特許第6049119号(P6049119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6049119化粧品活性薬剤としてのランのバンダ・セルレア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049119
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】化粧品活性薬剤としてのランのバンダ・セルレア
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/97 20060101AFI20161212BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161212BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20161212BHJP
   A61K 36/898 20060101ALI20161212BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20161212BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   A61K8/97
   A61P43/00
   A61P17/00
   A61K36/898
   A61Q19/02
   A61Q19/08
   A61P43/00 105
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-199031(P2010-199031)
(22)【出願日】2010年9月6日
(65)【公開番号】特開2011-84555(P2011-84555A)
(43)【公開日】2011年4月28日
【審査請求日】2013年7月31日
(31)【優先権主張番号】0957289
(32)【優先日】2009年10月16日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ユベール ショーシャ
(72)【発明者】
【氏名】フランソワーズ ペリシエール
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−クリストフ アーチャムボルト
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック ボンテ
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−209143(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/071855(WO,A1)
【文献】 仏国特許出願公開第02924347(FR,A1)
【文献】 化粧品ハンドブック,1996年11月 1日,455−459頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚線維芽細胞の全集団のうち遺伝情報の複製の段階にある皮膚線維芽細胞の割合を増加させる化粧品薬剤、及び
皮膚線維芽細胞の全集団のうち老化線維芽細胞の割合を減少させるための化粧品薬剤
からなる群から選択される、皮膚細胞の周期を調節するための化粧品薬剤であって、
前記化粧品薬剤が、皮膚の肌の色をより輝くものにし、又は皮膚の色素沈着障害と闘い、
前記化粧品薬剤が、ランのバンダ・セルレアの抽出物からなる、前記化粧品薬剤。
【請求項2】
前記抽出物が、前記ランのバンダ・セルレアの幹、根、葉からなる群から選択される部分由来の抽出物である、請求項1に記載の化粧品薬剤。
【請求項3】
前記抽出物が、前記ランのバンダ・セルレアの極性溶媒抽出物である、請求項1に記載の化粧品薬剤。
【請求項4】
前記極性溶媒が、水、C〜Cアルコール、エタノール、C〜Cグリコール、グリセロール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、及びその任意の混合物からなる群から選択される、請求項に記載の化粧品薬剤。
【請求項5】
前記溶媒が水/アルコール混合物である、請求項に記載の化粧品薬剤。
【請求項6】
前記極性溶媒が未臨界状態にある、請求項に記載の化粧品薬剤。
【請求項7】
前記抽出物が脱色又は精製された抽出物である、請求項1に記載の化粧品薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の細胞周期を調節するため、特に皮膚の加齢の兆候の出現を軽減させるか若しくは遅らせるため、又は加齢の影響を減速させるための化粧品活性薬剤としてのランのバンダ・セルレア(Vanda coerulea)の抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の加齢は、皮膚の可視的な質及び美しさを変更する、可視的な兆候の段階的な出現によって反映される多数の固有の変化において表れる。今日、皮膚の加齢と闘う様々な方法が存在し、いくつかの因子を同時に作用することは困難であることが知られている。しかしながら、当業者が望んで行うのはこれである。表皮の分化の変化、細胞増殖の減速、皮膚弾力性の喪失、低密度な真皮、水和の減少又は色素沈着の障害などの因子は、加齢に伴って、細かく、乾燥し、張りが少なく、粗く、輝きが少ない皮膚をもたらす(Rocquetら,Acta Dermato.venereol.,Vol.2002,11(3),71−93)。皮膚のきめは粗くなり、多数の皮膚欠陥が増し、目に見えるようになる。したがって、細胞加齢の進行のかなり以前に、細胞加齢と闘うことが特に有利である。
【0003】
皮膚細胞の老化に入ることは、特に、細胞増殖中に起こる生化学的又は形態学的事象における有害な変化及び不均衡に関連する。
【0004】
細胞周期は、これらの事象の組合せに相当し、主に、図1による図式的に表される4つの段階に分けられる。
【0005】
これらの段階は、それぞれ、以下を反映する:
【0006】
DND複製のための細胞の準備(G1期、又は細胞増殖の第1段階):細胞DNA含量は、静止細胞の含量と同じである。このG1期は、細胞タイプに依存し、多くの場合、中間期、つまり細胞周期の変動に関与する、
【0007】
DNA複製(S期)、
【0008】
有糸分裂のための細胞の準備(G2期又は細胞増殖の第2段階):この段階は、RNA及びタンパク質の増加によって特徴付けられる。細胞はその初期の遺伝物質を複製し、クロマチン修飾の開始による分裂のために準備している、
【0009】
細胞分裂又は有糸分裂(M期)、その結果、娘細胞が娘細胞自体のRNA及びタンパク質含有物を有する。
【0010】
非分裂の静止段階で静止している細胞は「G0期」にあり、G0期は細胞周期からの逸脱に対応し、一般に、G1期中に起こる。
【0011】
当業者は、これらの主要な段階が、完全に規定された境界を有する過程に明らかに対応していないと理解している:ある種のタンパク質合成は細胞周期全体で起こる。
【0012】
「老化」細胞は、細胞周期のG0又はG1期でブロックされ、更に分裂しない。それらの細胞は、S期に再び入ることができなくなっていて、もはや生理学的分裂促進剤による刺激に応答しない(Jenkis,Mech.Age Dvpt.,2002,123,801−10)。
【0013】
細胞活性におけるこの落ち込みは、G1期の進行、及びDNA合成に関与する遺伝子の選択的抑制、又は反対に、細胞周期を調節するタンパク質であるサイクリンの阻害因子の過剰発現によって説明することができる。
【0014】
この老化細胞の蓄積は、全体的に、皮膚組織の機能及び完全性の段階的な減退をもたらす(Campisi J.,1996,Cell,84,497−500)。例えば、老化線維芽細胞は、より多くのメタロプロテイナーゼを分泌し、コラーゲン産生を起こしにくく(Jenkis G.,Mech Age Dvpt.,2002,123,801−10)、細胞外マトリックスの有害な変化をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の主要な目的は、皮膚の細胞加齢の影響と闘うか又は減速させることを目的とした化粧品活性薬剤の提供に存在する新たな技術的課題を、この過程よりも上流で作用させることによって解決することである。
【0016】
本発明の別の目的は、特に、皮膚加齢の兆候の出現と闘うか若しくは遅延させるため、又は加齢の影響を減速させるために、皮膚の細胞周期を調節することを目的とした化粧品活性薬剤の提供に存在する新たな技術的課題を解決することである。
【0017】
本発明の更なる目的は、皮膚及び組織の堅さを維持し、皮膚の肌の色をより輝くものにし、又は皮膚の加齢に関連した色素沈着の障害と闘うことを目的とする老化防止の化粧品活性薬剤を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、老化防止の化粧品組成物及び老化防止の化粧ケア法を提供することである。
【0019】
本発明の最終の目的は、特に単純であり、比較的安価であり、工業規模で使用可能である解決手段によって上記技術的課題を全て解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1の態様によれば、本発明は、皮膚の細胞周期を調節し、特に遺伝情報の複製の段階にある皮膚細胞の割合を増加させ、若しくは皮膚細胞の全集団のうち老化細胞の割合を減少させ、若しくは加齢によって有害な影響を受けた皮膚組織の細胞の生物学的活性を改善することを目的としたランのバンダ・セルレアの抽出物の、化粧品組成物における使用、又は皮膚加齢の兆候の出現を遅延させ、若しくは加齢の影響を減速させ、特に、皮膚及び組織の堅さを維持し、若しくは皮膚の肌の色をより輝くものにすることを目的とし、若しくは他に皮膚の加齢に関連した色素沈着の障害と闘うことを目的とした化粧品活性薬剤としての使用に関する。
【0021】
第2の態様によれば、本発明は、特に、皮膚及び組織の堅さを維持すること、又は皮膚の肌の色をより輝くものにすることを目的とし、又は皮膚の加齢に関連している色素沈着の障害と闘うための老化防止の化粧ケア法に関し、気になる顔又は身体の皮膚の一部に、ランのバンダ・セルレアの抽出物を含む有効量の化粧品組成物を塗布することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】図式的に細胞周期を表す図である。
図2】「若い」NHF(F3P)又は「加齢した」NHF(F22P)で実施される様々な試験(対照及び処理)について得られる細胞周期の様々な段階の各々における皮膚細胞の分布を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明者らは、少ない回数だけ分裂した「若い」皮膚細胞の集団において、つまり、遺伝情報の複製の段階(S期)にある活性細胞の割合が、多くの回数分裂した「加齢」細胞の集団と比較して有意に高いことをインビトロで示した。
【0024】
これは、皮膚の機械的特性を維持する目的で分裂及び増殖する皮膚細胞の能力、及び環境ストレスに対する有効な障壁の皮膚の役割における細胞加齢の負の影響を示す。
【0025】
細胞の全集団のうち、積極的に分裂する細胞の利点に対する老化細胞の相対的比率の減少は、若い細胞と類似したレベルまで、加齢細胞の生物学的メカニズム及び機能を回復させるという主な結果を有する。
【0026】
細胞機構の生化学的潜在性の維持を提供しながら、時間をかけて皮膚加齢の影響と闘うことを可能にする、積極的に分裂するこの能力を細胞に回復させることができる化粧品活性薬剤は、特に重要な老化防止の活性薬剤であり、それが作用する細胞の生物学的機能の全てに作用する。
【0027】
今般、全く意外にも、ランのバンダ・セルレアの抽出物がこのような特性を示すことが発見された。
【0028】
本発明の抽出物の有利な際立った特徴は、細胞老化の現象を制限し、多数の老化していない活性な皮膚細胞を維持することを可能にするメカニズムを刺激するということである。
【0029】
仏国特許出願第0851382号は、皮膚の水和の状態を維持又は回復することを目的とした薬剤として、バンダ種セルレアのランの少なくとも一部の抽出物の、化粧品組成物における使用を報告する。しかしながら、老化防止活性については言及していない。
【0030】
更に、化粧品組成物において酸化防止剤として使用される、全バンダ・セルレア植物の抽出物は知られている。
【0031】
しかしながら、ここで繰り返すが、有効成分は、加齢過程よりも上流での細胞作用によるその老化防止効果について報告されていない。
【0032】
本発明者らは、今般、特に、加齢した正常ヒト線維芽細胞(NHF)に対して、老化の過程及び加齢の結果を調節する、ランのバンダ・セルレアの抽出物の特性を発見した。
【0033】
上記で説明したように、バンダ・セルレア抽出物を用いた「加齢した」線維芽細胞の処理により、真皮の「若い」線維芽細胞と同等なレベルまで、遺伝情報の活性な複製の段階(S期)にある細胞の割合を増加させることができる。
【0034】
このようにして、この抽出物は、細胞周期の調節因子として作用し、その結果、皮膚組織において娘細胞を与えるように増殖する能力を有する、合成の活動段階においてより多くの細胞をもたらす。
【0035】
バンダ・セルレア抽出物のこの重要であり、驚くべき効果は、皮膚組織の機能及び完全性の減退と効果的に闘い、組織の質の基本である、組織におけるマトリックス環境を保護するために、皮膚線維芽細胞の全ての生物学的活動能を増加させることができる。
【0036】
本発明の第1の主題は、皮膚加齢の兆候の出現を遅延させ、又は加齢の影響を減速させ、特に皮膚及び組織の堅さを維持し、若しくは皮膚の肌の色をより輝くものにすることを目的とし、又は他に皮膚の加齢に関連した色素沈着の障害と闘うことを目的とした活性薬剤としてのランのバンダ・セルレアの抽出物の、化粧品組成物における使用に関する。
【0037】
本発明は、別の態様によれば、特に、遺伝情報の複製の段階にある皮膚細胞の割合を増加させ、同時に皮膚の全集団のうち老化細胞の割合を減少させ、又は他に加齢によって有害な影響を受けた皮膚細胞の生物学的活性を改善することを目的とした薬剤としてのランのバンダ・セルレアの抽出物の、化粧品組成物における使用に関する。
【0038】
使用される植物材料は、植物全体であるか又は植物の一部、例えば、葉、幹、花又は根であり得る。
【0039】
抽出物は、好ましくは、ランの幹及び/又は根及び/又は葉から得られ、好ましくは幹である。
【0040】
抽出物は、当業者に知られている様々な抽出過程によって調製される。
【0041】
しかしながら、抽出物は、好ましくは、選択された植物材料を極性溶媒又は極性溶媒の混合物に接触させることによって行われる。
【0042】
抽出自体の段階以前に、植物材料を乾燥及び/又は粉砕しておいてもよい。
【0043】
抽出の好ましい実施によれば、植物材料は乾燥及び粉砕状態で生じる。
【0044】
極性溶媒又は極性溶媒の混合物として、水、C〜Cアルコール、例えばエタノール、好ましくは、グリセロール、ブチレングリコール及びプロピレングリコールから選択されるC〜Cグリコール、並びにそれらの混合物のいずれか1つから選択される溶媒又は溶媒の混合物の選択が好都合になされる。
【0045】
本発明の好ましい実施によれば、抽出は、水/アルコール混合物、好ましくは、90%v/vの水と10%v/vエタノールを含む混合物を用いて行われる。
【0046】
本発明の別の代替形態によれば、抽出は、未臨界状態の極性溶媒を用いるプロセスによって行うことができ、その溶媒は好都合には水である。
【0047】
また、抽出は、例えば、活性炭の粒子の存在下で、極性溶媒の溶液又は極性溶媒の混合物、例えば、エタノール/水(70/30 v/v)溶液を用いた抽出物の処理を含むことができる、抽出物の脱色又は精製の少なくともさらなる段階を含むことが場合により可能である。
【0048】
また、脱色は、非極性溶媒、例えば、C〜Cアルカン、又は他に超臨界状態のCOを用いた抽出物の処理を含むことができる。
【0049】
抽出は、抽出溶媒を部分的に又は完全に除去する段階によって完了し得る。
【0050】
第1の例では、抽出物は、一般に、相当量の有機溶媒を含まない水性濃縮物が得られるまで濃縮される;第2の例では、乾燥残渣が得られる。
【0051】
或いは、抽出段階からの生成物は、粉末の形態で提供するために、凍結乾燥させるか又は噴霧化することができる。
【0052】
発明にかかる化粧品組成物における活性薬剤として、この段階の粉末、又は抽出に使用される溶媒と同じであるか若しくは異なっていてもよい化粧品として許容される溶媒若しくは化粧品として許容される溶媒の混合物中の該粉末の溶液若しくは懸濁液のいずれかが使用される。
【0053】
化粧品組成物は、所望の効果を得るために有効量の抽出物を含む。
【0054】
このようにして、好ましくは、組成物は、0.001%〜5%の乾燥質量の抽出物、好ましくは0.1質量%〜2質量%を含む。
【0055】
本発明者らによって行われた試験により、抽出物の特性も得られ、又は化粧品組成物において改善され得ることが示され、ここで、ランのバンダ・セルレアの抽出物は、この抽出物との類似及び/又は相補的化粧品効果を示す精製された分子及び/又は植物抽出物の形態で、他の活性薬剤と組み合わせる。
【0056】
このようにして、組成物は、植物全体又は植物の部分から得られた1つ又は複数の他の抽出物を含むことができる。
【0057】
このようにして、化粧品組成物は、好都合には、別のランの少なくとも1つの抽出物、特に、ランのバンダ・セルレアなどのバンダ属に属するランの別の種の抽出物、又はブラッソカトレア・マルセラ(Brassocattleya marcella)Kosなどのブラッソカトレア属に属するランの抽出物、又は他に、ランのファレノプシス・アマビリス(Phalaenopsis amabilis)などのコチョウラン属に属するランの抽出物を含むことができる。
【0058】
また、化粧品組成物は、老化防止活性を有する物質;皮膚の脱色素活性若しくはライトニング活性を有する物質;減量活性を有する物質;水和活性を有する物質;沈静、鎮静若しくは弛緩活性を有する物質;肌の色、特に顔の輝きを改善するために、皮膚微小循環の刺激において活性を有する物質;脂っぽい皮膚をケアするための脂漏制御活性を有する物質;皮膚の洗浄若しくは浄化を目的とした物質;又はフリーラジカルとの闘いにおいて活性を有する物質の群から選択される1つ又は複数の他の化粧品薬剤活性を更に含むことができる。
【0059】
特に、化粧品組成物は、以下から選択される1つ又は複数の他の化粧品活性薬剤を含むことができる:
【0060】
細胞置換を促進する薬剤、例えば、ビタミンA(レチノール)及び/又はそのエステル、特にビタミンAプロピオン酸エステル;α−若しくはβ−ヒドロキシ酸、例えば、フルーツ酸、リンゴ酸、グリコール酸若しくはクエン酸、サリチル酸若しくはそのエステル、又はゲンチシン酸若しくはそのエステル、特にゲンチシン酸トコフェロール;
【0061】
皮膚の堅さを刺激する薬剤、例えば、コラーゲン、特にI型、II型、IV型若しくはVII型コラーゲンの合成を刺激するペプチド、センテラ・アジアチカ(Centella asiatica)抽出物、マデカシン酸、アジア酸、マデカッソシド、オートムギ抽出物、ブラジルナッツ(Bertholletia exscelsa)抽出物、タンパク質加水分解物、大豆ペプチド、ポテンチラ・エレクタ(Potentilla erecta)抽出物、メナモミ(Siegesbeckia orientalis)抽出物、又はジンセノサイド(ginsenosides)若しくはノトジンセノサイド(notoginsenosides)、特にRb1、R0;
【0062】
以下のタイプの薬剤を含む表皮の分化を調節する薬剤:エクジステロイド、エクジステロン、ターケステロン若しくはカルシウム誘導体又はビタミンD前駆体;
【0063】
アデノシン、又はカルニチン若しくはその誘導体;
【0064】
メタロプロテイナーゼ阻害剤、特にMMP1、MMP2若しくはMMP9阻害剤、例えば、ナギイカダ(Ruscus aculeatus)抽出物若しくはフラボノイド、例えば、ケルセチン、ケンペロール、アピゲニン若しくはオウゴニン、又はそれらを含む植物抽出物;
【0065】
エラスターゼ阻害剤、例えば、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、モモルジカ・カランチア(Momordica charantia)又はセイヨウカボシャ(Cucurbita maxima)抽出物;
【0066】
デルマトポンチンの合成を刺激する薬剤、例えば、琥珀色抽出物;
【0067】
細孔を閉じる薬剤、例えば、収れん性植物の抽出物、例えば、マンサク(Hamamelis)抽出物;
【0068】
UV−A及びUV−B放射から保護するスクリーニング薬剤、例えば、ベンゾフェノン、4−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸若しくはホモサラートの単独又は酸化チタンとの組み合わせ;
【0069】
色素沈着の障害と闘うことを目的とした薬剤、特に皮膚加齢に関連した薬剤、例えば、コウジ酸、ブラックベリー若しくは甘草抽出物、アルブチン、パントテインスルホン酸カルシウム、ボルジン、ジアセチルボルジン、ビタミンC及びその誘導体、特にグリコシド若しくはユリ抽出物、特にユリ根抽出物;
【0070】
フリーラジカルと闘う薬剤又は抗炎症性剤、例えば、カワラヨモギ(Artemisia capillaris)抽出物、ワレモコウ(Sanguisorba officinalis)抽出物、レスベラトロル及びその誘導体、ターメリック又はクルクミン若しくはテトラヒドロクルクミン、ブドウの種から抽出されるポリフェノール、ビタミンE及びその誘導体、特にそのリン酸塩誘導体、エルゴチオネイン若しくはその誘導体、又はイデベノン;
【0071】
水和され、ふっくらとした皮膚を与える、表皮及び真皮におけるヒアルロン酸の合成、又はグリコサミノグリカンの合成を促進する薬剤、特にビワ(Eriobotrya japonica)抽出物、低分子量のヒアルロン酸断片又は更にアデニウム・オベスム(Adenium obesum)抽出物;
【0072】
皺防止作用を改善するためのアスパラギン酸マグネシウム;
【0073】
ふっくらとした皮膚のためのふっくら作用を改善するためのD−キシロース;
【0074】
並びにそれらの混合物のいずれか1つ。
【0075】
好都合には、組成物は、色素、染料、ポリマー、界面活性剤、レオロジー剤、香料、電解質、pH調節剤、酸化防止剤、防腐剤、及びそれらの混合物から選択できる少なくとも1つの化粧品として許容される賦形剤を更に含む。
【0076】
化粧品組成物は、例えば、セラム、ローション、クリーム、若しくは他にハイドロゲル、好ましくはマスクであってもよく、又はスティック若しくはパッチの形態で提供されてもよい。
【0077】
本発明の抽出物及び組成物は、皮膚加齢の兆候の出現を遅延させ、加齢の影響を減速させること;特に皮膚及び組織の堅さを維持し、若しくは皮膚の肌の色をより輝くものにすること、又は他に皮膚加齢に関連している色素沈着の障害と闘うことが特に望まれる効果を示す。
【0078】
本発明の別の主題は、老化防止の化粧ケア法であり、皮膚加齢の兆候の出現を遅延させ、又は加齢の影響を減速させるため、特に、皮膚及び組織の堅さを維持し、又は皮膚により輝いた肌の色を回復させ、或いは皮膚の加齢に関連した色素沈着の障害と闘うために、抽出されたランのバンダ・セルレアを含む有効量の化粧品組成物を顔又は身体の皮膚の少なくとも一部に塗ることを含む。
【0079】
好都合には、化粧品組成物は、加齢の可視的な兆候、例えば、皺又は細かい線の存在、皮膚弾力性の喪失、皮膚の厚さの減少、皮膚の乾燥又は粗さの増加、皮膚の柔軟性又は輝きの喪失、或いは老年性黒子などの皮膚加齢に関連した色素沈着の障害の可視的な兆候を示す身体又は顔の皮膚の領域に塗布される。
【0080】
実施例では、他に指示がなければ、全ての割合は質量で与えられ、温度はセルシウス度であり、圧力は大気圧である。
【0081】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、抽出物の調製、及び抽出物の特性を示す試験の実施例、並びにそのような抽出物を用いる化粧品組成物の実施例を参照すれば、以下の説明記載の観点から明らかとなり、それらの実施例は、本発明の説明のために与えられるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0082】
実施例1:バンダ・セルレア幹抽出物の調製
a)幹抽出物の調製
乾燥及び粉砕状態のバンダ・セルレア幹から抽出物を調製する。
10gの植物を250mlの丸底フラスコに入れ、フラスコに150mlのエタノール/水(90/10 v/v)混合物を添加する。
【0083】
丸底フラスコは、バルブコンデンサーによって積層され、磁気撹拌しながら、溶媒の還流まで温度制御性浴槽中で加熱され、30分間撹拌し続ける。
【0084】
その後、丸底フラスコは周囲温度まで冷却される。
その後、GF/F Whatman 70μmフィルター及び風袋計量されたフラスコを用いて、ブフナー漏斗上で真空中、混合物をろ過する。ケーキは、50mlの抽出物溶媒を用いてブフナー漏斗上で洗浄される。
【0085】
ろ過物を合わせ、計量し、予め風袋計量された丸底フラスコに入れ、次に、最大温度が50℃で設置された水浴中、ロータリーエバポレーターで乾燥するまで濃縮する。
【0086】
b)根抽出物の調製
同じプロトコールを用いて、バンダ・セルレア根の抽出物(抽出物2番)を調製する。
これらの2つの抽出物は、続く実施例で、別々に又は混合物として使用され、様々な比率で合わせる。
【0087】
実施例2:フローサイトメトリー(FCM)によるヒト皮膚細胞における細胞周期の段階の測定
承諾を受けた患者の健常皮膚の生検から線維芽細胞を得る。線維芽細胞のインビトロの加齢は、Hayflick(Exp Cell Res 1965,37:614−636)より報告されている連続継代培養によって得られる。「Hayflick」モデルは、インビトロの細胞加齢のモデルである。これらの細胞は、トリプシンの存在下で連続継代によってインビトロで加齢され、老年患者由来の細胞と同一の特徴を示す。
【0088】
トリプシンの存在下で3回だけ継代に供された線維芽細胞はF3Pと示され、若い細胞と同等に分裂する能力を有し、一方、より数多くの継代、今回の例では22継代に供された線維芽細胞は、加齢細胞と同等に増殖する能力を示す。後者の例では、線維芽細胞をF22Pとして示す。
【0089】
装置及び方法
FCMは、細胞周期の解析の方法をもたらす。FCMは、細胞周期の様々な段階における細胞分布の研究を可能にする。
【0090】
単離され、懸濁された細胞は液体流中に取り込まれる。整列された細胞は、レーザーの前面を高速で通過する。レーザーの軸又は90°のいずれかの光散乱により、各細胞の大きさ及び構造に関する情報が得られる。サイトメトリー解析の前に、細胞構造又は機能に特異的である蛍光分子による標識の段階がある。これらの分子は、入射光源による励起後、測定可能な蛍光を発する。散乱及び蛍光シグナルは検出器によって捕捉され、それらのシグナルはコンピュータシステムによって処理された電気シグナルに変換される。このようにして、各細胞は、いくつかの座標(大きさ、構造、蛍光1、蛍光2など)を用いた「電気的事象」を表示する。
【0091】
DNA二本鎖とRNA二本鎖用の挿入剤であるヨウ化プロピジウムによる標識を用いて、細胞周期の異なる段階における細胞の割合を決定することができる。挿入剤によるDNAの染色前に、リボヌクレアーゼによるRNAの加水分解が必要である。
【0092】
細胞培養
FCM解析には、多量の細胞(各分析条件について約100万個の細胞/ml)を必要とする。トリプシンを用いて細胞を支持体から剥離し、区別し、次に、解析前に標識する。
【0093】
NHFの培養
正常ヒト線維芽細胞(NHF)の初代培養物は、真皮組織片から調製される。
MEM(改変イーグル培地)+10%FCS(ウシ胎児血清)の存在下でNHFを75cmフラスコ中で1週間培養する;培地を2日毎に交換する。細胞は、コンフルエンス時に処理される。
【0094】
細胞の処理
試験の活性薬剤、今回の例では、ランのバンダ・セルレアの幹抽出物を用いて細胞を24時間処理し、前記抽出物の保存溶液は、DMSO中、50mg/mlで調製され、希釈して25μg/mlで使用される。
【0095】
ヨウ化プロピジウムによるDNAの染色
0.25%のトリプシン−EDTA溶液を用いて、細胞を剥離させる。Ca2+及びMg2+を含まない5mlのPBSを用いてフラスコをリンスし、次に、フラスコあたり2mlのトリプシン−EDTAを添加し、細胞層の細胞全体に広げる。
【0096】
細胞を37℃、5%COでインキュベートする。
細胞が浮遊している場合、トリプシン作用を中和するために10mlのMEM培地+10%FCSを添加する。
細胞の懸濁液を1500rev/分で5分間遠心分離し、その後、5mlのPBSにペレットを入れる。
【0097】
更に1500rev/分で5分間遠心分離後、PBS溶液中の10μg/mlのヨウ化プロピジウム、及び1mg/mlのRNaseの混合物を1ml添加する。調製物を周囲温度で30分間、遮光しながらインキュベートする。
FCM(Beckman−Coulter)に適したチューブに、先行するチューブの内容物を移す。
解析するまで試料を4℃で維持する。
【0098】
解析
MXPソフトウェアを備えたBeckman−Coulter FC500サイトメーターで解析を行う。
自己蛍光対照(未標識細胞)を用いて、偽陽性及び偽陰性を回避する。
【0099】
488nmで放射するレーザーによる核酸/蛍光複合体の励起は、赤色領域(600〜650nm)における細胞標識の発光を生じさせ、発光の強度は、標識されたDNA量に比例する;モノパラメトリックな線形ヒストグラムを構築し、細胞数の関数として赤色蛍光の測定を可能にする。
【0100】
蛍光強度は、DNA量の関数である:ヨウ化プロピジウムは蛍光性であり、DNAに結合する。各細胞の核にあるDNAが多くなると、蛍光シグナルがより強くなる。2nを含む細胞は、DNA合成に先立つ周期段階(G1)にあり、内容物4n(染色体の分離後)を有する細胞は、合成に続く段階(G2)にある。2nと4nの間のDNA含有量がより多く見られると、より多くの細胞が複製の過程にある(S期)。
【0101】
カーソルは、細胞周期の段階を3つのグループ:G0/G1、S及びG2+Mに分ける。
サイトメーターは標識されたDNA量に比例する蛍光量を解析し、パーセンテージに変換する;解析のデータは、100%を表す皮膚細胞の全集団に対して、各々の上述した段階に生じている細胞の割合として表される。
【0102】
結果
加齢した線維芽細胞におけるバンダ・セルレア抽出物による処理の効果を研究する。
処理又は未処理のNHFのFCMによる解析について得られた結果を下記の表1にまとめる(%は細胞の全数に対して表される):
【0103】
【表1】
【0104】
結果は、継代数の関数として、細胞周期の様々な段階による細胞の分布の変更を示す。具体的には、F22P細胞と称される「加齢した」細胞については、細胞周期のG0/G1期の細胞数は、F3P細胞と称される「若い」細胞よりも多いことが観察される。
【0105】
同様に、FCMは、DNAの複製段階(S期)と有糸分裂(G2+M期)において、相対的に少数の細胞を示す。これらの静止細胞のG0/G1期にある細胞数のこの増加は、細胞活性を一般的に減少させる。これらの細胞は、老化前であると言われる。
【0106】
バンダ・セルレア抽出物による若い線維芽細胞(F3P)の処理は、対照(未処理のF3P線維芽細胞)と比較して、細胞周期のそれらの関与による、細胞の相対的比率を改善しない。
【0107】
一方、実施例1のバンダ・セルレア抽出物による加齢した線維芽細胞(F22P)の処理は、未処理の若い線維芽細胞(F3P)と同等の遺伝物質の積極的な複製のS期にある細胞の割合を回復させることができる。
【0108】
この処理により、未処理細胞について観察された老化前の現象を「逆転」させることができる。
【0109】
バンダ・セルレア抽出物による処理は、G0/G1期でブロックされている老化細胞の割合の減少を引き起し、相対的により多くの細胞を遺伝情報の複製の活性な段階(S期)に移行させる。このようにして、線維芽細胞の生物学的活性の潜在性が増加する。これらの驚くべき特性により、老化細胞の数と比較して活性細胞の数を増加させることによって、特に真皮における皮膚加齢と闘うための特に効果的な化粧品活性薬剤としてランのバンダ・セルレアの抽出物の使用を可能にする。このようにして、この有効成分は、特に、「加齢した」線維芽細胞の生物学的機能及びメカニズムを回復させるために、細胞加齢の過程より十分に上流での闘いにとって全く革新的である。
【0110】
実施例3−老化防止クリーム
活性薬剤としてこの化粧品組成物において使用されるバンダ・セルレア幹の抽出物は、実施例1の過程を繰り返すことによって得られる(抽出物第1)。乾燥抽出物は、グリセロール/水 60/40 v/v混合物に1%w/wで溶解される。
【0111】
この抽出物溶液は、以下の化粧品組成物の調製において活性薬剤として使用される(%はw/wとして表される):
【0112】
A相
バンダ・セルレア抽出物の1%溶液 0.3
フェノキシエタノール 0.5
キサンタンガム 0.2
アクリレート/C20−30アルキルアクリレートクロスポリマー 0.2
EDTA四ナトリウム 0.1
水 適量
【0113】
B相
水素化ポリイソブテン 4
スクアラン 3
トリカプリル/トリカプリン酸グリセリル 3
ペンチレングリコール 3
ステアリン酸グリセリル 3
ステアリン酸PEG−100 2.5
蜜ろう 1.5
炭酸ジカプリリル 1.5
セチルアルコール 1
ステアリルアルコール 1
ジメチコーン 1
【0114】
C相
水酸化ナトリウム 0.04
水 100に合わせるために適量
【0115】
A相の賦形剤を水に溶解し、次に、バンダ・セルレア抽出物の水/グリコール溶液を含む全ての他の化合物を溶解させる前に、80℃まで加熱を行う。
B相の化合物は、均一な相を形成させるために85℃に加熱される。
A相は、イストラル(Ystral)ミキサーを用いてB相中に乳化させる。
【0116】
このようにして得られた水中油型乳剤は、最終的に、0.04%w/wの水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和され、その後、冷却される。
得られた組成物は、顔又は顔の一部に塗布されることを目的とした老化防止クリームである。
【0117】
実施例4−ライトニング老化防止セラム
実施例1によるバンダ・セルレア抽出物 0.2
マデカッソシド 0.01
甘草抽出物 0.05
オートムギの多糖類 3
UVスクリーニング剤 5
賦形剤 100に合わせるために適量
【0118】
本製剤は、朝、メーキャップを落としている皮膚に塗布される。
図1
図2