(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送信タイミング変更リストの前記送信タイミングパターンにおける送信タイミングは、前記交流電源からの入力電圧の電圧波形のゼロクロスポイントと前記第2の制御装置からの前記メッセージの受信時間との時間差が前記閾値以下とならないよう設定され、
前記送信タイミングパターンは、連続する複数回の送信タイミングを含み、
前記連続する複数回分の送信タイミングの合計時間が、前記送信タイミングパターンの周期となる、
請求項3または4に記載の電力変換制御システム。
前記送信タイミング変更メッセージ送信部は、前記送信タイミング変更要否判定部がメッセージ送信タイミングの変更要否の判定に使用したメッセージに対する送信タイミング変更メッセージを送信する、
請求項3から5までのいずれか1項に記載の電力変換制御システム。
前記送信タイミング変更メッセージ送信部は、前記送信タイミング変更要否判定部がメッセージ送信タイミングの変更要否の判定に使用したメッセージと当該メッセージと同一の送信周期を有する他のメッセージとの両方に対する送信タイミング変更メッセージを送信する、
請求項3から5までのいずれか1項に記載の電力変換制御システム。
前記電力変換制御装置の前記送信タイミング変更メッセージ送信部が前記第2の制御装置に対して前記送信タイミング変更メッセージを送信することにより、前記第2の制御装置の前記送信タイミング変更部は、当該送信タイミング変更メッセージに含まれる前記リスト番号に対応する前記グループに含まれる前記送信タイミングパターンに対応する全ての種別の前記メッセージの送信タイミングパターンを同時に変更する、
請求項9に記載の電力変換制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態に係る電力変換制御システムについて、図面に基づいて説明する。なお、各図において、同一符号は、それぞれ、同一又は相当する部分を示す。
【0015】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る電力変換制御システムの構成を示す図である。ただし、
図1では、この発明に直接関与しない構成要素については、図示を省略している。
【0016】
図1に示すように、この発明の実施の形態1による電力変換制御システムは、第1の制御装置としての電力変換制御装置20と、第2の制御装置30とで構成されている。第2の制御装置30は、
図1においては、1つのみが記載されているが、複数個の第2の制御装置30を設けるようにしてもよい。電力変換制御装置20と第2の制御装置30とは、電動車両10に搭載されている。電力変換制御装置20と第2の制御装置30とはCANネットワーク40を介して接続されている。CANは、CSMA/CA方式の通信プロトコルである。
【0017】
電動車両10の外部には、交流電源50が設けられている。交流電源50と電動車両10とはコネクタ60を介して接続される。
【0018】
電力変換制御装置20は、コネクタ60を介して交流電源50に接続される。電力変換制御装置20は、交流電源50から供給される交流電力を直流電力に変換するための電力変換装置(図示省略)を内部に有している。
【0019】
第2の制御装置30は、予め設定された送信タイミングパターンで、電力変換制御装置20に対して、メッセージを送信する。第2の制御装置30が複数個設けられている場合には、第2の制御装置30ごとに、異なる送信タイミングパターンが設定されている。
【0020】
図1に示すように、電力変換制御装置20は、電圧検出部110と、ゼロクロス検出部120と、ゼロクロスポイント時間間隔算出部130と、力率改善処理部140と、通信インターフェース部170と、メッセージ受信時間取得部180と、送信タイミング変更要否判定部160と、送信タイミング変更メッセージ送信部150とから構成されている。
【0021】
電圧検出部110は、交流電源50から入力される入力電圧を計測する。
【0022】
ゼロクロス検出部120は、電圧検出部110で検出した入力電圧に基づいて、入力電圧の電圧波形のゼロクロスポイントを検出する。なお、ゼロクロスポイントとは、
図5に示すように、電圧値が0になる時刻のことである。以下では、この時刻を、ゼロクロスポイントまたはゼロクロスポイントの検出時間と呼ぶこととする。
【0023】
ゼロクロスポイント時間間隔算出部130は、ゼロクロス検出部120で検出されたゼロクロスポイントに基づいて、隣接するゼロクロスポイント間の時間間隔(以下、ゼロクロスポイント時間間隔と呼ぶ)を算出する。ゼロクロスポイント時間間隔は、交流電源50の周波数により変化する。具体的には、交流電源50が50Hzの場合は、ゼロクロスポイント時間間隔は10msとなり、交流電源50が60Hzの場合は、ゼロクロスポイント時間間隔は8.3msとなる。従って、ゼロクロスポイント時間間隔算出部130によってゼロクロスポイント時間間隔を検出することで、交流電源50が50Hzなのか60Hzなのかを判定することができる。
【0024】
力率改善処理部140は、ゼロクロス検出部120で検出されたゼロクロスポイントに基づいて、力率改善処理を行う。具体的には、力率改善処理部140は、検出されたゼロクロスポイントに基づいて、交流電源50からの入力電流の目標になる基準電流波形を算出する。力率改善処理部140は、基準電流波形に従って、電力変換制御装置20に設けられた電力変換装置(図示省略)を構成するスイッチング素子(図示省略)のON/OFFを制御する。これにより、力率改善処理部140は、交流電源50から供給される電力の力率を改善することができる。
【0025】
通信インターフェース部170は、CANネットワーク40を介して、第2の制御装置30との間で通信のやりとりを行う。
【0026】
メッセージ受信時間取得部180は、通信インターフェース部170が第2の制御装置30からメッセージを受信したときに、当該メッセージの受信時間を求める。
【0027】
送信タイミング変更要否判定部160には、ゼロクロス検出部120によるゼロクロスポイントの検出時間が入力される。さらに、送信タイミング変更要否判定部160には、メッセージ受信時間取得部180で算出された第2の制御装置30からのメッセージの受信時間が入力される。送信タイミング変更要否判定部160は、ゼロクロスポイントの検出時間とメッセージの受信時間とに基づいて、第2の制御装置30のメッセージの送信タイミングの変更の要否を判定する。
【0028】
送信タイミング変更メッセージ送信部150は、送信タイミング変更要否判定部160の判定結果に基づいて、送信タイミング変更メッセージを生成する。
具体的には、送信タイミング変更メッセージ送信部150は、送信タイミング変更要否判定部160が、メッセージの送信タイミングの変更が必要であると判定した場合に、送信タイミング変更メッセージを生成する。
送信タイミング変更メッセージの生成方法の詳細については後述するので、ここでは、簡単に説明する。
送信タイミング変更メッセージ送信部150は、第2の制御装置30が有する送信タイミング変更リストの各送信タイミングパターンに対して付されたリスト番号(
図8の表1参照)を予め記憶している。
送信タイミング変更メッセージ送信部150は、ゼロクロスポイント時間間隔に基づいて、すなわち、交流電源50が50Hzか60Hzかに基づいて、送信タイミング変更リストの中から該当する送信タイミングパターンを選択する。
送信タイミング変更メッセージ送信部150は、こうして、第2の制御装置30に対してメッセージの送信タイミングを変更するように指示するメッセージ送信タイミング変更指令と、選択した送信タイミングパターンを指定するための情報とを含む、送信タイミング変更メッセージを生成する。当該情報を、以下では、リスト番号と呼ぶこととする。
送信タイミング変更メッセージ送信部150は、こうして生成した送信タイミング変更メッセージを、第2の制御装置30に対して送信する。
【0029】
第2の制御装置30は、
図1に示すように、通信インターフェース部310と、送信タイミング変更部320と、送信タイミング変更リスト記録部330とから構成されている。なお、
図1においては、1つの第2の制御装置30だけを図示しているが、複数の第2の制御装置30が設けられている場合には、各第2の制御装置30に搭載される、通信インターフェース部310、送信タイミング変更部320、および、送信タイミング変更リスト記録部330は、同じ機能および同じ構成を有している。しかしながら、各第2の制御装置30における、その他の処理を行う部分(図示省略)の機能および構成については、各第2の制御装置30間で互いに異なっていても良い。
【0030】
通信インターフェース部310は、CANネットワーク40を介して、電力変換制御装置20との間で通信のやりとりを行う。
【0031】
送信タイミング変更リスト記録部330は、後述する
図8の表1に示す送信タイミング変更リストを予め記憶している。送信タイミング変更リストには、1以上の送信タイミングパターンが記憶されている。本実施の形態においては、これらの送信タイミングパターンは、交流電源50の周波数ごとに1以上のグループに区分されている。上述したリスト番号は、各グループに対して1つずつ付与されている。
【0032】
送信タイミング変更部320は、通信インターフェース部310が電力変換制御装置20から送信タイミング変更メッセージを受信したときに、当該送信タイミング変更メッセージに含まれるリスト番号に基づいて、電力変換制御装置20へメッセージを送信する送信タイミングパターンを変更する。
【0033】
次に、この発明の実施の形態1に係る電力変換制御システムにおける、送信タイミング変更手順について説明する。
図2は、電力変換制御装置20の動作を説明するフローチャートである。
【0034】
図2に示すように、ステップS10において、電力変換制御装置20は、メッセージ受信時間取得部180により、第2の制御装置30からメッセージを受信した受信時間を取得する。
【0035】
次に、ステップS20において、電力変換制御装置20は、ゼロクロス検出部120により、電圧検出部110で検出した交流電源50からの入力電圧に基づいて、入力電圧波形のゼロクロスポイントの検出時間を取得する。
【0036】
続くステップS30では、電力変換制御装置20は、送信タイミング変更要否判定部160により、ステップS10で取得したメッセージの受信時間と、ステップS20で算出したゼロクロスポイントの検出時間との時間差が、予め設定された閾値以内であるか否かの判定を行う。メッセージの受信時間とゼロクロスポイントの検出時間との時間差が閾値より大きい場合(NO)には、処理を終了する。一方、メッセージの受信時間とゼロクロスポイントの検出時間との時間差が閾値以内の場合(YES)には、ステップS40に進む。
【0037】
ステップS40では、電力変換制御装置20は、送信タイミング変更メッセージ送信部150により、ゼロクロスポイントの検出時間と第2の制御装置30からのメッセージ受信時間との時間差が上記の閾値以下とならないように、ゼロクロスポイント時間間隔算出部130によって算出されたゼロクロスポイント時間間隔に従って、第2の制御装置30のメッセージの送信タイミングパターンを送信タイミング変更リストから選択する。そうして、電力変換制御装置20は、送信タイミング変更メッセージ送信部150により、第2の制御装置30に対するメッセージ送信タイミング変更指令と、選択した送信タイミングパターンを指定する情報としてのリスト番号とを含む、送信タイミング変更メッセージを生成して、第2の制御装置30に対して送信する。
【0038】
なお、上記の説明においては、第2の制御装置30からのメッセージ受信時間が先で、ゼロクロスポイントの検出時間が後の場合を想定している。従って、メッセージの受信時間とは、メッセージの受信が完了した時点の時間を意味する。
しかしながら、上記の場合に限定することはなく、第2の制御装置30からのメッセージ受信時間とゼロクロスポイントの検出時間との時間差と閾値との比較を行えればよいので、ゼロクロスポイントの検出時間が先で第2の制御装置30からのメッセージ受信時間が後の場合でも同様の処理が可能なことはいうまでもない。但し、その場合には、メッセージの受信時間が、メッセージの受信が開始された時点の時間となることに留意されたい。
【0039】
次に、第2の制御装置30が電力変換制御装置20から送信タイミング変更メッセージを受信した時の動作を
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0040】
ステップS510では、第2の制御装置30は、通信インターフェース部310が、電力変換制御装置20から、送信タイミング変更メッセージを受信したか否かの判定を行う。送信タイミング変更メッセージを受信していない場合(NO)は処理を終了し、送信タイミング変更メッセージの受信を待つ。一方、送信タイミング変更メッセージを受信した場合(YES)には、ステップS520に進む。
【0041】
ステップS520では、第2の制御装置30は、送信タイミング変更部320により、送信タイミング変更リスト記録部330に記録された送信タイミング変更リストの中から、送信タイミング変更メッセージで指定された送信タイミングパターンを選択する。
【0042】
続くステップS530では、ステップS520で選択した送信タイミングパターンになるように、電力変換制御装置20へメッセージを送信する送信タイミングを変更する。
【0043】
図4は、本実施の形態1における、電力変換制御装置20から送信される送信タイミング変更メッセージ800のフォーマットを示す。送信タイミング変更メッセージ800は、ヘッダ801とペイロード802から構成されている。送信タイミング変更メッセージ800のヘッダ801は、SOF(Start Of Frame)、メッセージID、CRC(Cyclic Redundancy Check)などを含む。また、送信タイミング変更メッセージ800のペイロード802はリスト番号の情報を含んでいる。上述したように、第2の制御装置30が有する送信タイミング変更リストの送信タイミングパターンの各グループには、それを識別するための固有の番号が「リスト番号」として付されている。そのため、ペイロード802に、「リスト番号」の情報を入れておくと、第2の制御装置30は、当該「リスト番号」に基づいて、電力変換制御装置20が選択した送信タイミングパターンのグループがいずれであるかを認知することができる。従って、この「リスト番号」は、選択した送信タイミングパターンのグループを指定するための情報を構成している。
【0044】
図8に示す表1は、本実施の形態1における、送信タイミング変更リストを示す。なお、表1は、ゼロクロスポイントと受信時間との時間差に対する閾値を1msとした場合のリストである。送信タイミング変更リストは、送信タイミング変更リスト記録部330にあらかじめ記録されている。
【0045】
表1において、リスト番号は、上述したように、送信タイミングパターンの各グループに対して付与された識別番号である。そのため、リスト番号によって、送信タイミングパターンのグループを特定することができる。従って、リスト番号は、電力変換制御装置20からの送信タイミング変更メッセージ800で指定され、第2の制御装置30が送信タイミング変更リストから該当する送信タイミングパターンを選択するための情報である。リスト番号は、ゼロクロスポイント時間間隔によって選択される。ゼロクロスポイント時間間隔は、交流電源50が50Hzの場合は10msで、60Hzの場合は約8.3msとなる。表1の送信タイミング変更リストは、交流電源50が50Hzの場合、すなわち、ゼロクロスポイント時間間隔が10msの場合を、リスト番号1とし、交流電源50が60Hzの場合、すなわち、ゼロクロスポイント時間間隔が8.3msの場合を、リスト番号2として、送信タイミングパターンを定めている。
【0046】
また、表1において、IDは、第2の制御装置30が送信し、電力変換制御装置20が受信する、各メッセージを識別するためのIDである。IDは、各メッセージの種別ごとに付与されている。
【0047】
表1に示されるように、リスト番号1のグループの中に、IDが、ID101,ID102,ID201,ID501の4つのメッセージの送信タイミングパターンが含まれている。また、同様に、リスト番号2のグループの中に、IDが、ID101,ID102,ID201,ID501の4つのメッセージの送信タイミングパターンが含まれている。従って、交流電源50が50Hzの場合には、ID101,ID102,ID201,ID501の各メッセージは、表1のリスト番号1のID101,ID102,ID201,ID501にそれぞれ対応する送信タイミングパターンで送信される。同様に、交流電源50が60Hzの場合には、ID101,ID102,ID201,ID501の各メッセージは、表1のリスト番号2のID101,ID102,ID201,ID501にそれぞれ対応する送信タイミングパターンで送信される。
【0048】
表1において、送信周期は、各IDのメッセージの送信周期を示す。この送信周期は、送信タイミングパターンが、リスト番号2のID101,102,201のように、連続する複数回の送信タイミングを含んでいる場合には、複数回分の送信タイミングの平均時間間隔として定められる。
【0049】
また、表1において、送信開始遅延は、第2の制御装置30が送信タイミング変更メッセージを受信した時間を0とし、次の周期送信を開始するまでの送信遅延時間を示す。
【0050】
また、表1において、1cycle回数は、当該列の右側に記載の送信タイミングを何回実施で1cycleとするかを示す。例えば、1cycle回数が1であれば、cycle1回目送信に記載の時間だけ間隔をあけて送信し、それを繰り返す。また、1cycle回数が5であれば、cycle1回目送信の後、cycle2回目送信に記載の時間だけ間隔をあけて2回目の送信を行い、続いて、cycle3回目送信に記載の時間だけ間隔をあけて3回目の送信を行い、続いて、cycle4回目送信に記載の時間だけ間隔をあけて4回目の送信を行い、続いて、cycle5回目送信に記載の時間だけ間隔をあけて5回目の送信を行い、そして、cycle5回目の送信の次はcycle1回目送信に戻ることを示す。
【0051】
従って、「1cycle回数が1」の送信タイミングパターンの周期は、「cycle1回目送信」に記載の時間となる。具体的には、リスト番号1のID101、ID102の送信タイミングパターンの周期は共に10ms、ID201は20msとなる。一方、「1cycle回数が5」の送信タイミングパターンの周期は、「cycle1回目送信」から「cycle5回目送信」までに記載の時間の合計となる。具体的には、リスト番号2のID101の送信タイミングパターンの周期は、10ms+10ms+12.4ms+8.3ms+9.3ms=50msとなる。
【0052】
図5、
図6、及び、
図7は、本実施の形態1における、送信タイミング変更を行った場合の送信タイミングの概要図である。
図5及び
図6は交流電源が50Hzの場合、
図7は交流電源が60Hzの場合を示す。
図5では、第2の制御装置30が送信するメッセージのうち、ID101とID102のメッセージを例にあげて図示している。なお、電力変換制御装置20が送信する送信タイミング変更メッセージ800のIDを、ID001とする。
【0053】
図5の例において、まず、送信タイミング変更要否判定部160が、第2の制御装置30からID101のメッセージを受信した受信時間とゼロクロスポイントの検出時間との時間差が0.5msであり、閾値の1.0ms以下であると判定する。このとき、第2の制御装置30からのID101のメッセージの受信時間は、受信を完了した時刻とする。
当該判定結果を受けて、送信タイミング変更メッセージ送信部150が、送信タイミングパターンを指示するためのリスト番号を含んだ、ID001の送信タイミング変更メッセージ800を送信する。このとき、ゼロクロスポイント時間間隔算出部130がゼロクロスポイント時間間隔が10msであると算出しているため、送信タイミング変更メッセージ送信部150は、送信タイミングパターンを選択するためのリスト番号として、リスト番号1を選択する。
【0054】
なお、ID001の送信タイミング変更メッセージ800の送信は、ゼロクロスポイントの検出時間を基準として、当該基準から予め設定されたディレイタイムが経過した後に実行される。
【0055】
その理由を説明する。
送信タイミング変更要否判定部160が、第2の制御装置30からのメッセージ受信時間とゼロクロスポイントの検出時間との時間差が閾値の1ms以内であるか否かを判定してから、送信タイミング変更メッセージ送信部150が、送信タイミング変更メッセージ800を送信する。従って、送信タイミング変更メッセージ800の送信は、すぐには行えないため、ゼロクロスポイントを基準としたディレイタイムを設定しておく。ここでは、ディレイタイムは、1msと設定されている。
【0056】
なお、上記の説明においては、メッセージ受信時間とゼロクロスポイントの検出時間との時間差に対する閾値を1msとして説明しているが、この場合に限らず、閾値は適宜他の値に設定してもよい。また、同様に、送信タイミング変更メッセージ800の送信のディレイタイムを、ゼロクロスポイントから1ms後として説明したが、これについても、特に限定する必要はなく、適宜他の値に設定してもよい。但し、いずれの場合においても、各メッセージの受信時間とゼロクロスポイントの検出時間とが重ならないように、閾値およびディレイタイムを設定する必要がある。
【0057】
第2の制御装置30がID001の送信タイミング変更メッセージ800を受信すると、それに基づいて、送信タイミング変更部320は、送信タイミング変更リスト記録部330の送信タイミング変更リストからリスト番号1の送信タイミングパターンを選択し、各IDに対応するメッセージの送信タイミングを変更する。具体的には、表1の送信タイミングパターンに従って、ID101では、送信タイミング変更メッセージ800の受信完了後、送信開始遅延時間1msとcycle1回目送信の時間10msとの和となる11ms後が次のID101のメッセージの送信タイミングとなり、同様に、11.2ms後がID102のメッセージの送信タイミングとなる。その後の2回目以降の送信タイミングは、ID101及びID120の1cycle回数が共に1であるので、cycle1回目の送信タイミングと同じ10ms間隔で順次送信される。
【0058】
さらに、
図6を用いて、ID001の送信タイミング変更メッセージ800が送信されてからの、ID101、ID102、ID201、ID501の送信タイミングを説明する。
図6では、ID001のメッセージ800の受信完了時間を0msとして、ゼロクロスポイントの検出時間および各IDのメッセージの送信時間を示している。ID001のメッセージ800は、ゼロクロスポイントから1ms後に送信されるため、判定に用いられた図示されていないゼロクロスポイントは−1msとなる。また、ゼロクロスポイント時間間隔は10msであるため、従って、続くゼロクロスポイントは9ms、19ms、29ms、・・・、69msとなる。また、ID101のメッセージは、上述したように、11ms(10ms+1ms)の後、11ms、21ms、・・・のタイミングで10ms周期で送信され、ID102のメッセージは、11.2ms(10ms+1.2ms)の後、11.2ms、21.2ms、・・・のタイミングで10ms周期で送信される。また、ID001を受信した第2の制御装置30は、前記ID101とID102と同様の処理をID201、ID501についても行うので、ID201は23ms(=20ms+3ms)の後、43ms、63ms、・・・のタイミングで20ms周期で送信され、ID501は55ms(50ms+5ms)の後、
図6では図示していないが、105ms、155ms、・・・のタイミングで50ms周期で送信される。このようにして、
図6で示したゼロクロスポイントと各IDのメッセージの送信タイミングの時間とから明らかなように、ゼロクロスポイントと各送信タイミングの時間差を、閾値の1msより大きくすることができる。
【0059】
図6の例では、「cycle1回目送信」で決定される送信周期を、ゼロクロスポイント時間間隔の10msの整数倍に設定している。従って、「送信開始遅延時間」を設定することで、各メッセージの送信タイミングをゼロクロスポイントからずらすようにすれば、常に、各メッセージの受信時間とゼロクロスポイントとが重なることを防止することができる。そこで、
図6の例では、ID001のメッセージ800の送信のディレイタイムを1msとし、各IDの「送信開始遅延時間」を、それぞれ、9ms未満の正の値にした。ここで、9ms未満とする理由は、ゼロクロスポイント時間間隔が10msであるため、9msとすると、ID101の送信タイミングが19msとなり、ゼロクロスポイントと重なってしまうためである。こうすることで、ID101のメッセージの受信時間についてはゼロクロスポイントとの時間差が常に2msとなり、同様に、ID102では時間差が2.2msとなり、ID201では4msとなり、ID102では6msとなり、いずれの時間差についても、閾値の1ms以上を確保することができる。
【0060】
次に、交流電源50が60Hzの場合について
図7を用いて説明する。ID001を送信した時間を0msとしてゼロクロスポイントの時間および各IDの送信時間を示している。交流電源50が60Hzであるので、ゼロクロスポイントの検出時間は、7.33ms、15.67ms、24ms、32.33ms、・・・、124msとなる。なお、小数点表記が必要な時間については、小数点第3位を四捨五入して表現している。また、交流電源50が60Hzであるので、ID001の送信タイミング変更メッセージ800に含まれる送信タイミングを選択するための情報はリスト番号2となる。
【0061】
第2の制御装置30が、ID001の送信タイミング変更メッセージ800を受信すると、送信タイミング変更部320は、送信タイミング変更リスト記録部330からリスト番号2の送信タイミングパターンを選択し、それぞれのIDに対応するメッセージの送信タイミングを変更する。ID101のメッセージでは、ID001のメッセージ800を受信してから、送信開始遅延時間1msとcycle1回目送信時間10msの和となる11ms後が次のID101の送信タイミングとなり、続いてcycle2回目送信時間10ms後の21ms、続いてcycle3回目送信時間12.4ms後の33.4ms、続いてcycle4回目送信時間8.3ms後の41.7ms、続いてcycle5回目送信時間9.3ms後の51ms、続いては1cycle回数が5であるのでcycle1回目送信時間10ms後の61msがID101の送信時間となり、以降、同様に繰り返される。ID102のメッセージでは、送信開始遅延時間が1.2msであるので、11.2ms、21.2ms、33.6ms、41.9ms、51.2ms、・・・が送信タイミングとなる。ID201でも同様の処理となり、22.5ms、42.5ms、62.5ms、83.5ms、102.5ms、122.5ms、・・・が送信タイミングとなる。ID501では、送信開始遅延時間5msとcycle1回目送信時間50msの和となる55ms後が次の送信タイミングとなり、続いては1cycle回数が1であるのでcycle1回目送信時間50ms後の105msが送信時間となり、以降繰り返される。このようにして、
図7で示したゼロクロスポイントと送信タイミングの時間から明らかなように、ゼロクロスポイントと送信タイミングの時間間隔は1msより大きくすることができる。
【0062】
また、1cycle回数が5のID101、ID102、ID201について送信5回分の平均周期時間を計算すると、それぞれID101、ID102が10ms、ID201が20msとなり、あらかじめ定められた送信周期と一致する。
【0063】
このように、
図7の例では、「送信開始遅延時間」を設定するとともに、「cycle1回目送信」から「cycle5回目送信」までの送信タイミング間隔をゼロクロスポイントと重ならないように設定することで、常に、各メッセージの受信時間とゼロクロスポイントとが重なることを防止することができる。また、送信タイミングパターンの周期を、平均周期時間で設定される「送信周期」とゼロクロスポイント時間間隔の公倍数に設定しているので、「1cycle回数」の送信が完了すると、「cycle1回目送信」に戻ってリセットされるため、ゼロクロスポイントとの時間差が徐々に狭まって最終的に重なってしまうという現象の発生を抑えることができる。
【0064】
図7の例では、ID001のメッセージ800の送信のディレイタイムを1msとし、表1に示すように、各IDの「送信開始遅延時間」を、それぞれ、1〜5msの範囲の正の値にした。ここで、当該範囲内とする理由は、ゼロクロスポイント時間間隔が8.3msであるため、当該範囲外の場合には、ゼロクロスポイントと重なってしまう可能性が高くなるためである。また、「cycle1回目送信」から「cycle5回目送信」までの送信タイミング間隔を、すべて、ゼロクロスポイントと重ならないように適宜設定している。こうすることで、ID101,ID102,ID201,ID501の各メッセージの受信時間とゼロクロスポイントとの時間差を、常に、閾値の1ms以上に確保することができる。
【0065】
以上のように、実施の形態1では、電力変換制御装置20は、送信タイミング変更要否判定部160が第2の制御装置30からのメッセージ受信時間とゼロクロス検出時間との差が閾値以下であると判定すると、送信タイミング変更メッセージを第2の制御装置30に対して送信する。送信タイミング変更メッセージを受信した第2の制御装置30は、送信タイミング変更メッセージで指定された送信タイミングを送信タイミング変更リスト記録部330から読みだして、送信タイミングを変更する。送信タイミング変更リストは、
電力変換制御装置20が第2の制御装置30から受信するメッセージの送信タイミングとゼロクロスポイントの検出時間との時間間隔が閾値以下とならないよう定められているので、送信タイミング変更後は、電力変換制御装置20がメッセージを受信する時間とゼロクロスポイントの検出時間との時間差が閾値より大きくなる。これにより、ゼロクロスポイントを通信処理による遅延なく検出でき、力率改善に使用する基準電流波形のずれを抑止でき、高い力率改善効果と得ることが可能となる。
【0066】
さらに、電力変換制御装置20が受信するメッセージ全てに対して、1回の送信タイミング変更メッセージで送信タイミングを変更できるので、ゼロクロスポイントを通信処理による遅延なく検出でき、迅速に移行することが可能となる。
【0067】
また、送信タイミング変更リストにおいて、複数回で1cycleとする送信タイミングパターンでは、規定された回数の送信タイミングの平均時間間隔が、該当するメッセージに定められた周期時間となっているので、電力変換制御への影響を小さくすることが出来る。
【0068】
なお、送信タイミング変更リストはゼロクロスポイントと送信タイミングとの差が閾値以下とならず、かつ、複数回で1cycleとするメッセージでは規定された回数の送信タイミングの平均時間間隔が該当するメッセージに定められた周期時間となるよう定義されていればよく、従って、表1に記載の値に限定されないことは自明である。
【0069】
また、送信タイミング変更リストは交流電源が50Hzと60Hzの場合だけでなく、その他周波数の場合のリストを定義しておいても良い。
【0070】
また、第2の制御装置30が複数であっても、それぞれが自身が送信するIDの送信時間を変更するという処理を行うことで、電力変換制御装置20が受信するメッセージ全ての送信タイミングを変更することが出来る。
【0071】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る電力変換制御システムの構成は、
図1に示した構成と同一であるため、ここでは、詳細な説明を省略する。実施の形態1と実施の形態2との相違点は、実施の形態2においては、
図8に示した表1の代わりに、
図9に示す表2を用いる点だけである。
【0072】
図9に示す表2は、本実施の形態2における、送信タイミング変更リストを示す。なお、表2は、ゼロクロスポイントの検出時間とメッセージの受信時間との時間差を1msとした場合のリストである。表2の送信タイミング変更リストは、送信タイミング変更リスト記録部330にあらかじめ記録されており、このことは実施の形態1と同様である。
【0073】
表1と表2との差異について説明する。表1と表2との差異は、リスト番号の付与の仕方である。
【0074】
表1では、上述したように、交流電源50が50Hzの場合をリスト番号1とし、交流電源50が60Hzの場合をリスト番号2とした。従って、ID101、ID102、ID201、ID501の各メッセージに対して、まとめて、リスト番号1または2が付与されている。
【0075】
一方、表2では、交流電源50が50Hzの場合をリスト番号1〜4とし、交流電源50が60Hzの場合をリスト番号5〜8とし、交流電源が50Hzの場合と60Hzの場合のそれぞれのIDごとに異なるリスト番号が付与されている。具体的には、交流電源50が50Hzの場合の、メッセージID101にリスト番号1、ID102にリスト番号2、ID201にリスト番号3、ID501にリスト番号4が付与されている。同様に、交流電源50が60Hzの場合の、メッセージID101にリスト番号5、ID102にリスト番号6、ID201にリスト番号7、ID501にリスト番号8が付与されている。
【0076】
表1と表2との差異は以上の通りであり、他の点においては、表1と表2は同じである。
【0077】
このように、表2のリスト番号は、交流電源が50Hzの場合と60Hzの場合のそれぞれのIDごとに振られている。これにより、交流電源50が50Hzの場合で、第2の制御装置30からのメッセージのIDがID101のときは、当該メッセージの受信時間とゼロクロス検出時間との時間差が閾値以下であると送信タイミング変更要否判定部160が判定すると、送信タイミング変更メッセージ送信部150は、リスト番号1をペイロード802に含んだ送信タイミング変更メッセージ800を第2の制御装置30に送信する。また、交流電源50が60Hzの場合で、第2の制御装置30からのメッセージのIDがID201のときは、当該メッセージの受信時間とゼロクロス検出時間との時間差が閾値以下であると送信タイミング変更要否判定部160が判定すると、送信タイミング変更メッセージ送信部150は、リスト番号7をペイロード802に含んだ送信タイミング変更メッセージ800を第2の制御装置30に送信する。
【0078】
このように、表2においては、メッセージのIDごとにリスト番号が付されているので、メッセージ送信タイミングの変更要否判定に使用したメッセージのみの送信タイミングを変更できるので、第2の制御装置30の処理量を減らすことができる。
【0079】
また、メッセージ送信タイミングの変更要否判定に使用したメッセージと同一の送信周期または同一の送信タイミングパターンを有するメッセージに対する送信タイミング変更メッセージを送信するようにしても良い。例えば、交流電源が50Hzの場合で、第2の制御装置30からのメッセージID101の受信時間とゼロクロス検出時間との時間差が閾値以下であると送信タイミング変更要否判定部160が判定すると、送信タイミング変更メッセージ送信部150は、リスト番号1とリスト番号2を含んだ送信タイミング変更メッセージ800を送信する。
【0080】
送信周期が短いメッセージはゼロクロスポイントと重なる可能性が高いことから、このようにして、メッセージ送信タイミングの変更要否判定に使用したメッセージだけでなく、同一の周期のメッセージも同時に送信タイミングを変更することで、第2の制御装置30の処理量を減らすことが可能となる。
【0081】
以上のように、本実施の形態によれば、上記の実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態においては、
図9に示した表2を用いることで、メッセージ送信タイミングの変更要否判定に使用したメッセージのみの送信タイミングを変更できるので、第2の制御装置30の処理量を減らすことができる。
【解決手段】電力変換制御装置20は、第2の制御装置30からのメッセージの受信時間とゼロクロスポイントの検出時間との時間差が閾値以下であると判定すると、送信タイミング変更メッセージを送信する。送信タイミング変更メッセージを受信した第2の制御装置30は、送信タイミング変更メッセージで指定された送信タイミングパターンを送信タイミング変更リスト記録部330から読みだして送信タイミングを変更する。