特許第6049012号(P6049012)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6049012改質グラフェンライク炭素材料の製造方法、改質グラフェンライク炭素材料、及び樹脂複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049012
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】改質グラフェンライク炭素材料の製造方法、改質グラフェンライク炭素材料、及び樹脂複合材料
(51)【国際特許分類】
   C01B 31/02 20060101AFI20161212BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20161212BHJP
   C08K 9/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   C01B31/02 101Z
   C08L101/00
   C08K9/00
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-223831(P2012-223831)
(22)【出願日】2012年10月9日
(65)【公開番号】特開2014-76909(P2014-76909A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年7月21日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.発行者名 2.刊行物名 高分子学会予稿集61巻 467ページ(別添)(発表ポスター 17枚) 3.発行年月日 平成24年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】坪川 紀夫
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−239746(JP,A)
【文献】 特開2008−239747(JP,A)
【文献】 M. MIYAKE et al.,Chemical Modification of Carbon Hexagonal Plane by Ligand Exchange Reaction of Ferrocene,Chem. Lett.,1999年,28,1037-1038.,DOI: 10.1246/cl.1999.1037
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00−31/36
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/16
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランフェンライク炭素材料と、官能基含有金属錯体とを触媒の存在下で反応させて、前記グランフェンライク炭素材料に前記官能基を導入する、改質グラフェンライク炭素材料の製造方法であって、
前記官能基が、ボロン酸基であり、該ボロン酸基が前記官能基含有金属錯体と前記グラフェンライク炭素材料との配位子交換反応を経て導入されるものであり、且つ
前記官能基含有金属錯体における前記金属が、Fe、Cu、Ti及びZrからなる群から選択された1種の金属である、改質グラフェンライク炭素材料の製造方法。
【請求項2】
前記触媒が、AlCl、FeCl、ZnCl、及びFeBrからなるいわゆるフリーデル・クラフツ触媒群から選択された少なくとも1種の触媒である、請求項1に記載の改質グランフェンライク炭素材料の製造方法。
【請求項3】
4−アミノアンチピリンとペルオキシターゼを用いたボロン酸基の定量法により測定したボロン酸基の量が、0.1mmol/g〜1mmol/gの範囲にある、改質グランフェンライク炭素材料。
【請求項4】
請求項3に記載の改質グランフェンライク炭素材料が樹脂中に分散されている、樹脂複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、官能基が導入された改質グラフェンライク炭素材料の製造方法、改質グラフェンライク炭素材料、及び改質グラフェンライク炭素材料を含む樹脂複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
黒鉛は、多数のグラフェンが積層されてなる積層体である。黒鉛を剥離することで、黒鉛よりも積層数が少ない薄片化黒鉛やグラフェンなどのグラフェンライク炭素材料が得られる。グラフェンライク炭素材料は、導電性や熱伝導性に優れるため、導電性材料や熱伝導性材料などへの応用が期待されている。
【0003】
また、グラフェンライク炭素材料と樹脂などとを複合化して、樹脂複合材料とすることも行われている。グラフェンライク炭素材料と樹脂との親和性を向上することなどを目的として、グラフェンライク炭素材料を改質することが知られている。例えば、下記の特許文献1には、カルボキシル基を含有するアゾ系ラジカル重合開始剤をラジカル分解して得られたフラグメントが、グラフェンシート構造を有する炭素材料に付加された変性炭素材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−169112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、官能基をグランフェンライク炭素材料に結合させた従来の構造では、グランフェンのエッジ部分に官能基が結合されている。従って、グランフェンのサイズが大きくなると、多くの官能基を結合させることができなかった。
【0006】
本発明の目的は、多くの官能基をグランフェンライク炭素材料に導入し得る、改質グランフェンライク炭素材料の製造方法、改質グランフェンライク炭素材料及び該改質グランフェンライク炭素材料を含む樹脂複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、グラフェンライク炭素材料に様々な官能基を導入する鋭意検討した結果、グラフェンライク炭素材料と、官能基含有金属錯体とを触媒の存在下で反応させれば、グラフェンライク炭素材料に官能基を高い割合で導入することを見出し、本発明を成すに至った。本発明に係る改質グラフェンライク炭素材料の製造方法は、グランフェンライク炭素材料と、官能基含有金属錯体とを触媒の存在下で反応させて、前記グランフェンライク炭素材料に前記官能基を導入することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、上記改質グラフェンライク炭素材料の製造方法、並びに該製造方法により得られる改質グラフェンライク炭素材料が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、本発明に係る改質グラフェンライク炭素材料が樹脂中に分散されている樹脂複合材料が提供される。
【0010】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0011】
(グラフェンライク炭素材料)
グラフェンライク炭素材料とは、グラフェンまたは薄片化黒鉛をいう。本発明において、薄片化黒鉛とは、1層のグラフェンにより構成されているグラフェンシートの積層体である。薄片化黒鉛は、元の黒鉛よりも薄い。薄片化黒鉛におけるグラフェンシートの積層数は、2以上であり、通常、200以下である。薄片化黒鉛としては、市販品が入手可能である。
【0012】
また、薄片化黒鉛は、従来公知の方法により製造することもできる。薄片化黒鉛は、黒鉛を剥離処理することなどにより得られる。より具体的には、薄片化黒鉛は、例えば、黒鉛の層間に硝酸イオンなどのイオンを挿入した後に加熱処理する化学的処理方法、黒鉛に超音波を印加するなどの物理的処理方法などの方法により得られる。
【0013】
グラフェンライク炭素材料は、アスペクト比の大きい形状を有する。そのため、後述の樹脂複合材料において、改質グラフェンライク炭素材料が均一に分散されていると、グラフェンライク炭素材料の積層面に交差する方向に加わる外力に対する補強効果を効果的に高められる。なお、改質グラフェンライク炭素材料のアスペクト比が小さすぎると、積層面に交差する方向に加わった外力に対する補強効果が充分でないことがある。改質グラフェンライク炭素材料のアスペクト比が大きすぎると、効果が飽和してそれ以上の補強効果を望めないことがある。よって、グラフェンライク炭素材料のアスペクト比は、50以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましい。また、グラフェンライク炭素材料のアスペクト比は、10000以下であることが好ましい。なお、本発明においてグラフェンライク炭素材料のアスペクト比とは、グラフェンライク炭素材料の厚みに対するグラフェンライク炭素材料の積層面方向における最大寸法の比をいう。
【0014】
樹脂複合材料の機械的強度を高めるためには、グラフェンライク炭素材料の平均粒子径は、1μm〜3mm程度であることが好ましく、10μm〜1mm程度であることがより好ましい。
【0015】
(官能基含有金属錯体)
本発明で用いられる官能基含有金属錯体としては、触媒の存在下でグラフェンライク炭素材料と反応して、該官能基含有金属錯体由来の官能基をグラフェンライク炭素材料に導入させ得る、適宜の官能基含有金属錯体を用いることができる。
【0016】
上記官能基としては、グラフェンライク炭素材料に導入される適宜の官能基を挙げることができる。より具体的には、上記官能基としては、カルボキシル基、ボロン酸基、水酸基、アミノ基などをあげることができる。好ましくは、カルボキシル基またはボロン酸基が官能基として導入される。これは、カルボキシル基が親水性を示し、しかも各種の機能性官能基へ変換できることや、ボロン酸基が親水性の糖と錯体を作る理由による。
【0017】
また、上記官能基含有金属錯体における上記金属としては、特に限定されず、Fe、Cu、Ti、及びZrからなる群から選択された一種の金属から用いられる。好ましくは、Fe、Cuなどが安価であり、試薬として入手し易いなどの理由により用いられ得る。
【0018】
上記官能基含有錯体の具体的な例としては、例えば1,1′‐フェロセンジカルボン酸(FCA)や、1,1′‐フェロセンジボロン酸(FBA)、1,1′‐フェロセンジアミン(FDA)、1,1′‐フェロセンジオール(FDO)などを挙げることができる。
【0019】
(触媒)
本発明に係る改質グラフェンライク炭素材料の製造方法では、上記グラフェンライク炭素材料と、上記官能基含有金属錯体とを触媒の存在下で反応させる。この触媒としては、使用する官能基含有金属錯体の種類に応じ、適宜の触媒を用いることができる。例えば、上記FCAやFBAを官能基含有金属錯体として用いる場合、例えばAlCl、FeCl、ZnCl、及びFeBrからなるいわゆるフリーデル・クラフツ触媒群から選択された少なくとも一種の触媒を用いることができる。
【0020】
(製造方法)
本発明では、上記グラフェンライク炭素材料と、官能基含有金属錯体とを、上記触媒の存在下で反応させる。本発明の一実施形態として、官能基含有金属錯体として、FCAまたはFBAを用い、触媒としてAlClを用いた場合の反応のメカニズムは以下の通りである。
【0021】
【化1】
【0022】
なお、上記反応メカニズムにおいて、FCAを用いた場合、R=COOHであり、FBAの場合にR=B(OH)である。
【0023】
官能基含有金属錯体の量は、グラフェンライク炭素材料に導入する官能基の量に応じて適宜選択すればよい。例えば、カルボキシル基を導入する場合には、グラフェンライク炭素材料100重量部に対し、前述した官能基含有金属錯体として例えばFCAを用いる場合、10〜100重量部程度を配合することが好ましい。それによって、カルボキシル基を充分な量をグラフェンライク炭素材料に導入することができる。
【0024】
また、上記官能基含有金属錯体として、前述したFBAを用いる場合には、グラフェンライク炭素材料100重量部に対し、10〜100重量部程度のFBAを配合することが好ましい。それによって、充分な量のボロン酸基をグラフェンライク炭素材料に導入することができる。
【0025】
上記触媒の量は、上記グラフェンライク炭素材料と官能基含有金属錯体との反応を活性化させ得る限り特に限定されず、例えば100重量部に対し1重量部以上、100重量部以下の割合で配合すればよい。
【0026】
上記反応の具体的な方法は特に限定されない。一例を挙げると、反応容器内にグラフェンライク炭素材料と、官能基含有金属錯体と、触媒と、適宜の溶媒または分散媒とを導入し、加熱下で反応させればよい。
【0027】
上記溶媒または分散媒としては特に限定されず、1,4−ジオキサン、トルエン、シクロヘキサノンなどを用いることができる。
【0028】
上記反応後に分散液から、触媒粉末をデカンテーションなどにより除去する。しかる後、遠心分離等により得られた改質グラフェンライク炭素材料を分離すればよい。
【0029】
なお、好ましくは、触媒由来の微量の金属を除去する操作をさらに施してもよい。例えば、得られた改質グラフェンライク炭素材料を、上記金属を溶解する酸に分散し、遠心分離する。しかる後、得られた改質グラフェンライク炭素材料をイオン交換水などを用いて洗浄すればよい。
【0030】
(改質グラフェンライク炭素材料)
本発明によれば、上記製造方法により改質グラフェンライク炭素材料が得られる。すなわち、本発明に係る改質グラフェンライク炭素材料が、グラフェンに上記官能基が導入されている構造を有する。この場合、官能基は、上記官能基含有金属錯体とグラフェンライク炭素材料とが反応することにより導入される。従って、配位子交換反応により官能基が導入される。そのため、グラフェンのエッジではなく、グラフェンの面に上記官能基含有金属錯体が配位して反応が進行とするため、官能基導入量を大幅に増大させ得る。
【0031】
例えば、官能基がカルボキシル基の場合、カルボキシル基の量は0.1mmol/g〜3mmol/gの範囲とすることができる。このカルボキシル基の量はNaHCOを用いたカルボキシル基の公知の定量方法により測定した値である。
【0032】
また、上記の官能基はボロン酸基である場合、ボロン酸基の導入量は、0.1mmol/g〜1mmol/gの範囲にある改質グラフェンライク炭素材料を得ることができる。このボロン酸基の量は、後述する実施例におけるボロン基の定量方法に従って求められた値である。
【0033】
なお、改質グラフェンライク炭素材料のアスペクト比は、上記のグラフェンライク炭素材料のアスペクト比と同様である。改質グラフェンライク炭素材料の平均粒子径は、上記のグラフェンライク炭素材料の平均粒子径と同様である。改質グラフェンライク炭素材料のグラフェンシートの積層数は、上記の薄片化黒鉛のグラフェンシートの積層数と同様である。
【0034】
(樹脂複合材料)
本発明に係る樹脂複合材料は、本発明により得られる改質グラフェンライク炭素材料が樹脂中に分散されている材料である。
【0035】
樹脂複合材料は、樹脂100質量部に対して、改質グラフェンライク炭素材料を0.01質量部〜40質量部程度含むことが好ましく、0.1質量部〜20質量部程度含むことがより好ましい。これにより、樹脂複合材料の機械的強度を効果的に高めることができる。
【0036】
樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。
【0037】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリジメチルシロキサン、これらのうち少なくとも2種の共重合体などが挙げられる。樹脂複合材料に含まれる熱可塑性樹脂は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0038】
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンは安価であり、加熱下の成形が容易である。このため、熱可塑性樹脂としてポリオレフィンを用いることにより、樹脂複合材料の製造コストを低減でき、樹脂複合材料を容易に成形することができる。
【0039】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体などのポリプロピレン系樹脂、ブテン単独重合体、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンの単独重合体または共重合体などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂が特に好ましい。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る改質グラフェンライク炭素材料の製造方法によれば、グラフェンライク炭素材料に上記官能基含有金属錯体が触媒の存在下で配位子交換反応により反応し、グラフェンライク炭素材料に該官能基含有金属錯体由来の官能基が導入されることとなる。従って、官能基の導入割合が高められた改質グラフェンライク炭素材料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明の効果を明らかにする。
【0042】
(実施例1)
大気中において、マグネティックスターラーが導入されている反応容器に、グラフェンとして薄片化黒鉛(グラフェン平均積層数=4、平均アスペクト比=1000)0.10gと、1,1′‐フェロセンジカルボン酸(FCA)0.10gと、触媒としてAlClを0.1gと、Al粉末(粒子径53〜150μm)0.005gと、分散媒として1,4−ジオキサン20mlとを加えた。撹拌しつつ反応温度80℃で、24時間反応させた。
【0043】
24時間反応後、メタノールを20mlを加え、AlClを失活させることにより反応を停止した。このようにして得たグラフェン分散液から、デカンテーションによりAl粉末を除去した。しかる後、グラフェン分散液を15000rpm及び1時間の条件で遠心分離した。遠心分離によりグラフェンライク炭素材料を分離した。得られたグラフェンライク炭素材料をテトラヒドロフルフラン50mlに投入し、超音波を15分間照射し、分散させた。しかる後、15000rpm×1時間の条件で分散液を遠心分離した。遠心分離後上澄み液を除去した。このTHFに分散させ遠心分離し上澄み液を除去する操作を3回繰り返した。このようにして、未反応のFCAを除去し、改質グラフェンライク炭素材料を得た。
【0044】
次に、微量のアルミニウムを除去するために、得られた改質グラフェンライク炭素材料を、1.0mol/LのHCl溶液中に分散させ、15分間の超音波を照射した。しかる後、15000rpm×1時間の遠心分離を3回繰り返し、その都度上澄みを除去した。このようにして得られた改質グラフェンライク炭素材料を、イオン交換水中に分散させ、15分間超音波を照射した後、15000rpm×1時間の条件で遠心分離を行った。しかる後、上澄みが中性になるまで上記遠心分離を繰り返した。このようにして、得られた生成物を真空下で50℃の温度で乾燥させた。上記のようにして精製された改質グラフェンライク炭素材料を得た。
【0045】
(実施例2)
実施例1で用いた1,1′‐フェロセンジカルボン酸(FCA)に換え、1,1′‐フェロセンジボロン酸(FBA)を用いたことを除いては、実施例1と同様にして改質グラフェンライク炭素材料を得た。
【0046】
(比較例)
還流冷却器を取り付けた100mlナス型フラスコにマグネティックスターラー、実施例1で用いた薄片化黒鉛0.2g、混酸(HNO/HSO=1/3(v/v))50mlを加え、マグネティックスターラーでかき混ぜながら40℃で10時間反応させた。反応後、反応生成物を大量の純水に注いで、濾過し、濾液が中性になるまで洗浄して、水酸基が導入された改質グラフェンライク炭素材料を得た。
【0047】
(実施例及び比較例の評価)
(1)カルボキシル基導入量の測定:周知のNaHCOを用いたカルボキシル基の定量方法により、カルボキシル基の量を測定した。
【0048】
その結果、実施例1では、カルボキシル基の量は0.6mmol/gであった。これに対して、比較例では、カルボキシル基の量は4.0mmol/gであったが、ヒドロキシル基も同時に導入(0.5mmol/g)され、カルボキシル基を優先的に導入することはできなかった。
【0049】
(2)ボロン酸基の導入量
実施例2で得た改質グラフェンライク炭素材料中のボロン酸基の量を以下の方法で定量したところ、0.5mmol/gであった。
【0050】
ボロン酸基の定量方法:フェノール4.3mmol/Lと、4−アミノアンチピリン(2mmol/L)と、ぺルオキターゼ4U/mLとを含むリン酸緩衝溶液を作製した。このリン酸緩衝溶液10mLを4本の試験管に投入した。この4本の試験管にそれぞれ、1、5、10、または20mmol/Lのグルコース溶液を1mLを加えた。しかる後、さらに0.1mg/mLのグルコースオキシダーゼ水溶液1mLを加えた。
【0051】
試験管にマグネティックスターラーを投入し、撹拌しつつ、反応温度30℃で2時間反応させ、しかる後0℃に冷やし、反応を停止した。反応後の溶液の色は赤色であった。この赤色溶液の505nmにおける吸光度を測定し、検量線を作製した。
【0052】
次に、上記改質グラフェンライク炭素材料0.05gと、10mmol/Lのグルコース水溶液50mLとをビーカーに加え、2時間撹拌した。この溶液を濾過した後、上述したリン酸緩衝液10mLに濾液を1mLを加え、しかる後0.1mg/mLのグルコースオキシダーザ水溶液1mLを加えた。撹拌しつつ、反応温度30℃で2時間反応させ、しかる後0℃に冷却し反応を停止した。得られた溶液の色は赤色であった。反応後の赤色溶液の505nmにおける吸光度を測定した。この吸光度を用い、上述した検量線とによりボロン酸基の量を求めた。
【0053】
この結果、実施例2におけるボロン酸基導入量は0.5mmol/gであった。なお、本方法ではじめてグラフェンライク炭素材料へボロン酸基を導入することが可能になった。