特許第6049154号(P6049154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6049154排気ガス浄化用触媒担体及び排気ガス浄化用触媒並びに排気ガス浄化用触媒構成体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049154
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】排気ガス浄化用触媒担体及び排気ガス浄化用触媒並びに排気ガス浄化用触媒構成体
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/185 20060101AFI20161212BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20161212BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20161212BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20161212BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   B01J27/185 A
   B01J37/02 301C
   B01D53/94 223
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   F01N3/10 A
   F01N3/28 301P
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-217915(P2015-217915)
(22)【出願日】2015年11月5日
(62)【分割の表示】特願2012-84843(P2012-84843)の分割
【原出願日】2012年4月3日
(65)【公開番号】特開2016-26874(P2016-26874A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2015年11月24日
(31)【優先権主張番号】特願2011-194239(P2011-194239)
(32)【優先日】2011年9月6日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 一般社団法人触媒学会、第109回触媒討論会討論会A予稿集、第112頁、平成24年3月10日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、文部科学省、「元素戦略プロジェクト 高分散貴金属ミニマム化触媒の物質設計とプロセシング」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】永尾 有希
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆広
(72)【発明者】
【氏名】中原 祐之輔
(72)【発明者】
【氏名】町田 正人
【審査官】 佐藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−329333(JP,A)
【文献】 特開昭58−128127(JP,A)
【文献】 特開平08−150339(JP,A)
【文献】 特開2001−000867(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01063003(EP,A2)
【文献】 特開平11−267509(JP,A)
【文献】 特開平06−170233(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/035568(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/94
F01N 3/10
F01N 3/28
CAplus(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO2粒子にリン酸塩が分散担持された排気ガス浄化用触媒担体であって、
該リン酸塩が、
一般式
MPO4
(式中、MはY又はLaである)
で表されるリン酸塩を含むことを特徴とする排気ガス浄化用触媒担体。
【請求項2】
SiO2粒子にリン酸塩が分散担持され、該リン酸塩が、
一般式
MPO4
(式中、MはY又はLaである)
で表されるリン酸塩を含む担体と、該担体に担持された少なくともRhを含む貴金属とを含むことを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項3】
セラミックス又は金属材料からなる触媒支持体と、該触媒支持体上に担持されている請求項に記載の排気ガス浄化用触媒の層とを含むことを特徴とする排気ガス浄化用触媒構成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気ガス浄化用触媒担体及び排気ガス浄化用触媒に関し、より詳しくは、特に、Rh担持用の排気ガス浄化用触媒担体として有効であり、Rhを担持した排気ガス浄化用触媒としては、空気過剰率λが1のストイキ領域から空気過剰率λが1よりも大きいリーン領域にかけてのNOX浄化活性が高く、Rh担持ジルコニアと比較して大幅に性能の向上した排気ガス浄化用触媒担体及び排気ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排気ガス中には炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOX)等の有害成分が含まれている。それで、従来から、これらの有害成分を浄化して無害化するために三元触媒が用いられている。
【0003】
上記のような三元触媒においては、触媒活性成分としてPt、Pd、Rh等の貴金属が用いられており、担体としてアルミナ、セリア、ジルコニアや酸素吸蔵能力を持つセリア−ジルコニア複合酸化物等が用いられており、また触媒支持体としてセラミックス又は金属材料からなるハニカム、板、ペレット等の形状のものが用いられている。一般的にガソリン自動車に使われている三元触媒は空気過剰率λ=1近傍にてCO、HC、NOXともに高い浄化性能を保つことができるが、空気過剰率λが1よりも大きいリーン領域では酸素過多となり、NOX浄化性能が極端に悪化する。空気過剰率λが1よりも大きいリーン領域でのNOX浄化性能を向上させるために一般的にNOXトラップ触媒が用いられているが、高濃度のSを含有するガソリンを使用した場合にはS被害を受け易く、NOXトラップ機能が低下することが言われている。
【0004】
担体として耐S被毒性に優れているリン酸塩(リン酸マグネシウム、リン酸銀、リン酸ニッケル、リン酸銅、リン酸鉄、リン酸亜鉛、リン酸スズ)をHC改質材として含む触媒層と、Rh担持WO3修飾アルミナ(もしくはシリカアルミナ)を含む触媒層との二層構造を有し、リーン領域の空燃比でHC改質材が排気ガス中のHCを部分酸化することで含酸素化合物を生成し、低HC/NOX比の排気雰囲気下でもN2Oを殆ど生成することなく高効率でNOXを浄化することができる排気ガス浄化触媒が提案されている(特許文献1参照。)。また、金属炭酸塩と金属硫酸塩と金属リン酸塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物からなる担体に、活性金属としてイリジウムを担持してなる脱硝触媒が提案されている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−042415号公報
【特許文献2】特開平11−267509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の発明で使用しているリン酸塩は何れもBET値が低く、アルミナやβゼオライト等の高BET値を有するキャリア材に担持させて高分散化させる必要があり、且つ二層構造になっていることから、仕様が複雑化している。又、上記の特許文献2に記載の発明においては活性金属としてイリジウムを使用しており、耐久性は必ずしも満足できるものではない。
【0007】
本発明の目的は、新規な排気ガス浄化用触媒担体、特に、Rh担持用の排気ガス浄化用触媒担体として有効なものを提供し、Rhを担持した排気ガス浄化用触媒としては、空気過剰率λが1のストイキ領域から空気過剰率λが1よりも大きいリーン領域にかけてのNOX浄化活性が高く、Rh担持ジルコニアと比較して大幅に性能の向上した排気ガス浄化用触媒担体及び排気ガス浄化用触媒を提供することにある。なお、空気過剰率λは理論混合比(ストイキ)に対して何倍の空気が入っているかを示す倍率であり、λ=1がストイキ、λ<1がリッチ領域、λ>1がリーン領域となる。また、文献SAE Paper Number 950256に記載のλ(O/R)及びA/Fのグラフから換算すると、空気過剰率λが理論混合比λ=1(ストイキ)であるときには空燃比A/Fが理論空燃比A/F=14.6となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、耐S被毒性に優れている一般式MPO4(式中、MはY、La又はAlである)で表されるリン酸塩又は式ZrP27で表されるリン酸ジルコニウムをRhの担体として用いた場合に、空気過剰率λが1のストイキ領域から空気過剰率λが1よりも大きいリーン領域にかけてのNOX浄化活性が高く、Rh担持ジルコニアと比較して大幅に性能の向上した排気ガス浄化用触媒が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、SiO2粒子にリン酸塩が分散担持された排気ガス浄化用触媒担体であって、
該リン酸塩が、
一般式
MPO4
(式中、MはY又はLaである)
で表されるリン酸塩を含むことを特徴とする排気ガス浄化用触媒担体にある。
【0012】
また本発明の排気ガス浄化用触媒は、
SiO2粒子にリン酸塩が分散担持され、該リン酸塩が、
一般式
MPO4
(式中、MはY又はLaである)
で表されるリン酸塩を含む担体と、該担体に担持された少なくともRhを含む貴金属とを含むことを特徴とする。
【0015】
更に、本発明の排気ガス浄化用触媒構成体は、
セラミックス又は金属材料からなる触媒支持体と、該触媒支持体上に担持されている上記の本発明の排気ガス浄化用触媒の層とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の排気ガス浄化用触媒においては、空気過剰率λが1のストイキ領域から空気過剰率λが1よりも大きいリーン領域にかけてのNOX浄化活性が高く、Rh担持ジルコニアと比較して大幅に性能の向上が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】Rhを担持した各サンプルのFresh品のFT―IR測定結果を示すグラフである。
図2】各サンプルの空気過剰率λ=1.2(空燃比A/F=14.7)のリーン領域でのL/O性能測定(C36の浄化率)の結果を示すグラフである。
図3】各サンプルの空気過剰率λ=1.2(空燃比A/F=14.7)のリーン領域でのL/O性能測定(NOの浄化率)の結果を示すグラフである。
図4】各サンプルの空気過剰率λ=1.2(空燃比A/F=14.7)のリーン領域でのL/O性能測定(CO生成濃度)の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の排気ガス浄化用触媒担体は、
一般式
MPO4
(式中、MはY、La又はAlである)
で表されるリン酸塩又は式ZrP27で表されるリン酸ジルコニウム(両者を併せて本発明のリン酸塩ともいう)からなる。
【0019】
上記の一般式MPO4で表されるリン酸塩及び式ZrP27で表されるリン酸ジルコニウムは、例えば後記の参考例でも示されているように、公知の共沈法で製造することができる。
【0020】
また、本発明の排気ガス浄化用触媒担体は、さらに、SiO2を含有するのが好ましい。このようにSiO2を含有する排気ガス浄化用触媒担体は、上述した本発明のリン酸塩の粉末とSiO2の粉末とを混合することにより製造したものでも、リン酸塩を水熱合成法により生成する際に、SiO2粉末を共存させることにより製造したものでもよく、特に、本発明のリン酸塩の中でも、リン酸ランタンを含有するのが好ましい。
【0021】
このようにSiO2を含有する排気ガス浄化用触媒担体は、上記リン酸塩と比較してさらに耐熱性が向上するという効果を奏する。特に、SiO2粒子にリン酸塩が分散担持された状態の担体とすることにより、高熱環境下において熱処理されても、担持された貴金属の埋没等が低減され、高温環境耐久後においても、CO、HC、NOxの低温活性の低下が低減される。
【0022】
なお、リン酸塩をリン酸ランタンとした場合、SiO2とリン酸塩との合計に対するリン酸塩の比率は、5〜40mol%が好ましい。
【0023】
本発明の排気ガス浄化用触媒は、上記の一般式MPO4で表されるリン酸塩又は式ZrP27で表されるリン酸ジルコニウムを含む担体にRhなどの貴金属を担持させたものである。上記の担体に特に、Rhを担持させことにより、空気過剰率λが1のストイキ領域から空気過剰率λが1よりも大きいリーン領域にかけてのNOX浄化活性が高く、Rh担持ジルコニアと比較して大幅に性能の向上した排気ガス浄化用触媒となる。Rhの担持量はRhメタルの質量に換算して担体の質量を基準にして好ましくは0.05〜2質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。Rhの担持量がRhメタルの質量に換算して担体の質量を基準にして0.05質量%未満である場合には貴金属の絶対量が少ないため活性が悪くなり、2質量%を超える場合には貴金属の量が多すぎて高分散担持することができないことがある。
【0024】
本発明の排気ガス浄化用触媒は、例えば、上記の一般式MPO4で表されるリン酸塩又は式ZrP27で表されるリン酸ジルコニウムとRh化合物の溶液(例えば、ヘキサアンミンRh水酸塩溶液)とを、Rhの担持量がRhメタルの質量に換算して担体の質量を基準にして好ましくは0.05〜2質量%となる量比で混合し、その後、蒸発乾固させ、450〜650℃で焼成することにより製造することができる。
【0025】
本発明の排気ガス浄化用触媒構成体は、セラミックス又は金属材料からなる触媒支持体上に上記の本発明の排気ガス浄化用触媒からなる層を形成させ、担持させたものである。このような排気ガス浄化用触媒構成体においては、セラミックス又は金属材料からなる触媒支持体の形状は、特に限定されるものではないが、一般的にはハニカム、板、ペレット等の形状である。ハニカム形状の場合、触媒支持体に担持させる排気ガス浄化用触媒の担持量は好ましくは70〜300g/L、より好ましくは100〜250g/Lである。この担持量が70g/L未満である場合には担持量不足により耐久性が悪くなる傾向がある。また、このような触媒支持体の材質としては、例えば、アルミナ(Al23)、ムライト(3Al23−2SiO2)、コージェライト(2MgO−2Al23−5SiO2)等のセラミックスや、ステンレス等の金属材料を挙げることができる。
【0026】
本発明の排気ガス浄化用触媒構成体は、例えば、次の方法によって製造することができる。ヘキサアンミンRh水酸塩溶液に上記の一般式MPO4で表されるリン酸塩又は式ZrP27で表されるリン酸ジルコニウム50〜70質量部、好ましくは60〜70質量部、La安定化アルミナ20〜40質量部、好ましくは20〜30質量部及びアルミナ系バインダー5〜10質量部を混合し、湿式粉砕処理してRh含有スラリーを調製する。この時、Rhの担持濃度が固形分に対して0.1〜0.5質量%、好ましくは0.1〜0.2質量%になるように硝酸Rhを加える。得られたスラリーを、周知の方法に従って、セラミックス又は金属材料からなる触媒支持体、好ましくはハニカム形状の触媒支持体に、排気ガス浄化用触媒の担持量が好ましくは70〜300g/L、より好ましくは100〜250g/Lとなるように塗布し、乾燥させ、450〜650℃で焼成して、触媒支持体と、該触媒支持体上に担持されている排気ガス浄化用触媒の層とを含む排気ガス浄化用触媒構成体を得る。
【0027】
以下に、製造実施例、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明する。
製造実施例1
<リン酸アルミニウム(AlPO4)の合成(共沈法)>
目的の所定比となるように、硝酸アルミニウム・9水和物を純水に溶解させ、その溶液にリン酸を入れて溶液とし、その溶液に10質量%アンモニア水をゆっくりと滴下してpH値を4.5〜10(好ましくは4.5〜9)とし、得られたゲル状生成物を純水にて洗浄濾過し、120℃で一晩乾燥した。乾燥後、空気中1,000℃で25時間焼成してリン酸アルミニウム(AlPO4)を得た。
【0028】
製造実施例2
<リン酸イットリウム(YPO4)の合成(共沈法)>
目的の所定比となるように、硝酸イットリウム溶液及びリン酸を入れた溶液に10質量%アンモニア水をゆっくりと滴下してpH値を6〜10(好ましくは6〜9)とし、得られたゲル状生成物を純水にて洗浄濾過し、得られた前駆体を120℃で一晩乾燥した。その後、空気中800℃で5時間焼成してリン酸イットリウム(YPO4)を得た。
【0029】
製造実施例3
<リン酸ランタン(LaPO4)の合成(共沈法)>
目的の所定比となるように、硝酸ランタン溶液及びリン酸を入れた溶液に10質量%アンモニア水をゆっくりと滴下してpH値を6〜10(好ましくは6〜9)とし、得られたゲル状生成物を純水にて洗浄濾過し、得られた前駆体を120℃で一晩乾燥した。その後、空気中800℃で5時間焼成してリン酸ランタン(LaPO4)を得た。
【0030】
製造実施例4
<リン酸ジルコニウム(ZrP27)の合成(共沈法)>
目的の所定比となるように、硝酸ジルコニル・2水和物を純水に溶解させ、その溶液にリン酸を入れて溶液とし、その溶液に10質量%アンモニア水をゆっくりと滴下してpH値を4.5〜10(好ましくは4.5〜9)とし、得られたゲル状生成物を純水にて洗浄濾過し、120℃で一晩乾燥した。乾燥後、空気中900℃で5時間焼成してリン酸ジルコニウム(ZrP27)を得た。
【0031】
製造実施例5
<リン酸ランタン(LaPO4)の合成(水熱合成法)>
目的の所定比となるように、硝酸ランタン溶液及びリン酸を入れた溶液に、10質量%アンモニア水をゆっくりと滴下してpH値を7〜12(好ましくは8〜12)とし、得られたゲル状生成物に、200℃で24時間水熱処理を施した。得られた生成物を純水にて洗浄濾過し、乾燥後、空気中1000℃で5時間焼成してリン酸ランタン(LaPO4)を得た。
【0032】
製造実施例6
<リン酸ランタン(LaPO4)/SiO2担体の合成(水熱合成法)>
目的の所定比となるように、硝酸ランタン溶液及びリン酸を入れた溶液に、SiO2粒子を添加し、混合物に、10質量%アンモニア水をゆっくりと滴下してpH値を7〜12(好ましくは8〜12)とし、得られたゲル状生成物に、200℃で24時間水熱処理を施した。得られた生成物を純水にて洗浄濾過し、乾燥後、空気中1000℃で5時間焼成してSiO2粒子にリン酸ランタン(LaPO4)が分散担持された担体を得た。
【0033】
参考例1
<Rh担持リン酸アルミニウム>
ヘキサアンミンRh水酸塩溶液に製造実施例1で調製したリン酸アルミニウム担体を、Rh担持濃度がRhメタルの質量に換算して担体の質量を基準にして1.0質量%となる量比で浸漬させ、その後、蒸発乾固後、焼成を行い、参考例1の排気ガス浄化用触媒(Rh担持リン酸アルミニウム)を得た。
【0034】
参考例2
<Rh担持リン酸イットリウム>
ヘキサアンミンRh水酸塩溶液に製造実施例2で調製したリン酸イットリウム担体を、Rh担持濃度がRhメタルの質量に換算して担体の質量を基準にして1.0質量%となる量比で浸漬させ、その後、蒸発乾固後、焼成を行い、参考例2の排気ガス浄化用触媒(Rh担持リン酸イットリウム)を得た。
【0035】
参考例3
<Rh担持リン酸ランタン>
ヘキサアンミンRh水酸塩溶液に製造実施例3で調製したリン酸ランタン担体を、Rh担持濃度がRhメタルの質量に換算して担体の質量を基準にして1.0質量%となる量比で浸漬させ、その後、蒸発乾固後、焼成を行い、参考例3の排気ガス浄化用触媒(Rh担持リン酸ランタン)を得た。
【0036】
参考例4
<Rh担持リン酸ジルコニウム>
ヘキサアンミンRh水酸塩溶液に製造実施例4で調製したリン酸ジルコニウム担体を、Rh担持濃度がRhメタルの質量に換算して担体の質量を基準にして1.0質量%となる量比で浸漬させ、その後、蒸発乾固後、焼成を行い、参考例4の排気ガス浄化用触媒(Rh担持リン酸ジルコニウム)を得た。
【0037】
比較例1
<Rh担持ジルコニア>
硝酸Rh水溶液に市販のジルコニア粉末を、Rh担持濃度がRhメタルの質量に換算して担体の質量を基準にして1.0質量%となる量比で浸漬させ、その後、蒸発乾固後、焼成を行い、比較例の排気ガス浄化用触媒(Rh担持ジルコニア)を得た。
【0038】
<FT−IRの測定方法>
参考例1〜4及び比較例1で得た各々のRh担持サンプルのFresh品を試料セルに詰め、N2気流中、600℃で30分間保持した後、300℃まで降温した。その後、C36を3,300ppmCの濃度及びO2を0.6%の濃度で30分間導入し、触媒表面に吸着したHC種をFT−IRで観察した。FT−IRの評価は日本分光製FT/IR−6200及び拡散反射測定装置DR−400を用いて行った。
【0039】
<FT−IRの測定結果>
FT−IRの測定結果を図1に示す。図1より、ZrO2担体においてはカルボン酸アニオンに帰属する吸着種及びRh上へのBrigde型CO吸着種が観察されており、C36の部分酸化が起きていることが示唆された。LaPO4担体、YPO4担体においてはカルボン酸アニオンの他にAryl−CHOのアルデヒドに帰属する吸着種が観察された。また、両者ともにLinear型CO吸着種が観察されており、C36の部分酸化が起きていることが示唆された。AlPO4担体においてはカルボン酸アニオンに帰属する吸着種は認められず、Aryl−CHOのアルデヒドに帰属する吸着種及びRh上へのLinear型CO吸着種が観察されており、C36の部分酸化が起きていることが示唆された。ZrP27担体においても、カルボン酸アニオンに帰属する吸着種は認められず、R−CHOのアルデヒドに帰属する吸着種及びRh上へのBrigde/Linear型CO吸着種が観察されており、C36の部分酸化が起きていることが示唆された。
【0040】
参考例5
<Rh担持リン酸アルミニウム、Rh単層0.15g/L>
ヘキサアンミンRh水酸塩溶液に製造実施例1で調製したリン酸アルミニウム担体73質量部、La安定化アルミナ21質量部、アルミナ系バインダー6質量部を添加し、湿式粉砕処理を施してRh含有スラリーを得た。この時、Rh担持濃度が固形分に対して0.15質量%になるように硝酸Rh溶液を加えた。得られたスラリーをセラミックハニカム基材に100g/Lとなるように塗布し、乾燥、焼成を行い、参考例の排気ガス浄化用触媒構成体(ハニカム触媒)とした。
【0041】
参考例6
<Rh担持リン酸イットリウム、Rh単層0.15g/L>
ヘキサアンミンRh水酸塩溶液に製造実施例2で調製したリン酸イットリウム担体73質量部、La安定化アルミナ21質量部、アルミナ系バインダー6質量部を添加し、湿式粉砕処理を施してRh含有スラリーを得た。この時、Rh担持濃度が固形分に対して0.15質量%になるように硝酸Rh溶液を加えた。得られたスラリーをセラミックハニカム基材に100g/Lとなるように塗布し、乾燥、焼成を行い、参考例の排気ガス浄化用触媒構成体(ハニカム触媒)とした。
【0042】
参考例7
<Rh担持リン酸ランタン、Rh単層0.15g/L>
ヘキサアンミンRh水酸塩溶液に製造実施例3で調製したリン酸ランタン担体73質量部、La安定化アルミナ21質量部、アルミナ系バインダー6質量部を添加し、湿式粉砕処理を施してRh含有スラリーを得た。この時、Rh担持濃度が固形分に対して0.15質量%になるように硝酸Rh溶液を加えた。得られたスラリーをセラミックハニカム基材に100g/Lとなるように塗布し、乾燥、焼成を行い、参考例の排気ガス浄化用触媒構成体(ハニカム触媒)とした。
【0043】
参考例8
<Rh担持リン酸ジルコニウム、Rh単層0.15g/L>
ヘキサアンミンRh水酸塩溶液に製造実施例4で調製したリン酸ジルコニウム担体73質量部、La安定化アルミナ21質量部、アルミナ系バインダー6質量部を添加し、湿式粉砕処理を施してRh含有スラリーを得た。この時、Rh担持濃度が固形分に対して0.15質量%になるように硝酸Rh溶液を加えた。得られたスラリーをセラミックハニカム基材に100g/Lとなるように塗布し、乾燥、焼成を行い、参考例の排気ガス浄化用触媒構成体(ハニカム触媒)とした。
【0044】
比較例2
<Rh担持ジルコニア、Rh単層0.15g/L>
硝酸Rh溶液にZrO2粉末73質量部、La安定化アルミナ21質量部、アルミナ系バインダー6質量部を添加し、湿式粉砕処理を施してRh含有スラリーを得た。この時、Rh担持濃度が固形分に対して0.15質量%になるように硝酸Rh溶液を加えた。得られたスラリーをセラミックハニカム基材に100g/Lとなるように塗布し、乾燥、焼成を行い、比較例の排気ガス浄化用触媒構成体(ハニカム触媒)とした。
【0045】
<触媒性能の評価方法>
ハニカム触媒の空気過剰率λが1よりも大きいリーン領域のライトオフ性能は、NO:1,000ppm、C36:1,650ppmC、O2:0.25%、H2O:10%及び残余のN2から成る模擬排ガス(λ=1.2)をSV=100,000h-1となるように参考例5〜8及び比較例2の各々のセラミックハニカム触媒に流通させて100〜500℃における出口ガス成分をCO/HC/NO分析計(ベスト測器製Exhaust Gas Analyzer SESAM3−N、BEX−5200C)を用いて測定した。得られたライトオフ性能評価結果より、C36/NOそれぞれの30%浄化率に到達する温度(T30)と400℃における浄化率(η400)を求め、各々のRh担持触媒の性能を比較した。
【0046】
ハニカム触媒の酸素過剰率λ(空燃比A/F)スキャン評価は、CO、CO2、C36、H2、O2、NO、H2O及び残余N2から成る完全燃焼を想定した模擬排ガスをλ=0.4〜1.5(A/F=14.2〜14.8)(CO/H2及びO2濃度を変動)の範囲でスキャンを行い、SV=100,000h-1となるように参考例5〜8及び比較例2の各々のセラミックハニカム触媒に流通させて400℃における出口ガス成分をCO/HC/NO分析計(堀場製作所製MOTOR EXHAUST GAS ANALYZER MEXA9100)を用いて測定し、各Rh担持触媒の性能を比較した。
【0047】
ハニカム触媒のライトオフ及び酸素過剰率λ(空燃比A/F)スキャン評価は水蒸気を10%含んだ模擬排ガス耐久後の触媒について性能比較を行った。模擬排ガス耐久条件は800℃に保持した電気炉に触媒をセットし、C36もしくはCOとO2(完全燃焼比)の混合ガス(50sec)及びAir(50sec)を周期させながら模擬排ガスを流通させて50時間処理した。
【0048】
<模擬排ガスによるL/O性能の評価結果>
図2図4にそれぞれ各サンプルの空気過剰率λ=1.2(空燃比A/F=14.7)のリーン領域でのNO−C36の反応結果(C36の浄化率、NOの浄化率及びCO生成濃度)の結果を示す。Rhの担体として特定のリン酸塩を用いると高温域でNOx浄化性能の大幅な向上が認められ、何れの仕様もRh担持ジルコニアの性能を凌駕した。また、FT−IRにおいても観察されたように、特定のリン酸塩は何れもC36の部分酸化由来と思われるCOの生成が認められており、ZrP27を用いた場合に最も生成濃度が高く、部分酸化されたCOや中間体を介して、NOxの浄化が進んでいるものと思われる。
【0049】
また、空気過剰率λ=1.2(空燃比A/F=14.7)における各サンプルのL/O性能データは第1表に示す通りである。
【0050】
【表1】
【0051】
<模擬排ガスによる酸素過剰率λ(空燃比A/F)スキャン評価の結果>
第2表、第3表及び第4表に各サンプルの酸素過剰率λ(空燃比A/F)スキャン結果を示す。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
L/O性能の結果と同様に、Rhの担体として特定のリン酸塩を用いると、空気過剰率λ=1のストイキから1よりも大きいリーン領域(λ=1、1.2及び1.5、A/F=14.6、14.7及び14.8)において比較例のRh担持ジルコニアのNOx浄化性能を凌駕しており、性能序列はZrO2<LaPO4<YPO4<AlPO4<ZrP27であった。FT−IRの結果(図1)を考慮するとリーンNOx性能に優れるものほど、HCの反応中間体としてアルデヒド中間体を形成する傾向にあった。
【0056】
以上の結果より、空気過剰率λが1よりも大きいリーン領域においてリン酸塩の酸点上にてC36の部分酸化が起こり、反応性の高いアルデヒド中間体とNOが反応することでNO−C36の反応が促進され、NOx浄化性能の向上に繋がったものと推測される。
【0057】
実施例11(0.4wt%Rh/5mol%LaPO4/SiO2
5mol%LaPO4/SiO2の比率になるように原料を調整し、上記製造実施例6の合成方法にて合成を行った。
【0058】
その後、硝酸Rh水溶液に上記粉末をRh担持濃度0.4wt%になるように浸漬させ、乾燥し、500℃×1時間焼成したものを排気ガス浄化用触媒とした。
【0059】
実施例12(0.4wt%Rh/10mol%LaPO4/SiO2
10mol%LaPO4/SiO2の比率になるように原料を調整すること以外は実施例11と同様にして、排気ガス浄化用触媒とした。
【0060】
実施例13(0.4wt%Rh/20mol%LaPO4/SiO2
20mol%LaPO4/SiO2の比率になるように原料を調整すること以外は実施例11と同様にして、排気ガス浄化用触媒とした。
【0061】
実施例14(0.4wt%Rh/30mol%LaPO4/SiO2
30mol%LaPO4/SiO2の比率になるように原料を調整すること以外は実施例11と同様にして、排気ガス浄化用触媒とした。
【0062】
実施例15(0.4wt%Rh/40mol%LaPO4/SiO2
40mol%LaPO4/SiO2の比率になるように原料を調整すること以外は実施例11と同様にして、排気ガス浄化用触媒とした。
【0063】
実施例16(0.2wt%Rh/20mol%LaPO4/SiO2
Rh担持濃度0.2wt%としたこと以外は実施例13と同様にして、排気ガス浄化用触媒とした。
【0064】
実施例17(0.05wt%Rh/20mol%LaPO4/SiO2
Rh担持濃度0.05wt%としたこと以外は実施例13と同様にして、排気ガス浄化用触媒とした。
【0065】
実施例18(0.01wt%Rh/20mol%LaPO4/SiO2
Rh担持濃度0.01wt%としたこと以外は実施例13と同様にして、排気ガス浄化用触媒とした。
【0066】
参考例21(0.4wt%Rh/LaPO4
上記製造実施例5の合成方法にて合成を行い、目的の物質を得た。
【0067】
その後、硝酸Rh水溶液に上記粉末をRh担持濃度0.4wt%になるように浸漬させ、乾燥し、500℃×1時間焼成したものを排気ガス浄化用触媒とした。
【0068】
参考例22(0.2wt%Rh/LaPO4
Rh担持濃度0.2wt%としたこと以外は参考例21と同様にして、排気ガス浄化用触媒とした。
【0069】
参考例23(0.05wt%Rh/LaPO4
Rh担持濃度0.05wt%としたこと以外は参考例21と同様にして、排気ガス浄化用触媒とした。
【0070】
参考例24(0.01wt%Rh/LaPO4
Rh担持濃度0.01wt%としたこと以外は参考例21と同様にして、排気ガス浄化用触媒とした。
【0071】
比較例11(0.4wt%Rh/SiO2
ヘキサアンミンRh水酸塩溶液にSiO2をRh担持濃度0.4wt%になるように浸漬させ、120℃一晩乾燥し、500℃×1時間焼成したものを排気ガス浄化用触媒とした。
【0072】
比較例12(0.2wt%Rh/SiO2
Rh担持濃度0.2wt%としたこと以外は比較例11と同様にして排気ガス浄化用触媒とした。
【0073】
比較例13(0.05wt%Rh/SiO2
Rh担持濃度0.05wt%としたこと以外は比較例11と同様にして排気ガス浄化用触媒とした。
【0074】
比較例14(0.01wt%Rh/SiO2
Rh担持濃度0.01wt%としたこと以外は比較例11と同様にして排気ガス浄化用触媒とした。
【0075】
〈触媒性能評価方法及び結果〉
実施例11〜15、参考例21及び比較例11で得られた各々の排気ガス浄化用触媒を、調製後(Fresh)と耐久後(Aged)について触媒活性を以下のようにして評価した。なお、耐久条件は、水蒸気10%を含んだ大気雰囲気中で、900℃で25時間とした。
【0076】
固定床流通型反応装置を用い、反応管に触媒粉をセットし、CO:0.51%、NO:500ppm、C36:1170ppmC、O2:0.4%、残余N2から成る完全燃焼を想定した模擬排気ガスをW/F(触媒質量/ガス流量)=5.0×10-4g・min・cm-3となるように反応管に流通させ、100〜500℃における出口ガス成分をCO/NO/HC分析計を用いて測定した。得られたライトオフ性能評価結果より50%浄化率に到達する温度(T50)を求めた。比表面積はN2吸着法でRh分散度はCO吸着法にて測定を行った。その結果は第5表に示す通りであった。
【0077】
【表5】
【0078】
Freshの浄化性能を見ると、比較例11や参考例21と比較して、SiO2に分散析出させたLaPO4(実施例11〜15:5mol%〜40mol%LaPO4/SiO2)の方がCO/NO/C36のT50が低く、活性が高いことがわかった。また、Agedの浄化性能を見ると、実施例12〜15:10mol%〜40mol%LaPO4/SiO2は比較例11や参考例21よりCO/NO/C36のT50が低く、活性が高いことがわかった。これは、LaPO4をSiO2に分散担持させることにより、高比表面積化させたこと、及び、LaPO4同士のシンタリングを抑制できたことによる効果と思われる。特に実施例12〜15では耐久後のRh分散度においても、比較例11よりも高くこの効果が顕著に表れているものと思われる。
【0079】
これらの結果から、LaPO4はSiO2に分散析出させるとさらに好ましく、なおかつ、LaPO4の比率としては、5mol%〜40mol%がよく、より好ましくは10mol%〜40mol%がよいことがわかった。
【0080】
実施例13、16〜18及び比較例11〜14、参考例21〜24について、得られた各々の排気ガス浄化用触媒を水蒸気10%を含んだ大気雰囲気中で、900℃で25時間耐久後、調製後、触媒活性を上記の通り、評価した。NOのT50を第6表に示す。
【0081】
【表6】
【0082】
20mol%LaPO4/SiO2はRhが低濃度の領域でも、Rh担持LaPO4やRh担持SiO2より性能が優れることがわかった。
【0083】
実施例13、比較例11、参考例21について耐久温度を変え、同様の評価を行った。NOのT50を第7表に示す。
【0084】
【表7】
【0085】
20mol%
LaPO4/SiO2は耐久温度によらず、Rh担持SiO2やRh担持LaPO4よりも浄化性能が高いことがわかった。
図1
図2
図3
図4