(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ランド(6)内には前方向に先細になった尾根部(26)が含まれ、該尾根部が、第1の胸面(24)の上部部分より低く位置する最下点から隆起しており、前記主切れ刃(15)から内向きに一定の距離のところに位置づけされた側面(21)を含み、第2の胸面(25)がこぶ(20)と尾根部(26)の間の谷部(27)の後方に位置設定されている、請求項1または2に記載の多角形旋削用インサート。
第2の胸面(25)の最高点(MP2)が、第1の胸面(24)の中心(MP1)と先端(S)の間の距離(L1)よりも小さい中心(MP1)からの距離(L2)のところに位置づけされている、請求項2、10または11に記載の多角形旋削用インサート。
【背景技術】
【0002】
(旋削全般について)
本発明を容易に理解できるようにするため、ワーク2の従来の外径加工中の旋削用工具1を全体的に示す添付図面
図1を用いて説明する。工具1にはホルダー3ならびに本発明にしたがって製造された交換可能な旋削用インサート4が含まれている。この場合、ワーク2を、(回転方向Rに)回転させるのと同時に、その中心軸C1に対して平行に長手方向に、より厳密には矢印Fの方向に工具が送られる。一回転あたりの長手方向の送り量はfと呼称され、一方切込みはa
pと呼称される。長手方向送りの方向と旋削用インサート内に含まれる主切れ刃の間の進入角度は、κと呼ばれる。図示された例において、κは95°である。さらに、図示された旋削用インサート4が菱形の基本形状を有し、80°の角度を有する2つの鋭角コーナーと100°の角度を有する2つの鈍角コーナーとを含むという点を指摘しておくべきである。このようにして、旋削用インサートとワークに発生する表面との間に5°という工具の前逃げ角が得られる。通常、ホルダー3は鋼で製造され、旋削用インサート4は超硬合金などで製造される。
【0003】
旋削を含めたあらゆる種類の金属の切り屑除去式加工において、切り屑は「屈曲した状態で発生する」すなわち、除去の直後に湾曲したものとなるという固有の目的を切り屑が獲得するという法則があてはまる。切り屑の形状、なかでもその曲率半径は、複数の要因により決定され、これらの要因のうち旋削に関して最も重要であるのは、工具の送り量、切れ刃のすくい角、問題となっている切込みならびにワークの材料である。除去の後、切り屑は切れ刃の各微小部分に対して垂直に移動する。したがって、切れ刃が直線である場合には、切り屑は平坦であるかまたは断面が矩形のものとなるが、切れ刃が全体的または部分的にアーチ形状をしている場合には、切り屑もまた断面が全体的または部分的にアーチ形状となる。
【0004】
旋削加工に対し重大な影響をもつ別の要因は、切れ刃のいわゆる切削幾何形状の選択である。当業者は、2つの切れ刃カテゴリを区別している。すなわち一方ではポジティブの切削幾何形状を有する切れ刃、そして他方ではネガティブの切削幾何形状を有する切れ刃である。前者の場合には、刃先角すなわち共に切れ刃を形成する切り屑流出面との逃げ面の間の角度は90°より小さく、すなわち鋭角であり、一方後者の場合の刃先角は90°(またはそれ以上)である。ポジティブの切削幾何形状を有する切れ刃とネガティブの切削幾何形状を有する切れ刃の間の違いは、前者が切れ刃と加工済み表面との間に切り屑を挟み込んで切り屑を上昇させることができるのに対し、後者は切り屑を生成しながら切り屑をその前方に押し出すという点にある。したがって、ポジティブの切れ刃は一般にネガティブの切れ刃よりも容易な切削が可能となり、後者に由来する切り屑よりも大きい曲率半径を有する切り屑を生成する。
【0005】
旋削に関連して生成される切り屑の性質を背景としてさらに理解できるようにするため、異なる幅/厚みを有する切り屑が異なる曲げ性を有するという事実を説明するのに当業者が用いる暗喩に注目されたい。こうして、薄く狭幅の切り屑を細い草の葉に喩え、厚い切り屑を堅い葦に喩えることができる。草の葉と同様に、薄い切り屑は、切り屑が多少の差こそあれ強い勾配を有する隣接する案内表面の形の1つの障害物の方に誘導された場合に、さほど難なく曲がり、一方で、堅い葦様の切り屑は、同じ条件下で過剰に破断されると考えられる。このことが、高い音響レベル、大きい切削力、旋削用インサートの短かい寿命ならびに場合によっては粘着を伴う高い発熱をひき起こす。
【0006】
旋削に関連して、切り屑の制御と切り屑の排出は、機械加工の結果のみならず問題のない効率の良い処理にとってきわめて大きな重要性をもつ。除去された切り屑がいずれかの案内表面またはチップブレーカにより案内されない場合、それは無制御かつ予測不可能な形で発達する。こうして、薄く曲げ性のある切り屑(草の葉参照)はかなり大きな直径を有する長い電話コード様のネジを形成するようにカールする可能性があり、それがワークの加工済み表面上に衝突しそれに損傷を与えるかもしれず、さらに、あなどれないことであるが、機械加工を行う機械の中に含まれる工具または他の構成要素内に巻き込まれる可能性がある。一方、厚く堅い切り屑が除去直後に強い勾配を有する案内表面上に衝突すると考えられる場合には、切り屑の過剰破断の傾向、粘着をひき起こすかもしれない極度の発熱、旋削用インサートの切削鈍化を示すこと、ならびに切り屑案内面内の早期摩耗損傷の危険性などの他の問題が発生する。したがって、切り屑が遠くへ入念に案内されて、例えばカールしてひび割れすることによってより小さな断片へと破断され得るかまたは旋削用インサートの逃げ面上に衝突しこの逃げ面に当たって粉々にされることになるような切れ刃の切れ刃稜線からの距離のところにそのような傾斜角度で案内表面が位置づけされている場合に、最適な所望の切り屑制御が得られる。(短かい断片ではなくむしろ)螺旋状の切り屑が偶発的に形成された場合でも、その直径が小さく長さがわずかであることが望ましい。
【0007】
これに関連して、密封可能なハウジング内に設置され定期的に無人となる近代的なソフトウェア制御型旋削機械においては、良好な切り屑制御および切り屑排出がきわめて重要であるという点を指摘しておくべきである。切り屑が、機械に包含されるコンベアによって搬出可能なより小さい断片(または短かいネジ形成)に分割されず、むしろ管理できない切り屑のもつれを形成すると考えられる場合、上述の切り屑は無人の場合の機械の運転停止および重大な損傷を急速にひき起こす可能性がある。
【0008】
(先行技術)
旋削の分野では、問題となっている切込みとは無関係に良好な切り屑制御を達成しながら、荒削り、中間および仕上げ作業のために同一の旋削用インサートを使用できることが望ましい。このため、一方では切込みが小さい場合(仕上げ)に形成されるような幅狭の切り屑を案内するために個別のノーズ切れ刃の後方に設置される胸面、そして他方では主切れ刃の切り屑案内面内部に設置され、切込みが大きいこと(荒削り)の帰結として幅狭の切り屑を案内するという目的をもつ2つの側面を含む切り屑形成部を有する数多くの異なる旋削用インサートが開発されてきた。このような旋削用インサートの例は、特許文献1、特許文献2および特許文献3中に記載されている。
【0009】
しかしながら、全ての開発の試みにも関わらず、問題となっている旋削用インサートは、実際に発生することのある可変的なあらゆる作動条件の下で良好な切り屑制御を保証する能力に関して、その汎用性は凡庸なものでしかない。したがって、切込みが小さく、送りが普通である場合(=幅狭で薄い切り屑)には、一部の旋削用インサートは許容可能な結果を提供し得るものの、切込みならびに送りが増大した場合(=より幅広で厚い切り屑)には、良い結果が得られないことがある。この汎用性の欠如は、同一の工作作業中に切込みが変動する場合には極めて面倒なものとなる。
【0010】
先に公知であった技術の欠点を是正する目的で、1つの旋削用インサートが開発されており、これは特許文献4の主題である。この旋削用インサートの特徴は、それが切れ刃のノーズ切れ刃のすぐ後方に設置され胸面を有するこぶを含む(その幾何形状は後続する請求項1の前段に見られる)という点にある。簡単に言うと、こぶの胸面は、凸状のアーチ形状を有し、主切れ刃の間の二等分線に対して横断方向で細長いものであり、かつ中央において最大でありしたがって主切れ刃に最も近いところに位置する端部に向かって連続的に減少する傾斜を有するものと言うことができる。
【0011】
この旋削用インサートは多くの異なる利用分野において良好な結果を示したものの、一部の条件下すなわち切込みが小さい場合(=幅狭切り屑)および送りが大きい場合(=比較的厚い切り屑)に、切り屑の案内が満足のいくものでないことが判明した。したがって、(とりわけ機械加工が困難な材料由来の)このような切り屑は、胸面の影響を受けずに胸面を通過するまたは「飛越す」ことができてしまった。このことはすなわち、切り屑が断片化されず、無制御に発達してしまうことを意味している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の欠点を未然に防ぐように特許文献4に開示された旋削用インサートをさらに発展させることを目的とする。さらに、本発明の基本的目的は、より大きい切込みの場合に生成されるような幅広切り屑のための良好な切り屑制御を提供するだけでなく、旋削用インサートが小さい切込みで機能する場合でも良好な切り屑制御を提供する、切り屑形成手段を伴うこの旋削用インサートを形成することにある。換言すると、旋削用インサートは、多数の利用分野において、すなわち選択された切込みとは独立してかつ送りが小さいか大きいかとは無関係に、良好な切り屑制御を高い信頼性で提供しなければならず、ここで、旋削用インサートは、鋼、鋳鉄、耐熱鋼、黄色金属、極めて硬質の合金などの多数の材料を機械加工できなければならない。
【0014】
さらなる目的は、旋削用インサートの同一である上面および下面のうちのいずれが使用されるかとは無関係に良好な総合的切り屑制御をまさに保証するだけでなく、切削技術の観点から見て望ましい位置で(すなわちワークとの関係において主切れ刃を水平に配向した状態で)、ワークと旋削用インサートの現在のコーナーとの間のクリアランスが良好なサイズのものとなるのと同時に、機能状態の切れ刃を容易に位置設定できるようにもする、両面型の実施形態での旋削用インサートの製造を可能にすることにある。全ては問題のない効率の良い旋削加工を促すことを目的として、例外なく滑かで丸味のある形状を有するすなわち鋭いまたは破断した部分が不在の切り屑形成用案内表面を有する旋削用インサートを提供することもまた、1つの目的である。両面型切削用インサートに関連する1つの特別な目的は、旋削用インサートの上向きの機能状態の側に存在する平坦な支持表面を損傷しないような形での切り屑の案内を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によると、少なくとも基本的な目的は、第1の胸面から後方向一定の距離のところに、第2の胸面が形成されており、この胸面は、凸状のアーチ形状をしており、二等分線に沿った最高点から、第2の胸面の幅を画定する距離だけ、より厳密に第1の胸面の幅よりも小さいもののその少なくとも50%である幅を画定する距離だけ分離されている2つの最下位端点まで二等分線の方向に対して横断する方向に勾配がついており、第2の胸面の上部部分が第1の胸面の上部部分よりも高く位置づけされているという事実によって達成される。
【0016】
第1の胸面の後方に、第1の胸面よりも高く突出する第2の胸面を形成することにより、第1の胸面によって案内されることなくこの胸面を場合によって通過する切り屑が第2の胸面に衝突しそれにより遠くへと案内されることが保証される。第2の胸面に、第1の胸面の幅の少なくとも50%である幅が付与されることによって、充分に大きい衝撃部域が得られる。他方では、第2の胸面に対して第1の胸面の1つよりも小さい幅を付与することによって、主切れ刃から胸面の側方部分までの切り屑の距離が第1の(より下方に位置する)胸面までの距離よりも大きいことを理由として、個別の主切れ刃に沿って除去される幅広切り屑が入念に案内されるという効果が達成される。
【0017】
一実施形態において、第1の胸面は、その下部境界線がノーズ切れ刃の先端から二等分線に沿って、ノーズ切れ刃の半径よりも小さい距離のところにある状態で位置づけされている。このことはすなわち、第1の胸面がノーズ切れ刃に極く近いところに位置設定されていることから、幅狭切り屑が除去の直後に信頼性の高い案内を得ることを意味する。
【0018】
さらに1つの実施形態において、前記ランド内には前方向に先細になった尾根(ridge)部が含まれ、この尾根部は、第1の胸面の上部部分より低く位置する最下点から隆起しており、主切れ刃から内向きに一定の距離のところに位置づけされた側面を含み、第2の胸面はこぶと尾根部の間の谷部の後方に位置設定されている。このような谷部の存在により、通過する高温切り屑が第2の胸面に衝突する前に冷却する時間を有するということが達成される。
【0019】
さらに1つの実施形態において、第2の胸面は、カムの前方部分の中に含まれていてよく、このカムは、ランドの2つの相対する側面を分離する波頂線(crest line)に向かって後方向に先細になっている。前記カムが後方向に先細になっているという事実によって、このカムが、尾根部の側面に沿って案内される比較的幅広の切り屑の案内に対し悪影響をおよぼすことはない。
【0020】
好ましい実施形態において、側面の外側に存在する切り屑流出面は、ノーズ切れ刃から後方向に連続的に増大する幅を有し、より厳密には、側面に沿った下部境界線は旋削用インサートの切れ刃稜線に沿っていない。このようにして、幅広切り屑は切り屑流出面に沿って、とりわけ補助切れ刃に隣接してさらに摺動してから、切り屑案内用の上向き勾配のついた側面に到達する。
【0021】
図中に例示された本発明の一実施形態において、一次切れ刃(12)の部域内の上面のトポグラフィを決定する全ての部分表面は、トポグラフィーに波状の縁部の無い設計を付与する凸状および凹状の滑らかな半径遷移を介して互いの形状へと移行する。このようにして、切り屑の案内は、選択された切込みに応じて異なる切り屑幅全てについて明確に区別されるものの穏やかに行われる。
【0022】
特定の一実施形態において、旋削用インサートは、同一の上面と下面とを含むことで両面性を有し、ここでランドは、基準平面間の中間に位置しそれに向かって逃げ面が直角に延在している中立平面に対して平行でかつ互いに対し平行である基準平面内に位置づけされた支持表面を形成する平坦な表面と、上面及び下面に沿って形成され、中立平面に対し平行に走りコーナー内に設置された一対の一次切れ刃を分離する補助切れ刃へと移行する複数の一次切れ刃とを含み、個別の一次切れ刃は、切り屑流出面と逃げ面の間の切れ刃の刃先角が、ノーズ切れ刃に沿ってならびに2つの主切れ刃に沿って任意の断面内で鋭角となるように一般にポジティブの切削幾何形状を有している。個別の一次切れ刃に沿ったこの一般にポジティブの切削幾何形状により、旋削用インサートが小さい切込み及びより大きい切込みにおいて容易に切削できるようになることが保証される。
【0023】
最後に言及した実施形態において、個別のランドの平坦な支持表面と補助切れ刃に共通の平面の間の高低差は、多くとも0.400mmであってよい。このようにして、ランドの側面が切り屑に対するいかなる険しい障害物も形成しないことが保証される。
【0024】
特定の実施形態において、一次切れ刃は、中立平面との関係においてそれぞれの基準平面の方向に傾斜しているコーナー平面の中に位置づけされていてよく、一次切れ刃の主切れ刃が、コーナー平面と中立平面の間の角度を決定するアーチ形状の中間切れ刃を介して補助切れ刃へと移行する。これにより、ワークと逃げ面との間にクリアランスを作り出すために両面型旋削用インサートを1つの空間的位置内で傾けた時点で、上向きに角度がついたコーナー平面(機能状態の一次切れ刃を伴う)を本質的に水平方向に配向させることが可能になる。換言すると、コーナー平面内でネガティブのすくい角を回避することができ、こうして両面型旋削用インサートは、一次切れ刃において比較的低い切削力、音および発熱を示す。
【0025】
さらなる実施形態において、第1の胸の中心は、ノーズ切れ刃の半径よりも小さい先端からの距離のところに位置づけされていてよい。このことはすなわち、第1の胸面がノーズ切れ刃の非常に近くに位置設定されているために、幅狭切り屑が除去の直後に高い信頼性の案内を得ることを意味している。しかしながら、好ましくは、第2の胸面の最高点は、前記半径よりも大きい先端からの距離のところに位置づけされていてよい。このことはすなわち、第2の胸面が、第1の胸面を飛越す厚い切り屑を効率良く案内することになるようなノーズ切れ刃からの距離のところに位置設定されるということを意味している。薄いものおよび厚いものの両方の幅狭の切り屑のさらなる効率の良い案内を提供するためには、第2の胸面の最高点を、第1の胸面の中心と先端の間の距離よりも小さい中心からの距離のところに位置づけしてよい。別の実施形態によると、ノーズ切れ刃の半径の中心は、こうしてこぶと尾根部の間の谷部内に位置づけされていてよい。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図2〜4では、旋削用インサート4が多角形の基本形状を有し、それぞれ全体として5aおよび5bと呼称される一対の相対する上面と下面を含んでいることがわかる。図示された好ましい実施形態において、旋削用インサートは、上面と下面が同一となるように両面性を有する。このため、以下では上面5aのみについて詳細に記述する。
【0028】
ここですでに、本発明が
図1〜25に示されているタイプの両面型旋削用インサートに応用された状態で示されているという点を強調しておくべきである。これは、とりわけ、このような旋削用インサートには片面型のものの2倍の数の切れ刃を含むという利点があるからである。しかしながら、これにより、本発明が
図26および
図27に示されている最後に言及されたタイプの旋削用インサートにも応用されることが排除されるわけではない。
【0029】
この場合、上面5aには、互いに分離された複数のランド6、7が含まれており、これらのランドは個別に平坦な表面8を含み、この表面は、旋削用インサートが反転されて工具ホルダー3内のインサート座内へ適用された時点で支持表面として役立つことができる。全部で8個のランドのうち4つ、すなわちランド6は旋削用インサートのコーナーの部域内にあり、一方ランド7は2つのコーナーランド6間のほぼ中間のところに配置されている。旋削用インサートの各々の側(5a、5b)に沿った全ての支持表面8は、付属するインサート座内の平坦な底部表面に同時に当接できるようにするため、共通の平面US内に支持平面がある状態で位置設定されている。図示された例において、旋削用インサートが両面型である場合、平面USは、中立平面NPに対して平行であり、この中立平面は、下部平面LSに対し平行で平面USとLS間の中間に位置している。以下で記述されているように、旋削用インサートの形状を決定する幾何学的特徴は、この中立平面NPとの関係において説明されている。
【0030】
実施例において、旋削用インサートは菱形であり、互いに対を成して相対している4つのコーナーJ1、J2、J3およびJ4を含む。コーナーJ1、J2において、旋削用インサートは鋭角をなし、一方コーナーJ3、J4鈍角をなす。コーナー角は変動してよいが、この場合、鋭角は80°であり、鈍角は100°である。上面と下面5a、5bの間には、円周方向逃げ面が延在し、これは一般に9と呼称されており、かつ複数の部分表面すなわち4つの平坦な表面10とコーナーに位置し隣接する表面10の間で丸い遷移部分を形成する4つの凸状表面11とを含む。
図3中、B1は、鋭角コーナーJ1、J2の二等分線を表わし、一方B2は鈍角コーナーJ3、J4の二等分線を表わす。従来旋削用インサートのサイズを分類するのに使用されているタイプの内接円がICと呼称されている。実際には、問題となっている種類の旋削用インサートのIC測定値は、6〜25mmの範囲内にあり得る。下面5aに沿った下部平面LSと切削先端Sとの間の軸方向距離(レベル差)(
図5参照)として定義される旋削用インサートの厚みt(
図4参照)は、通常IC測定値よりはるかに小さい。図面の図の基礎を成すプロトタイプ実施形態において、IC測定値は12.7mm、厚みtは4.76mmである。
【0031】
個別の上面と下面のそれぞれに沿って、2対の切れ刃すなわち共通の二等分線B1に沿って鋭角コーナーJ1、J2内に位置づけされた2つの直径方向に相対する切れ刃12ならびに、鈍角コーナーJ3、J4の部域内、より厳密には二等分線B2に沿って位置づけされた一対の同様に直径方向に相対する切れ刃12が形成される。これらの切れ刃12のうち、本発明に関しては、主として二等分線B1に沿って位置づけされた切れ刃が有利である。全ての切れ刃がそれ自体使用可能であるものの、1つの同じ工具ホルダー3内で使用できるのは最後に言及したものだけであり、一方他の2つの切れ刃は、(他の作業のために)別のタイプのホルダーを必要とする。このため、二等分線B1に沿った切れ刃12のみをさらに詳述する。
【0032】
ここでは、本切れ刃12を以下形式的に「一次切れ刃」と呼ぶということを指摘しておかなければならない。
【0033】
図5および6を見ればわかるように、一次切れ刃12は3つの部分切れ刃、すなわちコーナー内に位置するノーズ切れ刃14、ならびにこのノーズ切れ刃に向かって収束し全体として16と呼称されている切り屑流出面と逃げ面9の異なる部分表面10、11との間に個別に形成される2つの切れ刃15を含んでいる。より厳密には、ノーズ切れ刃14と主切れ刃15はそれぞれに切り屑流出面16aおよび16bに隣接して形成される。クリアランス部分表面のうち、表面10は平坦であり、したがって個別の主切れ刃15は、平面図に示される通り、直線となり、一方部分表面11は凸状のアーチ形状であり、例えば部分的に円筒形であって、そのためノーズ切れ刃14はアーチ形状、たとえば部分的に円形となる。ノーズ切れ刃14の逃げ面としての凸状表面11は、垂直な境界線17を介して逃げ面としての平坦表面10へと移行する。
図5において、ELは一般に、円周方向の切れ刃稜線を表わす。
【0034】
全体として16と呼称されている切り屑流出面は、複数の部分表面、すなわちノーズ切れ刃14に沿った第1の切り屑流出面16a、主切れ刃15に隣接する2つの切り屑流出面16b、遷移切れ刃18に隣接する2つの切り屑流出面16c、ならびに補助的切れ刃19に沿って2つの切り屑流出面16dを含む。
【0035】
中程度の切込み(1〜2mm)において、主たる切り屑除去は個別の主切れ刃15によって実施され、その一方でノーズ切れ刃14は、一方では小さい切込み(0.5〜0.8mm)において単独で作動するという目的、そして他方では2つの主切れ刃15のうちのいずれが活発に切り屑を除去しているかとは無関係にワークの加工済み表面を拭い去るという目的を有する。
【0036】
図2および3において、旋削用インサート4は中央に貫通孔18を含み、その中心軸がC2と呼称されていることがわかる。この孔は、工具ホルダーのインサート座内に旋削用インサートを固定するためのネジの収容用に意図されたものである。中心軸C2は同様に、旋削用インサート全体の幾何学的中心を画定している。2つのコーナーJ1およびJ2が中心軸C2から等距離で離隔されていることは自明である。同様に、中心軸C2から2つのコーナーJ3、J4までの半径方向距離は、等しい大きさを有するが、これはコーナーJ1、J2までの距離よりは小さい。これに関連して、まさにネジ以外の手段、例えばクランプまたはレバーを用いて旋削用インサートを固定してもよいという点を指摘しておかなければならない。このような場合、旋削用インサートは孔無しで製造される。
【0037】
2つの主切れ刃15は、ノーズ切れ刃14と共に個別の一次切れ刃12を形成し、共通平面CP内に位置づけされており(
図18を参照)、この共通平面は、図示された好ましい実施形態では中立平面NPとの関係において傾斜している。前記平面CPは以下では、コーナー平面と呼称される。コーナー平面の傾斜は、個別の主切れ刃15がわずかにアーチ形状となっている遷移切れ刃または中間切れ刃18を介して直線の補助切れ刃19へと移行することの帰結であり、中間切れ刃の(大)半径がノーズ平面と中立平面NPの間の角度を決定する。切れ刃15、18、19を(例えば
図3または6にしたがって)平面図で見た場合、それらの個別の切れ刃稜線は、それらが(かつ
図2〜6では垂直)逃げ面としての平坦表面10に隣接していることから、共通の直線をたどっている。しかしながら側面から見た場合、中間切れ刃18は、内側にある切り屑流出面16cがわずかにアーチ形状であることの帰結としてアーチ形状であり、それと同様に、主切れ刃15ならびに補助切れ刃19のそれぞれの切れ刃稜線EL15およびEL19は、切り屑流出面16bおよび16dが平坦であることの帰結として直線である。これに関係して、異なる切り屑流出面16a、16b、16cおよび16dが、部分表面の存在を理解させることのみを目的とする構造線を用いて互いに分離された状態で示されているということを指摘しておかなければならない。しかしながら実際には、問題の部分表面は、単一の連続した平滑な切り屑流出面内に含まれ、その中でこれらの部分表面を裸眼で見抜くことはできない。
【0038】
4つの補助切れ刃19は、中立平面NPに対し平行に走り、支持表面8に共通の平面US(またはLS)との関係において凹んだ共通の基準平面RP内に位置づけされている(
図7〜12参照)。前記平面US、RPの間のレベル差は、
図12を見ると最も良くわかり、この図中、これはH1として呼称されている。各々の一次切れ刃12について、切り屑形成手段が本発明にしたがって配置されている。これらの手段は、前記特許文献4の主題であるタイプのこぶ20ならびに、ランド6の後方にありその中に含まれている2つの側面21を含む。
【0039】
こぶ20の形状も同様に、構造線すなわち下部境界線22および上部境界線23を用いて明らかにされている(
図5および13を参照のこと)。これらのうち、下部境界線22は、こぶが周囲の切り屑流出面16a、16bとの関係においてどこで隆起し始めるかを示し、一方、上部境界線23は、こぶの下部部分と上部部分とを区別している。
図13および14中の拡大された幾何形状の図から、前方向/下向きに勾配のついた胸面(breast surface)24が、こぶの上部部分と下部部分の間の遷移部分内に含まれていることがわかる。前記胸面24は全体的に細長く、凸状アーチ形状を有する。細長い延長部分は、二等分線B1との関係において横断方向であり、より厳密にはアーチ形状の下部境界線22が二等分線B1に沿って位置づけされた頂点APを有し、頂点APから直線基準線RLに沿って位置する一対の相対する端点EP1まで延在する2つの鏡面対称アーチ部分稜線を含むようなものであり、ここで直線基準線は端点EP1の間の中間点MP1で二等分線と直交している。胸面(およびこぶ)の幅を決定する端点EP1の間の距離は、点MP1とAPの間の距離よりも大きい。
【0040】
図示された好ましい実施形態において、胸面24はさらに、中心MP1と個別の端点EP1の間の距離もMP1とAP間の距離よりも幾分か大きくなるような大きな幅さえ有している。胸面24の別の特徴は、中心MP1を通る任意の垂直区分内のその傾斜角度β
1が、二等分線B1に沿った区分内の最大値から個別の端点EP1を通る区分内の最小値まで減少することにある。換言すると、傾斜はAPからEP1に向かう方向で次第に平坦になる。こぶおよびその胸面のこの形状によって、主として主切れ刃15に沿ってそして場合によっては切れ刃18および19内のその延長部分に沿って除去される比較的幅広で剛性のある切り屑は、こぶの側面に沿って連続的に上へ摺動する場合に入念に案内されることになる。このような切り屑の過剰制動に対抗するため、こぶ20の上部部分つまりクラウンは、さらに、周囲の切り屑流出面より上に適度な高さを有する。こぶの2次元アーチ形状は同様に、二等分線に沿った半径r
2(
図14参照)よりもこぶの横方向の曲率半径r
1(
図15参照)の方が大きいものとして、描写されてもよい。
【0041】
本発明の基礎を成す開発作業中に、切込みが小さく送りが比較的大きい場合に生成されるような幅狭の切り屑、すなわち幅狭で厚い切り屑について、こぶ20とその胸面24が、つねに所望の切り屑案内能力を提供するわけではないということが判明した。したがって、このような切り屑は、胸面を通過する(「飛越す」)傾向を有し、所望の方向にそれを案内することができなかった。この危険性を未然に防ぐため、本発明に係る旋削用インサートは同様に、第1の胸面24の後方へ一定の距離のところに位置し、かつその上部部分が第1の胸面の上部部分よりも高く位置する第2の胸面25を伴って形成された(
図5および6を参照のこと)。図示された好ましい実施形態において、こぶ20およびランド6は、尾根部を介して一体化されており、この尾根部は全体として26と呼称され、こぶ20のクラウンより低く位置する谷部27(
図12も参照のこと)内の最下位の端部から、ランド6の上部支持表面8を伴うレベルの最高の端部まで隆起している。尾根部26は、主として、上述の側面21によって画定されており、これらの側面21は、集合的波頂線28から下向きに、ならびに他の点においてランド6を画定している側面29(
図6参照)の前方向延長部分内へ延在している。第2の胸面25は、尾根部26上に形成され(
図5および6を参照)かつ後方向で波頂線28に向かって先細になっているカム30の中に含まれている。
【0042】
同様に、ランド6の後部部分が自転車のサドル様の輪郭形状を有するという点も指摘しておくべきである。したがって、支持表面8の後部の幅広の部分は横方向に良好な支持を提供する。
【0043】
ここで、個別のコーナーJ1、J2に隣接する旋削用インサートの上面のトポグラフィを画定する表面部分の間の高低差を示す
図12を参照されたい。先に言及したプロトタイプ実施形態において(IC=12.7mmおよびt=4.76mm)、ランド6の支持表面8と基準平面RPの間のレベル差H1は0.300mmであり、ノーズ切れ刃14の切削先端SとRPの間のレベル差H2は0.200mmである。RPと、順に境界線22(胸面24と切り屑流出面16aの間の凹みの中に位置するもの)、尾根部26の最下位点(こぶ20の裏側と第2の胸面25の間の谷部27内に位置するもの)、こぶ20のクラウンおよびカム30の波頂との間の対応するレベル差は、それぞれH3、H4、H5およびH6と呼称されている。プロトタイプ実施形態において、H3は0.144mm、H4は0.181mm、H5は0.198mm、H6は0.249mmである。したがって、第2の後部胸面25は第1の前部胸面24よりも0.051mm(0.249〜0.198)高く突出することになる。したがって明確な案内を受けずに前部胸面24を通過する幅狭切り屑が、突出する第2の胸面25に衝突しそれにより横へと案内される確実性は高くなる。
【0044】
第1の胸面24と同様、第2の胸面25も一般に、細長く凸状のアーチ形状を有し、かつ二等分線B1との関係において横断方向にある。第2の胸面25の形状および状況は、
図13〜17により詳しく示されている。
図13および14を見れば最も良くわかるように、胸面25は、2つの境界線35、36の間に画定されている長く狭い遷移表面25a(いわゆる半径遷移部分)から下向き/前方向に延在する。遷移表面は、2つの端点EP2の間に延在し、これらの間には中心MP2が存在し、この中心はMP1と同様、二等分線B1に沿って位置設定されている。端点EP2間の距離は、W2と呼称される第2の胸面の幅を画定している。第2の胸面25の一般的傾斜角度β2は、実施例中では、第1の胸面24の傾斜角度β
1より幾分か大きい。実施例において、β
2はこうして34°であり、β
1は27°である。
【0045】
図13および14をひき続き参照すると、(形式上)こぶ20のクラウンの最上位点TPが、胸面24の幅W1を決定する2つの端点EP1の間を走る断面XV−XVの幾分か前方向に位置づけされているという点を指摘しておかなければならない。
【0046】
図15においては、こぶ20のクラウンがどのようにクラウンの中央から端点EP1に向かって連続的により平坦な形状を有するようになるかが示されている。中間部域において、クラウン(ひいては第1の胸面24)は、こうして比較的大きい曲率半径を有し、この曲率半径はr
1と呼称されている。
図15を見ると明確にわかるように、後方にある第2の胸面25およびその遷移表面25aは、第1の胸面との関係において(先行実施例によると0.051mm)突出している。
【0047】
図16では(
図13のXVI−XVI断面を参照)、一方では、二等分線B1に沿って谷部27の最下位位置よりも著しく高い位置で第2の胸面25の上部部分25aがどのように位置づけされているかが示され、他方では、第2の胸面25の幅W2がいかに第1の胸面の幅W1よりも小さいかが示されている。実施例では、W1は1.0mmであり、W2は0.6mmである。幅W2は、最後に言及した値から上下に変動し得る。しかしながら、W2はW1の少なくとも50%でなければならない。
【0048】
図17では、ノーズ切れ刃14との関係における2つの胸面24、25の状況が示されている。実施例では、コーナー半径r
nは0.8mmであり、ノーズ切れ刃14の内側の扇形は100°(180°−80°)の円弧角度を有する。
図17を見るとはっきりわかるように、切削先端Sと中心MP1の間の半径距離は半径r
nよりも小さい。したがって実施例では、L1はおよそ0.7mmである。換言すると、第1の胸面24はノーズ切れ刃15の近くに位置づけされて、ノーズ切れ刃15のみに沿って主として除去されるタイプの幅狭切り屑による打撃を急速に受けるようになっている。さらに、第2の胸面25はそれ自体、距離L2がL1より小さくなるような形で、前部胸面24の近くに位置づけされている。実施例では、L2は、0.3mm、すなわち測定値L1の半分未満となる。これに関連して、第2の胸面25(
図6参照)が、平坦な支持表面8の前方部分の前で有意な距離のところに位置づけされることも指摘しておかなければならない。したがって、最後に言及された距離は、切削先端Sと第2の胸面25の間の距離(L1+L2)よりも幾分か大きい。したがって第1の胸面24またはいずれにせよ後方にある胸面25のいずれかによって案内される切り屑は、それらが支持表面8にまで到達する以前のちょうど良いタイミングで横へと案内される。換言すると、切り屑は、(旋削用インサートの反転後まで使用されない)支持表面8に損傷を加える可能性無く、横へと案内される。
【0049】
図6〜12では、VIIの断面内の刃先角α
1が81.5°であること(その補角は8.5°である)がわかる。実施例では、切り屑流出面16aは平坦な表面の形をしている(わずかにアーチ形状でもあり得る)。このことはすなわち、基準平面RP(ならびに中立平面NP)との関係におけるコーナー平面CPの傾斜角度(
図18も参照のこと)が8.5°であることを意味している。刃先角α
1は、VIIの断面からVIIIの断面に向かって増大し、より厳密には84.5°の値α
2まで増大する。この角度は、主切れ刃15全体に沿って一定である(
図8および9を参照のこと)。アーチ形状の切り屑流出面16bに沿って位置する中間切れ刃18に沿って、刃先角α
3は、中間切れ刃18が補助切れ刃19へと移行する部分内で84.5°から90°まで連続して増大する(
図11を参照のこと)。実施例では、刃先角α
4は、補助切れ刃19全体に沿ってつねに90°であり、ここではこれがそれ自体ネガティブの切削幾何形状を有するものの、こうして切れ刃14、15、18に比べ著しく高い強度も有することが関与している。
【0050】
(発明の機能)
本発明に係る旋削用インサートの機能を説明するために、
図19〜25への参照が指示されるが、そのうち
図19は、HPにより表わされる水平平面内に含まれた中心軸C1上で回転するワーク2を示している。ワークの機械加工は、旋削用インサート4を用いて実施され、この旋削用インサートは、矢印Fの方向へのその長手方向給送の間に、CHと呼称される切り屑を生成する。旋削中、旋削用インサート4は、(
図1にしたがって付属のホルダー3を介して)、一次切れ刃12の2つの直線主切れ刃15、より厳密にはその切れ刃稜線EL15が水平平面HP内に位置設定されている空間的位置において内に傾けられる。実施例では、主切れ刃はポジティブの切削幾何形状を提供する。同時に、旋削用インサートの逃げ面9(これはNPに対し垂直であるものの切り屑流出面16bとの関係において角度がついている)は、機械加工に付されるリング状の表面SA(平坦)およびSB(凹状)から離れている。VIIの断面内のα
1(
図12参照)が81.5°である場合、ノーズにおける旋削用インサートの凹状表面SBと逃げ面としての部分表面11の間の逃げ角λ(
図25参照)は、90−81.5=8.5°である。平坦な表面SAとの関係において、より厳密にはIXの断面(
図9)における刃先角の補角である逃げ角、すなわち実施例では90−84.5=5.5°でも、対応するクリアランス(図示せず)が得られる。
【0051】
図22〜24では、異なる切込みa
pでどのように旋削が実施されるかが示されている。
図22では、切込みa
11は最小であり、例えばおよそ0.5〜0.8mmである。これに関連して、切り屑の除去は、本質的に(実施例では0.8mmの半径を有する)ノーズ切れ刃14に沿ってのみ行なわれる。切り屑の微小部分は切れ刃に対して垂直に導かれるという原則のため、切り屑はこの場合断面がアーチ形状となり、二等分線B1に対して極穏やかな角度で切り屑流れ方向が得られる。除去の直後、切り屑は切り屑流出面16aをたどり、短時間(距離L1参照)後に、こぶ20の前部胸面24に衝突する。切り屑が偶発的に前記胸面24を用いて所望の通りに案内されない場合、それはさらに後向きに走って、その後、より高い位置にある後部胸面25に衝突し、この胸面は、より高い信頼性で切り屑を(
図19に示された形で)横に遠くまで案内する。このようにして、切り屑は、例えばランド6の側面または後方で切り屑流出面に対してかあるいは旋削用インサートの連結用逃げ面9に対して落下することによって粉々にされるかまたは断片化される。
【0052】
図23および24に係る実施例では、切込みa
p2およびa
p3はより大きいものである。このことはすなわち、一方では、切り屑の大部分が直線主切れ刃15に沿ってそしてさまざまな程度で切れ刃18および19まで除去されること、そして他方では、切込みが増大するにつれて切り屑流の方向が変更され二等分線B1に対し増大する角度を形成することを意味している。さらに、切り屑はその横断面の大部分において平坦または矩形になるが、ノーズ切れ刃14により生成される湾曲形状を有する細い(擦減した)切れ刃部分は例外である。このことはすなわち、切込みと共に増大する切り屑の一部が側面21に衝突し、これにより案内されることを意味している。切込みのみでなく送りも同様に増大させられた場合、切り屑の剛性はこのとき、第1の実施例の場合よりも著しく大きくなった(葦/草の葉を参照のこと)。しかしながら、剛性の増大にも関わらず、切り屑は、とりわけ、切れ刃稜線から側面21までの垂直方向距離が切込みの増加に伴って増大したことの帰結としてのみならず、側面21ならびにこぶ20およびカム30の側方表面が平坦である、すなわち適度な傾斜角度で隆起していることの帰結として、穏やかではあるものの明確な形で案内される。こぶ20は、点TP内で最高位であり、端点EPに向かって連続的に下降する。このため、これらの表面は、より厚い切り屑が当たって壊れ得る険しい障害物を全く提供しない。これに関連して、特に、カム30およびその中に含まれている第2の胸面25のいずれも、第2の胸面25が第1の胸面24よりも高く(0.051mm)突出しているにも関わらず、より厳密にはカムが逃げ面としての部分表面10に沿って直線の切れ刃稜線からより大きい横方向距離のところに位置づけされていること、およびその側面にはカムの最高位の波頂から下向きに平坦に勾配がついていることの帰結として、過剰破壊のいかなる危険性にも寄与しない、という点を強調しておかなければならない。さらに、第2の胸面25は、制限された幅W2を有する。その上、かなり有意であるのは、側面21が多くとも0.400mm、好適には
図12に係る実施例の場合のように、多くとも0.300mmの高さを有するという事実である。
【0053】
本発明の根本的な利点は、旋削用インサートの切り屑案内能力が、実際の生産において発生することのある変化するあらゆる条件、例えばさまざまな切込み、さまざまな送りそして(その固有の特性が例えば曲率半径に関して最も可変的な特性を切り屑に付与する可能性がある)異なる材料の機械加工などの条件下において、良好で信頼性の高いものとなるという点にある。詳細には、小さい切込みにおける切り屑形成は本質的に改善され、一方これによって大きい切込みにおける切り屑形成に顕著な悪影響が及ぼされることもない。
【0054】
ここで、本発明を片面旋削用インサートにも適用してよいという事実を例示する
図26および27の参照が指示される。したがって、同じ旋削用インサートは、上述のタイプの後方にある切り屑誘導用の案内表面と協働する、コーナーに設置された4つの一次切れ刃12を有する上面5aと平坦な下面5bとを有する。切れ刃および切り屑形成手段の幾何学的設計の定義に関しては、この場合、平坦な下面5bは、以前に使用された中立平面NPの代りに基礎的基準平面を形成する。
【0055】
(発明の実施可能な修正)
本発明は、以上で記述され図面中に示された実施形態のみに限定されるものではない。したがって、切り屑形成手段の切り屑誘導用案内表面は、さまざまな形で修正されてよい。例えば、最前面で薄い切り屑を対象とする胸面を含む前部こぶは、より幅広でより剛性の高い切り屑を案内することを目的とする側面を含む後方にあるランドの部分から分離されていてよい。同様に、支持表面を同時に含むこのようなランド以外の突出する部材の上で前記側面を形成することも同様に実現可能である。さらに、三角形などの四角形とは別の基本的形状を有する旋削用インサートに対して本発明を適用することが可能である。内部に支持表面が位置設定されている平面より低い適度な位置に位置する旋削用インサートの補助切れ刃が、完全に直線ではなくわずかに反っていてもよいことも同様に言及しておくべきである。同様に、例えば87〜90°の範囲内の刃先角の形状を有する、適度なポジティブの切削幾何形状を伴う補助切れ刃を形成することもまた、実現可能である。