特許第6049062号(P6049062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パイロットコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許6049062-回転操作式筆記具 図000002
  • 特許6049062-回転操作式筆記具 図000003
  • 特許6049062-回転操作式筆記具 図000004
  • 特許6049062-回転操作式筆記具 図000005
  • 特許6049062-回転操作式筆記具 図000006
  • 特許6049062-回転操作式筆記具 図000007
  • 特許6049062-回転操作式筆記具 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049062
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】回転操作式筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/06 20060101AFI20161212BHJP
   B43K 5/17 20060101ALI20161212BHJP
   B43K 5/16 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   B43K24/06
   B43K24/00 A
   B43K5/16
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-243591(P2012-243591)
(22)【出願日】2012年11月5日
(65)【公開番号】特開2014-91268(P2014-91268A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】久保田 正昭
【審査官】 青山 玲理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−320209(JP,A)
【文献】 実開昭61−109783(JP,U)
【文献】 実開平04−104494(JP,U)
【文献】 特開2005−067100(JP,A)
【文献】 特開2001−190326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00−27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方軸筒を前方軸筒に対して回転操作することによって前方軸筒の前方部から筆記体の筆記先端部が突出する回転操作式筆記具であって、
互いに分離された前方軸筒及び後方軸筒と、
螺旋状に設けられたカム溝を有し、且つ前記前方軸筒の後部に固定されたカム筒と、
長手方向に設けられたスリットを有し、且つ前記後方軸筒に固定された後方軸筒内筒と、
前記カム溝と前記スリットとに遊嵌するカム突起を有し、且つ前記カム突起と一体的に前記カム筒の内部を移動可能な押圧体と、
前記前方軸筒の内部に設けられると共に、前記前方軸筒に対して弾性体によって後方へ付勢された筆記体と、を備え、
前記押圧体も、前記弾性体によって前記筆記体を介して後方へ付勢されており、前記後方軸筒を回転操作して後方軸筒内筒を回転させることにより、
前記カム溝及び前記スリットによって前記カム突起が回転しながら前進し、これに伴って前記押圧体が前進し、当該押圧体を介して前記筆記体が前記弾性体の付勢力に抗して前進することを特徴とした回転操作式筆記具。
【請求項2】
前記押圧体を、前記筆記体に当接する前方部材と、前記カム突起を設けた後方部材とで構成してあり、前記前方部材に対し前記後方部材を回転可能に連結させたことを特徴とした請求項1に記載の回転操作式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒の後方に設けた操作部を回転操作することによって、軸筒の前方部から筆記体の先端部が突出する回転操作式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
軸筒後方に設けた操作部を回転操作することにより、筆記体の先端部が軸筒の前方から突出する回転操作式筆記具は従来から知られており、例えば、本件出願人による特許文献1(特開2007−320209)では、回転操作式の万年筆が記載されている。
【0003】
図6は、特許文献1に開示された回転操作式万年筆の断面図で、筆記体の先端部が軸筒本体内に没入した状態を示している。
万年筆101は、軸筒本体102の後方部に尾冠103を配設して軸筒104を形成している。軸筒本体102は、雄螺子部105aと雌螺子部106aとが螺合することで結合された前方内筒105と後方内筒106とに、前軸部材107と後軸部材108とがそれぞれ被着されている。
軸筒本体102の前方内筒105の前方部には中空パイプ109を装着してあり、中空パイプ109の前方部にはゴム材で形成した弾性先首110が装着されており、弾性先首110の傾斜前端面110aには、捻りコイルバネ111の弾発力によって閉塞する蓋体112が配設されている。
捻りコイルバネ111は、コイル部111aに中空パイプ109へ装着した軸棒113が挿通されており、当該軸棒113は蓋体112の下端においてコイル部111aの両側を挟むように配置された巻返部112aをも挿通して、蓋体112が軸棒113を支点として開閉可能となっている。
【0004】
また、蓋体112の上方を曲折してなる係止部112bには、捻りコイルバネ111の前端側に形成された返し部111bが係止され、中空パイプ109の側面には、捻りコイルバネ111の後方アーム部111cが当接されている。これにより、捻りコイルバネ111が常に蓋体112を弾性先首110側に弾発するようになっている。
そして、軸筒本体102の内部に、万年筆構造である筆記体114が配設されている。筆記体114は、筆記体本体114aの前方に筆記先端部114bとしてのペン体を有しており、筆記体本体114aの後方に万年筆用インキを収容したインキカートリッジ114cを有している。
また、筆記体本体114aの中間部に形成された段部114dと、中空パイプ109の後端部109aとの間には、コイルスプリング115が配設され、筆記体114が常時後方へ弾発される構造としてあり、筆記体本体114aに設けられたガイド突起114eが、前方内筒105の内面に形成されたスライド溝105bへ遊嵌されることで、筆記体114は、回転することなく前後移動できるようになっている。
【0005】
また、後方内筒106の後端に形成された雄螺子部106bには、円筒状の尾冠内筒116の雌螺子部116aが螺合されており、尾冠内筒116の内部には、螺旋状のカム溝117aを有するカム筒117が配設されている。また、カム筒117の雄螺子部117bが尾冠103の雌螺子部103aに螺合されていることにより、カム筒117は尾冠103と一体で回転可能となっている。
カム筒117の内部には押圧体118が配設されており、押圧体118の側面にはカム突起118aが突設されている。カム突起118aは、カム溝117aへ遊嵌すると共に、尾冠内筒116の長手方向に形成されたスリット116bにも遊嵌している。図6の例では、カム溝117a及びスリット116bは、軸対称に二つずつ設けられており、カム突起118aもそれらに対応して二カ所に設けられている。
【0006】
また、押圧体118の前端部には、径を大きくされたフランジ118bが設けられており、当該フランジ118bには筆記体114のインキカートリッジ114cの後端が当接されている。コイルスプリング115は、筆記体114を介して押圧体118を常時後方へ弾発しており、フランジ118bの後部に装着されたゴム製のOリング119を、後方内筒106の内面に形成された鍔部106cへと当接させている。したがって、図6に示すように、筆記先端部114bが軸筒本体102内に没入した状態では、軸筒本体102の前方部は蓋体112が弾性先首110に当接することで気密性を確保し、軸筒本体102の後方部はOリング119が鍔部106cに当接することによって気密性を確保し、結果的に軸筒本体102の内部が密閉される構造になっている。
【0007】
図7は、筆記体114の先端部114bを軸筒本体102から突出させた状態を示している。
尾冠103が右方向(図中矢印方向)に回転されると、カム筒117も一体に右へ回転され、カム筒117のカム溝117aに遊嵌しているカム突起118aにも右へ回転する力が働く。ここで、カム突起118aは尾冠内筒116のスリット116bにも遊嵌しているため、右へ回転することはできず、当該スリット116bをガイドとしながら回転せずに螺旋状のカム溝117aの前方へと移動していく。
これに伴って、押圧体118がカム突起118aと共に前方へ移動していき、押圧体118に当接している筆記体114がコイルスプリング115を圧縮しながら前進していく。そして、筆記先端部114bが蓋体112を開放し、前軸部材107の先端部に形成された先端開口部107aから筆記先端部114bが突出する。
【0008】
筆記先端部114bが先端開口部107aから突出した際には、押圧体118のカム突起118aがカム溝117aに連設された保持溝117cへ係止される。これにより、筆記先端部114bの突出状態が維持される。保持溝117cは、螺旋状のカム溝117aの先端部からカム筒117の軸方向に少し戻るように形成されて、コイルスプリング115によってカム突起118aが保持溝117cの後側に弾発される際に引っ掛かりが生じるようにしたものである。
【0009】
図7に示す状態から尾冠103が逆方向(左方向)に回転されると、押圧体118のカム突起118aがカム筒117の保持溝117cから解除され、コイルスプリング115の弾発力によってカム突起118aは、前進時とは逆方向の力を受け、カム溝117aに逆回転力を掛けながら、当該カム溝117aを後退していく。
押圧体118の後退により、コイルスプリング115に弾発された筆記体114も後退して、図6に示すように、筆記先端部114bが軸筒本体102に没入される。この後退時に筆記体114が受ける衝撃は、押圧体118に装着されたOリング119が後方内軸106の鍔部106cに当接することにより緩和される。
【0010】
前述の特許文献1(特開2007−320209)に基づく回転操作式筆記具は、非常に優れた性能を有しており、実際に製品化されて幅広い利用者層に満足して頂いている。
しかしながら、尾冠103を右方向に回転させて筆記体114の筆記先端部114bを突出させた状態で、尾冠103を右方向へ更に強く回転させてしまった場合には、カム突起118aが尾冠内筒116のスリット116bの内側面及びカム筒117のカム溝117aの前端に当接していることから、カム突起118aを設けた押圧体118及び尾冠103が更に回転することはなく、尾冠103に加えられた回転力は当該尾冠103に連結されたカム筒117が受け、尾冠103との連結箇所である後端部とカム突起118aが当接したカム溝117aの前端とに捻りの力が働くことにより、カム筒117の全面に渡ってカム溝117aを螺旋状に形成したカム筒117が変形してしまう虞があり、回転操作に問題が生じることが心配されていた。尚、カム筒117の強度を向上させるためにカム筒117の肉厚を厚くすることは、細い軸径の軸筒をデザインする場合や、筆記具の重さを軽く設定する場合に不都合を生じさせることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−320209
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、螺旋状のカム溝を形成したカム筒に対して必要以上の回転力が加えられたとしても、カム筒が変形することなく、滑らかな回転操作を継続させることができる回転操作式筆記具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
「1.後方軸筒を前方軸筒に対して回転操作することによって前方軸筒の前方部から筆記体の筆記先端部が突出する回転操作式筆記具であって、
互いに分離された前方軸筒及び後方軸筒と、
螺旋状に設けられたカム溝を有し、且つ前記前方軸筒の後部に固定されたカム筒と、
長手方向に設けられたスリットを有し、且つ前記後方軸筒に固定された後方軸筒内筒と、
前記カム溝と前記スリットとに遊嵌するカム突起を有し、且つ前記カム突起と一体的に前記カム筒の内部を移動可能な押圧体と、
前記前方軸筒の内部に設けられると共に、前記前方軸筒に対して弾性体によって後方へ付勢された筆記体と、を備え、
前記押圧体も、前記弾性体によって前記筆記体を介して後方へ付勢されており、前記後方軸筒を回転操作して後方軸筒内筒を回転させることにより、
前記カム溝及び前記スリットによって前記カム突起が回転しながら前進し、これに伴って前記押圧体が前進し、当該押圧体を介して前記筆記体が前記弾性体の付勢力に抗して前進することを特徴とした回転操作式筆記具。
2.前記押圧体を、前記筆記体に当接する前方部材と、前記カム突起を設けた後方部材とで構成してあり、前記前方部材に対し前記後方部材を回転可能に連結させたことを特徴とした1項に記載の回転操作式筆記具。」である。
【発明の効果】
【0014】
本発明による回転操作式筆記具では、筆記体の筆記先端部を突出させた状態で更に後方軸筒に回転力を加えた場合に、回転力を、後方軸筒に連結された後方軸筒内筒が受けることとなるが、後方軸筒内筒のスリットにより回転されたカム突起は、前方軸筒の後部に固定されたカム筒のカム溝における前端部に当接することとなり、カム筒を変形させるような捻りの力は働かず、また縦方向にスリットが形成された後方軸筒内筒には、同じく縦方向で連続する部分が存在していることから強度的に優れ、したがって後方軸筒に過度な回転力が加わった場合でも、その後の回転操作の作動不良を効果的に防止することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態の回転操作式筆記具の筆記体の収納状態における概略図である。
図2図1の要部の拡大図である。
図3図1の回転操作式筆記具の筆記体の突出状態における概略図である。
図4図3の要部の拡大図である。
図5】部品の分解図である。
図6】従来の一実施の形態の回転操作式筆記具の筆記体の収納状態における概略図である。
図7】従来の回転操作式筆記具の筆記体の突出状態における概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態の回転操作式筆記具の筆記体の収納状態における概略図であり、図2は、図1の要部の拡大図である。図3は、図1の回転操作式筆記具の筆記体の突出状態における概略図である。図4は、図3の要部の拡大図である。尚、本実施の形態における説明では、ペン先がある側を前方と表現し、その反対側を後方と表現する。
万年筆1は、軸筒本体2(前方軸筒)の後方に尾冠3(後方軸筒)を配設して軸筒4を形成している。軸筒本体2は、雄螺子部5aと雌螺子部6aとが螺合することで結合された前方内筒5と後方内筒6とに、前軸部材7と後軸部材8とがそれぞれ被着されている。
軸筒本体2の前方内筒5の前方部には中空パイプ9を装着してあり、中空パイプ9の前方部にはゴム材で形成した弾性先首10が装着されており、弾性先首10の傾斜前端面10aには、捻りコイルバネ11の弾発力によって閉塞する蓋体12が配設されている。
捻りコイルバネ11は、コイル部11aに中空パイプ9へ装着した軸棒13が挿通されており、当該軸棒13は蓋体12の下端においてコイル部11aの両側を挟むように配置された巻返部12aをも挿通して、蓋体12が軸棒13を支点として開閉可能となっている。
【0017】
また、蓋体12の上方を曲折してなる係止部12bには、捻りコイルバネ11の前端側に形成された返し部11bが係止され、中空パイプ9の側面には、捻りコイルバネ11の後方アーム部11cが当接されている。これにより、捻りコイルバネ11が常に蓋体12を弾性先首10側に弾発するようになっている。
そして、軸筒本体2の内部に、万年筆構造である筆記体14が配設されている。筆記体14は、筆記体本体14aの前方に筆記先端部14bとしてのペン体を有しており、筆記体本体14aの後方に万年筆用インキを収容したインキカートリッジ14cを有している。
また、筆記体本体14aの中間部に形成された段部14dと、中空パイプ9の後端部9aとの間には、コイルスプリング15が配設され、筆記体14が常時後方へ弾発される構造としてあり、筆記体本体14aに設けられたガイド突起14eが、前方内筒5の内面に形成されたスライド溝5bへ遊嵌されることで、筆記体14は、回転することなく前後移動できるようになっている。
【0018】
また、後方内筒6の後端に形成された雄螺子部6bは、後軸部材8の後方に形成された雌螺子部8aに螺合しており、後軸部材8の後端に形成された雌螺子部8bは、長手方向に渡って螺旋状に設けられたカム溝17aを有したカム筒17の前方に形成した雄螺子部17bが螺合されている。カム筒17の内部には、長手方向に設けられたスリット16aを有する後方軸筒内筒16が配設されている。また、後方軸筒内筒16の後方に形成した雄螺子部16bが尾冠3の雌螺子部3aに螺合及び接着されていることにより、後方軸筒内筒16は尾冠3と一体で回転可能となっている。
後方軸筒内筒16の内部には押圧体18が配設されており、押圧体18の側面にはカム突起18aが突設されている。カム突起18aは、後方軸筒内筒16のスリット16aへ遊嵌すると共に、カム筒17のカム溝17aにも遊嵌している。本発明の実施の形態では、スリット16a及びカム溝17aは軸対称に二つずつ設けられており、図5に示すようにピン部材からなるカム突起18aの両端が、押圧体18に形成した貫通孔18bから突出して前記スリット16a及びカム溝17aに摺動できるようにしてある。
【0019】
また、押圧体18の前端部には、径を大きくしたフランジ18cが設けられており、当該フランジ18cには筆記体14のインキカートリッジ14cの後端が当接されている。コイルスプリング15は、筆記体14を介して押圧体18を常時後方へ弾発しており、フランジ18cの後部に装着されたゴム製のOリング19を、後方内筒6の内面に形成された鍔部6cへと当接させている。したがって、図1に示すように、筆記先端部14bが軸筒本体2内に没入した状態では、軸筒本体2の前方部は蓋体12が弾性先首10に当接することで気密性を確保し、軸筒本体2の後方部はOリング19が鍔部6cに当接することによって気密性を確保し、結果的に軸筒本体2の内部が密閉される構造になっている。
尚、本実施の形態では、図5に示すように、押圧体18を、筆記体14に当接する前方部材181とカム突起18aを設けた後方部材182とで構成してあり、前方部材181に形成した後方延出部181aを後方部材182の前方開口部182aに回転可能に挿嵌してあり、カム突起18aと共に回転する後方部材182の回転が筆記体14に伝達されないようにしてある。
【0020】
次に、図3及び図4を用いて筆記体14の先端部14bを軸筒本体2から突出させる状態について説明を行う。
尾冠3が右方向(図中矢印方向)に回転されると、後方軸筒内筒16も一体に右へ回転し、後方軸筒内筒16のスリット16aに遊嵌しているカム突起18aが、後軸部材8に螺合されたカム筒17のカム溝17aに摺接しながら前方へと移動していく。
これに伴って、押圧体18がカム突起18aと共に回転しながら前方へ移動していき、押圧体18に当接している筆記体14がコイルスプリング15を圧縮しながら前進していく。そして、筆記先端部14bが蓋体12を開放し、前軸部材7の先端部に形成された先端開口部7aから筆記先端部14bが突出する。
【0021】
筆記先端部14bが先端開口部7aから突出した際には、押圧体18のカム突起18aがカム溝17aに連設された保持溝17cへ係止される。これにより、筆記先端部14bの突出状態が維持される。保持溝17cは、螺旋状のカム溝17aの先端部からカム筒17の軸方向に少し戻るように形成されて、コイルスプリング15によってカム突起18aが保持溝17cの後側に弾発される際に引っ掛かりが生じるようにしたものである。
【0022】
図2に示す状態から尾冠3が逆方向(左方向)に回転されると、押圧体18のカム突起18aがカム筒17の保持溝17cから解除され、コイルスプリング15の弾発力によって押圧体18のカム突起18aが逆回転しながら、当該カム溝17aを後退していく。
この押圧体18の後退により、コイルスプリング15に弾発された筆記体14も後退して、図1に示すように、筆記先端部14bが軸筒本体2に没入される。この後退時に筆記体14が受ける衝撃は、押圧体18に装着されたOリング19が、後方内軸6の鍔部6cに当接することにより緩和される。
【0023】
図3に示すように筆記体14の先端部14bを突出させた状態において、軸筒本体2を持って尾冠3を右方向へ更に強く回転させてしまった場合、カム筒17のカム溝17aの前端に押圧体18のカム突起18aが当接していることから、尾冠3に加えられた回転力は、当該尾冠3に連結された後方軸筒内筒16が受けることとなるが、後方軸筒内筒16はスリット16a以外の部分が縦方向に連続しており、カム突起18aはカム溝17aの前端の変形し難い位置に当接していることから、カム筒17の変形を防止することができる。
また仮に、図1に示すように筆記体14の先端部14bを没入させた状態において、軸筒本体2を持って尾冠3を左方向へ更に強く回転させてしまった場合には、カム溝17aを設けたカム筒17には捻りの力が掛かり内径が狭くなるように変形される力が働くが、図1に示す状態のカム筒17の内部には後方軸筒内筒16が近接した状態で位置することから、後方軸筒内容16が補強となってカム筒17の変形を防止することができる。
また、本実施例では、後方軸筒内筒16の雄螺子部16bと尾冠3の雌螺子部3aとの螺合時における回転方向を、筆記体14の先端部14bを突出させる際に尾冠3を回転させる方向と一致させてあることから、図3に示す状態から尾冠3を右方向へ更に強く回転させてしまった場合でも螺合状態が締まる方向に力が働くので、後方軸筒内筒16から尾冠3が外れてしまうことがない構造になっている。
尚、筆記体14の先端部14bを没入させる際には、コイルスプリング15の弾発力で筆記体14および押圧体18が後退されるのでカム筒17が変形するような力はかからず、尾冠3と後方軸筒内筒16との螺合が外れることはない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本願発明による回転操作式筆記具は、後方軸筒及び前方軸筒の断面形状が三角形状や四角形状などで角があって回転操作する際に軸筒を掴みやすく、必要以上の力がカム筒などの機構部にかかりやすい筆記具に好適である。
【符号の説明】
【0025】
1…万年筆、2…軸筒本体(前方軸筒)、
3…尾冠(後方軸筒)、3a…雌螺子部、4…軸筒、
5…前方内筒、5a…雄螺子部、5b…スライド溝、
6…後方内筒、6a…雌螺子部、6b…雄螺子部、6c…鍔部、
7…前軸部材、7a…先端開口部、
8…後軸部材、8a…雌螺子部、8b…雌螺子部、
9…中空パイプ、9a…後端部、
10…弾性先首、10a…傾斜前端面、
11…捻りコイルバネ、11a…コイル部、11b…返し部、
11c…後方アーム部、
12…蓋体、12a…巻返部、12b…係止部、
13…軸棒、
14…筆記体、14a…筆記体本体、14b…筆記先端部、
14c…インキカートリッジ、14d…段部、14e…ガイド突起、
15…コイルスプリング、
16…後方軸筒内筒、16a…スリット、16b…雄螺子部、
17…カム筒、17a…カム溝、17b…雄螺子部、17c…保持溝、
18…押圧体、18a…カム突起、18b…貫通孔、18c…フランジ、
181…前方部材、181a…後方延出部、
182…後方部材、182a…前方開口部、
19…Oリング。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7