(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水吸着有機分子が、その一端側が前記層面に固定され、その他端側に水吸着部が具備されていることを特徴とする請求項1に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
前記アルキルアンモニウム基が、octadecyldimethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammonium、hexadecyldimethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammonium、octadecyldiethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammoniumの群から選択されるいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
前記水吸着有機分子の前記水吸着部が、非共有電子対(ローンペア)を有する窒素であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、トリエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びトリエタノールアミンを含有する層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成することを特徴とする層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法。
層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、ジエチルエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びジエチルエタノールアミンを含有する複合体を合成する工程と、前記複合体を減圧下、加熱して層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成する工程と、を有することを特徴とする層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法。
X線源と、前記X線源から出射されたX線が入射される請求項1〜10のいずれか1項に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体と、前記層状無機/有機複合体から出射されるX線が入射されるX線検出器と、を有することを特徴とする湿度観測システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、相対湿度が変化しても、層間隔を一定に保つことが可能な層間隔不変−層状無機/有機複合体、その製造方法及びX線源移動装置及び検出器移動装置を用いることなく、簡易に湿度を測定可能な湿度観測システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の事情を鑑み、研究を進め、本発明者は、層状ケイ酸塩とアルキルアンモニウム基からなる複合体の層間にエタノールアミンを共存させてなる別の新規な複合体を合成した。疎水性を付与するアルキルアンモニウム基と親水性を有するエタノールアミンを共存させることで、層間の疎水性を最適化し、相対湿度に応じてX線回折ピーク強度は変化するが、層間隔は変化しないようにすることができた。
具体的には、前記複合体を、層状ケイ酸塩の層面にアルキルアンモニウム基を強固に接合させるとともに、層状ケイ酸塩の層間に、エタノールアミンを挿入させることにより、アルキルアンモニウム基及びエタノールアミンを共存させることができ、相対湿度を変化させると、積層構造を変化させるが、層間隔を一定に保つことができる複合体となることを見出した。
この複合体は、大気中に放置しても、安定な湿度応答性を示した。
そのため、この複合体を用いて湿度観測システムを組み立てることにより、水分子の吸着量に応じて、2θ値は変化させずに、X線回析強度の変化を測定可能であって、X線源移動装置及び検出器移動装置を用いることなく、簡易に湿度を測定可能な湿度観測システムとすることができることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下の構成を有する。
【0010】
(1)層面が互いに並行となるように配置されてなる複数の無機化合物層の層間に、疎水性を付与する有機基と水吸着有機分子とを有しており、前記疎水性を付与する有機基は、その一端側が層面に強固に固定され、その他端側が、層面の対面側に一端側が固定された別の疎水性を付与する有機基の他端側と相互作用しており、相対湿度が変化しても、前記無機化合物層の層間隔が不変とされていることを特徴とする層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【0011】
(2)前記水吸着有機分子が、その一端側が前記層面に固定され、その他端側に水吸着部が具備されていることを特徴とする(1)に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
(3)前記疎水性を付与する有機基が、アルキルアンモニウム基であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
(4)前記アルキルアンモニウム基が、下記一般式(1)で表され、前記式(1)で、mは4以上20以下の自然数であり、k及びlは0以上3以下の同一の又は相異する整数であり、R
4はSi含有アルキル基
であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【0012】
【化1】
【0013】
(5)前記アルキルアンモニウム基が、octadecyldimethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammonium、hexadecyldimethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammonium、octadecyldiethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammoniumの群から選択されるいずれかであることを特徴とする(4)に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【0014】
(6)前記水吸着有機分子が、アルコールアミンであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
(7)前記アルコールアミンが、下記一般式(2)で表され、前記式(2)で、n1、n2、n3はそれぞれ同一又は別の1以上4以下の自然数であり、R
1、R
2、R
3はそれぞれ同一又は別のアルキル基又はOH基であり、R
1、R
2、R
3の少なくとも一つはOH基であることを特徴とする(6)に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【0015】
【化2】
【0016】
(8)前記アルコールアミンが、トリエタノールアミン又はジエチルエタノールアミンであることを特徴とする(7)に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
(9)前記水吸着有機分子の前記水吸着部が、非共有電子対(ローンペア)を有する窒素であることを特徴とする(6)〜(8)のいずれかに記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
(10)前記無機化合物層が、ケイ酸塩層又はニオブ酸塩層であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【0017】
(11)層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、トリエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びトリエタノールアミンを含有する層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成することを特徴とする層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法。
【0018】
(12)層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、ジエチルエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びジエチルエタノールアミンを含有する複合体を合成する工程と、前記複合体を減圧下、加熱して層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成する工程と、を有することを特徴とする層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法。
【0019】
(13)X線源と、前記X線源から出射されたX線が入射される(1)〜(10)のいずれかに記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体と、前記層状無機/有機複合体から出射されるX線が入射されるX線検出器と、を有することを特徴とする湿度観測システム。
【発明の効果】
【0020】
本発明の層間隔不変−層状無機/有機複合体は、層面が互いに並行となるように配置されてなる複数の無機化合物層の層間に、疎水性を付与する有機基と水吸着有機分子とを有しており、前記疎水性を付与する有機基は、その一端側が層面に強固に固定され、その他端側が、層面の対面側に一端側が固定された別の疎水性を付与する有機基の他端側と相互作用しており、相対湿度が変化しても、前記無機化合物層の層間隔が不変とされている構成なので、相対湿度を変化させると、積層構造を変化させるが、層間隔を一定に保つことができ、X線源移動装置及び検出器移動装置を用いることなく、簡易に湿度を測定可能な湿度観測システムを提供することができる。
【0021】
本発明の層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法は、層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、トリエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びトリエタノールアミンを含有する層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成する構成なので、層間隔不変−層状無機/有機複合体を容易に合成できる。
【0022】
本発明の層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法は、層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、ジエチルエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びジエチルエタノールアミンを含有する複合体を合成する工程と、前記複合体を減圧下、加熱して層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成する工程と、を有する構成なので、層間隔不変−層状無機/有機複合体を容易に合成できる。
【0023】
本発明の湿度観測システムは、X線源と、前記X線源から出射されたX線が入射される先に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体と、前記層状無機/有機複合体から出射されるX線が入射されるX線検出器と、を有する構成なので、X線源移動装置及び検出器移動装置を用いることなく、簡易に湿度を測定可能な湿度観測システムとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(本発明の実施形態)
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体、その製造方法及び湿度観測システムについて説明する。
【0026】
<湿度観測システム>
まず、本発明の実施形態である湿度観測システムについて説明する。
図2は、本発明の実施形態である湿度観測システムの一例を示す概略図である。
図2に示すように、本発明の実施形態である湿度観測システム11は、台24上に、X線源22と、X線源22から出射されたX線l
1が入射される層状無機/有機複合体21と、層間隔不変−層状無機/有機複合体21から出射されるX線l
2が入射されるX線検出器23と、を有して、概略構成されている。
層間隔不変−層状無機/有機複合体21は、外部環境の湿度に応じて、X線回折強度を変化させることができるが、層間隔は変化させない試料である。よって、本発明の実施形態である湿度観測システム11では、X線源22からの出射光l
1の入射角度をθ
1で固定した場合、外部環境の湿度の変化に応じて、X線の出射角度がθ
2に固定され、回析光l
2が出射される。そのため、X線源移動装置及びX線検出器移動装置を用いることなく、簡易に湿度を測定でき、実用化に適した装置とすることができる。
【0027】
<層間隔不変−層状無機/有機複合体>
図3は、層間隔不変−層状無機/有機複合体の一例を示す概略図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A’線における断面図である。
図3に示すように、層間隔不変−層状無機/有機複合体21は、立方体状とされている。しかし、この形状に限られるものではなく、円柱状、多角形柱状としてもよい。また、4層構造とされているが、これに限られるものではなく、より多層であっても、3層構造又は2層構造としてもよい。
【0028】
図4は、
図3のB部拡大模式図である。
図4に示すように、層間隔不変−層状無機/有機複合体21は、層面が互いに並行となるように配置されてなる複数の無機化合物層31、32を有し、層31、32間に、疎水性を付与する有機基41、42と水吸着有機分子51とを有して概略構成されている。
【0029】
疎水性を付与する有機基41は、その一端側41aがそれぞれ層面31aに固定され、その他端側41bが、層面31aの対面側32bに一端側42aが固定された別の疎水性を付与する有機基42の他端側42bと分子間力による弱い相互作用61で接合されている。これにより、無機化合物層31、32の層間隔dが固定されている。層間隔dは、隣接する無機化合物層31、32の層の中心間の距離である。
また、水吸着有機分子51は、その一端側41aが層面32bに固定され、その他端側51bに非共有電子対(ローンペア)を有する窒素からなる水吸着部が具備されている。 非共有電子対(ローンペア)を有する窒素で水分子を吸着させることにより、吸着脱着を容易にできる。また、層間に挿入された水分子を安定して保持することができる。この水分子は、層間に容易にインターカレートされるとともに、デインターカレートされる。
【0030】
疎水性を付与する有機基41として、アルキルアンモニウム基を挙げることができる。
前記アルキルアンモニウム基としては、先に記載の一般式(1)で表され、前記式(1)で、mは4以上20以下の自然数であり、k及びlは0以上3以下の同一の又は相異する整数であり、R
4はSi含有アルキル基
であるものを挙げることができる。
前記アルキルアンモニウム基としては、octadecyldimethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammonium(以下、ODACと略記する場合がある。)、hexadecyldimethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammonium、octadecyldiethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammoniumを挙げることができる。
【0031】
水吸着有機分子51として、アルコールアミンを挙げることができる。
前記アルコールアミンとしては、先に記載の一般式(2)で表され、前記式(2)で、n1、n2、n3はそれぞれ同一又は別の0以上4以下の自然数であり、R
1、R
2、R
3はそれぞれ同一又は別のアルキル基又はOH基であり、R
1、R
2、R
3の少なくとも一つはOH基であるものを挙げることができる。
前記アルコールアミンとしては、トリエタノールアミン(以下、TEOAと略記する場合がある。)又はジエチルエタノールアミン(以下、DEEOAと略記する場合がある。)を挙げることができる。
【0032】
層間隔不変−層状無機/有機複合体21は、層面が互いに並行となるように配置されてなる複数の無機化合物層31、32を有し、無機化合物層31、32は、それぞれ酸素含有ユニットを有する。
【0033】
無機化合物層31として、例えば、ケイ酸塩層又はニオブ酸塩を挙げることができる。
ケイ酸塩層は、SiO
4テトラへドロンと−C−SiO
3ユニットの酸素含有ユニットを有する。疎水性を付与する有機基41、42は、−C−SiO
3ユニットと強固な接合を形成している(−C−SiO
3ユニットのCが疎水性を付与する有機基の末端基である)。また、層表面の活性部位を、水吸着有機分子51のOH基と脱水縮合反応させて、強固な接合を形成することができる。
【0034】
図5は、層間隔不変−層状無機/有機複合体21の一例を示す分子モデル概念図である。
無機化合物層31としてケイ酸塩層を用い、疎水性を付与する有機基41として、ODAC由来のアルキルアンモニウム基を用い、水吸着有機分子51として、TEOAを用いている。
図5(a)に示すように、ODAC、TEOAはそれぞれ層面に平行な方向に配置されている。TEOAは層面に接するように配置されている。層間隔は3.6nmとされている。
図5(b)は、層表面とTEOAとの相互作用を示す図である。
層状ケイ酸塩のアルキルアンモニウム誘導体は、PSA−hと略記されている。
PSA−hは、層状ケイ酸塩部分とアルキルアンモニウム基が共有結合している複合体を意味する。この複合体において、アルキルアンモニウム基は、層状ケイ酸塩部分の層間に存在する。
【0035】
以上の構成により、層間隔不変−層状無機/有機複合体21を、外部環境の湿度に応じて、X線回折強度を変化させることができるが、層間隔は変化させない試料とすることができる。
【0036】
<層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法>
次に、本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法について、説明する。
図6は、本発明の実施形態である湿度観測システムの製造方法の一例を示すフローチャート図(a)及び別の一例を示すフローチャート図(b)である。
【0037】
図6(a)に示すように、本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法は、層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、トリエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びトリエタノールアミンを含有する層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成する工程S1を有する。
トリエタノールアミンは、層面と接合するOH基が1分子に3つある構成なので、所定の濃度として混合・攪拌だけで、層間に安定に固定でき、層間で疎水性を付与する有機基41、42と共存させることができる。また、層表面の活性部位を、水吸着有機分子51のOH基と反応させて、強固な接合を形成することができる。これにより、複合体の層間隔を不変化して、層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成することができる。
【0038】
また、
図6(b)に示すように、本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法は、層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、ジエチルエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びジエチルエタノールアミンを含有する複合体を合成する工程S11と、前記複合体を減圧下、加熱して層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成する工程S12と、を有する。
ジエチルエタノールアミンは、層面と接合するOH基が1分子に1つしかない構成なので、混合・攪拌だけでは層間に安定に固定することができず、減圧下、加熱することを要する。これにより、層表面の活性部位を、水吸着有機分子51のOH基と脱水縮合反応させて、強固な接合を形成することができ、複合体の層間隔を不変化して、層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成することができる。
【0039】
減圧下の加熱は、真空オーブンチャンバー内に試料を保持しておこなうことができる。
加熱温度は100℃以上200℃以下とすることが好ましい。100℃未満では、水吸着有機分子を強固に層面に固定化できない場合が発生する。また、200℃超とすると、層間隔不変化高分子塩及び水吸着有機分子が分解するおそれが発生する。反応をより安定に速やかに行うためには、100℃以上180℃以下とすることがより好ましい。
減圧条件は、1×10
−3Torr以上の減圧環境とすることが好ましく、1×10
−4Torr以上の減圧環境とすることがより好ましい。減圧環境にすることにより、水吸着有機分子を層間により容易に短時間で強固に固定させることができる。
【0040】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、層面が互いに並行となるように配置されてなる複数の無機化合物層の層間に、疎水性を付与する有機基と水吸着有機分子とを有しており、前記疎水性を付与する有機基は、その一端側が層面に固定され、その他端側が、層面の対面側に一端側が固定された別の疎水性を付与する有機基の他端側と結合されており、水分子を層間に入れても、前記無機化合物層の層間隔が不変とされている構成なので、相対湿度を変化させると、積層構造を変化させるが、層間隔を一定に保つことができ、X線源移動装置及び検出器移動装置を用いることなく、簡易に湿度を測定可能な湿度観測システムを提供することができる。
【0041】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記水吸着有機分子が、その一端側が前記層面に固定され、その他端側に水吸着部が具備されている構成なので、相対湿度を変化させると、積層構造を変化させるが、層間隔を一定に保つことができ、X線源移動装置及び検出器移動装置を用いることなく、簡易に湿度を測定可能な湿度観測システムを提供することができる。
【0042】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記疎水性を付与する有機基塩が、アルキルアンモニウム基である構成なので、層間隔不変−層状無機/有機複合体の無機化合物層の層間隔を一定保持させることができる。
【0043】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記アルキルアンモニウム基が、先に記載の一般式(1)で表され、前記式(1)で、mは4以上20以下の自然数であり、k及びlは0以上3以下の同一の又は相異する整数であり、R
4はSi含有アルキル基
である構成なので、層間隔不変−層状無機/有機複合体の無機化合物層の層間隔を一定保持させることができる。
【0044】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記アルキルアンモニウム基が、octadecyldimethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammonium、hexadecyldimethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammonium、octadecyldiethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammoniumの群から選択されるいずれかである構成なので、層間隔不変−層状無機/有機複合体の無機化合物層の層間隔を一定保持させることができる。
【0045】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記水吸着有機分子が、アルコールアミンである構成なので、水を吸着させることができる。
【0046】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記アルコールアミンが、先に記載の一般式(2)で表され、前記式(2)で、n1、n2、n3はそれぞれ同一又は別の1以上4以下の自然数であり、R
1、R
2、R
3はそれぞれ同一又は別のアルキル基又はOH基であり、R
1、R
2、R
3の少なくとも一つはOH基である構成なので、水を吸着させることができる。
【0047】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記アルコールアミンが、トリエタノールアミン又はジエチルエタノールアミンである構成なので、水を吸着させることができる。
【0048】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記水吸着有機分子の前記水吸着部が、非共有電子対(ローンペア)を有する窒素である構成
なので、水を吸着させることができる。
【0049】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記無機化合物層が、ケイ酸塩層又はニオブ酸塩層である構成なので、水吸着有機分子と疎水性を付与する有機基を層間に共存させることにより、相対湿度を変化させると、積層構造を変化させるが、層間隔を一定に保つことができる。
【0050】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法は、層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、トリエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びトリエタノールアミンを含有する層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成する構成なので、トリエタノールアミンを含有する層間隔不変−層状無機/有機複合体を容易に合成できる。
【0051】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法は、層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、ジエチルエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びジエチルエタノールアミンを含有する複合体を合成する工程S11と、前記複合体を減圧下、加熱して層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成する工程S12と、を有する構成なので、ジエチルエタノールアミンを含有する層間隔不変−層状無機/有機複合体を容易に合成できる。
【0052】
本発明の実施形態である湿度観測システムは、X線源と、前記X線源から出射されたX線が入射される先に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体と、前記層状無機/有機複合体から出射されるX線が入射されるX線検出器と、を有する構成なので、X線源移動装置及び検出器移動装置を用いることなく、簡易に湿度を測定可能な湿度観測システムとすることができる。
【0053】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体、その製造方法及び湿度観測システムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
<試料合成>
まず、非特許文献1に記載の製造方法に従い、アルキルアンモニウム基が層状ケイ酸塩の層間に存在し、層状ケイ酸塩と共有結合で強固に結合してなる層状ケイ酸塩のアルキルアンモニウム誘導体(PSA−h)を合成した。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0055】
次に、トリエタノールアミン(TEOA)1mlに対し、PSA−hを200mg加えた後、室温で撹拌して、PSA−hの層間にアルキルアンモニウム基とTEOAが共存されてなる実施例1の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例1のTEOA/PSA−h(200))を得た。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0056】
<試料測定>
まず、実施例1の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例1のTEOA/PSA−h(200))のX線回折パターンを、加湿しながら測定した。
図7は、実施例1の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例1のTEOA/PSA−h(200))のX線回折パターンの加湿変化依存性を示すグラフである。
大気雰囲気(atmosphere)を初期条件として、湿度を84%、96%と上昇させるに伴い、X線回折ピークの強度は弱くなった。しかし、層間隔は3.6nmのまま変化しなかった。
なお、96%の条件で1.5hr保持した場合、X線回折ピークの強度はより弱くなり、層間隔は3.6nmのままであった。
【0057】
次に、実施例1の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例1のTEOA/PSA−h(200))のX線回折パターンを、除湿しながら測定した。
図8は、実施例1の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例1のTEOA/PSA−h(200))のX線回折パターンの除湿変化依存性を示すグラフである。
湿度を96%から、44%、25%、5%と低下させるに伴い、X線回折ピークの強度は増大した。しかし、層間隔は変化しなかった。
なお、5%の条件で20.5hr保持した場合、X線回折ピークの強度はより強くなり、層間隔は3.6nmのままであった。
【0058】
(実施例2)
<試料合成>
まず、非特許文献1に記載の製造方法に従い、アルキルアンモニウム基が層状ケイ酸塩の層間に存在し、層状ケイ酸塩と共有結合で強固に結合してなる層状ケイ酸塩のアルキルアンモニウム誘導体(PSA−h)を合成した。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0059】
次に、トリエタノールアミン(TEOA)1mlに対し、PSA−hを20mg加えた後、減圧下、100℃で撹拌して、PSA−hの層間にアルキルアンモニウム基とTEOAが共存されてなる実施例2の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例2のTEOA/PSA−h(20))を得た。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0060】
<試料測定>
実施例2の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例2のTEOA/PSA−h(20))のX線回折パターンを、まず加湿しながら測定してから、次に除湿しながら測定した。
図9は、実施例2の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例2のTEOA/PSA−h(20))のX線回折パターンの加湿除湿変化依存性を示すグラフである。
加湿するに伴い、X線回折ピークの強度は1600(cps)程度から600(cps)程度まで弱くなった。また、除湿に従い、X線回折ピークの強度は600(cps)程度から1600(cps)程度まで強くなった。
この湿度変化に対するX線回析強度の変化は可逆であり、繰り返し可能であった。
【0061】
(実施例3)
<試料合成>
まず、非特許文献1に記載の製造方法に従い、アルキルアンモニウム基が層状ケイ酸塩の層間に存在し、層状ケイ酸塩と共有結合で強固に結合してなる層状ケイ酸塩のアルキルアンモニウム誘導体(PSA−h)を合成した。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0062】
次に、トリエタノールアミン(TEOA)1mlに対し、PSA−hを188mg加えた後、窒素気流下、180℃で2時間、撹拌して、PSA−hの層間にアルキルアンモニウム基とTEOAが共存されてなる実施例3の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例3のTEOA/PSA−h(188))を得た。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0063】
<試料測定>
実施例3の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例3のTEOA/PSA−h(188))のX線回折パターンを、加湿→除湿→加湿→除湿の工程で、測定した。
図10は、加湿→除湿→加湿→除湿の工程図あって、Run Noと相対湿度(%)との関係を示すグラフ(a)と、実施例3の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例3のTEOA/PSA−h(188))のX線回折パターンの(加湿→除湿→加湿→除湿の工程)変化依存性を示すグラフ(b)である。
加湿に伴い、X線回折ピークの強度は弱くなり、除湿に伴い、X線回折ピークの強度は増大した。また、この変化は可逆であり、繰り返し可能であった。
【0064】
(実施例4)
<試料合成>
PSA−hを20mg加えた条件とした他は実施例1と同様にして、実施例4の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例4のTEOA/PSA−h(20))を合成した。
【0065】
(実施例5)
<試料合成>
まず、非特許文献1に記載の製造方法に従い、アルキルアンモニウム基が層状ケイ酸塩の層間に存在し、層状ケイ酸塩と共有結合で強固に結合してなる層状ケイ酸塩のアルキルアンモニウム誘導体(PSA−h)を合成した。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0066】
次に、ジエチルエタノールアミン(DEEOA)1mlに対し、PSA−hを20mg加えた後、減圧下、100℃で撹拌して、PSA−hの層間にアルキルアンモニウム基とDEEOAが共存されてなる実施例4の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例4のDEEOA/PSA−h(20))を得た。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0067】
<試料測定>
実施例5の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例5のDEEOA/PSA−h)のX線回折パターンを、まず加湿しながら測定してから、次に除湿しながら測定した。
図11は、実施例5の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例5のDEEOA/PSA−h(20))のX線回折パターンの加湿除湿変化依存性を示すグラフである。
加湿に伴い、X線回折ピークの強度は強くなった。除湿に伴い、X線回折ピークの強度は弱くなった。この変化は可逆であった。また、繰り返し可能であった。
【0068】
(比較例1)
<試料合成>
PSA−hを2mg加えた条件とした他は実施例1と同様にして、比較例1の層状無機/有機複合体(比較例1のTEOA/PSA−h(2))を合成した。
層間隔(面間隔)の測定はできなかった。
【0069】
(比較例2)
<試料合成>
まず、非特許文献1に記載の製造方法に従い、アルキルアンモニウム基が層状ケイ酸塩の層間に存在し、層状ケイ酸塩と共有結合で強固に結合してなる層状ケイ酸塩のアルキルアンモニウム誘導体(PSA−h)を合成した。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0070】
次に、ジエチルエタノールアミン(DEEOA)1mlに対し、PSA−hを200mg加えた後、室温で撹拌して、PSA−hの層間にアルキルアンモニウム基とDEEOAが共存されてなる比較例2の層状無機/有機複合体(比較例2のDEEOA/PSA−h(200))を得た。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0071】
<試料測定>
比較例2の層状無機/有機複合体(比較例2のDEEOA/PSA−h(200))のX線回折パターンの保持時間依存性を、相対湿度を5%に固定して測定した。
図12は、比較例2の層状無機/有機複合体(比較例2のDEEOA/PSA−h(200))のX線回折パターンの相対湿度5%の保持時間依存性を示すグラフである。相対湿度5%で保持すると、層間隔は短くなることがわかり、安定性が低いことが示された。
【0072】
(比較例3)
<試料合成>
PSA−hを2mg加えた条件とした他は比較例2と同様にして、比較例3の層状無機/有機複合体(比較例3のDEEOA/PSA−h(2))を合成した。
層間隔(面間隔)の測定はできなかった。
【0073】
(比較例4)
<試料合成>
PSA−hを20mg加えた条件とした他は比較例2と同様にして、比較例4の層状無機/有機複合体(比較例4のDEEOA/PSA−h(20))を合成した。
表1は以上の結果をまとめたものである。
【0074】
【表1】
【0075】
表1で、「安定性」では、相対湿度5%においても、エタノールアミンのデインターカレーションが起こらず、複合体の形態が変化しないものを○とし、「XRDピーク強度の湿度応答性」では、相対湿度の変化に応答して、XRDピーク強度が変化しないものを○とした。比較例2の
図12に示すように、XRDピーク強度が変化したものを×とした。