(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構造体から垂設された複数本の吊下げ棒状体の下端側部位に、吊設機器の吊下げ支持対象部位に設けられた被取付け部が連結されている吊設機器の振れ止め措置構造であって、
前記吊下げ棒状体のうち、少なくとも一本の吊下げ棒状体における前記吊設機器の被取付け部との連結箇所以外の設定部位とそれに対応する吊設機器の対応部位との間に、前記設定部位と前記対応部位との遠近方向での相対移動を規制する移動規制手段が脱着可能に装着されている吊設機器の振れ止め措置構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の前者の吊下げ支持構造では、構造体から吊設機器の被取付け部までの吊下げ距離が短いものの、構造体から垂設される吊りボルトの水平方向の揺れ動きを規制するものが無く、且つ、吊設機器の吊下げ支持対象部位に設けられる被取付け部が、吊設機器の側面における上下中間部位において横外側方に突出する状態で設けられ、この被取付け部に連結された吊りボルトと吊設機器の側面とのあいだに空隙が形成されているため、地震等に起因する振動が作用したとき、吊りボルトが構造体側の基部を支点にして揺れ動き、吊設機器の下端部に接触又は近接する状態で配設される天井パネル等の損壊を招来する問題がある。
【0005】
また、従来の後者の吊下げ支持構造においても、前記吊りボルトの下側部位と振れ止めボルトの下端部との連結部が、吊設機器の上面相当位置よりも上方側に配設されており、しかも、吊設機器の被取付け部に連結された吊りボルトと吊設機器の側面とのあいだに空隙が形成されているため、地震等に起因する振動が作用したとき、吊りボルトにおける振れ止めボルトの下端部との連結部を支点にして、それから吊設機器の被取付け部との連結箇所に至るまでの範囲の吊りボルト部分が揺れ動き、前者と同様に吊設機器の下端部に接触又は近接する状態で配設される天井パネル等の損壊を招来する問題がある。
【0006】
そこで、地震等による吊りボルトの揺れ動きに起因する上述の問題点を解消する方法として、吊設機器の下端部の周方向複数箇所と構造体における吊りボルトの基部から外方側に変位した複数部位とにわたって、第2の振れ止め措置としての第2振れ止めボルト(第2ブレースボルト)を傾斜姿勢で連結する振れ止め対策が考えられるが、これによる場合は、吊設機器の下端部の周方向複数箇所に連結される第2振れ止めボルトを、吊設機器の側部を通して天上空間の広い領域を斜めに横切る状態で架設する必要があるため、他の構成部材と干渉する配設上の制約を受け易く、しかも、第2の振れ止め措置としての追加工事が大掛かりになる不都合がある。
【0007】
特に、前記吊設機器が空調機器である場合には、空調機器に対する配管の配設経路が存在するため、その配管の配設状況によっては第2の振れ止め措置としての追加工事を実施することができないことがある。
【0008】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、吊設機器と吊下げ棒状体との間での合理的な改造により、地震等に起因する吊設機器の揺れ動きを抑制することができ、しかも、他の構成部材との干渉を回避しながら振れ止め工事をコスト面及び施工面で有利に実施することのできる吊設機器の振れ止め措置構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
構造体から垂設された複数本の吊下げ棒状体の下端側部位に、吊設機器の吊下げ支持対象部位に設けられた被取付け部が連結されている吊設機器の振れ止め措置構造であって、
前記吊下げ棒状体のうち、少なくとも一本の吊下げ棒状体における前記吊設機器の被取付け部との連結箇所以外の設定部位とそれに対応する吊設機器の対応部位との遠近方向での相対移動を規制する移動規制手段が設けられている。
【0010】
上記構成によれば、地震等に起因する振動が作用したとき、吊設機器の被取付け部に連結された吊下げ棒状体と吊設機器の側面との間に存在する空隙において、吊下げ棒状体が揺れ動こうとするが、本願発明では、前記移動規制手段によって、少なくとも一本の吊下げ棒状体における吊設機器の被取付け部との連結箇所以外の設定部位とそれに対応する吊設機器の対応部位との遠近方向での相対移動を規制しているため、吊設機器の上面相当位置よりも上方側部位を支点とする吊下げ棒状体の揺れ動きを抑制することができる。
【0011】
しかも、前記移動規制手段は、吊下げ棒状体の設定部位とそれに対応する吊設機器の対応部位との間において構成することができるから、例えば、吊設機器の下端部の周方向複数箇所と構造体における吊りボルトの基部から外方側に変位した複数部位とにわたって、第2の振れ止め措置としての第2振れ止め部材を傾斜姿勢で連結する場合に比して、他の構成部材と干渉する可能性が少なく、しかも、この移動規制手段をコンパクトに構成することができる。
【0012】
したがって、前記移動規制手段によって地震等に起因する吊設機器の揺れ動きを抑制することができ、しかも、この移動規制手段の小型化によって他の構成部材との干渉を回避しながら振れ止め工事をコスト面及び施工面で有利に実施することができる。
【0013】
前記移動規制手段が、前記吊下げ棒状体における前記吊設機器の被取付け部との連結箇所よりも上方側の設定部位とそれに対応する吊設機器の対応部位との間に設けられている。
【0014】
上記構成によれば、前記移動規制手段で規制される吊下げ棒状体の設定部位を、吊設機器の被取付け部との連結箇所よりも上方側に配置することにより、例えば、吊下げ棒状体の設定部位を被取付け部との連結箇所よりも下方側に配置する場合に比して、吊設機器の上面相当位置よりも上方側部位を支点とする吊下げ棒状体の揺れ動きを効果的に抑制することができる。
【0015】
前記吊下げ棒状体のうち、振れ止め措置対象の吊下げ棒状体と前記構造体又は他の吊下げ棒状体との間に振れ止め部材が連結されている。
【0016】
上記構成によれば、前記吊下げ棒状体のうち、構造体側の基部から振れ止め部材との連結箇所までの領域での揺れ動きを抑制することができるから、振れ止め部材と移動規制手段とによって地震等に起因する吊設機器の揺れ動きを効果的に抑制することができる。
【0017】
前記移動規制手段には、前記吊下げ棒状体の前記設定部位と前記吊設機器の前記対応部位との間の間隔に相当する移動規制間隔を調節する規制間隔調節手段が設けられている。
【0018】
上記構成によれば、吊設機器の被取付け部に連結された吊下げ棒状体と吊設機器の側面との間の間隔がメーカーや機種によって異なる場合でも、この間隔の変動を前記移動規制手段に設けた規制間隔調節手段によって吸収することができるから、吊下げ棒状体の設定部位とそれに対応する吊設機器の対応部位との遠近方向での相対移動を確実に規制することができ、地震等に起因する吊設機器の揺れ動きを常に効果的に抑制することができる。
【0019】
前記移動規制手段には、前記吊下げ棒状体に脱着可能に取付けられる取付け部と、吊設機器の側面に当接又は押圧可能な状態で前記取付け部に装備される当接部とが備えられている。
【0020】
上記構成によれば、前記吊下げ棒状体の前記設定部位とそれに対応する吊設機器の対応部位との遠近方向での相対移動を規制する際、前記移動規制手段の取付け部を吊下げ棒状体に取付け、且つ、この移動規制手段の当接部を吊設機器の側面に当接又は押圧させるだけで装着作業が完了するから、移動規制手段の施工の容易化と能率化を図ることができる。
そして、本発明による第1の特徴構成は、構造体から垂設された複数本の吊下げ棒状体の下端側部位に、吊設機器の吊下げ支持対象部位に設けられた被取付け部が連結されている吊設機器の振れ止め措置構造であって、
前記吊下げ棒状体のうち、少なくとも一本の吊下げ棒状体における前記吊設機器の被取付け部との連結箇所以外の設定部位とそれに対応する吊設機器の対応部位との間に、前記設定部位と前記対応部位との遠近方向での相対移動を規制する移動規制手段が脱着可能に装着されている点にある。
本発明による第2の特徴構成は、前記移動規制手段が、前記設定部位と前記対応部位の間に押込み装着可能に構成されている点にある。
本発明による第3の特徴構成は、前記移動規制手段が、前記設定部位と前記対応部位の間に当接又は押圧状態で装着可能に構成されている点にある。
本発明による第4の特徴構成は、前記移動規制手段には、前記吊設機器の前記対応部位に当接する当接部が備えられている点にある。
本発明による第5の特徴構成は、前記移動規制手段には、前記吊下げ棒状体に脱着可能に取付けられる取付け部が備えられている点にある。
本発明による第6の特徴構成は、前記吊設機器の前記対応部位が当該吊設機器の側面の対応部位又は上面の対応部位である点にある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
図1〜
図11は、吊設機器の一例である空調機器Aの振れ止め措置構造を示し、
図1に示すように、構造体の一例であるコンクリート製の天井スラブSに垂設された4本の吊りボルト(吊下げ棒状体の一例)1に、空調機器Aの四箇所の吊下げ支持対象部位に設けられた被取付け部2を連結するとともに、左右方向及び前後方向で相対向する振れ止め措置対象の各対の吊りボルト1の上下二箇所にわたって、振れ止め部材の一例である2本の振れ止めボルト(ブレースボルト)3をX字状に交差させた姿勢で連結してある。
【0023】
空調機器Aの機器ケース4は、
図1、
図2に示すように、平面視において直方体の四隅が略45度の角度で隅切り形成された変形八角形に構成され、この機器ケース4の各側辺部と隅切り角部とを構成する長短の側面4a,4bのうち、各隅切り角部側の短尺側面4bにおける少し下方側に変位した上下中間位置には、前記被取付け部2を構成する側面視略L字状の吊り金具が、外方側に突出する状態で設けられ、この各吊り金具2の水平方向に沿う連結板部2aには、吊りボルト1が横外方から係脱可能なボルト挿通孔2bが切欠き形成されている。
【0024】
この吊り金具2のボルト挿通孔2bに挿通された吊りボルト1には、吊り金具2の連結板部2aの上下両面を挾持状態で締付けることにより、空調機器Aを吊りボルト1の設定取付け位置に固定連結する一対のナット5が螺合されている。
【0025】
機器ケース4の下面には、空気吹出口及び空気吸込口を備え、かつ、天井パネル6に形成された機器装着口の開口周縁を覆う底面視略正方形状の化粧パネル7が取付けられ、この化粧パネル7の四隅には、
図1に示すように、機器ケース4の各短尺側面4bの外面側に形成される隅切り空間に臨む作業用開口7aを閉止するコーナーカバー7Aが設けられている。
【0026】
各振れ止めボルト3の上端部は、吊りボルト1における天井スラブS近くの基端部に連結され、また、各振れ止めボルト3の下端部は、吊りボルト1における空調機器Aの上面よりも少し上方に偏倚した位置に連結されている。
【0027】
吊りボルト1と振れ止めボルト3とを連結する連結具Bとしては種々のものが存在し、そのいずれの連結具Bも使用可能であるが、当該実施形態で用いられている連結具(交差連結具)Bは、
図1に示すように、両端部を互いに近づける側に弾性変形操作可能な形態に屈曲形成されている一対の連結部材10が、互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結されているとともに、前記各連結部材10の両側部には、吊りボルト1又は振れ止めボルト3に対して交差方向から係入自在な開口を備えた係合凹部11が形成され、各連結部材10の両端部を互いに近づける側への弾性変形操作で両係合凹部11が吊りボルト1又は振れ止めボルト3に対して係脱自在に構成され、各連結部材10の弾性復元力で両係合凹部11が吊りボルト1又は振れ止めボルト3に対して係合可能に構成されている。
【0028】
連結部材10の各々は、相手側の連結部材10に枢支連結される取付け板部10Aと、これの両端から同一側に互いに離れる向きの傾斜姿勢で延出される傾斜板部10B、及び、当該両傾斜板部10Bの先端側に延出される指で挟み操作可能な操作板部10Cとを備え、各傾斜板部10Bには、当該両傾斜板部10Bを互いに近づける側への両操作板部10Cによる弾性変形操作により、吊りボルト1又は振れ止めボルト3に対して交差方向から係脱可能な状態で係入する前記係合凹部11が、両傾斜板部10Bの互いに異なる側辺において逆向きに開口する状態で切欠き形成されている。
【0029】
連結部材10の両係合凹部11におけるボルト軸芯方向(棒軸芯方向)両側の端縁10a、10bをもって、連結部材10の弾性復元力で吊りボルト1又は振れ止めボルト3のネジ部(ネジ山又はネジ溝)に係合保持される係止爪が形成されている。
【0030】
そして、
図1、
図2、
図5に示すように、各吊りボルト1における空調機器Aの吊り金具2との連結箇所よりも上方側の設定部位とそれに対応する空調機器Aの対応部位との遠近方向での相対移動を規制する移動規制手段Cが設けられ、この移動規制手段Cには、吊りボルト1の前記設定部位と空調機器Aの前記対応部位との間の間隔に相当する移動規制間隔Lを調節する規制間隔調節手段Dが設けられている。
【0031】
移動規制手段Cは、吊りボルト1に対して径方向から脱着可能に挾持状態で取付けられる樹脂製の取付け部15と、空調機器Aの隅切り角部側の短尺側面4bに当接又は押圧可能な状態で取付け部15に装備される樹脂製の当接部16とを備えた第1移動規制具C1から構成されている。
【0032】
この第1移動規制具C1の取付け部15は、
図2〜
図8に示すように、吊りボルト1に密着状態で外装可能な円筒状で、且つ、その周方向一箇所に拡形変形を許容するスリット15aが形成されているボルト装着部15bの内周面に、吊りボルト1のネジ部(ネジ山又はネジ溝)の一部に係合する複数の係合突起15cが一体形成されているとともに、ボルト装着部15bのスリット15aの開口周縁には、吊りボルト1に対する径方向外方からの近接操作に伴ってスリット15aを吊りボルト1の直径に相当する開口幅にまで弾性復元力に抗して拡形変形させるための一対の外広がりの装着ガイド片15dが一体形成されている。
【0033】
取付け部15のボルト装着部15bの内周面の内径が、吊りボルト1の呼径と同一又は略同一に構成されていて、吊りボルト1に対して径方向外方から装着したとき、当該ボルト装着部15bの縮径側への弾性復元力で吊りボルト1に挾持保持され、かつ、複数の係合突起15cが吊りボルト1のネジ部に係合する。
【0034】
第1移動規制具C1の当接部16は、
図2〜
図5、
図9〜
図11に示すように、平面視において略二等辺三角形の三角柱状体16Aから構成され、この三角柱状体16Aには、上下方向に貫通する4つの横断面三角形状の中空部16Bが形成されているとともに、三角柱状体16Aの三辺の側面16a,16b,16cのうち、直交する二辺の側面16a,16bの一方が、空調機器Aの隅切り角部側の短尺側面4bに当接又は押圧可能な当接面に構成されている。
【0035】
規制間隔調節手段Dを構成するに、
図2〜
図11に示すように、当接部16の三角柱状体16Aの傾斜側面16cにおける幅方向中央部には、それの傾斜方向の全域にわたる状態で横断面略T字状の摺動突起17が突出形成されているとともに、三角柱状体16Aの傾斜側面16cにおける幅方向両側部には、傾斜方向に沿って多数の略V字状の係止溝18Aが一定ピッチで配置された被係止部18が形成されている。
【0036】
また、取付け部15の角柱状の基部15eには、三角柱状体16Aの傾斜側面16cに形成されている摺動突起17と嵌合して、当接部16を機器ケース4の短尺側面4bに対する遠近方向に摺動案内する横断面略T字状の摺動ガイド溝19と、被係止部18の係止溝18Aに選択的に係合する板状の係止爪(係止部)20とが形成されている。
【0037】
この係止爪20は、当接部16の当接面となる三角柱状体16Aの側面16aが機器ケース4の短尺側面4bと平行姿勢にあるとき、機器ケース4の短尺側面4bに対する直交方向に沿って当該短尺側面4b側に突出形成されている。
【0038】
この構成により、取付け部15の係止爪20は、機器ケース4の短尺側面4bに対して45度の角度で傾斜する被係止部18の各係止溝18Aと選択的に係合するとき、係止溝18Aを構成する一対の溝形成壁面18a,18bのうち、機器ケース4の短尺側面4b側に位置する一方の溝形成壁面18aに当接するため、機器ケース4の短尺側面4bから離間する側への当接部16の戻り移動が確実に阻止される。
【0039】
また、
図5(b)に示すように、当接部16に対して機器ケース4の短尺側面4bに沿う方向から押し込み操作力が加えられたとき、被係止部18の係止溝18Aから受ける押圧力によって係止爪20が弾性復元力に抗して離脱方向に弾性変形し、係止溝18Aの隣接間の係止山部18Bが一つ通過した時点で係止爪20が元の係止姿勢に弾性復帰する。
【0040】
そのため、第1実施形態においては、この第1移動規制具C1の取付け部15を、吊りボルト1のうち、振れ止めボルト3の下端部との連結位置から吊り金具2との連結位置までの範囲に位置する下側ボルト部分で、且つ、その下側ボルト部分の略上下中央位置に径方向外方から挾持状態で装着したのち、当接部16を機器ケース4の短尺側面4bに沿って押し込み操作して、当該当接部16の当接面を構成する側面16aを空調機器Aの隅切り角部側の短尺側面4bに当て付けるだけで済む。
【0041】
それ故に、既存の空調機器Aの振れ止め措置構造に第1移動規制具C1を取付ける場合でも、空調機器Aの化粧パネル7の四隅に形成されている作業用開口7a(
図1参照)を通して簡単に取付けることができる。
【0042】
また、
図5(a)(b)は、空調機器Aの吊り金具2に連結された吊りボルト1と空調機器Aの隅切り角部側の短尺側面4bとの間の間隔(移動規制間隔)Lがメーカーや機種によって異なる場合の一例を示す。
図5(a)は、前記間隔(移動規制間隔)Lが最も小さい場合を示し、取付け部15の係止爪20が、被係止部18の最前列の係止溝18Aに係合している。
また、
図5(b)は、前記間隔(移動規制間隔)Lが大きい場合を示し、取付け部15の係止爪20が、被係止部18の後列側の係止溝18Aに係合している。
規制間隔調節手段Dによる移動規制間隔Lの調節範囲は、取付け部15の係止爪20が被係止部18の最前列の係止溝18Aに係合している状態を最小とし、取付け部15の基部15eの摺動ガイド溝19から当接部16の摺動突起17が抜け出す直前において取付け部15の係止爪20が被係止部18の係止溝18Aに係合している状態を最大とする調節範囲である。
【0043】
そのため、空調機器Aの吊り金具2に連結された吊りボルト1と空調機器Aの隅切り角部側の短尺側面4bとの間の間隔(移動規制間隔)Lがメーカーや機種によって異なる場合でも、この間隔(移動規制間隔)Lの変動を第1移動規制具C1に設けた規制間隔調節手段Dによって吸収することができるから、吊りボルト1の設定部位とそれに対応する空調機器Aの対応部位との遠近方向での相対移動を確実に規制することができ、振れ止めボルト3と第1移動規制具C1とによって地震等に起因する空調機器Aの揺れ動きを常に効果的に抑制することができる。
【0044】
尚、前記吊り金具2が、空調機器Aの隅切り角部側の短尺側面4bの上端側に配置され、且つ、吊りボルト1の下端部が空調機器Aの化粧パネル7の近傍箇所にまで延出されている場合には、各吊りボルト1における空調機器Aの吊り金具2との連結箇所よりも下方側の設定部位とそれに対応する空調機器Aの対応部位との間に、これら両者間での遠近方向での相対移動を規制する前記移動規制手段Cを設けて実施してもよい。
【0045】
〔第2実施形態〕
図12は、吊設機器の一例である空調機器Aの振れ止め措置構造の別実施形態を示し、これは、各吊りボルト1における空調機器Aの吊り金具2よりも上方側の設定部位とそれに対応する空調機器Aの対応部位との遠近方向での相対移動を規制する移動規制手段Cを、吊りボルト1に対して脱着可能に挾持状態で取付けられる金属製の第2取付け部25と、空調機器Aの隅切り角部側の短尺側面4bに当接又は押圧可能な状態で第2取付け部25に装備される左右一対の第2当接部26とを備えた第2移動規制具C2から構成してある。
【0046】
この第2移動規制具C2には、吊りボルト1の前記設定部位と空調機器Aの前記対応部位との間の間隔に相当する移動規制間隔を調節する規制間隔調節手段Dが設けられている。
【0047】
第2移動規制具C2の第2取付け部25を構成するに、ヒンジ部25Aを介して揺動開閉自在に枢支連結された一対の挾持片25Bの中間部に、吊りボルト1に挾持状態で外装可能な円弧状の外装挾持部25bが屈曲形成され、両挾持片25Bの先端部には、当該両挾持片25Bの外装挾持部25bを吊りボルト1に挾持保持させる状態にまで締付け固定する締結具の一例であるボルト25C・ナット25Dが装着されている。
【0048】
両挾持片25Bの外装挾持部25bの内面には、吊りボルト1のネジ部(ネジ山又はネジ溝)の一部に係合する複数の係合突起(図示せず)が一体形成されている。
【0049】
第2移動規制具C2の第2当接部26は、両挾持片25Bにおける外装挾持部25bとヒンジ部25Aとの間の中間位置、及び、外装挾持部25bとボルト25C・ナット25Dとの間の中間位置の各々に、空調機器Aの隅切り角部側の短尺側面4bに向って突出する軸部材26Aを設け、この両軸部材26Aの先端部に、空調機器Aの隅切り角部側の短尺側面4bに対して直交方向から当接又は圧接されるゴム等の弾性当接体26Bを取り付けて構成されている。
【0050】
規制間隔調節手段Dは、第2当接部26の軸部材26Aをボルトから構成するとともに、両挾持片25Bの軸取付け位置に形成されている取付け孔を、前記軸部材26Aを構成するボルトと螺合自在なネジ孔に形成して構成されている。
【0051】
この第2実施形態では、規制間隔調節手段Dによる移動規制間隔の調節範囲は、両挾持片25Bのネジ孔に対するボルトの螺合移動範囲となる。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0052】
〔第3実施形態〕
図13は、吊設機器の一例である空調機器Aの振れ止め措置構造の別実施形態を示し、これは、各吊りボルト1における空調機器Aの吊り金具2よりも上方側の設定部位とそれに対応する空調機器Aの対応部位との遠近方向での相対移動を規制する移動規制手段Cを、吊りボルト1に対して脱着可能に挾持状態で取付けられる第3取付け部31と、空調機器Aの隅切り角部側の短尺側面4bに当接又は押圧可能な状態で第3取付け部31に装備される第3当接部32とを備えた第3移動規制具C3から構成してある。
【0053】
この第3移動規制具C3には、吊りボルト1の前記設定部位と空調機器Aの前記対応部位との間の間隔に相当する移動規制間隔を調節する規制間隔調節手段Dが設けられている。
【0054】
第3移動規制具C3の第3取付け部31は、第1実施形態で説明した取付け部15の主要部と同様の構成を備えており、具体的には、第1実施形態の
図6、
図7を参照しながら説明すると、吊りボルト1に密着状態で外装可能な円筒状で、且つ、その周方向一箇所に拡形変形を許容するスリット31aが形成されているボルト装着部31bの内周面に、吊りボルト1のネジ部(ネジ山又はネジ溝)の一部に係合する複数の係合突起(図示せず)を一体形成するとともに、ボルト装着部31bのスリット31aの開口周縁には、吊りボルト1に対する径方向外方からの近接操作に伴ってスリット31aを吊りボルト1の直径に相当する開口幅にまで弾性復元力に抗して拡形変形させるための一対の外広がりの装着ガイド片31cが一体形成されている。
【0055】
第3移動規制具C3の第3当接部32は、第3取付け部31のボルト装着部31bに一体形成された取付け基台31dに装備される摺動自在な後述の規制間隔調節手段Dのラック33を利用し、このラック33の先端部に、空調機器Aの隅切り角部側の短尺側面4bに対して直交方向から当接又は圧接されるゴム等の弾性当接体32Aを取り付けて構成されている。
【0056】
規制間隔調節手段Dを構成するに、第3取付け部31の取付け基台31dには、空調機器Aの化粧パネル7の四隅に形成されている作業用開口7a(
図1参照)を通して回転操作可能な回転操作ハンドル34を備えた上下軸芯周りで回動自在な回転操作軸35が取付けられているとともに、この回転操作軸35の上端部にはピニオン36が取付けられ、第3取付け部31の取付け基台31dの上面には、ピニオン36に噛合するラック33を空調機器Aの隅切り角部側の短尺側面4bに対して直交する方向に摺動自在に保持する摺動ガイド部37が形成されている。
【0057】
第3取付け部31の取付け基台31dには、ピニオン36の噛合部に対して径方向外方側から係合可能で、且つ、係合側にバネ等で揺動付勢された逆転防止部材38が設けられている。
【0058】
この逆転防止部材38は、ラック33が空調機器Aの隅切り角部側の短尺側面4bに対して近接移動するピニオン36の正回転時には、このピニオン36の正回転に伴って径方向外方側に逃げ揺動し、ラック33が空調機器Aの隅切り角部側の短尺側面4bに対して離間移動するピニオン36の逆回転時には、このピニオン36の噛合部に係合した逆転阻止状態を維持する。
【0059】
この第3実施形態では、規制間隔調節手段Dによる移動規制間隔の調節範囲は、ピニオン36の正回転操作によるラック33の移動代の範囲となる。
【0060】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0061】
〔第4実施形態〕
図14は、吊設機器の一例である空調機器Aの振れ止め措置構造の別実施形態を示し、これは、各吊りボルト1における空調機器Aの吊り金具2よりも上方側の設定部位とそれに対応する空調機器Aの対応部位との遠近方向での相対移動を規制する移動規制手段Cを、吊りボルト1に対して脱着可能に挾持状態で取付けられる第4取付け部41と、空調機器Aの隅切り角部側の短尺側面4bに当接又は押圧可能な状態で第4取付け部41に装備される第4当接部42とを備えた第4移動規制具C4から構成してある。
【0062】
この第4移動規制具C4には、吊りボルト1の前記設定部位と空調機器Aの前記対応部位との間の間隔に相当する移動規制間隔を調節する規制間隔調節手段Dが設けられている。
【0063】
第4移動規制具C4の第4取付け部41は、直方体状に形成されたゴム等の第1弾性ブロック41Aに、吊りボルト1に対してそれの180度範囲以上の周面部分に嵌合して、第1弾性ブロック41Aを吊りボルト1に抜止め状態で挾持保持する円弧状の挾持凹部41Bを形成して構成されている。
【0064】
第4移動規制具C4の第4当接部42は、空調機器Aの隅切り角部側の短尺側面4bに当接又は押圧可能な当接面42aを備えた直方体状に形成されたゴム等の第2弾性ブロック42Aから構成されている。
【0065】
規制間隔調節手段Dを構成するに、第1弾性ブロック41Aの左右方向の二箇所に右ネジ又は左ネジを形成してある第1ネジ筒43を埋設状態で設けるとともに、第2弾性ブロック42Aの左右方向の二箇所には、第1弾性ブロック41Aの第1ネジ筒43とは逆の左ネジ又は右ネジを形成してある第2ネジ筒44を埋設状態で設ける。
【0066】
さらに、第1弾性ブロック41Aの両第1ネジ筒43と第2弾性ブロック42Aの第2ネジ筒44とにわたって、両ネジ筒43,44に螺合可能な互いに逆向きの雄ネジ部45a,45bと回転操作用の六角部45cとを形成してある調節ボルト45が螺合されている。
【0067】
両調節ボルト45の六角部45cを回転操作することにより、第1弾性ブロック41Aと第2弾性ブロック42Aとが近接移動又は離間移動し、吊りボルト1の前記設定部位と空調機器Aの前記対応部位との間の間隔に相当する移動規制間隔を調節することができる。
【0068】
この第4実施形態では、規制間隔調節手段Dによる移動規制間隔の調節範囲は、第1弾性ブロック41Aと第2弾性ブロック42Aとが最大限に近接移動した状態から最大限に離間移動した状態までの範囲となる。
【0069】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0070】
また、この第4実施形態では、第1弾性ブロック41Aに、吊りボルト1に対してそれの180度範囲以上の周面部分に嵌合する円弧状の挾持凹部41Bを形成したが、このような挾持凹部41Bを形成せずに、偏平な側面を吊りボルト1に当て付けてもよい。
【0071】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の第1実施形態では、左右方向及び前後方向で相対向する振れ止め措置対象の各対の吊りボルト1の上下二箇所にわたって、振れ止め部材の一例である2本の振れ止めボルト(ブレースボルト)3をX字状に交差させた姿勢で連結したが、対をなす吊りボルト1にわたって、2本の振れ止めボルト3を横向きV字状に交差させた姿勢で連結してもよい。
また、対をなす吊りボルト1にわたって、1本の振れ止めボルト3を水平姿勢又は傾斜姿勢で連結してもよい。
さらに、振れ止め措置対象の吊りボルト1の下側部位と構造体における吊りボルト1の基部から外方側に変位した部位とにわたって振れ止めボルト3を傾斜姿勢で連結してもよい。
【0072】
(2)吊りボルト1における空調機器Aの吊り金具2よりも上方側の設定部位とそれに対応する空調機器Aの対応部位との遠近方向での相対移動を規制する移動規制手段Cを、吊りボルト1の前記設定部位と空調機器Aの前記対応部位との間の間隙に押し込み装着可能なゴム製や発泡体製等の移動規制ブロックから構成してもよい。
この場合、移動規制ブロックには、吊りボルト1の前記設定部位と空調機器Aの前記対応部位との間の間隔に相当する移動規制間隔を調節する規制間隔調節手段Dが存在しないが、この移動規制ブロックを、吊りボルト1の前記設定部位と空調機器Aの前記対応部位との間の間隔よりも少し大きく形成して、当該移動規制ブロックの弾性変形により、吊りボルト1の前記設定部位と空調機器Aの前記対応部位との間の間隙に押し込み状態で保持させるように構成してもよい。
【0073】
(3)上述の各実施形態では、吊りボルト1の設定部位と空調機器Aの側面の対応部位との間に移動規制手段Cを構成したが、吊りボルト1の設定部位と空調機器Aの上面の対応部位との間に移動規制手段Cを構成してもよい。
【0074】
(4)上述の各実施形態では、空調機器Aを吊下げ支持する全ての吊りボルト1の設定部位と空調機器Aの側面の対応部位との間に夫々移動規制手段Cを構成したが、吊りボルト1の総本数よりも少ない一部(1本又は複数本)の吊りボルト1の設定部位と空調機器Aの側面の対応部位との間にだけ移動規制手段Cを構成してもよい。
【0075】
(5)上述の各実施形態では、吊設機器Aとして空調機器を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、照明機器やケーブルラック等の他の吊設機器Aであってもよい。
【0076】
(6)上述の各実施形態では、天井スラブや梁等の構造体Sから垂設される吊下げ棒状体1として吊りボルトを例に挙げて説明したが、棒軸芯方向に沿って多数の係止突起が周方向の一部に形成してある棒状部材を用いてもよい。
【0077】
(7)上述の各実施形態では、振れ止め措置対象の吊りボルト1に連結される振れ止め部材として振れ止めボルト3を例に挙げて説明したが、棒軸芯方向に沿って多数の係止突起が周方向の一部に形成してある棒状部材や振れ止めワイヤー等を用いてもよい。
【0078】
(8)上述の第1実施形態では、振れ止め措置対象の各対の吊りボルト1にわたって、振れ止め部材の一例である振れ止めボルト3を連結したが、構造体Sから吊設機器Aの被取付け部2までの吊下げ距離が短い場合には、振れ止めボルト等の振れ止め部材3を設けなくてもよい。
この吊りボルト1だけの吊下げ支持構造においても、本発明の前記移動規制手段Cを設けることによって地震等に起因する吊設機器Aの揺れ動きを抑制することができる。