特許第6049169号(P6049169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049169
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】排熱発電システム
(51)【国際特許分類】
   F02G 5/00 20060101AFI20161212BHJP
   F02G 5/02 20060101ALI20161212BHJP
   F01K 23/06 20060101ALI20161212BHJP
   F01K 23/10 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   F02G5/00 B
   F02G5/00 E
   F02G5/02 B
   F01K23/06 P
   F01K23/10 Q
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-180201(P2012-180201)
(22)【出願日】2012年8月15日
(65)【公開番号】特開2014-37798(P2014-37798A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192383
【氏名又は名称】アドバンス理工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599071245
【氏名又は名称】株式会社リッチストーン
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】石井 芳一
(72)【発明者】
【氏名】黄 富石
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/101977(WO,A1)
【文献】 特開2009−264353(JP,A)
【文献】 特開2011−012625(JP,A)
【文献】 特開2000−345835(JP,A)
【文献】 特開昭58−012819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02G 5/00、04
F01K 23/06、10
F01P 1/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排熱に基づいて発電する排熱発電システムであって、
前記エンジンの内部を冷却する冷却水の熱を作動媒体に伝えることにより前記作動媒体を加熱する第1熱交換部と、
前記第1熱交換部において加熱された前記作動媒体が膨張することにより得られる動力に基づいて発電する発電部と、
前記発電部において膨張した前記作動媒体を冷却する第2熱交換部と、
前記第2熱交換部において冷却された前記作動媒体を前記第1熱交換部に送り込むポンプと
前記第1熱交換部及び前記第2熱交換部の両方を空冷する空冷ファンとを有し、
前記空冷ファンによる空気の流れの風上に前記第2熱交換部が配置され、当該空気の流れの風下に前記第1熱交換部が配置された、
排熱発電システム。
【請求項2】
前記エンジンから排出される排ガスの熱を受けて、前記第1熱交換部により加熱された前記作動媒体を更に加熱する第3熱交換部を有する、
請求項に記載の排熱発電システム。
【請求項3】
前記エンジンにおいて流入若しくは流出する前記冷却水の温度を計測する温度センサーと、
前記温度センサーにおいて検出される温度に応じて前記空冷ファンの回転を制御する制御部とを有する、
請求項1又は2に記載の排熱発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のエンジンの排熱を利用して発電を行う排熱発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
温度差を利用して発電を行うランキンサイクルシステムが従来より知られている。例えば、下記の特許文献1に記載される発電システムでは、フロン系ガスの作動媒体が循環する流路に膨張機と昇圧ポンプが配置される。昇圧ポンプの圧力によって循環流路を流れる作動媒体は、外部から与えられた熱(太陽熱によって昇温された温水)を受けて蒸発する。蒸気となった作動媒体は、膨張機において膨張することにより動力を発生し、その動力が膨張機に接続された発電機によって電気に変換される。膨張により仕事をした作動媒体は、冷却水によって冷却されて凝縮した後、昇圧ポンプによって再び昇圧されて循環流路に送り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−210162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、温室効果ガスの削減を図りつつ、環境に負荷を与えないクリーンなエネルギーの利用へシフトすることが重要な課題となっており、その1つの手段として、産業活動で無駄に排出される熱エネルギーを有効活用することが求められている。特に、自動車等のエンジン(内燃機関)の動作に伴って発生する熱は、産業活動の全体において発生する熱の中で大きな割合を占めている。しかしながら、エンジンにおいて発生する熱は安定した動力を発生する上で障害となることから、その殆どが無条件で強制的に放熱されており、有効に活用されていないという実情がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンジンの排熱を利用して効率よく発電を行うことができる排熱発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る排熱発電システムは、エンジンの排熱に基づいて発電する排熱発電システムであって、前記エンジンの内部を冷却する冷却水の熱を作動媒体に伝えることにより前記作動媒体を加熱する第1熱交換部と、前記第1熱交換部において加熱された前記作動媒体が膨張することにより得られる動力に基づいて発電する発電部と、前記発電部において膨張した前記作動媒体を冷却する第2熱交換部と、前記第2熱交換部において冷却された前記作動媒体を前記第1熱交換部に送り込むポンプと、前記第1熱交換部及び前記第2熱交換部の両方を空冷する空冷ファンとを有し、前記空冷ファンによる空気の流れの風上に前記第2熱交換部が配置され、当該空気の流れの風下に前記第1熱交換部が配置される
【0008】
好適に、上記排熱発電システムは、前記エンジンから排出される排ガスの熱を受けて、前記第1熱交換部により加熱された前記作動媒体を更に加熱する第3熱交換部を有してよい。
【0010】
好適に、上記排熱発電システムは、前記エンジンにおいて流入若しくは流出する前記冷却水の温度を計測する温度センサーと、前記温度センサーにおいて検出される温度に応じて前記空冷ファンの回転を制御する制御部とを有してよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エンジンの排熱を利用して効率よく発電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る排熱発電システムの構成の一例を示す図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る排熱発電システムの構成の一例を示す図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る排熱発電システムの構成の一例を示す図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る排熱発電システムの構成の一例を示す第1の図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る排熱発電システムの構成の一例を示す第2の図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る排熱発電システムの構成の一例を示す第3の図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る排熱発電システムの構成の一例を示す第4の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る排熱発電システムの構成の一例を示す図である。
本実施形態に係る排熱発電システムは、自動車等のエンジン10(内燃機関)において発生する熱を利用して発電を行うとともに、エンジン内部のシリンダ等を冷却するエンジン冷却システム11(ウォータージャケット,サーモスタッド,ウォーターポンプ等)と連携して、エンジン10の冷却を行う。
【0014】
図1に示す排熱発電システムは、フロン系ガス等の作動媒体が流れる循環流路と、その循環流路に設けられた昇圧ポンプ41、蒸発器21、膨張機31、及び、凝縮器22を有する。膨張機31は発電機32に接続される、凝縮器22は空冷ファン51によって空冷される。制御部60は、昇圧ポンプ41の駆動並びに空冷ファン51の回転を制御する。
なお、蒸発器21は、本発明における第1熱交換部の一例である。
膨張機31と発電機32を含むユニットは、本発明における発電部の一例である。
凝縮器22は、本発明における第2熱交換部の一例である。
昇圧ポンプ41は、本発明におけるポンプの一例である。
制御部60は、本発明における制御部の一例である。
【0015】
蒸発器21は、エンジン冷却システム11の冷却水が循環する循環流路と、作動媒体が流れる循環流路とを熱的に結合する熱交換器であり、エンジン10の排熱によって昇温された冷却水の熱を作動媒体に伝える。昇圧ポンプ41から供給される高圧の作動媒体は、蒸発器21において加熱されて高圧の蒸気となる。
【0016】
膨張機31は、蒸発器21から供給される高圧の蒸気が断熱膨張する過程で発生する力を機械的な動力に変換する。膨張機31は、例えばスクロール膨張機である。発電機32は、膨張機31の動力(例えばローターの回転力)を受けて、これを電気エネルギーに変換する。
【0017】
凝縮器22は、膨張機31から排出された作動媒体が流れる流路を空冷ファン51の風で空冷することにより、作動媒体の熱を奪う。これにより、膨張機31において膨張を終えた作動媒体は定圧冷却されて凝縮し、液体に戻る。
【0018】
昇圧ポンプ41は、凝縮器22において液体に戻った作動媒体を吸い込み、蒸発器21に向けて圧力をかけて送り出す。
【0019】
制御部60は、蒸発器21からエンジン10へ流入する冷却水の温度を検出する温度センサ61からの検出信号に基づいて、空冷ファン51の回転や昇圧ポンプ41の圧力を制御する。すなわち、制御部60は、冷却水の温度が目標レベルより高い場合には、空冷ファン51の回転数を上げるとともに昇圧ポンプ41の圧力を上昇させる。空冷ファン51の回転数を上げることによって作動媒体の温度が低下し、昇圧ポンプ41の圧力を高めることによって作動媒体の流量が増えるため、冷却水の温度が低下する方向に制御が働く。他方、冷却水の温度が目標レベルより低い場合、制御部60は、空冷ファン51の回転数を下げる(若しくは空冷ファン51の回転を止める)とともに昇圧ポンプ41の圧力を低下させる(若しくは昇圧ポンプ41の動作を止める)。これにより、上述とは逆に、冷却水の温度が上昇する方向に制御が働く。
【0020】
上述した構成を有する排熱発電システムの動作を説明する。
エンジン10が動作を開始してその温度が上昇すると、エンジン冷却システム11が起動し、冷却水が循環流路の中を流れる。温度センサ61において検出される冷却水の温度が一定レベルに達すると、制御部60は昇圧ポンプ41と空冷ファン51を起動させる。昇圧ポンプ41の起動によって、循環流路中の作動媒体が昇圧ポンプ41に吸い込まれ、蒸発器21に向かって圧送される。蒸発器21の中を通る作動媒体は、冷却水から伝わる熱によって加熱され、沸点を超えて蒸発する。蒸気となった作動媒体は、膨張機31において膨張し、膨張機31のローターを回転させる。ローターの回転エネルギーは、発電機32において電気エネルギーに変換される。膨張を終えた作動媒体は、凝縮器22において空冷ファン51により空冷されて凝縮し、液体に戻る。液体に戻った作動媒体は、再び昇圧ポンプ41に吸い込まれて、蒸発器21に向かって圧送される。
【0021】
以上説明したように、本実施形態に係る排熱発電システムによれば、エンジン冷却システム11において循環する冷却水の熱を利用して、フロン系ガス等の作動媒体が蒸発、膨張、凝縮、圧縮を繰り返すサイクルを形成し、その膨張過程で発生する動力が電気エネルギーに変換される。これにより、従来は無条件で強制的に放熱されていたエンジンの熱を電気エネルギーに変換して利用することができるため、エネルギー資源の有効利用を図り、温室効果ガス等の環境負荷の低減に大きく貢献することができる。
【0022】
また、本実施形態に係る排熱発電システムは、従来のエンジン冷却システムの一部(ラジエータ等)を置き換えることができるため、本システムを追加することによる部品点数の増加を抑えることができる。
【0023】
更に、本実施形態に係る排熱発電システムによれば、冷却水の温度が一定レベルより上昇した場合に、空冷ファン51の回転数や昇圧ポンプ41の圧力を制御することによって、冷却水の温度が低下するように制御を働かせることができるため、エンジン10の動力を安定に保つことができる。
【0024】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る排熱発電システムについて説明する。
図2は、第2の実施形態に係る排熱発電システムの構成の一例を示す図である。図2に示す排熱発電システムは、図1に示す排熱発電システムと同様の構成を有するとともに、蒸発器23を有する。
【0025】
蒸発器23は、エンジン10から排出された排ガスが流れる排気管と、作動媒体が流れる循環流路とを熱的に結合する熱交換器であり、本発明における第3熱交換部に対応する。蒸発器23は、蒸発器21において加熱されて蒸気となった作動媒体を、エンジン10の排ガスの熱によって更に加熱する。通常、冷却水に比べて排ガスの温度の方が高いため、蒸発器23を通過して膨張機31に供給される作動媒体の温度は、図1に示す排熱発電システムに比べて高くなる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係る排熱発電システムによれば、エンジン10から排出される排ガスの熱によって、膨張機31に供給される作動媒体の温度を更に高くすることができるため、膨張機31における作動媒体の仕事量が増大し、発電機32から更に大きな電気エネルギーを出力することができる。これにより、無駄に捨てられていたエンジン10の排ガスの熱を利用して電気エネルギーが得られることから、図1に示す排熱発電システムに比べて、より有効にエネルギー資源を活用することができる。
【0027】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係る排熱発電システムについて説明する。
図3は、第3の実施形態に係る排熱発電システムの構成の一例を示す図である。図3に示す排熱発電システムは、図1に示す発電システムにおける蒸発器21が省略されたものであり、作動媒体がエンジン冷却システム11の冷却水としてエンジン10の内部に直接供給される。温度センサ61は、エンジン冷却システム11に流入する作動媒体の温度を検出する。
【0028】
図3に示す排熱発電システムでは、図1における蒸発器21の替わりに、エンジン冷却システム11の冷却水流路(ウォータージャケット等)がエンジン10内の熱を作動媒体に伝える機能を担っている。エンジン10内の冷却水流路を流れる過程で、作動媒体がエンジン10の熱により加熱されて蒸発し、蒸気となって膨張機31に供給される。
【0029】
本実施形態に係る排熱発電システムによれば、蒸発器21を省略することができるため、図1図2に示す排熱発電システムに比べて構成を簡略化できる。また、エンジン10の熱が作動媒体へ直接伝わるため、図1図2に示す排熱発電システムに比べて熱交換の効率を向上することが可能となり、発電出力を高めることができる。
【0030】
以上、本発明の幾つかの実施例について説明したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0031】
図3に示す排熱発電システムでは排ガスの熱が捨てられているが、本発明の他の実施形態では、例えば図4において示すように、排ガスの熱を作動媒体に伝える蒸発器23を図3に示す排熱発電システムに追加してもよい。これにより、エンジン10の排熱を電気エネルギーに変換して有効に利用することができる。
【0032】
また、図2に示す排熱発電システムでは、エンジン10の冷却水の排熱と排ガスの排熱の両方を作動媒体の加熱に利用しているが、本発明の他の実施形態では、例えば図5において示すように、エンジン10の排熱のみを作動媒体の加熱に利用してもよい。図5に示す排熱発電システムは、図2に示す排熱発電システムにおける蒸発器21を省略したものであり、冷却水の冷却はラジエータ70と空冷ファン71によって行われる。この場合、制御部60は、図示しない上位の制御装置から出力されるエンジン10の動作状態に関わる信号を監視して、エンジン10から排ガスが排気されている状態を検知した場合に空冷ファン51と昇圧ポンプ41を起動させる。
【0033】
また、図1図2に示す排熱発電システムでは、凝縮器22を空冷ファン51によって空冷することにより作動媒体の温度を低下させているが、本発明はこの例に限定されない。本発明の他の実施形態では、例えば図6に示すように、蒸発器21を空冷するための空冷ファン52を更に設けてもよい。これにより、例えば何らかのトラブル等によって昇圧ポンプ41が停止した場合でも、空冷ファン52によって冷却水が過度に温度上昇することを有効に防止できる。
【0034】
また、本発明の他の実施形態では、1つの空冷ファンによって凝縮器22と蒸発器21の両方を空冷できるようにしてもよい。この場合、例えば、空冷ファンによる空気の流れの風上に凝縮器22を配置し、風下に蒸発器21を配置することで、蒸発器21の熱風が凝縮器22に当たらなくなるため、凝縮器22を蒸発器21に比べて低温にすることができる。
【0035】
また、上述した各実施形態では、排熱発電システムにおいてエンジン10の冷却水を冷却しているが、本発明はこの例に限定されない。本発明の他の実施形態では、例えば図7において示すように、冷却水の経路上にラジエータ70を独立に設けて、空冷ファン71によってラジエータ70を空冷してもよい。これにより、排熱発電システムによる冷却では不十分な場合でも、ラジエータ70を使って確実にエンジンの冷却を行うことができる。
【符号の説明】
【0036】
10…エンジン、11…エンジン冷却システム、21,23…蒸発器、22…凝縮器、31…膨張機、32…発電機、41…昇圧ポンプ、51,52,71…空冷ファン、60…制御部、61…温度センサ、70…ラジエータ。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7