(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記防眩表面が、マイクロメートルで表されるピクセルピッチPを有する複数のピクセルを有するピクセル化表示装置の前の、ミリメートルで表される光学距離Dに設置されると、マイクロメートルで表されるカットオフ周期が[(280/P)・(0.098・RMS−5.55)・D/3]より大きいことを特徴とする、請求項1または2に記載の透明ガラス基板。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明において、同様の参照記号は、複数の図面において示されるいくつかの図を通じて、同様または対応する部品を指す。また、特に断りがない限り、「上」、「下」、「外側」、「内側」等の用語は便宜上の単語であり、限定的な用語とはならないと理解するべきである。これに加えて、ある集合が、複数の要素およびそれらの組み合わせの集合の中の少なくとも1つを含むと記載されている場合は常に、その集合が、明記されたそれらの要素をいくつでも、単独か、相互に組み合わせるかを問わず、含み、基本的にそれらから構成され、またはそれらから構成されていてもよいと理解する。同様に、ある集合が、複数の要素またはそれらの組み合わせの集合の中の少なくとも1つからなると記載されている場合は常に、その集合が、明記されたそれらの要素のいくつから、単独か、相互に組み合わせるかを問わず、構成されていてもよいと理解する。特に断りがないかぎり、数値の範囲が明示されているときは、それがその範囲の上限と下限の両方およびそれらの間の小範囲を含む。本明細書において使用されている場合、不定冠詞(a、an)とそれに対応する定冠詞(the)は、特に断りがない限り、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数の」を意味する。
【0011】
図面全体および特に
図1を参照すると、図は具体的な実施形態を説明するためのものであり、開示または付属の特許請求項をこれらに限定しようは意図されていないことがわかるであろう。図面は必ずしも正しい縮尺で描かれておらず、図面の特定の特徴や特定の図は、明瞭さと簡潔さのために強調され、または概略的に示されている場合がある。
【0012】
前述のように、防眩表面は一般に被覆または構築されたポリマフィルムを含み、これはLCDやOLEDの前面ガラスシートの表面に直接積層される。このような防眩用のポリマコーティングに用いられるパラメータと工程は必ずしも、保護的な防眩カバーガラスまたは基板のパラメータと同じとは限らず、これは、保護的なカバーガラスまたは基板上の防眩表面は一般に、その表示装置の画像形成面から、より大きな光学距離だけ離して設置されるからである。
【0013】
したがって本明細書では、防眩表面を有する透明ガラス基板を提供し、記載する。透明ガラス基板100(本明細書では、「ガラス基板」または「基板」ともいう)の断面図が
図1に概略的に示されている。基板100は、防眩表面110と、防眩表面110と反対の第二の表面120と、を有する。防眩表面110は、基板と一体でも、基板100の表面上に独立型フィルムまたは堆積層として形成されてもよい。
【0014】
透明ガラス基板100の防眩表面110の基本的な目的は、ガラス基板100を通して見たときのカバーバラスおよび/または、たとえばLCD表示装置等のピクセル化表示装置のフレネル反射を除去することである。防眩表面110はフレネル反射を、その表示装置における物体の画像をぼやけさせる拡散反射に置き換える。したがって、防眩表面110の粗さ振幅は、鏡面フレネル反射を除去するのに十分に高い。実質的にランダムな表面では、鏡面反射の減衰率は粗さのRMS振幅のみに依存し、粗さの形状への有意な依存性はない。減衰率は、次式で示される。
R=R0exp(−(2Πδ・Δn・cos(θ)/λ)2)
式中、δは粗さのRMS振幅、θはその表面への波長λの光の入射角、nは屈折率であり、反射ではΔn=2、透過ではΔn=1−nとなる。
【0015】
フーリエ光学に基づくモデルを適用して、垂直入射(すなわち、θ=0)での鏡面反射減衰率を求めることができる。
図2は、2πの倍数で表されるRMS波形単位に関する鏡面反射減衰率のグラフである。減衰率を、正弦波状の粗さ(
図2のa)とランダム表面粗さ(
図2のb)について、および近似式を使って(c)計算した。
図2に示される減衰率に基づけば、鏡面反射を除去するためには、δΔn/λ=>0.3であり、粗さのRMS振幅δは約80nmより大きい。
【0016】
より大きい入射角での鏡面反射を除去するには、上記の関係はδ・cos(θ)となる。たとえば、最大60°までの照明角度の鏡面反射を除去するために、粗さのRMS振幅δを約160nmより大きくするべきである。防眩表面にとって「理想的な」RMS粗さは用途によって異なる場合がある。たとえば、ほとんどの場合に垂直入射で見るコンピュータスクリーン用の防眩表面の粗さは約80nmのオーダでありえ、これに対して、大きい角度で見ることもある携帯型電子機器やテレビの防眩表面のRMS粗さは、約160nm程度でありうる。
【0017】
したがって、防眩表面110は、少なくとも約80nmのRMS振幅を有する粗面部112(
図1)を含む。RMS粗さ振幅または「粗さ振幅」は、次式で示される。
【0019】
式中、R(x,y)は粗さ関数、Sは積分計算が行われる表面である。粗面部112は、透明ガラス基板100の表面を直接、または酸またはアルカリレジストマスクを通じて化学的にエッチングすることによって形成してもよい。
【0020】
防眩表面110の形成に使用される工程に応じて、表面は、場合により、AG用の粗い特徴物によって必ずしも完全に覆われていなくてもよく、すなわち、防眩表面は均質でない。たとえば、透明ガラス基板の表面をその表面上に成膜されたマスクを通じてエッチングすると、表面上の、マスクの開口部がある位置に穴が形成される。その結果、表面のかなりの部分がエッチングされないこともあり(すなわち、「エッチングなし」または「非粗面」)、防眩表面110の、実質的に平坦な領域114ができる。防眩表面110の粗さはしたがって、いくつかの例において、均質に分布されない。
【0021】
図3に、フーリエ光学に基づくモデルを適用する場合の粗さのRMS振幅δに関する鏡面反射の振幅を、不均質表面(
図3のa)と均質表面(
図3のb)について示す。均質表面について計算された鏡面反射(
図3のb)はゼロまで減少するが、不均質表面について計算された鏡面反射(
図3のa)はゼロ以外の数値で飽和する。非被覆比(uncoverage ratio)率(τ)は、
防眩表面のうち、防眩特徴物によって被覆されていない
表面部(すなわち、非粗面、すなわち平坦表面)
を含む割合である。鏡面反射が飽和する数値は非被覆比率τの二乗に等しい。非被覆比τは、鏡面反射を約1%以下とするために、約0.1未満であるべきである。
【0022】
したがって、防眩表面110は不均質であってもよく、さらに、非粗面、すなわち実質的な平坦表面部114を含んでいてもよい。平坦表面部114の存在は一般に、ガラス基板100の表面を、マスクを通じてエッチングすることによって得られる。
図4aと4bは均質な粗い防眩表面の、それぞれ画像と断面形状のグラフである。
図4cと4dは、ガラス基板の表面を、マスクを通じてエッチングすることによって得られる防眩表面の、それぞれ画像と断面形状のグラフである。
図4cと4dに示される不均質な防眩表面は、各々の最小表面積が約1μm
2のエッチングされていない、実質的な平坦表面部114のほか、粗面部112を含む。いくつかの実施形態において、非被覆比率τ、すなわち防眩表面110のうち平坦表面部114を含む割合は約0.1未満であり、すなわち、平坦表面部114は防眩表面110の約10%未満で、粗面が防眩表面110の残りを含む。いくつかの実施形態において、非被覆比率τは約0.2未満である。
【0023】
防眩表面110の粗さのRMS振幅δを、鏡面反射を排除するための適正な数値に設定した後、防眩表面110を透過する光が反射して散乱する理想的な拡散角度を決定する。透明ガラス基板100と防眩表面110からの反射において見たときの、ピクセル化表示装置の周辺の物体の映り込み像をできるだけぼかすために、防眩表面の拡散角度を最大とする。これを実現するには、防眩表面110のRMS粗さ振幅と周波数成分をできるだけ大きくするべきである。しかしながら、粗さ振幅と周波数成分は、ピクセル化表示装置上で見られる画像を劣化させないように、他の検討事項に照らしてバランスを取るべきである。
【0024】
通常の環境では、ピクセル化表示装置は、非常に明るく、小さい光源、たとえば、電球と、電球から発せられる光を拡散させる非常に大型の光源、たとえば周囲の白い壁により照明される室内で見られる。このような光源が極端に明るいことから、室内の点状光源からの直接反射と観察者の目による捕捉を回避するべきである。
図5は、ピクセル化表示装置140のスクリーンが、小さい光源510によって、防眩表面110を有する基板100からの反射において照明される状況を示している。光512は、開口角θの円錐514へと散乱する。観察者の目520が円錐514の外(
図5の位置a)にあると、観察者には光源510が見えない。観察者の目520が円錐514の中(
図5の位置b)にあると、観察者には光源510が見える。
【0025】
光源510がピクセル化表示装置140の周囲でランダムに分散していると仮定すると、反射において光源510が見える可能性は、角度θの増大に伴って高くなる。この可能性Pは、第一次近似においてP(θ)=sin
2θで示される。防眩表面110の最大散乱角は、a)散乱について、略ガウス型のエネルギー角度分布と仮定し、b)拡散円錐514を1/e
2の値で定義し、c)ピクセル化表示装置の周囲に光源510がランダムに分散していると仮定し、d)観察者の目520がその拡散円錐の中にある可能性を計算することによって計算できる。
【0026】
一実施形態において、反射の中のエネルギー角度分布の半値全幅(FWHM)は約7°未満であり、他の実施形態では、約7.5°未満である。
図6は、観察者の目520が拡散円錐514の中にある可能性を、度で表されるFWHMに関して示したグラフである。
図6のグラフのデータに基づけば、可能性を1%未満にするには、拡散エネルギー角度分布のFWHMを約7.5°未満とするべきである。あるいは、反射エネルギーの約25%未満の反射エネルギー角度分布の一次元(断面)スライスは、7.5°の外にあるべきである。これは、ガウス分布の場合のFWHMの状態と等しいが、それが非ガウス分布についても関連性があるという点で、より一般的である。非ガウス分布に対してより堅牢である別の代替案では、反射エネルギーの約5%未満の反射エネルギー角度分布の一次元(断面)スライスが12.5°の円錐の外にあるべきである(12.5°はおよそ7.5°のFWHMに対応する1/e
2の角度である)。
【0027】
反射の拡散角度は2つのパラメータ、すなわち粗さのRMS振幅と、粗さのパワースペクトル密度が1/e
2未満に下がる周波数と定義されるカットオフ周波数の関数である。
図7は、RMS振幅が250nmで一定であるときの粗さのカットオフ周波数に関する、パーセントで表される曇度(線1、左側の軸)と拡散エネルギー分布のFWHM(線2、右側の軸)のグラフである。この特定の粗さ振幅の場合、FWHMを約7.5°(
図7の線a)未満とするためには、カットオフ周波数を約1/18マイクロメートル
−1(18μmのカットオフ周期(
図7の点b)に対応)未満とするべきである。本明細書において、「曇度」という用語は、約±2.5°の開口角の円錐の外に散乱した透過光のパーセンテージを指し、これは、“Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics”と題するASTM手順D1003によるもので、同規格の内容の全体を参照によって本願に援用する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の透明基板と防眩表面の、ASTM手順D1003に従って測定した透過曇度は約20%未満であり、他の実施形態では約5%未満である。
【0028】
反射におけるエネルギー角度分布のFWHMのカットオフ周波数への依存性もまた、カットオフ周期によって表現でき、周期(1/v)は周波数vの逆数と定義される。
図8では、カットオフ周期が粗さのRMS振幅に関するグラフで示されている。反射におけるエネルギー角度分布のFWHMが約7°未満または、いくつかの実施形態では約7.5°未満という条件はしたがって、いくつかの実施形態において約1/(0.081RMS)未満のカットオフ周波数により表すことができ、RMSはnmで表され、カットオフ周波数はマイクロメートル
−1で表される。
【0029】
画像解像度は、防眩表面によって劣化または低減されるべきではない。防眩表面が画像を劣化させる程度は、ピクセル化表示装置を製造できる最大限の空間周波数(ナイキスト周波数と呼ばれ、ピクセルピッチの2倍(×2)の逆数である)を考慮し、その周波数での防眩表面に関わる変調伝達関数(MTF)の劣化を計算することによって定量化できる。ナイキスト周波数で計算されるMTFの漸進的変化が
図9において、粗のカットオフ周波数に関するグラフで示されている。この具体的なケースで行った仮定としては、ピクセルピッチが280μmであること、LCD表示装置のスタック全厚(ピクセルから防眩表面までの光学距離)が3mmであること、等がある。防眩表面の粗さのRMS振幅は250nmで一定とした。
図9のグラフに示されるデータに基づけば、本明細書に記載の防眩表面は、FWHMを7.5°とするため、またはMTFの劣化を1%とするためには、カットオフ周波数を1/18マイクロメートル
−1未満に(またはカットオフ周期を18μm(
図9の点a)より大きく)するべきである。光学距離はたとえば、その光軸に沿って動かすことが可能な顕微鏡を使って測定できる。顕微鏡はまず、粗面の画像の焦点が合う地点である第一の距離に調節する。次に、顕微鏡を、ピクセルの画像の焦点が合う地点である第二の距離に焦点を合わせる。光学距離は、第一の距離と第二の距離の差である。
【0030】
ナイキスト周波数でのMTFの劣化1%に対応する最大カットオフ周波数また、粗さのRMS振幅の関数としても計算できる。たとえば
図10は、カットオフ周波数を1/(0.081RMS)より低くするべきであるという制限を満たすのに必要な最小カットオフ周期(
図10のa)と、ピクセルピッチが280μmで一定の場合のナイキストの状態(
図10のb)を示している。
図10に示される結果は、カットオフ周期がピクセルピッチに反比例するという事実から、他のピクセルピッチにも拡張できる。したがって、本明細書に記載の基板と防眩表面の、マイクロメートルで表されるカットオフ周期は、(280/Pixel)・(0.098RMS−5.55)より大きく、PixelはLCDのピクセルピッチ(マイクロメートルで表される)、RMSは粗さのRMS振幅で、nmで表される。カットオフ周期、ピクセルピッチP、RMS振幅の間の上記の関係は、光学距離が3mmである場合のみ有効である。第一次近似において、最大カットオフ周期は光学距離に比例すると予想される。より一般には、マイクロメートルで表されるカットオフ周期は、(280/Pixel)・(0.098RMS−5.55)・D/3より大きく、Dはmmで表される光学距離である。
【0031】
防眩表面の空間周波数が比較的低い場合、粗さは、「スパークル」と呼ばれる画像アーチファクトを発生させる複数のレンズのように機能し始める。表示装置の「スパークル」または「眩目」は一般に、ピクセル化表示システム、たとえばLCD、OLED、タッチクリーンまたはその他に防眩または光散乱面を組み込んだ場合に起こりうる、概して望ましくない副作用であり、種類と発生源は、投射またはレーザシステムで観察され、特徴付けられる「スパークル」または「スペックル」の種類とは異なる。スパークルは、表示装置の非常に微細な粒子感であり、表示装置の視野角の変化と共に粒子のパターンにシフトが生じるように見えることがある。表示装置のスパークルは、略ピクセル程度の大きさの明るい、および暗いスポット、または色付のスポットと説明することができる。
【0032】
本明細書において使用される、「ピクセルパワー偏差」と「PPD」という用語は、表示装置スパークルの定量的測定値を指す。PPDは、以下の手順に従って行われる表示装置のピクセルの画像分析によって計算される。各LCDピクセルの周囲にマス目を描く。次に、各マス目内の全パワーをCCDカメラのデータから計算し、各ピクセルの全パワーとして割り当てる。それゆえ、各LCDピクセルの全パワーが一連の数字となり、これについての平均および標準偏差を計算する。PPD値は、ピクセル当たりの全パワーの標準偏差をピクセル当たりの平均出力では割ったもの(×100)と定義される。アイカメラによって各LCDピクセルから収集される全パワーを測定し、全ピクセルパワー標準偏差(PPD)を、一般に30×30のLCDピクセルを含む測定領域にわたって計算する。
【0033】
PPDを得るために用いられる測定システムと画像処理計算の詳細は、Jacques Gollierらが2011年2月28に出願した、“Apparatus and Method for Determining Sparkle”と題する米国仮特許出願第61/447,285号明細書に記載されており、その内容の全体を参照によって本願に援用する。測定システムは、複数のピクセルを含むピクセル化ソース(pixelated source)であって、複数のピクセルの各々が添え字iとjで示されるピクセル化ソースと、ピクセル化ソースを起点とする光路に沿って光学的に配置された画像形成システムと、を含む。画像形成システムは、光軸に沿って配置され、第二の複数のピクセルであって、各々がmとnの添え字で示される第二の複数のピクセルを含むピクセル化感知領域を有する画像形成装置と、ピクセル化ソースと画像形成装置の間の光軸上に配置された隔膜であって、ピクセル化ソースから発生する画像に合わせて調整可能な集光角度を有する隔膜と、を含む。画像処理計算は、透明サンプルのピクセル化画像を取得するステップであって、ピクセル化画像が複数のピクセルを含むようなステップと、ピクセル化画像内の隣接ピクセル間の境界を決めるステップと、境界内で積分を行って、ピクセル化画像内の各ソースピクセルについての積分エネルギーを取得するステップと、各ソースピクセルの積分エネルギーの標準偏差を計算するステップであって、標準偏差がピクセル当たりのパワーのばらつきであるようなステップと、を含む。
【0034】
図11において、光学距離を3mmで一定とした場合の、RMS粗さ振幅が250nm(
図11の曲線a、b、c)と100nm(
図11の曲線d、e、f)の粗面のスパークル振幅が、粗さ周期に関するグラフで示されている。それぞれの粗さについて、140μm(
図11の曲線aとb)、220μm(曲線bとc)、280μm(曲線cとf)のピクセルピッチでのスパークルを測定した。
【0035】
図11のグラフの曲線から、スパークル振幅を極小化できる2つの異なるカットオフ周波数が存在することがわかる。非常に低レベルのスパークルが生成される第一のカットオフ周波数は非常に低い周波数(すなわち、大きな周期)にある。200〜300μmの範囲のカットオフ周期では、反射における拡散広がり角度(diffusion divergence angle)が極めて小さく、その結果得られる防眩表面では、映り込みの像がそれほどぼけない。さらに、非常に大きな空間周期では、防眩表面は粗く、凹凸のある外観であることもあり、これは「みかんの皮状」と呼ばれ、人間の目にとっては邪魔になる。
【0036】
第二のカットオフ周波数は高い周波数(すなわち、短い周期)にある。約1/25マイクロメートル
−1より高い周波数において、スパークル振幅は非常に急速に低下する。第二のカットオフ周波数/周期の範囲では、はるかに大きい角度で寄生的反射がぼける。それゆえ、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の防眩表面の粗さカットオフ周波数は約1/50マイクロメートル
−1より大きく、いくつかの実施形態においては、約1/25マイクロメートル
−1より大きい。
【0037】
防眩表面のパラメータは、各種の表示装置設計要素によって影響を受けうる。前述のような表示装置のピクセルサイズおよび画像面と防眩表面の間の光学距離に加えて、カバーガラスを表示装置に取り付ける方法もまた、最終的な防眩表面のパラメータに影響を与える可能性がある。一般に、上記の80〜160nmの範囲のRMS表面粗さは「直接接合」型表示装置の設計に最も適当であり、この場合、防眩表面を有するカバーカラス/透明ガラス基板が、光学的接着剤を使って、表示装置画像形成層の前面に直接接合される。直接接合方式によれば、ガラスの裏面からの反射が極小化される。粗さを最小にしても、スパークルが極小化される。それゆえ、防眩表面は「最小限の」受入可能なRMS粗さを有するべきであり、すなわち、RMS粗さは装置の所期の視野角範囲で防眩表面の効果が提供されるのに十分であるべきである。カバーガラスと画像形成表示層の間に「エアギャップ」を利用する装置では、より高いレベルの粗さ(たとえば、120〜300nmのRMS)が必要な場合もあり、これは、ガラスの平坦な裏面(または、ガラスの裏面に形成されたフィルムの平坦な表面)によって反射が生じる可能性があり、これが、ガラスの前面の防眩表面の粗さをより高くした場合のみ拡散するからである。あるいは、防眩表面は、ガラス面に直接提供することも、またはガラスの裏面(すなわち、ガラス基板の、防眩表面とは反対の面)に取り付けられたフィルムの使用を通じて提供することもできる。エアギャップを用いる設計を表示装置組立体に含めることは、機械的または電気的理由から好ましいこともあるが、直接接合型の設計は、本明細書に記載の透明ガラス基板と表示装置組立体に最も好ましく、これは、それによって最低限の粗さレベルを有する防眩表面の使用が可能となるからであり、その結果、ある鏡面反射目標でのスパークルも極小化される。
【0038】
本明細書に記載の特性を有する防眩表面は、様々なエッチング工程を使って得ることができる。このような工程の非限定的な例としては、2010年8月18日にKrista L.Carlsonらにより出願され、“Glass and Display Having Antiglare Properties”と題する米国特許出願第12/858,544号明細書、2010年9月30日にKrista L.Carlsonらにより出願され、“Glass Having Antiglare Surface and Method of Making”と題する米国特許出願第12/730,502号明細書、2010年4月30日にDiane K.Guilfoyleらにより出願され、“Antiglare Treatment Method and Articles Thereof”と題する米国仮特許出願第61/329,936号明細書、2010年8月11日にDiane K.Guilfoyleらにより出願され、“Antiglare Treatment Method and Articles Thereof”と題する米国仮特許出願第61/372,655号明細書、2010年4月30日にJeffrey T.Kohliらにより出願され、“Antiglare Surface and Method of Making”と題する米国仮特許出願第61/329,951号明細書に記載されており、これらの内容の全体を参照によって本願に援用する。
【0039】
米国特許出願第12/858,544号明細書と第12/730,502号明細書は、ガラス表面を第一のエッチング液で処理して、表面上に結晶を形成する方法を記載している。次に、表面のうち、結晶の各々に隣接する領域を所望の粗さにエッチングし、その後、ガラス表面から結晶を除去し、ガラス基板の表面の粗さを、所望の曇度と光沢を有する表面を提供するように小さくする。
【0040】
非限定的な例において、米国特許出願第12/858,544号明細書と第12/730,502号明細書に記載の複数のステップからなる処理は、ガラス基板をフッ化水素アンモニウム(NH
4HF
2)5〜20重量%、フッ素化または非フッ素化アルカリまたはアルカリ性土類塩(たとえば、NaHF
2またはCaCl
2)0〜5重量%、イソプロピルアルコールまたはプロピレングリコール等の有機溶剤10〜40%を含む溶液、ゲルまたはペーストの第一の浴槽に浸漬するか、その他の方法でこれと接触させる第一の粗面化ステップを含む。これらの結晶を後に、水によるすすぎ、またはその後の化学的処理ステップによって除去する。所望により選択可能な第二のステップは、非フッ素化鉱酸、たとえば硫酸、塩酸、硝酸、燐酸またはその他を含む第二の溶液に浸漬させるか、またはその他の処理を行うステップを含んでいてもよい。あるいは、第二の溶液は水だけでもよい。この所望により選択可能な第二のステップは、ガラス基板から結晶を部分的または全体的に除去する役割を果たすことができる。所望により選択可能な第三のステップ(または、上記の第二のステップが省略された場合は第二のステップ)は、フッ化水素酸2〜10重量%と鉱酸、たとえば塩酸、硫酸、硝酸、燐酸またはその他2〜30重量%を含む酸性溶液への浸漬またはその他の処理を含んでいてもよい。所望により選択可能なこの第三のステップはまた、酸性溶液の代わりに塩基性溶液、たとえばNaOHとEDTAを含む溶液での処理を含んでいてもよい。
【0041】
米国仮特許出願第61/329,936号明細書、第61/372,655号明細書、第61/329,951号明細書には、酸性および塩基性エッチング工程と、ガラス表面のエッチングの度合いを制御するためのポリマまたはワックスコーティング、粒子、およびその組み合わせを含むマスクの使用が記載されている。米国仮特許出願第61/329,936号明細書と第61/372,655号明細書には、防眩表面を生成するためのウェットエッチング方法が記載されており、その中では粒子をガラスの少なくとも1つの表面に堆積させる。成形品の、堆積した粒子を有する少なくとも1つの表面をエッチング液(たとえば、HFとH
2SO
4を含むエッチング液)と接触させて防眩表面を形成する。堆積させる粒子はたとえば、粒径D
50径が約0.1μm〜約10μm、約0.1μm〜約50μm、約1μm〜約10マイクロメートル、または約1μm〜約5μmであってもよい。粒子はたとえば、ガラスの表面上に、粒子の濃縮液体懸濁液を生成し、濃縮懸濁液を希釈剤で希釈し、表面を希釈懸濁液と接触させることによって堆積させてもよい。堆積させる粒子はたとえば、ガラス、複合材、セラミック、プラスチックまたは樹脂ベースの材料、これらの組み合わせまたはその他であってもよい。いくつかの実施形態において、エッチング液は、堆積した粒子の下の表面をエッチングするのに適した少なくとも1種の酸を含んでいてもよい。このようなエッチング液の非限定的な例は、上で引用した参考文献に記載されている(たとえば、HF/H
2SO
4エッチング液)。
【0042】
米国仮特許出願第61/329,951号明細書には、防眩表面を有する成形品の製造方法が記載されており、保護フィルムが成形品の少なくとも1つの面の少なくとも一部に形成される。保護フィルムを有する表面を液体エッチング液と接触させることにより、その表面を粗くする。いくつかの実施形態において、保護フィルムは孔形成ポリマ、たとえばスルホンアミドホルムアルデヒド樹脂、ニトロセルロース、アクリレートまたはアクリルモノマまたはその塩を含むポリマまたはコポリマ、ラッカ、エナメル、ワックス、これらの組み合わせまたはその他のうちの少なくとも1つであってもよい。いくつかの実施形態において、保護膜または孔形成ポリマは、どのような適当なコーティング材料、たとえば少なくとも1種のポリマ、またはポリマの組み合わせ、同様の天然または合成材料、またはその組み合わせであってもよい。耐久性がありながら、除去可能な多孔性コーティングを提供できる、適当な孔形成組成物には、これらに限定されないが、フィルム形成および孔形成特性を有するすべてのポリマまたはポリマ剤または、または同様の材料または混合物、たとえばTSO−3100 DODインク(Diagraph社のエタノールイソプロピルベースの噴射可能インク)、アセトンベースのo/p−トルエンスルホンアミドホルムアルデヒド樹脂、ニトロセルロース、アクリレートポリマ、アクリレートコポリマ、ラッカ(揮発性有機化合物に溶解させたポリマ)剤、エナメル、ワックス、これらの組み合わせまたはその他がある。
【0043】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の防眩表面は、引用し、本願に援用する参考文献の教示を組み合わせることによって形成してもよい。特定の実施形態において、防眩表面は、米国仮特許出願第61/329,936号明細書と第61/372,655号明細書に記載されているような透明ガラス基板の表面上への粒子の堆積と、米国仮特許出願第61/329,951号明細書に記載されているような保護用ポリマフィルムの成膜を組み合わせて、その後、表面をエッチングして前述の防眩表面のうちの1つを形成することによって形成してもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の透明ガラス基板と防眩表面は、20°での反射画像の鮮鋭性(DOI:distinctness of reflected image)が約90未満である。いくつかの実施形態では、透明ガラスシートのDOIは約80未満であり、他の実施形態では、約60未満であり、他の実施形態では約40未満である。本明細書で使用されている、「反射画像の鮮鋭性」という用語は、“Standard Test Methods for Instrumental Measurements of Distinctness−of−Image Gloss of Coating Surfaces”と題するASTM手順D5767(ASTM 5767)の方法Aにより定義され、その内容の全体を参照によって本願に援用する。
【0045】
いくつかの実施形態において、透明ガラス基板はイオン交換ガラスを含み、当業界で知られている化学的または熱的手段のいずれかによって強化される。一実施形態において、透明ガラス基板はイオン交換によって化学的に強化される。この工程では、ガラス表面の、またはその付近の金属イオンが、ガラス内の金属イオンと同じ価数を有する、より大きな金属イオンと交換される。この交換は一般に、ガラスをイオン交換媒質、たとえば、より大きな金属イオンを含む融解塩浴等と接触させことによって行われる。金属イオンは一般に、一価金属イオン、たとえばアルカリ金属イオン等である。非限定的な一例において、ナトリウムイオンを含むガラス基板のイオン交換による化学的強化は、ガラス基板を、硝酸カリウム(KNO
3)等の溶解カリウム塩を含むイオン交換浴の中に浸漬させることによって実現される。
【0046】
イオン交換工程の中で小さい金属イオンをより大きい金属イオンと交換することによって、ガラス内に圧縮応力を受ける領域が作られ、これは表面からある深度(「層深度」という)まで延びる。透明ガラス基板の表面におけるこの圧縮応力は、ガラス基板の内部の引張応力(「中心張力」とも呼ばれる)によってバランスがとられる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の透明ガラス基板の表面は、イオン交換によって強化されると、少なくとも350MPaの圧縮応力を有し、圧縮応力を受ける領域は表面の下の少なくとも15μmの層深度まで延びる。
【0047】
いくつかの実施形態において、透明ガラス基板はソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸ガラス、またはアルカリアルミノホウケイ酸ガラスを含む。一実施形態において、透明ガラス基板はアルカリアルミノケイ酸ガラスを含み、これは、アルミナ、少なくとも1種のアルカリ金属、およびいくつかの実施形態では50モル%より多くのSiO
2、他の実施形態では少なくとも58モル%、また別の実施形態では少なくとも60モル%のSiO
2を含み、比は
【0049】
であり、その中の改質剤はアルカリ金属酸化物である。このガラスは、特定の実施形態において、SiO
2約58モル%〜約72モル%、Al
2O
3約9モル%〜約17モル%、B
2O
3約2モル%〜約12モル%、Na
2O約8モル%〜約16モル%、K
2O0モル%〜約4モル%を含み、これらから実質的になり、またはこれらからなり、比は
【0051】
であり、その中の改質剤はアルカリ金属酸化物である。
【0052】
他の実施形態において、透明ガラス基板はアルカリアルミノケイ酸ガラスを含み、これは、SiO
2約61モル%〜約75モル%、Al
2O
3約7モル%〜約15モル%、B
2O
30モル%〜約12モル%、Na
2O約9モル%〜約21モル%、K
2O0モル%〜約4モル%、MgO0モル%〜約7モル%、CaO0モル%〜約3モル%を含み、これらから実質的になり、またはこれらからなる。
【0053】
また別の実施形態において、透明ガラス基板はアルカリアルミノケイ酸ガラスを含み、これは、SiO
2約60モル%〜約70モル%、Al
2O
3約6モル%〜約14モル%、B
2O
30モル%〜約15モル%、Li
2O
20モル%〜約15モル%、Na
2O0モル%〜約20モル%、K
2O0モル%〜約10モル%、MgO0モル%〜約8モル%、CaO0モル%〜約10モル%、ZrO
20モル%〜約5モル%、SnO
20モル%〜約1モル%、CeO
20モル%〜約1モル%、As
2O
3約50ppm未満、Sb
2O
3約50ppm未満を含み、これらから実質的になり、またはこれらからなり、12モル%≦Li
2O+Na
2O+K
2O≦20モル%、0モル%≦MgO+CaO≦10モル%である。
【0054】
また別の実施形態において、透明ガラス基板はアルカリアルミノケイ酸ガラスを含み、これは、SiO
2約64モル%〜約68モル%、Na
2O約12モル%〜約16モル%、Al
2O
3約8モル%〜約12モル%、B
2O
30モル%〜約3モル%、K
2O約2モル%〜約5モル%、MgO約4モル%〜約6モル%、CaO0モル%〜約5モル%を含み、これらから実質的になり、またはこれらからなり、66モル%≦SiO
2+B
2O
3+CaO≦69モル%、Na
2O+K
2O+B
2O
3+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(Na
2O+B
2O
3)−Al
2O
3≦2モル%、2モル%≦Na
2O−Al
2O
3≦6モル%、4モル%≦(Na
2O+K
2O)−Al
2O
3≦10モル%である。
【0055】
他の実施形態において、透明ガラス基板は、SiO
2、Al
2O
3、P
2O
5、および少なくとも1種のアルカリ酸化金属(R
2O)を含み、0.75≦[(P
2O
5(モル%)+R
2O(モル%))/M
2O
3(モル%)]≦1.2であり、M
2O
3=Al
2O
3+B
2O
3である。いくつかの実施形態において、[(P
2O
5(モル%)+R
2O(モル%))/M
2O
3(モル%)]=1であり、いくつかの実施形態において、ガラスはB
2O
3を含まず、M
2O
3=Al
2O
3である。ガラスは、いくつかの実施形態において、SiO
2約40〜約70モル%、B
2O
30〜約28モル%、Al
2O
3約0〜約28モル%、P
2O
5約1〜約14モル%、R
2O約12〜約16モル%を含む。いくつかの実施形態において、ガラスは、SiO
2約40〜約64モル%、B
2O
30〜約8モル%、Al
2O
3約16〜約28モル%、P
2O
5約2〜約12モル%、R
2O約12〜約16モル%を含む。ガラスはさらに、少なくとも1種のアルカリ性土類金属酸化物、たとえば、ただしこれらに限定されないが、MgOまたはCaOを含んでいてもよい。
【0056】
いつかの実施形態において、透明ガラス基板を含むガラスにはリチウムが含まれず、すなわち、ガラスに含まれるLi
2Oは1モル%未満であり、他の実施形態では、Li
2Oは0.1モル%未満であり、他の実施形態では、LI
2Oはo0モル%である。いくつかの実施形態では、このようなガラスは、ヒ素、アンチモン、バリウムの少なくとも1つを含まず、すなわち、ガラスに含まれるAs
2O
3、Sb
2O
3、および/またはBaOは1モル%未満、他の実施形態では0.1モル%未満である。
【0057】
一般的な実施形態を説明のために示したが、上記の説明は、本願または付属の特許請求項の範囲を限定するものとみなすべきではない。したがって、当業者は各種の改良携帯、適応形態、代替形態を当業者は想起することができ、これらも本願と付属の特許請求項の精神と範囲から逸脱しない。