特許第6049082号(P6049082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6049082ブレーカー及びそれを備えた安全回路並びに2次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049082
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】ブレーカー及びそれを備えた安全回路並びに2次電池
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/04 20060101AFI20161212BHJP
   H01H 37/54 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H01H37/04 A
   H01H37/54 C
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-269877(P2013-269877)
(22)【出願日】2013年12月26日
(62)【分割の表示】特願2013-528443(P2013-528443)の分割
【原出願日】2012年10月12日
(65)【公開番号】特開2014-78530(P2014-78530A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年10月9日
(31)【優先権主張番号】特願2011-227389(P2011-227389)
(32)【優先日】2011年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390025140
【氏名又は名称】ボーンズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(72)【発明者】
【氏名】浪川 勝史
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−174816(JP,A)
【文献】 特開2007−036026(JP,A)
【文献】 特開平07−125021(JP,A)
【文献】 特開平06−120087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/00 − 37/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を有する固定片と、先端部に可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点から離反するように前記可動片を作動させる熱応動素子と、前記固定片、可動片及び熱応動素子を収容する樹脂ケースとを備えたブレーカーにおいて、
前記樹脂ケースは、周辺部分から陥没する凹部を有し、
前記固定片は、平面視で矩形状の端縁から一部が退避する退避部を有し、前記樹脂ケースに埋設され、
前記退避部は、前記樹脂ケースの凹部から平面視で該樹脂ケースの内側に退避することを特徴とするブレーカー。
【請求項2】
前記固定接点から前記可動接点が離反しているときに、前記熱応動素子を介して前記可動片と前記固定片を導通させる正特性サーミスターをさらに備え、
前記退避部によって退避された固定片の端縁は、前記正特性サーミスターの端縁に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載のブレーカー。
【請求項3】
前記樹脂ケースは、前記正特性サーミスターを収容する収容部を有し、
前記収容部は、前記正特性サーミスターの端縁の側面と対向する枠を有し、
前記退避部によって退避された固定片の端縁は、前記枠に沿って形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブレーカー。
【請求項4】
前記退避部は、前記樹脂ケースの凹部からの距離が大きくなる方向に退避することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のブレーカー。
【請求項5】
前記退避部によって退避された固定片の端縁の少なくとも一部は、円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のブレーカー。
【請求項6】
前記凹部によってゲート跡が収容されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のブレーカー。
【請求項7】
前記凹部は、製品の表面に形成される凹状の刻印である、又は製品の表面に形成される凸状の刻印の周辺に設けられている凹部であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のブレーカー。
【請求項8】
前記退避部は、前記凹部の外縁に沿う形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のブレーカー。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のブレーカーを備えたことを特徴とする電気機器用の安全回路。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のブレーカーを備えたことを特徴とする2次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の2次電池等に内蔵される小型のブレーカー等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の電気機器の2次電池やモーター等の保護装置としてブレーカーが使用されている。ブレーカーは、充放電中の2次電池の温度が過度に上昇した場合、又は自動車、家電製品等の機器に装備されるモーター等に過電流が流れた場合等の異常が生じた際に、2次電池又はモーター等を保護するために電流を遮断する。このような保護装置として用いられるブレーカーは、機器の安全を確実に確保するために、温度変化に追従して正確に動作することが求められる。
【0003】
また、ブレーカーが、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型携帯情報端末機器及びスマートフォンと称される薄型の多機能携帯電話機等の電気機器に装備される2次電池等の保護装置として用いられる場合、上述した安全性の確保に加えて、小型化が要求される。特に、近年の携帯情報端末機器にあっては、ユーザの小型化(薄型化)の志向が強く、各社から新規に発売される機器は、デザイン上の優位性を確保するために、小型に設計される傾向が顕著である。こうした背景の下、携帯情報端末機器を構成する一部品として、2次電池と共に実装されるブレーカーもまた、さらなる小型化が強く要求されている。
【0004】
ブレーカーには、温度変化に応じて動作し、電流を導通又は遮蔽する熱応動素子が備えられている。特許文献1には、熱応動素子としてバイメタルを適用したブレーカーが示されている。バイメタルとは、熱膨張率の異なる2種類の板状の金属材料が積層されてなり、温度変化に応じて形状を変えることにより、接点の導通状態を制御する素子である。同文献に示されたブレーカーは、固定片(ベースターミナル)、可動片(可動アーム)、熱応動素子、PTCサーミスター等の部品が、樹脂ケースに収容されてなり、固定片及び可動片の端子が電気機器の電気回路に接続されて使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開WO2011/105175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図9は、特許文献1に開示されている従来のブレーカーの底面の一例を示す。このブレーカー100は、小型化(低背化)を推進するために、インサート成型された固定片2の先端部23及びその近傍の一部が樹脂ケース7の底面から露出される構造を有している。
【0007】
樹脂ケース7を形成する樹脂材料は、金型における樹脂ケース7の底面を形成する部分に設けられているゲートから供給される。ゲート内で硬化した樹脂は、離型時又はその後切断され、樹脂ケース7の底面には、その一部がゲート跡76として残される。
【0008】
ゲート跡76が樹脂ケース7の底面から突出すると、ブレーカー100を2次電池等に搭載する際、支障が生ずることがある。そのため、ブレーカー100には、図9に示すように、樹脂ケース7の底面に凹部75を設け、その凹部75内にゲート跡76を収容し、樹脂ケース7の底面からゲート跡76が突出しない構造が適用されている。
【0009】
また、樹脂ケース7の底面には、ブレーカー100の品番や生産ロット番号を示す刻印78を形成することがある。このような刻印78も、上記ゲート跡76と同様に、樹脂ケース7の底面から突出しないように、樹脂ケース7の底面に設けられた凹部77内に刻印78を収容する構造が提案されている。
【0010】
しかしながら、樹脂ケース7の底面から露出する固定片2の端縁と凹部75,77の側壁との距離(すなわち、樹脂ケースを成形する金型のキャビティ空間を区画する壁に設けられた凸部と固定片2との距離)が過度に接近すると、金型のキャビティ空間に樹脂材料を充填する際に、樹脂材料の流れが局所的に阻害され、充填不良が発生する虞がある。また、樹脂ケース7の肉厚が局所的に不足し、樹脂ケース7の強度低下を招く虞がある。同様に、可動片4の一部と凹部75,77との距離が過度に接近する場合も、樹脂材料の充填不良や樹脂ケース7の強度低下が発生する虞がある。
【0011】
このような樹脂材料の充填不良を抑制するため、本願発明者は、固定片2及び可動片4と凹部75,77とを所定の距離以上隔てて配置することを検討した。しかしながら、このような配置は樹脂ケース7の肥大化を招来し、ブレーカーの小型化を妨げる一因となる。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、樹脂材料の充填不良や樹脂ケースの強度低下を伴うことなく、小型化を実現するブレーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明のブレーカーは、固定接点を有する固定片と、先端部に可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点から離反するように前記可動片を作動させる熱応動素子と、前記固定片、可動片及び熱応動素子を収容する樹脂ケースとを備えたブレーカーにおいて、前記樹脂ケースは、周辺部分から陥没する凹部を有し、前記固定片は、前記樹脂ケースの凹部から平面視で該樹脂ケースの内側に退避する退避部を有し、前記樹脂ケースに埋設されるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のブレーカーによれば、樹脂ケースに埋設された固定片が樹脂ケースの凹部から退避するように、固定片に退避部が設けられているので、固定片と凹部との間における樹脂材料の充填不良や樹脂ケースの強度低下を伴うことなく、凹部の位置、形状及び大きさの自由度を高めることができる。これにより、ブレーカーの小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態によるブレーカーの構成を示す組み立て斜視図。
図2】通常の充電又は放電状態におけるブレーカーの動作を示す断面図。
図3】過充電状態又は異常時などにおけるブレーカーの動作を示す断面図。
図4】通常の充電又は放電状態におけるブレーカーの別の断面図。
図5】同ブレーカーを構成する樹脂ケース及び固定片の底面図。
図6】同樹脂ケース及び固定片の変形例のバリエーションを示す底面図。
図7】同樹脂ケース及び固定片の変形例の別のバリエーションを示す底面図。
図8】同樹脂ケース及び固定片の変形例のさらに別のバリエーションを示す底面図。
図9】従来のブレーカーを構成する樹脂ケース及び固定片の底面図。
図10】ブレーカーを備えた2次電池パックの構成を示す平面図。
図11】ブレーカーを備えた安全回路の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態によるブレーカーについて図面を参照して説明する。図1乃至図3はブレーカーの構成を示す。ブレーカー1は、固定接点21を有する固定片2と、先端部に可動接点3を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6と、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収容する樹脂ケース7等によって構成されている。樹脂ケース7は、ケース本体71とケース本体71の上面に装着される蓋部材72等によって構成されている。
【0017】
固定片2は、例えばリン青銅を主成分とする金属板(この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、ケース本体71にインサート成形により埋め込まれている。固定片2の一端には外部と電気的に接続される端子22が形成され、他端部23の近傍にはPTCサーミスター6が載置されている。PTCサーミスター6は、固定片2の他端部23の近傍に3箇所形成された凸状のダボ(小突起)24(図5参照)の上に載置される。固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル−銀合金の他、銅−銀合金、金−銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により可動接点3に対向する位置に形成され、ケース本体71の上方に形成されている開口73の一部から露出されている。端子22はケース本体71の一端から外側に突出されている。
【0018】
可動片4は、固定片2と同等の金属板をプレス加工することによりアーム状に形成されている。可動片4の長手方向の一端には外部と電気的に接続される端子41が形成されてケース本体71から外側に突出される。本実施形態においては、固定片2の端子22と可動片4の端子41の高さを揃えるために、可動片4は、樹脂ケース7の内部の段曲げ部46においてクランク状に屈曲されている。可動片4の他端(アーム状の可動片4の先端に相当)には可動接点3が形成されている。可動接点3は、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。可動片4は、可動接点3と端子41の間に、固定部42(アーム状の可動片4の基端に相当)、弾性部43を有している。固定部42においてケース本体71と蓋部材72によって挟み込まれて可動片4が固定され、弾性部43が弾性変形することにより、その先端に形成されている可動接点3が固定接点21の側に押圧されて接触し、固定片2と可動片4とが通電可能となる。
【0019】
また、弾性部43の下面には、熱応動素子5に対向して一対の小突起44が形成されている。小突起44と熱応動素子5とは接触して、小突起44を介して熱応動素子5の変形が弾性部43に伝達される(図2及び図3参照)。可動片4の材料としては、リン青銅を主成分とするものが好ましい。この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの導電性弾性材料を用いてもよい。なお、可動片4は、弾性部43において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収容できる限り特に限定はなく、動作温度及び復帰温度における弾性力、接点の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。
【0020】
熱応動素子5は円弧状に湾曲した初期形状をなし、バイメタル、トリメタルなどの複合材料からなる。過熱により動作温度に達すると湾曲形状はスナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り動作により可動片4の弾性部43が押し上げられ、かつ弾性部43の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形が望ましく、小型でありながら弾性部43を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。なお、熱応動素子5の材料としては、例えば、高膨脹側に銅−ニッケル−マンガン合金又はニッケル−クロム−鉄合金、低膨脹側に鉄−ニッケル合金をはじめとする、洋白、黄銅、ステンレス鋼など各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。
【0021】
熱応動素子5の逆反り動作により固定片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、動作電流、動作電圧、動作温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。
【0022】
樹脂ケース7を構成するケース本体71及び蓋部材72は、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの樹脂により成形されている。ケース本体71には、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6などを収容するための収容部73などが開口されている。また、ケース本体71の収容部73の内部には、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6の端縁と当接される枠73a、73b、73c及び73dが形成されている。各枠73a、73b及び73cの内側と外側で、ケース本体71は階段状に形成される。また、枠73dの内側と外側で、固定片2及びケース本体71は階段状に形成される。可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6は、ケース本体71への組み込み時に枠73a、73b、73c及び73dとそれぞれ当接され、枠73a、73b、73c及び73dによって案内される。さらに、ケース本体71に組み込まれた可動片4及び熱応動素子5の端縁は、枠73a、73b及び73cによってそれぞれ当接され、熱応動素子5の逆反り時に枠73a、73b及び73cによって案内される。また、PTCサーミスター6の端縁の側面が、該側面に対向するように形成されている枠73dに当接され、PTCサーミスター6は、位置決めされる。
【0023】
蓋部材72には、カバー片8がインサート成形によって埋め込まれている。カバー片8は、上述したリン青銅を主成分とする金属板又はステンレス鋼等の金属板をプレス加工することにより形成される。カバー片8は、図2及び図3に示すように、可動片4の上面と適宜当接し、可動片4の動きを規制すると共に、蓋部材72のひいては筐体としての樹脂ケース7の剛性・強度を高める。
【0024】
図1に示すように、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容したケース本体71の開口73を塞ぐように、蓋部材72が、ケース本体71の上面に装着される。ケース本体71と蓋部材72とは、例えば超音波溶着によって接合される。
【0025】
図2は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は初期形状を維持し(逆反り前であり)、固定接点21と可動接点3は接触し、可動片4の弾性部43などを通じてブレーカー1の両端子22、41間は導通している。可動片4の弾性部43と熱応動素子5とは接触しており、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスター6及び固定片2は、回路として導通している。しかし、PTCサーミスター6の抵抗は、可動片4の抵抗に比べて圧倒的に大きいため、PTCサーミスター6を流れる電流は、固定接点21及び可動接点3を流れる量に比して実質的に無視できる程度である。
【0026】
図3は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、PTCサーミスター6が過熱され、動作温度に達した熱応動素子5は逆反りし、可動片4の弾性部43が押し上げられて固定接点21と可動接点3とが離反する。このとき、固定接点21と可動接点3の間を流れていた電流は遮断され、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点3の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は安全装置の他の機能に充てることができる。
【0027】
過充電状態を解除し、又は異常状態を解消すると、PTCサーミスター6の発熱も収まり、熱応動素子5は復帰温度に戻り、元の初期形状に復元する。そして、可動片4の弾性部43の弾性力によって可動接点3と固定接点21とは再び接触し、回路は遮断状態を解かれ、図2に示す導通状態に復帰する。
【0028】
図4は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の別の断面を示す。ブレーカー1の樹脂ケース7のケース本体71の底面には、凹部75(後述する図5参照)が形成されており、図4は、凹部75が含まれる断面である。
【0029】
図5は、ブレーカー1を構成する樹脂ケース7のケース本体71及び固定片2の底面を示す。固定片2の他端部23は、ケース本体71の底面に露出している。ケース本体71の底面の隅部の近傍には、周辺部分から陥没する凹部75,77が形成されている。
【0030】
凹部75は、ゲート跡76を収容する。ゲート跡76は、金型のゲート内で硬化し離型時又はその後切断された樹脂材料の痕跡であり、凹部75の底面から若干量突出する。ゲート跡76の先端がケース本体71の底面から突出しないように、凹部75の深さが設定される。また、凹部75の半径は、ゲートの径に応じて設定される。
【0031】
凹部77は、凸状の刻印78の周辺に形成される。図5においては、一例として文字列”A”の刻印78が、凹部77の底面から突出して形成されている。刻印78が表す文字列によって、例えばブレーカー1の品番や生産ロット番号を示すことができる。ゲート跡76と同様に、刻印78の先端がケース本体71の底面から突出しないように、凹部77の深さ及び刻印78の突出量が設定される。また、凹部77の形状及び大きさは、刻印78に応じて設定される。なお、ここでは刻印78の形態として文字列を例示しているが、記号、図形等によって凹部77や刻印78を形成しても同等の効果を得ることができる。
【0032】
本実施形態のブレーカー1は、図9に示した底面視で矩形の固定片2に対して、図5において破線のハッチングで示した退避部25を有する点が相違する。固定片2は、通常であれば加工容易性を考慮して、図9に示すように矩形の形状に形成される。この矩形の形状は、図5において固定片2の仮想の端縁として破線で示される。なお、固定片2の仮想の端縁が含まれる矩形は、PTCサーミスター6等の他の部材を考慮に入れて、固定片2が備えるべき形状、寸法、機能などから推定できる。本実施形態のブレーカー1は、固定片2の仮想の端縁から内側に退避する退避部25を設けることにより、固定片2の端縁とケース本体71の凹部75,77との距離D(それぞれの最短距離)が所定の第1距離D1以上になるように構成されている。すなわち、固定片2の仮想の端縁とケース本体71の凹部75,77との距離Dが第1距離D1未満となる場合であっても、退避部25は、固定片2の端縁とケース本体71の凹部75,77との距離Dが第1距離D1以上隔たるように、凹部75,77から退避する。第1距離D1は、ケース本体71を形成する樹脂材料の金型内における流れ具合や、ケース本体71の機械的強度、ブレーカー1の耐電圧、温度特性等を考慮して、さらにはUL(Underwriters Laboratories Inc.)規格やTUV(技術検査協会)規格等の各種の安全規格において使用する樹脂材料ごとに定められている樹脂部分の最小肉厚と同程度以上に設定される。より具体的には、第1距離D1は、例えば0.1mm〜0.40mmに設定される。ブレーカー1の小型化を実現するためには、第1距離D1を上記上限値以下に設定することが望ましい。また、樹脂材料の流れ不良を抑制すると共に、ケース本体71の機械的強度、ブレーカー1の耐電圧等を確保するためには、第1距離D1を上記下限値以上に設定することが望ましい。
【0033】
退避部25を設けることにより、固定片2の実際の端縁と凹部75,77との距離は、固定片2の仮想の端縁と凹部75,77との距離より大きくすることができる。従って、固定片2の実際の端縁と凹部75,77との距離が第1距離D1より長く確保されていれば、固定片2の仮想の端縁と凹部75,77との距離は、第1距離D1より短くなってもよい。なお、図5に示すように、退避部25と凹部75とが平面視(底面視)で重複する場合は、固定片2の仮想の端縁と凹部75との距離は、負値として距離を比較することができる。
【0034】
図5に示すように、退避部25によって退避された固定片2の端縁は、PTCサーミスター6の端縁に沿って形成されている。換言すれば、退避部25は、平面視で固定片2の端縁がPTCサーミスター6の端縁に沿うように、仮想の端縁から内側に退避して形成されている。本実施形態では、退避部25によって退避された固定片2の端縁は、PTCサーミスター6の端縁に対して、平面視で相似形となるように形成されている。また、図1及び図5に示すように、ケース本体71に形成されている枠73dが、PTCサーミスター6の端縁に対向して形成されているので、退避部25によって退避された固定片2の端縁は、枠73dに沿って形成され、枠73dに対して、平面視で相似形となるように形成され、枠73dの外側でケース本体71を構成する樹脂に埋設されている。ここで、相似形とは、両者の外形が略一致することを意味し、両者の輪郭が著しく相違しないように互いに近い曲率で形成されていればよい。また、その曲率は、退避部25によって退避された領域において一定とは限らず、部分的に異なっていてもよい。
【0035】
退避部25においては、固定片2を形成する金属材料が除去されており、ケース本体71のインサート成形時にケース本体71を形成する樹脂材料が充填されている。退避部25は、プレス加工によって形成される。金属材料が除去された部分には、樹脂材料が充填されるので、従来と同等の金型を使用して、ケース本体71を安価に成形することができる。退避部25によって、固定片2の端縁とケース本体71の凹部75,77との距離Dを第1距離D1以上隔てることができるので、ケース本体71を成形する金型のキャビティ空間が局所的に狭くなることが抑制される。その結果、固定片2の端縁と凹部75,77との間における樹脂材料の充填不良や樹脂ケース7の強度低下を抑制できる。
【0036】
固定片2の端縁に退避部25を設けることにより、固定片2の端縁と凹部75,77との距離Dを第1距離D1以上に確保しながら、凹部75,77の配置の自由度を高めることができ、凹部75,77を固定片2のダボ24すなわちPTCサーミスター6の近傍に集約して配置することが可能になる。特に、本実施形態においては、退避部25によって退避された固定片2の端縁が、PTCサーミスター6の端縁に沿って形成されているので、凹部75,77をより一層PTCサーミスター6の近傍に集約して配置することが可能になる。これにより、樹脂ケース7ひいてはブレーカー1の小型化を図ることができる。
【0037】
また、退避部25によって退避された固定片2の端縁が、枠73dの外側でケース本体71を構成する樹脂に埋設されているので、固定片2の端縁をケース本体71に強固に結合させることができる。また、退避部25によって退避された固定片2の端縁が、枠73dに沿って形成され、枠73dに対して、平面視で相似形となるように形成されているので、枠73dの外側において固定片2がケース本体71に埋設される領域の分布を均一にすることができる。これにより、固定片2及びケース本体71に応力が集中することを回避でき、ブレーカー1の強度を高めることができる。枠73dが、PTCサーミスター6の端縁の側面に対向するように形成されているので、PTCサーミスター6の位置及び姿勢が適正に維持される。これにより、PTCサーミスター6と固定片2のダボ24との接触状態が安定し、上述したPTCサーミスター6による自己保持回路を有効に機能させることができる。
【0038】
また、凹部75,77の配置の自由度を高めて、PTCサーミスター6の近傍に凹部75,77を集約して配置することにより、可動片4の一部(特に可動片4の段曲げ部46)と凹部75,77との距離Dを長く設定することができる。これにより、可動片4と凹部75,77との距離Dを第2距離D2(図4参照)以上に確保して、可動片4と凹部75,77との間における樹脂材料の充填不良や樹脂ケース7の強度低下を抑制しつつ、ブレーカー1の小型化を図ることが容易となる。第2距離D2は、第1距離D1と同様に、ケース本体71を形成する樹脂材料の金型内における流れ具合や、ケース本体71の強度、ブレーカー1の耐電圧さらには各種の安全規格等を考慮して定められる。
【0039】
(変形例)
図6は、退避部25及び凹部75の変形例のバリエーションを示している。以下は、凹部75に対して退避する例を示しているが、凹部77に対して退避する場合も同様である。退避部25の形状は、凹部75から退避する(逃げる)形状であれば、特に限定されない。図6(a)に示すように、固定片2の端縁の角を凹部75に対向するように丸めた円弧形状や、図6(b)に示すように、固定片2の端縁の角を凹部75に対向するように落とした角取り形状であってもよい。また、図6(c)に示すように、固定片2の端縁の角を凹部75の外縁に沿って相似形に切り欠いた形状や、図6(d)に示すように、固定片2の端縁の角を凹部75に対向するように矩形に切り欠いた形状であってもよい。また、図6(e)に示すように、矩形に切り欠いた隅部を逆角取り状に埋めた形状や、図6(f)に示すように、矩形に切り欠いた隅部を丸めた形状であってもよい。このような角取りや丸み付けの形状は、固定片2の端子22の角や可動片4の端子41の角等、その他の通常の角に対して加工上必要とされる程度よりも大きく、又は退避部25が形成されていない通常の角に施される程度よりも著しく大きく角取り又は丸み付けされているものを含む。
【0040】
(変形例)
図7は、退避部25及び凹部75の変形例の別のバリエーションを示している。図7(a)に示すように、凹部75は、ケース本体71の端縁の一辺に達する形状や、図7(b)に示すように、ケース本体71の端縁の二辺に達する形状であってもよい。
【0041】
(変形例)
図8は、退避部25及び凹部75の変形例のさらに別のバリエーションを示している。図8(a)に示すように、固定片2の端縁の一辺を凹部75の外縁に沿って相似形に切り欠いた形状や、図8(b)に示すように、固定片2の端縁の一辺を凹部75に対向するように矩形に切り欠いた形状であってもよい。また、図8(c)に示すように、矩形に切り欠いた隅部を逆面取り状に埋めた形状や、図8(d)に示すように、矩形に切り欠いた隅部を丸めた形状であってもよい。また、図8(e)に示すように、凹部75は、ケース本体71の端縁の一辺に達する形状であってもよい。さらにまた、図8(f)に示すように、退避部25が固定片2の外縁ではなく、内部に形成される形態であってもよい。
【0042】
このように退避部25の形状は、凹部75,77から第1距離D1以上隔てる形状であれば、円形又は矩形を基調とする形状に限られず、例えば、多角形を基調とする形状であってもいいし、楕円や放物線など任意の曲線であってもよい。
【0043】
なお、凹部75,77の位置等については、ゲート跡76と固定片2とが退避部25を介在させて接近する箇所の近傍(退避部25が設けられた固定片2の端縁の近傍)であり、退避部25と、凹部75,77とが第1距離D1以上隔てられて、ブレーカー1の小型化が達成できれば特に限定されない。例えば、図5等においては、凹部75と凹部77(刻印78)とがケース本体71の端縁の一辺(可動片4の端子41が突出される端縁の辺)の近傍に偏在する態様を例示しているが、それぞれ別の辺の近傍に設けるなどしてもよい。また、例示した形態とは別の辺(固定片2の端子22が突出される端縁の辺、又はそれに直交する辺)の近傍に偏在する態様であってもよい。また、各辺の近傍に分散して設けられていてもよい。ブレーカー1の強度・剛性が高められることを考慮すると、図5,6,8(図8(e)を除く)に示すように、ケース本体71の端縁の辺に達しない位置に凹部75,77が設けられている形態、すなわちケース本体71の端縁が一周に亘って閉じており、ケース本体71の側面が凹部75,77によって開口されていない簡素な形態がより好ましい。特に、ケース本体71を多数個同時に成形できるように多数個取りの金型を適用する場合においても、その金型の加工容易性を考慮すると、凹部75,77の側面又は底面がケース本体71の端縁の辺に達しない位置に凹部75,77が設けられている簡素な形態が好ましい。また、ブレーカー1の小型化を図るためには、退避部25と凹部75,77が底面で重複する程度に、固定片2の端縁とケース本体71の凹部75,77とを接近させるのが望ましい。
【0044】
以上のように、本実施形態のブレーカー1によれば、樹脂ケース7のケース本体71に埋設された固定片2がケース本体71の凹部75,77から退避するように、固定片2に退避部25が設けられているので、固定片2と凹部75,77との間における樹脂材料の充填不良や樹脂ケース7の強度低下を伴うことなく、凹部75,77の位置、形状及び大きさの自由度を高めることができる。これにより、ブレーカー1の小型化を実現できる。
【0045】
特に、退避部25がケース本体71の凹部から所定の第1距離D1以上隔てて退避するので、樹脂材料の充填不良や樹脂ケースの強度低下等をより一層抑制できる。
【0046】
また、可動片4から所定の第2距離D2以上隔てた位置に凹部75,77が設けられているので、可動片4と凹部75,77との間における樹脂材料の充填不良や樹脂ケース7の強度低下を伴うことなく、ブレーカー1の小型化を実現できる。
【0047】
また、凹部75によってゲート跡76が収容されるので、金型内におけるゲートの配置の自由度を高めて、樹脂材料の充填不良を抑制しつつ、ブレーカー1の小型化を実現できる。また、製品の表面に形成される凸状の刻印78の周辺に凹部77が設けられているので、刻印78の配置の自由度を高めて、樹脂材料の充填不良を抑制しつつ、ブレーカー1の小型化を実現できる。さらに刻印78は、適宜に選定すれば、ブレーカー1の各個体を製造するのに用いた金型及びキャビティを識別する追跡指標になるので、品質管理に有用である。
【0048】
また、退避部25を凹部75,77の外縁に沿う形状とする形態によれば、凹部75,77の位置、形状及び大きさの自由度がより一層高められ、樹脂ケース7のスペース効率の向上を図り、ブレーカー1のさらなる小型化を実現できる。また、第1距離D1及び第2距離D2を充分に大きくできるので、ブレーカー1を小型化しても樹脂ケース7の機械的強度が保たれる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくともブレーカーの樹脂ケース7が、周辺部分から陥没する凹部を有し、固定片2は、樹脂ケース7に埋設され、樹脂ケース7の凹部から第1距離D1以上隔てて退避する退避部25を有するように構成されていればよい。この場合において、凹部の形態は、ゲート跡76を収容する凹部75、刻印78の周辺に設けられる凹部77に限られることなく、例えば、製品の表面に形成される凹状の刻印等、周辺部分から陥没する全ての部位が含まれる。また、樹脂ケース7としてケース本体71のみならず蓋部材72に凹部75,77が形成される形態又は固定片2が埋設される形態も含まれる。
【0050】
また、本発明は種々の変形が可能であり、例えば、可動片4をバイメタル又はトリメタル等の積層金属によって形成することにより、可動片4と熱応動素子5とを一体的に形成する形態としてもよい。この場合、ブレーカー1の構成を簡素化すると共に、さらなる小型化・薄肉化を図ることができる。
【0051】
また、可動片4は、段曲げ部46を有する形態に限られず、弾性部43から端子41までが平坦に形成されている形態であってもよい。
【0052】
退避部25によって退避された固定片2の端縁は、その概略において、PTCサーミスター6及び枠73dに沿って形成され、PTCサーミスター6及び枠73dに対応して、平面視で相似形となるように形成されていればよく、固定片2の端縁の形状は、PTCサーミスター6及び枠73dに対応する形状から外れてもよい。例えば、ケース本体71を構成する樹脂材料の充填不良又はそれに伴うケース本体71と固定片2との間に好ましくない隙間が発生しない程度であれば、小さな突起や切り欠きにより相似形の対応が部分的に不完全となってもよい。
【0053】
また、本実施形態では、PTCサーミスター6による自己保持回路を有しているが、このような構成を省いた形態であっても、固定片2の端縁に退避部25を設けることにより、凹部75,77の配置の自由度が高められ、ブレーカー1の小型化を図ることができる。また、可動片4をバイメタル又はトリメタル等によって形成することにより、可動片4と熱応動素子5を一体的に形成する構成であってもよい。この場合、ブレーカーの構成が簡素化されて、さらなる小型化を図ることができる。
【0054】
また、特開2005−203277号公報に示されるような、固定部42又はその近傍において、端子41の側と可動接点3の側に分割されている構造に、本発明を適用してもよい。この場合にあっては、凹部75,77と同文献のアームターミナル6との距離が、第2距離D2以上に確保されていればよい。
【0055】
さらにまた、本発明は、特開2006−331705号公報に示されるような、2つの固定接点(同文献中、第1外部接続端子123−1、第2外部接続端子123−2)を有する形態にも適用可能である。この場合、凹部75,77と同文献の第1外部接続端子123−1及び第2外部接続端子123−2との距離が、それぞれ第1距離D1以上に確保されるよう、退避部25が形成されていればよい。
【0056】
また、本発明のブレーカー1は、2次電池パック、電気機器用の安全回路等にも広く適用できる。図10は2次電池パック100を示す。2次電池パック100は、2次電池101と、2次電池101の出力端回路中に設けたブレーカー1とを備える。図11は電気機器用の安全回路102を示す。安全回路102は2次電池101の出力回路中に直列にブレーカー1を備えている。
【0057】
以上のように、本発明は、固定接点を有する固定片と、先端部に可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点から離反するように前記可動片を作動させる熱応動素子と、前記固定片、可動片及び熱応動素子を収容する樹脂ケースとを備えたブレーカーにおいて、前記樹脂ケースは、周辺部分から陥没する凹部を有し、前記固定片は、前記樹脂ケースの凹部から退避する退避部を有し、前記樹脂ケースに埋設されればよい。
【0058】
このブレーカーによれば、樹脂ケースに埋設された固定片が樹脂ケースの凹部から退避するように、固定片に退避部が設けられているので、固定片と凹部との間における樹脂材料の充填不良や樹脂ケースの強度低下を伴うことなく、凹部の位置、形状及び大きさの自由度を高めることができる。これにより、ブレーカーの小型化を実現できる。
【0059】
このブレーカーにおいて、前記固定接点から前記可動接点が離反しているときに、前記熱応動素子を介して前記可動片と前記固定片を導通させる正特性サーミスターをさらに備え、前記退避部によって退避された固定片の端縁は、前記正特性サーミスターの端縁に沿って形成されていてもよい。
【0060】
このブレーカーによれば、凹部をより一層正特性サーミスターの近傍に集約して配置することが可能になる。これにより、樹脂ケースひいてはブレーカーの小型化を図ることができる。
【0061】
このブレーカーにおいて、前記樹脂ケースは、前記正特性サーミスターを収容する収容部を有し、前記収容部は、前記正特性サーミスターの端縁の側面と対向する枠を有し、前記退避部によって退避された固定片の端縁は、前記枠に沿って形成されていてもよい。
【0062】
このブレーカーによれば、枠の外側において固定片が樹脂ケースに埋設される領域の分布を均一にすることができる。これにより、固定片及び樹脂ケースに応力が集中することを回避でき、ブレーカーの強度を高めることができる。
【0063】
このブレーカーにおいて、前記退避部は、前記樹脂ケースの凹部から所定の第1距離以上隔てて退避していてもよい。
【0064】
退避部が樹脂ケースの凹部から所定の第1距離以上隔てて退避する形態によれば、樹脂材料の充填不良や樹脂ケースの強度低下等をより一層抑制できる。
【0065】
このブレーカーにおいて、前記凹部は、前記可動片から所定の第2距離以上隔てた位置に設けられていてもよい。
【0066】
可動片から所定の第2距離以上隔てた位置に凹部を設ける形態によれば、可動片と凹部との間における樹脂材料の充填不良や樹脂ケースの強度低下を伴うことなく、ブレーカーの小型化を実現できる。
【0067】
このブレーカーにおいて、前記凹部によってゲート跡が収容されてもよい。
【0068】
凹部によってゲート跡が収容される形態によれば、樹脂ケースを成型する金型におけるゲートの配置の自由度を高めて、樹脂材料の充填不良を抑制しつつ、ブレーカーの小型化を実現できる。
【0069】
このブレーカーにおいて、前記凹部は、製品の表面に形成される凹状の刻印である、又は製品の表面に形成される凸状の刻印の周辺に設けられている凹部であってもよい。
【0070】
凹部が、製品の表面に形成される凹状の刻印である形態によれば、刻印の配置の自由度を高めて、樹脂材料の充填不良を抑制しつつ、ブレーカーの小型化を実現できる。また、凹部が、製品の表面に形成される凸状の刻印の周辺に設けられている凹部である形態についても同様である。
【0071】
このブレーカーにおいて、前記退避部は、前記凹部の外縁に沿う形状であってもよい。
【0072】
退避部を凹部の外縁に沿う形状とする形態によれば、凹部の位置、形状及び大きさの自由度がより一層高められ、樹脂ケースのスペース効率の向上を図り、ブレーカーのさらなる小型化を実現できる。
【0073】
また、本発明は、前記ブレーカーを備えたことを特徴とする電気機器用の安全回路である。
【0074】
また、本発明は、前記ブレーカーを備えたことを特徴とする2次電池である。
【符号の説明】
【0075】
1 ブレーカー
2 固定片
3 可動接点
4 可動片
5 熱応動素子
7 樹脂ケース
8 カバー片
21 固定接点
25 退避部
71 ケース本体
73 収容部
73d 枠
75 凹部
76 ゲート跡
77 凹部
78 刻印
101 2次電池
102 安全回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11