特許第6049093号(P6049093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6049093血管内吻合コネクタデバイス、供給システム、ならびに供給および使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049093
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】血管内吻合コネクタデバイス、供給システム、ならびに供給および使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20161212BHJP
   A61B 17/11 20060101ALI20161212BHJP
   A61M 1/10 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   A61B17/00
   A61B17/11
   A61M1/10 100
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-206184(P2014-206184)
(22)【出願日】2014年10月7日
(62)【分割の表示】特願2012-528794(P2012-528794)の分割
【原出願日】2010年6月24日
(65)【公開番号】特開2015-24173(P2015-24173A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2014年10月7日
(31)【優先権主張番号】61/242,153
(32)【優先日】2009年9月14日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508226322
【氏名又は名称】サーキュライト・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・シー・ファーナン
【審査官】 毛利 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−525128(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0168691(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/027869(WO,A2)
【文献】 特表平9−511409(JP,A)
【文献】 特開2002−301083(JP,A)
【文献】 特表2008−513155(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/082718(WO,A1)
【文献】 特表2008−511419(JP,A)
【文献】 特表2005−517502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61M 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吻合コネクタであって、
近位端、遠位端、およびこれらの間に延在する管腔を有する血管導管であるとともに、血管構造の管腔内に存在するよう構成されている血管導管と;
近位端、遠位端、およびこれらの間に延在する管腔を有する供給導管であるとともに、前記供給導管の前記遠位端が、前記血管導管と分岐連結部を形成し、かつ前記供給導管の前記近位端が、前記血管構造から、前記血管構造内の切開部を通り延在し、かつ補助装置と連結するよう構成されている、供給導管と;
を備えてなり、
前記分岐連結部が、前記供給導管の周囲に前記血管導管の一部を巻き付けた状態で、折り畳み可能とされており、
前記血管導管が、前記供給導管が前記切開部を封じる前に、血管内に展開されて配置されることができることを特徴とする吻合コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載の吻合コネクタにおいて、
前記血管導管および前記供給導管が連続的なワイヤー、ハイポチューブ、またはロール状シートストックから構成される支持構造を含むことを特徴とする吻合コネクタ。
【請求項3】
請求項2記載の吻合コネクタにおいて、
前記支持構造が、拡張性材料内に封入されていることを特徴とする吻合コネクタ。
【請求項4】
請求項3記載の吻合コネクタにおいて、
前記拡張性材料が自己拡張型材料から成っていることを特徴とする吻合コネクタ。
【請求項5】
請求項4記載の吻合コネクタにおいて、
前記自己拡張型材料がニッケルチタンであることを特徴とする吻合コネクタ。
【請求項6】
請求項3記載の吻合コネクタにおいて、
前記拡張性材料がバルーン拡張材料からなっていることを特徴とする吻合コネクタ。
【請求項7】
請求項6記載の吻合コネクタにおいて、
前記バルーン拡張材料が金属ベースの材料であることを特徴とする吻合コネクタ。
【請求項8】
請求項3記載の吻合コネクタにおいて、
前記拡張性材料が多孔質材料によって被覆されていることを特徴とする吻合コネクタ。
【請求項9】
請求項8記載の吻合コネクタにおいて、
前記多孔質材料が、延伸ポリテトラフルオロエチレン、織られたポリエステル、ベロア、または合成ポリエステル繊維のダクロン(登録商標)であることを特徴とする吻合コネクタ。
【請求項10】
請求項1記載の吻合コネクタにおいて、
前記分岐連結部によって作られる角度が5°から90°の範囲であることを特徴とする吻合コネクタ。
【請求項11】
請求項1記載の吻合コネクタにおいて、
前記補助装置がポンプであることを特徴とする吻合コネクタ。
【請求項12】
請求項11記載の吻合コネクタにおいて、
前記ポンプが、流入カニューレにまた接続されていることを特徴とする吻合コネクタ。
【請求項13】
請求項12記載の吻合コネクタにおいて、
前記流入カニューレが、患者の心臓の心房内隔壁まで延在する血管内カニューレであることを特徴とする吻合コネクタ。
【請求項14】
請求項12記載の吻合コネクタにおいて、
前記流入カニューレが患者の左心房まで延在する外科的に配置されたカニューレであることを特徴とする吻合コネクタ。
【請求項15】
吻合コネクタであって、
近位端、遠位端、およびこれらの間に延在する管腔を有する血管ステントであるとともに、血管構造の管腔内に存在するよう構成された血管ステントと;
近位端、遠位端、およびこれらの間に延在する管腔を有する供給導管であるとともに、前記供給導管の前記遠位端が、前記血管ステントと分岐連結部を形成し、かつ前記供給導管の前記近位端が、前記血管ステントから、前記血管構造内の切開部を通り延在し、かつ循環補助システムのポンプと連結するよう構成された、供給導管と;
を備えてなり、
前記分岐連結部が、前記供給導管の周囲に前記血管ステントの一部を巻き付けた状態で、折り畳み可能とされており、
前記血管ステントが、前記供給導管が前記切開部を封じる前に、血管内に展開されて配置されることができることを特徴とする吻合コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年9月14日出願の米国仮特許出願第61/242,153号(係属中)に対する優先権を主張し、その開示内容は、参照としてここに組み込まれている。
【0002】
本発明は、概して血管のコネクタデバイスおよびその使用方法に関する。より具体的には、本発明は、血管内吻合コネクタ、供給システム、および供給方法に関する。
【背景技術】
【0003】
人体の循環系は、代謝産物およびホルモンなどの化学物質および細胞老廃物を含む血液を細胞へ、および細胞から輸送する。この臓器系は、心臓、血液、および血管網を含む。静脈は、心臓へ血液を運ぶ血管であり、動脈は、心臓から血液を運ぶ。人の心臓は、2つの心房および2つの心室からなる。心房は、静脈から血液を受け入れ、およびより大きい筋肉の壁を含む心室は、心臓から血液を送り出す。血液の動きは以下のとおりである:血液は、上または下大静脈のどちらかから右心房へ入り、右心室へ移動する。酸素化されるために、血液は右心室から肺動脈を介して肺へ送り出される。一旦血液が酸素化されると、血液は、肺静脈を介して左心房に入り心臓へ戻り、左心室へ流れる。最後に血液は、左心室から大動脈および血管網へ送り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/027869号
【特許文献2】特表2002−534208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
場合によっては、血管網との流体連通を維持することが必要となる。例えば、循環補助システムは、血管網を通じて移動する血液を補助するためにポンプを使用し、それにより鬱血性心不全(通常心臓疾患と言う)に関連した症状を軽減する。循環補助システムのポンプは、流入および流出カニューレを含む。流入カニューレは、心臓の左心房をポンプに接続し、流出カニューレは、ポンプを末梢動脈に接続する。循環補助システムが適切に機能し、かつ出血の危険を減らすことを確実にするために、流出カニューレは、末梢動脈内で安定していなければならない。したがって、末梢血管に供給かつ固定される、また補助装置に取り付けられることが可能な装置を有することが都合が良い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの例示的な実施形態では、吻合コネクタが示される。吻合コネクタは、血管導管および供給導管を含む。血管導管は、血管構造内に存在する近位端および遠位端を有する。供給導管は、血管導管から斜めに延在する。供給導管の近位端は、血管構造から延在し、かつ補助装置に取り付けられるように構成されている。
【0007】
本発明の別の例示的な実施形態では、供給システムが示され、吻合コネクタおよび供給サブアセンブリを含む。供給サブアセンブリは、多管腔ハブ、多管腔供給シャフト、および第2供給シャフトを含む。多管腔供給シャフトは、多管腔ハブから延在し、供給導管の管腔を通じて血管導管の遠位端から出る。第2供給シャフトは、多管腔ハブから血管導管の近位端へ延在し、かつ血管導管の遠位端から出る。血管導管の遠位端から延在する第2供給シャフトの近位部分は、多管腔供給シャフトの第1管腔によって収容される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】血管内吻合コネクタを有する、末梢動脈に接続されたポンプの流出を伴う循環補助システムの部分断面線図である。
図1A】末梢動脈内の血管内吻合コネクタの部分断面側面図である。
図2】血管内吻合コネクタを前進、および展開させるための供給サブアセンブリの部分断面側面図である。
図3】供給サブアセンブリの多管腔供給シャフトの部分断面側面図である。
図4A図3のライン4A−4Aに沿った多管腔供給シャフトの横断面図である。
図4B図2の囲み4Bの第2供給シャフトを有する多管腔供給シャフトの等角図である。
図5】多管腔ハブおよび供給サブアセンブリのルアーアダプタの部分断面部分側面図である。
図6】供給サブアセンブリの第2供給シャフトの側面図である。
図7A】血管内吻合コネクタを供給サブアセンブリに装着する1つの例示的な方法の側面図である。
図7B】供給アセンブリの部分断面側面図である。
図7C】血管内吻合コネクタを供給サブアセンブリの周りに折りたたむ1つの例示的な方法の図7Bのライン7C−7Cに沿った横断面図である。
図8】供給アセンブリを供給外筒に装着する1つの例示的な手順の連続ステップを示す側面図である。
図9】供給アセンブリを供給外筒に装着する1つの例示的な手順の連続ステップを示す側面図である。
図10】血管内吻合コネクタを末梢動脈に挿入および展開させる1つの例示的な手順の連続ステップを示す部分断面側面図である。
図11】血管内吻合コネクタを末梢動脈に挿入および展開させる1つの例示的な手順の連続ステップを示す部分断面側面図である。
図12】血管内吻合コネクタを末梢動脈に挿入および展開させる1つの例示的な手順の連続ステップを示す部分断面側面図である。
図13】血管内吻合コネクタを末梢動脈に挿入および展開させる1つの例示的な手順の連続ステップを示す部分断面側面図である。
図14】血管内吻合コネクタを末梢動脈に挿入および展開させる1つの例示的な手順の連続ステップを示す部分断面側面図である。
図15】血管内吻合コネクタを末梢動脈に挿入および展開させる1つの例示的な手順の連続ステップを示す部分断面側面図である。
図16】血管内吻合コネクタを末梢動脈に挿入および展開させる1つの例示的な手順の連続ステップを示す部分断面側面図である。
図17】末梢動脈に展開された血管内吻合コネクタの部分断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、埋め込み型循環補助システム10を示す。説明のため、右心房16、左心房18、右心室20、および左心室22を有する患者14の心臓12を含む特定の組織が示されている。左および右鎖骨下静脈24,26および左および右頸静脈28,30からの血液は、上大静脈32を通り右心房16に入り、下半身からの血液は、下大静脈34を通り右心房16に入る。血液は、右心房16から右心室20へおよび肺(図示せず)へ酸素化されるために送り出される。肺から戻った血液は、肺静脈35を介して左心房18に入り、左心室22に送り出される。左心室22から出た血液は、大動脈弓36へ入り、左鎖骨下動脈38、左総頸動脈40および右鎖骨下動脈44と右総頸動脈46とを含む腕頭動脈42に流れる。
【0010】
埋め込み型循環補助システム10について、可撓性のカニューレ本体48は、左心房18内から心房内隔壁50を通り、右鎖骨下静脈26の血管アクセス部位52へ経皮的に延在する。可撓性のカニューレ本体48は、埋め込み型ポンプ56の入力ポート54に取り付けられる。血管内吻合コネクタ58は、埋め込み型ポンプ56の出力ポート60を右鎖骨下動脈44などの適切な浅動脈に接続する。医師は、皮下、および任意に筋肉下の血管アクセス部位52近くに位置するポンプポケット57に埋め込み型ポンプ56を配置する、またはポンプ56を外側に保持することができる。
【0011】
血管内吻合コネクタ58をより詳しく図1Aに示す。説明のため、血管内吻合コネクタ58は、右鎖骨下動脈44内に埋め込まれて示されているが、任意の適切な末梢血管を利用することができる。血管内吻合コネクタ58は、血管導管62および血管導管62から斜めに延在する供給導管64を含む。血管導管62および供給導管64の間の接合部は、分岐連結部66を形成する。ある実施形態においては、血管導管62は、血管ステントとすることができる。
【0012】
血管および供給導管62,64は、連続的なワイヤーから構成される、またはハイポチューブ(hypotube)またはロール状シートストックからレーザー切断された支持構造67,68,69をそれぞれ含むことができる。支持構造67,68,69は、拡張性材料内に封入されている。拡張性材料は、ニッケルチタン(NiTi)などの超弾性かつ自己拡張式とすることができる。あるいは、ニッケルコバルト(NiCo)またはコバルトクロム(CrCo)などのバルーン拡張性材料を使用することができる。拡張性材料は、内皮細胞の移動を許容するため、かつ導管62,64を血管の壁に固定するために、多孔質材料によって被覆されることができる。適切な多孔質材料は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、織られたポリエステル、ベロア、または合成ポリエステル繊維のダクロン(登録商標)を含むことができる。いくつかの実施形態において、血管導管62が血管を通る血液の流れを妨げずに血管の管腔に一致することができるように、血管導管62の壁の厚さは、供給導管64の壁の厚さより薄くすることができる。血管導管62が血管内に埋め込まれているためこれはその逆より好ましく、かつ形状は血液の流れを妨げないように最小化されるべきである。
【0013】
分岐連結部66は、可撓性とするべきであり、かつ血管の固有の適合性を再現すべきである。分岐連結部66は、血管内吻合コネクタ58の使用目的および局部の組織に応じて約5°から約90°(すなわち垂直)まで変化することが可能な角度θを形成することができる。
【0014】
ここで図2に移ると、血管内吻合コネクタ58(図1A)を供給するための供給サブアセンブリが示されている。供給サブアセンブリ74は、多管腔供給シャフト76および第2供給シャフト78を含む。
【0015】
図3に単独で示されている多管腔供給シャフト76は、成形先端82および多管腔ハブ84を有する多管腔チューブ80を含む。1つの適切な多管腔チューブ80の断面が図4Aに示され、主および副管腔86,88を含み、その両方は、形成された遠位端82から多管腔ハブ84へ延在する。主管腔86は、標準のガイドワイヤーを受け入れられる大きさである。副管腔88は、第2供給シャフト78を受け入れられる大きさであり、かつ後述するような組み立てを補助するために溝を付けることができる。多管腔チューブ80は、熱可塑性材料から押出し加工によって構成されることができる。成形先端82は、供給サブアセンブリ74が血管網を通り進む際の血管組織の外傷を最小にする。
【0016】
図4Bは、図2に示すように、多管腔供給シャフト76の副管腔が第2供給シャフト78の一部を受け入れる1つの方法の拡大図である。
【0017】
図5は、多管腔ハブ84をより詳しく示している。多管腔ハブ84は、多管腔チューブ80の近位端に直接成型される、または個別に成型され、エポキシまたはUVまたはシアノアクリレートなどの生体適合性接着剤によって多管腔チューブ80に取り付けられることができる。埋め込みに先立って多管腔チューブ80の主管腔86(図4)を洗浄するために、ルアーアダプタ90は、第1管腔92に接続されている。多管腔ハブ84の第2管腔94は、第2供給シャフト78を受け入れる大きさである。
【0018】
図6は、1つの管腔チューブ96および近位ハブルアー98を含むことができる第2供給シャフト78を示す。1つの管腔チューブ96は、押出し加工により構成されることができ、標準のガイドワイヤーを受け入れる大きさとすることができる。ハブルアー98は、個別に構成され、生体適合性接着剤またはエポキシによって1つの管腔チューブ96に取り付けられることができる。ハブルアー98により、挿入より前に第2供給シャフト78を洗浄することができる。
【0019】
図7A図7Cは、血管内吻合コネクタ58を供給サブアセンブリ74に装着する1つの方法を示す。血管内吻合コネクタ58の装着および供給を示すために、供給サブアセンブリ74は長手軸周りに180°回転していることに留意すべきである。
【0020】
図7Aにおいて、多管腔供給シャフト76は、供給導管64の近位端に導かれる。成形先端82は、供給導管64を通り、血管導管62の遠位端72から出るまで進められる。第2供給シャフト78は、多管腔ハブ84の第2管腔94を通り供給導管64の外側に沿って血管導管62の近位端70の中へ進められる。そして第2供給シャフト78の遠位端は、血管導管62の遠位端72を越えて進められ、多管腔チューブ80の溝付き副管腔88に留められる。組み立てられた供給システム100は、図7Bに示されている。
【0021】
供給システムの形状を最小にするために、血管内吻合コネクタ58は、供給サブアセンブリ74の周りに折り畳まれることができる。血管内吻合コネクタ58を折り畳む1つの方法は、血管導管62の遠位端72および供給導管67の支持構造67,69(図1A)をそれぞれつぶすステップと、遠位端72および供給導管67を多管腔供給シャフト76の周囲に巻きつけるステップと、を含む。そして、第2供給シャフト78が血管導管62の近位端70を通り挿入された後に、支持構造68は、折りたたまれ、かつ図7Cに示すように、近位端70が供給導管64の周囲に「c」の形に巻きつけられる。このように、血管導管62は、供給導管64が血管の壁の切開部を封じる前に、血管内に展開され、かつ配置されることができる。
【0022】
組み立て後、供給システム100は、図8に示すように供給外筒102に装着される。供給外筒102は、除去しやすいように外筒がはがれる設計として構成されることができる。図9は、供給外筒102内に装着された供給システム100を示す。
【0023】
血管内吻合コネクタ58を血管に挿入する1つの方法は、図10図16を参照して説明される。方法は、ここでは右鎖骨下動脈44として示される適切な末梢血管に医師が切開部103を形成することから始まる。末梢血管の選択は、特定の外科的処置に依存する。例えば、循環補助システム10(図1)の埋め込みにおいては、ポンプポケット57(図1)を右鎖骨下静脈26の近くに配置する場合に、右鎖骨下動脈44が適切である。血管の切開部103を保持するために、誘導針104は、右鎖骨下動脈44に導かれる。適切な誘導針104は、商業的に入手可能なもの、または参照としてここに組み込まれている2009年3月27日出願の米国仮特許出願第61/163,931号に開示されるような特別仕様の誘導針を含むことができる。示された誘導針104は、近位ハブ108を有する外筒106を含む。ハブは、流体アクセスのための側方ポート110および弁112を含む。
【0024】
そして医師は、切開部103から右鎖骨下動脈44に遠隔で配置させる第2の切開部位(図示せず)を作成することができる。右鎖骨下動脈44の切開部103に対して、適切な第2の切開部位は、例えば右腿静脈(図示せず)の近くとすることができる。そして第1ガイドワイヤー114は、第2の切開部位から右鎖骨下動脈44へ誘導針104を通り経皮的に導かれる。第1ガイドワイヤー114は、第2供給シャフト78の遠位端に導かれる。いくつかの実施形態において、医師は、第2供給シャフト78の全長を通して第1ガイドワイヤー114を導くことができる、あるいは、第1ガイドワイヤー114は、第2供給シャフト78内に約10mm〜約20mm進められる。
【0025】
図11に示すように、第2ガイドワイヤー116は、多管腔チューブ80の主管腔86(図4)を通り、成形先端82から遠位に延在するまで進められる。そして第2ガイドワイヤー116は、誘導針104を介して右鎖骨下動脈44に進められる。
【0026】
ガイドワイヤー114,116が適切な位置にある状態で、図12に示すように、ガイドワイヤー114,116および誘導針104の位置を保持したまま、供給外筒102を有する供給システム100をユニットとして誘導針104内に進めることができる。供給システム100は、成形先端82が図13に示すように位置する、すなわち成形先端82が供給外筒102より遠位の右鎖骨下動脈44内に位置するまで進められる。いくつかの実施形態において、成形先端82は、配置処置中に適切な視覚装置による生体内での可視化のための1つまたは複数のX線不透過性マーカーを含むことができる。医師は、動脈44(図1A参照)内の支持構造67,68,69の位置をさらに、または代わりに視覚化することができる。このような適切な位置合わせにより、切開部103より遠位に血管導管62を配置することができる。
【0027】
図14は、血管内吻合コネクタ58を展開させるための供給外筒102の除去を示す。供給外筒102が、外筒がはがれる設計として構成される実施形態において、供給外筒102は、供給外筒102の端部118,120を別々に引くことにより取り除かれる。
【0028】
一旦、供給外筒102が十分に取り除かれると、血管内吻合コネクタ58は、右鎖骨下動脈44内に自動的に展開する。血管導管62の近位端70は、供給導管64の周りから広がり、支持構造67(図1A)により右鎖骨下動脈44の内壁に対して半径方向に拡張する。この操作中、供給導管64は、誘導針104の外筒106によって拘束されたままとすることができる。
【0029】
図15に示すように、第1ガイドワイヤー114は、第2供給シャフト78内の位置から後退し、血管導管62を通り、近位端70を越えて進められる。そして第2供給シャフト78は、取り除かれることができる.
【0030】
そして医師は、血管導管62を再配置し、かつ右鎖骨下動脈44の壁の切開部103をふさぐために、多管腔供給シャフト76および供給導管64を近位に引くことができる。再配置は、多管腔供給シャフト76によって構造的に支持される。そして誘導針104および多管腔供給シャフト76は、図16に示すように血管内吻合コネクタ58を残して右鎖骨下動脈44から後退することができる。
【0031】
図16は、それぞれフレア(点線で示される)を含んでいる血管導管62の近位端70および遠位端72をさらに示し、フレアにより血管導管62は、血管の大きさのより広い範囲に対応することができ、かつ血管導管62および血管の間の滑らかな移行を提供する。
【0032】
一旦誘導針104の外筒106が取り除かれると、供給導管64の支持構造69(図1A)は、図17に示すように供給導管64を自動的に半径方向に拡張させる。
【0033】
図示していないが、医師は、血管内吻合コネクタ58にバルーン拡張カテーテルを進めることにより、支持構造67,68,69(図1A)の完全な半径方向の拡張を確実にすることができる。バルーン拡張カテーテルは、拡張される血管内吻合コネクタ58の部分に応じて第1または第2ガイドワイヤー114,116の上を進められることができる。つまり、完全に血管導管62を拡張させるために、バルーン拡張カテーテルが第1ガイドワイヤー114の上を進められ、かつ血管導管62内の1つの支持構造67,68(図1A)に配置される。バルーン拡張カテーテルは、膨らませ、かつしぼまされる。そして医師は、バルーン拡張カテーテルを除去する、または血管導管62内の他の支持構造68,67(図1A)に再配置することができる。
【0034】
完全に分岐連結部66を拡張するために、医師は、バルーン拡張カテーテルを第2ガイドワイヤー116の上で導く。バルーン拡張カテーテルの膨張により、分岐連結部66は拡張し、かつ右鎖骨下動脈44の壁の切開部103を封じる。いくつかの実施形態において、医師は、完全な拡張を確実にするために、バルーン拡張カテーテルを分岐連結部66内の同じまたは異なる位置にて複数回ふくらます、かつしぼますことができる。
【0035】
そして、バルーン拡張カテーテルおよびガイドワイヤー114,116は、取り除かれる。医師は、管腔を通じる出血を防ぐために、供給導管64の近位端に蓋をするまたは締め付ける(図示せず)ことができる。補助装置を供給導管64に取り付ける場合に、医師は、空気を抜くために血液を戻して、またはキャップを通して針を挿入することによって、供給導管64を脱気することができる。
【0036】
本発明は、様々な好ましい実施形態の記述によって示され、およびこれらの実施形態は、多少詳しく述べられたが、添付の特許請求の範囲をこれらの詳細に制限、または多少なりとも限定することは出願人の意図ではない。当業者には、追加的な利点、および改良が容易にわかるだろう。本発明の様々な機構は、使用者の必要性および好みに応じて、単独または任意の組み合わせにて使用することができる。現在知られている、本発明を実施する好ましい方法とともに本発明の説明がなされている。しかし、本発明自体は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義されるべきである。
【符号の説明】
【0037】
10 埋め込み型循環補助システム
16 右心房、18 左心房
20 右心室、22 左心室
26 右鎖骨下静脈
48 カニューレ本体
56 埋め込み型ポンプ
58 血管内吻合コネクタ
62 血管導管
64 供給導管
66 分岐連結部
67,68,69 支持構造
70 近位端、72 遠位端
74 供給サブアセンブリ
76 多管腔供給シャフト
78 第2供給シャフト
80 多管腔チューブ
82 成形先端
84 多管腔ハブ
86 主管腔
88 副管腔
90 ルアーアダプタ
92 第1管腔
94 第2管腔
96 管腔チューブ
98 近位ハブルアー
100 供給システム
102 供給外筒
103 切開部
104 誘導針
106 外筒
図1
図1A
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
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図17