(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ケーブル類を這い回す際に必要とされるケーブルクランプとしては、例えば、特許文献1に開示されるように、ケーブルを固定するクランプ部材と此れを筐体のシャーシ等に固定するための挿着脚体部とをボールジョイント状の接続方式を利用して接続することにより、挿着脚体部に対するクランプ部材の相対的な姿勢や向きを自由に調整できるようにしたボールジョイント付きクランプが既に提案されている。
しかし、このボールジョイント付きクランプは、クランプ部材の相対的な姿勢や向きを調整することを目的としたものに過ぎず、ケーブルの設計変更、例えば、ケーブル径や其の断面形状あるいはケーブルの本数の増減といった問題には対処し得ない。
それは、クランプ部材をシャーシ等に固定するための挿着脚体部の構成として嵌め殺しの構造を採用しているためで、一旦挿着脚体部をシャーシ等に取り付けてしまうと其れを容易に取り外すことができず、また、挿着脚体部をシャーシから取り外すことができたとしても、挿着脚体部に損傷が生じる可能性が高いので、古い設計に合わせたクランプ部材と挿着脚体部を廃棄し、ケーブル径や其の断面形状あるいはケーブルの本数の増減といった設計の変更に合わせて、クランプ部材と挿着脚体部からなる1セットのパーツを改めて取り付け直す必要が生じるからである(特許文献1はクランプ部材が挿着脚体部に対して着脱可能であることを開示したものではない)。
【0003】
また、ケーブル類を這い回す際に必要とされるケーブル拘束具、特に、ケーブル類の屈曲部をガイドするようにしたケーブル拘束具としては、例えば、特許文献2に開示されるように、ひだ付き形状にモールドされたプラスチックからなる中心支持ホースを利用して複数のスリーブユニットを連設し、スリーブユニットをウェブで区画してスリーブユニット内に幾つかのケーブル挿通経路を形成すると共に、スリーブユニットの外周に形成されたスロットからケーブルをスリーブユニットに押し込むようにしたケーブルキャリアが提案されている。
しかし、このものは、隣接するスリーブユニットの間隔が狭く、また、ひだ付き形状にモールドされたプラスチックからなる中心支持ホースの軸周りにスリーブユニットが回転できる構成ではないので、自然状態でケーブル類に屈曲や捩れが生じてケーブル類の外周部がスリーブユニットに干渉してしまうと、其の屈曲や捩れを無理に矯正しようとする力がケーブルに干渉したスリーブユニットからケーブルに作用することになり、ケーブル類に過剰な負荷が作用する不都合がある。
【0004】
特許文献3では、更に、半管状の中間部と半球面状の両端部を有する部材を上下に組み合わせて其の一端部外側の球面部分をボールとして利用すると共に他端部内側の球面部分を球状ソケットとして利用することにより、継手状の管を次々と連設してケーブルの外側に取り付けていくようにしたケーブル保護装置が提案されている。
しかし、このものは、管状の中間部と球面状の端部からなるボールの部分の直径比を大きくすることができず、結果的に、隣接する継手状の管を大きく屈曲させることができないので、ケーブル自体の屈曲が穏やかな海底ケーブル等の被覆には適するが、コンピュータ設備,金融機関のATM,工作機械,各種端末装置等のように、ケーブル類を急な曲率で屈曲させてガイドする必要がある箇所には適用できない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明を適用した一実施形態のケーブルクランプシステムの一部を構成するケーブル拘束具の一例を示した斜視図である。
【
図2】同実施形態のケーブル拘束具の一部を断面で示した斜視図で、
図2(a)は同ケーブル拘束具を設置部から取り外して其の一部を断面で示した斜視図、また、
図2(b)は同ケーブル拘束具を設置部に取り付けて其の一部を断面で示した斜視図である。
【
図3】同実施形態におけるケーブルクランプシステムの全体を簡単に示した概念図である。
【
図4】本発明を適用した他の一実施形態のケーブル拘束具を示した斜視図で、
図4(a)は同実施形態のケーブル拘束具を閉じた状態で示した斜視図、
図4(b)はウェブとウェブとの間に位置する部分環状部を開いた状態で同実施形態のケーブル拘束具を示した斜視図、また、
図4(c)は2つのケーブル拘束具を繋ぎ合わせた状態で片方のケーブル拘束具の断面を取って示した斜視図である。
【
図5】接続部の一端にコネクティングロッドに代えて球状ソケットを設けた別の一実施形態のケーブル拘束具を示した斜視図で、
図5(a)は同実施形態のケーブル拘束具の一部を断面にして示した斜視図、
図5(b)は3つのケーブル拘束具を接続した状態で1つのケーブル拘束具の断面を取って示した斜視図、また、
図5(c)はコネクティングロッドの他の形態を一例で示した斜視図である。
【
図6】同実施形態のケーブル拘束具を接続してスネーク状にした組立体をケーブルガイドとして利用する場合の使用例について示した斜視図である。
【
図7】同実施形態のケーブル拘束具を接続してスネーク状にした組立体をケーブルガイドとして利用する場合の作用原理について示した斜視図であり、
図7(a)は癖のない真っ直ぐなケーブルを環状部に通してガイドした場合の状況について、また、
図7(b)は屈曲癖や捩れ癖が付いたケーブルを環状部に通してガイドした場合の状況について示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態について幾つかの具体例を挙げ、図面を参照して具体的に説明する。
【0013】
図1は本発明を適用した一実施形態のケーブルクランプシステムの一部を構成するケーブル拘束具の一例を示した斜視図、また、
図2(a)は同ケーブル拘束具を設置部から取り外した状態で其の一部を断面で示した斜視図、
図2(b)は同ケーブル拘束具を設置部に取り付けた状態で其の一部を断面で示した斜視図である。
【0014】
このケーブル拘束具1は、コンピュータ設備,金融機関のATM,工作機械,各種端末装置等のケーブル類を這い回す際にケーブルを拘束するための環状部2を備えたもので、環状部2の外周には、このケーブル拘束具1を設置するための設置部3に設けられたコネクティングロッド4の先端に形成されたボール5に適合してボール5の係脱を許容する球状ソケット6が一体的に設けられている。
【0015】
この実施形態の環状部2は、合成樹脂材料により一体成形された可撓性のベルトを主要部として構成されるもので、ベルトの一端に形成された逆鉤部に連絡した操作レバー7を押圧操作することにより、図示しない逆鉤部を可撓性のベルトの先端部に対し、其の厚み方向から接離移動させることができるようになっている。
また、ベルトの他端には、逆鉤部が突入する係合凹部を有するロック部8が設けられ、操作レバー7の操作でベルトの一端の逆鉤をロック部8に係脱させることで、ベルトの一端を他端に接続したり、ベルトの一端を他端から引き抜いたりすることができる。
ケーブル類を環状部2で拘束する場合には、ベルトの一端を他端から引き抜いて両者間に間隙を形成させ、その隙間を利用して環状部2の径方向外側からケーブル類を取り込むことになる。
【0016】
球状ソケット6の内側はボール5の形状に倣った略半球面状とされ、その内径寸法はボール5の直径に比べて僅かに小さく、また、球状ソケット6の略半球面状の部分は、球面を1/2に分割したものよりも僅かに球面に近いかたち、つまり、ボール5が突入する開口部が僅かに縮径されたかたちとされている。
従って、コネクティングロッド4の先端に形成されたボール5を球状ソケット6の開口部から押し込むことにより、球状ソケット6の開口部を弾性変形させ、ボール5を球状ソケット6の奥に移動させて球状ソケット6の内面でボール5を保持させること、および、球状ソケット6の開口部を弾性変形させ、球状ソケット6に保持されていたボール5を引き抜くことが可能である。
【0017】
球状ソケット6にボール5を保持させた状況下では球状ソケット6の内周面にボール5の外周面が強く圧接された状態となるので、ボール5およびコネクティングロッド4を其の一部として一体に構成された設置部3に対するケーブル拘束具1の姿勢、つまり、コネクティングロッド4に対するケーブル拘束具1の傾斜角度と、コネクティングロッド4に対するケーブル拘束具1の回転角度を任意の状態に調整し、且つ、その状態を維持することができる。
【0018】
また、コネクティングロッド4にはケーブルを挿通する機能は要求されず、十分な強度を有する単純な中実構造とすることができるので、コネクティングロッド4を小径化してコネクティングロッド4とボール5の直径比を大きくすることができる。
【0019】
設置部3は、この設置部3をコンピュータ筐体のシャーシ等に固定するための取付片9を備える。取付片9の形状や寸法には特段の制限はない。
【0020】
そして、この実施形態にあっては、
図1や
図2(a)および
図2(b)に示されるような円環型の環状部2を備えたケーブル拘束具1の他、環状部の内径寸法もしくは環状部の内径形状のうち少なくとも何れか一方がケーブル拘束具1の環状部2とは異なる複数種のケーブル拘束具、例えば、
図3に示されるような楕円型の環状部2aを備えたケーブル拘束具1aや矩形型の環状部2bを備えたケーブル拘束具1b、更には、三角形型の環状部2cを備えたケーブル拘束具1c等を含む交換用ケーブル拘束具群10が予めシステムの構成要素として準備されている。
【0021】
ケーブル拘束具1a,1b,1c,・・・にはケーブル拘束具1と全く同様の逆鉤部と操作レバー7およびロック部8ならびに球状ソケット6が設けられているが、
図3では記載を省略している。
【0022】
ケーブル拘束具1,1a,1b,1c,・・・が備える球状ソケット6は何れも設置部3のコネクティングロッド4に設けられたボール5に対して互換性があり、何れのケーブル拘束具1,1a,1b,1c,・・・を設置部3に取り付けることも、また、一旦取り付けたケーブル拘束具1,1a,1b,1c,・・・を取り外して他のケーブル拘束具1,1a,1b,1c,・・・に取り替えることもできる。
【0023】
本実施形態におけるケーブルクランプシステム11は、設置部3およびケーブル拘束具1に交換用ケーブル拘束具群10のケーブル拘束具1a,1b,1c,・・・を併せたものとして構成されるが、実際には、ケーブル拘束具1も交換用ケーブル拘束具群10に属するケーブル拘束具の一態様である。
【0024】
また、ここでは一例として設置部3の側にボール5を設けてケーブル拘束具1,1a,1b,1c,・・・の側に球状ソケット6を設けた構成例について説明しているが、設置部3の側に球状ソケット6を設けてケーブル拘束具1,1a,1b,1c,・・・の側にボール5を設けた構成としてもよい。
【0025】
ケーブル拘束具1をコンピュータ筐体等に設置する場合には、従来と同様、例えば、コンピュータ筐体のシャーシ等にプレス加工等で形成された取付部に対して設置部3の取付片9を嵌め殺しの状態で固定することになるが、この実施形態のケーブルクランプシステム11にあっては、ケーブルを拘束する環状部の内径寸法や内径形状が異なる複数種のケーブル拘束具1,1a,1b,1c,・・・が予め準備されており、その何れにも設置部3のコネクティングロッド4に設けられたボール5に対して互換性のある共通の球状ソケット6が設けられているので、設置部3の取り付けが終ってからケーブル径や其の断面形状あるいはケーブルの本数の増減といった設計変更が生じた場合でも、コンピュータ筐体のシャーシ等から設置部3を取り外したり、更には、取り外しのための設置部3の破壊作業を行なったりしなくても、設置部3を取り付け先であるコンピュータ筐体のシャーシ等に残したまま、ケーブル拘束具1,1a,1b,1c,・・・のみを交換してケーブル関連の設計変更に容易に対処することができる。
【0026】
従って、設計サイドにおいては設計変更を最小限に抑えることが可能であり、生産サイドにおいてはケーブル配線の自由度が増す。
【0027】
また、設置部3に対するケーブル拘束具1,1a,1b,1c,・・・の姿勢を任意の状態に調整できるので、設置部3を固定したままケーブル拘束具1,1a,1b,1c,・・・の向き、即ち、ケーブルの向き等を自由に変更して、コンピュータ筐体の壁面や内側コーナー部分に近い場所へのケーブルの這い回しを容易に実施することができ、ケーブルルートの変更等にも容易に対処できる。
【0028】
図4(a)は本発明を適用した他の一実施形態のケーブル拘束具12を閉じた状態で示した斜視図、
図4(b)はウェブとウェブとの間に位置する部分環状部を開いた状態で同実施形態のケーブル拘束具12を示した斜視図、また、
図4(c)は2つのケーブル拘束具12を繋ぎ合わせた状態で片方のケーブル拘束具12の断面を取って示した斜視図である。
【0029】
この実施形態のケーブル拘束具12は、
図4(a)に示されるように、コンピュータ設備,金融機関のATM,工作機械,各種端末装置等のケーブル類を這い回す際にケーブルを拘束する環状部13と、環状部13の中心軸に沿って形成された接続部14と、接続部14の一端から突出するコネクティングロッド15と、コネクティングロッド15の先端に形成されたボール16と、ボール16に適合するように接続部14の他端に形成された球状ソケット17と、環状部13の内周の3箇所と接続部14の外周の3箇所とを一対一の対応関係で接続する3枚のウェブ18を備える。
【0030】
この実施形態にあっては、環状部13の周方向に沿って隣接するウェブ18とウェブ18との間に位置する部分環状部13aが、隣接するウェブ18とウェブ18のうちの一方のウェブ18に設けられた略T字型の延長部分の一側に位置する接続箇所に設けられたヒンジ部19を支点として、
図4(b)に示されるように、環状部13の径方向の内外に揺動可能とされる。
具体的には、ヒンジ部19は、部分環状部13aの反揺動側の端部に形成された肉厚柱状部の両端に形成された擂鉢状の凹部に外側から突入すべく略T字型の延長部分の対向する内側に形成された突起によって構成され、この突起に部分環状部13aの擂鉢状の凹部を嵌め込むことで、部分環状部13aが一方のウェブ18に対して揺動自在とされている。
【0031】
また、部分環状部13aの揺動側の端部13a’には、該端部13a’を他方のウェブ18に設けられた略T字型の延長部分の他側に係脱可能に止着するための係着手段として機能する断面略U字型の溝状の屈曲部が形成されている。
一方、他方のウェブ18に設けられた略T字型の延長部分の他側には略T字型の延長部分の対向する内側に位置する突起、もしくは、略T字型の延長部分を環状部13の幅方向に貫通する突条、あるいは、略T字型の延長部分を環状部13の幅方向に貫通するピンが設けられ、これらの突起や突条あるいはピン等に、部分環状部13aの揺動側の端部13a’に形成された係着手段すなわち断面略U字型の屈曲部を弾性変形させて外側から嵌合させることで、部分環状部13aにおける揺動側の端部13a’を他方のウェブ18に設けられた略T字型の延長部分の他側に固定できるようにしている。
【0032】
部分環状部13aは必ずしも一方のウェブ18と別構造とする必要はなく、例えば、ケーブル拘束具12が十分な靱性を有する合成樹脂材料等によって形成される場合は、部分環状部13aの反揺動側の端部の肉厚を減じて一方のウェブ18と一体成形とし、この肉厚を減じた部分をヒンジとして利用することも可能である。
【0033】
一方のウェブ18に対して部分環状部13aを揺動可能とする構成、および、他方のウェブ18に部分環状部13aの揺動側の端部13a’を固定する構成を実現するための手段については既に様々なものが公知である。
【0034】
ケーブル拘束具12における球状ソケット17とボール16の関係は最初に説明した実施形態における球状ソケット6とボール5の関係と同様である。
【0035】
つまり、球状ソケット17の内側はボール16の形状に倣った略半球面状とされ、その内径寸法はボール16の直径に比べて僅かに小さく、また、球状ソケット17の略半球面状の部分は、球面を1/2に分割したものよりも僅かに球面に近いかたち、つまり、ボール16が突入する開口部が僅かに縮径されたかたちとされている。
【0036】
従って、コネクティングロッド15の先端に形成されたボール16を例えば
図4(c)に示されるようにして他のケーブル拘束具12の球状ソケット17の開口部から押し込むことにより、球状ソケット17の開口部を弾性変形させ、ボール16を球状ソケット17の奥に移動させて球状ソケット17の内面でボール16を保持させること、および、球状ソケット17の開口部を弾性変形させ、球状ソケット17に保持されていたボール16を引き抜くことが可能である。
【0037】
球状ソケット17にボール16を保持させた状況下では球状ソケット17の内周面にボール16の外周面が強く圧接した状態となるので、ボール16およびコネクティングロッド15を其の一部として一体に構成された他のケーブル拘束具12に対するケーブル拘束具12の姿勢、つまり、他のケーブル拘束具12に対するケーブル拘束具12の傾斜角度と、他のケーブル拘束具12に対するケーブル拘束具12の回転角度を任意の状態に調整し、且つ、その状態を維持することができる。
【0038】
但し、ケーブル拘束具12の接続部14とボール16を有するコネクティングロッド15とを必ずしも一体の構成とする必要はない。
【0039】
図5(a)に示されるように、接続部14の一端に前述のコネクティングロッド15に代え、接続部14の他端に位置する球状ソケット17と同様の球状ソケット17を設け、接続部14の一端に位置する球状ソケット17に、球状ソケット17に適合して球状ソケット17の係脱を許容するボール16を両端部の各々に形成したコネクティングロッド15’の一端部を係合して1つのケーブル拘束具12’を構成するようにしてもよい。
【0040】
ケーブル拘束具12’における他の部分の構成に関しては前述したケーブル拘束具12と同様であるので説明を省略する。
【0041】
図5(b)は2つのコネクティングロッド15’を使用して3つのケーブル拘束具12’を接続した状況で1つのケーブル拘束具12’の断面を取って示した斜視図である。
【0042】
他のケーブル拘束具12’に対するケーブル拘束具12’の姿勢、つまり、他のケーブル拘束具12’に対するケーブル拘束具12’の傾斜角度、および、他のケーブル拘束具12’に対するケーブル拘束具12’の回転角度を任意の状態に調整できる点に関しては前述したケーブル拘束具12の場合と同様であるが、この実施形態にあっては隣接するケーブル拘束具12’とケーブル拘束具12’との間にボール16と球状ソケット17の組が2組ずつ介在することになるので、前述したケーブル拘束具12の場合と比べて、他のケーブル拘束具12’に対するケーブル拘束具12’の傾斜角度の変化の許容範囲が著しく増大することになる。
【0043】
また、他のケーブル拘束具12’に対するケーブル拘束具12’の回転角度の変化の許容範囲は前述したケーブル拘束具12の場合と同様であるが、隣接するケーブル拘束具12’とケーブル拘束具12’との間にボール16と球状ソケット17の組が2組ずつ介在するので、他のケーブル拘束具12’に対してケーブル拘束具12’を回転させるために必要となる回転トルクが著しく減少する。
【0044】
これらのケーブル拘束具12,12’は、通常、コネクティングロッド15,15’の端部に形成されたボール16と、このボール16に適合するように接続部14の端部に形成された球状ソケット17とを次々と接続することによってスネーク状の組立体とされ、ケーブルガイドとして利用される。
【0045】
ケーブル拘束具12,12’にあっては、複数のウェブ18によって画成される環状部13内の空間、つまり、隣接するウェブ18,18と其の間の部分環状部13aによって画成される空間の各々に、例えば、
図6に示されるようにして、ケーブルの種類やケーブルのルートに毎に分けてケーブルを個別にガイドすることができ、関連性のないケーブル類の混ざり合いを防止することが可能となる。
【0046】
図6ではルートが共通するケーブル20,21の組を隣接するウェブ18,18と其の間の部分環状部13aによって画成される空間の1つに納め、これらとはルートが異なるが相互にルートが共通する他のケーブル22,23の組を、隣接するウェブ18,18と其の間の部分環状部13aによって画成される他の空間の1つに納めた例を示している。
【0047】
隣接するケーブル拘束具12,12’はコネクティングロッド15,15’を介して接続され、隣接する環状部13と環状部13との間には十分な間隙が形成されるので、スネーク状に組み上げられたケーブルガイドの長さ方向の任意位置でケーブル20,21を引き出して別ルートに導くことができる。
【0048】
ここでは一例として3枚のウェブ18によって環状部13内の空間を3つに画成した例について示しているが、環状部13内の空間の分割数を4以上あるいは2とした構成とすることも可能である。
分割数を4以上とした構成は専ら細線ケーブルに適し、また、分割数を2とした構成は専ら太線ケーブルに適する。
【0049】
また、ケーブル拘束具12’は隣接するケーブル拘束具12’に対する傾斜角度の変化の許容範囲が大きいという特性を有し、これを接続した組立体からなるケーブルガイドは全体として大きな屈曲(曲率半径の小さな屈曲)に容易に対処し得るので、特に、細線ケーブルや複雑なルートに沿って這い回されるケーブルのケーブルガイドとして適する。
【0050】
図7はケーブル拘束具12,12’を次々と接続してスネーク状に組み上げた組立体からなるケーブルガイドに様々な状態のケーブルを通してガイドした場合の状況について示した斜視図であり、このうち
図7(a)は癖のない真っ直ぐなケーブル24〜26を通してガイドした場合の状況について、また、
図7(b)は類似する屈曲癖や捩れ癖が付いたケーブル24〜26を通してガイドした場合の状況について示している。
【0051】
屈曲癖や捩れ癖が付いたケーブル24〜26を環状部13に通してガイドした状況下では、多くの場合、ケーブル24〜26の屈曲部や捩れ部が環状部13内の空間を画成するウェブ18の壁面に当接することになる。
しかし、隣接するケーブル拘束具12,12’の環状部13はコネクティングロッド15,15’のボール16と球状ソケット17の間に生じる滑りにより相互間で容易に回転できるようになっているので、ウェブ18にケーブル24〜26の屈曲部や捩れ部が干渉した場合には、ウェブ18とケーブル24〜26の当接状態、つまり、ケーブル24〜26の外周部がウェブ18を押す方向に応じ、ケーブル24〜26の屈曲部や捩れ部と干渉しているウェブ18からの力を受けた環状部13が此の力に応動するかたちで自動的に回転して、ケーブル24〜26の屈曲部や捩れ部に作用する拘束力を軽減する。
【0052】
従って、ケーブル24〜26に生じている局部的な屈曲や捩れを外部から無理に矯正しようとする力が軽減されてケーブルに作用する捩れ負荷が解消されることになり、ケーブル24〜26の芯線の劣化や破断といった問題が改善される。
【0053】
また、これらのケーブル拘束具12,12’を
図5(a)に示されるような設置部3と組み合わせて使用することができる。
その場合は、球状ソケット17に適合したボール5を備えた設置部3のコネクティングロッド4の先端にケーブル拘束具12,12’の球状ソケット17を係合させ、このケーブル拘束具12,12’を、最初に述べた実施形態のケーブル拘束具1の場合と同様にして、設置部3経由でコンピュータ筐体のシャーシ等に取り付けて単体で使用することになる。
この場合のケーブルクランプシステムはケーブル拘束具12もしくはケーブル拘束具12’と設置部3で構成される。
【0054】
但し、
図5(a)に示されるような設置部3を用いてケーブル拘束具12,12’をコンピュータ筐体のシャーシ等に取り付けた場合には、ケーブル拘束具12,12’における環状部13の中心軸を設置部3の取付面たとえばコンピュータ筐体のシャーシ等の面に平行とすることは困難であるので、もし、最初に述べた実施形態のケーブル拘束具1と同様にケーブル類をコンピュータ筐体のシャーシ等の面に対して平行に這い回す必要があるのであれば、
図5(a)に示されるような設置部3に換え、
図5(c)に示すような設置部3’、即ち、球状ソケット17に適合したボール5を先端に形成したコネクティングロッド4の中間部が略直角に屈曲された設置部3’を利用するようにする。
コネクティングロッド4を屈曲させる位置は、コネクティングロッド4の基部からの離間距離つまり取付片9からの離間距離が、環状体13の半径と同等もしくは其れを僅かに上回るコネクティングロッド4上の位置とすることが望ましい。
このような構成を適用することで、ケーブル拘束具12,12’における環状部13の中心軸を設置部3の取付面たとえばコンピュータ筐体のシャーシ等の面に平行とすることができ、また、ケーブルをガイドするケーブル拘束具12,12’の角度をシャーシ等の面に平行な状態から任意に調整することができるようになる。
【0055】
この場合のケーブルクランプシステムはケーブル拘束具12もしくはケーブル拘束具12’と、略直角に屈曲されたコネクティングロッド4を備えた設置部3’で構成されることになる。
【0056】
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本発明を実施するための形態や発明の技術思想は、これらのものに制限されるものではない。
【0057】
例えば、ケーブル拘束具12,12’に設けられた1つのウェブ18の略T字型の延長部分のうち環状体13の外周部となる部分に
図1〜
図3に示したものと同様の球状ソケット6を一体に設けるようにすれば、
図5(c)に示されるような設置部3’を設けずとも、
図5(a)に示されるような設置部3のみをケーブル拘束具12,12’に組み合わせることで、ケーブル拘束具12,12’における環状部13の中心軸を設置部3の取付面たとえばコンピュータ筐体のシャーシ等の面に平行とすることができ、また、ケーブルをガイドするケーブル拘束具12,12’の角度をシャーシ等の面に平行な状態から任意に調整することが可能となる。