特許第6049074号(P6049074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6049074防水構造及び防水構造を備えたスイッチ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049074
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】防水構造及び防水構造を備えたスイッチ装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 9/04 20060101AFI20161212BHJP
   H01H 13/06 20060101ALI20161212BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H01H9/04 C
   H01H13/06 B
   B60R16/02 630Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-71292(P2013-71292)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-194902(P2014-194902A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】佐郷 徹也
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−345484(JP,A)
【文献】 特開2010−259208(JP,A)
【文献】 特開2010−226531(JP,A)
【文献】 特開2011−124030(JP,A)
【文献】 特開2010−129362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/04
H01H 13/06
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が搭載された基板と、
前記基板を囲う周壁部により筒状に形成され、少なくとも片側の端部が開口されたケースと、
前記ケース内側で前記基板を支持すると共に、当該基板を支持する一端部側から前記ケースの開口端に向かって延びる支持部材とを備え、
前記支持部材は前記周壁部の内面に隙間を空けて対向する外面を有し、前記支持部材の一端部における隙間が、前記支持部材の少なくとも一端部以外における隙間よりも広く、
前記支持部材は、前記一端部以外において前記周壁部に全周にわたって対向する支持部本体と、前記一端部において前記周壁部に部分的に対向する複数の突起部とを有し、
前記複数の突起部に前記基板の複数の箇所が支持されることを特徴とする防水構造。
【請求項2】
前記周壁部の内面と前記複数の突起部の外面との隙間が、前記周壁部の内面と前記支持部本体の外面との隙間よりも広くなるように、前記複数の突起部の厚みが薄く形成されることを特徴とする請求項1に記載の防水構造。
【請求項3】
前記周壁部の内面と前記複数の突起部の外面との隙間が0.55mmから0.75mmであり、前記周壁部の内面と前記支持部本体の外面との隙間が0.15mmから0.35mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防水構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の防水構造を備えたスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンスタートスイッチに適用可能な防水構造及びスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンスタートスイッチ等の車載用のスイッチ装置においては、操作ボタンの押圧操作によって操作ボタンの操作面を照光させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。スイッチ装置の筒状のケース内には、操作面を外部に露出させた状態で操作ボタンがスライド可能に収容され、操作ボタンよりも奥方に、LED等の発光素子を備えた基板が収められている。この基板上にはラバーコンタクトが実装されており、操作ボタンにラバーコンタクトが押圧されることで発光素子が発光される。このように、操作ボタンの操作面は、基板上の発光素子によってケースの内部から照光される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−124030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のスイッチ装置には、ケースの内側で基板を支持する支持部材が設けられている。支持部材には、ケースの内面に僅かな隙間を空けて対向するように外面が形成されている。このため、スイッチ装置の裏側に結露等によって水滴が付着すると、毛細管現象によってケースの内面と支持部材の外面との隙間からケース内部に水滴が浸入して、基板に搭載された電子部品の腐食の原因となるおそれがあった。
【0005】
なお、ケース内の温度をケース外の温度に近付けるようにすることで、ケースの負圧発生を抑えてケース内への水滴の浸入を防ぐ構成も考えられるが、部品点数や工数が増加すると共に、装置の大型化やコスト増大するという問題があった。また、ケース内の発熱部品によって内部温度が上昇して内圧が増大し、異常が発生するおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、簡易かつ安価な構成でケース内への水滴の浸入を防ぐことができる防水構造及びこれを備えたスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の防水構造は、電子部品が搭載された基板と、前記基板を囲う周壁部により筒状に形成され、少なくとも片側の端部が開口されたケースと、前記ケース内側で前記基板を支持すると共に、当該基板を支持する一端部側から前記ケースの開口端に向かって延びる支持部材とを備え、前記支持部材は前記周壁部の内面に隙間を空けて対向する外面を有し、前記支持部材の一端部における隙間が、前記支持部材の少なくとも一端部以外における隙間よりも広く、前記支持部材は、前記一端部以外において前記周壁部に全周にわたって対向する支持部本体と、前記一端部において前記周壁部に部分的に対向する複数の突起部とを有し、前記複数の突起部に前記基板の複数の箇所が支持されることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、毛細管現象によって周壁部の内面と支持部材の外面との隙間に水滴が侵入しても、基板を支持する支持部材の一端部では、周壁部の内面と支持部材の外面との隙間が広くなるので水滴の吸引力が弱くなる。このため、基板側への水滴の移動を防ぐことができ、基板上の電子部品を腐食させることがない。また、簡易かつ安価な構成で防水構造を得ることができる。
【0009】
た、周壁部の内面に対する対向面積が、突起部よりも支持部本体で大きいので、周壁部の内面と支持部本体の外面との隙間で水滴に対する保持力が大きくなる。このため、基板側への水滴の移動を効果的に防止することができる。また、複数の突起部により、基板が複数の箇所で支持されるため、基板に反りや歪みが生じても、組み立て時のガタや誤差を吸収することができる。
【0010】
また本発明の上記防水構造は、前記周壁部の内面と前記複数の突起部の外面との隙間が、前記周壁部の内面と前記支持部本体の外面との隙間よりも広くなるように、前記複数の突起部の厚みが薄く形成されることを特徴とする。この構成によれば、周壁部の内面と突起部の外面との隙間が広くなることで、基板の手前で毛細管現象による水滴の吸引力を弱めて、基板側への水滴の移動を効果的に防止することができる。
【0011】
また本発明の上記防水構造は、前記周壁部の内面と前記複数の突起部の外面との隙間が0.55mmから0.75mmであり、前記周壁部の内面と前記支持部本体の外面との隙間が0.15mmから0.35mmであることを特徴とする。この構成によれば、毛細管現象による基板側への水滴の移動をより効果的に防止することができる共に、ケースと支持部材との組み付け性を確保しつつ、ケースと支持部材とを適切に嵌め合わせることができる。
【0012】
また本発明の上記防水構造は、スイッチ装置に適用されることを特徴とする。この構成によれば、基板に搭載された電子部品が水滴の侵入によって腐食されるのを防ぎ、水滴の侵入に起因するスイッチ装置の誤作動や故障を防止することができる。また、簡易な構成で、基板への水滴侵入を防止することができるため、安価なスイッチ装置を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、支持部材の一端部における周壁部の内面と支持部材の外面との隙間を、支持部材の少なくとも一端部以外における当該隙間よりも広くすることで、簡易かつ安価な構成でケース内への水滴の浸入を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に係るエンジンスタートスイッチの斜視図である。
図2】本実施の形態に係るエンジンスタートスイッチの断面斜視図である。
図3】本実施の形態に係る後部カバーの斜視図である。
図4】本実施の形態に係る防水構造の説明図である。
図5】本実施の形態に係るエンジンスタートスイッチの排水構造の斜視図である。
図6】本実施の形態に係るエンジンスタートスイッチの排水構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1及び図2を用いて、本実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係るエンジンスタートスイッチの斜視図である。図2は、本実施の形態に係るエンジンスタートスイッチの断面斜視図である。図2Aは、図1のエンジンスタートスイッチを鉛直平面で切断した断面斜視図であり、図2Bは、図1のエンジンスタートスイッチを水平面で切断した断面斜視図である。なお、本実施の形態では、エンジンスタートスイッチに防水構造及び排水構造を適用した例について説明するが、この構成に限定されない。本実施の形態に係る防水構造及び排水構造は、水滴の浸入を防止する電子機器に適用可能であり、例えば、スライド式のスイッチ等の他のスイッチ装置にも適用可能である。また、図2A及び図2Bでは、説明の便宜上、コイルアンテナのアンテナを省略して記載する。
【0016】
図1及び図2に示すように、エンジンスタートスイッチ1は、自動車のダッシュボード等に実装され、操作部材2の押圧操作によってエンジンのオンオフを制御するように構成されている。エンジンスタートスイッチ1の操作部材2はケース3に収容されており、操作部材2の操作面21がケース3から外部に露出されている。ケース3の前端には、操作面21の外周を囲うリング状の外装部材4が設けられている。ケース3の後端には、開口端を覆う後部カバー5が設けられている。ケース3内にはLED61、62が配置された基板6が収められており、基板6は後部カバー5によって後方から支持されている。基板6の表面には、エンジンスタートスイッチ1のオンオフを制御するラバーコンタクト7が載置されている。
【0017】
操作部材2には、筒状のスライダ8が固定されており、操作部材2とスライダ8とが一体的にケース3内でスライド可能となっている。スライダ8は、基板6に向かって延びており、後端部がラバーコンタクト7に接している。スライダ8の前方部分には、無線通信用のコイルアンテナ65がスライダ8の外周を囲うように設けられている。スライダ8の上部側には、スライダ8の延在方向に沿って、操作部21の所定箇所に光を伝えるライトプレート10が設けられている。また、ケース3内は上記各部材によって複数の空間に仕切られており、スライダ8の下方空間にはコイルアンテナ65と基板6とを接続するためのコネクタ66が設けられている。
【0018】
ケース3は、ポリアセタール、ABS(acrylonitrile butadiene styrene)、ナイロン(登録商標)等の合成樹脂によって円筒形状に形成されている。ケース3は、基板6や各部材の収容空間を形成する外周壁部31と、収容空間を仕切る内壁部32とを有している。また、外周壁部31には、スイッチ内の水滴を外部へ排水するための一対の排水口33a、33bが設けられている。エンジンスタートスイッチ1は、この排水口33a、33bを下方に向けた状態でダッシュボードに実装される。これにより、ケース3内の水滴が自重により排水口33a、33bに向かうようになっている。
【0019】
操作部材2は、透光性材料によって操作面21を底面とした有底筒形状に形成されており、操作面21を前方に突出させた状態でケース3に収容されている。操作部材2は、基板6上のLED61、62によって照光される。また、操作部材2の周壁部分にはフランジ22が形成されており、フランジ22にコイルアンテナ65の周囲を覆う筒状部23が設けられている。筒状部23には、ケース3の排水口33bの近傍に切欠き25が形成されている。詳細は後述するが、切欠き25は、排水口33bから水滴が排水されやすいように、ケース3の排水口33bに向かってケース3の外周壁部31と筒状部23との対向面積を徐々に小さくしている。操作部材2のフランジ22は外装部材4によって被覆されている。また、操作部材2の内部には、LED61、62の光が互いに干渉しないように内壁部26が設けられている。
【0020】
スライダ8は、操作部材2に固定されており、略円筒形状に形成されている。スライダ8は、ケース3の内壁部32の内側に配置されており、内壁部32に前後方向にガイドされている。スライダ8が内壁部32によってガイドされることで、スライダ8に固定された操作部材2のスムーズな押圧操作が可能になっている。また、スライダ8の後端部は、ラバーコンタクト7を押圧する押圧部81となっている。押圧部81はラバーコンタクト7のドーム部71の先端に接触しており、押圧部81の中央にはLED61からの光を通過させるように穴82が開けられている。また、操作部材2及びスライダ8の内面には細かな凹凸が形成されている。細かな凹凸は、LED61からの光を散乱させて操作面21の輝度ムラを低減している。
【0021】
後部カバー5は、ケース3の後方の開口端を覆うカバーとしての機能の他に、基板6を支持する支持部材としても機能する。後部カバー5は、ポリアセタール、ABS、ナイロン等の合成樹脂によって形成されている。後部カバー5は、後端としての底壁51から周壁部52が立ち上がる有底筒状の支持部本体53と、周壁部52の前端から突出する複数の突起部54(図3参照)とを有している。後部カバー5は、ケース3の後方側から組み付けられ、ケース3の内部で基板6の外周を支持している。すなわち、後部カバー5は、基板6を支持する一端部側からケース3の開口端に向かって延びている。基板6は複数の突起部54によって複数の箇所で支持されており、基板6に生じた反りや歪みによる組み付け時のガタや誤差が吸収される。
【0022】
また、後部カバー5の組み付け時には、ケース3の内側に所定の隙間を空けて後部カバー5が嵌め合わされている。この所定の隙間は、ケース3内に後部カバー5をスムーズに挿入できる一方で、ケース3内で後部カバー5にガタ付きが生じない程度に設計されている。これにより、ケース3と後部カバー5との組み立て性を確保しつつ、ケース3と後部カバー5とを適切に嵌め合わせることが可能になっている。上記したように、ケース3の開口端では、ケース3と後部カバー5との間に隙間が開けられているため、ケース3の後端からの水滴の浸入を阻害するように防水構造が設けられている。
【0023】
この場合、後部カバー5の防水構造として、突起部54の厚みが周壁部52の厚みより薄く形成されている(図4B参照)。このため、ケース3の内面と後部カバー5の外面との隙間が、支持部本体53よりも突起部54で広くなっている。複数の突起部54は、ケース3の内面との間隔を大きくとることで、毛細管現象による吸引力を弱めている。よって、毛細管現象によってケース3の内面と後部カバー5の外面との隙間に浸入した水滴は、基板6側に移動しないように基板6の手前で保持される。
【0024】
後部カバー5の底壁51には、外部コネクタ(不図示)と接続させるソケット部57が形成されている。後部カバー5の防水構造として、ソケット部57の外面には水滴の侵入を防止する防水壁60が設けられている。ケース3の外周壁部31は、ソケット部57に沿って切欠かれており、この切欠き部分においてはケース3の外周壁部31の後端部と後部カバー5の防水壁60との間に微小の隙間が空けられている(図4D参照)。このため、比較的大粒な水滴がソケット部57の外面に付着しても、水滴がケース3の内部に侵入することがない。なお、本実施の形態に係る防水構造の詳細については後述する。
【0025】
基板6は、絶縁性樹脂等によって略円板形状に形成されている。基板6の表面には、不図示の各種電子回路や一対の固定接点63が形成されている。また、基板6の表面には、基板6の中央及びライトプレート10に対応する位置に、操作面21を照光させるためのLED61、62が実装されている。基板6の表面には、エンジンスタートスイッチ1をオンオフするラバーコンタクト7が載置されている。また、基板6の裏面には、後部カバー5のソケット部57に形成されたピン穴58(図3参照)に対応する位置に、複数の接続ピン64が設けられている。
【0026】
ラバーコンタクト7は、透光性の軟質の弾性材料で上面視円形状に形成されている。ラバーコンタクト7には、基板6上の一対の固定接点63に対応する位置に、一対のドーム部71が形成されている。ドーム部71の裏面には、基板6の固定接点63に接触可能な可動接点72が設けられている。
【0027】
一対のドーム部71の中央部分には、操作面21側に向かって環状支持部73が突出している。一対のドーム部71の環状支持部73には、スライド部材8の押圧部81が接触している。操作部材2が押圧されると、スライド部材8の押圧部81によって環状支持部73が押し込まれる。ドーム部71が押圧力を受けて変形し、可動接点72が基板6の固定接点63に接触することで、エンジンスタートスイッチ1のオンオフが制御される。エンジンスタートスイッチ1がオン時には基板6上のLED61、62が発光する。LED61、62から発せられた光は、透光性のラバーコンタクト7を透過して操作部材2の操作面21をケース3内から照光する。
【0028】
LED62の前方のライトプレート10は、透光性材料によってケース3の軸方向に延在する長尺形状に形成されており、スライダ8の上方空間に配置されている。ライトプレート10は、LED62の光路の一部を構成しており、操作面21の所定箇所に光を伝えている。コイルアンテナ65は、リング状の保持部材にコイル(不図示)を巻き付けて構成されている。このコイルアンテナ65によって車両側と車両キーとの間で車両固有のIDの認証処理が実施され、エンジンスタートスイッチ1の不正操作が防止される。
【0029】
このように構成されたエンジンスタートスイッチ1において、エンジン始動時に操作部材2の操作面21が押圧されると、操作部材2とスライダ8とが一体的に後方へスライドする。そして、スライダ8の押圧部81がラバーコンタクト7のドーム部71を押圧し、ドーム部71の裏面の可動接点が基板6上の固定接点63に接触する。これにより、エンジンスタートスイッチ1がオンになると共にLED61、62が発光する。
【0030】
LED61からの光は、透光性のラバーコンタクト7を透過し、押圧部81の穴82を介して操作面21の中央箇所を照光する。また、LED62からの光は、透光性のラバーコンタクト7を透過し、ライトプレート10を通じて操作面21の所定箇所を照光する。また、本実施の形態に係るエンジンスタートスイッチ1には、上記したように基板6への水滴の浸入を防止する防水構造が設けられている。
【0031】
以下、図3及び図4を用いて、本実施の形態に係るエンジンスタートスイッチの防水構造について詳細に説明する。図3は、本実施の形態に係る後部カバーの斜視図である。図4は、本実施の形態に係る防水構造の説明図である。図4Aは、比較例に係る防水構造を示す説明図であり、図4Bは、本実施の形態に係る防水構造を示す説明図である。また、図4Cは、本実施の形態に係るケースと後部カバーとの対向面積の変化を示す説明図である。
【0032】
図3に示すように、後部カバー5は、底壁51から周壁部52が立ち上がる有底筒形状の支持部本体53を有している。後部カバー5には、周壁部52の前端から突出する5つの突起部54が周方向に間隔を空けて設けられている。各突起部54は、先端に向かって幅が狭くなるように略山形状に形成されている。また、5つの突起部54のうち3つの突起部54は、周壁部52に形成されたガイド溝50によって、それぞれ二股に分けられている。ガイド溝50は、後部カバー5の組み付け時にケース3のガイド部(不図示)に係合される。また、突起部54の厚みは、周壁部52の厚みより薄く、突起部54の外面55と周壁部52の外面56との間に段差が形成されている。
【0033】
ところで、エンジンスタートスイッチ1の使用環境に応じて、結露等によりエンジンスタートスイッチ1の周辺に水滴が生じる場合がある。上記したように、エンジンスタートスイッチ1では、ケース3の内面と後部カバー5の外面と間には隙間が空けられている。このため、エンジンスタートスイッチ1の後端に水滴が付着すると、毛細管現象によってケース3と後部カバー5との隙間からケース3内に水滴が浸入するおそれがある。
【0034】
この場合、図4Aに示す比較例では、ケース3の外周壁部31の内面34と後部カバー5の周壁部52の外面56とに一様な隙間が空けられており、この隙間から浸入した水滴11が毛細管現象によってケース3内に吸い上げられる。この結果、基板6の表面まで水滴11が到達して、基板6の表面に搭載された電子部品が腐食するおそれがあった。
【0035】
これに対し、図4Bに示す本実施の形態では、突起部54の厚みが周壁部52の厚みより薄く、突起部54の外面55と周壁部52の外面56との間に段差が生じている。このため、外周壁部31の内面34と周壁部52の外面56との隙間C1よりも、外周壁部31の内面34と突起部54の外面55との隙間C2の方が広くなっている。外周壁部31の内面34と周壁部52の外面56との隙間C1に水滴11が侵入すると、基板6の手前まで水滴11が吸い上げられる。基板6の手前では、外周壁部31の内面34と突起部54の外面55との隙間C2が広くなった分だけ水滴の吸引力が弱まっている。これによって、基板6側への水滴11の移動が効果的に抑制される。
【0036】
加えて、図4Cに示すように、突起部54が基板6側に向かって幅が狭くなるように略山形状に形成されているので、ケース3の外周壁部31の内面34に対する後部カバー5の対向面積が突起部54よりも周壁部52の方で大きくなっている。このため、突起部54と周壁部52との境界において、ケース3の内面34に対する突起部54の対向面積A1と周壁部52の対向面積A2との面積差が急激に変化している。通常、狭閉空間から開放空間に水滴が移動する場合、狭閉空間での水滴に対する保持力が大きく、開放空間に水滴が移動し難い。このため、周壁部52側から突起部54側には水滴11が移動し難くなり、基板6側への水滴の移動がさらに効果的に抑制される。
【0037】
また、図4Dに示すように、後部カバー5のソケット部57には、ケース3の外周壁部31の後端面36に対向する防水壁60が設けられている。外周壁部31の後端面36と防水壁60との間には、上記した外周壁部31の内面34と周壁部52の外面56との隙間C1よりも狭い微小な隙間C3が空けられている。微小な隙間C3は、比較的大粒な水滴がソケット部57の外面に付着しても、水滴がケース3の内部に侵入しない程度に空けられている。このように組み付けの嵌め合いに関連しない箇所については、できるだけ隙間C3を狭くして防水し、組み付けの嵌めい合いに関連する箇所については、組み付け性を考慮した隙間C1が確保されている。
【0038】
次に、図5及び図6を用いて、本実施の形態に係るエンジンスタートスイッチの排水構造について詳細に説明する。図5は、本実施の形態に係るエンジンスタートスイッチの排水構造の斜視図である。図6は、本実施の形態に係るエンジンスタートスイッチの排水構造の説明図である。なお、図6Aは比較例に係る排水構造を示す説明図であり、図6Bは、本実施の形態に係る排水構造を示す説明図である。
【0039】
図5に示すように、エンジンスタートスイッチ1には、ケース3の外周壁部31に一対の排水口33a、33bが設けられている。また、ケース3の外周壁部31に対向する操作部材2の筒状部23には、ケース3の排水口33bの近傍に切欠き25が設けられている。切欠き25は、ケース3の排水口33bに向かって幅広になるように略山形状に切欠かれている。このため、ケース3の排水口33bに近付くにつれて、ケース3の外周壁部31と操作部材2の筒状部23との対向面積が徐々に小さくなっている。
【0040】
上記したように、狭閉空間から開放空間に水滴が移動する場合、狭閉空間での水滴に対する保持力が大きく、開放空間に水滴が移動し難い。この場合、図6Aに示す比較例では、ケース3の外周壁部31と操作部材2の筒状部23との対向面積が排水口33bに向かって一定である。ケース3の外周壁部31と操作部材2の筒状部23との空間は、排水口33bの開口端において、狭閉空間から一気に開放空間に変化する。このため、ケース3の外周壁部31と操作部材2の筒状部23との間で水滴11に対する保持力が大きくなり、排水口33bから水滴11が適切に排水されない。水滴11は、ケース3の外周壁部31と操作部材2の筒状部23との間で液溜まりになる。特に、水滴11が清涼飲料水等の粘性がある場合、液溜まりがそのまま乾燥してケース3と操作部材2とを固着させ、適切なスイッチ操作が阻害されるおそれがある。
【0041】
これに対し、図6Bに示す本実施の形態では、ケース3の外周壁部31と操作部材2の筒状部23との対向面積が徐々に小さくなるように、操作部材2の筒状部23に切欠き25が設けられている。ケース3の外周壁部31と操作部材2の筒状部23との空間は、排水口33bに向かって狭閉空間からなだらかに開放空間に変化する。このため、ケース3の外周壁部31と操作部材2の筒状部23との間で水滴11に対する保持力が小さくなり、排水口33bから水滴11が適切に排水される。このように、ケース3と操作部材2との間の水滴11を排水口33bから適切に排水することで、ケース3と操作部材2との固着が防止される。
【0042】
以上のように、本実施の形態に係るエンジンスタートスイッチ1によれば、ケース3の外周壁部31の内面34と後部カバー5の突起部54の外面55との隙間C2が、ケース3の外周壁部31の内面34と後部カバー5の周壁部52の外面56との隙間C1より広くなっている。このため、毛細管現象によってケース3の外周壁部31の内面34と後部カバー5の周壁部52の外面56との隙間C1に水滴が侵入しても、基板6を支持する後部カバー5の突起部54では、毛細管現象による水滴の吸引力が弱くなる。よって、基板6側への水滴の移動を防ぐことができ、基板6上の電子部品を腐食させることがない。
【0043】
なお、本発明は上記した本実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0044】
例えば、上記した本実施の形態では、ケース3の外周壁部31の内面34と後部カバー5の突起部54の外面55との隙間を0.55mmから0.75mmとすることが好ましい。これにより、毛細管現象による水滴の移動をより効果的に防止することができる。また、ケース3の外周壁部31の内面34と後部カバー5の周壁部52の外面56との隙間を0.15mmから0.35mmとすることが好ましい。これにより、ケース3と後部カバー5との組み立て性を向上しつつ、ケース3と後部カバー5とを適切に嵌め合わせることができる。
【0045】
また、上記した本実施の形態では、コイルアンテナ65は操作部材2の周囲に配置される構成としたが、この構成に限定されない。コイルアンテナ65は、基板6の裏面中央に実装される構成でもよい。この場合、コイルアンテナ65が基板6の裏面中央に配置されることで、コイルアンテナ65をリング状にしなくても、LED61、62の発光がコイルアンテナ65に遮られることがない。したがって、LED61、62の配置の自由度が向上される。また、エンジンスタートスイッチ1の装飾性に幅を持たせることができる。
【0046】
また、上記した本実施の形態では、基板6は、複数の突起部54によって複数の箇所で支持される構成としたが、この構成に限定されない。基板6の全周が後部カバー5によって支持されてもよい。
【0047】
また、上記した本実施の形態では、防水構造はエンジンスタートスイッチ1に適用される構成としたが、この構成に限定されない。防水構造は、ケース3の内部に電子部品を収容する構成であれば、どのような装置に適用されてもよい。
【0048】
また、上記した本実施の形態では、突起部54は先端に向かって幅が狭くなるように形成される構成としたが、この構成に限定されない。突起部54は、ケース3の外周壁部31内面34と突起部54外面55との対向面積が徐々に小さくなれば、どのように形成されてもよい。
【0049】
また、上記した本実施の形態では、ケース3の外周壁部31の内面34と後部カバー5の突起部54の外面55との対向面積が徐々に小さくなる構成としたが、この構成に限定されない。ケース3の外周壁部31の内面34と後部カバー5の突起部54の外面55との隙間が、後部カバー5の少なくとも一端部において、少なくとも一端部以外の部分よりも広ければ、対向面積は小さくならなくてもよい。
【0050】
また、上記した本実施の形態では、後部カバー5は、筒状の周壁部52を有する構成としたが、この構成に限定されない。後部カバー5は、ケース3の外周壁部31の内面34に対向する外面を有していればよく、例えば、柱状に形成されていてもよい。
【0051】
また、上記した本実施の形態では、ケース3の外周壁部31は円筒形状を有する構成としたが、この構成に限定されない。ケース3の外周壁部31は、多角形状の筒状に形成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明は、簡易かつ安価な構成でケース内への水滴の浸入を防ぐことができるという効果を有し、特に、エンジンスタートスイッチに適用される防水構造及びスイッチ装置に有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 エンジンスタートスイッチ
3 ケース
5 後部カバー(支持部材)
6 基板
31 外周壁部(周壁部)
34 周壁部の内面
53 支持部本体
54 突起部
55、56 支持部材の外面
図1
図2
図3
図4
図5
図6