(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
接合孔に収まる径に形成され、刃が径内に収まる収納位置から径外へ張り出す拡張位置までの範囲で動くようにした切削刃具と、外部からの力で軸方向に動き、軸周方向へは一体となって回転する進退動部材と、該進退動部材の進退動を前記切削刃具の動きに変えるリンク機構とを有する切削部本体と、
該切削部本体の先端側に設けられ、接合孔の奥に収まり先端側の軸受となる先部軸受と、
前記進退動部材に軸周方向への回転力を伝えるための回転力伝達要素とを備える
孔拡張部形成装置。
前記回転力伝達要素が、前記切削部本体の前記進退動部材に接続可能で電動機の回転軸を接続するための回転軸接続要素と、自身を回転自在に軸支する後部軸受とを有する延長シャフトを含む
請求項1の孔拡張部形成装置。
前記切削部本体の回転を直接又は間接的に軸支するハンドルケースを有し、該ハンドルケースが、接合孔に内嵌めできる筒部を有し、該筒部を通して接合孔内の空気及び切屑を吸引する吸引管を接続するための吸引管接続要素を有する
請求項1の孔拡張部形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の装置は、接合木材の接合孔に孔拡張部を容易かつ迅速に形成することができる点においては十分に有用である。しかしながら、上記装置を使用し実際に作業を行う中で、次のような点で改良の余地があることもわかってきた。
【0006】
すなわち、切削刃作用具で切削刃を押して回動させるようにした機構は、相互の摩擦が大きく、円滑には動きにくい場合がある。特に、切削刃が挿入管に収まった状態から回動するにつれて押部で押す部分が中心軸に近くなり、切削刃に最も大きな切削抵抗がかかる回動位置(特許文献1の
図5(b)の位置)に近付くと、切削刃に対し切削刃作用具と木質切削部から相当に大きな力が作用する。しかし、構造的に、切削刃の刃幅をこれ以上広くすることが難しく、切削刃の充分な強度が確保しにくいため、上記理由から切削刃の傷みが早くなり、交換の頻度が増す傾向があった。
【0007】
更に、切削刃は、切削時、切削刃作用具で押されて回動するが、切削刃作用具が接触しているだけなので回動方向への動きはある程度フリーであり、動きにガタが生じやすい。このため、切削刃が回転しながら孔拡張部を切削するとき、安定しにくいので、切削刃に想定外の大きな負荷が作用して破損したり、孔拡張部の内面の仕上がりにムラが出て接着剤の充填に支障を来す可能性があった。
【0008】
(本発明の目的)
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、木質部材の接合面に所要の深さに形成されている接合孔の内壁に、接着剤を充填するための孔拡張部を形成する装置において、孔拡張部を形成する際に切削刃を回動させるときの動きをより円滑に行うことができるようにすると共に、切削する際の切削刃の回転方向への動きを安定させることができるようにした、孔拡張部形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、接合孔に収まる径に形成され、刃が径内に収まる収納位置から径外へ張り出す拡張位置までの範囲で動くようにした切削刃具と、外部からの力で軸方向に動き、軸周方向へは一体となって回転する進退動部材と、該進退動部材の進退動を前記切削刃具の動きに変えるリンク機構とを有する切削部本体と、該切削部本体の先端側に設けられ、接合孔の奥に収まり先端側の軸受となる先部軸受と、前記進退動部材に軸周方向への回転力を伝えるための回転力伝達要素とを備える孔拡張部形成装置である。
【0010】
(2)本発明は、前記切削刃具が、長手方向の両端に刃を有し、中間部を回動中心として回動するようにしてある構成とすることができる。
【0011】
この場合は、切削刃具を動かすリンク機構によって、刃が径内に収まる収納位置から径外へ張り出す拡張位置までの範囲で切削刃具が回動すると、球形状の空間を有する孔拡張部を形成することができる。
【0012】
(3)本発明は、前記進退動部材を、進退動部材と連動する前記切削刃具を刃が径内に収まる方向へ付勢する付勢体を有する構成とすることができる。
【0013】
この場合は、外部からの力によって進退動部材を動かし、連動する切削刃具の刃を径外へ拡張させた後は、バネ等の付勢体の付勢力によって刃が径内に収まるよう切削刃具が自動的に元の状態に戻るので、孔拡張部を形成する作業がしやすくなる。
【0014】
(4)本発明は、前記切削部本体の外周部に螺旋方向が排出方向である螺旋溝部を有する構成とすることができる。
【0015】
この場合は、切削部本体が回転することによって切削刃具の刃で切削した切屑を、螺旋溝部によって排出方向へ誘導し、接合孔の外部へスムーズに効率よく排出することができる。
【0016】
(5)本発明は、前記切削部本体の外周部に、接合孔より径小で前記切削部本体の他の部分より径大な振れ止め部が形成されている構成とすることができる。
【0017】
この場合は、孔拡張部の切削作業時において、先部軸受と協働して、切削部本体の軸心の振れを防止又は抑制することができる。これにより、接合孔の内壁に形成する孔拡張部の加工をより正確に、かつ効率的に行うことができる。
【0018】
(6)本発明は、前記先部軸受が、前記切削部本体の先端に着脱可能で長さが異なる複数種類の深さ調節アダプターにおいて選択された一つの深さ調節アダプターを介し設けられる構成とすることができる。
【0019】
この場合は、切削部本体の先端に取り付ける長さの異なる深さ調節アダプターを適宜取り替えることにより、接合孔の奥端部からの切削刃具の距離を調節することができるので、接合孔の内壁の複数箇所に孔拡張部を形成することができる。
【0020】
(7)本発明は、前記回転力伝達要素が、前記切削部本体の前記進退動部材に接続可能で電動機の回転軸を接続する回転軸接続要素を有する延長シャフトを含む構成とすることができる。
【0021】
この場合は、延長シャフトを進退動部材に接続し、電動機の回転軸を回転軸接続要素を介し延長シャフトに接続することで、電動機の回転駆動力によって切削部本体を回転させることができる。また、作業者が、電動機を持って延長シャフトを軸方向において進退させることにより、切削刃具を、刃が径内に収まる収納位置から径外へ張り出す拡張位置までの範囲で回動させることができる。
【0022】
(8)本発明は、前記回転力伝達要素が、前記切削部本体の前記進退動部材に接続可能で電動機の回転軸を接続するための回転軸接続要素と、自身を回転自在に軸支する後部軸受とを有する延長シャフトを含む構成とすることができる。
【0023】
この場合は、上記(7)の作用に加え、孔拡張部の切削作業時において、接合孔の内部、又は後述するハンドルケースの内部に後部軸受を収めることにより、先部軸受と協働して、切削部本体の軸心の振れを防止又は抑制することができる。これにより、接合孔の内壁に形成する孔拡張部の加工をより正確に、かつ効率的に行うことができる。
【0024】
(9)本発明は、前記切削部本体の回転を直接又は間接的に軸支するハンドルケースを有し、該ハンドルケースが、接合孔に内嵌めできる筒部を有し、該筒部を通して接合孔内の空気及び切屑を吸引する吸引管を接続するための吸引管接続要素を有する構成とすることができる。
【0025】
この場合は、孔拡張部の形成に伴って接合孔内で発生する切屑は、吸引ポンプ等につながる吸引管を通して集めることができるので、作業部において切屑が散らかったり空気中に飛散することを防止することができ、作業環境を良好に維持することができる。
【0026】
(作用)
本発明に係る孔拡張部形成装置の作用を説明する。
まず、回転力伝達要素を介し、電動機等の回転軸を接続する等して、回転力を進退動部材及び切削部本体に伝えることができるようにする。
次に、木工用キリによって接合木材の木口等の木表面を穿って開けられた所要深さの接合孔に、先部軸受と切削部本体を差し入れ、先部軸受を接合孔の奥端部に当てて収める。
【0027】
電動機等により進退動部材及び切削部本体を接合孔内で回転させる。切削部本体の先端側は、先部軸受によって回転自在に軸支されているので、切削部本体は円滑に回転することができる。そして、電動機等を回転軸の軸方向に動かす等して、進退動部材を進退させる。これにより、切削刃具は刃が径内に収まる収納位置から径外へ張り出す拡張位置までの範囲で回動する等して動き、接合孔の内壁は回転する刃により切削されて、当初の内径空間より大きな空間を有する孔拡張部が形成される。
【0028】
なお、切削刃具は、リンク機構を介し動かされる構造であり、切削刃具の回動等の動きは円滑に行われる。また、切削刃具と進退動部材の間にリンクが介在することによって、進退動部材の動きは、常に切削刃具の動きに反映されるので、従来のようなガタもなく、切削する際の切削刃の回転方向への動きを安定させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、木質部材の接合面に所要の深さに形成されている接合孔の内壁に、接着剤を充填するための孔拡張部を形成する装置において、孔拡張部を形成する際に切削刃を回動させるときの動きをより円滑に行うことができるようにすると共に、切削する際の切削刃の回転方向への動きを安定させることができるようにした、孔拡張部形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る孔拡張部形成装置の一実施の形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す孔拡張部形成装置の分解斜視図である。
【
図3】孔拡張部形成装置の切削刃収納時の装置本体を示し、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるA1矢視説明図である。
【
図4】孔拡張部形成装置の切削刃張出時の装置本体を示し、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるA2矢視説明図である。
【
図5】孔拡張部形成装置の各機構部の構造を示し、(a)は切削刃具の刃を収納している状態、(b)は切削刃具の刃を最大径の位置まで張り出している状態の断面説明図である。
【
図6】切削刃具を回動させる機構部の構造を示し、(a)は切削刃具の刃を収納している状態、(b)は切削刃具の刃を最大径の位置まで張り出している状態の断面説明図である。
【
図7】孔拡張部形成装置を使用した接合木材の接合方法の手順を示し、木口に接合孔を開けた状態の説明図である。
【
図8】接合孔に孔拡張部形成装置を挿入した状態の説明図である。
【
図9】孔拡張部形成装置によって接合孔に孔拡張部を形成している状態の説明図である。
【
図10】孔拡張部形成装置を切削刃が二つめの孔拡張部の形成位置に位置するようセットした状態の説明図である。
【
図11】孔拡張部形成装置によって接合孔に二つめの孔拡張部を形成している状態の説明図である。
【
図12】接合孔の二箇所に孔拡張部を形成した状態の説明図である。
【
図13】二つの接合木材の木口を付き合わせて各接合孔にネジロッドを渡して収容した状態の説明図である。
【
図14】各接合孔に接着剤を注入した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1ないし
図6を参照する。
孔拡張部形成装置Sは、木質構造体に使用される接合木材6の木口60に所要の深さに形成されている接合孔61の内壁にほぼ球形状の空間部である孔拡張部62、63を形成する装置である(後述する
図11参照)。
【0032】
孔拡張部形成装置Sは金属製で、切削部本体1、深さ調節アダプター2、延長シャフト3及びハンドルケース4により構成されている。
なお、以下の説明において、先側(又は前側)は各図において左側を表し、後側は各図において右側を表している。
【0033】
(切削部本体1)
切削部本体1は、断面形状の外形がほぼ円形である収納体10を有している。収納体10の先側には、収納体10よりやや径小な先部接続軸13が形成されている。収納体10の後側には、収納体10とほぼ同径のシリンダー14が形成されている。なお、収納体10と先部接続軸13及びシリンダー14は、それぞれの中心軸が同一直線上にある構造である。
【0034】
また、収納体10と先部接続軸13の境界部及び収納体10とシリンダー14の境界部には、それぞれ振れ止め部12、12aが形成されている。振れ止め部12、12aには、空気及び切屑を通すための凹部120が周方向へ複数設けられており、凸部(符号省略)の外径は、接合孔61の内径よりやや径小に、かつ他の部分の収納体10及びシリンダー14の径よりやや径大につくられている。
【0035】
先部接続軸13の先端面の中心部には、ネジ孔130が形成されている。ネジ孔130には、後述する深さ調節アダプター2がネジ部22を螺合して接続される。
また、収納体10には、振れ止め部12、12aの間の部分の直径方向の中間部を軸方向に同幅で切り欠いて収納空間11が形成されている。収納空間11は、収納体10の直径線両端を含む外周面間を貫通して形成されている。
【0036】
シリンダー14は、ほぼ円筒体であり、後側は内径部143の径の大きさのまま開口されている。シリンダー14の外周面には、螺旋方向が排出方向である螺旋溝部140が形成されている。ここで、螺旋方向が排出方向である、とは、切削部本体1が電動機5によって所定の方向へ回転したときに、螺旋溝部140が後方へ移動するように見える螺旋方向を意味するものである。
【0037】
また、シリンダー14の前側は、内径が他の部分(内径部143)より径小な通し孔142が収納空間11に通じるように貫通して設けられている。これにより、内径部143と通し孔142の境界部には、段差(符号省略)が形成されている。この段差には、次に説明するコイルバネ19の端部が係合するようになっている。
【0038】
シリンダー14の内径部143の内部の前側には、付勢体であるコイルバネ19が収容されている。コイルバネ19の径は、内径部143の内径よりやや径小であり、常態での長さは、内径部143の長さの約1/2である。コイルバネ19は、上記したように先端を内径部143と通し孔142の段差部に係合させて内径部143に収められている。
【0039】
また、内径部143には、コイルバネ19と共に進退動部材18が収容されている。進退動部材18は、内径部143よりやや径小な後部側の径大部180と、コイルバネ19の内径よりやや径小な先部側の径小部181を有している。径大部180の後端には、回転力伝達要素を構成するネジロッド183が形成されている。
【0040】
コイルバネ19の後端は、進退動部材18の径小部181と径大部180の境界部の段差部(符号省略)に係合しており、径小部181は、コイルバネ19と上記通し孔142を貫通して通されている。これにより、進退動部材18は、径大部180を内径部143に沿って摺動させ、径小部181を通し孔142に沿って摺動させて、コイルバネ19の付勢力を受けながら進退動をすることができる。
【0041】
更に、進退動部材18の径大部180には、径大部180の直径線両端を含む外周面間を貫通してスライド穴182が形成されている。また、シリンダー14の長さ方向のほぼ中間には、シリンダー14を直径線方向に貫通するガイドピン141が固定されている。そして、進退動部材18は、スライド穴182をガイドピン141にスライド自在に嵌め入れてセットされている。
【0042】
これにより、進退動部材18は、シリンダー14の軸方向に沿って進退動をし、かつ軸周方向へはシリンダー14と一体となって回転する。なお、スライド穴182の長さは、進退動部材18がこのストロークで進退動をしたときに、後述する切削刃具16の各刃体162、163が収納体10の径内に収まる収納位置(
図5(a)参照)から、各刃体162、163が収納体10の径外へ張り出して最大径となる位置(
図5(b)参照)までの範囲で切削刃具16を動かすことができる長さに設定されている。
【0043】
また、上記収納空間11には、切削刃具16が収めてある。切削刃具16は、回動体160を有している。回動体160は、中心部の軸受部(符号省略)が収納空間11を直径線方向に貫通して固定された軸ピン161で回動自在に軸支されている。回動体160の長さ方向の両側の翼部(符号省略)は、収納空間11を形成する底面と天面(何れも符号省略)にほぼ接するように設けられている。
【0044】
そして、それぞれの翼部の先端部の内面側には、四角形の刃体162、163が着脱自在にネジ止めされている。なお、刃体162、163は、四辺部が共に刃部となっており、対角位置にある二つの角部を切削部先端とするよう入れ替えることで、都合二回使用することができる。
【0045】
なお、後部側に位置する一方の刃体162を固定するネジ164(
図6参照)と上記進退動部材18の径小部181の先端部は、リンク17を介し接続されている。リンク17の一端側は、止めネジ164を介し一方の翼部に回動自在に接続され、他端側は、二つ割に形成した径小部181の先端の間隙に入れて軸ピン171を介し回動自在に接続されている。
【0046】
これにより、進退動部材18がガイドピン141とスライド穴182の関係で規制されるストロークで進退動をすると、上記したように、切削刃具16の各刃体162、163が収納体10の径内に収まる収納位置から収納体10の径外へ張り出して最大径となる位置までの範囲で切削刃具16を動かすことができる。なお、常態(コイルバネ19の付勢力により進退動部材18が後退位置にあるとき)においては、各刃体162、163は収納位置にある。
【0047】
(深さ調節アダプター2)
深さ調節アダプター2は、所要の長さの軸ロッド20を有している。軸ロッド20の後端には、上記先部接続軸13のネジ孔130に螺合するネジロッド22が形成されている。また、軸ロッド20の先端には、先部軸受21が取り付けられている。先部軸受21は玉軸受であり、先部軸受21の外環を固定又は実質的に固定した状態で軸ロッド20は回転自在である。
【0048】
深さ調節アダプター2は、ネジロッド22を先部接続軸13のネジ孔130に螺合して接続することができ、切削部本体1に対し着脱が可能である。なお、深さ調節アダプター2は、軸ロッドの長さが異なるもの(図示省略)があらかじめ複数用意されており、これらの中から必要に応じて選択された一つの深さ調節アダプターが使用される。
【0049】
(延長シャフト3)
延長シャフト3は、所要の長さのシャフト30を有している。シャフト30の先端には、上記ネジロッド183に螺合するネジ孔31が形成されている。シャフト30の後端には、回転軸接続要素であり、電動機5の回転軸(図示省略)の先端部のチャック50で掴まれる保持部32が形成されている。
【0050】
そして、シャフト30と保持部32の境界部には、後部軸受33が固定されている。後部軸受33は玉軸受であり、後部軸受33の外環の外径は、次に説明するハンドルケース4の主管の内径よりやや径小に形成されており、主管の内部に固定又は実質的に固定した状態でシャフト30は回転自在である。
【0051】
(ハンドルケース4)
ハンドルケース4は、T字型の三方継手様のケース本体40を有している。ケース本体40の主管(前後方向の管:符号省略)の前部側の内周面には、雌ネジ部400が形成されている。また、ケース本体40の分岐管(符号省略)には、先端側の内周面に雌ネジ部401が形成されている。
【0052】
分岐管には吸引管接続要素である接続管41が螺着されている。接続管41の先端側の外周面には雄ネジ部410が形成されている。接続管41には、吸引ポンプ(図示省略)につながる吸引管43(
図8〜
図11に図示)が先端部の雌ネジ部を雄ネジ部410に螺着して接続される。
【0053】
上記ケース本体40の前部側には、挿入筒部材42が接続されている。挿入筒部材42は、先部側の筒部420と、後部側の雄ネジ部421を有し、その境界部には締め付け用の六角形の掛かり部422が設けられている。筒部420の外径は、接合孔61の内径よりやや径小に形成されており、接合孔61に内嵌めができる。
【0054】
挿入筒部材42は、雄ネジ部421を雌ネジ部400に螺合してケース本体40に接続されている。そして、ハンドルケース4は、ケース本体40に接続されている挿入筒部材42及びケース本体40の主管を延長シャフト3に嵌め込むようにし、後部軸受33を主管の内部に収めて延長シャフト3にセットされる。
【0055】
(作用)
図7ないし
図14を参照し、孔拡張部形成装置Sを使用して接合木材6の接合孔61の内壁の二箇所に球形状の孔拡張部62、63を形成する方法及び接合木材6同士を接合する方法及び接合構造について説明する。
【0056】
(1)
図7に示すように、木工用キリ(図示省略)によって、接合木材6の木口60の中心軸方向に所要の深さの接合孔61を開ける。接合孔61の内径は切削部本体1よりやや径大で、切削部本体1が無理なく、かつ大きなガタ等もなく挿入できる大きさである。そして、接合木材6の外周面から接合孔61の奥端部に通じる接着剤注入孔64を形成する。
【0057】
(2)あらかじめ接合孔61に形成する孔拡張部62の位置を見込んで、これに対応する長さの深さ調節アダプター2を切削部本体1の先端に取り付ける。次に、
図8に示すように、電動機5のチャック50で孔拡張部形成装置Sの延長シャフト3の保持部32を保持する。ハンドルケース4の接続管41には、吸引ポンプにつながっている吸引管43が接続されている。そして、接合孔61に孔拡張部形成装置Sを先部側から挿入し、先部軸受21を孔の奥端部に当接させる。ハンドルケース4に接続されている挿入筒部材42の筒部420は、接合孔61の孔口に挿入する。
【0058】
なお、この時点では、切削刃具16の各刃体162、163は収納体10の径内、すなわち収納空間11の内部にほぼ収まっている。そして、吸引ポンプを作動させ、接合孔61内の空気をハンドルケース4を通して吸引する。吸引される空気は、接着剤注入孔64から接合孔61内に取り込まれる。
【0059】
(3)次に、
図9に示すように電動機5を作動させ、延長シャフト3を介して接合孔61内の切削部本体1を回転させる。切削部本体1は、先部軸受21と後部軸受33によって軸支されて回転し、振れ止め部12、12aの振れ止め作用とも相俟って安定した回転が可能である。そして、切削部本体1を回転させながら、電動機5を押したり緩めたりして、延長シャフト3を介して進退動部材18を規制されたストローク内で前後方向に進退させる。なお、上記押す力を緩めることで、コイルバネ19の付勢力(反発力)が作用し、進退動部材18は自動的に後退する。
【0060】
進退動部材18が上記のように進退することにより、切削刃具16がリンク17を介し連動し、軸ピン161を中心として一定の角度範囲(約90°)内で回動する。すなわち、切削刃具16の各刃体162、163が、収納体10の径内に収まる収納位置(
図5(a)参照)から、各刃体162、163が収納体10の径外へ張り出して最大径となる位置(
図5(b)参照)までの範囲で動く。
【0061】
これにより、各刃体162、163によって、接合孔61の内壁が切削されて、奥側にほぼ球形状の空間部である孔拡張部62が形成される。すなわち、
図9において孔拡張部62の右側の約半分は刃体162で切削されて形成され、左側の約半分は刃体163で切削されて形成される。孔拡張部62が形成されると、各刃体162、163に対する抵抗がなくなり、作動音が変化するので、孔拡張部62が形成されたことの確認も容易である。
【0062】
また、切削刃具16は、リンク17を介し動かされる構造であり、切削刃具16の回動等の動きは円滑に行われる。また、切削刃具16と進退動部材18の間にリンク17が介在することによって、進退動部材18の動きは、常に切削刃具16の動きに反映されるので、従来のようなガタもなく、切削する際の刃体162、163の回転方向への動きを安定させることができる。
【0063】
なお、切削刃具16は、軸ピン161を中心に回動しながら、各刃体162、163が接合木材6の木繊維方向と交叉する方向に回転して切削するので、孔拡張部62の切削によって生じる切屑は、木繊維が比較的短い細かな切屑となっている。この切屑は、切削作業中も、空気と共に接合孔61とハンドルケース4内を通り吸引管43により吸引されており、接合孔61の外部へ効率的に排出されて集められる。
【0064】
これにより、切屑が接合孔61内に長く留まることがなく、孔拡張部62の切削形成の邪魔にならないので、切削作業を円滑に行うことができると共に、作業部において切屑が散らかったり、空気中に切屑の細かい粒子が飛散することがないので、作業環境を良好に維持することができる。
【0065】
(4)その後、電動機5を停止させ、孔拡張部形成装置Sを接合孔61から一旦抜き取る。進退動部材18の押し込みを緩めた状態では、切削刃具16は各刃体162、163が収納空間11に収まるように戻っているので、邪魔にならず、孔拡張部形成装置Sは容易に抜き取ることができる。そして、深さ調節アダプター2を、接合孔61に次に形成する孔拡張部63の位置を見込んで、これに対応する長さの深さ調節アダプター2a(
図10、
図11参照)に付け替える。
【0066】
(5)次に、
図10に示すように、孔拡張部形成装置Sを接合孔61に再度挿入し、深さ調節アダプター2aの先端の先部軸受21を孔の奥端部に当接させる。これにより、切削刃具16の位置が上記孔拡張部62を切削した位置より、接合孔61の穴出口側へややずれる。
【0067】
(6)次いで、
図11に示すように、上記孔拡張部62を切削したときと同様に電動機5を作動させ、接合孔61の孔拡張部62に所要間隔をおいて隣接するように球形状の孔拡張部63を形成する。その後、電動機5を停止させ、孔拡張部形成装置Sを接合孔61から抜き取る。このようにして、
図12に示すように接合孔61の内壁の二箇所に球形状の空間部を有する孔拡張部62、63が形成された接合木材6を作製することができる。
【0068】
(7)さらに、
図13に示すように、前記と同様にして得られた同じ構造の接合木材6同士を、各木口60が相対向するように配置し、金属製のネジロッド65を両接合木材6の接合孔61に渡すようにして挿入する。ネジロッド65の長さは、各接合孔61をつないだときの長さとほぼ同じであり、各接合木材6の木口60同士を突き合わせたときに、ネジロッド65が両接合孔61にちょうど収容されるように設定されている。また、ネジロッド65の外径は接合孔61の内径よりやや径小に形成されており、接合孔61とネジロッド65の間に、樹脂製の接着剤66が通る隙間(符号省略)が形成されるようにしている。
【0069】
(8)そして、
図14に示すように、各接合木材6の木口60同士を突き合わせた状態で、一方の接合木材6の樹脂注入孔64から接着剤66を注入して、接合孔61においてネジロッド65の間の隙間及び合計四箇所の孔拡張部62、63に充填する。接着剤66が他方の樹脂注入孔64から出たところで接着剤66の注入を停止する。その後、接着剤66を固化させれば、各接合孔61内部において、接着剤66はネジロッド65と一体となって極めて強い接合部材となり、接合木材6同士を強固に接合することができる。