特許第6049137号(P6049137)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049137
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】歯車対の設計装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/08 20060101AFI20161212BHJP
   G06F 17/50 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   F16H55/08 Z
   G06F17/50 680Z
   G06F17/50 610A
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-274993(P2012-274993)
(22)【出願日】2012年12月17日
(65)【公開番号】特開2014-119042(P2014-119042A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】狩野 正樹
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−069713(JP,A)
【文献】 特開2012−021538(JP,A)
【文献】 特開平09−016643(JP,A)
【文献】 特開平06−215079(JP,A)
【文献】 特開平01−210839(JP,A)
【文献】 特開平09−053702(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/112369(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 51/00−55/30
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに噛合する第1の歯車と第2の歯車の基本的な形状及び組立状態を示す諸元に基づいて定まる前記第1の歯車の第1の共役歯面と前記第2の歯車の第2の共役歯面のうち前記第2の共役歯面が歯面修正によって非共役歯面に創成される歯車対の特性情報として、前記第1の共役歯面と前記非共役歯面との接触点の軌跡と、前記接触点の軌跡上における伝達誤差情報と、前記第1の共役歯面と前記非共役歯面との接触線上での隙間情報と、を含む情報が入力される入力手段と、
前記伝達誤差情報と前記隙間情報とを前記第1の共役歯面上で三次元的に合成して前記第1の共役歯面と前記非共役歯面との相対的な歯面間の隙間の三次元的な分布情報を示すイースオフを演算する演算手段と、を備え
前記演算手段は、前記伝達誤差情報及び前記隙間情報を、ヒールを原点とするトーまでの距離及びルートを原点とするフェースまでの距離をそれぞれ規格化した前記第1の共役歯面上の前記接触点の軌跡に沿って変動する関数及び同時接触線方向に沿って変動する関数にそれぞれ変換し、変換後の前記伝達誤差情報と前記隙間情報とを加算することで前記イースオフを演算し、
前記演算手段は、規格化した前記第1の共役歯面に対する前記第2の共役歯面の噛合情報として、前記第2の共役歯面の接触線角度、及び、前記第2の共役歯面の平均1歯間隔を演算し、
前記噛合情報に基づいて、前記伝達誤差情報及び前記隙間情報を規格化した前記第1の共役歯面上の関数に変換し、
前記演算手段は、前記第1の共役歯面上の前記ヒールを起点とする歯筋方向と前記ルートを起点とする歯丈方向とにマトリクス状に設定した各格子点と、前記各格子点が前記第2の共役歯面と接触するときの前記第1の歯車の各回転角度との関係に基づいて、規格化した前記第1の共役歯面上の任意の点において前記第2の共役歯面が接触するときの前記第1の歯車の回転角度を求め、前記回転角度が等しくなる任意の点の分布に基づいて前記噛合情報を算出することを特徴とする歯車対の設計装置。
【請求項2】
前記入力手段は、前記歯車対の特性情報としてバックラッシュが入力され、
前記演算手段は、前記バックラッシュを加えた前記イースオフを、前記第2の共役歯面に対して前記歯面修正を行う際の歯面修正量として演算することを特徴とする請求項1に記載の歯車対の設計装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに噛合する歯車の一方の歯面が歯面修正によって非共役歯面に創成加工される歯車対の設計装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、傘歯車やハイポイドギヤ等の歯車対において、実用に供される各歯車の歯面形状(実歯面形状)は、理論的に共役な数学的に表現される歯面ではなく、加工可能な近似歯面形状となる。すなわち、実用に供されるハイポイドギヤ等の歯車対は、一般に、共役歯面に対して歯面修正(歯切り)が行われた非共役歯面となる。
【0003】
このような歯面修正にはグリーソン方式等による歯切り法が広く用いられており、例えば、グリーソン方式のハイポイドギヤの歯切り法では、Formate法或いはHelixiform法等の直接創成法によって、ピニオンの歯切りが行われる。そして、この種の歯車対では、創成された実歯面の歯当たり解析(例えば、特許文献1参照)に基づいて、その強度評価や、振動騒音評価等が行われる。このような、歯車対に対する歯面修正及び評価は繰り返し行われ、これにより、所望の特性(性能)を確保した歯車対を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2006/112369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような歯面加工を行う際に加工機に設定される各種諸元からは創成後の歯面形状等を直感的に把握することが困難であるため、この種の加工機設定は、オペレータの経験等に大きく左右される。従って、オペレータ等の負荷を軽減するためには、所望の特性を得るための指標となる歯面情報をオペレータ等に対して事前に把握させることが有効となる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、所望の特性を得るための歯面情報をオペレータ等に提示することができる歯車対の設計装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による歯車対の設計装置は、互いに噛合する第1の歯車と第2の歯車の基本的な形状及び組立状態を示す諸元に基づいて定まる前記第1の歯車の第1の共役歯面と前記第2の歯車の第2の共役歯面のうち前記第2の共役歯面が歯面修正によって非共役歯面に創成される歯車対の特性情報として、前記第1の共役歯面と前記非共役歯面との接触点の軌跡と、前記接触点の軌跡上における伝達誤差情報と、前記第1の共役歯面と前記非共役歯面との接触線上での隙間情報と、を含む情報が入力される入力手段と、前記伝達誤差情報と前記隙間情報とを前記第1の共役歯面上で三次元的に合成して前記第1の共役歯面と前記非共役歯面との相対的な歯面間の隙間の三次元的な分布情報を示すイースオフを演算する演算手段と、を備え、前記演算手段は、前記伝達誤差情報及び前記隙間情報を、ヒールを原点とするトーまでの距離及びルートを原点とするフェースまでの距離をそれぞれ規格化した前記第1の共役歯面上の前記接触点の軌跡に沿って変動する関数及び同時接触線方向に沿って変動する関数にそれぞれ変換し、変換後の前記伝達誤差情報と前記隙間情報とを加算することで前記イースオフを演算し、前記演算手段は、規格化した前記第1の共役歯面に対する前記第2の共役歯面の噛合情報として、前記第2の共役歯面の接触線角度、及び、前記第2の共役歯面の平均1歯間隔を演算し、前記噛合情報に基づいて、前記伝達誤差情報及び前記隙間情報を規格化した前記第1の共役歯面上の関数に変換し、前記演算手段は、前記第1の共役歯面上の前記ヒールを起点とする歯筋方向と前記ルートを起点とする歯丈方向とにマトリクス状に設定した各格子点と、前記各格子点が前記第2の共役歯面と接触するときの前記第1の歯車の各回転角度との関係に基づいて、規格化した前記第1の共役歯面上の任意の点において前記第2の共役歯面が接触するときの前記第1の歯車の回転角度を求め、前記回転角度が等しくなる任意の点の分布に基づいて前記噛合情報を算出するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の歯車対の設計装置によれば、所望の特性を得るための歯面情報をオペレータ等に提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ハイポイドギヤの斜視図
図2】歯車対の設計装置の概略構成図
図3】歯車対の設計装置を実現するためのコンピュータシステムの一例を示す概略構成図
図4】ユーザ入力される各接触点上の歯面変動関数(伝達誤差)の一例を示す特性図
図5】ユーザ入力される接触線上の隙間関数の一例を示す特性図
図6】正規化された無次元ギヤ歯面を示す説明図
図7】歯面情報演算ルーチンを示すフローチャート
図8】所定の演算条件で演算したドライブ側のイースオフを示す特性図
図9】所定の演算条件で演算したコースト側のイースオフを示す特性図
図10】ギヤ共役歯面と図8,9のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のドライブ側の歯面距離分布を示す特性図
図11】ギヤ共役歯面と図8,9のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のコースト側の歯面距離分布を示す特性図
図12】ギヤ共役歯面と図8,9のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のバックラッシュの変動を示す特性図
図13】ギヤ共役歯面と図8,9のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のドライブ側の歯面変動関数を示す特性図
図14】ギヤ共役歯面と図8,9のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のコースト側の歯面変動関数を示す特性図
図15】所定の演算条件で演算したドライブ側のイースオフを示す特性図
図16】所定の演算条件で演算したコースト側のイースオフを示す特性図
図17】ギヤ共役歯面と図15,16のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のドライブ側の歯面距離分布を示す特性図
図18】ギヤ共役歯面と図15,16のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のコースト側の歯面距離分布を示す特性図
図19】ギヤ共役歯面と図15,16のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のバックラッシュの変動を示す特性図
図20】ギヤ共役歯面と図15,16のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のドライブ側の歯面変動関数を示す特性図
図21】ギヤ共役歯面と図15,16のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のコースト側の歯面変動関数を示す特性図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1はハイポイドギヤの斜視図、図2は歯車対の設計装置の概略構成図、図3は歯車対の設計装置を実現するためのコンピュータシステムの一例を示す概略構成図、図4はユーザ入力される各接触点上の歯面変動関数(伝達誤差)の一例を示す特性図、図5はユーザ入力される接触線上の隙間関数の一例を示す特性図、図6は正規化された無次元ギヤ歯面を示す説明図、図7は歯面情報演算ルーチンを示すフローチャート、図8は所定の演算条件で演算したドライブ側のイースオフを示す特性図、図9は所定の演算条件で演算したコースト側のイースオフを示す特性図、図10はギヤ共役歯面と図8,9のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のドライブ側の歯面距離分布を示す特性図、図11はギヤ共役歯面と図8,9のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のコースト側の歯面距離分布を示す特性図、図12はギヤ共役歯面と図8,9のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のバックラッシュの変動を示す特性図、図13はギヤ共役歯面と図8,9のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のドライブ側の歯面変動関数を示す特性図、図14はギヤ共役歯面と図8,9のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のコースト側の歯面変動関数を示す特性図、図15は所定の演算条件で演算したドライブ側のイースオフを示す特性図、図16は所定の演算条件で演算したコースト側のイースオフを示す特性図、図17はギヤ共役歯面と図15,16のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のドライブ側の歯面距離分布を示す特性図、図18はギヤ共役歯面と図15,16のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のコースト側の歯面距離分布を示す特性図、図19はギヤ共役歯面と図15,16のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のバックラッシュの変動を示す特性図、図20はギヤ共役歯面と図15,16のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のドライブ側の歯面変動関数を示す特性図、図21はギヤ共役歯面と図15,16のイースオフから理論上定義されるピニオン非共役歯面とを用いて歯当たり解析を行った際のコースト側の歯面変動関数を示す特性図である。
【0011】
図1に示す歯車対100は、例えば、ハイポイドギヤであり、この歯車対100は、大径をなす一方の歯車である第1の歯車(以下、ギヤともいう)101Gと、小径をなす他方の歯車である第2の歯車(以下、ピニオンともいう)101Pとが互いに噛合して構成されている。
【0012】
この歯車対100のギヤ101G及びピニオン101Pを構成する各歯面は、例えば、フェースホブ方式のカッタヘッド(図示せず)を用いて加工される。具体的には、例えば、ギヤ101Gを構成するギヤ歯面102G(凸歯面102Ga及び凹歯面102Gb)は共役歯面(第1の共役歯面)であり、このギヤ歯面102Gは、カッタヘッドを用いて成形加工される。一方、例えば、ピニオン101Pを構成するピニオン歯面102P(凸歯面102Pa及び凹歯面102Pb)は非共役歯面であり、このピニオン歯面102Pは、カッタヘッドを用いて創成加工される。すなわち、ピニオン歯面102Pは、共役歯面(第2の共役歯面)に対し、所定の歯面修正量にて歯面修正が施すことで創成された非共役歯面となる。なお、上述したギヤ101G及びピニオン101Pの各共役歯面は、歯車の基本的な形状及び組立状態を示す諸元に基づいて一義的に定まるものである。
【0013】
このような歯面加工(歯切り)を行う加工機には、例えば、歯車対100の諸元として、ギヤ101G及びピニオン101Pの基本的な形状を規定するための諸元、ギヤ101Gとピニオン101Pとの組立状態を規定するための諸元、及び、ピニオン101Pの歯面修正量を規定するための諸元等が設定される。そして、加工機は、これら設定された諸元等に基づいて歯面加工を行う。
【0014】
このような加工機設定に先立ち、所望の性能を有する歯車対の歯面情報をオペレータ等に提示すべく、例えば、図2に示す歯車対の設計装置1では、設計対象となる歯車対100の歯面間に対して所望の特性(伝達誤差特性及び隙間特性)を持たせるための歯面情報として、共役なギヤ歯面(ギヤ共役歯面)と非共役なピニオン歯面(ピニオン非共役歯面)との相対歯面情報を示すイースオフ(Ease-off)が演算される。
【0015】
設計装置1は、設計対象となる歯車対100の各種諸元やオペレータ等が所望する特性等を入力する入力手段としての入力部5と、歯車対100の諸元や特性等の入力情報に基づいて各種演算を行う演算手段としての演算部6と、演算部6で実行される各種演算プログラム等を格納するとともに、入力部5からの入力情報等を適宜記憶する記憶部7と、演算部6での演算結果等を出力する出力部8とを有して構成されている。なお、本実施形態の設計装置1は、例えば、図3に示すコンピュータシステム10で実現される。コンピュータシステム10は、例えば、コンピュータ本体11に、キーボード12と、ディスプレイ装置13と、プリンタ14とがケーブル15を介して接続されて要部が構成されている。そして、このコンピュータシステム10において、例えば、コンピュータ本体11に配設された各種ドライブ装置やキーボード12等が入力部5として機能するとともに、コンピュータ本体11に内蔵されたCPU、ROM、RAM等が演算部6として機能する。また、コンピュータ本体11に内蔵されたハードディスク等が記憶部7として機能するとともに、ディスプレイ装置13やプリンタ14等が出力部8として機能する。
【0016】
本実施形態において、入力部5には、例えば、設計対象となる歯車対100の基本的な形状を示す諸元(例えば、ギヤ101G及びピニオン101Pの円錐角、捩れ角、ピッチ円半径等)が入力されるとともに、歯車対100の組立状態を示す諸元(例えば、ギヤ比(ギヤ歯数N及びピニオン歯数N)、オフセットΕ、交差角Σ等(図1参照))が入力される。
【0017】
また、入力部5には、設計対象となる歯車対100に対して所望する特性情報として、ギヤ歯面(共役歯面)102Gに対するピニオン歯面(非共役歯面)102Pの接触点の軌跡、各接触点上における伝達誤差情報、ギヤ歯面(共役歯面)102Gとピニオン歯面(非共役歯面)102Pとの接触線上での隙間情報が入力される。さらに、入力部5には、設計対象となる歯車対100に所望する特性情報として、ギヤ歯面102Gとピニオン歯面102PとのバックラッシュBが入力される。
【0018】
ここで、本実施形態において、接触点軌跡上における伝達誤差情報は、例えば、図4に示すように、一歯について(すなわち、一歯間隔(2π/歯数)を「1」として)規格化された関数(モーションカーブ)y(x) [μ radian]によって与えられる。また、接触線上における隙間情報は、例えば、図5に示すように、歯幅を「1」として規格化された関数e(a) [μm]によって与えられる。なお、図4,5に例示する特性は、例えば、ドライブ側(ギヤ歯面102Gの凸歯面102Ga側)における特性を示すものであり、コースト側(ギヤ歯面102Gの凹歯面102Gb側)についても、同様に所定の特性情報が入力される。
【0019】
また、入力部5には、後述するイースオフの演算を行う際の各種演算条件を入力することが可能となっている。具体的には、例えば、イースオフの演算に用いる接触点軌跡の型として、接触点軌跡がギヤ歯面上のルートからフェースまで貫通する「貫通型」を採用するか、或いは、接触点軌跡がピニオン有効歯先位置及びギヤ有効歯先位置においてクランク状に折曲する「Z型」を採用するかを設定入力することが可能となっている。また、例えば、イースオフの演算に用いる伝達誤差の変動距離単位(すなわち、図4に示す特性図の横軸の距離単位)として、一歯間隔を接触点軌跡に沿う距離単位に換算した「換算一歯型」を採用するか、或いは、換算しな「一歯型」を採用するかを設定入力することが可能となっている。さらに、例えば、イースオフの演算に用いる隙間の接触幅距離単位(すなわち、図5に示す特性図の横軸の距離単位)として、歯幅を同時接触線に沿う距離単位に換算した「換算歯幅型」を採用するか、或いは、換算しない「歯幅型」を採用するかを設定入力することが可能となっている。
【0020】
次に、演算部6において実行される歯面情報(イースオフ)の演算処理について、図7に示す歯面情報演算ルーチンのフローチャートに従って説明する。ここで、本実施形態において、演算部6は、共役歯面からなるギヤ歯面(ギヤ共役歯面)を規格化した無次元歯面の座標上において、所望の伝達誤差情報と隙間情報とを合成することにより、歯面情報を演算する。なお、このような歯面情報の演算は、設計対象となる歯車対100においてギヤ歯面102Gを基準とするドライブ側(例えば、右歯面側)及びコースト側(例えば、左歯面側)についてそれぞれ行われるが、これらは略同様の処理であるため、以下のフローチャートの説明においては、適宜コースト側の処理の説明は省略する。
【0021】
このルーチンがスタートすると、演算部6は、先ず、ステップS101において、入力部5を通じて入力された上述の各種入力情報について、記憶部7からの読み込みを行う。
【0022】
続くステップS102において、演算部6は、設計対象となる歯車対100の基本的な形状を示す諸元及び組立諸元等に基づいて、ギヤ101G及びピニオン101Pの各共役歯面(ギヤ共役歯面、及び、ピニオン共役歯面)を一義的に演算する。なお、例えば、ギヤ101G及びピニオン101Pの各共役歯面の情報については、予め算出された情報を、入力部5を通じて入力することも可能である。
【0023】
続くステップS103において、演算部6は、ステップS102で得られたギヤ共役歯面の情報を規格化して、無次元歯面を生成する。すなわち、演算部6は、例えば、図6に示すように、ヒールからトーまでの距離が「1」となり、且つ、ルートからフェースまでの距離が「1」となるよう規格化したギヤ共役歯面を生成する。ここで、このように規格化されたギヤ共役歯面上には、例えば、ヒールを「0(原点)」としトーを「1」とする歯筋方向の座標rと、ルートを「0(原点)」としフェース「1」とする歯丈方向の座標rとからなる直交座標が与えられる。また、このように規格化されたギヤ共役歯面(無次元座標系)上には、各種入力情報等に基づいて、接触点軌跡角度β、ピニオン有効歯先位置ril、ギヤ有効歯先位置riu等が一義的に付与される。
【0024】
続くステップS104において、演算部6は、規格化したギヤ共役歯面に対して規格化したピニオン共役歯面を噛合したと仮定したときの噛合情報として、ピニオン共役歯面の接触線角度α、及び、ピニオン共役歯面の平均一歯間隔pを演算する。
【0025】
これら接触線角度α及び平均一歯間隔pの演算に際し、演算部6は、先ず、ギヤ共役歯面上に設定された各格子点がピニオン共役歯面と接触するときのギヤ回転角度ωを算出する。すなわち、ギヤ共役歯面上には、例えば、ヒールを起点として歯筋方向に数える格子番号をj(j=1〜n)とし、且つ、ルートを基点として歯丈方向に数える格子番号をi(i=1〜n)とする複数(例えば、3×4個)の格子点が予めマトリクス状に設定されている。そこで、演算部6は、各格子点(j,i)においてギヤ共役歯面がピニオン共役歯面と接触するときのギヤ回転角度ωjiを算出する。
【0026】
次に、演算部6は、各格子点(j,i)でのギヤ回転角度ωjiを、r−r直交座標上において以下の(1)〜(3)式で近似し、(1)式中の各係数aωj,aωi,aωを、最小自乗法を用いた(4)式を解くことにより求める。
【数1】
【0027】
これにより、規格化したギヤ共役歯面上の任意の点(r,r)においてピニオン共役歯面が接触するときのギヤ回転角度ωは、(1)式を用いて求めることが可能となる。換言すれば、(1)式の関係を用いることにより、ギヤ回転角度ωの値が等しくなる座標群(すなわち、同時接触線)を求めることが可能となる。
【0028】
そして、演算部6は、(1)式の関係を用いることにより、例えば、以下の(5)式及び(6)式により、ピニオン共役歯面の接触線角度α、及び、平均一歯間隔pを求める。
【数2】
【0029】
続くステップS105において、演算部6は、接触点軌跡上における伝達誤差情報(すなわち、伝達誤差関数y(x))と、接触線上における隙間情報(すなわち、隙間関数e(a))とを規格化したギヤ共役歯面上の関数に変換し、変換後の伝達誤差情報と隙間情報とを加算することでイースオフFjiを演算する。
【0030】
ところで、伝達誤差情報は接触点軌跡に沿って変動し、隙間情報は同時接触線方向に沿って変動するものである。そこで、演算部6は、先ず、r−r直交座標系を、以下の(7)式及び(8)式により、接触点軌跡に沿う座標をaとし、且つ、同時接触線方向に沿う座標をbとするa−b非直交座標系に変換する。
【数3】
【0031】
ここで、(8)式中において、rjO,及びriOは、例えば、ギヤ共役歯面に対し、オペレータ等によって任意に設定される基準点の座標(基準点無次元座標)である。
【0032】
そして、演算部6は、a−b非直交座標系を用い、以下の(9.1)式〜(16)式により、イースオフFjiを算出する。
【数4】
【0033】
ここで、(16)式中の右辺第1項は、隙間e(a)に関する項である。本項において、e’は、(13)式で与えられる隙間関数である。(13)式中のa’は、隙間関数横軸とaのシフトを表す変数であり、オペレータ等により設定入力された接触点軌跡の型に応じて異なる値となる。すなわち、接触点軌跡の型が「Z型」である場合にはa’は(9.1)式〜(9.5)式を用いた(9)式で与えられ、接触点軌跡の型が「貫通型」である場合にはa’は(10)式で与えられる。
【0034】
また、(13)式中のcは、隙間関数距離単位を示す係数であり、オペレータ等により設定入力された隙間の接触幅距離単位に応じて異なる値となる。すなわち、隙間の接触幅距離単位が「換算歯幅型(無次元型)」である場合にはcは(11)式で与えられ、隙間の接触幅距離単位が「歯幅型」である場合にはcは(12)式で与えられる。
【0035】
また,(13)式中のUjiは、ギヤ格子(j,i)の共役歯面点の角度座標と外向き歯面法線方向距離の換算半径を示す係数であり、この係数は、単位系が [μm]によって与えられる隙間情報と、単位系が [μ radian]によって与えられる伝達誤差情報との単位系を統一するためのものである。
【0036】
また、(16)式中の右辺第2項は、伝達誤差y(x)に関する項である。本項において、cは、変動関数距離単位を示す係数であり、オペレータ等により設定入力された伝達誤差の変動距離単位に応じて異なる値となる。すなわち、伝達誤差の変動距離単位が「換算一歯型(無次元型)」である場合にはcは(14)式で与えられ、伝達誤差の変動距離単位が「一歯型」である場合にはcは(15)式で与えられる。
【0037】
また、(16)式中の右辺第3項は、バックラッシュBに関する項である。本項は、単にイースオフのみを知りたい場合には適宜省略可能な項であるが、イースオフをピニオン共役歯面に対する歯面修正量として求める場合には必要となる。本項において、RBLは、角度座標をバックラッシュ方向の換算半径を示す係数であり、本係数も単位系を統一するためのものである。
【0038】
また、(16)式中の右辺第4項は、歯を溝に変換するための項であり、本項においても,適宜省略することが可能である。
【0039】
このように演算されたイースオフは、例えば、歯車対100の設計に際し、ピニオン歯面に対する歯面修正量を設定する際の指標として、ディスプレイ装置13等の出力部8を通じてオペレータ等に提示される(例えば、図8,9、或いは、図15,16参照)。
【0040】
ここで、図8,9に示すイースオフは、例えば、接触点軌跡角度としてβ=0°が設定され、演算条件として、接触点軌跡の型に「Z型」、伝達誤差の変動距離単位に「換算一歯型」、隙間の接触幅距離単位に「換算歯幅型」が設定されたときのドライブ側及びコースト側のイースオフを示す。また、図15,16に示すイースオフは、例えば、接触点軌跡角度としてβ=45°が設定され、演算条件として、接触点軌跡の型に「貫通型」、伝達誤差の変動距離単位に「換算一歯型」、隙間の接触幅距離単位に「換算歯幅型」が設定されたときのドライブ側及びコースト側のイースオフを示す。
【0041】
なお、図8,9に示すイースオフに基づいて理論上定義されるピニオン非共役歯面と、ギヤ共役歯面との関係について歯当たり解析を行った結果、例えば、歯面距離分布の特性として図10,11に示す特性を得ることができ、バックラッシュの特性として図11に示す特性を得ることができ、さらに、歯面変動関数の特性として図13,14に示す特性を得ることができた。同様に、図15,16に示すイースオフに基づいて理論上適宜されるピニオン非共役歯面と、ギヤ共役歯面との関係について解析を行った結果、例えば、歯面距離分布の特性として図17,18に示す特性を得ることができ、バックラッシュの特性として図19に示す特性を得ることができ、さらに、歯面変動関数の特性として図20,21に示す特性を得ることができた。
【0042】
このような実施形態によれば、例えば、設計対象となる歯車対100のピニオン共役歯面に対する歯面修正を行うことでピニオン非共役歯面を創成するための加工機設定等を行うに際し、オペレータ等が所望するギヤ共役歯面とピニオン非共役歯面との接触点の軌跡と、接触点の軌跡上における伝達誤差情報と、ギヤ共役歯面とピニオン非共役歯面との接触線上での隙間情報とを入力し、伝達誤差情報と隙間情報とをギヤ共役歯面上で三次元的に合成してギヤ共役歯面とピニオン非共役歯面との相対歯面情報を示すイースオフを演算することにより、歯面修正によって所望の特性を得るための指標となる歯面情報をオペレータ等に提示することができる。従って、オペレータ等は,経験等に大きく左右されることなく、目標とする創成歯面に関する情報を事前に把握することができ、歯面修正等に対する工程を効率化することができる。
【0043】
なお、本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内である。例えば、上述の実施形態においては、本発明をハイポイドギヤに対して適用した一例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の種類の歯車対に対して適用が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 … 設計装置
5 … 入力部(入力手段)
6 … 演算部(演算手段)
7 … 記憶部
8 … 出力部
10 … コンピュータシステム
11 … コンピュータ本体
12 … キーボード
13 … ディスプレイ装置
14 … プリンタ
15 … ケーブル
100 … 歯車対
101G … ギヤ(第1の歯車)
101P … ピニオン(第2の歯車)
102G … ギヤ歯面
102Ga … 凸歯面
102Gb … 凹歯面
102P … ピニオン歯面
102Pa … 凸歯面
102Pb … 凹歯面
図1
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