(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048915
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】インプラント用紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
A61C 19/00 20060101AFI20161212BHJP
A61C 19/06 20060101ALI20161212BHJP
A61C 8/00 20060101ALI20161212BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
A61C19/00 Z
A61C19/00 J
A61C19/06
A61C8/00 Z
A61L2/10
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-43569(P2015-43569)
(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2016-159084(P2016-159084A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106862
【弁理士】
【氏名又は名称】五十畑 勉男
(72)【発明者】
【氏名】小林 勇介
【審査官】
増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−157413(JP,A)
【文献】
特開平09−327502(JP,A)
【文献】
特開2004−121577(JP,A)
【文献】
特開2009−074927(JP,A)
【文献】
特開平06−324144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
A61C 8/00
A61C 19/06
A61L 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に配設された紫外線ランプと、該筐体内に引き出し可能に設けられたキャリッジと、該キャリッジ上に載置されて筐体内の紫外線ランプと対向配置されるインプラント保持体とからなり、紫外線によりインプラントの有機汚染物除去を行うためのインプラント用紫外線照射装置において、
前記インプラント保持体が、複数のインプラントが直線上に並べて配置されるインプラント支持台と、当該インプラント支持台が着脱自在に載置される載置台とからなり、
前記インプラント保持体は、前記紫外線ランプからの照射紫外線の有効照射領域を確認する有効照射領域確認手段を有し、
前記有効照射領域確認手段が、
前記インプラント保持体に形成された前記有効照射領域の長手方向の範囲を決定する標識と、
前記載置台に設けられた把手に形成された前記有効照射領域の垂直方向の範囲の長さを決定する標識と、
からなることを特徴とするインプラント用紫外線照射装置。
【請求項2】
前記有効照射領域確認手段における前記有効照射領域の長手方向の範囲を決定する標識が、前記インプラント支持台の構造体の長手方向長さであることを特徴とする請求項1に記載のインプラント用紫外線照射装置。
【請求項3】
筐体内に配設された紫外線ランプと、該筐体内に引き出し可能に設けられたキャリッジと、該キャリッジ上に載置されて筐体内の紫外線ランプと対向配置されるインプラント保持体とからなり、紫外線によりインプラントの有機汚染物除去を行うためのインプラント用紫外線照射装置において、
前記インプラント保持体が、複数のインプラントが直線上に並べて配置されるインプラント支持台と、当該インプラント支持台が着脱自在に載置される載置台とからなり、
前記インプラント保持体は、前記紫外線ランプからの照射紫外線の有効照射領域を確認する有効照射領域確認手段を有し、
前記有効照射領域確認手段が、前記載置台に着脱自在に取り付けられる板状体であって、該板状体には、前記有効照射領域に対応した開口が形成されていることを特徴とするインプラント用紫外線照射装置。
【請求項4】
筐体内に配設された紫外線ランプと、該筐体内に引き出し可能に設けられたキャリッジと、該キャリッジ上に載置されて筐体内の紫外線ランプと対向配置されるインプラント保持体とからなり、紫外線によりインプラントの有機汚染物除去を行うためのインプラント用紫外線照射装置において、
前記インプラント保持体が、複数のインプラントが直線上に並べて配置されるインプラント支持台と、当該インプラント支持台が着脱自在に載置される載置台とからなり、
前記インプラント保持体は、前記紫外線ランプからの照射紫外線の有効照射領域を確認する有効照射領域確認手段を有し、
前記有効照射領域確認手段が、前記載置台に着脱自在に取り付けられる透光性板状体であって、該板状体には、前記有効照射領域に対応した標識が形成されていることを特徴とするインプラント用紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インプラントに紫外線を照射してその有機汚染物除去を行うインプラント用紫外線照射装置に関するものであり、特に、紫外線ランプを利用してデンタルインプラントの有機汚染物除去を行うインプラント用紫外線照射装置に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
インプラント、特にデンタルインプラントは失われた歯の機能を代用させることを目的として顎骨に埋め込まれるものであり、そのデンタルインプラント手術においては、デンタルインプラントが十分に骨と結合(オッセオインテグレーション)することが肝要である。そのために、例えば、特許第3072303号公報(特許文献1)の段落0009には、デンタルインプラントに紫外線を照射することによって、当該デンタルインプラントに付着した有機汚染物を除去することが提案されている。
これを実現した具体的な装置としては、特開2012−157413号公報(特許文献2)に記載されている装置が開発されている。
【0003】
図5に、上記引用文献2に開示された従来のインプラント用紫外線照射装置が示されている。
このインプラント用紫外線照射装置は、開閉扉2を有する筐体1と、該筐体1内に配設された一対の紫外線ランプ3,3とを有し、前記筐体1内には開閉扉2と一体化された引き出し可能なキャリッジ4が配設され、このキャリッジ4上にはインプラント保持体5が載置されている。
そして、このインプラント保持体5は、前記キャリッジ4に着脱自在に載置される載置台6と、この載置台6に着脱自在に載置されるインプラント支持台7とからなる。
【0004】
前記載置台6には、把手8が設けられており、インプラント支持台7上には処理対象の複数本のインプラント10、10が、前記紫外線ランプ3の長手方向に沿うように直線状にセットされている。このような構成とすることで、前記把手8が設けられた載置台6を不潔域とし、インプラント10がセットされたインプラント支持台7を清潔域として区分している。
このように、インプラント保持体5を清潔域と不潔域とに分割して、インプラント保持体5の出し入れには、載置台6側(不潔域)を取扱うことで、清潔域にあるインプラント支持台7上のインプラント10には手が触れることがなく清潔状態が保たれ、照射処理後の再汚染のおそれがない構造とされている。
【0005】
このインプラント用紫外線照射装置では、インプラント10がセットされたインプラント保持体5がキャリッジ4上に載置された状態で、開閉扉2が閉じられてキャリッジ4が筐体1内に収容されたとき、インプラント保持体5上に直線状に配設されたインプラント10は一対の紫外線ランプ3,3間に位置して、これと対向配置されるものである。
インプラント10は、紫外線ランプ3からの、例えば、172nmや、254nmの紫外線が所定の時間、照射される。照射処理後は、ファン11が回転し、筐体1内のガスが循環して、オゾン除去手段12によってオゾンの除去処理が行われるものである。
【0006】
ところで、このようなインプラント用紫外線照射装置に用いられる紫外線ランプには一定の照度分布があり、また、筐体内には、紫外線ランプの破損時の破片飛散防止するための保護カバーが設けられている場合もあり、それぞれの装置において、インプラントの有機物除去を効果的に行うために、必要な紫外線照射強度を得ることができる領域(有効照射領域)は、処理室の中でも限られた範囲になる。
一方で、インプラントには様々な形状のものがあり、この紫外線照射装置が用いられる使用現場(医療機関)においては、このような様々な形状のインプラントを同時的に使用することが日常的に行われている。
【0007】
このような状況にあっては、
図7に示すように、例えば、長さの異なるインプラントをインプラント支持台7上にセットした場合、長いインプラントではその一部(上部)が有効照射領域Xからはみ出し、短いものでは、有効照射領域Xに届かないものがでてくる。
また、複数本のインプラントを直線状に配列してセットしたとき、両端部に位置するインプラントが有効照射領域Xからはみ出す恐れもある。
このように、インプラント支持台上にセットしたインプラントの一部が照射紫外線の有効照射領域に存在しないことを認識できずに紫外線処理を行ったとき、すべてのインプラントの有機物除去処理が行われたものと誤認してしまうという問題がある。
そして、従来の装置においては、処理対象のインプラントがこの有効照射領域にあることを確認する手立てがなく、上記問題点は深刻なものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3072303号公報
【特許文献2】特開2012−157413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、筐体内に配設された紫外線ランプと、該筐体内に引き出し可能に設けられたキャリッジと、該キャリッジ上に載置されて筐体内の紫外線ランプと対向配置されるインプラント保持体とからなり、紫外線によりインプラントの有機汚染物除去を行うためのインプラント用紫外線照射装置において、インプラント保持体に保持されたインプラントが紫外線ランプからの照射紫外線の有効照射領域内にあることを事前に確認して、すべてのインプラントが完全に有機汚染物の除去が行われるようにした構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明に係るインプラント用紫外線照射装置は、前記インプラント保持体が、前記紫外線ランプからの照射紫外線の有効照射領域を確認する有効照射領域確認手段を有することを特徴とする。
また、前記インプラント保持体が、複数のインプラントが直線上に並べて配置されるインプラント支持台と、当該インプラント支持台が着脱自在に載置される載置台とからなり、前記有効照射領域確認手段が、前記インプラント保持体に形成された前記有効照射領域の長手方向の範囲を決定する標識と、前記載置台に設けられた把手に形成された前記有効照射領域の垂直方向の範囲の長さを決定する標識と、からなることを特徴とする。
また、前記有効照射領域確認手段における前記有効照射領域の長手方向の範囲を決定する標識が、前記インプラント支持台の構造体の長手方向長さであることを特徴とする。
また、前記有効照射領域確認手段が、前記載置台に着脱自在に取り付けられる板状体であって、該板状体には、前記有効照射領域に対応した開口が形成されていることを特徴とする。
また、前記有効照射領域確認手段が、前記載置台に着脱自在に取り付けられる透光性板状体であって、該板状体には、前記有効照射領域に対応した標識が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインプラント用紫外線照射装置によれば、前記紫外線ランプからの照射紫外線の有効照射領域を確認する有効照射領域確認手段を有することにより、インプラント支持台上にセットされたインプラントの全てが、有効照射領域内あることを照射処理前に確認することができ、インプラントの有機汚染物除去作業が全て洩れなく完全に行われるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のインプラント用紫外線照射装置における要部の正面図。
【
図5】従来のインプラント用紫外線照射装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示されるように、本発明のインプラント用紫外線照射装置では、インプラント保持体5における載置台6の長手方向側面6aには、基本的には紫外線ランプによって決定される有効照射領域Xの長手方向の範囲(長さ)Xaに対応する箇所に長手方向の標識20が形成されている。この標識20は、適宜の塗料などによる印でもよいし、溝を刻設するものであってもよい。
なお、ここで、長手方向とは、
図5に見られる複数のインプラント10,10の直線的な配列方向に沿った方向をいい、紫外線ランプ3の延在する方向でもある。
そして、当該載置台6に設けられた把手8には、前記有効照射領域Xの垂直方向の範囲(長さ)Xbに対応する箇所に垂直方向の標識21が形成されている。
これらの長手方向の標識20と垂直方向の標識21とによって有効照射領域Xが画成され、有効照射領域確認手段25を形成している。
これによって、処理対象であるインプラント10,10の全てが有効照射領域X内にあることを確認できる。
【0014】
図2には、前記標識20,21が他の手段で形成される第2の実施例が示されており、長手方向の標識20が、載置台6上に載置されたインプラント支持台7の長手方向の全体長さによって形成されている。
そして、垂直方向の標識21が、把手8の握り部8aの全長によって形成されている。
【0015】
図3の第3の実施例では、長手方向の標識20は、インプラント支持台7に形成された段部7aの長手方向の長さによって形成されている。
前記の
図2に示される第2の実施例や
図3に示される第3の実施例では、インプラント支持台7の構造体の長さ方向の寸法を有効照射領域Xの長手方向の長さXaと等しく形成するものである。
【0016】
以上の各実施例においては、紫外線照射処理に先立って、インプラント保持体5のインプラント支持台7にインプラント10をセットし、これを載置台6上に載置した段階で、長手方向の標識20と、垂直方向の標識21とからなる有効照射領域確認手段25によって有効照射領域Xを画定し、全てのインプラント10がこの有効照射領域X内にあるか否かを確認し、確認後に、筐体内に収容されて紫外線照射処理が行われるものである。
【0017】
図4には更に他の第4の実施例が示されており、
図4(A)は正面図、
図4(B)はその側面図である。
この実施例では、有効照射領域確認手段25は、板状体22からなり、この板状体22には、前記有効照射領域Xに対応した開口23が形成されている。この板状体22は載置台6に対して着脱自在に装着される。
この実施例では、紫外線照射処理に先立って、インプラント10がセットされたインプラント支持台7を載置台6に載置した段階で、この載置台6に板状体22を装着し、その開口23によって画成される有効照射領域X内にインプラント10があるか否かを確認するものである。
確認後に、板状体22を載置台6から取り外し、インプラント保持体5を筐体内に収容して紫外線照射処理を行うものである。
【0018】
なお、上記第4の実施例において、板状体22を透光性板状体とし、これに有効照射領域Xに対応した標識を形成したものであってもよい。この標識も前述と同様に、塗料などによる描画でもよいし、溝を刻設するものであってもよい。
【0019】
以上説明したように、本発明のインプラント用紫外線照射装置においては、インプラント保持体が、紫外線ランプからの照射紫外線の有効照射領域を確認する有効照射領域確認手段を有する構成としたことにより、紫外線照射処理に先立って、インプラントをインプラント支持体にセットした段階で、紫外線ランプの有効照射領域内にインプラントが存在するかどうかを判別することができるので、インプラント支持体上のインプラントが筐体内の紫外線ランプに対応した位置に収容されたときに、全てのインプラントが洩れなく紫外線照射されて、有機汚染物除去が完全に行われるものである。
【符号の説明】
【0020】
1 筐体
2 開閉扉
3 紫外線ランプ
4 キャリッジ
5 インプラント保持体
6 載置台
7 インプラント支持台
8 把手
10 インプラント
20 長手方向の標識
21 垂直方向の標識
22 板状体
23 開口
25 有効照射領域確認手段
X 有効照射領域
Xa 有効照射領域の長手方向の範囲(長さ)
Xb 有効照射領域の垂直方向の範囲(長さ)