特許第6048887号(P6048887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6048887弁開閉時期制御装置における駆動側回転体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048887
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】弁開閉時期制御装置における駆動側回転体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/344 20060101AFI20161212BHJP
   F01L 1/356 20060101ALI20161212BHJP
   C25D 11/00 20060101ALI20161212BHJP
   C25D 11/04 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   F01L1/344
   F01L1/356 E
   C25D11/00 308
   C25D11/00 303
   C25D11/04 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-82178(P2013-82178)
(22)【出願日】2013年4月10日
(65)【公開番号】特開2014-206047(P2014-206047A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(74)【代理人】
【識別番号】100148183
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊也
(72)【発明者】
【氏名】朝日 丈雄
(72)【発明者】
【氏名】野口 祐司
(72)【発明者】
【氏名】安達 一成
(72)【発明者】
【氏名】杉本 禎
【審査官】 大城 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−019418(JP,A)
【文献】 特開2010−196674(JP,A)
【文献】 特開2004−244699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/344
C25D 11/00
C25D 11/04
F01L 1/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸芯に沿う方向の少なくとも何れか一方側に開口したハウジング本体、および、前記開口の開口端面に当接して前記開口を閉じるカバープレートを有し、クランクシャフトに対して同期回転する駆動側回転体と、
前記駆動側回転体に内包され、前記ハウジング本体の内周面との間に進角室及び遅角室となる空間を形成しつつ、前記回転軸芯と同心状にカムシャフトと一体回転する従動側回転体と、を備えた弁開閉時期制御装置において、
前記ハウジング本体の前記開口端面を被覆材で覆い、前記ハウジング本体の表面であって前記開口端面を除いた領域のうち少なくとも前記内周面に硬質層を形成し、
前記ハウジング本体をアルミニウム材で形成し、前記ハウジング本体の開口端面をゴム部材で覆いつつ前記硬質層としてのアルマイト層を形成するアルマイト処理を行う際に、
前記ゴム部材が、硬度の異なる少なくとも2種類のゴム材料で構成され、前記ゴム部材のうち前記開口端面の縁部に当接する部位に、硬度の高い方のゴム材料を配設してある駆動側回転体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転体と、駆動側回転体の内周側に同軸芯上に相対回転可能に配置され、内燃機関の弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転体とを備える弁開閉時期制御装置を構成する駆動側回転体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弁開閉時期制御装置は、駆動側回転体を構成するハウジング本体に対し、従動側回転体の回転位相を制御することで、内燃機関の吸気弁や排気弁の開閉タイミングを変更する。このとき、ハウジング本体の内周面と、従動側回転体に設けた例えば仕切部材とが互いに摺動するが、このような摺動部分にはシール部材を装着し、ハウジング本体内の油圧室からの油漏れを防いでいる。しかし、ハウジング本体がアルミニウム材等の金属によって構成されている場合には、ハウジング本体の内周面はシール部材等との摺動によって摩耗し易く、油漏れの原因となる。そこで、例えば、特許文献1のように、ハウジング本体の内周面に自己潤滑性樹脂の被膜やアルマイト被膜等の硬質層を形成した弁開閉時期制御装置が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−132415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の弁開閉時期制御装置では、ハウジング本体の全面に対してアルマイト処理を施すため、内周面に加えて開口端面にも硬質層が形成される。アルマイト層(硬質層)は通常、アルミニウム材の表面に対して垂直な方向に成長するが、内周面と開口端面とで形成される縁部においてはアルマイト層の成長が乱れ、その表面形状が不均一になることがある。ハウジング本体にカバープレートが取付けられる場合、こうした表面形状の乱れがハウジング本体とカバープレートとの合せ面に挟み込まれ、両者間に隙間が発生する。この隙間はハウジング本体内からの油漏れの原因となる。その上、ハウジング本体の開口端面の縁部は硬質層が形成され難い箇所であって、硬質層が形成される方向に乱れが起きやすい。このため、縁部の硬質層は、従動側回転体に対して薄く形成されたり、ハウジング本体の開口端面から突出して形成されたりすることがある。そうなると、ハウジング本体の開口端面近くの硬質層と従動側回転体との間や、開口端面とカバープレートとの間に隙間が発生する。
【0005】
また、従動側回転体とカバープレートとのクリアランスは、従動側回転体の摺動の妨げにならない範囲で可能な限り狭く設定することが油漏れ回避のために好ましい。しかし、ハウジング本体の開口端面に硬質層が存在し、ハウジング本体の開口端面部分の厚みがばらついてしまうと、このクリアランスの設定が困難になり、油漏れが生じて制御応答性が悪化することとなる。
【0006】
本発明の目的は、ハウジング本体の摺動面の耐摩耗性や潤滑性を保持しながら駆動側回転体を構成する部材同士の隙間等から油漏れを生じさせない弁開閉時期制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
【0008】
【0009】
本発明に係る弁開閉時期制御装置における駆動側回転体の製造方法の特徴手段は、回転軸芯に沿う方向の少なくとも何れか一方側に開口したハウジング本体、および、前記開口の開口端面に当接して前記開口を閉じるカバープレートを有し、クランクシャフトに対して同期回転する駆動側回転体と、
前記駆動側回転体に内包され、前記ハウジング本体の内周面との間に進角室及び遅角室となる空間を形成しつつ、前記回転軸芯と同心状にカムシャフトと一体回転する従動側回転体と、を備えた弁開閉時期制御装置において、
前記ハウジング本体の前記開口端面を被覆材で覆い、前記ハウジング本体の表面であって前記開口端面を除いた領域のうち少なくとも前記内周面に硬質層を形成し、
前記ハウジング本体をアルミニウム材で形成し、前記ハウジング本体の開口端面をゴム部材で覆いつつ前記硬質層としてのアルマイト層を形成するアルマイト処理を行う際に、
前記ゴム部材が、硬度の異なる少なくとも2種類のゴム材料で構成され、前記ゴム部材のうち前記開口端面の縁部に当接する部位に、硬度の高い方のゴム材料を配設した点にある。
【0010】
本製造方法によれば、駆動側回転体のハウジング本体を構成するのに、ハウジング本体の内周面などには硬質層を構成することでハウジング本体の耐摩耗性を向上させることができる。一方、本発明では、ハウジング本体の内周面への硬質層の形成の際に開口端面は被覆しておくので、ハウジング本体の開口端面には硬質層が形成されない。これにより、開口端面とカバープレートとの密着性が高まり、進角室あるいは遅角室に充填された作動油の漏れが抑制されて、動作応答性の良い弁開閉時期制御装置を得ることができる。また、内周面の硬質化加工が終了したのちに開口端面に対して特段の加工を施すことが不要となる。よって、所期の性能を有するハウジング本体を効率よく得ることができる。
【0011】
【0012】
ハウジング本体をアルミニウム材で構成する場合、アルミニウム材の硬質化処理としてアルマイト処理がよく用いられる。本発明では、ハウジング本体の内周面にはアルマイト処理を施し、カバープレートが取り付けられる開口端面にはアルマイト処理を行わない。これにより、ハウジング本体の耐摩耗性を向上させつつ、作動油の漏洩を抑制する。ただし、そのためには、特にハウジング本体の内周面に施すアルマイト処理によって内周面のうち開口端面との境界位置まで健全なアルマイト層を形成する必要がある。
【0013】
そのため、本製造方法では、ハウジング本体の開口端面に被覆するゴム部材のうち開口端面の縁部に当接するものとして硬度の高いゴム材料を利用する。ハウジング本体の開口端面のうち縁部以外の部位に対しては硬度の低いゴム材料を用いる。このようなゴム部材が開口端面に押し付けられる際には、ゴム部材は幾分圧縮変形し、開口端面の縁部から張り出したゴム部材は内周面の中央側に押し出される。本発明では、当該部位のゴム材料を硬度の高いものとすることで、このようなゴム材料の押し出しを軽減することができる。これにより、内周面のうち開口端面との境界位置までアルマイト層(硬質層)を健全に成長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】弁開閉時期制御装置を示す全体構成図である。
図2図1のII−II矢視断面図である。
図3】硬質層が形成されたハウジング本体の斜視図である。
図4】ハウジング本体と被覆材との斜視図である。
図5】別実施形態の被覆材の斜視図である。
図6】ハウジング本体に被覆材が配設された状態を示す部分断面図である。
図7】筒材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔全体構成〕
図1に示すように、弁開閉時期制御装置は、エンジンEのクランクシャフトE1と同期回転するハウジング1(駆動側回転体の一例)と、エンジンEのカムシャフト2と同期回転する内部ロータ3(従動側回転体の一例)と、を備えている。ハウジング1と内部ロータ3とは同一軸芯X上に配置されている。
【0016】
〔ハウジングおよびロータ〕
図1及び図2に示すように、ハウジング1は、前側すなわちカムシャフト2とは反対側に設けたフロントプレート4(カバープレートの一例)と、後側すなわちカムシャフト2の側に設けたリアプレート5(カバープレートの一例)と、フロントプレート4およびリアプレート5との間に介装された外部ロータ6(ハウジング本体の一例)と、を備えている。リアプレート5の外周部にはスプロケットが形成されている。フロントプレート4とリアプレート5と外部ロータ6とはねじ固定されている。尚、リアプレート5の外周部にスプロケットを形成せずに、外部ロータ6の外周部にスプロケットを形成してもよい。
【0017】
クランクシャフトE1が回転駆動すると、動力伝達部材E2を介してリアプレート5にその回転駆動力が伝達され、外部ロータ6が回転方向S(図2参照)に回転駆動する。外部ロータ6の回転駆動に伴い、内部ロータ3が回転方向Sに回転駆動してカムシャフト2が回転し、カムシャフト2に設けられたカム(図示しない)がエンジンの吸気弁(図示しない)を押し下げる。
【0018】
図2に示すように、外部ロータ6の内周部には、径方向内方側に突出する突出部8が複数形成されている。それら突出部8は回転方向Sに沿って間隔を隔てて配置してある。内部ロータ3の外周部には、径方向外方側に突出する仕切部9が複数形成されている。それら仕切部9は、突出部8と同様に回転方向Sに沿って間隔を隔てて配置してある。突出部8によって、外部ロータ6と内部ロータ3との間の空間が複数の流体圧室に仕切られている。仕切部9によって、これら流体圧室がそれぞれ進角室11と遅角室12とに仕切られている。さらに、進角室11、遅角室12間のエンジンオイルの漏洩を防止するために、突出部8のうち内部ロータ3の外周面に対向する位置、および、仕切部9のうち外部ロータ6の内周面に対向する位置には、それぞれシール部材SEが設けられている。
【0019】
外部ロータ6は、ステンレス、鉄、銅合金等の焼結金属や、アルミニウム、アルミニウム合金等によって形成されている。外部ロータ6は、図3に示すように、開口端面25を除いた表面のうち内周面26に硬質層30が形成されている。
【0020】
硬質層30は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)等のフッ素樹脂、ボリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリイミド樹脂(PI)、ボリアミドイミド樹脂(PAl)、ポリアミド樹脂(PA)、全芳香族ポリエステル樹脂(ARPES)、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)等の硬質性樹脂によって形成される。硬質層30の形成方法としては、静電粉体塗装法、誘導塗装法、流動浸債法、スプレー塗装法、ハケ塗り法等を採用することができる。外部ロータ6をアルミニウム材で構成し、内周面26に硬質層30としてアルマイト層を形成してもよい。
【0021】
このように、外部ロータ6のうち、少なくとも内周面26に硬質層30を設けることで、内部ロータ3の一部が外部ロータ6に摺動する際に、外部ロータ6の耐摩耗性を向上することができる。一方、外部ロータ6の開口端面25には硬質層30を設けないことで、ハウジング1を組み立てる際に、開口端面25とフロントプレート4との密着性が高まる。よって、進角室11あるいは遅角室12に充填された作動油の漏れが抑制され、動作応答性の良い弁開閉時期制御装置が得られる。
【0022】
図1及び図2に示すように、内部ロータ3、連結部材22、及びカムシャフト2の内部には、進角通路13及び遅角通路14が形成されている。進角通路13は、各進角室11とエンジンオイルの給排及びその給排の遮断を行なう給排機構KKとを接続する。遅角通路14は、各遅角室12と給排機構KKとを接続する。
【0023】
給排機構KKは、オイルパンと、オイルモータと、進角通路13および遅角通路14に対してエンジンオイルの給排及びその給排の遮断を行なう流体制御弁OCVと、流体制御弁OCVの作動を制御する電子制御ユニットECUと、を備えている。この給排機構KKを制御することによって、内部ロータ3と外部ロータ6との相対回転位相を進角方向(図2の矢印S1方向)または遅角方向(図2の矢印S2方向)へ変位させたり、任意の位相に保持する。
【0024】
ロック機構RKは、内部ロータ3と外部ロータ6とを所定の相対回転位相にロックする。ロック機構RKは、内部ロータ3の仕切部9の一つに、リアプレート5に形成した凹部(図示せず)に対して回転軸芯Xに沿う方向に出退自在な先端部を備えたロック部材16を装着して構成してある。また、ロック部材16に作動油圧力を作用させる液圧室(図示せず)が設けられており、この液圧室は進角通路13または遅角通路14に連通している。これら構成により、ロック機構RKは、圧縮バネなどの付勢部材(図示せず)の付勢力を受けて、ロック部材16の先端部が凹部に入り込むことによってロック状態に切り換え、作動油圧力(流体圧力)を受けて、付勢部材の付勢力に抗して凹部から内部ロータ3の側に抜け出ることによってロック解除状態に切り換える。
【0025】
〔ハウジング(駆動側回転体)の製造方法について〕
例えば、ハウジング1を構成する外部ロータ6(ハウジング本体の一例)がアルミニウム材で構成されている場合には、内周面26をアルマイト処理することにより硬質層30が形成される。こうした硬質層30を形成するためには、まず、外部ロータ6の両側の開口端面25、25を被覆材40,40(図4参照)で覆う。被覆材40は、外部ロータ6の開口端面25に沿うよう、例えば硬質のゴム部材や銅板によって構成されている。図4に示される被覆材40は、外部ロータ6の開口端面25とほぼ同形であるが、外部ロータ6の開口端面25を完全に覆うものであれば被覆材40の形状は問わない。
【0026】
開口端面25、25を被覆材40,40(図4参照)によって被覆した後、外部ロータ6の表面であって開口端面25を除いた領域のうち少なくも内周面26に硬質層30を形成する。アルマイト処理に関しては、被覆材40,40を用いる他は一般的な方法を用いる。硬質層30は、外部ロータ6の内周面26のみではなく、外周面27に併せて形成してもよい。外部ロータ6に硬質層30を形成した後は、開口端面25から被覆材40を取り外し、開口端面25、25にフロントプレート4、リアプレート5を取り付けることにより、ハウジング1が完成する。
【0027】
なお、ハウジング1において、仮に外部ロータ6とフロントプレート4及びリアプレート5の一方が一体成形されている場合には、被覆材40は一方側の開口端面25のみに配置される。
【0028】
このように、外部ロータ6の内周面26に硬質層30を形成することで、外部ロータ6の耐摩耗性を向上させることができる。一方、外部ロータ6の開口端面25には硬質層30が形成されない。このため、フロントプレート4を外部ロータ6の開口端面25に取り付ける際に、開口端面25の表面がフロントプレート4に密着し易くなる。その結果、進角室11あるいは遅角室12に充填された作動油の漏れが抑制されて、動作応答性の良い弁開閉時期制御装置を得ることができる。
【0029】
また、本製造方法では、内周面26への硬質層30の形成の際に開口端面25は被覆しておくので、内周面26の硬質化加工が終了したのちに開口端面25に対して特段の加工を施すことが不要となる。よって、所期の性能を有するハウジング部材を効率よく得ることができる。
【0030】
内周面26に形成する硬質層30については、内部ロータ3の全幅に亘る部位と確実に当接させるために、開口端面25との境界位置まで健全なアルマイト層(硬質層)30を形成する必要がある。ただし、外部ロータ6の開口端面25に例えばゴム部材(被覆材の一例)40を押し当てた場合、ゴム部材40は幾分圧縮変形され、ゴム部材40のうち開口端面25の縁部25aから張り出した部分は内周面26の中央側に押し出される。こうしたゴム部材40の押し出しが大きくなると、内周面26のうち開口端面25との境界位置では、アルマイト層(硬質層)30が成長するべき空間がゴム部材40によって塞がれるため、健全なアルマイト層(硬質層)30を形成することが困難になる。
【0031】
そこで、図5及び図6に示すように、開口端面25を被覆するゴム部材40を硬度の異なる2種類のゴム材料41、42で構成する。ゴム部材40は、開口端面25の縁部25aに当接するものとして硬度の高いゴム材料41を用い、開口端面25の縁部25a以外の部位に対しては硬度の低いゴム材料42を用いる。
【0032】
このように、ゴム部材40において開口端面25の縁部25aに当接するゴム材料41を硬度の高いものとすることで、ゴム材料41の内周面26の中央側への押し出しを軽減することができる。これにより、内周面26のうち開口端面25との境界位置までアルマイト層(硬質層)30を健全に成長させることができ、外部ロータ6の内周面26において回転軸芯X方向の全体に亘り良好な硬質層30を形成することができる。
【0033】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、単一の外部ロータ6の開口端面25を被覆材40によって被覆する例を示したが、図7に示すように、長尺の筒材60を用いて複数の外部ロータ6を製造してもよい。筒材60は押出成形等により成形することができる。この場合、筒材60の内周面26のみまたは内周面26及び外周面27に硬質層30を形成した後、筒材60を切断線C(外部ロータ6の幅寸法を規定する線)に沿って切断する。筒材60の両端の開口端面25に形成される硬質層は、開口端面25に切削加工を施すことによって削り落とされる。これにより、筒材60から開口端面25に硬質層30が形成されない外部ロータ6を複数製造することができる。筒材60の中央寄りの部分から製造される外部ロータ6は、切断線Cに沿って切断するだけで硬質層30が形成されない開口端面25を備える。このように、筒材60の両側の開口端面25を被覆するだけで複数の外部ロータ6を製造することができるので、外部ロータ6を効率よく製造することができる。
【0034】
(2)上記実施形態では、ハウジング1が外部ロータ6とフロントプレート4とリアプレート5との3部材で構成される例を示したが、ハウジング1は外部ロータ6にフロントプレート4及びリアプレート5のうち一方が一体成形されて構成されていてもよい。
【0035】
(3)上記実施形態では、開口端面25の被覆材であるゴム部材40を硬度の異なる2種類のゴム材料41、42で構成する例を示したが、開口端面25から内周面26の中央側へのゴム材料の押し出しが軽減されるのであれば、硬度の異なる3種類以上のゴム材料によってゴム部材40を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、自動車その他の内燃機関の弁開閉時期制御装置に適応可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 ハウジング(駆動側回転体)
2 カムシャフト
3 内部ロータ(従動側回転体)
4 フロントプレート(カバープレート)
5 リアプレート(カバープレート)
6 外部ロータ(ハウジング本体)
11 進角室
12 遅角室
25 開口端面
25a 縁部
30 硬質層
40 被覆材
41 硬度の高いゴム材料
42 硬度の低いゴム材料
X 回転軸芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7