特許第6048960号(P6048960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6048960層間隔不変−層状無機/有機複合体、その製造方法及び湿度観測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048960
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】層間隔不変−層状無機/有機複合体、その製造方法及び湿度観測システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/44 20060101AFI20161212BHJP
   G01N 23/20 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   C01B33/44
   G01N23/20
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-45911(P2013-45911)
(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公開番号】特開2014-172777(P2014-172777A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】藤井 和子
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】下村 周一
(72)【発明者】
【氏名】安藤 寿浩
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−263615(JP,A)
【文献】 特開平02−293315(JP,A)
【文献】 特開2007−077006(JP,A)
【文献】 特開2010−155752(JP,A)
【文献】 特開2011−230504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 − 39/54
G01N 23/00 − 23/227
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層面が互いに並行となるように配置されてなる複数の無機化合物層の層間に、疎水性を付与する有機基と水吸着有機分子とを有しており、
前記疎水性を付与する有機基は、その一端側が層面に強固に固定され、その他端側が、層面の対面側に一端側が固定された別の疎水性を付与する有機基の他端側と相互作用しており、
相対湿度が変化しても、前記無機化合物層の層間隔が不変とされていることを特徴とする層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【請求項2】
前記水吸着有機分子が、その一端側が前記層面に固定され、その他端側に水吸着部が具備されていることを特徴とする請求項1に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【請求項3】
前記疎水性を付与する有機基が、アルキルアンモニウム基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【請求項4】
前記アルキルアンモニウム基が、下記一般式(1)で表され、前記式(1)で、mは4以上20以下の自然数であり、k及びlは0以上3以下の同一の又は相異する整数であり、RはSi含有アルキル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。

【化1】



【請求項5】
前記アルキルアンモニウム基が、octadecyldimethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammonium、hexadecyldimethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammonium、octadecyldiethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammoniumの群から選択されるいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【請求項6】
前記水吸着有機分子が、アルコールアミンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【請求項7】
前記アルコールアミンが、下記一般式(2)で表され、前記式(2)で、n1、n2、n3はそれぞれ同一又は別の1以上4以下の自然数であり、R、R、Rはそれぞれ同一又は別のアルキル基又はOH基であり、R、R、Rの少なくとも一つはOH基であることを特徴とする請求項6に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。

【化2】


【請求項8】
前記アルコールアミンが、トリエタノールアミン又はジエチルエタノールアミンであることを特徴とする請求項7に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【請求項9】
前記水吸着有機分子の前記水吸着部が、非共有電子対(ローンペア)を有する窒素であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【請求項10】
前記無機化合物層が、ケイ酸塩層又はニオブ酸塩層であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【請求項11】
層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、トリエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びトリエタノールアミンを含有する層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成することを特徴とする層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法。
【請求項12】
層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、ジエチルエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びジエチルエタノールアミンを含有する複合体を合成する工程と、前記複合体を減圧下、加熱して層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成する工程と、を有することを特徴とする層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法。
【請求項13】
X線源と、前記X線源から出射されたX線が入射される請求項1〜10のいずれか1項に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体と、前記層状無機/有機複合体から出射されるX線が入射されるX線検出器と、を有することを特徴とする湿度観測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層間隔不変−層状無機/有機複合体、その製造方法及び湿度観測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
層状ケイ酸塩は層間に水分子を吸着可能であり、水分子の吸着量・水分子の出し入れのし易さ等の機能は層間に挿入する材料の鎖長等を変えることにより設計できる機能性材料である。X線回析光の2θ値から層間隔の変化を算出できる。
本発明者は、様々なタイプの層状ケイ酸塩の複合体を合成し、層状ケイ酸塩を利用した湿度観測システムの研究開発をしている。
【0003】
図1は、層状ケイ酸塩を用いた従来の湿度観測システムの一例を示す図である。
従来の湿度観測システム111は、台124上に、層状ケイ酸塩121と、X線源122と、X線源移動装置125と、X線検出器123と、X線検出器移動装置126とを有して概略構成されている。
【0004】
従来の層状ケイ酸塩は、外部環境の湿度に応じて、X線回折強度をともに層間隔が変化する(非特許文献2)。そのため、従来の湿度観測システム111では、X線源からの出射光lの入射角度をθ11からθ12、θ13へと、外部環境の湿度の変化に応じて変化させなければ、回折は得られない。また、X線回析光l21の出射角度もθ21からθ22、θ23へと変化する。そのため、X線源、検出器ともに、移動させて、X線回析強度の変化を観察しなければならなかった。そのため、装置が大掛かりとなり、操作が複雑となるため、実用化に適した装置ではなかった。
【0005】
本発明者は、層状ケイ酸塩とアルキルアンモニウム基からなる新規な複合体を合成した(非特許文献1)。この複合体は、疎水性が高すぎ(特許文献1)、湿度応答性を示さなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4793713号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Appl.Clay.Sci.,29[3−4],235−248(2005)/Hydrothermal syntheses and characterization of alkylammonium phyllosilicates containing CSiO3 and SiO4 units”
【非特許文献2】Glaeser,R.and Mering,J.,Homogeneous hydration domains of the smectites.,C.r.hebd.Seanc.Acad.Sci.,Paris 267(1968)436−466
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、相対湿度が変化しても、層間隔を一定に保つことが可能な層間隔不変−層状無機/有機複合体、その製造方法及びX線源移動装置及び検出器移動装置を用いることなく、簡易に湿度を測定可能な湿度観測システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の事情を鑑み、研究を進め、本発明者は、層状ケイ酸塩とアルキルアンモニウム基からなる複合体の層間にエタノールアミンを共存させてなる別の新規な複合体を合成した。疎水性を付与するアルキルアンモニウム基と親水性を有するエタノールアミンを共存させることで、層間の疎水性を最適化し、相対湿度に応じてX線回折ピーク強度は変化するが、層間隔は変化しないようにすることができた。
具体的には、前記複合体を、層状ケイ酸塩の層面にアルキルアンモニウム基を強固に接合させるとともに、層状ケイ酸塩の層間に、エタノールアミンを挿入させることにより、アルキルアンモニウム基及びエタノールアミンを共存させることができ、相対湿度を変化させると、積層構造を変化させるが、層間隔を一定に保つことができる複合体となることを見出した。
この複合体は、大気中に放置しても、安定な湿度応答性を示した。
そのため、この複合体を用いて湿度観測システムを組み立てることにより、水分子の吸着量に応じて、2θ値は変化させずに、X線回析強度の変化を測定可能であって、X線源移動装置及び検出器移動装置を用いることなく、簡易に湿度を測定可能な湿度観測システムとすることができることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下の構成を有する。
【0010】
(1)層面が互いに並行となるように配置されてなる複数の無機化合物層の層間に、疎水性を付与する有機基と水吸着有機分子とを有しており、前記疎水性を付与する有機基は、その一端側が層面に強固に固定され、その他端側が、層面の対面側に一端側が固定された別の疎水性を付与する有機基の他端側と相互作用しており、相対湿度が変化しても、前記無機化合物層の層間隔が不変とされていることを特徴とする層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【0011】
(2)前記水吸着有機分子が、その一端側が前記層面に固定され、その他端側に水吸着部が具備されていることを特徴とする(1)に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
(3)前記疎水性を付与する有機基が、アルキルアンモニウム基であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
(4)前記アルキルアンモニウム基が、下記一般式(1)で表され、前記式(1)で、mは4以上20以下の自然数であり、k及びlは0以上3以下の同一の又は相異する整数であり、RはSi含有アルキル基であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【0012】
【化1】
【0013】
(5)前記アルキルアンモニウム基が、octadecyldimethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammonium、hexadecyldimethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammonium、octadecyldiethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammoniumの群から選択されるいずれかであることを特徴とする(4)に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【0014】
(6)前記水吸着有機分子が、アルコールアミンであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
(7)前記アルコールアミンが、下記一般式(2)で表され、前記式(2)で、n1、n2、n3はそれぞれ同一又は別の1以上4以下の自然数であり、R、R、Rはそれぞれ同一又は別のアルキル基又はOH基であり、R、R、Rの少なくとも一つはOH基であることを特徴とする(6)に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【0015】
【化2】
【0016】
(8)前記アルコールアミンが、トリエタノールアミン又はジエチルエタノールアミンであることを特徴とする(7)に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
(9)前記水吸着有機分子の前記水吸着部が、非共有電子対(ローンペア)を有する窒素であることを特徴とする(6)〜(8)のいずれかに記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
(10)前記無機化合物層が、ケイ酸塩層又はニオブ酸塩層であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体。
【0017】
(11)層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、トリエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びトリエタノールアミンを含有する層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成することを特徴とする層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法。
【0018】
(12)層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、ジエチルエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びジエチルエタノールアミンを含有する複合体を合成する工程と、前記複合体を減圧下、加熱して層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成する工程と、を有することを特徴とする層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法。
【0019】
(13)X線源と、前記X線源から出射されたX線が入射される(1)〜(10)のいずれかに記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体と、前記層状無機/有機複合体から出射されるX線が入射されるX線検出器と、を有することを特徴とする湿度観測システム。
【発明の効果】
【0020】
本発明の層間隔不変−層状無機/有機複合体は、層面が互いに並行となるように配置されてなる複数の無機化合物層の層間に、疎水性を付与する有機基と水吸着有機分子とを有しており、前記疎水性を付与する有機基は、その一端側が層面に強固に固定され、その他端側が、層面の対面側に一端側が固定された別の疎水性を付与する有機基の他端側と相互作用しており、相対湿度が変化しても、前記無機化合物層の層間隔が不変とされている構成なので、相対湿度を変化させると、積層構造を変化させるが、層間隔を一定に保つことができ、X線源移動装置及び検出器移動装置を用いることなく、簡易に湿度を測定可能な湿度観測システムを提供することができる。
【0021】
本発明の層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法は、層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、トリエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びトリエタノールアミンを含有する層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成する構成なので、層間隔不変−層状無機/有機複合体を容易に合成できる。
【0022】
本発明の層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法は、層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、ジエチルエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びジエチルエタノールアミンを含有する複合体を合成する工程と、前記複合体を減圧下、加熱して層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成する工程と、を有する構成なので、層間隔不変−層状無機/有機複合体を容易に合成できる。
【0023】
本発明の湿度観測システムは、X線源と、前記X線源から出射されたX線が入射される先に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体と、前記層状無機/有機複合体から出射されるX線が入射されるX線検出器と、を有する構成なので、X線源移動装置及び検出器移動装置を用いることなく、簡易に湿度を測定可能な湿度観測システムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】層状ケイ酸塩を用いた従来の湿度観測システムの一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態である湿度観測システムの一例を示す概略図である。
図3】本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体の一例を示す概略図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A’線における断面図である。
図4図3のB部拡大模式図である。
図5】本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体21の一例を示す分子モデル概念図である。
図6】本発明の実施形態である湿度観測システムの製造方法の一例を示すフローチャート図(a)及び別の一例を示すフローチャート図(b)である。
図7】実施例1の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例1のTEOA/PSA−h(200))のX線回折パターンの加湿変化依存性を示すグラフである。
図8】実施例1の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例1のTEOA/PSA−h(200))のX線回折パターンの除湿変化依存性を示すグラフである。
図9】実施例2の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例2のTEOA/PSA−h(20))のX線回折パターンの加湿除湿変化依存性を示すグラフである。
図10】加湿→除湿→加湿→除湿の工程図あって、Run Noと相対湿度(%)との関係を示すグラフ(a)と、実施例3の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例3のTEOA/PSA−h(188))のX線回折パターンの(加湿→除湿→加湿→除湿の工程)変化依存性を示すグラフ(b)である。
図11】実施例5の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例5のDEEOA/PSA−h(20))のX線回折パターンの加湿除湿変化依存性を示すグラフである。
図12】比較例2の層状無機/有機複合体(比較例2のDEEOA/PSA−h(200))のX線回折パターンの相対湿度5%の保持時間依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(本発明の実施形態)
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体、その製造方法及び湿度観測システムについて説明する。
【0026】
<湿度観測システム>
まず、本発明の実施形態である湿度観測システムについて説明する。
図2は、本発明の実施形態である湿度観測システムの一例を示す概略図である。
図2に示すように、本発明の実施形態である湿度観測システム11は、台24上に、X線源22と、X線源22から出射されたX線lが入射される層状無機/有機複合体21と、層間隔不変−層状無機/有機複合体21から出射されるX線lが入射されるX線検出器23と、を有して、概略構成されている。
層間隔不変−層状無機/有機複合体21は、外部環境の湿度に応じて、X線回折強度を変化させることができるが、層間隔は変化させない試料である。よって、本発明の実施形態である湿度観測システム11では、X線源22からの出射光lの入射角度をθで固定した場合、外部環境の湿度の変化に応じて、X線の出射角度がθに固定され、回析光lが出射される。そのため、X線源移動装置及びX線検出器移動装置を用いることなく、簡易に湿度を測定でき、実用化に適した装置とすることができる。
【0027】
<層間隔不変−層状無機/有機複合体>
図3は、層間隔不変−層状無機/有機複合体の一例を示す概略図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A’線における断面図である。
図3に示すように、層間隔不変−層状無機/有機複合体21は、立方体状とされている。しかし、この形状に限られるものではなく、円柱状、多角形柱状としてもよい。また、4層構造とされているが、これに限られるものではなく、より多層であっても、3層構造又は2層構造としてもよい。
【0028】
図4は、図3のB部拡大模式図である。
図4に示すように、層間隔不変−層状無機/有機複合体21は、層面が互いに並行となるように配置されてなる複数の無機化合物層31、32を有し、層31、32間に、疎水性を付与する有機基41、42と水吸着有機分子51とを有して概略構成されている。
【0029】
疎水性を付与する有機基41は、その一端側41aがそれぞれ層面31aに固定され、その他端側41bが、層面31aの対面側32bに一端側42aが固定された別の疎水性を付与する有機基42の他端側42bと分子間力による弱い相互作用61で接合されている。これにより、無機化合物層31、32の層間隔dが固定されている。層間隔dは、隣接する無機化合物層31、32の層の中心間の距離である。
また、水吸着有機分子51は、その一端側41aが層面32bに固定され、その他端側51bに非共有電子対(ローンペア)を有する窒素からなる水吸着部が具備されている。 非共有電子対(ローンペア)を有する窒素で水分子を吸着させることにより、吸着脱着を容易にできる。また、層間に挿入された水分子を安定して保持することができる。この水分子は、層間に容易にインターカレートされるとともに、デインターカレートされる。
【0030】
疎水性を付与する有機基41として、アルキルアンモニウム基を挙げることができる。
前記アルキルアンモニウム基としては、先に記載の一般式(1)で表され、前記式(1)で、mは4以上20以下の自然数であり、k及びlは0以上3以下の同一の又は相異する整数であり、RはSi含有アルキル基であるものを挙げることができる。
前記アルキルアンモニウム基としては、octadecyldimethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammonium(以下、ODACと略記する場合がある。)、hexadecyldimethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammonium、octadecyldiethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammoniumを挙げることができる。
【0031】
水吸着有機分子51として、アルコールアミンを挙げることができる。
前記アルコールアミンとしては、先に記載の一般式(2)で表され、前記式(2)で、n1、n2、n3はそれぞれ同一又は別の0以上4以下の自然数であり、R、R、Rはそれぞれ同一又は別のアルキル基又はOH基であり、R、R、Rの少なくとも一つはOH基であるものを挙げることができる。
前記アルコールアミンとしては、トリエタノールアミン(以下、TEOAと略記する場合がある。)又はジエチルエタノールアミン(以下、DEEOAと略記する場合がある。)を挙げることができる。
【0032】
層間隔不変−層状無機/有機複合体21は、層面が互いに並行となるように配置されてなる複数の無機化合物層31、32を有し、無機化合物層31、32は、それぞれ酸素含有ユニットを有する。
【0033】
無機化合物層31として、例えば、ケイ酸塩層又はニオブ酸塩を挙げることができる。
ケイ酸塩層は、SiOテトラへドロンと−C−SiOユニットの酸素含有ユニットを有する。疎水性を付与する有機基41、42は、−C−SiOユニットと強固な接合を形成している(−C−SiOユニットのCが疎水性を付与する有機基の末端基である)。また、層表面の活性部位を、水吸着有機分子51のOH基と脱水縮合反応させて、強固な接合を形成することができる。
【0034】
図5は、層間隔不変−層状無機/有機複合体21の一例を示す分子モデル概念図である。
無機化合物層31としてケイ酸塩層を用い、疎水性を付与する有機基41として、ODAC由来のアルキルアンモニウム基を用い、水吸着有機分子51として、TEOAを用いている。
図5(a)に示すように、ODAC、TEOAはそれぞれ層面に平行な方向に配置されている。TEOAは層面に接するように配置されている。層間隔は3.6nmとされている。
図5(b)は、層表面とTEOAとの相互作用を示す図である。
層状ケイ酸塩のアルキルアンモニウム誘導体は、PSA−hと略記されている。
PSA−hは、層状ケイ酸塩部分とアルキルアンモニウム基が共有結合している複合体を意味する。この複合体において、アルキルアンモニウム基は、層状ケイ酸塩部分の層間に存在する。
【0035】
以上の構成により、層間隔不変−層状無機/有機複合体21を、外部環境の湿度に応じて、X線回折強度を変化させることができるが、層間隔は変化させない試料とすることができる。
【0036】
<層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法>
次に、本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法について、説明する。
図6は、本発明の実施形態である湿度観測システムの製造方法の一例を示すフローチャート図(a)及び別の一例を示すフローチャート図(b)である。
【0037】
図6(a)に示すように、本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法は、層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、トリエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びトリエタノールアミンを含有する層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成する工程S1を有する。
トリエタノールアミンは、層面と接合するOH基が1分子に3つある構成なので、所定の濃度として混合・攪拌だけで、層間に安定に固定でき、層間で疎水性を付与する有機基41、42と共存させることができる。また、層表面の活性部位を、水吸着有機分子51のOH基と反応させて、強固な接合を形成することができる。これにより、複合体の層間隔を不変化して、層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成することができる。
【0038】
また、図6(b)に示すように、本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法は、層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、ジエチルエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びジエチルエタノールアミンを含有する複合体を合成する工程S11と、前記複合体を減圧下、加熱して層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成する工程S12と、を有する。
ジエチルエタノールアミンは、層面と接合するOH基が1分子に1つしかない構成なので、混合・攪拌だけでは層間に安定に固定することができず、減圧下、加熱することを要する。これにより、層表面の活性部位を、水吸着有機分子51のOH基と脱水縮合反応させて、強固な接合を形成することができ、複合体の層間隔を不変化して、層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成することができる。
【0039】
減圧下の加熱は、真空オーブンチャンバー内に試料を保持しておこなうことができる。
加熱温度は100℃以上200℃以下とすることが好ましい。100℃未満では、水吸着有機分子を強固に層面に固定化できない場合が発生する。また、200℃超とすると、層間隔不変化高分子塩及び水吸着有機分子が分解するおそれが発生する。反応をより安定に速やかに行うためには、100℃以上180℃以下とすることがより好ましい。
減圧条件は、1×10−3Torr以上の減圧環境とすることが好ましく、1×10−4Torr以上の減圧環境とすることがより好ましい。減圧環境にすることにより、水吸着有機分子を層間により容易に短時間で強固に固定させることができる。
【0040】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、層面が互いに並行となるように配置されてなる複数の無機化合物層の層間に、疎水性を付与する有機基と水吸着有機分子とを有しており、前記疎水性を付与する有機基は、その一端側が層面に固定され、その他端側が、層面の対面側に一端側が固定された別の疎水性を付与する有機基の他端側と結合されており、水分子を層間に入れても、前記無機化合物層の層間隔が不変とされている構成なので、相対湿度を変化させると、積層構造を変化させるが、層間隔を一定に保つことができ、X線源移動装置及び検出器移動装置を用いることなく、簡易に湿度を測定可能な湿度観測システムを提供することができる。
【0041】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記水吸着有機分子が、その一端側が前記層面に固定され、その他端側に水吸着部が具備されている構成なので、相対湿度を変化させると、積層構造を変化させるが、層間隔を一定に保つことができ、X線源移動装置及び検出器移動装置を用いることなく、簡易に湿度を測定可能な湿度観測システムを提供することができる。
【0042】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記疎水性を付与する有機基塩が、アルキルアンモニウム基である構成なので、層間隔不変−層状無機/有機複合体の無機化合物層の層間隔を一定保持させることができる。
【0043】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記アルキルアンモニウム基が、先に記載の一般式(1)で表され、前記式(1)で、mは4以上20以下の自然数であり、k及びlは0以上3以下の同一の又は相異する整数であり、RはSi含有アルキル基である構成なので、層間隔不変−層状無機/有機複合体の無機化合物層の層間隔を一定保持させることができる。
【0044】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記アルキルアンモニウム基が、octadecyldimethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammonium、hexadecyldimethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammonium、octadecyldiethyl(3−trimethoxysilylpropyl)ammoniumの群から選択されるいずれかである構成なので、層間隔不変−層状無機/有機複合体の無機化合物層の層間隔を一定保持させることができる。
【0045】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記水吸着有機分子が、アルコールアミンである構成なので、水を吸着させることができる。
【0046】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記アルコールアミンが、先に記載の一般式(2)で表され、前記式(2)で、n1、n2、n3はそれぞれ同一又は別の1以上4以下の自然数であり、R、R、Rはそれぞれ同一又は別のアルキル基又はOH基であり、R、R、Rの少なくとも一つはOH基である構成なので、水を吸着させることができる。
【0047】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記アルコールアミンが、トリエタノールアミン又はジエチルエタノールアミンである構成なので、水を吸着させることができる。
【0048】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記水吸着有機分子の前記水吸着部が、非共有電子対(ローンペア)を有する窒素である構成なので、水を吸着させることができる。
【0049】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体は、前記無機化合物層が、ケイ酸塩層又はニオブ酸塩層である構成なので、水吸着有機分子と疎水性を付与する有機基を層間に共存させることにより、相対湿度を変化させると、積層構造を変化させるが、層間隔を一定に保つことができる。
【0050】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法は、層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、トリエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びトリエタノールアミンを含有する層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成する構成なので、トリエタノールアミンを含有する層間隔不変−層状無機/有機複合体を容易に合成できる。
【0051】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体の製造方法は、層状無機化合物の層間に疎水性を付与する有機基が強固に固定された層状無機/有機複合体と、ジエチルエタノールアミンを混合・攪拌して、疎水性を付与する有機基及びジエチルエタノールアミンを含有する複合体を合成する工程S11と、前記複合体を減圧下、加熱して層間隔不変−層状無機/有機複合体を合成する工程S12と、を有する構成なので、ジエチルエタノールアミンを含有する層間隔不変−層状無機/有機複合体を容易に合成できる。
【0052】
本発明の実施形態である湿度観測システムは、X線源と、前記X線源から出射されたX線が入射される先に記載の層間隔不変−層状無機/有機複合体と、前記層状無機/有機複合体から出射されるX線が入射されるX線検出器と、を有する構成なので、X線源移動装置及び検出器移動装置を用いることなく、簡易に湿度を測定可能な湿度観測システムとすることができる。
【0053】
本発明の実施形態である層間隔不変−層状無機/有機複合体、その製造方法及び湿度観測システムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
<試料合成>
まず、非特許文献1に記載の製造方法に従い、アルキルアンモニウム基が層状ケイ酸塩の層間に存在し、層状ケイ酸塩と共有結合で強固に結合してなる層状ケイ酸塩のアルキルアンモニウム誘導体(PSA−h)を合成した。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0055】
次に、トリエタノールアミン(TEOA)1mlに対し、PSA−hを200mg加えた後、室温で撹拌して、PSA−hの層間にアルキルアンモニウム基とTEOAが共存されてなる実施例1の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例1のTEOA/PSA−h(200))を得た。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0056】
<試料測定>
まず、実施例1の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例1のTEOA/PSA−h(200))のX線回折パターンを、加湿しながら測定した。
図7は、実施例1の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例1のTEOA/PSA−h(200))のX線回折パターンの加湿変化依存性を示すグラフである。
大気雰囲気(atmosphere)を初期条件として、湿度を84%、96%と上昇させるに伴い、X線回折ピークの強度は弱くなった。しかし、層間隔は3.6nmのまま変化しなかった。
なお、96%の条件で1.5hr保持した場合、X線回折ピークの強度はより弱くなり、層間隔は3.6nmのままであった。
【0057】
次に、実施例1の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例1のTEOA/PSA−h(200))のX線回折パターンを、除湿しながら測定した。
図8は、実施例1の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例1のTEOA/PSA−h(200))のX線回折パターンの除湿変化依存性を示すグラフである。
湿度を96%から、44%、25%、5%と低下させるに伴い、X線回折ピークの強度は増大した。しかし、層間隔は変化しなかった。
なお、5%の条件で20.5hr保持した場合、X線回折ピークの強度はより強くなり、層間隔は3.6nmのままであった。
【0058】
(実施例2)
<試料合成>
まず、非特許文献1に記載の製造方法に従い、アルキルアンモニウム基が層状ケイ酸塩の層間に存在し、層状ケイ酸塩と共有結合で強固に結合してなる層状ケイ酸塩のアルキルアンモニウム誘導体(PSA−h)を合成した。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0059】
次に、トリエタノールアミン(TEOA)1mlに対し、PSA−hを20mg加えた後、減圧下、100℃で撹拌して、PSA−hの層間にアルキルアンモニウム基とTEOAが共存されてなる実施例2の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例2のTEOA/PSA−h(20))を得た。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0060】
<試料測定>
実施例2の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例2のTEOA/PSA−h(20))のX線回折パターンを、まず加湿しながら測定してから、次に除湿しながら測定した。
図9は、実施例2の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例2のTEOA/PSA−h(20))のX線回折パターンの加湿除湿変化依存性を示すグラフである。
加湿するに伴い、X線回折ピークの強度は1600(cps)程度から600(cps)程度まで弱くなった。また、除湿に従い、X線回折ピークの強度は600(cps)程度から1600(cps)程度まで強くなった。
この湿度変化に対するX線回析強度の変化は可逆であり、繰り返し可能であった。
【0061】
(実施例3)
<試料合成>
まず、非特許文献1に記載の製造方法に従い、アルキルアンモニウム基が層状ケイ酸塩の層間に存在し、層状ケイ酸塩と共有結合で強固に結合してなる層状ケイ酸塩のアルキルアンモニウム誘導体(PSA−h)を合成した。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0062】
次に、トリエタノールアミン(TEOA)1mlに対し、PSA−hを188mg加えた後、窒素気流下、180℃で2時間、撹拌して、PSA−hの層間にアルキルアンモニウム基とTEOAが共存されてなる実施例3の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例3のTEOA/PSA−h(188))を得た。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0063】
<試料測定>
実施例3の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例3のTEOA/PSA−h(188))のX線回折パターンを、加湿→除湿→加湿→除湿の工程で、測定した。
図10は、加湿→除湿→加湿→除湿の工程図あって、Run Noと相対湿度(%)との関係を示すグラフ(a)と、実施例3の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例3のTEOA/PSA−h(188))のX線回折パターンの(加湿→除湿→加湿→除湿の工程)変化依存性を示すグラフ(b)である。
加湿に伴い、X線回折ピークの強度は弱くなり、除湿に伴い、X線回折ピークの強度は増大した。また、この変化は可逆であり、繰り返し可能であった。
【0064】
(実施例4)
<試料合成>
PSA−hを20mg加えた条件とした他は実施例1と同様にして、実施例4の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例4のTEOA/PSA−h(20))を合成した。
【0065】
(実施例5)
<試料合成>
まず、非特許文献1に記載の製造方法に従い、アルキルアンモニウム基が層状ケイ酸塩の層間に存在し、層状ケイ酸塩と共有結合で強固に結合してなる層状ケイ酸塩のアルキルアンモニウム誘導体(PSA−h)を合成した。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0066】
次に、ジエチルエタノールアミン(DEEOA)1mlに対し、PSA−hを20mg加えた後、減圧下、100℃で撹拌して、PSA−hの層間にアルキルアンモニウム基とDEEOAが共存されてなる実施例4の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例4のDEEOA/PSA−h(20))を得た。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0067】
<試料測定>
実施例5の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例5のDEEOA/PSA−h)のX線回折パターンを、まず加湿しながら測定してから、次に除湿しながら測定した。
図11は、実施例5の層間隔不変−層状無機/有機複合体(実施例5のDEEOA/PSA−h(20))のX線回折パターンの加湿除湿変化依存性を示すグラフである。
加湿に伴い、X線回折ピークの強度は強くなった。除湿に伴い、X線回折ピークの強度は弱くなった。この変化は可逆であった。また、繰り返し可能であった。
【0068】
(比較例1)
<試料合成>
PSA−hを2mg加えた条件とした他は実施例1と同様にして、比較例1の層状無機/有機複合体(比較例1のTEOA/PSA−h(2))を合成した。
層間隔(面間隔)の測定はできなかった。
【0069】
(比較例2)
<試料合成>
まず、非特許文献1に記載の製造方法に従い、アルキルアンモニウム基が層状ケイ酸塩の層間に存在し、層状ケイ酸塩と共有結合で強固に結合してなる層状ケイ酸塩のアルキルアンモニウム誘導体(PSA−h)を合成した。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0070】
次に、ジエチルエタノールアミン(DEEOA)1mlに対し、PSA−hを200mg加えた後、室温で撹拌して、PSA−hの層間にアルキルアンモニウム基とDEEOAが共存されてなる比較例2の層状無機/有機複合体(比較例2のDEEOA/PSA−h(200))を得た。この構造については、X線回折及び赤外吸収分析により確認した。
【0071】
<試料測定>
比較例2の層状無機/有機複合体(比較例2のDEEOA/PSA−h(200))のX線回折パターンの保持時間依存性を、相対湿度を5%に固定して測定した。
図12は、比較例2の層状無機/有機複合体(比較例2のDEEOA/PSA−h(200))のX線回折パターンの相対湿度5%の保持時間依存性を示すグラフである。相対湿度5%で保持すると、層間隔は短くなることがわかり、安定性が低いことが示された。
【0072】
(比較例3)
<試料合成>
PSA−hを2mg加えた条件とした他は比較例2と同様にして、比較例3の層状無機/有機複合体(比較例3のDEEOA/PSA−h(2))を合成した。
層間隔(面間隔)の測定はできなかった。
【0073】
(比較例4)
<試料合成>
PSA−hを20mg加えた条件とした他は比較例2と同様にして、比較例4の層状無機/有機複合体(比較例4のDEEOA/PSA−h(20))を合成した。
表1は以上の結果をまとめたものである。
【0074】
【表1】
【0075】
表1で、「安定性」では、相対湿度5%においても、エタノールアミンのデインターカレーションが起こらず、複合体の形態が変化しないものを○とし、「XRDピーク強度の湿度応答性」では、相対湿度の変化に応答して、XRDピーク強度が変化しないものを○とした。比較例2の図12に示すように、XRDピーク強度が変化したものを×とした。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の層間隔不変−層状無機/有機複合体、その製造方法及び湿度観測システムは、相対湿度が変化しても、層間隔を一定に保つことが可能な層間隔不変−層状無機/有機複合体、その製造方法に関するものであり、また、X線源移動装置及びX線検出器移動装置を用いることなく、簡易に湿度を測定可能な湿度観測システムに関するものであり、湿度観測システム製造産業、湿度計測産業において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0077】
11…湿度観測システム、21…層間隔不変−層状無機/有機複合体、22…X線源、23…X線検出器、24…台、31、32…無機化合物層、31a、32b…層面、41、42…疎水性を付与する有機基、41a、42a…一端側、41b、42b…他端側、51…水吸着有機分子、51a…一端側、51b…他端側(水吸着部)、61…相互作用、111…湿度観測システム、121…層状ケイ酸塩、122…X線源、123…X線検出器、124…台、126…X線検出器移動装置、d…層間隔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12