特許第6049229号(P6049229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6049229下部突出部を有する主磁極を備えた垂直磁気記録用磁気ヘッド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049229
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】下部突出部を有する主磁極を備えた垂直磁気記録用磁気ヘッド
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/31 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   G11B5/31 D
   G11B5/31 C
   G11B5/31 Q
【請求項の数】17
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2015-213618(P2015-213618)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2016-115384(P2016-115384A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2015年10月30日
(31)【優先権主張番号】14/567,590
(32)【優先日】2014年12月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500475649
【氏名又は名称】ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107559
【弁理士】
【氏名又は名称】星宮 勝美
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 芳高
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】種村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】荒木 宏典
(72)【発明者】
【氏名】池川 幸徳
【審査官】 川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−025859(JP,A)
【文献】 米国特許第8295008(US,B1)
【文献】 特開2014−035785(JP,A)
【文献】 米国特許第8520337(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/31 − 5/325
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対向する媒体対向面と、
前記記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生するコイルと、
前記コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって前記情報を前記記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
磁性材料よりなる記録シールドと、
非磁性材料よりなり、前記主磁極と前記記録シールドとの間に設けられたギャップ部と、
上面を有する基板とを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドであって、
前記コイル、主磁極、記録シールドおよびギャップ部は、前記基板の上面の上方に配置され、
前記記録シールドは、下部シールド、上部シールド、第1のサイドシールドおよび第2のサイドシールドを含み、
前記主磁極は、本体と、前記本体から前記基板の上面に向けて突出した下部突出部とを含み、
前記下部突出部は、前記媒体対向面から離れた位置にあり、
前記本体は、前記下部突出部よりも前記媒体対向面により近い位置にある前方部と、前記前方部よりも前記媒体対向面からより遠い位置にある後方部とを含み、
前記前方部は、前記媒体対向面に配置された端面と、前記基板の上面から最も遠い上面と、前記上面とは反対側の下端と、トラック幅方向の両側に位置する第1および第2の側面とを有し、
前記下部突出部は、前記媒体対向面に向いた前端面と、前記基板の上面に向いた下面と、トラック幅方向の両側に位置する第3および第4の側面とを有し、
前記下部シールドは、前記前方部に対して記録媒体の進行方向の後側に配置され、
前記上部シールドは、前記前方部に対して記録媒体の進行方向の前側に配置され、
前記第1および第2のサイドシールドは、前記前方部に対してトラック幅方向の両側に配置され、
前記ギャップ部は、前記下部シールド、前記第1のサイドシールドおよび前記第2のサイドシールドと前記主磁極との間に介在する第1の部分と、前記主磁極と前記上部シールドとの間に介在する第2の部分とを有し、
前記第1のサイドシールドは、前記媒体対向面に配置された第1の前端面と、前記第1の側面に対向する第1の側壁と、前記第1の側壁に連続し前記第1の前端面とは反対側に位置する第1の後端面とを有し、
前記第2のサイドシールドは、前記媒体対向面に配置された第2の前端面と、前記第2の側面に対向する第2の側壁と、前記第2の側壁に連続し前記第2の前端面とは反対側に位置する第2の後端面とを有し、
前記下部シールドは、前記基板の上面から最も遠い上面と、前記下部シールドの前記上面から窪んで前記下部突出部の一部を収容する収容部とを含み、
前記収容部は、前記下部突出部の前端面に対向する前方壁面と、前記第3の側面に対向する第3の側壁と、前記第4の側面に対向する第4の側壁とを有し、
前記第1の側壁は、前記基板の上面に最も近い第1の端縁を有し、
前記第2の側壁は、前記基板の上面に最も近い第2の端縁を有し、
前記第3の側壁は、前記基板の上面から最も遠い第3の端縁を有し、
前記第4の側壁は、前記基板の上面から最も遠い第4の端縁を有し、
前記第3の端縁は、前記第1の端縁に連続し、
前記第4の端縁は、前記第2の端縁に連続していることを特徴とする垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項2】
更に、前記下部シールドよりも前記媒体対向面からより遠い位置にあって、前記下部シールドに連続する非磁性層を備え、前記非磁性層は、前記下部突出部の他の一部を収容する凹部を有することを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項3】
トラック幅方向についての前記第3の端縁と前記第4の端縁の間隔は、前記媒体対向面から遠ざかるに従って大きくなっていることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項4】
前記下部突出部の前端面における任意の位置の前記媒体対向面からの距離は、前記任意の位置が前記基板の上面に近づくに従って大きくなっていることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項5】
前記下部シールドの前記上面における任意の位置の前記基板の上面からの距離は、前記任意の位置が前記媒体対向面から遠ざかるに従って小さくなっていることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項6】
前記第1の後端面と前記第2の後端面は、それぞれ、前記基板の上面から最も遠い端縁であって、前記媒体対向面に平行な端縁を有することを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項7】
前記第1の後端面の前記端縁と前記第2の後端面の前記端縁は、それぞれ、前記媒体対向面から30〜90nmの距離の範囲内に位置していることを特徴とする請求項6記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項8】
前記後方部と交差し且つ前記媒体対向面に平行な任意の断面において、前記後方部は、前記下部突出部よりも大きなトラック幅方向の幅を有することを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項9】
前記第1および第2の側壁と交差し且つ前記媒体対向面に平行な任意の断面において、トラック幅方向についての前記第1の側壁と前記第2の側壁の間隔は前記基板の上面に近づくに従って小さくなっており、トラック幅方向についての前記第1の側面と前記第2の側面の間隔は前記基板の上面に近づくに従って小さくなっていることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項10】
前記後方部は、前記第1の後端面に対向する第1の端面と、前記第2の後端面に対向する第2の端面とを有し、
前記第1の後端面が前記基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、前記第1の側壁が前記基板の上面に垂直な方向に対してなす角度よりも小さく、
前記第2の後端面が前記基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、前記第2の側壁が前記基板の上面に垂直な方向に対してなす角度よりも小さく、
前記第1の端面が前記基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、前記第1の側面が前記基板の上面に垂直な方向に対してなす角度よりも小さく、
前記第2の端面が前記基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、前記第2の側面が前記基板の上面に垂直な方向に対してなす角度よりも小さいことを特徴とする請求項9記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項11】
前記ギャップ部の前記第1の部分は、第1および第2のギャップ膜を有し、
前記第1のギャップ膜は、前記媒体対向面に最も近い端部であって、前記媒体対向面から離れた位置に配置された端部を有し、前記第1のギャップ膜の少なくとも一部が前記収容部内に位置し、
前記第2のギャップ膜は、前記媒体対向面に配置された端部を有し、前記第1のギャップ膜の上に積層されていることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項12】
前記ギャップ部の前記第1の部分は、第1および第2のギャップ膜を有し、
前記第1のギャップ膜は、前記媒体対向面に配置された端部を有し、前記第1のギャップ膜の一部が前記収容部内に位置し、
前記第2のギャップ膜は、前記媒体対向面に最も近い端部であって、前記媒体対向面から離れた位置に配置された端部を有し、前記第1のギャップ膜の上に積層され、前記第2のギャップ膜の少なくとも一部が前記収容部の上方に位置していることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項13】
請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法であって、
初期下部シールドを形成する工程と、
前記初期下部シールドを形成する工程の後で、前記第1のサイドシールドとなる予定の第1のサイドシールド予定部と除去される予定の第1の除去予定部とを含む第1の初期サイドシールドと、前記第2のサイドシールドとなる予定の第2のサイドシールド予定部と除去される予定の第2の除去予定部とを含む第2の初期サイドシールドを形成する工程と、
前記第1および第2の初期サイドシールドのうちの前記第1および第2のサイドシールド予定部を覆うマスクを形成する工程と、
前記第1および第2の初期サイドシールドのうちの前記第1および第2の除去予定部が除去されると共に、前記初期下部シールドに前記収容部が形成されるように、前記第1および第2の初期サイドシールドのうちの前記マスクによって覆われていない部分と前記初期下部シールドのうちの前記第1および第2の初期サイドシールドならびに前記マスクによって覆われていない部分とをエッチングするエッチング工程と、
前記エッチング工程の後で、前記ギャップ部の前記第1の部分を形成する工程と、
前記ギャップ部の前記第1の部分を形成する工程の後で、初期主磁極を形成する工程と、
前記初期主磁極を形成する工程の後で、前記ギャップ部の前記第2の部分を形成する工程と、
前記ギャップ部の前記第2の部分を形成する工程の後で、初期上部シールドを形成する工程と、
前記コイルを形成する工程と、
前記初期下部シールドが前記下部シールドになり、前記第1の初期サイドシールドが前記第1のサイドシールドになり、前記第2の初期サイドシールドが前記第2のサイドシールドになり、前記初期主磁極が前記主磁極になり、前記初期上部シールドが前記上部シールドになるように、前記媒体対向面を形成する工程とを備え、
前記第1のサイドシールド予定部は前記第1の側壁を有し、前記第1の除去予定部は前記第1の側壁に連続する第5の側壁を有し、前記第2のサイドシールド予定部は前記第2の側壁を有し、前記第2の除去予定部は前記第2の側壁に連続する第6の側壁を有することを特徴とする製造方法。
【請求項14】
前記垂直磁気記録用磁気ヘッドは、更に、前記下部シールドよりも前記媒体対向面からより遠い位置にあって前記下部シールドに連続する非磁性層を備え、前記非磁性層は、前記下部突出部の他の一部を収容する凹部を有し、
前記製造方法は、更に、前記第1の初期サイドシールドと前記第2の初期サイドシールドを形成する工程の前に、初期非磁性層を形成する工程を備え、
前記第1の初期サイドシールドと前記第2の初期サイドシールドは、前記初期下部シールドおよび前記初期非磁性層の上に形成され、
前記エッチング工程では、前記初期非磁性層に前記凹部が形成されて、前記初期非磁性層が前記非磁性層になるように、前記初期非磁性層のうちの前記第1および第2の初期サイドシールドによって覆われていない部分がエッチングされることを特徴とする請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
前記後方部と交差し且つ前記媒体対向面に平行な任意の断面において、前記後方部は、前記下部突出部よりも大きなトラック幅方向の幅を有し、
前記初期主磁極を形成する工程は、フレームめっき法によって、前記初期主磁極を形成することを特徴とする請求項13記載の製造方法。
【請求項16】
前記ギャップ部の前記第1の部分は、第1および第2のギャップ膜を有し、前記第1のギャップ膜は、前記媒体対向面に最も近い端部であって、前記媒体対向面から離れた位置に配置された端部を有し、前記第1のギャップ膜の少なくとも一部が前記収容部内に位置し、前記第2のギャップ膜は、前記媒体対向面に配置された端部を有し、
前記ギャップ部の前記第1の部分を形成する工程は、前記第1のギャップ膜を形成する工程と、前記第1のギャップ膜を覆うように前記第2のギャップ膜を形成する工程とを含むことを特徴とする請求項13記載の製造方法。
【請求項17】
前記ギャップ部の前記第1の部分は、第1および第2のギャップ膜を有し、前記第1のギャップ膜は、前記媒体対向面に配置された端部を有し、前記第1のギャップ膜の一部が前記収容部内に位置し、前記第2のギャップ膜は、前記媒体対向面に最も近い端部であって、前記媒体対向面から離れた位置に配置された端部を有し、前記第2のギャップ膜の少なくとも一部が前記収容部の上方に位置し、
前記ギャップ部の前記第1の部分を形成する工程は、前記第1のギャップ膜を形成する工程と、前記第1のギャップ膜の上に前記第2のギャップ膜を形成する工程とを含むことを特徴とする請求項13記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式によって記録媒体に情報を記録するために用いられる垂直磁気記録用磁気ヘッドに関し、特に、下部突出部を有する主磁極を備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置における記録方式には、信号磁化の向きを記録媒体の面内方向(長手方向)とする長手磁気記録方式と、信号磁化の向きを記録媒体の面に対して垂直な方向とする垂直磁気記録方式とがある。垂直磁気記録方式は、長手磁気記録方式に比べて、記録媒体の熱揺らぎの影響を受けにくく、高い線記録密度を実現することが可能であると言われている。
【0003】
一般的に、垂直磁気記録用磁気ヘッドとしては、長手磁気記録用磁気ヘッドと同様に、読み出し用の磁気抵抗効果素子(以下、MR(Magnetoresistive)素子とも記す。)を有する再生ヘッド部と、書き込み用の誘導型電磁変換素子を有する記録ヘッド部とを、基板の上面上に積層した構造のものが用いられる。記録ヘッド部は、記録媒体の面に対して垂直な方向の記録磁界を発生する主磁極を備えている。主磁極は、記録媒体に対向する媒体対向面に配置された端面を有している。
【0004】
主磁極は、例えば、一端部が媒体対向面に配置されたトラック幅規定部と、このトラック幅規定部の他端部に連結された幅広部とを有している。トラック幅規定部の上面の幅は、幅広部の上面の幅よりも小さい。媒体対向面におけるトラック幅規定部の上面の幅は、トラック幅を規定する。高記録密度化のためには、トラック幅は小さい方がよい。ここで、媒体対向面に垂直な方向についてのトラック幅規定部の長さをネックハイトと呼ぶ。記録ヘッド部の記録特性、例えば重ね書きの性能を表わすオーバーライト特性を向上させるために、ネックハイトは小さい方がよい。
【0005】
ハードディスク装置等の磁気ディスク装置に用いられる磁気ヘッドは、一般的に、スライダの形態を有している。スライダは、上記媒体対向面を有している。この媒体対向面は、空気流入端(リーディング端)と空気流出端(トレーリング端)とを有している。そして、リーディング端から媒体対向面と記録媒体との間に流入する空気流によって、スライダは記録媒体の表面からわずかに浮上するようになっている。
【0006】
ここで、基準の位置に対して、よりリーディング端に近い位置をリーディング側と定義し、基準の位置に対して、よりトレーリング端に近い位置をトレーリング側と定義する。リーディング側は、スライダに対する記録媒体の進行方向の後側である。トレーリング側は、スライダに対する記録媒体の進行方向の前側である。
【0007】
スライダにおいて、一般的に、磁気ヘッドは媒体対向面におけるトレーリング端近傍に配置される。磁気ディスク装置において、磁気ヘッドの位置決めは、例えばロータリーアクチュエータによって行なわれる。この場合、磁気ヘッドは、ロータリーアクチュエータの回転中心を中心とした円軌道に沿って記録媒体上を移動する。このような磁気ディスク装置では、磁気ヘッドのトラック横断方向の位置に応じて、スキューと呼ばれる、円形のトラックの接線に対する磁気ヘッドの傾きが生じる。
【0008】
特に、長手磁気記録方式に比べて記録媒体への書き込み能力が高い垂直磁気記録方式の磁気ディスク装置では、上述のスキューが生じると、あるトラックへの信号の記録時に、記録対象のトラックの近傍の1以上のトラックに記録された信号が消去されたり減衰したりする現象が生じる場合がある。この現象を、本出願では、望まれない消去と呼ぶ。望まれない消去には、隣接トラック消去(ATE)と広域トラック消去(WATE)が含まれる。高記録密度化のためには、望まれない消去の発生を抑制する必要がある。
【0009】
上述のようなスキューに起因した望まれない消去の発生を抑制する技術としては、例えば、特許文献1に記載されているように、媒体対向面において主磁極の端面の周りを囲むように配置された端面を有する記録シールド(以下、ラップアラウンドシールドと言う。)を設ける技術が知られている。このラップアラウンドシールドは、主磁極に対してリーディング側に配置された下部シールドと、主磁極に対してトレーリング側に配置された上部シールドと、主磁極のトラック幅方向の両側に配置された2つのサイドシールドとを含んでいる。ラップアラウンドシールドを備えた磁気ヘッドによれば、主磁極の端面より発生されてトラック幅方向に広がる磁束を記録シールドによって取り込むことができることから、望まれない消去の発生を抑制することができる。
【0010】
垂直磁気記録用磁気ヘッドでは、記録密度の一層の向上が求められている。ラップアラウンドシールドを備えた磁気ヘッドにおいて、記録密度の向上のためには、特に以下の2つの目標を達成することが重要である。第1の目標は、媒体対向面に配置された端面の形状が小さく、且つ媒体対向面の近傍において媒体対向面に平行な断面の面積が大きい主磁極を実現することである。第2の目標は、主磁極からラップアラウンドシールドへの磁束の漏れを少なくすることである。
【0011】
上記第1の目標を達成することが可能な主磁極の1つとしては、特許文献1に記載されているように、本体と、本体から基板の上面に向けて突出した下部突出部を有する主磁極が知られている。下部突出部は、媒体対向面から離れた位置にある。また、下部突出部は、媒体対向面に向いた前端面を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2014−35785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以下、下部突出部を有する主磁極と、ラップアラウンドシールドとを備えた磁気ヘッドにおける問題点について説明する。このような磁気ヘッドを製造する従来の一般的な方法では、下部シールドの形成後、フォトリソグラフィによって形成されたマスクを用いて、フレームめっき法によって主磁極を形成していた。
【0014】
この従来の製造方法では、2つのサイドシールドと下部突出部の位置合わせは、フォトリソグラフィによって形成されたマスクの位置精度に依存する。この製造方法では、2つのサイドシールドと下部突出部との位置ずれが発生する。この製造方法によって製造される従来の磁気ヘッドでは、下部突出部の前端面を媒体対向面の近くに配置した構造にすると、上記の位置ずれが生じたときに、下部突出部は一方のサイドシールドに近づくため、下部突出部から一方のサイドシールドへの磁束の漏れが生じる。従来は、この磁束の漏れを防止するため、下部突出部の前端面を、媒体対向面から0.5μm以上離していた。
【0015】
これらのことから、従来は、記録密度の向上のために特に重要な前述の2つの目標を同時に達成することができなかった。
【0016】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、下部突出部を有する主磁極と記録シールドとを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドであって、記録密度を向上できるようにした垂直磁気記録用磁気ヘッドおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面と、コイルと、主磁極と、磁性材料よりなる記録シールドと、ギャップ部と、上面を有する基板とを備えている。コイルは、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。主磁極は、コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。ギャップ部は、非磁性材料よりなり、主磁極と記録シールドとの間に設けられている。コイル、主磁極、記録シールドおよびギャップ部は、基板の上面の上方に配置されている。
【0018】
記録シールドは、下部シールド、上部シールド、第1のサイドシールドおよび第2のサイドシールドを含んでいる。主磁極は、本体と、本体から基板の上面に向けて突出した下部突出部とを含んでいる。下部突出部は、媒体対向面から離れた位置にある。本体は、下部突出部よりも媒体対向面により近い位置にある前方部と、前方部よりも媒体対向面からより遠い位置にある後方部とを含んでいる。前方部は、媒体対向面に配置された端面と、基板の上面から最も遠い上面と、上面とは反対側の下端と、トラック幅方向の両側に位置する第1および第2の側面とを有している。下部突出部は、媒体対向面に向いた前端面と、基板の上面に向いた下面と、トラック幅方向の両側に位置する第3および第4の側面とを有している。
【0019】
下部シールドは、前方部に対して記録媒体の進行方向の後側に配置されている。上部シールドは、前方部に対して記録媒体の進行方向の前側に配置されている。第1および第2のサイドシールドは、前方部に対してトラック幅方向の両側に配置されている。ギャップ部は、下部シールド、第1のサイドシールドおよび第2のサイドシールドと主磁極との間に介在する第1の部分と、主磁極と上部シールドとの間に介在する第2の部分とを有している。
【0020】
第1のサイドシールドは、媒体対向面に配置された第1の前端面と、第1の側面に対向する第1の側壁と、第1の側壁に連続し第1の前端面とは反対側に位置する第1の後端面とを有している。第2のサイドシールドは、媒体対向面に配置された第2の前端面と、第2の側面に対向する第2の側壁と、第2の側壁に連続し第2の前端面とは反対側に位置する第2の後端面とを有している。
【0021】
下部シールドは、基板の上面から最も遠い上面と、下部シールドの上面から窪んで下部突出部の一部を収容する収容部とを含んでいる。収容部は、下部突出部の前端面に対向する前方壁面と、第3の側面に対向する第3の側壁と、第4の側面に対向する第4の側壁とを有している。第1の側壁は、基板の上面に最も近い第1の端縁を有している。第2の側壁は、基板の上面に最も近い第2の端縁を有している。第3の側壁は、基板の上面から最も遠い第3の端縁を有している。第4の側壁は、基板の上面から最も遠い第4の端縁を有している。第3の端縁は、第1の端縁に連続している。第4の端縁は、第2の端縁に連続している。
【0022】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドは、更に、下部シールドよりも媒体対向面からより遠い位置にあって、下部シールドに連続する非磁性層を備えていてもよい。非磁性層は、下部突出部の他の一部を収容する凹部を有している。
【0023】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、トラック幅方向についての第3の端縁と第4の端縁の間隔は、媒体対向面から遠ざかるに従って大きくなっていてもよい。
【0024】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、下部突出部の前端面における任意の位置の媒体対向面からの距離は、任意の位置が基板の上面に近づくに従って大きくなっていてもよい。
【0025】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、下部シールドの上面における任意の位置の基板の上面からの距離は、任意の位置が媒体対向面から遠ざかるに従って小さくなっていてもよい。
【0026】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、第1の後端面と第2の後端面は、それぞれ、基板の上面から最も遠い端縁であって、媒体対向面に平行な端縁を有していてもよい。第1の後端面の端縁と第2の後端面の端縁は、それぞれ、媒体対向面から30〜90nmの距離の範囲内に位置していてもよい。
【0027】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、後方部と交差し且つ媒体対向面に平行な任意の断面において、後方部は、下部突出部よりも大きなトラック幅方向の幅を有していてもよい。
【0028】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、第1および第2の側壁と交差し且つ媒体対向面に平行な任意の断面において、トラック幅方向についての第1の側壁と第2の側壁の間隔は基板の上面に近づくに従って小さくなっていてもよく、トラック幅方向についての第1の側面と第2の側面の間隔は基板の上面に近づくに従って小さくなっていてもよい。この場合、後方部は、第1の後端面に対向する第1の端面と、第2の後端面に対向する第2の端面とを有していてもよい。第1の後端面が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、第1の側壁が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度よりも小さくてもよい。第2の後端面が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、第2の側壁が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度よりも小さくてもよい。第1の端面が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、第1の側面が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度よりも小さくてもよい。第2の端面が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、第2の側面が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度よりも小さくてもよい。
【0029】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、ギャップ部の第1の部分は、第1および第2のギャップ膜を有していてもよい。この場合、第1のギャップ膜は、媒体対向面に最も近い端部であって、媒体対向面から離れた位置に配置された端部を有し、第1のギャップ膜の少なくとも一部が収容部内に位置していてもよい。また、第2のギャップ膜は、媒体対向面に配置された端部を有し、第1のギャップ膜の上に積層されていてもよい。
【0030】
あるいは、第1のギャップ膜は、媒体対向面に配置された端部を有し、第1のギャップ膜の一部が収容部内に位置していてもよい。また、第2のギャップ膜は、媒体対向面に最も近い端部であって、媒体対向面から離れた位置に配置された端部を有し、第1のギャップ膜の上に積層され、第2のギャップ膜の少なくとも一部が収容部の上方に位置していてもよい。
【0031】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法は、
初期下部シールドを形成する工程と、
初期下部シールドを形成する工程の後で、第1のサイドシールドとなる予定の第1のサイドシールド予定部と除去される予定の第1の除去予定部とを含む第1の初期サイドシールドと、第2のサイドシールドとなる予定の第2のサイドシールド予定部と除去される予定の第2の除去予定部とを含む第2の初期サイドシールドを形成する工程と、
第1および第2の初期サイドシールドのうちの第1および第2のサイドシールド予定部を覆うマスクを形成する工程と、
第1および第2の初期サイドシールドのうちの第1および第2の除去予定部が除去されると共に、初期下部シールドに収容部が形成されるように、第1および第2の初期サイドシールドのうちのマスクによって覆われていない部分と初期下部シールドのうちの第1および第2の初期サイドシールドならびにマスクによって覆われていない部分とをエッチングするエッチング工程と、
エッチング工程の後で、ギャップ部の第1の部分を形成する工程と、
ギャップ部の第1の部分を形成する工程の後で、初期主磁極を形成する工程と、
初期主磁極を形成する工程の後で、ギャップ部の第2の部分を形成する工程と、
ギャップ部の第2の部分を形成する工程の後で、初期上部シールドを形成する工程と、
コイルを形成する工程と、
初期下部シールドが下部シールドになり、第1の初期サイドシールドが第1のサイドシールドになり、第2の初期サイドシールドが第2のサイドシールドになり、初期主磁極が主磁極になり、初期上部シールドが上部シールドになるように、媒体対向面を形成する工程とを備えている。
【0032】
第1のサイドシールド予定部は、第1の側壁を有している。第1の除去予定部は、第1の側壁に連続する第5の側壁を有している。第2のサイドシールド予定部は、第2の側壁を有している。第2の除去予定部は、第2の側壁に連続する第6の側壁を有している。
【0033】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法において、垂直磁気記録用磁気ヘッドは、更に、下部シールドよりも媒体対向面からより遠い位置にあって下部シールドに連続する非磁性層を備えていてもよい。非磁性層は、下部突出部の他の一部を収容する凹部を有している。また、本発明の製造方法は、更に、第1の初期サイドシールドと第2の初期サイドシールドを形成する工程の前に、初期非磁性層を形成する工程を備えていてもよい。この場合、第1の初期サイドシールドと第2の初期サイドシールドは、初期下部シールドおよび初期非磁性層の上に形成される。また、エッチング工程では、初期非磁性層に凹部が形成されて、初期非磁性層が非磁性層になるように、初期非磁性層のうちの第1および第2の初期サイドシールドによって覆われていない部分がエッチングされる。
【0034】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法において、後方部と交差し且つ媒体対向面に平行な任意の断面において、後方部は、下部突出部よりも大きなトラック幅方向の幅を有していてもよい。また、初期主磁極を形成する工程は、フレームめっき法によって、初期主磁極を形成してもよい。
【0035】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法において、ギャップ部の第1の部分は、第1および第2のギャップ膜を有していてもよい。この場合、第1のギャップ膜は、媒体対向面に最も近い端部であって、媒体対向面から離れた位置に配置された端部を有し、第1のギャップ膜の少なくとも一部が収容部内に位置していてもよい。また、第2のギャップ膜は、媒体対向面に配置された端部を有していてもよい。また、ギャップ部の第1の部分を形成する工程は、第1のギャップ膜を形成する工程と、第1のギャップ膜を覆うように第2のギャップ膜を形成する工程とを含んでいてもよい。
【0036】
あるいは、第1のギャップ膜は、媒体対向面に配置された端部を有し、第1のギャップ膜の一部が収容部内に位置していてもよい。また、第2のギャップ膜は、媒体対向面に最も近い端部であって、媒体対向面から離れた位置に配置された端部を有し、第2のギャップ膜の少なくとも一部が収容部の上方に位置していてもよい。また、ギャップ部の第1の部分を形成する工程は、第1のギャップ膜を形成する工程と、第1のギャップ膜の上に第2のギャップ膜を形成する工程とを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0037】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドおよびその製造方法では、媒体対向面に配置された端面の形状が小さく、且つ媒体対向面の近傍において媒体対向面に平行な断面の面積が大きい主磁極を実現するという第1の目標と、主磁極から記録シールドへの磁束の漏れを少なくするという第2の目標を、同時に達成することができ、その結果、記録密度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極、下部シールド、第1のサイドシールドおよび第2のサイドシールドを示す斜視図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極を示す斜視図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドの要部を示す断面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極、第1のサイドシールドおよび第2のサイドシールドを示す平面図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおける下部シールド、第1のサイドシールド、第2のサイドシールドおよび非磁性層を示す斜視図である。
図6】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。
図7】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
図8】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1の部分を示す平面図である。
図9】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第2の部分を示す平面図である。
図10A】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法における一工程を示す平面図である。
図10B】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法における一工程を示す断面図である。
図11A図10Aおよび図10Bに示した工程に続く工程を示す平面図である。
図11B図10Aおよび図10Bに示した工程に続く工程を示す断面図である。
図12A図11Aおよび図11Bに示した工程に続く工程を示す平面図である。
図12B図11Aおよび図11Bに示した工程に続く工程を示す断面図である。
図13A図12Aおよび図12Bに示した工程に続く工程を示す平面図である。
図13B図12Aおよび図12Bに示した工程に続く工程を示す断面図である。
図13C図12Aおよび図12Bに示した工程に続く工程を示す断面図である。
図13D図12Aおよび図12Bに示した工程に続く工程を示す斜視図である。
図14A図13Aないし図13Dに示した工程に続く工程を示す平面図である。
図14B図13Aないし図13Dに示した工程に続く工程を示す断面図である。
図14C図13Aないし図13Dに示した工程に続く工程を示す断面図である。
図14D図13Aないし図13Dに示した工程に続く工程を示す斜視図である。
図15A図14Aないし図14Dに示した工程に続く工程を示す平面図である。
図15B図14Aないし図14Dに示した工程に続く工程を示す断面図である。
図16A図15Aおよび図15Bに示した工程に続く工程を示す平面図である。
図16B図15Aおよび図15Bに示した工程に続く工程を示す断面図である。
図17A図16Aおよび図16Bに示した工程に続く工程を示す平面図である。
図17B図16Aおよび図16Bに示した工程に続く工程を示す断面図である。
図18】本発明の第2の実施の形態に係る磁気ヘッドの要部を示す断面図である。
図19】本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極を示す斜視図である。
図20】本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドの要部を示す断面図である。
図21】本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極、第1のサイドシールドおよび第2のサイドシールドを示す平面図である。
図22】本発明の第4の実施の形態に係る磁気ヘッドの要部を示す断面図である。
図23】本発明の第4の実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極、第1のサイドシールドおよび第2のサイドシールドを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図6ないし図9を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドの構成について説明する。図6は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。図6において記号Tで示す矢印は、記録媒体の進行方向を表している。図7は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。図8は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1の部分を示す平面図である。図9は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第2の部分を示す平面図である。図7ないし図9において記号TWで示す矢印は、トラック幅方向を表している。
【0040】
図6に示したように、本実施の形態に係る垂直磁気記録用磁気ヘッド(以下、単に磁気ヘッドと記す。)は、記録媒体90に対向する媒体対向面80を備えている。また、図6および図7に示したように、磁気ヘッドは、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al23・TiC)等のセラミック材料よりなり、上面1aを有する基板1と、この基板1の上面1a上に配置されたアルミナ(Al23)等の絶縁材料よりなる絶縁層2と、この絶縁層2の上に配置された磁性材料よりなる第1の再生シールド層3と、第1の再生シールド層3を覆うように配置された絶縁膜である第1の再生シールドギャップ膜4と、この第1の再生シールドギャップ膜4の上に配置された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子5と、このMR素子5の上に配置された絶縁膜である第2の再生シールドギャップ膜6と、この第2の再生シールドギャップ膜6の上に配置された磁性材料よりなる第2の再生シールド層7とを備えている。
【0041】
MR素子5の一端部は、媒体対向面80に配置されている。MR素子5には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。
【0042】
第1の再生シールド層3から第2の再生シールド層7までの部分は、再生ヘッド部8を構成する。磁気ヘッドは、更に、第2の再生シールド層7の上に配置された非磁性材料よりなる非磁性層71と、非磁性層71の上に配置された磁性材料よりなる中間シールド層72と、中間シールド層72の上に配置された非磁性材料よりなる非磁性層73と、非磁性層73の上に配置された記録ヘッド部9とを備えている。中間シールド層72は、記録ヘッド部9で発生する磁界からMR素子5をシールドする機能を有している。非磁性層71,73は、例えばアルミナによって形成されている。
【0043】
記録ヘッド部9は、コイルと、主磁極13と、記録シールド16と、ギャップ部17とを備えている。コイルは、記録媒体90に記録する情報に応じた磁界を発生する。コイルは、第1の部分10と第2の部分20とを含んでいる。第1の部分10と第2の部分20は、いずれも、銅等の導電材料によって形成されている。第1の部分10と第2の部分20は、直列または並列に接続されている。主磁極13は、媒体対向面80に配置された端面13aを有し、コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体90に記録するための記録磁界を発生する。図6は、主磁極13の端面13aと交差し、媒体対向面80および基板1の上面1aに垂直な断面を示している。
【0044】
図7に示したように、記録シールド16は、下部シールド16Aと、上部シールド16Bと、第1のサイドシールド16Cと、第2のサイドシールド16Dとを含んでいる。下部シールド16Aは、主磁極13に対して記録媒体90の進行方向Tの後側(リーディング側)に配置されている。上部シールド16Bは、主磁極13に対して記録媒体90の進行方向Tの前側(トレーリング側)に配置されている。第1および第2のサイドシールド16C,16Dは、主磁極13に対してトラック幅方向TWの両側に配置されて、下部シールド16Aと上部シールド16Bを磁気的に連結している。
【0045】
図6および図7に示したように、下部シールド16Aは、媒体対向面80に配置された前端面16Aaと、基板1の上面1aから最も遠い上面16Abとを有している。上部シールド16Bは、媒体対向面80に配置された前端面16Baと、基板1の上面1aから最も遠い上面16Bbと、前端面16Baと上面16Bbとを接続する接続面16Bcとを有している。接続面16Bcにおける任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから遠ざかるに従って大きくなっている。図7に示したように、第1のサイドシールド16Cは、媒体対向面80に配置された第1の前端面16Caを有している。第2のサイドシールド16Dは、媒体対向面80に配置された第2の前端面16Daを有している。
【0046】
前端面16Aaは、主磁極13の端面13aに対して記録媒体90の進行方向Tの後側に配置されている。前端面16Baは、主磁極13の端面13aに対して記録媒体90の進行方向Tの前側に配置されている。第1および第2の前端面16Ca,16Daは、主磁極13の端面13aに対してトラック幅方向TWの両側に配置されている。媒体対向面80において、前端面16Aa,16Ba,16Ca,16Daは、主磁極13の端面13aの周りを囲むように配置されている。
【0047】
記録シールド16は、磁性材料によって形成されている。記録シールド16の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0048】
ギャップ部17は、主磁極13と記録シールド16との間に設けられている。ギャップ部17は、下部シールド16A、第1のサイドシールド16Cおよび第2のサイドシールド16Dと主磁極13との間に介在する第1の部分と、主磁極13と上部シールド16Bとの間に介在する第2の部分とを有している。
【0049】
記録ヘッド部9は、更に、磁性層31,32,33,34,41,42を備えている。磁性層31〜34,41,42は、いずれも磁性材料によって形成されている。磁性層31〜34,41,42の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。磁性層31は、非磁性層73の上に配置されている。磁性層31は、媒体対向面80に向いた端面を有し、この端面は、媒体対向面80から離れた位置に配置されている。記録ヘッド部9は、更に、磁性層31の周囲において非磁性層73の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層51を備えている。絶縁層51は、例えばアルミナによって形成されている。
【0050】
磁性層32は、媒体対向面80の近傍において磁性層31および絶縁層51の上に配置されている。磁性層32は、媒体対向面80に配置された端面を有している。磁性層33は、磁性層32よりも媒体対向面80からより遠い位置において磁性層31の上に配置されている。
【0051】
記録ヘッド部9は、更に、第1の部分10を磁性層31〜33から隔てる絶縁材料よりなる絶縁膜52と、第1の部分10の巻線間ならびに第1の部分10および磁性層32の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層53とを備えている。第1の部分10、磁性層32,33、絶縁膜52および絶縁層53の上面は平坦化されている。絶縁膜52および絶縁層53は、例えばアルミナによって形成されている。
【0052】
下部シールド16Aは、磁性層32の上に配置されている。磁性層34は、磁性層33の上に配置されている。記録ヘッド部9は、更に、絶縁材料よりなる絶縁層54と、非磁性材料よりなる非磁性層55とを備えている。絶縁層54は、第1の部分10、絶縁膜52および絶縁層53の上面の上と、磁性層32の上面の一部の上に配置されている。非磁性層55は、下部シールド16Aおよび磁性層34の周囲において、絶縁層54の上に配置されている。絶縁層54および非磁性層55は、例えばアルミナによって形成されている。
【0053】
第1および第2のサイドシールド16C,16Dは、下部シールド16Aの上に配置され、下部シールド16Aの上面16Abに接している。第1および第2のサイドシールド16C,16Dは、それぞれ、側壁と後端面を有している。第1および第2のサイドシールド16C,16Dのそれぞれの側壁と後端面については、後で詳しく説明する。
【0054】
記録ヘッド部9は、更に、非磁性材料よりなる第1のギャップ層18を備えている。第1のギャップ層18は、第1および第2のサイドシールド16C,16Dの側壁と後端面、下部シールド16Aの上面16Abおよび非磁性層55の上面に沿って配置されている。第1のギャップ層18を構成する非磁性材料は、絶縁材料でもよいし、非磁性金属材料でもよい。第1のギャップ層18を構成する絶縁材料としては、例えばアルミナが用いられる。第1のギャップ層18を構成する非磁性金属材料としては、例えばRuが用いられる。第1のギャップ層18の厚みは、例えば40〜100nmの範囲内である。
【0055】
主磁極13は、下部シールド16Aおよび非磁性層55と主磁極13との間に第1のギャップ層18が介在するように、下部シールド16Aおよび非磁性層55の上に配置されている。また、図7に示したように、主磁極13と第1および第2のサイドシールド16C,16Dとの間にも、第1のギャップ層18が介在している。ギャップ部17の第1の部分は、第1のギャップ層18のうち、下部シールド16A、第1のサイドシールド16Cおよび第2のサイドシールド16Dと主磁極13との間に介在する部分によって構成されている。
【0056】
媒体対向面80から離れた位置において、主磁極13は、磁性層34の上面に接している。主磁極13は、金属磁性材料によって形成されている。主磁極13の材料としては、例えば、NiFe、CoNiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。主磁極13の形状については、後で更に詳しく説明する。
【0057】
記録ヘッド部9は、更に、主磁極13、第1のサイドシールド16Cおよび第2のサイドシールド16Dの周囲に配置された非磁性材料よりなる非磁性層60を備えている。なお、非磁性層60は、後で説明する図4に示されている。非磁性層60は、例えばアルミナによって形成されている。
【0058】
記録ヘッド部9は、更に、主磁極13の上面のうちの媒体対向面80から離れた第1の部分の上に配置された非磁性金属材料よりなる非磁性金属層58と、この非磁性金属層58の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層59とを備えている。非磁性金属層58は、例えばRu、NiCrまたはNiCuによって形成されている。絶縁層59は、例えばアルミナによって形成されている。
【0059】
記録ヘッド部9は、更に、非磁性材料よりなり、主磁極13、非磁性金属層58および絶縁層59を覆うように配置された第2のギャップ層19を備えている。第2のギャップ層19の材料は、アルミナ等の非磁性絶縁材料でもよいし、Ru、NiCu、Ta、W、NiB、NiP等の非磁性導電材料でもよい。
【0060】
上部シールド16Bは、サイドシールド16C,16Dおよび第2のギャップ層19の上に配置され、サイドシールド16C,16Dおよび第2のギャップ層19の上面に接している。ギャップ部17の第2の部分は、第2のギャップ層19のうち、主磁極13と上部シールド16Bとの間に介在する部分によって構成されている。
【0061】
媒体対向面80において、上部シールド16Bの前端面16Baの一部は、主磁極13の端面13aに対して、第2のギャップ層19の厚みによる所定の間隔を開けて配置されている。第2のギャップ層19の厚みは、5〜60nmの範囲内であることが好ましく、例えば30〜60nmの範囲内である。主磁極13の端面13aは、第2のギャップ層19に隣接する辺を有し、この辺はトラック幅を規定している。
【0062】
磁性層41は、主磁極13の上面のうちの媒体対向面80から離れた第2の部分の上に配置されている。主磁極13の上面の第2の部分は、主磁極13の上面の第1の部分に対して、媒体対向面80からより遠い位置にある。
【0063】
記録ヘッド部9は、更に、上部シールド16B、第2のギャップ層19および磁性層41と第2の部分20との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁膜61と、第2の部分20の巻線間に配置された絶縁材料よりなる絶縁層62と、第2の部分20および上部シールド16Bの周囲に配置された非磁性材料よりなる図示しない非磁性層とを備えている。第2の部分20、上部シールド16B、磁性層41、絶縁膜61、絶縁層62および図示しない非磁性層の上面は平坦化されている。記録ヘッド部9は、更に、第2の部分20、絶縁膜61および絶縁層62の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層63を備えている。絶縁膜61、絶縁層62,63および図示しない非磁性層は、例えばアルミナによって形成されている。
【0064】
磁性層42は、上部シールド16B、磁性層41および絶縁層63の上に配置され、上部シールド16Bと磁性層41とを接続している。磁性層42は、媒体対向面80に向いた端面を有し、この端面は、媒体対向面80から離れた位置に配置されている。磁性層42の端面における任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから遠ざかるに従って大きくなっている。
【0065】
記録ヘッド部9は、更に、磁性層42の周囲に配置された非磁性材料よりなる非磁性層64を備えている。非磁性層64の一部は、上部シールド16Bの接続面16Bcおよび媒体対向面80に向いた磁性層42の端面と媒体対向面80との間に介在している。非磁性層64は、例えばアルミナによって形成されている。
【0066】
磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、記録ヘッド部9を覆うように配置された保護層70を備えている。保護層70は、例えば、アルミナ等の無機絶縁材料によって形成されている。
【0067】
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、媒体対向面80と再生ヘッド部8と記録ヘッド部9とを備えている。再生ヘッド部8と記録ヘッド部9は、基板1の上に積層されている。記録ヘッド部9は、再生ヘッド部8に対して、記録媒体90の進行方向Tの前側に配置されている。
【0068】
記録ヘッド部9は、第1および第2の部分10,20を含むコイルと、主磁極13と、記録シールド16と、ギャップ部17と、磁性層31〜34,41,42とを備えている。コイル、主磁極13、記録シールド16およびギャップ部17は、基板1の上面1aの上方に配置されている。記録シールド16は、下部シールド16Aと、上部シールド16Bと、第1のサイドシールド16Cと、第2のサイドシールド16Dとを含んでいる。ギャップ部17は、第1のギャップ層18の一部によって構成される第1の部分と、第2のギャップ層19の一部によって構成される第2の部分とを有している。第1および第2のギャップ層18,19は、いずれも非磁性材料によって形成されていることから、ギャップ部17は、非磁性材料によって形成されている。
【0069】
磁性層31〜34は、主磁極13に対して記録媒体90の進行方向Tの後側に配置されて、第1の帰磁路部を構成している。図6に示したように、第1の帰磁路部(磁性層31〜34)は、主磁極13、ギャップ部17の第1の部分(ギャップ層18)、記録シールド16および第1の帰磁路部によって囲まれた第1の空間が形成されるように、主磁極13のうちの媒体対向面80から離れた部分と記録シールド16とを接続している。コイルの第1の部分10は、第1の空間を通過している。
【0070】
磁性層41,42は、主磁極13に対して記録媒体90の進行方向Tの前側に配置されて、第2の帰磁路部を構成している。第2の帰磁路部(磁性層41,42)は、主磁極13、ギャップ部17の第2の部分(ギャップ層19)、記録シールド16および第2の帰磁路部によって囲まれた第2の空間が形成されるように、主磁極13のうちの媒体対向面80から離れた部分と記録シールド16とを接続している。コイルの第2の部分20は、第2の空間を通過している。
【0071】
記録シールド16は、磁気ヘッドの外部から磁気ヘッドに印加された外乱磁界を取り込む。これにより、外乱磁界が主磁極13に集中して取り込まれることによって記録媒体90に対して誤った記録が行なわれることを防止することができる。また、記録シールド16は、主磁極13の端面13aより発生されて記録媒体90の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体90に達することを阻止する機能を有している。また、記録シールド16、第1の帰磁路部(磁性層31〜34)および第2の帰磁路部(磁性層41,42)は、主磁極13の端面13aより発生されて、記録媒体90を磁化した磁束を、主磁極13に還流させる機能を有している。
【0072】
以下、図8および図9を参照して、コイルの第1および第2の部分10,20について詳しく説明する。図8は、第1の部分10を示す平面図である。第1の部分10は、磁性層33の周りに約2回巻かれている。第1の部分10は、第1の空間内のうち特に磁性層32と磁性層33との間を通過するように延びる部分を含んでいる。また、第1の部分10は、第2の部分20に電気的に接続されたコイル接続部10Eを有している。
【0073】
図9は、第2の部分20を示す平面図である。第2の部分20は、磁性層41の周りに約2回巻かれている。第2の部分20は、第2の空間内のうち特に上部シールド16Bと磁性層41との間を通過するように延びる部分を含んでいる。また、第2の部分20は、第1の部分10のコイル接続部10Eに電気的に接続されたコイル接続部20Sを有している。コイル接続部20Sは、第2の部分20と第1の部分10との間の複数の層を貫通する柱状の図示しない第1および第2の接続層を介してコイル接続部10Eに電気的に接続されている。第1および第2の接続層は、コイル接続部10Eの上に順に積層されている。コイル接続部20Sは、第2の接続層の上に配置されている。第1および第2の接続層は、銅等の導電材料によって形成されている。図8および図9に示した例では、第1の部分10と第2の部分20は、直列に接続されている。
【0074】
次に、主磁極13、下部シールド16A、第1のサイドシールド16C、第2のサイドシールド16Dおよび非磁性層55について詳しく説明する。始めに、図1ないし図4を参照して、主磁極13の形状について説明する。図1は、主磁極13、下部シールド16Aおよびサイドシールド16C,16Dを分解して示す斜視図である。図1において、符号Lを付した二点鎖線の直線は、主磁極13の端面13aを通り、基板1の上面1aに垂直な仮想の直線を表している。図1では、主磁極13、下部シールド16Aおよびサイドシールド16C,16Dを、仮想の直線Lに沿って互いに離して描いている。図2は、主磁極13を示す斜視図である。図3は、磁気ヘッドの要部を示す断面図である。図4は、主磁極13およびサイドシールド16C,16Dを示す平面図である。
【0075】
図1ないし図3に示したように、主磁極13は、本体15と、本体15から基板1の上面1a(図6および図7参照)に向けて突出した下部突出部14とを含んでいる。なお、図3では、本体15と下部突出部14との境界を破線で示している。図3に示したように、下部突出部14は、媒体対向面80から離れた位置にある。また、図1図2および図4に示したように、本体15は、下部突出部14よりも媒体対向面80により近い位置にある前方部15Aと、前方部15Aよりも媒体対向面80からより遠い位置にある後方部15Bとを含んでいる。図1および図4では、前方部15Aと後方部15Bの境界を破線で示している。
【0076】
図1図2および図4に示したように、前方部15Aは、媒体対向面80に配置された端面15Aaと、基板1の上面1a(図6および図7参照)から最も遠い上面15Abと、上面15Abとは反対側の下端15Acと、トラック幅方向TWの両側に位置する第1の側面S1および第2の側面S2とを有している。前方部15Aの端面15Aaは、主磁極13の端面13aでもある。前方部15Aの端面15Aaは、第2のギャップ層19に隣接する第1の辺と、第1の辺の一端部に接続された第2の辺と、第1の辺の他端部に接続された第3の辺とを有している。第1の辺はトラック幅を規定する。記録媒体90に記録される記録ビットの端部の位置は、第1の辺の位置によって決まる。前方部15Aの端面15Aaのトラック幅方向TWの幅は、第1の辺から離れるに従って、すなわち基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。第2の辺と第3の辺がそれぞれ基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、例えば7°〜17°の範囲内であり、10°〜15°の範囲内であることが好ましい。第1の辺の長さは、例えば0.05〜0.20μmの範囲内である。
【0077】
図1に示したように、前方部15Aの上面15Abは、媒体対向面80に近い順に配置された傾斜部と平坦部を含んでいる。傾斜部は、媒体対向面80に配置された第1の端部と、その反対側の第2の端部とを有している。平坦部は、傾斜部の第2の端部に接続されている。傾斜部は、その第2の端部がその第1の端部に対して記録媒体90の進行方向T(図3参照)の前側に配置されるように傾斜している。平坦部は、実質的に媒体対向面80に垂直な方向に延在している。上面15Abのトラック幅方向TWの幅は、図1および図4に示したように媒体対向面80から離れるに従って徐々に大きくなっていてもよいし、媒体対向面80からの距離によらずにほぼ一定であってもよい。
【0078】
前方部15Aの下端15Acは、媒体対向面80に配置された第1の端部と、その反対側の第2の端部とを有している。下端15Acは、その第2の端部がその第1の端部に対して記録媒体90の進行方向T(図3参照)の後側に配置されるように傾斜している。また、図2に示した例では、前方部15Aの下端15Acは、媒体対向面80に近い順に配置されたエッジ部分と平面部分を含んでいる。エッジ部分は、2つの面が交わってできるエッジである。平面部分は、2つの面を連結する面である。なお、下端15Acは、その全体が平面部分によって構成されていてもよい。
【0079】
前方部15Aの第1および第2の側面S1,S2は、それぞれ、複数の平面によって構成されている。また、第1および第2の側面S1,S2は、それぞれ、基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾斜している。第1および第2の側面S1,S2については、後で詳しく説明する。
【0080】
図1図2および図4に示したように、後方部15Bは、媒体対向面80に向いた第1の端面15Ba1および第2の端面15Ba2と、基板1の上面1a(図6および図7参照)から最も遠い上面15Bbと、トラック幅方向TWの両側に位置する第5の側面S5および第6の側面S6とを有している。第1の端面15Ba1は、第1の側面S1と第5の側面S5とを接続している。第2の端面15Ba2は、第2の側面S2と第6の側面S6とを接続している。
【0081】
第1および第2の端面15Ba1,15Ba2は、第1および第2の側面S1,S2に比べて、基板1の上面1aに対して垂直に近い。第1および第2の端面15Ba1,15Ba2については、後で詳しく説明する。
【0082】
後方部15Bの上面15Bbは、前方部15Aの上面15Abの平坦部に連続している。上面15Bbは、実質的に媒体対向面80に垂直な方向に延在している。図1および図4に示したように、上面15Bbのトラック幅方向TWの幅は、前方部15Aとの境界位置では前方部15Aの上面15Abのトラック幅方向TWの幅よりも大きく、媒体対向面80から遠ざかるに従って大きくなっている。
【0083】
後方部15Bの第5および第6の側面S5,S6は、第1および第2の端面15Ba1,15Ba2と同様に、前方部15Aの第1および第2の側面S1,S2に比べて、基板1の上面1aに対して垂直に近い。また、第5および第6の側面S5,S6と交差し且つ媒体対向面80に平行な任意の断面において、トラック幅方向TWについての第5の側面S5と第6の側面S6の間隔は、基板1の上面1aからの距離に関わらずに一定であってもよいし、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっていてもよいし、基板1の上面1aに近づくに従って大きくなっていてもよい。
【0084】
図2および図3に示したように、下部突出部14は、媒体対向面80に向いた前端面14aと、基板1の上面1aに向いた下面14bと、トラック幅方向TWの両側に位置する第3の側面S3および第4の側面S4とを有している。図2に示したように、後方部15Bと交差し且つ媒体対向面80に平行な任意の断面において、後方部15Bは、下部突出部14よりも大きなトラック幅方向TWの幅を有している。
【0085】
図3に示したように、下部突出部14の前端面14aは、媒体対向面80に対して傾斜している。下部突出部14の前端面14aにおける任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aに近づくに従って大きくなっている。前端面14aが媒体対向面80に垂直な方向に対してなす角度は、前方部15Aの下端15Acが同方向に対してなす角度よりも大きい。また、前端面14aは、媒体対向面80に最も近い端部を有し、この端部は、前方部15Aの下端15Acの第2の端部に接続されている。媒体対向面80から前端面14aの上記端部までの距離は、例えば30〜90nmの範囲内である。図2に示したように、前端面14aのトラック幅方向TWの幅は、前方部15Aとの境界位置では前方部15Aの下端15Acのトラック幅方向TWの幅と等しく、媒体対向面80から遠ざかるに従って大きくなっている。
【0086】
図2に示したように、下部突出部14の下面14bのトラック幅方向TWの幅は、前端面14aのトラック幅方向TWの幅よりも大きく、媒体対向面80から遠ざかるに従って大きくなっている。また、図2および図3に示したように、下面14bは、媒体対向面80に近い順に配置された傾斜部14b1と平坦部14b2を含んでいる。傾斜部14b1は、前端面14aに接続された第1の端部と、第1の端部よりも媒体対向面80からより遠い位置に配置された第2の端部とを有している。平坦部14b2は、傾斜部14b1の第2の端部に接続されている。傾斜部14b1は、その第2の端部がその第1の端部に対して記録媒体90の進行方向Tの後側に配置されるように傾斜している。平坦部14b2は、実質的に媒体対向面80に垂直な方向に延在している。
【0087】
本実施の形態では、下部突出部14の第3および第4の側面S3,S4は、以下のように傾斜している。第3および第4の側面S3,S4と交差し且つ媒体対向面80に平行な任意の断面において、トラック幅方向TWについての第3の側面S3と第4の側面S4の間隔は、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。なお、上記任意の断面において、トラック幅方向TWについての第3の側面S3と第4の側面S4の間隔は、基板1の上面1aからの距離に関わらずに一定であってもよい。
【0088】
また、本実施の形態では、図2に示したように、下部突出部14は、更に、前端面14aと第3の側面S3を接続する第1の接続面S7と、前端面14aと第4の側面S4を接続する第2の接続面S8とを有している。第1および第2の接続面S7,S8は、平面であってもよいし曲面であってもよい。
【0089】
次に、図1ないし図5を参照して、下部シールド16A、第1のサイドシールド16C、第2のサイドシールド16Dおよび非磁性層55の形状および配置について説明する。図5は、下部シールド16A、第1のサイドシールド16C、第2のサイドシールド16Dおよび非磁性層55を示す斜視図である。図5においてハッチングを付した部分は、媒体対向面80に平行な、非磁性層55の断面を表している。図1および図3に示したように、下部シールド16Aは、前方部15Aに対して記録媒体90の進行方向Tの後側に配置されている。上部シールド16Bは、前方部15Aに対して記録媒体90の進行方向Tの前側に配置されている。図1および図4に示したように、第1および第2のサイドシールド16C,16Dは、前方部15Aに対してトラック幅方向TWの両側に配置されている。
【0090】
図1図4および図5に示したように、第1のサイドシールド16Cは、前記第1の前端面16Caに加えて、前方部15Aの第1の側面S1に対向する第1の側壁SW1と、第1の側壁SW1に連続し第1の前端面16Caとは反対側に位置する第1の後端面16Cbとを有している。第2のサイドシールド16Dは、前記第2の前端面16Daに加えて、前方部15Aの第2の側面S2に対向する第2の側壁SW2と、第2の側壁SW2に連続し第2の前端面16Daとは反対側に位置する第2の後端面16Dbとを有している。図1および図5に示した例では、第1のサイドシールド16Cの第1の側壁SW1と、第2のサイドシールド16Dの第2の側壁SW2は、それぞれ、連続する複数の平面によって構成されている。
【0091】
図5に示したように、第1のサイドシールド16Cの第1の側壁SW1は、基板1の上面1a(図6および図7参照)に最も近い第1の端縁E1を有している。第2のサイドシールド16Dの第2の側壁SW2は、基板1の上面1aに最も近い第2の端縁E2を有している。図5に示した例では、第1および第2の端縁E1,E2は、それぞれ、連続する複数の直線によって構成されている。トラック幅方向TWについての第1の端縁E1と第2の端縁E2の間隔は、媒体対向面80から遠ざかるに従って大きくなっている。
【0092】
また、図1および図5に示したように、第1および第2の側壁SW1,SW2は、それぞれ、基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾斜している。第1および第2の側壁SW1,SW2と交差し且つ媒体対向面80に平行な任意の断面において、トラック幅方向TWについての第1の側壁SW1と第2の側壁SW2の間隔は、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。第1の側壁SW1が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度と、第2の側壁SW2が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、それぞれ、例えば7°〜17°の範囲内であり、10°〜15°の範囲内であることが好ましい。
【0093】
図2に示したように、第1の側壁SW1に対向する前方部15Aの第1の側面S1は、第1の側壁SW1と同様に、基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾斜している。第2の側壁SW2に対向する前方部15Aの第2の側面S2は、第2の側壁SW2と同様に、基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾斜している。第1および第2の側壁SW1,SW2と交差し且つ媒体対向面80に平行な任意の断面において、第1の側面S1と第2の側面S2の間隔は、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。側面S1,S2の各々が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度の好ましい範囲は、側壁SW1,SW2の各々が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度と同じである。
【0094】
図1および図5に示したように、第1のサイドシールド16Cの第1の後端面16Cbと第2のサイドシールド16Dの第2の後端面16Dbは、第1のサイドシールド16Cの第1の側壁SW1と第2のサイドシールド16Dの第2の側壁SW2に比べて、基板1の上面1aに対して垂直に近い。すなわち、第1の後端面16Cbが基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、第1の側壁SW1が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度よりも小さい。また、第2の後端面16Dbが基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、第2の側壁SW2が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度よりも小さい。
【0095】
図4に示したように、後方部15Bの第1の端面15Ba1は、第1の後端面16Cbに対向している。後方部15Bの第2の端面15Ba2は、第2の後端面16Dbに対向している。第1の端面15Ba1は、第1の後端面16Cbと同様に、第1の側壁SW1に対向する前方部15Aの第1の側面S1に比べて、基板1の上面1aに対して垂直に近い。すなわち、第1の端面15Ba1が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、第1の側面S1が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度よりも小さい。また、第2の端面15Ba2は、第2の後端面16Dbと同様に、第2の側壁SW2に対向する前方部15Aの第2の側面S2に比べて、基板1の上面1aに対して垂直に近い。すなわち、第2の端面15Ba2が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、第2の側面S2が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度よりも小さい。
【0096】
なお、前述のように、後方部15Bの第5の側面S5と第6の側面S6も、前方部15Aの第1の側面S1と第2の側面S2に比べて、基板1の上面1aに対して垂直に近い。すなわち、第5の側面S5が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、第1の側面S1が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度よりも小さく、第6の側面S6が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、第2の側面S2が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度よりも小さい。
【0097】
図4に示したように、第1の後端面16Cbは、基板1の上面1aから最も遠い端縁であって、媒体対向面80に平行な端縁EAを有している。同様に、第2の後端面16Dbは、基板1の上面1aから最も遠い端縁であって、媒体対向面80に平行な端縁EBを有している。端縁EA,EBは、それぞれ、媒体対向面80から30〜90nmの距離の範囲内に位置している。ここで、図4に示したように、端縁EA,EBから媒体対向面80までの距離をサイドシールドハイトSHと定義する。
【0098】
図1および図5に示したように、下部シールド16Aは、上面16Abから窪んで下部突出部14の一部を収容する収容部16Acを含んでいる。収容部16Acは、下部突出部14の前端面14aに対向する前方壁面SWAと、下部突出部14の第3の側面S3に対向する第3の側壁SW3と、下部突出部14の第4の側面S4に対向する第4の側壁SW4とを有している。図1および図3に示したように、収容部16Acの前方壁面SWAにおける任意の位置の媒体対向面80からの距離は、任意の位置が基板1の上面1a(図6および図7参照)に近づくに従って大きくなっている。
【0099】
本実施の形態では、下部シールド16Aの上面16Abは、以下のように、媒体対向面80に垂直な方向に対して傾斜している。図1図3および図5に示したように、上面16Abにおける任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、任意の位置が媒体対向面80から遠ざかるに従って小さくなっている。上面16Abが媒体対向面80に垂直な方向に対してなす角度は、前方壁面SWAが同方向に対してなす角度よりも小さい。なお、後で他の実施の形態で説明するように、上面16Abは、実質的に媒体対向面80に垂直な方向に延在していてもよい。
【0100】
図1および図5に示したように、収容部16Acの第3の側壁SW3は、基板1の上面1aから最も遠い第3の端縁E3を有している。収容部16Acの第4の側壁SW4は、基板1の上面1aから最も遠い第4の端縁E4を有している。トラック幅方向TWについての第3の端縁E3と第4の端縁E4の間隔は、媒体対向面80から遠ざかるに従って大きくなっている。
【0101】
本実施の形態では、収容部16Acの第3および第4の側壁SW3,SW4は、以下のように傾斜している。第3および第4の側壁SW3,SW4と交差し且つ媒体対向面80に平行な任意の断面において、トラック幅方向TWについての第3の側壁SW3と第4の側壁SW4の間隔は、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。なお、上記任意の断面において、トラック幅方向TWについての第3の側壁SW3と第4の側壁SW4の間隔は、基板1の上面1aからの距離に関わらずに一定であってもよい。
【0102】
また、本実施の形態では、図5に示したように、収容部16Acは、更に、前方壁面SWAと第3の側壁SW3を接続し、下部突出部14の第1の接続面S7に対向する第3の接続面SW7と、前方壁面SWAと第4の側壁SW4を接続し、下部突出部14の第2の接続面S8に対向する第4の接続面SW8とを有している。第3および第4の接続面SW7,SW8は、平面であってもよいし曲面であってもよい。
【0103】
図3および図5に示したように、非磁性層55は、下部シールド16Aよりも媒体対向面80からより遠い位置にあって、下部シールド16Aに連続している。非磁性層55は、下部突出部14の他の一部を収容する凹部55aを有している。凹部55aは、下部突出部14の下面14bに対向する底面と、下部突出部14の第3の側面S3に対向する第1の壁面と、下部突出部14の第4の側面S4に対向する第2の壁面とを有している。凹部55aの底面は、収容部16Acの前方壁面SWAに連続している。凹部55aの第1の壁面は、収容部16Acの第3の側壁SW3に連続している。凹部55aの第2の壁面は、収容部16Acの第4の側壁SW4に連続している。
【0104】
凹部55aの第1および第2の壁面は、以下のように傾斜している。第1および第2の壁面と交差し且つ媒体対向面80に平行な任意の断面において、トラック幅方向TWについての第1の壁面と第2の壁面の間隔は、基板1の上面1a(図6および図7参照)に近づくに従って小さくなっている。なお、上記任意の断面において、トラック幅方向TWについての第1の壁面と第2の壁面の間隔は、基板1の上面1aからの距離に関わらずに一定であってもよい。
【0105】
次に、図5を参照して、第1および第2のサイドシールド16C,16Dと、収容部16Acおよび主磁極13との位置関係について説明する。図5に示したように、第3の端縁E3は、第1の端縁E1に連続し、第4の端縁E4は、第2の端縁E2に連続している。これにより、収容部16Acは、第1および第2のサイドシールド16C,16Dに対して位置合わせされていることになる。主磁極13の下部突出部14の一部は、収容部16Acに収容されている。従って、下部突出部14も、第1および第2のサイドシールド16C,16Dに対して位置合わせされていることになる。
【0106】
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法について説明する。本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法では、まず、図6および図7に示したように、基板1の上に、絶縁層2、第1の再生シールド層3、第1の再生シールドギャップ膜4を順に形成する。次に、第1の再生シールドギャップ膜4の上にMR素子5と、このMR素子5に接続される図示しないリードとを形成する。次に、MR素子5およびリードを、第2の再生シールドギャップ膜6で覆う。次に、第2の再生シールドギャップ膜6の上に第2の再生シールド層7、非磁性層71、中間シールド層72および非磁性層73を順に形成する。
【0107】
次に、例えばフレームめっき法によって、非磁性層73の上に磁性層31を形成する。次に、積層体の上面全体の上に絶縁層51を形成する。次に、例えば化学機械研磨(以下、CMPと記す。)によって、磁性層31が露出するまで、絶縁層51を研磨する。次に、例えばフレームめっき法によって、磁性層31の上面の一部の上および絶縁層51の上面の上に磁性層32を形成し、磁性層31の上面の他の一部の上に磁性層33を形成する。次に、積層体の上面全体の上に絶縁膜52を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、コイルの第1の部分10を形成する。次に、積層体の上面全体の上に絶縁層53を形成する。次に、例えばCMPによって、第1の部分10および磁性層32,33が露出するまで、絶縁膜52および絶縁層53を研磨する。
【0108】
次に、積層体の上面全体の上に絶縁層54を形成する。次に、絶縁層54を選択的にエッチングすることによって、絶縁層54に、磁性層32の上面を露出させる第1の開口部と、磁性層33の上面を露出させる第2の開口部と、第1の部分10のコイル接続部10E(図8参照)を露出させる第3の開口部を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、第1の開口部の位置で磁性層32の上に後に下部シールド16Aとなる初期下部シールドを形成し、第2の開口部の位置で磁性層33の上に磁性層34を形成し、第3の開口部の位置でコイル接続部10Eの上に図示しない第1の接続層を形成する。次に、積層体の上面全体の上に、後に非磁性層55となる初期非磁性層を形成する。次に、例えばCMPによって、初期下部シールド、磁性層34および第1の接続層が露出するまで、初期非磁性層を研磨する。次に、例えばイオンビームエッチングによって、初期下部シールドに、前述の上面16Abが形成されるように、初期下部シールドおよび初期非磁性層の一部をテーパーエッチングする。このエッチングでは、磁性層34および第1の接続層の一部もエッチングされる。
【0109】
次に、図10Aないし図17Bを参照して、上記の工程の後、後に主磁極13となる初期主磁極の形成までの一連の工程について説明する。図10Aないし図17Bは、磁気ヘッドの製造過程における積層体を示している。これらの図において、符号16APは初期下部シールドを示し、符号55Pは初期非磁性層を示している。これらの図では、初期下部シールド16APおよび初期非磁性層55Pよりも基板1側の部分を省略している。また、これらの図のいくつかに示された記号“ABS”は、媒体対向面80が形成される予定の位置を表している。
【0110】
図nA(nは10以上17以下の整数)は、積層体の一部の上面を示している。図nBは、積層体における媒体対向面80が形成される予定の位置における断面を示している。図13Cおよび図14Cは、それぞれ、媒体対向面80および基板1の上面1aに垂直な断面を示している。図13Aにおいて、13C−13C線は、図13Cの断面の位置を示している。図14Aにおいて、14C−14C線は、図14Cの断面の位置を示している。図13Dは、図13Aないし図13Cに示した工程を示す斜視図である。図14Dは、図14Aないし図14Cに示した工程を示す斜視図である。
【0111】
図10Aおよび図10Bは、初期下部シールド16APおよび初期非磁性層55Pの一部をテーパーエッチングした後の工程を示している。この工程では、まず、例えばスパッタ法またはイオンビームデポジション法によって、初期下部シールド16APおよび初期非磁性層55Pの上に、図示しないシード層を形成する。次に、ポジ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングすることによって、初期下部シールド16APおよび初期非磁性層55Pの上に、第1のレジスト層81を形成する。第1のレジスト層81は、後に形成される主磁極13の形状に対応した形状を有する開口部81aを有している。また、第1のレジスト層81は、後に形成される第1および第2のサイドシールド16C,16Dに対応した形状を有する部分を含んでいる。
【0112】
以下、第1のレジスト層81の形成方法について、詳しく説明する。まず、積層体の上面全体の上にポジ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層を形成する。このフォトレジスト層は、その上面が後に形成される第1および第2のサイドシールド16C,16Dの上面よりも上方に配置されるように形成される。次に、フォトマスクを用いて、フォトレジスト層を選択的に露光する。このフォトマスクは、露光用の光を通過させる透光部と、露光用の光を遮断する遮光部とを有している。フォトマスクの透光部は、後に形成される主磁極13の平面形状に対応した形状を有する部分を含んでいる。フォトマスクの遮光部は、後に形成される第1および第2のサイドシールド16C,16Dの平面形状に対応した形状を有する部分を含んでいる。次に、露光後のフォトレジスト層を現像する。露光後は、フォトレジスト層のうち、フォトマスクの透光部を通過した光が照射された部分は現像液に対して可溶性となり、他の部分は現像液に対して不溶性のままである。現像後に残ったフォトレジスト層が第1のレジスト層81となる。
【0113】
第1のレジスト層81の開口部81aは、後に形成される第1のサイドシールド16Cの側壁SW1に対応する部分を含む壁面81a1と、後に形成される第2のサイドシールド16Dの側壁SW2に対応する部分を含む壁面81a2とを有している。この工程では、壁面81a1,81a2が、それぞれ基板1の上面1a(図6および図7参照)に垂直な方向に対して傾き、基板1の上面1aに近づくに従って、壁面81a1のうち側壁SW1に対応する部分と壁面81a2のうち側壁SW2に対応する部分との間の距離が小さくなるように、フォトレジスト層をパターニングする。このようなパターニングは、例えば、感度の低い下層と感度の高い上層からなるフォトレジスト層を用いることで実現することができる。
【0114】
図11Aおよび図11Bは、次の工程を示す。この工程では、まず、第1のレジスト層81を覆うように、非磁性材料よりなる分離膜82を形成する。分離膜82は、ポジ型のフォトレジストよりなる第1のレジスト層81と、後に形成されるネガ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層とが混合されることを防止するためのものである。分離膜82の厚みは、例えば5〜20nmの範囲内である。分離膜82の材料としては、例えばアルミナまたは合成樹脂が用いられる。分離膜82の材料としてアルミナを用いる場合には、例えばイオンビームデポジション法によって、分離膜82を形成する。
【0115】
次に、ネガ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングすることによって、分離膜82の上に、第2のレジスト層83を形成する。第2のレジスト層83は、後に形成される主磁極13の形状に対応した形状を有している。以下、第2のレジスト層83の形成方法について詳しく説明する。まず、積層体の上面全体の上にネガ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層を形成する。このフォトレジスト層は、その上面が分離膜82のうち第1のレジスト層81の上に配置された部分よりも上方に配置されるように形成される。次に、フォトマスクを用いて、フォトレジスト層を選択的に露光する。このフォトマスクは、第1のレジスト層81を形成する際に用いたフォトマスクと同様に、露光用の光を通過させる透光部と、露光用の光を遮断する遮光部とを有している。フォトマスクの透光部は、後に形成される主磁極13の平面形状に対応した形状を有する部分を含んでいる。次に、露光後のフォトレジスト層を現像する。露光後は、フォトレジスト層のうち、フォトマスクの透光部を通過した光が照射された部分は現像液に対して不溶性となり、他の部分は現像液に対して可溶性のままである。現像後に残ったフォトレジスト層が第2のレジスト層83となる。
【0116】
図12Aおよび図12Bは、次の工程を示す。この工程では、まず、例えばウェットエッチングによって、分離膜82のうち、第2のレジスト層83によって覆われていない部分を除去する。次に、第1および第2のレジスト層81,83を露光した後、第1のレジスト層81を除去する。具体的には、まず、積層体の上面全体を露光する。露光後は、ポジ型のフォトレジストよりなる第1のレジスト層81は現像液に対して可溶性になり、ネガ型のフォトレジストよりなる第2のレジスト層83は現像液に対して不溶性のままである。次に、例えばアルカリ性の現像液を用いて、第1のレジスト層81を除去する。また、この工程では、第1のレジスト層81を除去する際または第1のレジスト層81を除去した後に、分離膜82のうち、第2のレジスト層83の壁面に沿った部分を除去する。この工程において、分離膜82のうち第2のレジスト層83の細い部分の下に存在していた部分は除去されてもよい。この場合でも、分離膜82のうち第2のレジスト層83の太い部分の下に存在している部分は除去されないため、第2のレジスト層83が剥離することはない。
【0117】
次に、図示しないシード層を電極およびシードとして用いてめっきを行って、初期下部シールド16APおよび初期非磁性層55Pの上に、後に第1のサイドシールド16Cとなる第1の初期サイドシールド16CPと、後に第2のサイドシールド16Dとなる第2の初期サイドシールド16DPを形成する。第1の初期サイドシールド16CPは、第1のサイドシールド16Cとなる予定の第1のサイドシールド予定部16CP1と、後述するエッチング工程で除去される予定の第1の除去予定部16CP2とを含んでいる。図12Aでは、第1のサイドシールド予定部16CP1と第1の除去予定部16CP2の境界を点線で示している。第1のサイドシールド予定部16CP1は、後に形成される第1のサイドシールド16Cの第1の側壁SW1を有している。第1の除去予定部16CP2は、第1の側壁SW1に連続する第5の側壁SW5を有している。第5の側壁SW5は、基板1の上面1aに最も近い端縁E5を有している。端縁E5は、第1の側壁SW1の第1の端縁E1に連続している。なお、第5の側壁SW5および端縁E1,E5は、後で説明する図13Dに示されている。
【0118】
第2の初期サイドシールド16DPは、第2のサイドシールド16Dとなる予定の第2のサイドシールド予定部16DP1と、後述するエッチング工程で除去される予定の第2の除去予定部16DP2とを含んでいる。図12Aでは、第2のサイドシールド予定部16DP1と第2の除去予定部16DP2の境界を点線で示している。第2のサイドシールド予定部16DP1は、後に形成される第2のサイドシールド16Dの第2の側壁SW2を有している。第2の除去予定部16DP2は、第2の側壁SW2に連続する第6の側壁SW6を有している。第6の側壁SW6は、基板1の上面1aに最も近い端縁E6を有している。端縁E6は、第2の側壁SW2の第2の端縁E2に連続している。なお、第6の側壁SW6および端縁E2,E6は、後で説明する図13Dに示されている。図12Aに示したように、第1の除去予定部16CP2と第2の除去予定部16DP2は、一体化されている。
【0119】
図13Aないし図13Dは、次の工程を示す。図13Dにおいてハッチングを付した部分は、初期非磁性層55Pの、後に形成される媒体対向面80に平行な断面を表している。この工程では、まず、第2のレジスト層83と分離膜82を除去する。次に、初期下部シールド16AP、第1の初期サイドシールド16CPおよび第2の初期サイドシールド16DPの上に、マスク84を形成する。マスク84は、第1および第2の初期サイドシールド16CP,16DPのうちの第1および第2のサイドシールド予定部16CP1,16DP1を覆っている。また、マスク84は、後に形成される第1のサイドシールド16Cの第1の後端面16Cbの位置と後に形成される第2のサイドシールド16Dの第2の後端面16Dbの位置を規定する部分を含む壁面84aを有している。なお、図13Dでは、マスク84の上面上に、媒体対向面80が形成される予定の位置ABSを示している。
【0120】
マスク84は、フォトリソグラフィによってフォトレジスト層をパターニングして形成してもよい。あるいは、マスク84は、以下のように形成してもよい。まず、積層体の上面全体の上にフォトレジスト層を形成する。次に、フォトレジスト層を加熱して硬化させる。次に、このフォトレジスト層の上に、アルミナ等の絶縁材料または金属材料よりなるハード層を形成する。次に、このハード層の上にフォトレジストマスクを形成する。次に、このフォトレジストマスクを用いて、例えばイオンビームエッチングによって、ハード層をエッチングして、パターニングされたハード層よりなるエッチングマスク層を形成する。次に、フォトレジストマスクを除去する。次に、エッチングマスク層をマスクとして用いて、例えば反応性イオンエッチングによって、フォトレジスト層をエッチングして、フォトレジスト層をパターニングする。マスク84は、パターニングされたフォトレジスト層およびエッチングマスク層によって構成される。
【0121】
図14Aないし図14Dは、次の工程を示す。図14Dでは、マスク84の上面上に、媒体対向面80が形成される予定の位置ABSを示している。この工程では、マスク84を用いて、例えばイオンビームエッチングによって、第1および第2の初期サイドシールド16CP,16DPのうちの第1および第2の除去予定部16CP2,16DP2が除去されるように、第1および第2の初期サイドシールド16CP,16DPのうちのマスク84によって覆われていない部分をエッチングする。以下、この工程をエッチング工程と呼ぶ。このエッチング工程では、第1および第2の初期サイドシールド16CP,16DPのエッチングと同時に、初期下部シールド16APのうちの第1および第2の初期サイドシールド16CP,16DPならびにマスク84によって覆われていない部分をエッチングする。このエッチング工程では、第1および第2の初期サイドシールド16CP,16DPがエッチングされることにより、第1のサイドシールド予定部16CP1に第1の後端面16Cbが形成され、第2のサイドシールド予定部16DP2に第2の後端面16Dbが形成される。また、初期下部シールド16APがエッチングされることにより、初期下部シールド16APに収容部16Acが形成される。
【0122】
エッチング工程では、収容部16Acの第3の側壁SW3の第3の端縁E3が、図13Dに示した第5の側壁SW5の端縁E5と一致し、収容部16Acの第4の側壁SW4の第4の端縁E4が、図13Dに示した第6の側壁SW6の端縁E6と一致するように、収容部16Acが自己整合的に形成される。その結果、第3の側壁SW3の第3の端縁E3が第1の側壁SW1の第1の端縁E1に連続し、第4の側壁SW4の第4の端縁E4が第2の側壁SW2の第2の端縁E2に連続するように、収容部16Acは、第1および第2のサイドシールド予定部16CP1,16DP1に対して正確に位置合わせされて形成される。
【0123】
また、エッチング工程では、初期非磁性層55Pに前述の凹部55aが形成されるように、初期非磁性層55Pのうちの第1および第2の初期サイドシールド16CP,16DPによって覆われてない部分がエッチングされる。これにより、初期非磁性層55Pは非磁性層55となる。なお、図14Dにおいてハッチングを付した部分は、後に形成される媒体対向面80に平行な、非磁性層55の断面を表している。
【0124】
エッチング工程において、イオンビームエッチングによって初期サイドシールド16CP,16DP、初期下部シールド16APおよび初期非磁性層55Pをエッチングする場合には、イオンビームの進行方向が基板1の上面1aに対してなす角度が40°〜75°の範囲内となるようにして、図14Aにおける左側(第1の初期サイドシールド16CP側)、右側(第2の初期サイドシールド16DP側)および下側(マスク84側)の3方向から、収容部16Acおよび凹部55aが形成される予定の領域に向かってイオンビームを照射する。イオンビームは、スイープさせてもよい。この場合、スイープの角度は、例えば45°である。
【0125】
図14Aにおける左側からイオンビームを照射した場合には、第1の初期サイドシールド16CPの近傍では、第1の初期サイドシールド16CPの影の効果により、初期下部シールド16APおよび初期非磁性層55Pのエッチング速度が低下する。図14Aにおける右側からイオンビームを照射した場合には、第2の初期サイドシールド16DPの近傍では、第2の初期サイドシールド16DPの影の効果により、初期下部シールド16APおよび初期非磁性層55Pのエッチング速度が低下する。図14Aにおける下側からイオンビームを照射した場合には、マスク84の近傍では、マスク84の影の効果により、初期下部シールド16APのエッチング速度が低下する。第1および第2の除去予定部16CP2,16DP2のエッチングが進行することにより第1および第2の除去予定部16CP2,16DP2の厚みが小さくなるに従って、第1および第2の初期サイドシールド16CP,16DPの影の効果が小さくなり、第1および第2の初期サイドシールド16CP,16DPの近傍における上記エッチング速度は大きくなる。その結果、図14Dに示したように傾斜した前方壁面SWAおよび側壁SW3,SW4を有する収容部16Acと、図14Dに示したように傾斜した第1および第2の壁面を有する凹部55aが形成される。
【0126】
なお、エッチング工程では、初期下部シールド16APおよび初期非磁性層55Pの上に形成された図示しないシード層のうちの、第1および第2の初期サイドシールド16CP,16DPならびにマスク84によって覆われていない部分もエッチングされる。収容部16Acおよび凹部55aの深さ(基板1の上面1aに垂直な方向についての寸法)は、エッチング条件の他、図示しないシード層の厚みによっても制御することができる。
【0127】
図15Aおよび図15Bは、次の工程を示す。この工程では、マスク84を除去する。図16Aおよび図16Bは、次の工程を示す。この工程では、まず、ギャップ部17の第1の部分を形成する。具体的には、積層体の上面全体の上に、ギャップ部17の第1の部分を構成する部分を含む第1のギャップ層18を形成する。第1のギャップ層18の材料としてアルミナを用いる場合には、例えば原子層堆積法(ALD)によって、第1のギャップ層18を形成する。第1のギャップ層18の材料としてRuを用いる場合には、例えば化学的気相成長法(CVD)によって、第1のギャップ層18を形成する。次に、第1のギャップ層18を選択的にエッチングして、第1のギャップ層18に、磁性層34(図6参照)の上面を露出させる開口部と、図示しない第1の接続層の上面を露出させる開口部を形成する。
【0128】
図17Aおよび図17Bは、次の工程を示す。この工程では、例えばフレームめっき法によって、後に主磁極13となる初期主磁極13Pを形成する。フレームめっき法によって初期主磁極13Pを形成する場合には、まず、積層体の上面全体の上にフォトレジスト層を形成し、これをフォトリソグラフィによってパターニングして、図示しないフレームを形成する。このフレームは、その上面が後に形成される主磁極13の上面よりも上方に配置されるように形成される。このフレームは、初期主磁極13Pを収容するための第1の開口部と、図示しない第2の接続層を収容するための第2の開口部を有している。第1の開口部は、後方部15Bの第5の側面S5の形状を規定する第1の内壁と、後方部15Bの第6の側面S6の形状を規定する第2の内壁とを有している。上方から見て、第1および第2の内壁は、前方部15Aの第1および第2の側面S1,S2が形成される予定の位置よりも外側に位置する。
【0129】
次に、フレームを用いてめっきを行って、第1の開口部内に収容されるように、初期主磁極13Pを形成する。初期主磁極13Pのうち、収容部16Ac内および凹部55a内に収容されるように形成された部分は、後に主磁極13の下部突出部14となる。初期主磁極13Pのうち、第1のサイドシールド予定部16CP1の第1の側壁SW1と第2のサイドシールド予定部16DP1の第2の側壁SW2との間に形成された部分は、後に主磁極13の本体15の前方部15Aとなる。初期主磁極13Pのうち、収容部16Acおよび凹部55aからはみ出すように後に下部突出部14となる部分の上に形成された部分は、後に主磁極13の本体15の後方部15Bとなる。
【0130】
初期主磁極13Pは、前方部15Aの側面S1,S2と、後方部15Bの端面15Ba1,15Ba2および側面S5,S6(図2参照)と、下部突出部14の前端面14aおよび側面S3,S4(図2参照)を有している。第1の側面S1の形状は、第1のサイドシールド予定部16CP1の第1の側壁SW1と、第1のギャップ層18のうちの第1の側壁SW1に沿った部分とによって規定される。第2の側面S2の形状は、第2のサイドシールド予定部16DP1の第2の側壁SW2と、第1のギャップ層18のうちの第2の側壁SW2に沿った部分とによって規定される。
【0131】
第1の端面15Ba1の形状は、図14Dおよび図15Aに示した第1のサイドシールド予定部16CP1の第1の後端面16Cbと、第1のギャップ層18のうちの第1の後端面16Cbに沿った部分とによって規定される。第2の端面15Ba2の形状は、図14Dおよび図15Aに示した第2のサイドシールド予定部16DP1の第2の後端面16Dbと、第1のギャップ層18のうちの第2の後端面16Dbに沿った部分とによって規定される。第5の側面S5の形状は、フレームの第1の内壁によって規定される。第6の側面S6の形状は、フレームの第2の内壁によって規定される。
【0132】
前端面14aの形状は、図14Dに示した収容部16Acの前方壁面SWAと、第1のギャップ層18のうちの前方壁面SWAに沿った部分とによって規定される。第3の側面S3の形状は、図14Dに示した収容部16Acの第3の側壁SW3と、第1のギャップ層18のうちの第3の側壁SW3に沿った部分とによって規定される。第4の側面S4の形状は、図14Dに示した収容部16Acの第4の側壁SW4と、第1のギャップ層18のうちの第4の側壁SW4に沿った部分とによって規定される。
【0133】
また、フレームを用いてめっきを行って、第1の接続層の上に第2の接続層を形成する。初期主磁極13Pおよび第2の接続層は、その上面が第1のギャップ層18のうち初期サイドシールド16CP,16DPの上に配置された部分よりも上方に配置されるように形成される。次に、フレームを除去する。
【0134】
以下、図1図4図6および図7を参照して、初期主磁極13Pおよび第2の接続層を形成した後の工程について説明する。まず、積層体の上面全体の上に、非磁性層60を形成する。次に、第1および第2の初期サイドシールド16CP,16DPの上面が露出するまで、初期主磁極13P、第2の接続層、第1のギャップ層18および非磁性層60を研磨する。次に、初期主磁極13Pおよび初期サイドシールド16CP,16DPの上に、非磁性金属層58および絶縁層59を形成する。次に、非磁性金属層58および絶縁層59を用いて、例えばイオンビームエッチングによって、初期主磁極13Pに前方部15Aの上面15Abの傾斜部が形成されるように、初期主磁極13P、初期サイドシールド16CP,16DP、第1のギャップ層18および非磁性層60の一部をエッチングする。エッチング後の初期主磁極13Pの上面のうち、非磁性金属層58および絶縁層59によって覆われた部分は、前方部15Aの上面15Abの平坦部および後方部15Bの上面15Bbとなる。
【0135】
次に、ギャップ部17の第2の部分を形成する。具体的には、積層体の上面全体の上に、例えばスパッタ法または化学的気相成長法によって、ギャップ部17の第2の部分を構成する部分を含む第2のギャップ層19を形成する。次に、例えばイオンビームエッチングによって、初期主磁極13Pの上面の一部、初期サイドシールド16CP,16DPの上面の一部および第2の接続層の上面が露出するように、第2のギャップ層19、非磁性金属層58および絶縁層59を選択的にエッチングする。次に、例えばフレームめっき法によって、初期サイドシールド16CP,16DPおよび第2のギャップ層19の上に後に上部シールド16Bとなる初期上部シールドを形成し、初期主磁極13Pの上に磁性層41を形成する。
【0136】
次に、積層体の上面全体の上に絶縁膜61を形成する。次に、絶縁膜61を選択的にエッチングすることによって、絶縁膜61に、第2の接続層の上面を露出させる開口部を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、コイルの第2の部分20を形成する。次に、第2の部分20の巻線間に絶縁層62を形成する。次に、積層体の上面全体の上に図示しない非磁性層を形成する。次に、例えばCMPによって、第2の部分20、初期上部シールドおよび磁性層41が露出するまで、絶縁膜61および非磁性層を研磨する。
【0137】
次に、積層体の上面全体の上に絶縁層63を形成する。次に、絶縁層63を選択的にエッチングすることによって、絶縁層63に、初期上部シールドの上面を露出させる開口部と、磁性層41の上面を露出させる開口部を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、磁性層42を形成する。次に、例えば反応性イオンエッチングまたはイオンビームエッチングによって、初期上部シールドに前述の接続面16Bcが形成され、磁性層42に前述の端面が形成されるように、初期上部シールドおよび磁性層42をエッチングする。次に、積層体の上面全体の上に非磁性層64を形成する。次に、例えばCMPによって、磁性層42が露出するまで非磁性層64を研磨する。
【0138】
次に、積層体の上面全体を覆うように保護層70を形成する。次に、保護層70の上に配線や端子等を形成し、媒体対向面80が形成される予定の位置ABSの近傍で基板1を切断する。次に、初期下部シールド16APが下部シールド16Aになり、第1の初期サイドシールド16CPが第1のサイドシールド16Cになり、第2の初期サイドシールド16DPが第2のサイドシールド16Dになり、初期主磁極13Pが主磁極13になり、初期上部シールドが上部シールド16Bになるように、切断によって形成された面を研磨して媒体対向面80を形成する。次に、浮上用レールの作製等を行って、磁気ヘッドが完成する。
【0139】
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッド特有の作用および効果について説明する。本実施の形態に係る磁気ヘッドでは、図5に示したように、第3の側壁SW3の第3の端縁E3が第1の側壁SW1の第1の端縁E1に連続し、第4の側壁SW4の第4の端縁E4が第2の側壁SW2の第2の端縁E2に連続するように、収容部16Acは、第1および第2のサイドシールド16C,16Dに対して正確に位置合わせされている。これにより、主磁極13の下部突出部14も、第1および第2のサイドシールド16C,16Dに対して正確に位置合わせされている。
【0140】
本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法では、収容部16Acおよび下部突出部14は、第1および第2の初期サイドシールド16CP,16DPを用いて自己整合的に形成される。以下、これについて詳しく説明する。本実施の形態では、エッチング工程において、第1および第2の初期サイドシールド16CP,16DPのうちの第1および第2の除去予定部16CP2,16DP2が除去されると共に、初期下部シールド16APに収容部16Acが形成されるように、第1および第2の初期サイドシールド16CP,16DPのうちのマスク84によって覆われていない部分と初期下部シールド16APのうちの第1および第2の初期サイドシールド16CP,16DPならびにマスク84によって覆われていない部分とをエッチングする。
【0141】
図13Dに示したように、第1の除去予定部16CP2は、第1の側壁SW1に連続する第5の側壁SW5を有し、第2の除去予定部16DP2は、第2の側壁SW2に連続する第6の側壁SW6を有している。前述のように、エッチング工程では、収容部16Acの第3の側壁SW3の第3の端縁E3が、第5の側壁SW5における基板1の上面1aに最も近い端縁E5と一致し、収容部16Acの第4の側壁SW4の第4の端縁E4が、第6の側壁SW6における基板1の上面1aに最も近い端縁E6と一致するように、収容部16Acが形成される。その結果、第3の側壁SW3の第3の端縁E3が第1の側壁SW1の第1の端縁E1に連続し、第4の側壁SW4の第4の端縁E4が第2の側壁SW2の第2の端縁E2に連続するように、収容部16Acは、第1および第2のサイドシールド16C,16D(第1および第2のサイドシールド予定部16CP1,16DP1)に対して正確に位置合わせされて形成される。また、初期主磁極13Pは、その一部が収容部16Acに収容されるように形成される。その結果、主磁極13も、第1および第2のサイドシールド16C,16Dに対して正確に位置合わせされて形成される。
【0142】
以下、比較例の磁気ヘッドおよびその製造方法と比較しながら、本実施の形態に係る磁気ヘッドおよびその製造方法の効果について説明する。始めに、比較例の磁気ヘッドおよびその製造方法について説明する。比較例の磁気ヘッドは、本実施の形態に係る磁気ヘッドと同様に、媒体対向面と、主磁極と、記録シールドと、ギャップ部と、非磁性層とを備え、記録シールドは、下部シールド、上部シールド、第1のサイドシールドおよび第2のサイドシールドを含み、ギャップ部は、第1および第2の部分を有している。比較例の磁気ヘッドでは、主磁極は下部突出部を含み、下部突出部は媒体対向面に向いた前端面を有している。しかし、比較例の磁気ヘッドでは、下部シールドは収容部を含んでいない。
【0143】
比較例の磁気ヘッドの製造方法では、主磁極は、以下のようにして形成される。まず、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法と同様に、基板の上に、初期下部シールドおよび初期非磁性層までの部分を形成する。次に、初期下部シールドおよび初期非磁性層の上に、主磁極の下部突出部の平面形状に対応した形状の開口部を有するマスクを形成する。このマスクは、フォトリソグラフィによってフォトレジスト層をパターニングして形成する。次に、マスクを用いて、初期非磁性層に主磁極の下部突出部の全体を収容する凹部が形成されるように、初期非磁性層をエッチングする。これにより、初期非磁性層は非磁性層となる。次に、マスクを除去する。
【0144】
次に、初期下部シールドの上面の上に、それぞれ後に第1および第2のサイドシールドとなる比較例の第1および第2の初期サイドシールドを形成する。比較例の第1の初期サイドシールドは、本実施の形態における第1の初期サイドシールド16CPから、第1の除去予定部16CP2を除いたものである。比較例の第2の初期サイドシールドは、本実施の形態における第2の初期サイドシールド16DPから、第2の除去予定部16DP2を除いたものである。
【0145】
次に、図16Aおよび図16Bに示した工程と同様に、ギャップ部の第1の部分を形成する。次に、図17Aおよび図17Bに示した工程と同様に、フレームめっき法によって、初期主磁極を形成する。比較例の磁気ヘッドの製造方法では、初期主磁極のうち、非磁性層の凹部内に収容されるように形成された部分が、下部突出部となる。その後の工程は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法と同様である。
【0146】
比較例の磁気ヘッドの製造方法では、第1および第2のサイドシールドと下部突出部の位置合わせは、フォトリソグラフィによって形成されたマスクの位置精度に依存する。この製造方法では、第1および第2のサイドシールドと下部突出部との位置ずれが発生する。この製造方法によって製造される比較例の磁気ヘッドでは、下部突出部の前端面を媒体対向面の近くに配置した構造にすると、上記の位置ずれが生じたときに、下部突出部は一方のサイドシールドに近づくため、下部突出部から一方のサイドシールドへの磁束の漏れが生じる。そのため、比較例の磁気ヘッドでは、記録密度の向上のために重要な以下の2つの目標を同時に達成することが困難である。第1の目標は、媒体対向面に配置された端面の形状が小さく、且つ媒体対向面の近傍において媒体対向面に平行な断面の面積(以下、断面積と言う。)が大きい主磁極を実現することである。第2の目標は、主磁極から記録シールドへの磁束の漏れを少なくすることである。
【0147】
これに対し、本実施の形態では、前述のように、収容部16Acが、第1および第2のサイドシールド16C,16Dに対して正確に位置合わせされて形成されることから、主磁極13の下部突出部14も、第1および第2のサイドシールド16C,16Dに対して正確に位置合わせされて形成される。従って、本実施の形態によれば、下部突出部14の位置ずれに伴う下部突出部14から一方のサイドシールドへの磁束の漏れの発生を防止しながら、下部突出部14の前端面14aを媒体対向面80に近づけることができる。これにより、本実施の形態によれば、上記の2つの目標を同時に達成することができる。その結果、本実施の形態によれば、オーバーライト特性を向上させ、エラーレートを減少させ、記録密度を向上させることが可能になる。
【0148】
また、下部突出部14の前端面14aを媒体対向面80に近づけることにより、主磁極13から主磁極13の外部への磁束の漏れを少なくして、オーバーライト特性を向上させることが可能になる。しかし、比較例の磁気ヘッドでは、下部突出部の前端面を媒体対向面に近づけようとすると、下部シールドの体積が小さくなり、下部シールドにおいて磁束の飽和が生じやすくなる。すると、下部シールドから記録媒体に向けて磁束が漏れて、望まれない消去が生じるという問題が発生する。
【0149】
これに対し、本実施の形態では、下部シールド16Aに収容部16Acが形成され、この収容部16Acに下部突出部14の一部が収容されている。これにより、下部突出部14の前端面14aを媒体対向面80に近づけながら、磁束の飽和が生じないような下部シールド16Aの体積を確保することができる。そのため、本実施の形態によれば、主磁極13から主磁極13の外部への磁束の漏れを少なくすることができると共に、下部シールド16Aから記録媒体90に向けての磁束の漏れを少なくすることができる。本実施の形態によれば、これによっても、オーバーライト特性を向上させ、エラーレートを減少させ、記録密度を向上させることが可能になる。
【0150】
以下、本実施の形態におけるその他の効果について説明する。本実施の形態では、下部突出部14の前端面14aは、前述のように、媒体対向面80に対して傾斜している。前端面14aが媒体対向面80に対して平行な場合には、前端面14aと前方部15Aの下端15Acとの間と、前端面14aと下部突出部14の下面14bとの間に90°または90°に近い角度の角が形成される。この場合、これらの角において主磁極13から主磁極13の外部へ磁束が漏れやすい。これに対し、本実施の形態では、前端面14aと下端15Acとの間に形成される角と、前端面14aと下面14bとの間に形成される角の角度は、上記の場合に比べて大きくなる。これにより、本実施の形態によれば、前端面14aが媒体対向面80に対して平行な場合に比べて、主磁極13から主磁極13の外部への磁束の漏れをより少なくすることができる。本実施の形態によれば、これによっても、オーバーライト特性を向上させることができる。
【0151】
また、本実施の形態では、下部シールド16Aの上面16Abは、前述のように、媒体対向面80に垂直な方向に対して傾斜している。その結果、前方部15Aの下端15Acも、媒体対向面80に垂直な方向に対して傾斜している。これにより、本実施の形態によれば、下端15Acが実質的に媒体対向面80に垂直な方向に延在している場合に比べて、媒体対向面80の近傍における前方部15Aの断面積を大きくすることができる。本実施の形態によれば、これによっても、オーバーライト特性を向上させることができる。
【0152】
特に本実施の形態では、前方部15Aの下端15Acと、下部突出部14の前端面14aが、共に媒体対向面80に垂直な方向に対して傾斜し、且つ前端面14aが媒体対向面80に垂直な方向に対して角度は、下端15Acが媒体対向面80に垂直な方向に対して角度よりも大きい。これにより、本実施の形態によれば、主磁極13から主磁極13の外部への磁束の漏れを少なくしながら、媒体対向面80の近傍における主磁極13の断面積を大きくすることができる。その結果、本実施の形態によれば、オーバーライト特性をより効果的に向上させることができる。
【0153】
また、本実施の形態では、トラック幅方向TWについての第3の端縁E3と第4の端縁E4の間隔は、媒体対向面80から遠ざかるに従って大きくなっている。本実施の形態によれば、トラック幅方向TWについての第3の端縁E3と第4の端縁E4の間隔が、媒体対向面80からの距離によらずに一定の場合に比べて、第1および第2のサイドシールド16C,16Dから離れた位置における収容部16Acの断面積を大きくすることができ、その結果、媒体対向面80の近傍における下部突出部14の断面積を大きくすることができる。本実施の形態によれば、これによっても、オーバーライト特性を向上させることができる。
【0154】
また、本実施の形態では、図4に示したサイドシールドハイトSHは、第1および第2の後端面16Cb,16Dbのそれぞれの、基板1の上面1aから最も遠い端縁EA,EBから媒体対向面80までの距離と等しい。端縁EA,EBの位置は、図13Aないし図14Dに示したマスク84の壁面84aの位置によって規定される。本実施の形態では、壁面84aの位置を、媒体対向面80が形成される予定の位置ABSに近づけることは容易である。
【0155】
ここで、主磁極13の上面における前方部15Aと後方部15Bとの境界から媒体対向面80までの距離、すなわち媒体対向面80に垂直な方向についての前方部15Aの長さを、本実施の形態におけるネックハイトと定義する。本実施の形態によれば、サイドシールドハイトSHを小さくすることによって、ネックハイトを小さくすることができる。
【0156】
ところで、第1および第2の後端面16Cb,16Dbの端縁EA,EBが媒体対向面80に対して傾いていると、前方部15Aと後方部15Bとの境界の位置における後方部15Bの断面積は、第1および第2の後端面16Cb,16Dbによって制限される。これに対し、本実施の形態では、第1および第2の後端面16Cb,16Dbの端縁EA,EBが媒体対向面80に平行であることから、前方部15Aと後方部15Bとの境界の位置における後方部15Bの断面積を、第1および第2の後端面16Cb,16Dbによって制限されずに大きくすることができる。
【0157】
また、本実施の形態では、後方部15Bと交差し且つ媒体対向面80に平行な任意の断面において、後方部15Bは、下部突出部14よりも大きなトラック幅方向TWの幅を有している。本実施の形態によれば、上記任意の断面において、後方部15Bのトラック幅方向TWの幅が下部突出部14と同じである場合に比べて、媒体対向面80の近傍における後方部15Bの断面積を大きくすることができる。本実施の形態によれば、これによっても、オーバーライト特性を向上させることができる。
【0158】
また、本実施の形態では、第1および第2の側壁SW1,SW2と交差し且つ媒体対向面80に平行な任意の断面において、トラック幅方向TWについての第1の側壁SW1と第2の側壁SW2の間隔は、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。その結果、本実施の形態における主磁極13では、上記任意の断面において、第1の側面S1と第2の側面S2の間隔は、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなり、前方部15Aの端面15Aaすなわち主磁極13の端面13aのトラック幅方向TWの幅は、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。これにより、本実施の形態によれば、スキューに起因した望まれない消去の発生を抑制することができる。
【0159】
また、本実施の形態では、第1の後端面16Cbが基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、第1の側壁SW1が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度よりも小さく、第2の後端面16Dbが基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、第2の側壁SW2が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度よりも小さい。その結果、本実施の形態における主磁極13では、第1の端面15Ba1が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、第1の側面S1が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度よりも小さく、第2の端面15Ba2が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、第2の側面S2が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度よりも小さい。本実施の形態における主磁極13では、第1の端面15Ba1が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度が、第1の側面S1が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度と等しく、第2の端面15Ba2が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度が、第2の側面S2が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度と等しい場合に比べて、第1の側面S1と第1の端面15Ba1との境界ならびに第2の側面S2と第2の端面15Ba2との境界の近傍の部分において、主磁極13の断面積を大きくすることができる。本実施の形態によれば、これによっても、オーバーライト特性を向上させることができる。
【0160】
[第2の実施の形態]
次に、図18を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図18は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの要部を示す断面図である。本実施の形態では、下部シールド16Aの上面16Abは、実質的に媒体対向面80に垂直な方向に延在している。
【0161】
本実施の形態では、第1の実施の形態で説明した、下部シールド16Aの上面16Abが傾斜していることによる効果は得られない。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0162】
[第3の実施の形態]
次に、図19ないし図21を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図19は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極を示す斜視図である。図20は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの要部を示す断面図である。図21は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極、第1のサイドシールドおよび第2のサイドシールドを示す平面図である。本実施の形態に係る磁気ヘッドの構成は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る磁気ヘッドでは、第1の実施の形態における第1のギャップ層18が設けられていない。代わりに、ギャップ部17の第1の部分は、以下で説明する第1のギャップ膜181および第2のギャップ膜182を有している。
【0163】
第1のギャップ膜181は、媒体対向面80に最も近い端部であって、媒体対向面80から離れた位置に配置された端部181aを有している。媒体対向面80から端部181aまでの距離は、例えば30〜200nmの範囲内であり、60〜100nmの範囲内であることが好ましい。また、第1のギャップ膜181の少なくとも一部は、下部シールド16Aの収容部16Ac内に位置している。第1のギャップ膜181の端部181aは、収容部16Acに対して媒体対向面80により近い位置に配置されていてもよいし、収容部16Ac内に配置されていてもよい。
【0164】
図20および図21に示したように、本実施の形態では、第1のギャップ膜181は、第1のサイドシールド16Cの第1の側壁SW1および第1の後端面16Cb、第2のサイドシールド16Dの第2の側壁SW2および第2の後端面16Db、下部シールド16Aの上面16Ab、収容部16Acの前方壁面SWA、ならびに非磁性層55の凹部55aの表面に沿って配置されている。第1のギャップ膜181は、更に、第1の実施の形態における図5に示した、収容部16Acの第3の側壁SW3、第4の側壁SW4、第3の接続面SW7および第4の接続面SW8に沿って配置されている。
【0165】
第2のギャップ膜182は、媒体対向面80に配置された端部182aを有し、第1のギャップ膜181の上に積層されている。図20および図21に示したように、本実施の形態では、第2のギャップ膜182は、第1のギャップ膜181を覆うように、第1のサイドシールド16Cの第1の側壁SW1、第2のサイドシールド16Dの第2の側壁SW2および第1のギャップ膜181に沿って配置されている。
【0166】
図20に示したように、本実施の形態では、主磁極13は、下部シールド16Aおよび非磁性層55と主磁極13との間に第1および第2のギャップ膜181,182が介在するように、下部シールド16Aおよび非磁性層55の上に配置されている。また、図21に示したように、主磁極13と第1および第2のサイドシールド16C,16Dとの間にも、第1および第2のギャップ膜181,182が介在している。本実施の形態では、第1および第2のギャップ膜181,182は、主磁極13と第1ないし第4の側壁SW1〜SW4との間に介在している。図19には、第1のギャップ膜181のうち、第2のギャップ膜182と第1および第2の側壁SW1,SW2との間に介在する部分を示している。
【0167】
第1のギャップ膜181は、例えばアルミナによって形成されている。第2のギャップ膜182は、例えば、第1の実施の形態で説明した第1のギャップ層18と同じ材料によって形成されている。第1のギャップ膜181の厚みは、例えば、20〜80nmの範囲内であり、40〜60nmの範囲内であることが好ましい。第2のギャップ膜182の厚みは、例えば、20〜80nmの範囲内であり、30〜60nmの範囲内であることが好ましい。
【0168】
なお、第1のギャップ膜181の形状および配置は、上記の例に限られない。例えば、第1のギャップ膜181は、その全体が収容部16Ac内に位置していてもよい。この場合、主磁極13と第1および第2の側壁SW1,SW2との間には、第2のギャップ膜182のみが介在する。
【0169】
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法について説明する。本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法は、第1の実施の形態における図15Aおよび図15Bに示した工程までは、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、次に、本実施の形態におけるギャップ部17の第1の部分を形成する工程が行われる。本実施の形態におけるギャップ部17の第1の部分を形成する工程は、第1のギャップ膜181を形成する工程と、第1のギャップ膜181を覆うように第2のギャップ膜182を形成する工程とを含んでいる。
【0170】
第1のギャップ膜181を形成する工程は、第1の実施の形態における図15Aおよび図15Bに示した工程の後に行われる。第1のギャップ膜181を形成する工程では、まず、積層体の上面全体の上に、後に第1のギャップ膜181となる非磁性膜を形成する。非磁性膜は、下部シールド16Aの収容部16Ac内および非磁性層55の凹部55a内にも形成される。非磁性膜(第1のギャップ膜181)の材料としてアルミナを用いる場合には、例えば原子層堆積法(ALD)によって、非磁性膜を形成する。次に、非磁性膜の上に、媒体対向面80が形成される予定の位置の近傍を露出させる開口部を有するエッチングマスクを形成する。このエッチングマスクは、フォトリソグラフィによってフォトレジスト層をパターニングして形成する。次に、エッチングマスクを用いて、例えばアルカリ性のエッチング液を用いたウェットエッチングによって、非磁性膜のうちエッチングマスクの開口部から露出する部分を除去する。これにより、非磁性膜は第1のギャップ膜181となる。次に、エッチングマスクを除去する。
【0171】
なお、第1のギャップ膜181は、リフトオフ法によって形成してもよい。この場合には、まず、第1のギャップ膜181が形成される予定の部分に開口部を有するマスクを形成する。このマスクは、フォトリソグラフィによってフォトレジスト層をパターニングして形成する。次に、マスクを残したまま、積層体の上面全体の上に、後に第1のギャップ膜181となる非磁性膜を形成する。次に、マスクをリフトオフする。これにより、残った非磁性膜は、第1のギャップ膜181となる。
【0172】
第2のギャップ膜182を形成する工程は、第1のギャップ膜181を形成する工程の後に行われる。第2のギャップ膜182を形成する工程では、積層体の上面全体の上に、第2のギャップ膜182を形成する。第2のギャップ膜182の材料としてアルミナを用いる場合には、例えば原子層堆積法(ALD)によって、第2のギャップ膜182を形成する。第2のギャップ膜182の材料としてRuを用いる場合には、例えば化学的気相成長法(CVD)によって、第2のギャップ膜182を形成する。
【0173】
本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法では、次に、第1および第2のギャップ膜181,182を選択的にエッチングして、第1および第2のギャップ膜181,182に、磁性層34(図6参照)の上面を露出させる開口部と、図示しない第1の接続層の上面を露出させる開口部を形成する。その後の工程は、第1の実施の形態と同じである。
【0174】
本実施の形態では、第1のギャップ膜181の少なくとも一部が収容部16Ac内に位置し、主磁極13と第3および第4の側壁SW3,SW4との間には、第1のギャップ膜181の少なくとも一部と第2のギャップ膜182の一部が介在している。これにより、本実施の形態によれば、主磁極13と第3および第4の側壁SW3,SW4の間に第2のギャップ膜182のみが介在している場合に比べて、第1のギャップ膜181の分だけ、主磁極13と下部シールド16Aとの間の距離を大きくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、主磁極13から記録シールド16への磁束の漏れをより少なくすることができる。その結果、本実施の形態によれば、オーバーライト特性を向上させ、エラーレートを減少させ、記録密度を向上させることが可能になる。
【0175】
また、本実施の形態では、下部シールド16Aに収容部16Acが形成され、この収容部16Acに下部突出部14の一部が収容されている。本実施の形態では、第1および第2のギャップ膜181,182の厚みに応じて収容部16Acのトラック幅方向TWの幅や深さ(基板1の上面1aに垂直な方向の寸法)を変えることにより、媒体対向面80の近傍における主磁極13の媒体対向面80に平行な断面の面積を小さくすることなく、第1および第2のギャップ膜181,182を設けることが可能である。
【0176】
なお、第2の実施の形態と同様に、下部シールド16Aの上面16Abは、実質的に媒体対向面80に垂直な方向に延在していてもよい。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1または第2の実施の形態と同様である。
【0177】
[第4の実施の形態]
次に、図22および図23を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図22は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの要部を示す断面図である。図23は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極、第1のサイドシールドおよび第2のサイドシールドを示す平面図である。本実施の形態に係る磁気ヘッドの構成は、以下の点で第3の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る磁気ヘッドでは、ギャップ部17の第1の部分は、第3の実施の形態における第1および第2のギャップ膜181,182の代わりに、以下で説明する第1のギャップ膜281および第2のギャップ膜282を有している。
【0178】
第1のギャップ膜281は、媒体対向面80に配置された端部281aを有し、第1のギャップ膜281の一部が下部シールド16Aの収容部16Ac内に位置している。図22および図23に示したように、本実施の形態では、第1のギャップ膜281は、第1のサイドシールド16Cの第1の側壁SW1および第1の後端面16Cb、第2のサイドシールド16Dの第2の側壁SW2および第2の後端面16Db、下部シールド16Aの上面16Ab、収容部16Acの前方壁面SWA、ならびに非磁性層55の凹部55aの表面に沿って配置されている。第1のギャップ膜281は、更に、第1の実施の形態における図5に示した、収容部16Acの第3の側壁SW3、第4の側壁SW4、第3の接続面SW7および第4の接続面SW8の表面に沿って配置されている。
【0179】
第2のギャップ膜282は、媒体対向面80に最も近い端部であって、媒体対向面80から離れた位置に配置された端部282aを有している。媒体対向面80から端部282aまでの距離は、例えば、第3の実施の形態で説明した媒体対向面80から端部181aまでの距離と同じである。また、第2のギャップ膜282の少なくとも一部は、下部シールド16Aの収容部16Acの上方に位置している。第2のギャップ膜282の端部282aは、収容部16Acに対して媒体対向面80により近い位置に配置されていてもよいし、収容部16Acの上方に配置されていてもよい。
【0180】
図22および図23に示したように、本実施の形態では、第2のギャップ膜282は、第1のギャップ膜281のうち、第1および第2の側壁SW1,SW2に沿った部分以外の部分に沿って配置されている。
【0181】
図22に示したように、本実施の形態では、主磁極13は、下部シールド16Aおよび非磁性層55と主磁極13との間に第1および第2のギャップ膜281,282が介在するように、下部シールド16Aおよび非磁性層55の上に配置されている。また、図23に示したように、主磁極13と第1および第2のサイドシールド16C,16Dとの間にも、第1および第2のギャップ膜281,282が介在している。本実施の形態では、第1および第2のギャップ膜281,282は、主磁極13と第3および第4の側壁SW3,SW4との間に介在している。なお、主磁極13と第1および第2の側壁SW1,SW2との間には、第1のギャップ膜281のみが介在している。
【0182】
第1のギャップ膜281は、例えば、第3の実施の形態で説明した第2のギャップ膜182と同じ材料によって形成されている。第1のギャップ膜281の厚みは、例えば、第3の実施の形態で説明した第2のギャップ膜182の厚みと同じである。第2のギャップ膜282は、例えば、第3の実施の形態で説明した第1のギャップ膜181と同じ材料によって形成されている。第2のギャップ膜282の厚みは、例えば、第3の実施の形態で説明した第1のギャップ膜181の厚みと同じである。
【0183】
なお、第2のギャップ膜282の形状および配置は、上記の例に限られない。例えば、第2のギャップ膜282は、その全体が収容部16Acの上方に位置していてもよい。あるいは、第2のギャップ膜282の一部は、第1のギャップ膜281のうち、第1および第2の側壁SW1,SW2に沿った部分に沿って配置されていてもよい。この場合、主磁極13と第1および第2の側壁SW1,SW2との間には、第1のギャップ膜281と第2のギャップ膜282が介在する。
【0184】
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法について説明する。本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法では、ギャップ部17の第1の部分を形成する工程が、第3の実施の形態と異なっている。本実施の形態におけるギャップ部17の第1の部分を形成する工程は、第1のギャップ膜281を形成する工程と、第1のギャップ膜281の上に第2のギャップ膜282を形成する工程とを含んでいる。
【0185】
第1のギャップ膜281を形成する工程は、第1の実施の形態における図15Aおよび図15Bに示した工程の後に行われる。第1のギャップ膜281を形成する工程では、積層体の上面全体の上に、第1のギャップ膜281を形成する。第1のギャップ膜281は、下部シールド16Aの収容部16Ac内および非磁性層55の凹部55a内にも形成される。第1のギャップ膜281の材料としてアルミナを用いる場合には、例えば原子層堆積法(ALD)によって、第1のギャップ膜281を形成する。第1のギャップ膜281の材料としてRuを用いる場合には、例えば化学的気相成長法(CVD)によって、第1のギャップ膜281を形成する。
【0186】
第2のギャップ膜282を形成する工程は、第1のギャップ膜281を形成する工程の後に行われる。第2のギャップ膜282を形成する工程では、例えばリフトオフ法によって、第2のギャップ膜282を形成する。第2のギャップ膜282をリフトオフ法によって形成する場合には、まず、第1のギャップ膜281の上に、第2のギャップ膜282が形成される予定の部分に開口部を有するマスクを形成する。このマスクは、フォトリソグラフィによってフォトレジスト層をパターニングして形成する。次に、マスクを残したまま、積層体の上面全体の上に、後に第2のギャップ膜282となる非磁性膜を形成する。非磁性膜(第2のギャップ膜282)の材料としてアルミナを用いる場合には、例えば原子層堆積法(ALD)によって、非磁性膜を形成する。次に、マスクをリフトオフする。これにより、残った非磁性膜は、第2のギャップ膜282となる。
【0187】
本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法では、次に、第1および第2のギャップ膜281,282を選択的にエッチングして、第1および第2のギャップ膜281,282に、磁性層34(図6参照)の上面を露出させる開口部と、図示しない第1の接続層の上面を露出させる開口部を形成する。その後の工程は、第3の実施の形態と同じである。
【0188】
本実施の形態では、第2のギャップ膜282の少なくとも一部が収容部16Acの上方に位置し、主磁極13と第3および第4の側壁SW3,SW4との間には、第1のギャップ膜281の一部と第2のギャップ膜282の少なくとも一部が介在している。これにより、本実施の形態によれば、主磁極13と第3および第4の側壁SW3,SW4に第1のギャップ膜281のみが介在している場合に比べて、第2のギャップ膜282の分だけ、主磁極13と下部シールド16Aとの間の距離を大きくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、主磁極13から記録シールド16への磁束の漏れをより少なくすることができる。その結果、本実施の形態によれば、オーバーライト特性を向上させ、エラーレートを減少させ、記録密度を向上させることが可能になる。
【0189】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第3の実施の形態と同様である。
【0190】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、請求の範囲の要件を満たす限り、主磁極13、下部シールド16A、上部シールド16B、第1のサイドシールド16Cおよび第2のサイドシールド16Dの形状は、各実施の形態に示した例に限られず、任意である。
【符号の説明】
【0191】
13…主磁極、14…下部突出部、15…本体、15A…前方部、15B…後方部、16A…下部シールド、16Ac…収容部、16C…第1のサイドシールド、16D…第2のサイドシールド。
図1
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図10A
図10B
図11A
図11B
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図12B
図13A
図13B
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図13D
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図14C
図14D
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図15B
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