(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6048981
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】パラレルトランスミッションの制御方法
(51)【国際特許分類】
F16H 61/12 20100101AFI20161212BHJP
F16H 59/40 20060101ALI20161212BHJP
F16H 59/42 20060101ALI20161212BHJP
F16H 59/68 20060101ALI20161212BHJP
F16H 61/02 20060101ALI20161212BHJP
F16H 61/688 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
F16H61/12
F16H59/40
F16H59/42
F16H59/68
F16H61/02
F16H61/688
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-526386(P2014-526386)
(86)(22)【出願日】2012年8月3日
(65)【公表番号】特表2014-524552(P2014-524552A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】DE2012000785
(87)【国際公開番号】WO2013026436
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年7月31日
(31)【優先権主張番号】102011081492.2
(32)【優先日】2011年8月24日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012204895.2
(32)【優先日】2012年3月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ビェアン シュテーレ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シンドラー
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ プリラー
【審査官】
日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−247765(JP,A)
【文献】
特開2008−175249(JP,A)
【文献】
特開2011−140965(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0272436(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102005036895(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00−61/12
61/16−61/24
61/66−61/70
63/40−63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ複数のギヤを有する2つのサブトランスミッションが設けられており、
トランスミッションアクチュエータのシフトフィンガの位置をインクリメント式に検出し、該検出された位置と絶対位置との比較によって較正されたシフトフィンガの位置を形成し、該較正されたシフトフィンガの位置に基づいて、ギヤ情報を求め、
求められたギヤ情報により、少なくとも1つのシフトフィンガを、切り替えられるべきギヤのシフトゲートへ調整し、
各サブトランスミッションでは構造に起因してそのつど唯一のギヤのみを入れることができる、
パラレルトランスミッションの制御方法であって、
前記ギヤ情報の正確性を表す信頼度を連続的に求め、
該信頼度の状態に依存して、通常モードを実行するか、又は、ギヤ情報のリセットをともなう障害モードを実行するとともに前記トランスミッションアクチュエータを停止する、
制御方法において、
前記トランスミッションアクチュエータを停止する前に、一方のサブトランスミッションの所定のギヤが入れられている状態でシフトゲートにシフトフィンガの位置が検出されない場合、該信頼度が所定の閾値の下方へ降格されていても、前記トランスミッションアクチュエータを停止し、入れられているギヤでの非常動作を許可する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項2】
前記信頼度の降格後、かつ、前記ギヤ情報をリセットした後に、
前記ギヤ情報として、少なくとも、そのつど一方のサブトランスミッションで入れられているギヤと、当該サブトランスミッションのトランスミッションステータスとを検出する、請求項1記載の制御方法。
【請求項3】
入れられたギヤが識別されているが信頼度が所定の閾値を下回っているトランスミッションステータスにおいて、前記非常動作を作動する、請求項2記載の制御方法。
【請求項4】
前記入れられているギヤのギヤ情報を維持する、請求項3記載の制御方法。
【請求項5】
一方のサブトランスミッションの入力回転数及び出力回転数を検査することにより、入れられているギヤの相関検査を行う、請求項3又は4記載の制御方法。
【請求項6】
相関検査の結果がポジティブであった場合のみ、前記ギヤ情報を維持する、請求項5記載の制御方法。
【請求項7】
相関検査の結果がネガティブであった場合、前記障害モードを、前記トランスミッションアクチュエータを停止させたうえで作動する、請求項5記載の制御方法。
【請求項8】
前記信頼度の降格後、入れられたギヤが識別できない場合には、
前記障害モードを、前記トランスミッションアクチュエータを停止させたうえで作動する、請求項2記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ複数のギヤを有する2つのサブトランスミッションが設けられており、インクリメント式に検出され、絶対位置との比較によって較正された位置に基づいてギヤ情報を求め、求められたギヤ情報により、トランスミッションアクチュエータの少なくとも1つのシフトフィンガが切り替えられるべきギヤのシフトゲートへ調整され、各サブトランスミッションでは構造に起因して唯一のギヤのみを入れることができる、パラレルトランスミッションの制御方法であって、連続的にギヤ情報の正確性を表す信頼度が求められ、この信頼度の状態に依存して、通常モードが実行される、又は、ギヤ情報のリセットをともなう障害モードが実行されるとともにトランスミッションアクチュエータが停止される制御方法に関する。
【0002】
それぞれ複数のギヤを有する2つのサブトランスミッションを含むパラレルトランスミッションは、特にドライブトレインにおいて知られている。この場合、2つのサブトランスミッションは選択的に内燃機関によって駆動される。内燃機関とサブトランスミッションとの間には各サブトランスミッションに対応する摩擦クラッチが配置されているが、この摩擦クラッチを選択操作してサブトランスミッションを切り換えることにより、力の遮断なしに負荷の切り換えを行うことができる。ギヤシフトは、例えば、国際公開第2006/097073号明細書、独国公開第102005036895号明細書、独国公開第10206561号明細書などの刊行物から知られるトランスミッションアクチュエータによって行われる。当該トランスミッションアクチュエータにより、シフトゲートに位置しているいずれかのギヤへの切り替えが行われ、場合によっては入れられているギヤが解除されるので、各サブトランスミッションではそのつど1つのギヤのみが入れられることになる。
【0003】
トランスミッションアクチュエータの切り替え(シフト)のストロークは、距離センサによって求められ、基準位置などの絶対位置によって学習される。距離センサとは、ギヤを操作するシフトフィンガの相対位置をインクリメント式に検出するセンサである。この場合、シフトフィンガで検出された位置と計算された位置とが連続的に比較される。トランスミッションアクチュエータにエラー又は妥当でない運動が起こると、例えば独国公開第102010009735号明細書もしくは独国公開第102006043075号明細書から知られる信頼度は低減される。ただし、引き続いてエラーが生じなければ、信頼度は再び増大される。
【0004】
エラーが複数回反復して生じたり、及び/又は、長い期間にわたって持続したりする場合には、信頼度が所定の閾値の下方へ補正され、対抗措置が導入される。この場合、危機的なシフト状況を回避するために、制御装置に格納されたギヤ情報がいったん消去され、例えばモータの出力段を電流オフへ切り替えることによってトランスミッションアクチュエータが停止される。このようなケースでは、その時点でのトランスミッション位置が維持されるが、これは、トランスミッションの現在の設定が浮遊してしまうことを意味する。この場合、車両をもはや動作させることができず、スリップにいたる。
【0005】
本発明の課題は、信頼度の低下による車両の動作不能の頻度を少なくすることである。
【0006】
この課題は、それぞれ複数のギヤを有する2つのサブトランスミッションが設けられており、インクリメント式に検出され、絶対位置との比較によって較正された位置に基づいてギヤ情報を求め、求められたギヤ情報により、トランスミッションアクチュエータの少なくとも1つのシフトフィンガを、切り替えられるべきギヤのシフトゲートへ調整し、各サブトランスミッションでは構造に起因して唯一のギヤのみを入れることができる、パラレルトランスミッションの制御方法であって、連続的にギヤ情報の正確性を表す信頼度を求め、この信頼度の状態に依存して、通常モードを実行する、又は、ギヤ情報のリセットをともなう障害モードを実行するとともにトランスミッションアクチュエータを停止する方法において、一方のサブトランスミッションのギヤが入れられている状態でシフトゲートにシフトフィンガが検出されないために信頼度がリセットされた場合、この信頼度を所定の閾値の下方へ降格させたうえで入れられているギヤでの非常モードが許可することにより、解決される。入れられているギヤの妥当性検査と当該ギヤでの非常動作とによって、リンプホームモードの形態でのギヤ情報のリセットによる車両の動作不能を回避することができる。
【0007】
或るギヤが入れられたが、シフトフィンガが当該ギヤを解除可能なシフトゲートに位置せずに動いている場合、エラーケースとなって、ギヤが入っていないという評価は行われない。トランスミッションアクチュエータの評価が現状固定され、トランスミッションでのそれ以降の動作が行われないことにより、エラーが続いて信頼度が所定の閾値の下方へ降格されてギヤ情報その他がリセットされても、危機的なシフト状態なしで非常動作を作動できる。
【0008】
ここで、有利には、ギヤ情報として、少なくとも、そのつど一方のサブトランスミッションで入れられているギヤと、当該サブトランスミッションのトランスミッションステータスとが検出される。サブトランスミッションのステータスは、種々の値を取ることができる。例えば、サブトランスミッションの状態不明を表す「アンノウン」、全てのギヤが解除されていることを表す「ノミナルニュートラル」、或るシフトフィンガがシフトゲートへアクティブに操作された後であって全てのギヤの解除が妥当であると確認されたことを表す「ハイコンフィデンシャルニュートラル」、或るギヤがシフト方向で同期装置へ移動されたために既にトルク伝達が可能となっていることを表す「パーシャル」、或るギヤが同期位置を超えてギヤ終位置へ移動されたことを表す「エンゲージド」、シフト方向でのシフトフィンガの操作により入れられたギヤがギヤ終位置へ達していて妥当であると確認されたことを表す「プローブド」が挙げられる。或るギヤの解除は、同じサブトランスミッションにおける他のギヤの投入によって、又は、ニュートラル位置への移行によって可能となるので、いずれのギヤも入らなければ「ノミナルニュートラル」の値が生じる。
【0009】
新たなギヤの投入と同時に、同じサブトランスミッションの他の全てのギヤがシフトゲートの割り当てに関係なく解除されるトランスミッションアクチュエータでは、トランスミッションステータスはシフトフィンガの位置と先行して切り替えられていたギヤの履歴との双方に依存する。これは、シフトフィンガが必ずしも入れられたギヤのバックグラウンドに留まっているわけではないからである。したがって、ギヤ情報がリセットされると、どのギヤが入れられていたかという情報も消去される。信頼度が再び形成されると、シフトフィンガの妥当性検査により、入れられているギヤへの対応づけが行われる。トランスミッションアクチュエータが停止された場合、双方のサブトランスミッションで「エンゲージド」もしくは「プローブド」の値を有するギヤが入っているギヤとして維持される。2つのサブトランスミッションの双方に「エンゲージド」もしくは「プローブド」のギヤが存在する場合、当該ギヤでの非常動作を作動することができる。このときには、2つのサブトランスミッション間の摩擦クラッチの切り離しにより、サブトランスミッションが切り替えられる。一方のサブトランスミッションのみに「エンゲージド」もしくは「プローブド」のギヤが存在する場合、唯一のギヤでの非常動作へ移行する。上記値が一方のサブトランスミッションに存在しない場合には、当該サブトランスミッション全体が「アンノウン」にセットされる。2つのサブトランスミッションの双方が「アンノウン」にセットされた場合、車両は動作不能となる。
【0010】
さらに、信頼度を降格して非常動作を行う際の機能確実性をいっそう高めるために、相関検査により、取得されたギヤ情報の確認が行われる。この確認は、一方もしくは双方のサブトランスミッションの入力回転数と出力回転数とを比較することで行われる。2つの回転数信号が相関していれば、該当するギヤが入っていることを基礎とできる。また、通常時の変換比が既知であれば、入れられているギヤの変換比を求めることができる。例えば、入力回転数は、トランスミッション入力軸の回転数センサによって求めることができるか、又は、滑りなしに駆動される摩擦クラッチが設けられているケースでは内燃機関回転数に基づいて求めることができ、また、出力回転数は、車輪回転数センサによって求めることができる。
【0011】
相関検査の結果、エラーが識別されると、当該サブトランスミッションに対するギヤ情報は消去され、当該トランスミッションに対して非常動作プログラムが開始される。これは、誤ったギヤが入っていると識別されたこと、又は、シフトフィンガによる基準化が続いて誤ったギヤが解除されたことに基づいている。このときには、非常動作による車両の確実な動作は不可能である。例えば必要な回転数センサ信号が得られないなど、そもそも相関検査が不可能な場合には、エラーが再補正されて信頼度が再び形成されるようになるまで、取得されたギヤ情報が維持される。エラーが残留したときのシフトフィンガの後続の運動は確認できないので、ギヤ情報は消去され、当該サブトランスミッションは「アンノウン」にセットされる。
【0012】
本発明を
図1,
図2に示されている実施例に則して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】信頼度の降格後のギヤ情報の評価のフローを示す図である。
【
図2】入れられたギヤの相関検査を行う装置を示す図である。
【0014】
図1には信頼度の降格後のギヤ情報の評価のフロー1が示されている。ここで、フロー1が開始された後、分岐2で、パラレルトランスミッションのギヤを操作するトランスミッションアクチュエータのシフトフィンガの位置に対する信頼度が降格されたか否かが検査される。降格がなかった場合には、ブロック4で通常のギヤ識別が行われ、信頼度の変更なしにトランスミッションアクチュエータの駆動が続行され、ブロック3でフロー1が終了する。信頼度が降格されていた場合には、分岐5で、サブトランスミッションごとに、ギヤ情報に値「エンゲージド」又は「プローブド」が含まれているかが検査される。ここで、「エンゲージド」とはギヤが入れられていることを表し、「プローブド」とは入れられたギヤが確認されたことを表す。ギヤ情報にこれらの値が含まれていなかった場合、対応するサブトランスミッションのギヤ情報の値がブロック6で値「アンノウン」へセットされ、フロー1がブロック3で終了される。この場合、シフトステータスなどの安全に関する危機的な駆動状態が防止されるよう、当該サブトランスミッションは停止される。ギヤ情報に値「エンゲージド」又は「プローブド」が含まれていた場合には、分岐7で、入れられたギヤの相関検査が行われる。
【0015】
図2には、相関検査装置8が概略的に示されている。この場合、サブトランスミッション9では、「エンゲージド」又は「プローブド」と評価されたギヤ10の変換比i
Gearが相関検査にかけられる。この検査は、ルーチン11で、入力回転数n
Inputと出力回転数n
Outputとを、式
n
Input=n
Output/i
Gear
にしたがって相関させることにより行われる。相関結果が計算で求められた入力回転数に対して設定された相関間隔で存在する場合には、
図1のブロック12でギヤ情報が維持され、フロー1がブロック3で終了される。続いて、維持されたギヤ情報に依存して、パラレルトランスミッションの以降の動作のための措置、例えば入れられているギヤでの非常動作が作動される。分岐7での相関検査がネガティブな結果を生じた場合には、ギヤ情報は
図1のブロック6で値「アンノウン」へセットされ、トランスミッションアクチュエータが停止される。
【符号の説明】
【0016】
1 フロー、 2,5,7 分岐、 3,4,6,12 ブロック、 8 相関検査装置、 9 サブトランスミッション、 10 ギヤ、 11 ルーチン