特許第6049159号(P6049159)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6049159
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】自動麻雀卓
(51)【国際特許分類】
   A63F 9/20 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   A63F9/20 517D
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-117696(P2016-117696)
(22)【出願日】2016年6月14日
【審査請求日】2016年6月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】716001485
【氏名又は名称】有限会社アジャスト
(74)【代理人】
【識別番号】100154210
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 宏
(72)【発明者】
【氏名】野本 行男
(72)【発明者】
【氏名】野本 和宏
(72)【発明者】
【氏名】松岡 良明
【審査官】 柴田 和雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−315955(JP,A)
【文献】 特開昭61−106185(JP,A)
【文献】 特開昭61−244384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麻雀牌を卓上に自動供給する自動麻雀卓であって、
上面視略正方形状であり、該略正方形の四辺のそれぞれに沿って表面側及び裏面側に極性が統一された磁極をそれぞれ有する複数の牌を卓上に供給するための4つの開口が設けられた卓板を有する本体と、
前記本体内で複数の牌を撹拌する撹拌装置と、
前記卓板の角部近傍の下方に配置され、前記本体内で前記撹拌装置から複数の牌を回転体を用いて汲み上げる、前記4つの開口のそれぞれに対応した4つの汲上装置と、
前記本体内で前記汲上装置から汲み上げられた複数の牌を前記開口に合わせて整列する、前記4つの開口のそれぞれに対応した4つの整列装置と、を備え、
前記回転体は、円錐台形状を有し、該円錐台の側面に少なくとも1つの第1磁石が前記複数の牌の表面側の極性と逆の極性を外側に向けて設けられ、前記円錐台の上面の中心及び前記上面より大きい底面の中心を通る中心軸を中心に回転し、前記上面を前記撹拌装置側に向け、前記中心軸を水平面に対して前記側面がなす錐角の略半分の角度で傾斜し、前記側面の下端を前記撹拌装置に近接して、前記撹拌装置の周囲に配置されることを特徴とする、自動麻雀卓。
【請求項2】
前記汲上装置は、前記回転体の下側に、前記側面に対向して前記側面の外側から内側に張り出すガイドを有し、
前記ガイドは、前記回転体の回転方向に沿って張り出し長さの増加する傾斜部を有することを特徴とする、請求項に記載の自動麻雀卓。
【請求項3】
前記回転体の上端近傍に配置され、前記汲上装置により汲み上げられた牌を前記整列装置に送る搬送路をさらに備え、
前記搬送路は、前記牌の横幅よりも大きく且つ縦幅よりも小さい幅で離間する内面と、前記回転体の上端近傍から前記整列装置にかけて下向きに傾斜する底面と、を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の自動麻雀卓。
【請求項4】
前記搬送路は、前記底面の上方に、前記複数の牌の裏面側の極性と逆の極性を有する磁極を前記底面に向ける第2磁石を有することを特徴とする、請求項に記載の自動麻雀卓。
【請求項5】
前記撹拌装置は、中央に頂部を有し、該頂部から周縁に傾斜して裾を広げる回転板を有することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の自動麻雀卓。
【請求項6】
前記撹拌装置は、前記回転体の下端の近傍で前記回転板の下に、前記牌の裏面側の極性と異なる極性を有する磁極を上に向けた第3磁石を有することを特徴とする、請求項に記載の自動麻雀卓。
【請求項7】
裏面を下に向けて前記回転板上の前記第3磁石の真上の位置にある牌について、前記牌の裏面側の磁極と前記第3磁石との磁着力は、前記牌の表面側の磁極と前記第1磁石との磁着力よりも弱いことを特徴とする、請求項に記載の自動麻雀卓。
【請求項8】
前記整列装置は、前記汲上装置により汲み上げられた牌の数を数え、該数が所定の数に達した時に、前記汲上装置の前記回転体の回転方向を逆方向にすることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の自動麻雀卓。
【請求項9】
前記汲上装置は、前記回転体の下端から前記複数の牌を汲み上げる際の前記回転体の回転方向と逆側に、前記回転体の側面から牌より小さい離間距離隔てて横たわるブロック部材を有することを特徴とする、請求項に記載の自動麻雀卓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麻雀牌を卓上に自動供給する自動麻雀卓に関する。
【背景技術】
【0002】
麻雀をプレイする際、自動で、麻雀牌(単に牌とも呼ぶ)を洗牌(撹拌とも呼ぶ)し、卓上の4つの位置に砌牌(供給とも呼ぶ)する自動麻雀卓が利用される。自動麻雀卓は、洗牌された牌を砌牌するために攪拌装置から砌牌のための装置に牌を移動させる必要がある。従来、特許文献1のように、牌を水平移動させて円形の撹拌装置から外し、その牌を上方に移動させて砌牌のための装置に供給する形式のものが多かった。
【0003】
この点、特許文献2には、撹拌装置から上方に牌を汲み上げる汲上機構を備えた自動麻雀卓が開示されている。撹拌装置から牌を外す際に上方への移動も実現される。しかし、撹拌装置の真上に汲み上げるため、汲上機構と砌牌のための装置との相互の位置関係が制約されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−242807号公報
【特許文献2】特開2006−314830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、麻雀牌を撹拌する撹拌装置、撹拌装置により撹拌された麻雀牌を汲み上げる汲上装置、及び汲上装置により汲み上げられた牌を整列する整列装置を備えた自動麻雀卓であって、汲上装置及び整列装置が本体内にコンパクトに組み込まれたものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動麻雀卓は、
麻雀牌を卓上に自動供給する自動麻雀卓であって、
上面視略正方形状であり、該略正方形の四辺のそれぞれに沿って表面側及び裏面側に極性が統一された磁極をそれぞれ有する複数の牌を卓上に供給するための4つの開口が設けられた卓板を有する本体と、
前記本体内で複数の牌を撹拌する撹拌装置と、
前記卓板の角部近傍の下方に配置され、前記本体内で前記撹拌装置から複数の牌を回転体を用いて汲み上げる、前記4つの開口のそれぞれに対応した4つの汲上装置と、
前記本体内で前記汲上装置から汲み上げられた複数の牌を前記開口に合わせて整列する、前記4つの開口のそれぞれに対応した4つの整列装置と、を備え、
前記回転体は、円錐台形状を有し、該円錐台の側面に少なくとも1つの第1磁石が前記複数の牌の表面側の極性と逆の極性を外側に向けて設けられ、前記円錐台の上面の中心及び前記上面より大きい底面の中心を通る中心軸を中心に回転することを特徴とする。
【0007】
この特徴によれば、回転体が円錐台形状なので、汲上装置の上端と下端の麻雀卓水平面方向の位置を相違させることができる。上端を麻雀卓の角部近傍とし、下端を上端よりも中央寄りの撹拌装置の位置とすることができる。すなわち、整列装置において長い距離の牌の移動を必要としない。
汲上装置により、撹拌装置から複数の牌を回転体を用いて汲み上げられる。ここで、回転体が、円錐台形状を有し、その円錐台の側面に少なくとも1つの第1磁石が複数の牌の表面側の極性と逆の極性を有する磁極を外側に向けて設けられ、中心軸を中心に回転する。それにより、回転体を回転することにより、側面に設けられた第1磁石により複数の牌を裏面を外側に向けて吸引して、汲み上げることができる。また、汲上装置は、本体内で、略正方形状の卓板の角部近傍の下方に配置される。それにより、汲上装置を、本体内で、整列装置の近傍である卓板の角部近傍の下方に配置して、コンパクトに構成することができる。
【0008】
本発明の自動麻雀卓は、
前記回転体は、前記上面を前記撹拌装置側に向け、前記中心軸を水平面に対して前記側面がなす錐角の略半分の角度で傾斜し、前記側面の下端を前記撹拌装置に近接して、前記撹拌装置の周囲に配置されることを特徴とする。
【0009】
この特徴によれば、回転体が、上面を撹拌装置側に向け、中心軸を水平面に対して側面がなす錐角の略半分の角度で傾斜し、側面の下端を撹拌装置に近接して、撹拌装置の周囲に配置される。それにより、回転体の側面の上端が撹拌装置から上外側に離間して略水平な状態で配置され、回転体を回転することにより複数の牌を撹拌装置から上外方に水平状態で汲み上げる、整列装置に渡すことができる。
【0010】
本発明の自動麻雀卓は、
前記汲上装置は、前記回転体の下側に、前記側面に対向して前記側面の外側から内側に張り出すガイドを有し、
前記ガイドは、前記回転体の回転方向に沿って張り出し長さの増加する傾斜部を有することを特徴とする。
【0011】
この特徴によれば、汲上装置は、回転体の下側に、側面に対向して側面の外側から内側に張り出すガイドを有し、ガイドは回転方向に沿って張り出し長さの増加する傾斜部を有する。それにより、回転体に吸引された牌が、回転体が回転することでガイドに当接して外側から内側に案内されて、回転方向が縦方向となるようにその向きを揃えることができる。特に、傾斜部において牌の向きを漸次に回転させることが効果的である。
【0012】
本発明の自動麻雀卓は、
前記回転体の上端近傍に配置され、前記汲上装置により汲み上げられた牌を前記整列装置に送る搬送路をさらに備え、
前記搬送路は、前記牌の横幅よりも大きく且つ縦幅よりも小さい幅で離間する内面と、前記回転体の上端近傍から前記整列装置にかけて下向きに傾斜する底面と、を有することを特徴とする。
【0013】
この特徴によれば、回転体の上端近傍に配置され、汲上装置により汲み上げられた牌を整列装置に送る搬送路をさらに備え、搬送路は、牌の横幅よりも大きく且つ縦幅よりも小さい幅で離間する内面と、回転体の上端近傍から整列装置にかけて下向きに傾斜する底面と、を有する。搬送路が牌の横幅よりも大きく且つ縦幅よりも小さい幅で離間する内面を有することで、搬送路に対して縦を向けて汲み上げられた牌のみを選択することができ、搬送路の底面が回転体の上端近傍から整列装置にかけて下向きに傾斜していることで、汲上装置により汲み上げられた牌を底面上を滑降させて整列装置に搬送することができる。
【0014】
本発明の自動麻雀卓は、
前記搬送路は、前記底面の上方に、前記複数の牌の裏面側の極性と逆の極性を有する磁極を前記底面に向ける第2磁石を有することを特徴とする。
【0015】
この特徴によれば、搬送路は、底面の上方に、複数の牌の裏面側の極性と逆の極性を有する磁極を底面に向ける第2磁石を有する。それにより、複数の牌は、底面の上方に有する第2磁石に吸引されることで、搬送路の底面から受ける摩擦抵抗が小さくなり、底面上を容易に滑降することができる。
【0016】
本発明の自動麻雀卓は、
前記撹拌装置は、中央に頂部を有し、該頂部から周縁に傾斜して裾を広げる回転板を有することを特徴とする。
【0017】
この特徴によれば、撹拌装置は、中央に頂部を有し、この頂部から周縁に傾斜して裾を広げる回転板を有する。それにより、回転板を回転することでその上で撹拌された牌を、汲上装置側の周縁に寄せることができる。
【0018】
本発明の自動麻雀卓は、
前記撹拌装置は、前記回転体の下端の近傍で前記回転板の下に、前記牌の裏面側の極性と異なる極性を有する磁極を上に向けた第3磁石を有することを特徴とする。
【0019】
この特徴によれば、撹拌装置は、回転体の下端の近傍で回転板の下に、牌の裏面側の極性と異なる極性を有する磁極を上に向けた第3磁石を有する。それにより、回転体の下の第3磁石により、回転板により撹拌され、周縁に寄せられた複数の牌が、裏面を下にして回転体の下端の近傍に吸引され、回転板の回転に抗して、表面を上にして停止する。汲上装置の回転体の磁石の巡廻の間停止して、表面を内側に向けて汲み上げられ易くなる。
【0020】
本発明の自動麻雀卓は、
裏面を下に向けて前記回転板上の前記第3磁石の真上の位置にある牌について、前記牌の裏面側の磁極と前記第3磁石との磁着力は、前記牌の表面側の磁極と前記第1磁石との磁着力よりも弱いことを特徴とする。
【0021】
この特徴によれば、第3磁石の真上で第3磁石に磁着している牌を、第1磁石を有する回転体により吸引して汲み上げることができる。
【0022】
本発明の自動麻雀卓は、
前記整列装置は、前記汲上装置により汲み上げられた牌の数を数え、該数が所定の数に達した時に、前記汲上装置の前記回転体の回転方向を逆方向にすることを特徴とする。
【0023】
この特徴によれば、整列装置は、汲上装置により汲み上げられた牌の数を数え、その数に応じて汲上装置を介して回転体を逆方向に回転させる。それにより、汲上装置により汲み上げられた牌の数が所定数(通常の麻雀競技であれば34)を超えた場合に、汲上装置を介して回転体を逆方向に回転させることで、汲上装置により汲み上げ途中の牌を撹拌装置に戻すことができる。
【0024】
本発明の自動麻雀卓は、
前記汲上装置は、前記回転体の下端から前記複数の牌を汲み上げる際の前記回転体の回転方向と逆側に、前記回転体の側面から牌より小さい離間距離隔てて横たわるブロック部材を有することを特徴とする。
【0025】
この特徴によれば、汲上装置は、回転体の下端から複数の牌を汲み上げる際の回転体の回転方向と逆側に、回転体の側面から牌より小さい離間距離隔てて横たわるブロック部材を有する。それにより、回転体により汲み上げ途中の牌を、回転体を逆方向に回転させることでブロック部材に干渉させて、回転体から撹拌装置に落下させることができる。また、逆方向に回転している回転体に磁着した牌についても、回転体から撹拌装置に落下させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の自動麻雀卓によれば、麻雀牌を撹拌する撹拌装置、撹拌装置により撹拌された麻雀牌を汲み上げる汲上装置、及び汲上装置により汲み上げられた牌を整列する整列装置を備えた自動麻雀卓であって、汲上装置及び整列装置が本体内にコンパクトに組み込まれたものを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本実施形態に係る自動麻雀卓の卓板上面の構成を示す図である。
図2図2は、自動麻雀卓の内部構成を示す図である。
図3図3は、回転体の構成を示す図である。
図4図4は、ガイドの構成を示す図である。
図5図5は、搬送路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0029】
図1及び図2に、それぞれ、本実施形態に係る自動麻雀卓1の卓板2a上面の構成及び自動麻雀卓1の内部構成を示す。なお、これらの図において、対応する複数の装置又は部材についてはそれらを代表する1つの装置又は部材のみに符号を付することとする。自動麻雀卓1は、複数の牌9を卓上に自動供給する麻雀卓であり、本体2、撹拌装置3、汲上装置4、搬送路5、及び整列装置6を含んで構成される。なお、複数の牌9は、それぞれ、表面側及び裏面側に極性を統一して磁極(例えば、表面側にN極、裏面側にS極)が向けられた磁石(不図示)が埋設されている。また、牌は、図柄が設けられた一面を表面とし、長手及び短手をそれぞれ縦及び横とも呼ぶ。
【0030】
本体2は、自動麻雀卓1の構成各部を収容する立方体状の筐体であり、その天板は最大4人のプレーヤにより麻雀をプレイするための複数の牌が並べられる卓板2aとして利用される。卓板2aは、上面視略正方形状であり、4つの開口2b及び開口2dが設けられている。4つの開口(牌出口)2bは、卓板2aの四辺のそれぞれに沿って矩形状に形成されている。4つの牌出口2bは、同形状の板部材2cにより塞がれ、複数の牌を本体2内部から卓上に供給する際に板部材2cが待避して開く。開口2dは、卓板2aの中央に正方形状に形成されている。開口2dは、同形状の板部材2eにより塞がれ、複数の牌を本体2内部の撹拌装置3に送る際に板部材2eが上昇して開く。
【0031】
撹拌装置3は、本体2内で複数の牌9を撹拌する装置である。撹拌装置3は、頂部3b、回転板(ターンテーブル)3a、4つのブレード3c、外壁3d、及び4つの磁石3eを有する。
【0032】
頂部3bは、例えば円錐形状に形成され、頂点を上方に向けてターンテーブル3aの中央、すなわち卓板2aの開口2dの直下に配置されている。例えば開口2dから牌9が本体内に送られると、牌9は頂部3b上に落下して回転板(ターンテーブルとも呼ぶ)3a上に散らされる。
【0033】
ターンテーブル3aは、本体2の中央に配置された、頂部3bから周縁に傾斜して裾を広げるテーブル部材である。ターンテーブル3a上に複数の牌9が送られ、これが回転することにより複数の牌9が撹拌される。
【0034】
4つのブレード3cは、円弧状に湾曲する凸状部材であり、ターンテーブル3aの表面上に一端を頂部に接続し、他端を周縁に向けて等角度間隔で配設され、略渦巻き状をなしており、複数の牌9がより効率的に撹拌され、また周縁に寄せられる。
【0035】
外壁3dは、ターンテーブル3aの周縁を囲むリング状の部材である。外壁3dにより、ターンテーブル3aが回転することにより撹拌されて周縁に寄せられた牌がターンテーブル3a上に留められる。
【0036】
4つの磁石3eは、ターンテーブル3aの下に設けられ、後述する汲上装置4の回転体4aのそれぞれの下端の近傍、例えばそれぞれの直下に配置されている。ここで、磁石3eは、牌9の裏面側の極性と異なる極性を有する磁極(例えば、N極)を上に向ける。ターンテーブル3aにより撹拌され、周縁に寄せられた牌9の裏面が磁石3eに吸引され、牌9は表面を上にむけて停止する。牌9が磁石3eにより回転体4aの下端の近傍に集められ、回転体4aにより裏面を外側に向けて汲み上げられ易くなる。
【0037】
なお、磁石3eがターンテーブル3aの上の牌9を引く磁力は、後述する回転体4aに設けられた磁石4bがターンテーブル3aの上の牌9を引く磁力よりも弱いものとする。牌9を引く磁力は、磁石の磁界の強さ及び磁石と牌(の磁極)との距離によって定まるが、磁石3eの磁界を弱くする、磁石3eをターンテーブルの上面から離した箇所に配する、又はこれらの両方によって磁石3eがターンテーブル3aの上の牌9を引く磁力を弱くすればよい。それにより、磁石4bを有する回転体4aにより複数の牌9を吸引して汲み上げることができる。
【0038】
汲上装置4は、本体2内で撹拌装置3から複数の牌9を回転体4aを用いて上方に汲み上げる装置であり、卓板2aの4つの開口2bに対応して4つ本体2内に設けられている。ここで、4つの汲上装置4は、本体2内で、撹拌装置3の周囲であり卓板2aの角部近傍の下方(すなわち、本体2の隅部の近傍)にそれぞれ配置されている。それにより、本体2をコンパクトに構成することができる。なお、4つの汲上装置4は同様に構成されているため、代表して1つの汲上装置4についてその構成を説明する。汲上装置4は、回転体4a、ガイド4c、及びブロック部材4dを有する。
【0039】
図3に、回転体4aの構成を側面視において示す。回転体4aは、上面4a、上面より大きい底面4a、及び上面4aと底面4aとの間の側面4aを有する円錐台形状を有する。ここで、側面4aがなす角(すなわち頂角)の角度θは例えば45〜75度である。側面4aには、少なくとも1つ、例えば6つの磁石4bが牌9の表面側の極性と逆の極性の磁極(例えば、S極)を外側に向けて埋設されている。なお、磁石の数は、任意に設計してよい。汲上装置4は、回転体4aを中心軸Lを中心に回転することにより、側面4aに設けられた磁石4bにより牌9を裏面を外側に向けて吸着して、上方に表面を下に裏面を上に向けて汲み上げることができる。
【0040】
汲上装置4において、回転体4aは、図2より分かるように、上面4aを撹拌装置3側(すなわち本体2の中央)に向け、図3より分かるように、底面4aを下側にして中心軸Lを水平面に対して角度θ/2程度で傾斜し、側面4aの下端4aを撹拌装置3に近接して、撹拌装置3の周囲に配置される。それにより、回転体4aの側面4aの上端4aが撹拌装置3から上外側、すなわち外側に向かって斜め上(図2参照)に離間して略水平な状態で配置され、回転体4aを回転することにより複数の牌9を撹拌装置3から上外方に位置する後述の搬送路5に水平状態で汲み上げることができる。
【0041】
なお、回転体4aが円筒形状である場合、回転体を回転することにより複数の牌9は撹拌装置3の周縁の直上に汲み上げられるため、撹拌装置3の周縁の直上から搬送路5に牌を送る別装置又はより長い搬送路5を要することとなる。また、そのような回転体を斜めに配して上端を傾けても、複数の牌9を水平状態で汲み上げることはできない。
【0042】
ガイド4cは、回転体4aの下側に配置され、回転体4aの側面4aに対向して側面4aの外側(すなわち、底面4a側)から内側(すなわち、上面4a側)に張り出す板部材である。ガイド4cは、正面視において略三角形状を有し、これにより回転体4aの回転方向(すなわち、側面4aの移動方向)に対して手前から奥にかけて徐々に張り出す。それにより、回転体4aに吸着した牌9が、回転体4aが回転することでガイド4cに当接して外側から内側に案内されて、回転方向が縦方向となるようにその向きを揃えることができる。
【0043】
図4に、ガイド4cの構成を示す。図4(A)に示すように、ガイド4cは、回転体4aの側方から、磁石の中心線(Cで示す)からw/2の距離まで張り出している。ここで、wは牌9の横幅である。ガイド4cは、回転体4aの回転方向(図において矢印方向)に沿って張り出し長さの増加する傾斜部4cを含んだ切欠きを有している。
【0044】
ガイド4cの箇所を通過する前から回転方向が縦方向となっている牌9は、ガイド4cに当接せず、ガイド4cからの回転力を受けない。一方、ガイド4cに当接する前に回転方向が縦方向となってない牌9は図4(A)のようにガイド4cに当接する。
【0045】
ガイド4cに当接した牌9は、回転方向に垂直な方向にガイド4cから押され、回転力を受けて回転方向が縦方向となると考えられる。万一、十分に回転せずに切欠きに達すると図4(B)のようになる。回転体4aが牌9を磁着して図の矢印の方向に回転することで、傾斜部4cにおいて牌9の角部が徐々に中心に押され、回転力が確実に発生する。
【0046】
以上により、図4(C)に示すように、牌9は、回転方向が縦方向となる。なお、回転方向が縦方向となることを確実にするために、2以上の切欠きを設けてもよい。
【0047】
ブロック部材4dは、図5(A)より分かるように、回転体4aの側面4aを覆う板部材であり、回転体4aの下端4aから複数の牌を汲み上げる際の回転体4aの回転方向(図面矢印方向)と逆側、本実施形態では一例として正面視における右下に、回転体4aの側面4aから牌9より小さい離間距離隔てて横たわる。回転体4aを逆方向に回転させることにより、回転体4aにより汲み上げ途中の牌をブロック部材4dに干渉させて、回転体4aからその下方の撹拌装置3に落下させることができる。なお、撹拌装置3に落下した牌は、撹拌されてその他の汲上装置4により汲み上げることができる。
【0048】
なお、ブロック部材4dは、専用の部材としなくともよい。本実施形態の構成であれば、搬送路5の内面5bを構成する板材の内面とは反対の側がブロック部材として機能する。
【0049】
搬送路5は、図2より分かるように、回転体4aの上端4a近傍に配置され、汲上装置4により(表面を下に裏面を上に向けて)汲み上げられた牌9を後述する整列装置6に送る経路であり、4つの汲上装置4に対応して4つ本体2内に設けられている。
【0050】
図5に、搬送路5の構成を周辺装置と共に示す。図5(A)は側面から見た図、図5(B)は上面から見た図である。搬送路5は、底面5a、2つの内面5b、磁石5c及び導入面5dを有する。また、整列装置6のセンサ6aが導入面5dに取り付けられている。
【0051】
底面5aは、回転体4aの上端4a近傍から整列装置6にかけて下向きに傾斜する。その傾斜角は、例えば5〜30度とする。それにより、汲上装置4により汲み上げられた牌9が底面5a上を滑降して整列装置6に搬送される。
【0052】
2つの内面5bは、牌9の横幅よりも大きく且つ縦幅よりも小さい幅で離間する。これにより、回転体4aにより向きが(図5における左右方向に)揃えられた牌9のみが搬送路5に縦を向けて入ることができる。なお、搬送路5に対して横を向いて汲み上げられた牌は、2つの内面5bの端部に干渉して撹拌装置3上に落下する。
【0053】
磁石5cは、搬送路5の入口から整列装置6の上部にわたって設けられ、底面5aの上方に、複数の牌9の裏面側の極性と逆の極性を有する磁極(例えば、N極)を底面5aに向けて配列されている。それにより、搬送路5を通る牌は、磁石5cの磁力により吸引されることで、牌9が搬送路5の底面5aから受ける摩擦抵抗が小さくなり底面5a上を滑降しやすくなる。磁石5cによって牌9が受ける摩擦抵抗を理論的にはゼロとすることができる。ゼロに近づけることで、底面5aの傾斜角がわずか5度であっても、牌9は底面5aを問題なく滑降する。搬送路5の高さを小さくすることができ、コンパクトな構成を実現できる。
【0054】
導入面5dは、一端と他端との間で略45度の角度差を有する壁面である。図に示すように角を有さない曲面であることが好ましい。導入面5dの一端は内面5bに連接している。回転体4aの上端4aは、図5(B)に示すように、搬送路5に対して略45度傾斜している。搬送路5が麻雀卓1上面の辺に沿っているのに対し、麻雀卓1の角部に設けられターンテーブル3aと略同方向に回転する回転体4aは辺に対して略45度傾斜するためである。上端4aにおいて移動する牌9を、導入面5dによって、スムーズに搬送路5に移動させる。
【0055】
センサ6aは、搬送路5の汲上装置4側の端部に設けられ、汲上装置4から搬送路5に移動した牌9を検出する。センサ6aによって検出された牌9の数が計数(カウント)される。
【0056】
整列装置6は、本体2内で汲上装置4から汲み上げられた複数の牌9を整列する装置であり、4つの汲上装置4に対応して4つ本体2内に設けられている。整列装置6は、図5(B)より分かるように、(表面を下に向けて)搬送路5を通って送られた牌を横から図面下側に押し出すことで図面上下方向に整列する。整列装置6は、例えば34の牌を17ずつ整列し、これを2段に組み上げて開口2bを介して卓上に供給する。
【0057】
整列装置6は、センサ6aによって検出された牌の数を計数し、その数に応じて、例えば34(通常麻雀競技では34である)に達した場合に汲上装置4を介して回転体4aを逆方向に回転させる。それにより、必要数を越えて汲上装置により汲み上げ途中の牌を撹拌装置3に戻すことができる。センサ6aが搬送路5の汲上装置4側の端部に設けられているので、搬送路5内にある牌9も計数されており、正確に34の牌9を整列装置によって整列し、他の牌9を撹拌装置3に戻すことができる。
【0058】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る自動麻雀卓1は、表面側及び裏面側に極性を統一して磁極が向けられた磁石をそれぞれ有する複数の牌9を卓上に供給するための開口2bが設けられた卓板2aを有する本体2、本体2内で複数の牌9を撹拌する撹拌装置3、本体2内で撹拌装置3から複数の牌9を回転体4aを用いて汲み上げる汲上装置4、及び本体2内で汲上装置4から汲み上げられた複数の牌9を開口2bに合わせて整列する整列装置6を備え、回転体4aは、円錐台形状を有し、その円錐台の側面に少なくとも1つの磁石4bが複数の牌9の表面側の極性と逆の極性を有する磁極を外側に向けて設けられ、中心軸Lを中心に回転する。回転体4aを回転することにより、側面に設けられた磁石4bにより複数の牌9を裏面を外側に向けて吸引して、汲み上げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
麻雀牌を撹拌する撹拌装置、撹拌装置により撹拌された麻雀牌を汲み上げる汲上装置、及び汲上装置により汲み上げられた牌を整列する整列装置を備えた自動麻雀卓であって、汲上装置及び整列装置が本体内にコンパクトに組み込まれた自動麻雀卓である。多くの自動麻雀卓生産者及び雀荘による利用が考えられる。
【符号の説明】
【0060】
1 自動麻雀卓
2 本体
2a 卓板
2b 開口(牌出口)
2c 板部材
2d 開口
2e 板部材
3 撹拌装置
3a ターンテーブル
3b 頂部
3c ブレード
3d 外壁
3e 磁石
4 汲上装置
4a 回転体
4a 上面
4a 底面
4a 側面
4a 下端
4a 上端
4b 磁石
4c ガイド
4c 傾斜部
4d ブロック部材
5 搬送路
5a 底面
5b 内面
5c 磁石
5d 導入面
6 整列装置
6a センサ
9 牌
【要約】
【課題】麻雀牌を撹拌する撹拌装置、撹拌装置により撹拌された麻雀牌を汲み上げる汲上装置、及び汲上装置により汲み上げられた牌を整列する整列装置を備えた自動麻雀卓であって、汲上装置及び整列装置が本体内にコンパクトに組み込まれたものを提供すること。
【解決手段】自動麻雀卓1は、複数の牌9を卓上に供給するための開口2bが設けられた卓板2aを有する本体2、本体内で複数の牌を撹拌する撹拌装置3、本体内で撹拌装置から複数の牌を磁石の付いた回転体4aを用いて汲み上げる汲上装置4、及び本体内で汲上装置から汲み上げられた複数の牌を開口に合わせて整列する整列装置6を備える。回転体4aは、円錐台形状を有し、上端と下端の麻雀卓水平面方向の位置が相違する。回転体4aを麻雀卓の4隅に配置したコンパクトな構成となる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5