に一列で搬送する搬送手段と、搬送手段により搬送される複数の魚の下方に位置し、搬送方向に並んで設けられた複数の放射線検出器と、放射線検出器により放射線検出される複数の魚の左右に位置し、搬送方向に沿って設けられた一対の放射線遮蔽壁と、放射線検出器の下側及び左右両側を囲むように設けられた放射線遮蔽部材と、個別標識手段の個別標識情報、重量測定手段の重量測定結果、複数の放射線検出器の放射線検出結果に基づいて、魚の比放射能を個別に演算する演算手段と、演算手段による魚の比放射能の演算結果に基づいて魚を分別する分別手段と、
個別標識された魚の位置を認識する手段とを備え
、演算手段は、個別標識された魚の位置に対応する放射線検出器からの放射線検出結果に基づいて演算を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る比放射能検査システムによれば、搬送方向に沿って複数の放射線検出器を並べ、その上を搬送されながら魚の放射線を検出することで、搬送時間と同じ時間をかけて個別に魚の放射線を検出した場合と同様の検出結果を得ることができ、魚を加工することなく丸ごとの形で連続して検査することができる。また、この比放射能検査システムでは、一列に並んだ複数の魚の個別標識及び重量測定を行い、放射線検出結果から得られる個別の魚の放射能Bqを当該魚の重量kgで除して比放射能Bq/kgを求めることができるので、魚を比放射能別に効率良く分別することができる。しかも、この比放射能検査システムによれば、放射線遮蔽部材が魚の下方に位置し、一対の放射線遮蔽壁が魚の左右に位置することで、地面やコンクリート床から魚に向かう放射線を遮蔽することができるので、放射線検出のバックグラウンドを減らして、魚からの放射線を精度良く検出することができる。また、この比放射能検査システムによれば、搬送される魚の上方を開放することにより、魚の搬送状態の監視やトラブル対応、メンテナンスを容易にすることもできる。更に、この比放射能検査システムによれば、魚の下方に放射線検出器が位置するので、魚の上方や側方に放射線検出器が位置する場合と比べて、魚の大小にかかわらず、魚と放射線検出器の距離を最小限にすることができ、放射線検出の精度向上が図られる。以上より、この比放射能検査システムによれば、魚を個別に丸ごと、連続的に効率良く比放射能を検査し、精度良く魚を比放射能別に分別することができる。
【0012】
また、本発明に係る比放射能検査システムは、複数の放射線検出器の上面を少なくとも覆うステンレスカバーを更に備えてもよい。
この比放射能検査システムによれば、放射線検出器を適切に保護して機器の耐久性を向上できると共に、衛生を保つための頻繁な洗浄にも対応することができ、魚の検査システムとして有用な構成である。
【0013】
また、本発明に係る比放射能検査システムにおいて、演算手段は、搬送手段における所定の位置を魚が通過中であるか否かを検出する位置検出センサを有し、演算手段は、位置検出センサの検出結果に基づいて、魚の先端到達時刻及び末端到達時刻を認識してもよい。
この比放射能検査システムによれば、簡素な位置検出センサにより、魚の先端到達時刻及び末端到達時刻を認識して個別の魚の位置を把握することができ、システム構成の簡素化及びシステムの製造コストの低減に有利である。
【0014】
また、本発明に係る比放射能検査システムにおいて、演算手段は、個別標識手段の個別標識情報及び搬送手段の搬送速度に基づいて個別の魚の位置を認識し、放射線検出器が放射線を検出した場合、当該放射線検出器の最も近くに位置する魚の放射線検出としてカウントしてもよい。
この比放射能検査システムによれば、詳細な位置検出を行わなくても、搬送速度に基づいて個別の魚の位置を容易に把握することができ、放射線検出の結果を個別の魚の検出結果として適切にカウントすることができる。このことは、システム構成の簡素化及びシステムの製造コスト低減に寄与する。
【0015】
また、本発明に係る比放射能検査システムにおいて、演算手段は、前後の魚と等距離の位置の放射線検出器が放射線を検出したと判定した場合、当該放射線検出器に頭部が近い魚の放射線検出としてカウントしてもよい。
この比放射能検査システムによれば、魚の構造を考慮すると、魚の尾よりも頭部からの放射線を検出する可能性が高いことから、等距離にある魚のうち頭部が近い魚の放射線検出としてカウントすることで誤検出を避け、放射線検出の信頼性を高めることができる。
【0016】
また、本発明に係る比放射能検査システムにおいて、前記搬送手段により搬送中の魚の左右に配置される一対のガイドを更に備えていてもよい。
この比放射能検査システムによれば、生きた魚を一匹ずつ測定する際に、魚が測定中に動いて位置を変えることを左右一対のガイドにより防止することができ、測定精度を向上させることができる。
【0017】
また、本発明に係る比放射能検査システムにおいて、放射線検出器は、放射線の入射により発光するシンチレータ、シンチレータで生じた光を伝達するライトガイド、及びライトガイドを通じて入力された光に応じて信号を出力する光電子増倍管を有し、シンチレータ及び光電子増倍管は、鉛直方向から見て重ならないように配置されていてもよい。
この比放射能検査システムによれば、鉛直方向から見てシンチレータと光電子増倍管が重ならないように配置されているので、光電子増倍管を通じて下側の地面等から放射線が入り込んだとしても、シンチレータに到達することが避けられる。従って、この比放射能検査システムによれば、放射線のバックグラウンドを落とすことができるので、魚の放射線検出に関する精度を向上させることができる。
また、シンチレータと光電子増倍管を直列に繋いだ場合でも、光電子増倍管の径を小さくし、光電子増倍管の真下に光電子増倍管の径より大きい遮蔽体を据え付けることにより、シンチレータが地面を直接見えなくすることができる。
【0018】
また、本発明に係る比放射能検査システムにおいて、ライトガイドは、複数のシンチレータを一つの光電子増倍管に対して接続していてもよい。
この比放射能検査システムによれば、必要な光電子増倍管の数を減らすことができるので、システムの製造コストを大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る比放射能検査システムによれば、魚を個別に丸ごと、連続的に効率良く比放射能を検査し、精度良く魚を比放射能別に分別することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1及び
図2に示す比放射能検査システム1は、複数の魚の比放射能Bq/kgの検査を個別に丸ごと連続的に行うシステムである。比放射能検査システム1は、魚が投入されるスロープ台2と、魚の重量を測定する重量測定台3と、魚を所定の搬送方向Aに搬送するベルトコンベヤー4と、魚を分別する分別機5と、これらを制御する制御部6と、を備えている。なお、各図において符号Sを用いて魚を示す。
【0023】
スロープ台2は、魚が先端の出口へ向かって滑り落ちるように傾斜が付けられた台座である。スロープ台2は、ベルトコンベヤーである出口2aに近づくほど幅が狭められ、出口2aは一匹の魚のみが通過できる幅とされている。スロープ台2に投入された複数の魚は、出口2aに向かって緩やかに滑り落ち、出口2aを通じて一匹ずつ分離され、出口2a上で静止する。分離されて出口2aに静止した魚は、先行の魚が重量測定台で測定されて、ベルトコンベヤー4に送り出された後に、ベルトコンベヤーで重量測定台3へ載せられる。
【0024】
重量測定台3は、魚の個別の重量測定を行う重量測定手段である。重量測定台3は、内蔵された重量計により魚の重量を測定すると共に当該魚の個別標識を行う個別標識手段の機能も有する。重量測定台3は、測定の順番により魚の個別標識を行う。重量測定台3は、個別標識データ及びその魚の重量測定データを制御部6へ送る。重量測定台3は、台を傾斜させて移動させるか又は台の面を移動させるかして測定済みの魚を迅速に測定済みの魚を次のベルトコンベヤー4へ送り出す。
【0025】
また、重量測定台3は、重量バランスを計測して魚の向き(頭部が前か後ろか)を判定してもよい。この場合、重量測定台3は、個別標識データに紐付けた魚の向きのデータを制御部6へ送る。なお、重力測定手段は、魚1匹1匹の重量を瞬時に測定し、なるべく魚を隙間無く連続にベルトコンベヤー4に送り出す構造が良い。(重量測定時間)×(ベルトコンベヤー4の速度)がベルトコンベヤー4の上での魚の間の間隔になるので、この距離が魚1匹の長さより長くなくてはならない。従って、重量測定時間は(魚1匹の長さ)/(ベルトコンベヤー4の速度)以上となる。例えば、魚の長さを0.3m、ベルトコンベヤーの速さを0.75m/秒とすると、重量測定時間は0.4秒以上必要となる。従って、重量測定時間を1秒とすると魚と魚の間隔は0.45mとなる。短時間で重量を測定した後に測定台を傾けて魚を短時間に前方にソフトに送り出すか、台の面を移動して送り出す構成などを採用してもよい。また、重量測定台における台の面を移動させる場合は、その移動速度はベルトコンベヤー4の移動速度と同じが良い。これにより、検査効率を上げることができる。
【0026】
ベルトコンベヤー4は、魚を分別機5に向かって搬送する搬送手段である。ベルトコンベヤー4は周回する無端ベルトを備えており、往路が上側、復路が下側となる。ベルトコンベヤー4の入口から出口までの長さは例えば約9mとすることもできる。また、ベルトコンベヤー4の搬送方向Aは直線ではなく曲がっていてもよい。このベルトコンベヤー4に搬送される魚の下側には、複数の放射線検出器7が配置されている。
【0027】
以下、放射線検出器7について説明する。
図3は、複数の放射線検出器7の配置を説明するための部分拡大断面図である。また、
図4は
図3のIV−IV線に沿った断面図である。
図3及び
図4に示すように、放射線検出器7は、搬送方向Aに沿って並ぶように多数(例えば40個)設けられており、ベルトコンベヤー4によって搬送される魚の下方に位置している。すなわち、放射線検出器7は、魚の下方から放射線の検出を行う。
【0028】
放射線検出器7は、シンチレータ8、ライトガイド9、光電子増倍管10を有している。シンチレータ8は、入射した放射線を光(可視光)に変換する蛍光体である。シンチレータ8は、入射した放射線の線量に応じて内部結晶が励起状態となり、光(シンチレータ光)を発生させる。シンチレータ8は、入射した放射線に応じた光を発生させる。
【0029】
ここでは、ヨウ化ナトリウムNaIに微量のタリウムTlをドープしたNaI(Tl)蛍光体をシンチレータ8として用いる。NaI(Tl)蛍光体は、ガンマ線に対する感度が高く、発光量も十分であり、比較的安価に取得できるため有用である。その他、シンチレータ8としては、減衰時間の短いBGO[Bi
4Ge
3Ol
2]やGSO[Gd
2(SiO
4)O]、LSO[Lu
2(SiO
4)O]等を採用してもよい。なお、シンチレータ8は、コスト的な観点から円柱形状を選択しており、その直径は約5cmとすることができる。
【0030】
ライトガイド9は、シンチレータ8で生じた光を光電子増倍管10へと導く光伝達部材である。ライトガイド9は、例えばアクリル樹脂など光を通す材料を加工したものもあるが、ガラスファイバや石英ファイバその他のファイバ素線を複数本束ねて構成されても良い。ライトガイド9は、シンチレータ8の下端と光電子増倍管10の上端を接続している。なお、この放射線検出器7では、シンチレータ8よりも小径の光電子増倍管10を採用しているため、ライトガイド9はシンチレータ8から光電子増倍管10に向かって先細りとなる漏斗状に形成されている。
【0031】
光電子増倍管10は、入力された光に応じた信号を出力する電子機器である。光電子増倍管10の光電陰極に光が入射すると、光電陰極から光電子が放出され、この光電子が一次ダイノードに衝突することで複数の二次電子を放出する。その後、二次電子は複数のダイノードの電位差により加速されながら次々と増倍され、十分な出力の信号として制御部6へ送られる。
【0032】
このように、光電子増倍管10は、魚から放たれた放射線によりシンチレータ8で生じた光を電気信号に変えることで、当該放射線検出器7による放射線の検出を制御部6に伝える。光電子増倍管10は、コスト削減の観点からシンチレータ8より直径の小さいものを採用することができる。なお、シンチレータ8と同径の光電子増倍管10を用いてもよい。
【0033】
この放射線検出器7の下側及び左右両側を囲むように放射線遮蔽部材11が設けられている。放射線遮蔽部材11は、搬送方向Aに沿って延びる樋状の鉛部材であり、その中に複数の放射線検出器7が等間隔で配置されている。なお、複数の放射線検出器7の間をそれぞれ鉛部材で遮蔽してもよい。樋状の放射線遮蔽部材11は、同じく搬送方向Aに沿って延びる台座12の上に配置されている。
【0034】
台座12は、断面コの字状をなす左右一対の長尺部材12A,12Bと、左右一対の長尺部材12A,12Bを中央の高さで連結する複数の連結棒12Cと、を有している。連結棒12Cは、搬送方向Aに沿って所定間隔で二つずつ設けられている。断面コの字状の長尺部材12A,12Bの間には、スペースが形成されており、そのスペースの上方に放射線検出器7が位置している。この台座12は、搬送方向Aで等間隔に設けられた脚部13によって支えられている。
【0035】
放射線検出器7のうち光電子増倍管10の下端は、放射線遮蔽部材11の下面に露出しており、図示しない配線を通じて制御部6と接続されている。この露出部分から放射線が入り込むことを避けるため、光電子増倍管10の下方には補助用の放射線遮蔽部材14が設けられている。放射線遮蔽部材14は、例えば複数の光電子増倍管10の下端をカバーするように搬送方向Aに延びる板状の鉛部材である。放射線遮蔽部材14は、台座12を構成する左右一対の長尺部材12A,12Bの間で脚部13の上に配置されている。
【0036】
なお、
図4では、補助用の放射線遮蔽部材14を脚部13の上に配置したが、配置位置は脚部13上に限定されず、例えば脚部13より下側に配置してもよく、床に対して設置してもよい。放射線検出器7は、放射線遮蔽部材11及び放射線遮蔽部材14によって下側及び左右両側が囲まれている。
【0037】
また、放射線検出器7は、ステンレスカバー15によって上面及び左右両側が覆われている。ステンレスカバー15は、例えば2mm程度の厚さのステンレス板材からなり、下向きに開放されたコの字形状に折り曲げられている。ステンレスカバー15は、上方より放射線検出器7及び放射線遮蔽部材11に被さるように配置され、複数の放射線検出器7を全てカバーするように搬送方向Aに延びて設けられている。すなわち、放射線検出器7は、ステンレスカバー15及びベルトコンベヤー4のベルト越しに魚の放射線を検出する。
【0038】
また、ベルトコンベヤー4上の魚の左右両側には、放射線を遮蔽する一対の放射線遮蔽壁16,17が位置している。一対の放射線遮蔽壁16,17は、搬送方向Aに沿ってベルトコンベヤー4を左右に設けられた鉛製の壁であり、ベルトコンベヤー4を跨ぐように設けられた枠体18によって支えられている。側方から魚(及び放射線検出器7)に向かう放射線は、これらの放射線遮蔽壁16,17により遮蔽される。
【0039】
また、魚は、精度良く放射線を検出するため、ベルトコンベヤー4の真ん中に配置されることが好ましい。ベルトコンベヤー4の真ん中に配置する方法としては様々な方法が考えられるが、一番簡単な構成としてベルトコンベヤー4により搬送される魚の左右に一対のガイドを設けてもよい。左右一対のガイドは、例えば発泡スチロールから形成され、魚の幅に合わせて放射線遮蔽壁16,17の内側に配置することができる。このようなガイドを備えることで、生きた魚を一匹ずつ測定する際に、魚が測定中に動いて位置を変えることを防止でき、測定精度を向上させることができる。また、一対のガイド上を掛け渡す連結部材を設け、一対のガイドを一体的に取り扱い可能とすることで、システムに対するガイドの取り付け及び取り外しを容易にすることができる。但し、予め魚の幅に合うガイドを用意しておく必要がある。
【0040】
その他、放射線遮蔽壁16,17をガイドとして利用してもよい。例えば、放射線遮蔽壁16,17の間隔を調整可能に構成してもよく、放射線遮蔽壁16,17の間隔を魚の幅に合わせて調整することで、魚をベルトコンベヤー4の真ん中に配置することができる。なお、間隔を調整可能な移動式の放射線遮蔽壁16,17は、ベルトコンベヤー4の入口部分だけでよい。また、魚の幅を検出するセンサを設け、自動で放射線遮蔽壁16,17やガイドの幅を変更する構成であってもよい。
【0041】
次に、
図5は建屋20を含めた比放射能検査システム全体を示す図である。
図5に示す建屋20には、魚の上方から放射線が入射することを避けるための工夫が施されている。具体的には、建屋20の天井側の建築材料として、ガンマ線を発生する放射性同位体を含んでいない材料を用いることにより、天井からの放射線の入射を防ぐことができる。従って、建築材料として代表的なコンクリートはカリウム40を含んでいるので使用しない。また、木材などもカリウム40を含んでいるので使用しない。鉄もコバルト60を含んでいるものは使用しない。そこで、天井や側壁の材料として、ガンマ線を発生する放射性同位体を含んでいないアルミニウム、銅、ステンレス、プラスチック、又はコバルト60を含んでいない鉄などを使用することにより、建屋20の天井や壁からの宇宙線以外の放射線を入射させないようにすることができる。これにより、建物20から来る放射線によるバックグラウンドを落とし、放射線検出器7による魚の放射線検出の精度を向上させることができる。なお、必ずしも建屋20を比放射能検査システム1に含める必要はない。
【0042】
続いて、制御部6における魚の比放射能の検査について説明する。制御部6では、重量測定台3から送られた個別標識データに基づき、搬送順によって魚を個別に認識する。制御部6は、エネルギースペクトル用のデータアレイを多数備えている。制御部6は、搬送順に魚の番号を標識すると共に、当該魚に対応する番号のデータアレイにアサインして当該魚に関するデータを記憶する。
【0043】
この制御部6は、ベルトコンベヤー4の入口、中間、出口にそれぞれ設けられた位置検出センサ21,22,23によって魚の位置を検出している。位置検出センサ21,22,23は、各センサの所定の設置位置を魚が通過中であるか否かを検出する。制御部6は、入口位置検出センサ21の検出結果に基づき、搬送順がN番目の魚の先端到達時刻[N、ts1]及び末端到達時刻[N、tm1]を認識する。なお、N+1番目の魚の場合は、[N+1、ts1]、末端到達時刻[N+1、tm1]となる。
【0044】
ここで、
図6(a)は、N番目の魚における先端到達時刻[N、ts1]の検出を示す図である。
図6(b)は、N番目の魚における末端到達時刻[N、tm1]の検出を示す図である。
図6(a)に示すように、N番目の魚の先端到達時刻[N、ts1]とは、N番目の魚の先端(例えば頭部先端)が入口位置検出センサ21に検出された時刻を意味している。同様に、N番目の魚の末端到達時刻[N、tm1]とは、N番目の魚の末端(例えば尻尾の末端)が入口位置検出センサ21に検出された時刻(例えばレーザによるN番目の魚の検出が途切れた時刻)を意味している。
【0045】
制御部6は、入口位置検出センサ21におけるN番目の魚の先端到達時刻[N、ts1]及び末端到達時刻[N、tm1]を当該魚のデータアレイに格納する。制御部6は、ベルトコンベヤー4の搬送速度を把握しており、魚の先端到達時刻[N、ts1]及び末端到達時刻[N、tm1]を利用して、N番目の魚の時間tにおける位置Z(N、t)を算出する。
【0046】
なお、制御部6は、魚の先端到達時刻[N、ts1]及び末端到達時刻[N、tm1]にベルトコンベヤー4の搬送速度を参照することで、魚の大きさ(長さ)のデータを取得してもよい。また、入口位置検出センサ21の検出結果は、魚の放射線検出の開始フラグとしても利用され、最初の魚がベルトコンベヤー4に入り込むと同時に放射線検出器7による放射線検出が開始される。
【0047】
また、制御部6は、中間位置検出センサ22における先端到達時刻[N、ts2]及び末端到達時刻[N、tm2]、及び出口位置検出センサ23における先端到達時刻[N、tm3]及び末端到達時刻[N、tm3]に基づいて、当該魚の位置の算出結果に誤りがあるか否かを確認する。
【0048】
図7は、魚からの放射線検出を説明するための図である。
図7に示すように、各放射線検出器7は、アンプ25及びMCA[Multi-Channel Analyzer]26を介して制御部6と接続されている。制御部6は、複数の放射線検出器7のそれぞれの位置をマップデータとして記憶しており、ベルトコンベヤー4の入口からM番目の放射線検出器7から時刻tに放射線検出の信号が出されると、M番目の放射線検出器7の位置D(M)をマップデータから得て、時刻tにおける各魚の位置・・・Z(N−1,t)、Z(N,t)、Z(N+1,t)・・・と比較する。制御部6は、時刻tにおける位置がM番目の放射線検出器7の位置D(M)に最も近い魚を判定し、当該魚からの放射線検出としてカウントする。
【0049】
ここで、
図8は、制御部6による放射線を検出した魚の判定を説明するための図である。
図8に示すように、制御部6は、N番目の魚の位置Z(N,t)について、具体的にはN番目の魚の先端位置Z1(N,t)及び末端位置Z2(N,t)として認識している。N番目の魚の先端位置Z1(N,t)及び末端位置Z2(N,t)は、例えば、入口位置検出センサ21におけるN番目の魚の先端到達時刻[N、ts1]及び末端到達時刻[N、tm1]と、ベルトコンベヤー4の搬送速度に基づいて算出される。
【0050】
制御部6は、
図8に示す状態において、時刻tにM番目の放射線検出器7から放射線検出の信号を受信した場合、M番目の放射線検出器7の位置D(M)と時刻tにおける各魚の位置に基づいて、M番目の放射線検出器7に最も近い魚を判定する。
【0051】
具体的に、制御部6は、M番目の放射線検出器7の位置D(M)がN番目の魚の末端位置Z2(N,t)とN+1番目の魚の先端位置Z1(N+1,t)の間にあり、N番目の魚の末端位置Z2(N,t)に最も近いことを認識する。この場合、制御部6は、M番目の放射線検出器7の位置D(M)に最も近い魚は、N番目の魚であると判定し、M番目の放射線検出器7から受信した信号をN番目の魚からの放射線検出としてカウントする。なお、以上説明した制御部6による魚の位置認識や判定の説明は一例であり、他の方法により魚の位置認識や判定を行ってもよい。
【0052】
図9は、前後の魚と等距離に位置する放射線検出器7が放射線を検出した場合を説明するための図である。
図9に示すように、制御部6は、放射線を検出したM番目の放射線検出器7の位置D(M)が、N番目の魚の末端位置Z2(N,t)及びN+1番目の魚の先端位置Z1(N+1,t)から等距離にあると判定した場合、重量測定台3から得た魚の向きのデータを考慮する。制御部6は、等距離に位置するN番目の魚及びN+1番目の魚のうち、M番目の放射線検出器7に頭部が近いN+1番目の魚を最も近い魚と判定し、N+1番目の魚の放射線検出としてカウントする。なお、等距離の判定は厳密なものに限られず、数mm又は数cmの誤差を含む判定である。
【0053】
また、重量測定台3などにより魚の向きのデータを取得しない場合であっても、手作業などで魚の向きを統一している場合には、予め魚の向きのデータを制御部6に対して一律に設定しておくことで、同様の判定が可能となる。
【0054】
なお、搬送される魚の間隔について、ガンマ線の検出感度は線源と放射線検出器7との距離の2乗に反比例することを考慮すると、
図9に示すように、魚の間に放射線検出器7の直径一つ分の距離を置くことにより、複数の魚からの放射線が混在して検出されることを抑制する。また、大型の魚については、
図8に示すように、魚の間に放射線検出器7の直径二つ分の距離を置くことが好ましい。
【0055】
このようにして、N番目の魚の放射線検出をカウントし、
図10に示す当該魚のエネルギースペクトルを取得する。N番目の魚の放射線検出が終了したとき(例えば、N番目の魚が出口位置検出センサ23の前を通り過ぎたとき)、N番目の魚について全補車線計数を算出する。その後、バックグラウンドの影響を除いてN番目の魚の放射能Bqを演算で求める。制御部6は、N番目の魚について、その放射能Bqを重量kgで除して比放射能Bq/kgを演算する。
【0056】
また、制御部6は、分別機(分別手段)5を制御して魚の分別を行う。分別機5は、魚を比放射能別で三つに分別するための三方向振り分けコンベアである。分別機5は、魚の進路を切り替えるための切り替え弁30,31を備えており、切り替え弁30,31の位置を変更することで魚を比放射能別に分別する。制御部6は、比放射能が20Bq/kg以下の魚と、比放射能が20Bq/kg超えで100Bq/kg以下の魚と、比放射能が100Bq/kg超えの魚に分別する。
【0057】
続いて、本実施形態に係る魚の比放射能検査システム1の作用効果について説明する。
【0058】
本実施形態に係る魚の比放射能検査システム1によれば、搬送方向Aに沿って複数の放射線検出器7を並べ、その上を搬送されながら魚の放射線を検出することで、搬送時間と同じ時間をかけて個別に魚の放射線を検出した場合と同様の検出結果を得ることができ、魚を加工することなく丸ごとの形で連続して検査することができる。
【0059】
また、この比放射能検査システム1では、一列に並んだ複数の魚の個別標識及び重量測定を行い、放射線検出結果から得られる個別の魚の放射能Bqを当該魚の重量kgで除して比放射能Bq/kgを求めることができるので、魚を比放射能別に効率良く分別することができる。しかも、この比放射能検査システム1によれば、放射線検出器7を囲む放射線遮蔽部材11,14が魚の下方に位置し、一対の放射線遮蔽壁16,17が魚の左右に位置することで、地面やコンクリート床から魚に向かう放射線を遮蔽することができるので、放射線検出のバックグラウンドを減らして魚からの放射線を精度良く検出することができる。
【0060】
また、この比放射能検査システム1によれば、搬送される魚の上方を開放することにより、魚の搬送状態の監視やトラブル対応、メンテナンスを容易にすることもできる。更に、この比放射能検査システム1によれば、魚の下方に放射線検出器7が位置するので、魚の上方や側方に放射線検出器7が位置する場合と比べて、魚の大小にかかわらず、魚と放射線検出器7の距離を最小限にすることができ、放射線検出の精度向上を図ることができる。以上より、この比放射能検査システム1によれば、魚を個別に丸ごと、連続的に効率良く比放射能を検査し、精度良く比放射能別に分別することができる。従って、この比放射能検査システム1によれば、魚を個別に丸ごと検査するので、複数の魚を一まとめに検査する場合と比べて消費者に大きな安心を与えることができ、魚を損傷することなく丸ごと連続的に検査することで生産者に対して意欲を与え、漁港の復興に貢献することができる。
【0061】
また、この比放射能検査システム1によれば、複数の放射線検出器7の上側及び左右両側を覆うステンレスカバーを備えることにより、放射線検出器7を適切に保護して機器の耐久性を向上できると共に、衛生を保つための頻繁な洗浄にも対応することができ、魚の検査システムとして有用である。
【0062】
更に、この比放射能検査システム1によれば、制御部6が位置検出センサ21〜23により魚の先端到達時刻及び末端到達時刻を認識し、ベルトコンベヤー4の搬送速度を利用して個別の魚の位置を把握する構成とすることで、簡素な構成で魚の位置認識が可能となるので、詳細な位置検出を行わなくても、搬送速度に基づいて個別の魚の位置を容易に把握することができ、放射線検出の結果を個別の魚の検出結果として適切にカウントすることができる。このことは、システム構成の簡素化及びシステムの製造コスト低減に有利である。
【0063】
また、この比放射能検査システム1によれば、前後の魚と等距離の位置の放射線検出器が放射線を検出したと判定した場合、当該放射線検出器に頭部が近い魚の放射線検出としてカウントする。このように、魚の構造を考慮すると魚の尾よりも頭部からの放射線を検出する可能性が高いことから、等距離にある魚のうち頭部が近い魚の放射線検出としてカウントすることで誤検出を避け、放射線検出の信頼性を高めることができる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限られない。ここで、
図11(a)は第1の変形例に係る放射線検出器40を示す平面図であり、
図11(b)は第1の変形例に係る放射線検出器40を示す側面図である。
【0065】
図11(a)及び
図11(b)に示すように、第1の変形例に係る放射線検出器40は、円形のシンチレータ41、ライトガイド42、及び光電子増倍管43から構成されている。また、各放射線検出器40の間には放射線遮蔽部材44が設けられている。
【0066】
第1の変形例に係る放射線検出器40は、
図11(a)に示すように鉛直方向から見てシンチレータ41及び光電子増倍管43が重ならないように配置されている。このため、ライトガイド42は、斜めに変形した漏斗状に形成されており、シンチレータ41とその斜め下に位置する光電子増倍管43を接続している。
【0067】
このように構成された放射線検出器40によれば、従来のようにシンチレータと光電子増倍管を直列(鉛直)に配置する場合と比べて、
図11(b)に示すように光電子増倍管43の下方から入り込んだガンマ線はシンチレータ41に到達しなくなり、地面からのガンマ線によるバックグラウンドを大きく落とすことができる。更に、光電子増倍管43の径を小さくすれば、バックグラウンドを一層低くすることができる。従って、第2の変形例に係る放射線検出器40を備えた比放射能検査システムによれば、放射線のバックグラウンドを落とすことができるので、魚の放射線検出に関する信頼性を高めることができる。
【0068】
なお、第1の変形例に係る放射線検出器40のように、鉛直方向から見てシンチレータ41及び光電子増倍管43が重ならないように配置した場合には、光電子増倍管43の下方に補助用の放射線遮蔽部材(
図4の放射線遮蔽部材14)を設ける必要はない。
【0069】
続いて、第2の変形例に係る放射線検出器50について説明する。
図12(a)は第2の変形例に係る放射線検出器50を示す平面図であり、
図12(b)は第2の変形例に係る放射線検出器50を示す側面図である。
【0070】
図12(a)及び
図12(b)に示すように、第2の変形例に係る放射線検出器50は、二つのシンチレータ51,52、ライトガイド53、及び光電子増倍管54から構成されており、シンチレータ51,52の上面及び光電子増倍管54の下面以外は放射線遮蔽部材55に覆われている。
【0071】
第2の変形例に係る放射線検出器50では、二つのシンチレータ51,52に対して一つの光電子増倍管54が設けられている。すなわち、ライトガイド53は、二つのシンチレータ51,52の下面と一つの光電子増倍管54の上面とを接続している。また、放射線検出器50においても、
図12(a)に示すように、二つのシンチレータ51,52と一つの光電子増倍管54は鉛直方向から見て重ならないように配置されている。
【0072】
このように構成された放射線検出器50によれば、必要な光電子増倍管54の数を減らすことができるので、システムの製造コストを大幅に低減することができる。また、
図12(b)に示すように、この放射線検出器50においても、光電子増倍管43の下方から入り込んだガンマ線がシンチレータ51,52に到達することが避けられるので、地面からのガンマ線によるバックグラウンドを大きく落とすことができる。
【0073】
図13は、第3の変形例に係る放射線検出器60を示す図である。
図13に示すように、第3の変形例に係る放射線検出器60では、シンチレータ61と小径の光電子増倍管63をライトガイド62を介して上下方向に繋いでいる。この放射線検出器60では、下方向から光電子増倍管63を通じてシンチレータ61を直接に覗かれないようにするため、光電子増倍管63の径より大きめの径を有する円筒状の鉛遮蔽体(放射線遮蔽部材)65を置いている。この円筒状の鉛遮蔽体65はなるべく上部の放射線遮蔽部材64の穴(光電子増倍管63の下端が露出する穴)に近づけて配置する。これにより、地面からのガンマ線によるバックグラウンドを低くすることができる。なお、光電子増倍管63の径をより小さくすれば、よりバックグラウンドを減らすことができる。
【0074】
また、上述した実施形態では、重量測定台3において魚の個別標識を行っていたが、個別標識の方法は上述したものに限られない。例えば、入口位置検出センサ21による位置検出時に魚の個別標識(例えば搬送順に基づく個別標識)を行ってもよい。