(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザガスを媒質として用いることでレーザ光を発生するとともに、前記レーザガスのガス流方向と、前記レーザガス中における前記レーザ光の光軸方向とが交差するレーザ装置であって、
前記レーザガスを励起する一対の電極と、
前記一対の電極間に形成される放電領域に配置され、前記レーザ光を発振する光共振器と、
前記一対の電極間に形成される放電領域に配置され、前記光共振器からの前記レーザ光を増幅する光増幅器と、を備え、
前記一対の電極間に形成される放電領域を、前記レーザガスのガス流方向の上流側からそれぞれ第1放電領域、第2放電領域および第3放電領域に分割した場合に、前記第2放電領域において、前記レーザ光の光軸方向に平均化された放電電力密度が、前記第1放電領域において、前記レーザ光の光軸方向に平均化された放電電力密度よりも小さく、前記光共振器の光軸が、前記第2放電領域を通るように設けられており、かつ前記光増幅器の光軸が、前記第3放電領域を通るように設けられている
レーザ装置。
前記第2放電領域において、前記一対の電極についての放電領域側の誘電体の厚みが、前記第1放電領域における、前記一対の電極についての放電領域側の誘電体の厚みよりも厚い
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載のレーザ装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明に係るレーザ装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。
【0017】
まず、特許文献1および非特許文献1を参照しながら、一般的な三軸直交型CO
2レーザ装置におけるレーザの利得分布および共振器内光強度について具体的に説明する。例えば、特許文献1の
図1に示されるような三軸直交型CO
2レーザ装置の電極間に励起されるレーザの利得分布は、非特許文献1のFigure 2.に示されるようになる。
【0018】
非特許文献1のFigure 2.は、三軸直交型CO
2レーザ装置において、利得分布と電極位置との関係を示した図であり、電極のガス流上流端から、レーザガスが流れる方向に沿って徐々に利得が増加し、電極のガス流下流端で利得が最も大きくなった後、徐々に利得が減少していることがわかる。
【0019】
ここで、レーザの利得分布の関数g
0(X)は、次式(1)で表される。なお、次式(1)において、Xはガス流方向の座標、X
Dは電極幅、λはレーザ上準位の緩和速度、υはレーザガス流速、σは誘導放出断面積、ηは励起効率、wは放電電力密度、Vは放電電圧をそれぞれ示している。
【0021】
また、特許文献1に示されるような三軸直交型CO
2レーザ装置の電極間における放電電力密度分布および利得分布を、
図1、2にそれぞれ示す。
図1、2において、横軸は、ガス流方向における電極のガス流上流端からの距離を示し、電極のガス流上流端が0である。また、
図1の縦軸は、ガス流方向の電極幅が40mmの場合の放電電力密度分布を示し、
図2の縦軸は、このときの利得分布を示している。
【0022】
すなわち、放電電力密度が、ガス流方向に均一に分布している場合には、
図2または非特許文献1のFigure 2.に示されるように、利得分布がガス流方向に勾配を持つことがわかる。したがって、上述したように、特許文献1に示された光共振器の光軸は、利得分布に勾配を持つ領域に存在することになる。
【0023】
また、特許文献1に示されるような三軸直交型CO
2レーザ装置において、光共振器の光軸位置が変化した場合の、光軸位置と共振器内光強度との関係を
図3に示す。
図3において、横軸は、電極のガス流上流端から光軸位置までの距離を示し、縦軸は、共振器内光強度を示している。
【0024】
図3より、例えば、光共振器の光軸を、電極のガス流上流端から15mmの位置に設置する場合には、光軸位置が1mm変化しただけで、共振器内光強度が30%程度変化することがわかる。
【0025】
実施の形態1.
図4は、この発明の実施の形態1に係るレーザ装置を示す構成図である。また、
図5は、この発明の実施の形態1に係るレーザ装置を上部から見た平面図である。
図4、5において、このレーザ装置は、電極基板1、2、3、4と、電極5、6と、レーザガスGと、ミラー21、22を有する光共振器と、光共振器内に設けられた光変調素子26と、伝送ミラー51、52と、ミラー53、54、55、56を含む光増幅器とから構成されている。なお、
図5において、上の電極基板1および電極5は、省略している。
【0026】
ここで、図の煩雑さを避けるために、
図4、5において、電極基板3、4は、図示しておらず、後述する
図6、7(レーザ装置の放電機構の構成を示す断面図)において、電極基板3、4を図示している。また、理解容易のために、レーザガスGを供給する方向と平行な方向をX方向、レーザガスGを励起する放電の方向をY方向、光共振器および光増幅器の光軸方向をZ方向とする。
【0027】
図6は、この発明の実施の形態1に係るレーザ装置の放電機構の構成を示す断面図であり、
図5において、レーザ装置をA−A線で切断した断面を、光軸方向(Z方向)から見た図である。
【0028】
図6において、電極基板3は、アルミナ等の誘電体で形成されており、金属製の電極5が、メタライズやペースト等により接着されている。また、電極基板1は、アルミナ等の誘電体で形成されており、放電機構全体の機械的強度を十分なものとするために、電極基板3と接着されている。
【0029】
同様に、電極基板4は、アルミナ等の誘電体で形成されており、金属製の電極6が、メタライズやペースト等により接着されている。また、電極基板2は、アルミナ等の誘電体で形成されており、放電機構全体の機械的強度を十分なものとするために、電極基板4と接着されている。
【0030】
図7は、
図6と同じくこの発明の実施の形態1に係るレーザ装置の放電機構の構成を示す断面図であり、
図5において、レーザ装置をB−B線で切断した断面を、光軸方向(Z方向)から見た図である。
【0031】
図7において、
図6と異なるのは、電極5、6が、ガス流方向(X方向)の上流側と下流側とで分離されていることである。ただし、
図5に示されるように、電極5、6は、A−A線の部分でつながっているので、全体としては一体となり、上流側と下流側とで同電位となる。
【0032】
このように構成された2つの電極基板1、2が、
図6、7に示されるように、レーザガスGを挟んで対向配置されており、高周波電源(図示せず)から電極5、6に対して交流電圧が印加されることにより、電極間で無声放電(オゾナイザ放電)が発生する。
【0033】
なお、これ以降、一対の電極5、6間に形成される放電領域を、
図6、7に示されるように、ガス流方向(X方向)の上流側から第1放電領域11、第2放電領域12および第3放電領域13の3つの領域に分けて説明する。ここで、第1放電領域11のガス流方向の幅をXsとする。
【0034】
無声放電によってレーザガスG中の分子または原子がレーザ上準位に励起されると、光の増幅作用を示すようになる。例えば、レーザガスGとして、CO
2分子を含む混合ガスを使用した場合、CO
2分子の振動準位間の遷移により、波長10.6μmのレーザ発振光が得られる。また、ミラー21、22の反射膜の設計によっては、波長9.3μm等、他の波長での発振も可能である。
【0035】
また、ここでは、レーザガスGとしてCO
2を使用した場合を例示するが、他のレーザガス、例えば、CO、N
2、He−Cd、HF、Ar+、ArF、KrF、XeCl、XeF等を使用した場合にも、この発明は適用可能である。
【0036】
この発明の実施の形態1に係るレーザ装置は、レーザガスGを外気と遮断するための真空容器である筐体(図示せず)を備え、筐体内部には、熱交換器、ブロワ、ダクト等が設けられる。ブロワは、筐体内に封入されたレーザガスGをダクト内の風洞に沿って循環させる。これにより、第1放電領域11→第2放電領域12→第3放電領域13の順に、レーザガスGがX方向に沿って供給される。
【0037】
第1〜第3放電領域11、12、13を通過したレーザガスGは、熱交換器で冷却され、再びブロワに戻る。第1〜第3放電領域11、12、13では、大気圧よりも低い圧力に維持されており、レーザガスGは、
図4の矢印の方向に空間的に均一な速度分布、例えば、90m/s程度の速度で移動する。
【0038】
ミラー21、22は、第2放電領域12を挟んで互いに対向するように配置される。ミラー21としては、例えば凹面または平面の全反射鏡が用いられ、ミラー22としては、例えば凹面または平面の部分反射鏡が用いられ、2つのミラー21、22で、光共振器を構成している。
【0039】
光共振器は、レーザガスGの移動方向(X方向)と交差する方向、好ましくは直交するZ方向に沿った光軸を有する。光共振器の光軸上には、レーザ光のビームモードを制御するためのアパーチャ(図示せず)が設けられる。
【0040】
光変調素子26は、透過光の偏光、伝搬方向、透過率等を高速に制御する機能を有する。また、光変調素子26は、光共振器のQ値を高速に制御する機能を併せて有し、光共振器からパルス幅数10〜数100nsのパルスレーザ光B0を発生させることができる。
【0041】
ここで、光変調素子26としては、音響光学素子、電気光学素子、機械式シャッタ、チョッパ等が使用できる。光変調素子26として音響光学素子を使用した場合には、数10MHzの交流電圧を供給する駆動回路(図示せず)が接続される。
【0042】
伝送ミラー51、52は、光共振器からのレーザ光B0を、レーザ光B1として光増幅器である第3放電領域13に入射させる折り返しミラーとして機能する。この発明の実施の形態1では、伝送ミラー51として凸面の全反射ミラー、伝送ミラー52として凹面の全反射ミラーが用いられ、レーザ光のビーム径を拡大するビームエキスパンダを構成している。
【0043】
具体的には、この発明の実施の形態1では、伝送ミラー51、52の働きにより、ミラー22上でビーム半径3mm程度の大きさであるレーザ光B0を、第3放電領域13に再入射する直前で、ビーム半径5mm程度の大きさのレーザ光B1になるようにビーム径を拡大し、コリメートしている。
【0044】
このような構成により、この発明の実施の形態1において、ミラー21、22を有する光共振器では、レーザ光のビーム径を小さくして、ビーム品質のよい低次横モード発振を確保するとともに、光増幅器では、ビーム径を大きくして、レーザ光の増幅効率を向上させている。
【0045】
ミラー53、54、55、56は、第3放電領域13を挟むように配置され、光増幅器を構成している。伝送ミラー51、52で折り返されたレーザ光B1は、伝送ミラー52→第3放電領域13→ミラー53→第3放電領域13→ミラー54→第3放電領域13→ミラー55→第3放電領域13→ミラー56→第3放電領域13の順で進行する際に、励起されたレーザガスGによって増幅される。
【0046】
この発明の実施の形態1では、伝送ミラー51、52で折り返されたレーザ光B1が、第3放電領域13を5回通過することによって増幅され、最終的に平均出力1kWのレーザ光B2が取り出される。
【0047】
光増幅器である第3放電領域13は、レーザガスGの移動方向(X方向)と交差する方向、好ましくは直交するZ方向に沿った複数(この発明の実施の形態1における例では、5本)の折り返し光軸を有する。これらの折り返し光軸がY方向に沿って配列されていることにより、各光軸で受けるレーザガスGの利得が均等化され、その結果、安定した増幅動作を実現することができる。
【0048】
ミラー21、22、伝送ミラー51、52およびミラー53、54、55、56は、光軸調整のための角度微調機構を介して筐体等に取り付けられる。
【0049】
ここで、この発明の実施の形態1に係るレーザ装置の電極間における放電電力密度分布および利得分布を、
図8、9にそれぞれ示す。
図8、9において、横軸は、ガス流方向(X方向)における電極のガス流上流端からの距離を示し、電極のガス流上流端が0である。また、
図8の縦軸は、ガス流方向の電極幅が40mmの場合の放電電力密度分布を示し、
図9の縦軸は、このときの利得分布を示している。
【0050】
また、
図8、9において、放電電力密度分布および利得分布は、光軸方向(Z方向)に、電極全体に渡って積分した(光軸方向に平均化した)値を示している。この発明の実施の形態1に係るレーザ装置の電極構造とすると、放電電力密度分布には、
図8に示されるように、放電電力の小さい部分が存在する。
【0051】
これは、
図5のA−A線の部分、B−B線の部分および
図6、7に示されるように、電極5、6が、第2放電領域12において、光軸方向(Z方向)に放電部と非放電部とを交互に繰り返す電極パターンを有していることに起因している。
【0052】
すなわち、第2放電領域12においては、光軸方向全体に渡って放電しているわけではなく、一部のみが放電しており、一方第1、第3放電領域11、13においては、光軸方向全体に渡って放電しているためである。また、このときの利得分布は、第2放電領域12において、ガス流方向に均一になっている。
【0053】
なお、利得分布は、上記式(1)において、レーザ上準位の緩和速度λ、レーザガス流速υおよび第2放電領域12の第1、第3放電領域11、13に対する割合を調整することによって均一にすることが可能となる。
【0054】
また、レーザ上準位の緩和速度λは、主にレーザガス組成およびガス圧によって決定される。また、
図8では、レーザガス流速υが90m/sである場合に、第2放電領域12の光軸方向(Z方向)に渡って平均化した放電電力を、第1、第3放電領域11、13に対して約17%とした場合を示している。つまり、これらのパラメータを適切に調整することにより、利得分布が一定の領域を作ることができる。
【0055】
ここで、第1、第3放電領域11、13に対する第2放電領域12の平均化された放電電力密度の割合Drは、次式(2)のように決定すればよい。
【0056】
Dr=1−exp(−λ・Xs/υ) (2)
【0057】
なお、一般的なCO
2レーザでは、レーザ上準位の緩和速度λは、レーザガス組成およびガス圧によって、500〜4000毎秒程度で動作する。そのため、まず、レーザガス組成およびガス圧を決定し、この値に応じて第1放電領域11のガス流方向(X方向)の幅Xs、および第2放電領域12の放電電力密度の割合Drを決定すればよい。
【0058】
このようにすることで、光共振器の光軸位置が電極に対してガス流方向に1〜2mm程度ずれた場合であっても、常に一定の利得が得られ、ミラーのアライメント誤差に対しても、共振器内光強度の変化を抑制することができる。
【0059】
その結果、光共振器で発生するレーザ光のパワーに対する光学部品の耐光強度、光増幅器での光学部品の光パワー増幅能力等を勘案して、それぞれの光学部品の設計自由度を向上させることができる。
【0060】
また、この発明の実施の形態1に係るレーザ装置では、従来のレーザ装置と同様に、ビーム品質のよいレーザ光B0を光共振器で発生させ、このレーザ光を増幅しているので、品質のよい大出力ビームを得ることができる。また、光共振器および光増幅器を同一筐体(真空容器)内に設けることにより、安価で組立設置の容易なレーザ装置を得ることができる。
【0061】
さらに、この発明の実施の形態1に係るレーザ装置では、誘電体製の1枚の電極基板に対して、金属製の電極をメタライズやペースト等により接着する構成を有している。そのため、1つの放電領域を生成するために、1つずつ電極基板や電極の構造体を用意する必要がなく、安価で高信頼な構成で複数の放電領域を生成することができる。
【0062】
以上のように、実施の形態1によれば、一対の電極間に形成される放電領域を、レーザガスのガス流方向の上流側からそれぞれ第1放電領域、第2放電領域および第3放電領域に分割した場合に、第2放電領域において、レーザ光の光軸方向に平均化された放電電力密度が、第1放電領域において、レーザ光の光軸方向に平均化された放電電力密度よりも小さく、光共振器の光軸が、第2放電領域を通るように設けられている。
これにより、光共振器部分における利得分布を均一化することができる。
そのため、光共振器の光軸位置が電極に対してガス流方向にずれた場合であっても、高出力で制御性がよく、高品質なパルスレーザ光を安定して得ることができる。
【0063】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、第1、第3放電領域11、13に対する第2放電領域12の放電電力の割合は、電極5、6の第2放電領域12において、実際に放電する領域を間引くことによって調整していた。
【0064】
この発明の実施の形態2では、第2放電領域12の誘電体の厚みを増すことによって、第1、第3放電領域11、13に対する第2放電領域12の放電電力の割合を調整する構成について説明する。
【0065】
図10は、この発明の実施の形態2に係るレーザ装置を上部から見た平面図であり、上記実施の形態1の
図5と同様に、上の電極基板1および電極5は、省略している。また、ミラー、光変調素子等、レーザ光が通る部分は、上記実施の形態1と同じなので、説明を省略する。
【0066】
また、
図11は、この発明の実施の形態2に係るレーザ装置の放電機構の構成を示す断面図であり、
図10において、レーザ装置の電極部分をガス流方向(X方向)に切断した断面を、光軸方向(Z方向)から見た図である。
【0067】
図10、11において、第2放電領域12の電極基板3、4の上に、誘電体7、8が接着されている。ここで、誘電体7、8の材質は、電極基板3、4と同等のものを用いることができる。
【0068】
このようにすることで、第2放電領域12の電極の静電容量を、第1、第3放電領域11、13の電極の静電容量よりも小さくすることができる。また、放電電力密度は、放電部分の電極の静電容量に比例するので、第2放電領域12の放電電力密度が小さくなり、結果的に、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0069】
つまり、光共振器部分における利得分布を均一化することができ、光共振器の光軸位置が電極に対してガス流方向に1〜2mm程度ずれた場合であっても、常に一定の利得が得られ、ミラーのアライメント誤差に対しても、共振器内光強度の変化を抑制することができる。
【0070】
なお、上記実施の形態2では、電極基板3、4の上に、新たに誘電体7、8を接着したが、これに限定されず、電極基板3および誘電体7、並びに電極基板4および誘電体8を、それぞれ段差を有する一体型のセラミック等で構成してもよい。この場合も、上記実施の形態2と同等の効果を得ることができる。
【0071】
実施の形態3.
上記実施の形態2では、第2放電領域12の電極基板3、4の上に、誘電体7、8を接着することにより、第2放電領域12の放電電力密度を小さくする構成を示したが、これに限定されず、金属製の電極の配置を工夫することにより、第2放電領域12の放電電力密度を小さくすることもできる。
【0072】
図12は、この発明の実施の形態3に係るレーザ装置を上部から見た平面図であり、上記実施の形態1の
図5と同様に、上の電極基板1および電極5は、省略している。また、ミラー、光変調素子等、レーザ光が通る部分は、上記実施の形態1と同じなので、説明を省略する。
【0073】
また、
図13は、この発明の実施の形態3に係るレーザ装置の放電機構の構成を示す断面図であり、
図12において、レーザ装置の電極部分をガス流方向(X方向)に切断した断面を、光軸方向(Z方向)から見た図である。
【0074】
図12、13において、電極基板1、2の第2放電領域12とは反対側に、金属製の電極9、10がそれぞれ配置されている。また、電極9は、電極5と電気的に接続され、電極10は、電極6と電気的に接続されて、それぞれ同電位となっている。
【0075】
ここで、電極基板1、2は、電極基板3、4と同様に誘電体なので、このようにすることで、第2放電領域12の電極の静電容量を、第1、第3放電領域11、13の電極の静電容量よりも小さくすることができる。その結果、第2放電領域12の放電電力密度を小さくすることができ、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0076】
つまり、光共振器部分における利得分布を均一化することができ、光共振器の光軸位置が電極に対してガス流方向に1〜2mm程度ずれた場合であっても、常に一定の利得が得られ、ミラーのアライメント誤差に対しても、共振器内光強度の変化を抑制することができる。
【0077】
実施の形態4.
第1、第3放電領域11、13に対する第2放電領域12の放電電力の割合を調整するためには、上記実施の形態1〜3に記載された構成を組み合わせてもよい。
【0078】
すなわち、上記実施の形態1に示された、第2放電領域12において、光軸方向(Z方向)に放電部と非放電部とを交互に繰り返す電極5、6の電極パターンと、上記実施の形態2に示された、電極基板3、4への誘電体7、8の接着と、上記実施の形態3に示された、電極基板1、2への電極9、10の配置とをそれぞれ選択的に組み合わせて、例えば
図14に示されるようにレーザ装置を構成してもよい。
【0079】
この場合も、第2放電領域12の放電電力密度を小さくすることができ、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。つまり、光共振器部分における利得分布を均一化することができ、光共振器の光軸位置が電極に対してガス流方向に1〜2mm程度ずれた場合であっても、常に一定の利得が得られ、ミラーのアライメント誤差に対しても、共振器内光強度の変化を抑制することができる。
【0080】
実施の形態5.
上記実施の形態1では、電極5、6が、第2放電領域12において、光軸方向(Z方向)に放電部と非放電部とを交互に繰り返す単純な電極パターンを有しているが、これに限定されず、第2放電領域12の電極部分の面積が、第1、第3放電領域11、13の電極部分の面積よりも小さくなっていれば、どのような形状であってもよい。
【0081】
具体的には、例えば
図15に示されるように、第2放電領域12の電極部分が、斜めの電極パターンを有していてもよいし、
図16に示されるように、第2放電領域12の電極部分が、網目状の電極パターンを有していてもよい。
【0082】
この場合も、第2放電領域12の放電電力密度を小さくすることができ、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。つまり、光共振器部分における利得分布を均一化することができ、光共振器の光軸位置が電極に対してガス流方向に1〜2mm程度ずれた場合であっても、常に一定の利得が得られ、ミラーのアライメント誤差に対しても、共振器内光強度の変化を抑制することができる。