(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、生体内の管腔に生じた狭窄を拡張させる処置として、バルーンダイレーターを用いたバルーン拡張術が知られている。例えば、食道がんのために食道の一部分を切除する手術を行った場合に、術後の吻合部において線維芽細胞の過剰な増殖が生じて吻合部の狭窄が生じることがある。吻合部に狭窄が生じると、嚥下障害により食事が摂れなくなることもある。このような場合にバルーン拡張術が施術される。
【0003】
バルーン拡張術で使用するバルーンダイレーターは、内視鏡とともに使用する。バルーンダイレーターの先端には収縮した状態のバルーンが設けられている。収縮した状態のバルーンを狭窄部に挿入して配置した後、バルーン内に生理食塩水等の作動流体を送給することにより、バルーンを膨張させて狭窄部を押し広げ、狭窄を解消させる。
【0004】
ところで、バルーン拡張術においては、バルーンを膨張させる際にバルーンが狭窄部に対して位置ずれすることがある。バルーンの位置ずれを防止するため、バルーンの表面にスリーブや編組層を設けてバルーンと管腔内壁との摩擦を増加させる技術も知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バルーンと管腔内壁との摩擦不足だけがバルーンの位置ずれの原因ではない。膨張させる前のバルーンが狭窄部に正しく配置されていない場合、バルーンを膨張させる際にバルーンが狭窄部に対して位置ずれし易くなる。例えば、バルーンの中央部が狭窄部から外れている場合、バルーンを膨張させる際にバルーンが狭窄部から位置ずれし易い。そのため、バルーン拡張術では、まずバルーンを狭窄部に正しく配置することが重要である。
【0007】
バルーンを狭窄部に正しく配置するため、内視鏡での視認によってバルーンの位置決めを行うことが考えられる。しかしながら、内視鏡での視認によってバルーンを狭窄部に正しく配置することは容易ではなかった。これは、バルーンを狭窄部に挿入すると、バルーンの一部が狭窄部に隠れてしまい、内視鏡での視認では、どの程度バルーンを挿入したかを把握しにくいためである。また、バルーンを狭窄部に挿入する際に、内視鏡の先端部を狭窄部から離すため、バルーンと狭窄部との距離感を掴み難いためである。
【0008】
そこで従来は、狭窄部に対するバルーンの位置決めは、内視鏡による視認ではなく、X線CT装置などの透過装置を用いていた。具体的には、バルーンが設けられている部分のシャフトに放射線に対して不透過のマーカーを設け、透過装置でマーカーの位置を確認しながら、狭窄部に対するバルーンの位置決めを行うのである。
【0009】
バルーン拡張術で透過装置を使用するため、バルーン拡張術は放射線管理区域で施術する必要があった。このため、必要な内視鏡機材を放射線管理区域に移設しなければならず、他の一般的な内視鏡施術よりも準備が煩雑であった。また、透過装置を使用するため、バルーン拡張術を施術される患者や、施術する医療従事者が被曝するおそれもあった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものである。本発明の目的は、内視鏡での視認により、バルーンを狭窄部の適正位置に配置することができ、狭窄部を正しく拡張することのできるバルーンダイレーターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、
本発明のバルーンダイレーターは、内視鏡とともに用いて、膨張させたバルーンにより狭窄部を拡張させるバルーンダイレーターにおいて、
前記バルーンには、長手方向の中央部に中央マーカーを設けるとともに、前記中央マーカーよりも前記バルーンの先端側に先端側マーカー、前記中央マーカーよりも前記バルーンの基端側に基端側マーカーをそれぞれ設け、
前記中央マーカー、前記先端側マーカー、及び前記基端側マーカーは、前記バルーンの周方向に線状に形成され、かつ、前記中央マーカーは、前記先端側マーカー及び前記基端側マーカーよりも太く形成され、
前記バルーンは、可撓性を有するシャフトの先端側に接続され、
膨張する前の収縮した状態のバルーンは、内側面どうしを重ね合わせることにより二層状となった重合片が複数形成されるとともに、各重合片がそれぞれ前記シャフトに巻き付けられ
、
前記バルーンは、生理食塩水で膨張させた際に、前記内視鏡で前記バルーン越しに前記狭窄部を視認できる光透過性を有し、
前記中央マーカー、前記先端側マーカー、及び前記基端側マーカーは、前記収縮した状態のバルーンの表面に連続線状に形成され、
前記中央マーカー、前記先端側マーカー、及び前記基端側マーカーは、前記バルーンを膨張させた際に前記重合片どうしの重なり合いが解消されて破線となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
本発明のバルーンダイレーターによれば、バルーンには、長手方向の中央部に中央マーカーを設けるとともに、中央マーカーよりもバルーンの先端側に先端側マーカー、中央マーカーよりもバルーンの基端側に基端側マーカーをそれぞれ設け、中央マーカー、先端側マーカー、及び基端側マーカーは、バルーンの周方向に線状に形成され、かつ、中央マーカーは、先端側マーカー及び基端側マーカーよりも太く形成されている。このため、収縮しているバルーンを狭窄部に挿入する際に、バルーンに形成された中央マーカー、先端側マーカー、基端側マーカーと狭窄部との位置関係を内視鏡で視認しながら、バルーンを狭窄部の適正位置に配置させることができる。そして、その状態でバルーンを膨張させることにより、狭窄部を正しく拡張することができる。
【0015】
また、内視鏡での視認により、バルーンを狭窄部の適正位置に配置できるため、透過装置を不要とすることができ、患者及び施術する医療従事者の被曝のおそれを解消できる。さらに、通常の内視鏡術と同様の準備だけでよいため、施術の準備作業の労力及び医療コストを大きく軽減できる。
また、膨張する前の収縮した状態のバルーンは、内側面どうしを重ね合わせることによ
り二層状となった重合片が複数形成されてとともに、各重合片は、それぞれシャフトに巻
き付けられる。これにより、バルーンは、コンパクトな収納形態となる。
【0016】
本発明のバルーンダイレーターによれば、バルーンは、生理食塩水で膨張させた際に、内視鏡でバルーン越しに狭窄部を視認できる光透過性を有している。このため、バルーンに形成した中央マーカーが狭窄部に正しく位置しているかどうかを、内視鏡を用いてバルーン越しに確認することができる。
【0017】
本発明のバルーンダイレーターによれば、
中央マーカー、先端側マーカー、及び基端側マーカーは、前記収縮した状態のバルーンの表面に連続線状に形成され、バルーンに形成した中央マーカー
、先端側マーカー、及び基端側マーカーは、バルーンを膨張させた際に破線となる。このため、中央マーカー
、先端側マーカー、及び基端側マーカーによって遮蔽される領域をできるだけ小さくすることができ、内視鏡でバルーン越しに狭窄部を視認する際に、中央マーカー
、先端側マーカー、及び基端側マーカーのそれぞれ自体が障害となることがなく、確実な視認を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【0020】
本発明の実施形態に係るバルーンダイレーター10は、生体内の管腔に生じた狭窄を拡張させるバルーン拡張術において、内視鏡20とともに用いられるものである。
図1、
図2に示すように、バルーンダイレーター10は、主としてコネクタ11、シャフト12、バルーン13から構成される。コネクタ11は、シャフト12の基端側に接続されており、バルーン13はシャフト12の先端側に接続されている。シャフト12の基端側とは、バルーン拡張術を行う際に施術者の手元側の部分であり、シャフト12の先端側とは、バルーン拡張術を行う際に看者の管腔側となる部分である。説明の便宜上、
図1ではバルーン13を膨張させた状態を示している。
図2、
図3に示すように、バルーン13は、膨張させる前には収縮しており、シャフト12に巻き付けられている。
【0021】
コネクタ11は、シリンジ及びプランジャーを備えた図示しないインフレーションシステムと接続可能である。インフレーションシステムは、作動流体としての生理食塩水をバルーン13に送給可能とし、逆にバルーン13内の生理食塩水を吸引可能としている。作動流体は、生理食塩水に限定されず、空気等の気体を用いてもよいが、圧力制御及び温度制御の容易性から生理食塩水を用いることが好ましい。
【0022】
シャフト12は、可撓性を有するチューブであり、バルーン13への生理食塩水の給排水を可能としている。バルーン13が設けられる部分には、バルーン13内に生理食塩水を送給するための送給口(図示せず)を設けている。シャフト12は、生理食塩水を流通させるだけでなく、必要に応じてガイドワイヤなどを設けてもよい。また、シャフト12は、バルーン13部分より先端側はチューブ状ではなく、
図3に示すように中実の棒状として剛性を高め、狭窄部への挿入作業を行いやすくしている。
【0023】
バルーン13は、シリコンゴムなどの合成樹脂製であって、適度の弾性を有する膜で構成している。生理食塩水が送給されると、バルーン13は、シャフト12を中心軸とした円筒状に膨張する。尚、バルーン13は、円筒状だけでなく、径寸法の異なる複数の球状体を長手方向に沿って連結させたような形状など、種々の形状のものがあり、形状は限定されない。
【0024】
バルーン13は、可視光領域での光透過性を有している。このため、生理食塩水でバルーン13を膨張させた際に、内視鏡20でバルーン13越しに狭窄部を視認できる。バルーン13の可視光領域での光透過性を高めるため、バルーン13を構成するシリコンゴムの透明度は高いほどよい。
【0025】
図3に示すように、膨張する前の収縮した状態のバルーン13は、内側面どうしを重ね合わせることにより二層状となった重合片13Dが複数形成されている。各重合片13Dは、それぞれシャフト12に巻き付けられる。これにより、バルーン13は、コンパクトな収納形態となる。
【0026】
図2に示すように、バルーン拡張術を行う場合には、バルーンダイレーター10を内視鏡20の鉗子口21に装着する。収納形態に収縮させたバルーン13は、鉗子口21に収容されている。内視鏡20の先端部には、鉗子口21の他に、対物レンズ22、照明用ライト23、必要に応じて水や空気を送り出すノズル24が設けられている。内視鏡20を操作して先端部が目標の狭窄部に達したところで、鉗子口21からバルーンダイレーター10のバルーン13を送り出し、狭窄部に挿入する。生理食塩水でバルーン13を膨張させることにより狭窄部を拡張させる。
【0027】
ここで、本発明に係るバルーンダイレーター10の特徴は、
図1に示すように、バルーン13に中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cの少なくとも3つのマーカーを設けていることにある。中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cは、円筒状に膨張するバルーン13の周方向に向けて線状に形成される。
【0028】
中央マーカー13Aは、バルーン13の長手方向の中央部に設けられる。先端側マーカー13Bは、中央マーカー13Aよりもバルーン13の先端側に設けられる。基端側マーカー13Cは、中央マーカー13Aよりもバルーン13の基端側に設けられる。尚、中央マーカー13Aが設けられる位置は、バルーン13の長手方向の中央部に限定されない。例えば、円筒状のバルーン13の場合には、バルーン13の長手方向の中央部に設けることが好ましいが、円筒状ではないバルーン13の場合には、必ずしもバルーン13の長手方向の中央部である必要はない。
【0029】
中央マーカー13Aと先端側マーカー13Bの間隔、及び中央マーカー13Aと基端側マーカー13Cの間隔は、バルーン13の径寸法及び長さ寸法に応じて適宜の寸法とする。例えば、食道の吻合部に生じた狭窄に対する拡張術に使用するバルーンダイレーター10では、中央マーカー13Aと先端側マーカー13Bの間隔、及び中央マーカー13Aと基端側マーカー13Cの間隔は、1〜3cm程度が好ましい。
【0030】
また、先端側マーカー13B、基端側マーカー13Cは、それぞれ1本ではなく、所定間隔で複数本設けて、採寸可能としてもよい。
【0031】
中央マーカー13Aは、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cよりも太く形成して、先端側マーカー13B及び基端側マーカー13Cよりも視認しやすくしている。中央マーカー13Aは、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cの線幅よりも単に太く形成するだけでなく、二重線あるいは三重線として、先端側マーカー13B及び基端側マーカー13Cよりも実質的に太く形成されていればよい。
【0032】
中央マーカー13Aを、先端側マーカー13B及び基端側マーカー13Cよりも太幅の太線としているのは、中央マーカーの識別性を高めるためである。つまり、中央マーカー13Aは、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cに対して識別可能であればよい。
【0033】
中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cの色は限定されない。しかしながら、赤色系統の色の場合には、出血と見間違えるおそれがあるので、赤色系統以外の色が好ましい。また、中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cは、バルーン13の外側から視認できるだけでなく、バルーン13の内側からも視認できる必要がある。本実施形態では、中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cは光透過性の少ない黒色としている。
【0034】
図2、
図3に示すように、本実施形態では、中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cは、収縮した状態のバルーン13の所定位置に着色を行って形成している。このとき、中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cは、収縮した状態のバルーン13の表面に連続線状に形成されている。バルーン13を膨張させると、重合片13Dどうしの重なり合いが解消されて、
図1に示すように、中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cは、破線状態となる。尚、「破線」とは、「実線ではない不連続な線」の意味である。
【0035】
中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cは、バルーン13の膨張にともなって破線となるため、中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cによって遮蔽される領域を小さくすることができる。このため、バルーン13を狭窄部において膨張させた後において、バルーン13の中央マーカー13Aと狭窄部との位置関係を、バルーン13の内側から内視鏡20で確認しやすい。
【0036】
一方、バルーン13の膨張前には、収納形態のバルーン13に実線の中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cが設けられており、内視鏡20で視認しながら中央マーカー13A部分を狭窄部の適正位置に配置させることで、バルーン13の長手方向の中央部を狭窄部の適正位置に配置させることができる。すなわち、X線CT装置などの透過装置を用いることなく確実にバルーン13を適正位置に配置させ、バルーン13を膨張させることで狭窄部を拡張させることができる。
【0037】
本実施形態では、バルーン13を膨張させた状態で、中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cが破線となるようにしたが、これに限定されない。例えば、中央マーカー13Aのみ破線とし、他を実線としてもよい。また、一点鎖線等、種々の線種を組み合わせてもよい。
【0038】
本実施形態では、収縮した状態のバルーン13の所定位置に着色を行って、中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cを形成したが、他の方法で形成してもよい。例えば、バルーン13の素材であるシリコンゴムシートに中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cとなる着色を予め施しておき、裁断、シャフト12への装着により、バルーン13に、中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cを形成してもよい。
【0039】
続いて、本実施形態のバルーンダイレーター10の使用について説明する。まず、
図4に示すように、内視鏡20により狭窄部を確認する。
【0040】
狭窄部の確認後、
図2に示すように、内視鏡20の鉗子口21からバルーンダイレーター10のバルーン13を狭窄部に送り出し、
図5に示すように、狭窄部に膨張前のバルーン13を挿入する。
【0041】
狭窄部にバルーン13を挿入した後、内視鏡20でバルーン13の中央マーカー13Aを確認しながら、
図6に示すように、狭窄部の適正位置に中央マーカー13Aを位置させる。
図6中、「a」は中央マーカー13Aの位置を示しており、「b」は基端側マーカー13Cの位置を示している。
【0042】
中央マーカー13Aを狭窄部に位置させたところで、バルーンダイレーター10に接続したインフレーションシステムからバルーン13内に生理食塩水を送給して、
図7に示すように、バルーン13を膨張させる。
図7中、「a」は中央マーカー13Aの位置を示しており、「b」は基端側マーカー13Cの位置を示している。
【0043】
本実施形態では、バルーン13はほぼ透明であるので、
図7に示すように、バルーン13は、可視光領域の光を透過させ、内視鏡20でバルーン13越しに狭窄部を視認することができる。このため、バルーン13に形成した中央マーカー13Aが狭窄部の適正位置に配置されているかどうかを内視鏡20で確認することができる。バルーン13に形成した中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cは、破線であるため、遮蔽される領域をできるだけ小さくすることができ、中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13C自体が障害となることがなく、確実な確認を行うことができる。
【0044】
尚、バルーン13に形成した中央マーカー13Aが、狭窄部の適正位置に配置されていなかった場合には、バルーン13内の生理食塩水を抜いてバルーン13を収縮させた後、適宜移動させ、再度バルーン13内に生理食塩水を送給して膨張させることにより、中央マーカー13Aを狭窄部の適正位置に配置させることができる。
【0045】
バルーン13を所定時間膨張させた後、バルーン13内の生理食塩水を抜いてバルーン13を収縮させ、狭窄部から引き抜く。
図8に示すように、内視鏡20を用いて狭窄部だった部分の出血等の確認を行い、問題なければ内視鏡20を引き抜いてバルーン拡張術を終了する。
【0046】
バルーン13の膨張による狭窄部の拡張は1回に限られず、バルーン13の膨張と収縮を繰り返し行って、所望の拡張状態となるまで複数回行ってもよい。また、必要に応じて、バルーン13の径寸法の異なる複数種類のバルーンダイレーター10を用いて、狭窄部を段階的に拡張してもよい。
【0047】
上述した説明では、一例として食道の吻合部に生じた狭窄に対する拡張術について説明したが、本発明のバルーンダイレーター10は、これに限定されず、腸に生じた狭窄部や気管支に生じた狭窄部、あるいは血管に生じた狭窄部等、内視鏡を用いた種々のバルーン拡張術に用いることができる。
【0048】
以上説明した本実施形態に係るバルーンダイレーター10によれば、次のような効果を有する。
【0049】
本実施形態に係るバルーンダイレーター10のバルーン13には、長手方向の中央部に中央マーカー13Aを設けるとともに、中央マーカー13Aよりもバルーン13の先端側に先端側マーカー13B、中央マーカー13Bよりもバルーン13の基端側に基端側マーカー13Cをそれぞれ設け、中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cは、バルーン13の周方向に線状に形成され、かつ、中央マーカー13Aは、先端側マーカー13B及び基端側マーカー13Cよりも太く形成されている。このため、収縮しているバルーン13を狭窄部に挿入する際に、バルーン13に形成された中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cと狭窄部との位置関係を内視鏡20で視認しながら、バルーン13を狭窄部の適正位置に配置させることができる。そして、その状態でバルーン13を膨張させることにより、狭窄部を正しく拡張することができる。
【0050】
また、内視鏡20での視認により、バルーン13を狭窄部の適正位置に配置できるため、透過装置を不要とすることができ、患者及び施術する医療従事者の被曝のおそれを解消できる。さらに、通常の内視鏡術20と同様の準備だけでよいため、施術の準備作業の労力及び医療コストを大きく軽減できる。
【0051】
本実施形態のバルーンダイレーター10によれば、バルーン13は、生理食塩水で膨張させた際に、内視鏡20でバルーン13越しに狭窄部を視認できる光透過性を有している。このため、バルーン13に形成した中央マーカー13Aが狭窄部に正しく位置しているかどうかを、内視鏡20を用いてバルーン13越しに確認することができる。
【0052】
本実施形態のバルーンダイレーター10によれば、バルーン13に形成した中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cは、バルーン13を膨張させた際に破線となる。このため、中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13Cによって遮蔽される領域をできるだけ小さくすることができ、内視鏡20でバルーン13越しに狭窄部を視認する際に、中央マーカー13A、先端側マーカー13B、及び基端側マーカー13C自体が障害となることがなく、確実な視認を行うことができる。