(54)【発明の名称】宿主クローンの識別方法、抗体混合物の生産方法、組換え宿主細胞の作出方法、トランスジェニック非ヒト動物またはトランスジェニック植物、抗体の混合物、薬学的組成物、および抗体の混合物の使用
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも2種の異なる抗体の混合物を生産する少なくとも1種の宿主細胞クローンを識別するための方法であって、少なくとも2種の異なる抗体の前記混合物が望ましい効果を持ち、次のステップ
(i)宿主細胞に、1つの軽鎖をコード化する核酸配列および2種の異なる重鎖をコード化する核酸配列群を提供するステップであり、前記重鎖および軽鎖が互いにペアを組むことが可能であるもの、
(ii)前記宿主細胞の少なくとも1つのクローンを、前記核酸配列群の発現を助長する条件下に培養するステップ、
(iii)宿主細胞の前記少なくとも1つのクローンを、機能上のアッセイによって望ましい治療効果を有する少なくとも2種の異なる抗体の混合物の生産のために選別するステップ、および
(iv)望ましい治療効果を有する少なくとも2種の異なる抗体の混合物を生産する少なくとも1つのクローンを識別するステップ
を含み、二重特異性抗体の量が(その理論的な割合である)50%より低い、方法。
前記宿主細胞は、前記細胞において前記タンパク質をコード化する核酸の増幅の必要性を伴わずに、タンパク質の高レベル発現が可能である、請求項1または2に記載の方法。
共通の軽鎖をコード化する核酸配列および前記共通の軽鎖とペアを組むことが可能な2種の異なる重鎖をコード化する核酸配列または配列群を含み、前記軽鎖および重鎖をコード化する前記核酸配列群が、組織特異的プロモーターの調節下にあり、そして前記重鎖はそれらの定常領域において、異なる重鎖の間でペアが組まれることを減少または防ぐのに十分に異なり、その結果、動物または植物によって生産される二重特異性抗体の量は二重特異性抗体の理論的な割合と比べて減少し、そこでは、二重特異性抗体の理論的な割合は50%である、トランスジェニック非ヒト動物またはトランスジェニック植物。
前記共通の軽鎖および/または重鎖をコード化する核酸配列または配列群は抗体提示の選定ステップを含む方法によって得られている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記機能上のアッセイは、結合アッセイ、アポトーシスアッセイ、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)アッセイ、補体依存性細胞障害性(CDC)アッセイ、細胞成長又は増殖の抑制(細胞分裂停止効果)アッセイ、細胞殺滅(細胞毒性効果)アッセイ、細胞情報伝達アッセイ、標的細胞に対する病原体の結合の抑制を測定するためのアッセイ、血管内皮増殖因子(VEGF)の分泌又は他の分泌分子を測定するアッセイ、静菌、殺菌性の活性、ウイルスの中和についてのアッセイ、インシトゥの雑種形成方法、標識化方法が含まれるもので、抗体が結合する部位に対する免疫系の成分の誘引力を測定するアッセイのようなもの、マウスの腫瘍モデル、自己免疫病、ウイルス−感染か、又は細菌−感染させた齧歯動物のモデル又は霊長類モデルが含まれるもので、動物モデルのようなインビボのアッセイの群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
共通の軽鎖および異なる可変領域を有する2種の異なる重鎖を含み、2種の異なる重鎖は前記共通の軽鎖にペアを組むことが可能であり、および前記重鎖はさらに、それらの定常領域において、異なる重鎖の間でペアが組まれることを減少または防ぐのに十分に異なり、その結果、二重特異性抗体の量は二重特異性抗体の理論的な割合と比べて減少し、そこでは二重特異性抗体の理論的な割合は50%である、少なくとも2種の異なる抗体の混合物。
混合物からの2つの抗体は同じ抗原上の異なるエピトープに結合するか、または混合物を含む1つの抗原に存在する異なる抗原分子に結合する、請求項12に記載の少なくとも2種の異なる抗体の混合物。
ヒトまたは動物の対象体での疾病または疾患の処置または診断における使用のための請求項12または13のいずれか一項に記載の少なくとも2種の異なる抗体の混合物。
ヒトまたは動物の対象体での疾病または疾患の処置または診断のための薬剤の調製における、請求項12または13に記載の少なくとも2種の異なる抗体の混合物の使用。
疾病または疾患は、自己免疫疾患、移植片対宿主の拒絶反応、およびガンの、脳、頭部および首、胸、前立腺、大腸、肺の固形腫瘍、血液学的腫瘍、B細胞腫瘍、腫瘍性疾患で、白血病、リンパ腫、肉腫、癌腫、神経細胞腫瘍、扁平細胞癌腫、胚細胞腫瘍、転移、未分化型腫瘍、精上皮腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、混合細胞腫瘍、および感染性因子によって生じる新形成が含まれるものの群から選ばれる、請求項16に記載の使用。
疾病または疾患は、細菌、ウイルス、または菌類の、スタフィロコッカス・アウレウス(S. aureus、黄色ブドウ球菌)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス菌種(Aspergillus species)、酵母、リッサウイルス(Lyssavirus)、たとえば、ラビエスウイルス(rabies virus、狂犬病ウイルス)、バリセラゾスターウイルス(Varicella-Zoster Virus、水痘帯状疱疹ウイルス)、アデノウイルス(Adenoviruses)、レスピレートリー(呼吸器系)シンシチウムウイルス(Respiratory Syncitium Virus)、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)、ヒトメタニューモウイルス(Human Metapneumovirus)、インフルエンザウイルス(Influenzavirus)、ウエストナイルウイルス(West Nile Virus)、重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome、SRSA)を生じさせるウイルス、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis、炭疽菌)、クロストリジウム・ボツリヌム・トキシン(Clostridium botulinum toxin)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(ウェルシュ菌)・イプシロン・トキシン(Clostridium perfringens epsilon toxin)、エルシニア・ペスチス(Yersinia Pestis、ペスト菌)、フランシセラ・ツラリエンシス(Francisella tulariensis、野兎病菌)、コクシエラ・バーネッティ(Coxiella burnetii)、ブルセラ菌種(Brucella species)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)・エンテロトキシンB(enterotoxin B)、バリオラ・メジャー(Variola major、大痘瘡)、髄膜脳炎症候群を生じさせるアルファウイルス(alphaviruses)(EEEV、VEEV、およびWEEV)、エボラ、マールブルグおよびフニンウイルスのような出血性熱をもたらすと知られるウイルスによって生じるか、またはニパーウイルス(Nipah virus)、ハンタウイルス(Hantaviruses)、ティックボーン・エンセファリティスウイルス(Tickborne encephalitis virus、ダニ媒介脳炎ウイルス)およびイエロー・フィーバーウイルス(Yellow fever virus、黄熱病ウイルス)のようなウイルスに対するもの、または毒素、たとえば、リシナス・コミュニス(Ricinus communis、トウゴマ)からのリシン毒素に対するものである、請求項16に記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の概略)1種の局面では、本発明は、抗体の混合物を組換え宿主において生産する方法を提供するもので、この方法は、次の工程で構成される:
組換え宿主細胞において、少なくとも1種の軽鎖及び前記少なくとも1種の軽鎖と対合可能な少なくとも3種の異なる重鎖を暗号化する核酸配列(sequence)、又は核酸配列群(sequences)を発現させる工程。本発明の更なる局面は、予め選定される重鎖-軽鎖の組合せを用いることによる、潜在的に非-機能的な軽鎖-重鎖の対合の生成の排除である。単一の軽鎖及び多くの異なる重鎖から構築されるファージ提示ライブラリが、著しく明確な結合特性を有する抗体断片を暗号化できることが認識されている。この特色を用い、同じ軽鎖を持つが、同じ標的か、又は異なる標的に対するもので、そこでは、標的はその全体の抗原又はエピトープであり得る、異なる重鎖を持たない抗体を見出すことができる。かかる異なる標的は、例えば、同じ表面上(例えば、細胞か、又は組織)にあってよい。ファージ提示により得られるかかる抗体断片は、望ましい形式、例えば、IgG、IgA又はIgMのためのベクタ中にクローン化することができ、及びこれらの形式を暗号化する核酸配列を用いて、宿主細胞に形質移入することができる。1種のアプローチでは、H鎖及びL鎖を異なる構築物により暗号化することができ、それは、細胞への形質移入に際し、そこでそれらが発現し、無傷のIg分子を生じさせる。異なるH鎖の構築物が、単一のL鎖の構築物を用いて細胞中に形質移入されるとき、H-鎖及びL-鎖が組み立てられ、すべての可能な組合せを形成する。しかし、異なる軽鎖が、二重特異性抗体の生産のためのように発現されるアプローチと対照をなして、この方法は機能的な結合領域しかもたらさない。それは、宿主、例えば、単一の細胞株が組換え抗体の許容可能なレベルを発現でき、前記細胞において、抗体を暗号化する核酸配列を最初に増幅させる必要のないときに、特に、有用である。利点は、前記核酸の限られたコピー数だけを有する細胞株が遺伝学的により一層安定と考えられることであり、その理由は、多数のこれらのコピーが存在する細胞株においてよりも、重鎖を暗号化する配列の間により一層少ない組換えしかないからである。本発明に従う方法において用いるのに適切な細胞株は、ヒト細胞株PER.C6
TMである。この方法を用いて、確定された(defined)特異性を有する抗体の混合物を、単一細胞クローンから、安全で、制御された、及び一貫した様式において、生産することができる。
【0015】
本発明は、抗体の混合物を組換え宿主において生産するための方法を提供し、この方法は、次の工程で構成させる:少なくとも1種の軽鎖及び前記少なくとも1種の軽鎖と対合可能な少なくとも3種の異なる重鎖を暗号化する核酸配列又は核酸配列群を、組換え宿主細胞において発現させる工程。好ましい局面において、組換え宿主細胞は、前記少なくとも3種の異なる重鎖と対合可能な共通の軽鎖を暗号化する核酸配列を含み、そのようにして、生産される抗体が共通の軽鎖を含む。明らかに、当業者は、“共通”がまた、アミノ酸配列が同一でない軽鎖の機能的な同等物にも言及することを認識する。前記軽鎖には、多くの変異形が存在し、そこでは、機能的な結合領域の形成に物質的に影響を及ぼさない突然変異(欠失、置換、付加)がある。
【0016】
本発明は、更に、組換え的に(recombinantly)生産される抗体の混合物を含む組成物を提供し、そこでは、少なくとも3種の異なる重鎖配列が前記混合物において代表される。1具体例では、かかる混合物の軽鎖は共通配列を持つ。抗体の混合物は、本発明に従う方法によって生産することができる。好ましくは、抗体の混合物は、それを構成する個々の抗体よりもより一層有効であり、更に好ましくは、混合物は機能的アッセイ(functional assay)において相乗的に働く。
【0017】
本発明は、更に、抗体の混合物を生産するための組換え宿主細胞、及びかかる宿主細胞を作出するための方法を提供する。
【0018】
軽鎖及び1種よりも多い種類の重鎖を暗号化する核酸配列の形質移入から得られる独立したクローンは、混合物において異なる抗体を異なるレベルで発現することができる。本発明の別の局面は、抗体の最も有力な混合物のために、機能的アッセイを用いてクローンを選定することである。本発明は、従って、更に、抗体の混合物を生産する少なくとも1種の宿主細胞のクローンを識別するための方法を提供し、ここでは、前記抗体の混合物が機能的アッセイに従う望ましい効果を持ち、この方法は次の工程を含む:(i)宿主細胞に、少なくとも1種の軽鎖を暗号化する核酸配列及び少なくとも2種の異なる重鎖を暗号化する核酸配列を提供する工程であり、そこでは、前記重鎖及び軽鎖が互いに対合可能であり;(ii)前記宿主細胞の少なくとも1種のクローンを、前記核酸配列の発現が助長される条件下で培養する工程;(iii)前記宿主細胞の少なくとも1種のクローンを、望ましい効果を持つ抗体の混合物の生産のために、機能的アッセイによって選別する工程;及び(iv)望ましい効果を持つ抗体の混合物を生産する少なくとも1種のクローンを識別する工程。本発明に従うこの方法は、所望の場合、高-処理の(high-throughput)手法を用いて行うことができる。この方法により識別されるクローンは、本発明に従う抗体混合物を生産するのに用いることができる。
【0019】
本発明は、更に、抗体の混合物を発現することができるトランスジェニックな非-ヒト動物及びトランスジェニック植物又はトランスジェニック植物細胞、及びこれらによって生産される抗体の混合物を提供する。
【0020】
本発明は、更に、組換え的に生産される抗体の混合物及び適切な担体を含む薬学的組成物を提供する。
【0021】
本発明は、更に、処置又は診断における使用のための、及びヒトか、又は動物の対象物における疾病又は疾患の処置又は診断において用いるための薬剤の調製用の抗体混合物を提供する。
【0022】
本発明は、更に、単一の宿主細胞のクローンから、異なるアイソタイプを含む抗体の混合物を生産するための方法を提供する。
【0023】
本発明は、望ましい効果を持つ抗体の混合物を機能的アッセイにおいて識別するための方法を提供する。
【0024】
本発明は、更に、標的に結合可能な抗体の混合物を生産するための方法を提供し、この方法は次の工程を含む:i)抗体を含むファージライブラリを、標的を含む物質と接触させる工程、ii)前記標的に対するファージ結合を選定する少なくとも1種の工程、iii)前記標的に対する抗体結合を含む少なくとも2種のファージを識別する工程であり、前記少なくとも2種の抗体が共通の軽鎖を含み、iv)軽鎖を暗号化する核酸配列及び前記少なくとも2種の抗体の重鎖を暗号化する核酸配列又は配列群を、宿主細胞中に導入する工程、v)前記宿主細胞のクローンを、前記核酸配列の発現を助長する条件下で培養する工程。
【0025】
(発明の詳細な記載)
本発明の目的は、抗体の混合物を組換え宿主において生産するための方法を提供することであり、この方法は次の工程を含む:組換え宿主細胞において、少なくとも1種の軽鎖及び前記少なくとも1種の軽鎖と対合可能な少なくとも3種の異なる重鎖を暗号化する核酸配列又は核酸配列群を発現させる工程。本発明に従って、軽鎖及び重鎖は、対合するとき、機能的抗原結合ドメインを形成する。機能的抗原結合ドメインは、抗原に対し特異的に結合可能である。
本発明に従う1種の局面において、本発明に従う抗体の混合物を生産するための方法は、更に、細胞か、又は宿主細胞培養物から抗体を回収する工程を含み、更なる使用にとって適切な抗体の混合物を得る。本発明の1具体例では、方法を、抗体の混合物の生産のために提供し、この方法は次の工程を含む:組換え宿主細胞において、共通の軽鎖を暗号化する核酸配列及び前記共通の軽鎖と対合可能な少なくとも3種の異なる重鎖を暗号化する核酸配列又は配列群を発現させる工程であり、そのようにして、生産される抗体が共通の軽鎖を含む。1種の局面において、共通の軽鎖は、各軽鎖/重鎖の対において同一である。
【0026】
本明細書において用いるように、用語“抗体”は、抗原上のエピトープに結合する1種又はそれより多い種類のドメインを含むポリペプチドを意味し、そこでは、かかるドメインが、抗体の可変領域から導かれるか、又はかかる領域との配列の同一性を持つ。抗体の構造を
図1において模式的に表す。本発明に従う抗体の例には、完全な長さの抗体、抗体の断片、二重特異性抗体、免疫複合体、及び同種のものが包含される。本発明に従う抗体は、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl、IgA2、IgD、IgE、IgM、及び同種のもの、又はこれらの誘導体でよい。抗体の断片には、Fv、Fab、Fab'、F(ab')
2断片、及び同種のものが包含される。本発明に従う抗体は、任意の起源、ネズミを含む、1種の起源よりも多い種類の、すなわち、キメラの、ヒト化された、又は十分なヒト性の抗体であることができる。免疫複合体は、抗原結合ドメイン、及び毒素、放射標識(radiolabel)、酵素、及び同種のもののような非-抗体部分を含む。“抗原結合ドメイン”は、好ましくは、重鎖及び軽鎖の可変領域を含み、興味のある抗原に特異的な結合に関与する。組換え抗体は、宿主細胞において、双方の重鎖及び軽鎖を発現させることによって調製される。同様に、それらのそれぞれの軽鎖(又は共通の軽鎖)を有する2種の鎖を発現させることにより、そこでは、各々の重鎖/軽鎖はそれ自身の特異性を持ち、いわゆる“二重特異性”抗体を調製することができる。“二重特異性抗体”は、2種の同一でない(non-identical)重鎖-軽鎖の組合せを含み(
図2)、及び二重特異性抗体の双方の抗原結合領域は、異なる抗原か、又は抗原上の異なるエピトープを認識することができる。
【0027】
本発明に従う“共通の軽鎖”は、同一であるか、又はアミノ酸配列の相違を持つことができる軽鎖を言及する。前記軽鎖は、本発明の範囲から逸脱しないで、同じ重鎖と組み合わせられるとき、抗体の特異性を変えない突然変異を含むことができる。例えば、本明細書で用いるような共通の軽鎖の定義の範囲内で、同一でないが、まだ機能的に同等な、例えば、保存的なアミノ酸の変化、重鎖と対合されるときに結合の特異性に寄与しないか、又は部分的にしか寄与しない領域におけるアミノ酸の変化、及び同種のものを導入し、及び試験することにより、軽鎖を調製するか、又は見出すことができる。本発明のある局面は、機能的抗原結合ドメインを有する抗体を形成するために、1種の同一の軽鎖を共通の軽鎖として用い、異なる重鎖と組み合わせることである。1種の共通の軽鎖の使用は、軽鎖及び重鎖の対合が、機能的でない、言い換えれば、標的抗原又は抗原群に結合することができない抗原結合ドメインをもたらすヘテロ二量体の形成を回避する。共通の軽鎖及び2種の重鎖の使用は、異なる目的のために、つまり、機能的な二重特異性抗体の形成を抗体混合物の複雑さを犠牲にして高めるために、[Merchant(マーチャント)等、1998年;WO 98/50431号]により提案されている。これらの出版物は、1種の定義された、及び望ましい二重特異性抗体を優先的に(preferentially)生産する方法を教示し、それにより、生産される混合物の複雑さを最小にする。それ故に、Merchantは、単一特異性(monospecific)抗体の生産を妨げるように特別に教示し、その理由は、これらが、それらの出版物において記述されている二重特異性抗体の生産のための処理における望ましくない副産物だからである。明らかに、従来技術において、非-機能的結合ドメインの形成を回避する組換え宿主細胞からの抗体の複合混合物を調製すること、又はその利点は、ましていかにかは言うまでもなく、そこには教示されていない。本発明に従う方法において、共通の軽鎖と対合可能な少なくとも3種の重鎖が発現される。他の具体例では、本発明に従う宿主細胞が、共通の軽鎖と対合可能な4、5、6、7、8、9、10、又はそれよりも多い種類の重鎖を暗号化する核酸配列を提供され、生産される抗体の混合物の複雑さを高める。
【0028】
本発明に従う“異なる重鎖”は、可変領域において異なり、及び同じ定常領域を持つことができる。他の具体例では、そこでは、それが前後関係から明確であり、それらは、同じ可変領域を持ち、及び定常領域において異なり、例えば、別のアイソタイプであることができる。Fc-部分のような異なる定常領域を持つ抗体の混合物の使用は、免疫系の異なるアームがヒトか、又は動物体の処置において動態化されるべき場合、有利であるかもしれない。さらに他の具体例では、また、前後関係から明確にするために、双方の可変領域及び定常領域が異なることができる。
【0029】
本発明に従う“抗体の混合物”は、少なくとも2種の同一でない抗体を含むが、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれよりも多い種類の異なる抗体を含むことができ、及び多クローン性か、又は複雑さ及び機能的抗原結合分子の数に関して少なくとも少クローン性の(oligoclonal)抗体の混合物に似ていることがある。本発明に従い生産される混合物は、通常、二重特異性抗体を含む。所望の場合、混合物における単一特異性抗体の形成が二重特異性抗体の形成に対して恵まれることがある。n種の重鎖及び1種の共通の軽鎖が、本発明に従い宿主細胞において等しいレベルで発現されるとき、本発明に従う方法によって生産される二重特異性抗体の理論的な割合は(l-l/n)*100%である。本発明に従う方法によって生産される混合物における異なる抗体の総数は、論理上n+{(N
2-n)/2}であり、その(n
2-n/2)が二重特異性抗体である。異なる重鎖の発現のレベルの比率の歪みは、理論的な値から逸脱する値をもたらすことがある。二重特異性抗体の量は、また、すべての重鎖が等しい効率で対合しない場合、これらの理論的な値と比較し、減少させることができる。例えば、重鎖を設計することは、例えば、上記Merchantにより提案されているものとは逆に、特異的な及び相補的な相互作用表面を選定された重鎖の間に導入し、ヘテロ二量体の対合にわたりホモ二量体の対合を促進することによって可能である。重鎖を、また、混合物におけるヘテロ二量体の形成が最小になるように選定することができる。この具体例の特別な形態には、2種又はそれよりも多い種類の異なるアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG3、IgA)の重鎖が包含される。異なるアイソタイプの重鎖が同じ宿主細胞において本発明及びこれらの重鎖に対合することができる1種の軽鎖に従って発現されるとき、二重特異性抗体の量は、おそらく、非常に低いレベルまでか、又は検出不可能なレベルにまでさえも減少する。したがって、二重特異性抗体があまり好ましくないとき、本発明に従う抗体の混合物を生産することが可能で、ここでは、共通の軽鎖を暗号化する核酸配列及び前記共通の軽鎖に対合可能な異なる可変領域を有する少なくとも2種の異なる重鎖を暗号化する核酸配列を、組換え宿主において発現させ、及びそこでは、前記重鎖は、更に、異なる重鎖の間の対合を減少させるか、又は防止するのに十分なように、それらの定常領域において異なる。本発明に従う抗体の混合物は、単一の宿主細胞から、すなわち、同じ組換え核酸配列を含む細胞の集団から導かれるクローンから生産することができる。
【0030】
本発明に従う異なる重鎖は、別々の核酸分子上で暗号化され得るが、また、前記少なくとも3種の重鎖を暗号化する異なる領域を含む1種の核酸分子上に存在することもあることは、理解される。核酸分子は、通常、軽鎖及び/又は重鎖の前駆体を暗号化し、それは発現されたとき宿主細胞から分泌され、それにより、成熟形態を産出するように生成が処理される。これらの、及び宿主細胞における抗体の発現の他の局面は、この技術において、通常の技術を持つ者によく知られている。
【0031】
本明細書に用いるように“組換え宿主細胞”は、1種又はそれよりも多い種類のいわゆる導入遺伝子(transgenes)、すなわち、前記細胞において自然に存在しない組換え核酸配列を含む細胞である。これらの細胞が前記核酸配列の発現を助長する条件下で培養されるとき、これらの導入遺伝子が前記宿主細胞において発現され、これらの核酸配列によって暗号化される組換え抗体を生産する。本発明に従う宿主細胞は、導入遺伝子が導入された単一の宿主細胞から導かれるクローンからの培養物の形態において存在する場合がある。抗体を暗号化する核酸配列の発現を得るため、当業者にとって、かかる発現を推進可能な配列が抗体を暗号化する核酸配列に機能的に連結され得ることはよく知られている。機能的に連結されるとは、これらの配列が抗体又はそれらの前駆体の発現を推進することができるように、抗体の断片又はそれらの前躯体を暗号化する核酸配列が、発現の推進を可能にする配列に連結されることを記述するのを意味する。有用な発現ベクタは、この技術において入手することができ、例えば、Invitrogen(インビトロゲン社)のpcDNAベクタ系列である。興味のあるポリペプチドを暗号化する配列を、暗号化されたポリペプチドの転写及び翻訳を管理する配列に関連して適切に挿入し、得られる発現カセットは、発現と称される、興味のあるポリペプチドを生産するのに有用である。発現を推進する配列には、プロモータ、エンハンサ及び同種のもの、及びそれらの組合が包含される。これらは宿主細胞において、機能可能であるべきであり、それにより、それらに機能的に連結される核酸配列の発現を推進する。プロモータは、構成的であるか、又は調節されることができ、及び様々な起源、ウイルスを含み、原核生物、又は真核生物の起源から得られるか、又は人工的に設計することができる。興味のある核酸の発現は、自然なプロモータか、又はそれらの誘導体からか、又は完全に異種のプロモータからのものであってよい。真核生物細胞における発現のための、いくつかのよく知られ、及び大いに用いられるプロモータには、アデノウイルス、例えば、E1Aプロモータのような、ウイルスから導かれるプロモータ、CMV即時型(IE、immediate early)プロモータのような、サイトメガロウイルス(CMV)から導かれるプロモータ、サル(Simian)ウイルス40(SV40)から導かれるプロモータ、及び同種のものが包含される。適切なプロモータは、また、メタロチオネイン(methallothionein)(MT)プロモータ、伸長因子1α(EF-1α)プロモータ、アクチンプロモータ、免疫グロブリンプロモータ、熱ショックプロモータ、及び同種のもののような、真核生物細胞から導くことができる。興味のある配列の宿主細胞における発現の推進が可能な任意のプロモータ又はエンハンサ/プロモータが本発明において適する。1具体例では、発現の推進が可能な配列には、CMVプロモータからの領域、好ましくは、CMV即時型遺伝子エンハンサ/プロモータのヌクレオチド-735から+95までを含む領域を含む領域が包含される。熟練者は、本発明で用いられる発現配列が、インスレータ(絶縁体)、マトリクス付着領域(attachment region)、スター要素(STAR elements)(WO 03/004704号)、及び同種のもののような発現を安定化させるか、又は高めることができる要素と適切に組み合わせることができることに気付く。これは、発現の安定性及び/又はレベルを高めることができる。組換え宿主細胞におけるタンパク質の生産は、広範囲に、例えば、Current Protocols in Protein Science(タンパク質科学の現在のプロトコル)、1995年、Coligan(コリガン) JE、Dunn(ダン) BM、Ploegh (プロエイ) HL、Speicher(スパイカー) DW、Wingfield(ウィンフィールド) PT、ISBN 0-471-11184-8; Bendig(ベンディゴ)、1988年において記述されている。細胞を培養することを行い、それが新陳代謝し、及び/又は成長し、及び/又は分裂し、及び/又は興味のある組換えタンパク質を生産することを可能にする。これは、当業者によく知られる方法によって達成することができ、及び細胞に対して栄養素を提供することが含まれるが、それに限られない。これらの方法には、表面に接着する増殖、懸濁液における増殖、又はそれらの組合せが包含される。いくつかの培養条件を、この技術でよく知られる方法によって最適化して、タンパク質生産の収率を最適化することができる。例えば、培養は、皿、ローラボトルにおいて、又は生物反応器において、バッチ、流加バッチ(fed-batch)、連続系、中空繊維、及び同種のものを用いて行うことができる。細胞培養を通して組換えタンパク質の大規模な(連続的な)生産を達成するためには、この技術において、懸濁液において増殖可能な細胞を持つことが好ましく、及び動物-又はヒト-誘導血清又は動物-又はヒト-誘導血清成分の欠損下に培養可能な細胞を持つことが好ましい。したがって、精製がより一層容易であり、及び培養培地から導かれる付加的な、動物か又はヒトのタンパク質が欠損するため、安全性が高められ、一方で、この系は、また、非常に信頼できると共に、再現性において合成培地が最良である。
本発明に従う“宿主細胞”は、組換えDNA分子を発現することができる任意の宿主細胞であり得、
Eschericia(エシェリキア属)[例えば、
E. coli(大腸菌)]、
Enterobocter(エンテロバクター属)、
Salmonalla(サルモネラ属)、
Bacillus(バシラス属)、
Pseudomonas(シュードモナス属)、
Streptomyces(ストレプトマイセス属)のような細菌、
S. cerevisiae(サッカロマイセス・セレヴィシエ、出芽酵母)、
K. lactis(ケー.ラクティス)、
P. pastoris(ピー.パストリス)のような酵母、
Candida(カンジダ属)、又はyarrowia(ヤロワイア)、
Neurospora(ニューロスポラ属、パンカビ属)、
Aspergillus oryzae(アスペルギルス・オリザ、コウジカビ)、
Aspergillus nidulans(アスペルギルス・ニドランス、偽巣性コウジ菌)及び
Aspergillus niger(アスペルギルス・ニガ、クロカビ)のような糸状菌類、
Spodoptera frugiperda(スポドプテラ・フルギペルタ)のSF-9又はSF-21細胞のような昆虫細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、BHK細胞、SP2/0細胞及びNS-0骨髄腫細胞を含むマウス細胞のような哺乳類細胞、COS及びVero細胞のような霊長類細胞、MDCK細胞、BRL 3A細胞、雑種細胞腫(ハイブリドーマ)、腫瘍-細胞、不死化一次細胞(primary cell)、W138、HepG2、HeLa(ヒーラ)、HEK293、HT1080のようなヒト細胞又はPER.C6
TMのような胚性網膜細胞、及び同種のものを包含する。発現系の選択には、哺乳類細胞の発現ベクタ及び抗体が適切にグリコシル化されるような宿主が包含されることが多い。ヒト細胞株、好ましくは、PER.C6
TMを有利に用い、完全なヒト性のグリコシル化パターンを有する抗体を得ることができる。細胞を成長させるか、又は増殖させるための条件[例えば、Tissue Culture(組織培養)、Academic Press(アカデミックプレス社)、Kruse(クルーズ)及びPaterson(パターソン)、editors (編)(1973年)を参照]及び組換え生産物の発現のための条件は、幾分か異なってよく、及び通常、処理の最適化が行われ、当業者に一般に知られる方法に従って、生産物の収率及び/又は細胞の増殖が互いに関して高められる。概して、哺乳類細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコル、及び実用的な技術は、Mammalian Cell Biotechnnology(哺乳類細胞生物工学):a Practical Approach(実用的なアプローチ)[M. Butler(バトラー)、ed. (編)、IRL Press(出版社)、1991年]に見出すことができる。組換え宿主細胞における抗体の発現は、この技術において広く記述されている(例えば、EP 0120694号;EP 0314161号;EP 0481790号;EP 0523949号;US patent 4816567号;WO 00/63403号を参照)。軽鎖及び重鎖を暗号化する核酸分子は染色体外コピーとして存在し、及び/又は宿主細胞の染色体中に安定して組み込まれることができる。生産の安定性に関して、後者が好ましい。
【0032】
抗体は、本発明に従い細胞において発現され、及び細胞から、又は好ましくは、細胞培養培地から、当業者に一般に知られる方法によって、回収することができる。かかる方法には、沈殿、遠心分離、ろ過、寸法-排除(size-exclusion)クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、陽イオン-及び/又は陰イオン-交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、及び同種のものが包含される。IgG分子を含む抗体の混合物について、プロテインA又はプロテインGのアフィニティクロマトグラフィを適切に用いることができる(例えば、US patents 4,801,687号及び5,151,504号参照)。
【0033】
1具体例では、本発明に従い生産される混合物からの少なくとも2種の抗体は、異なる特異性及び/又は親和性を持つ重鎖-軽鎖の二量体を含む。特異性は、抗原又はそのエピトープが抗体によって制約されるかを定める。親和性は、特定の抗原又はエピトープへの結合の強さの尺度である。特定の結合は、少なくとも5*10E4リットル/モル、より好ましくは、5*10E5、より一層好ましくは、5*10E6より大きく、更により一層好ましくは、5*10E7、又はそれよりも多い親和性(Ka)での結合として定義される。典型的に、単クローン抗体は、1モルにつき10E10リットルまで、あるいはより一層高く上がる親和性を持つ。本発明に従い生産される抗体の混合物は、同じ抗原分子上の異なるエピトープに結合する少なくとも2種の抗体を含むことができるか、及び/又は混合物を含む1種の抗原において存在する異なる抗原分子に結合する少なくとも2種の抗体を含むことができる。混合物を含むかかる抗原は、毒素、膜成分及びタンパク質、ウイルスの外被タンパク質のような、部分的にか、又は全体的に精製される抗原の混合物であることができ、又はそれは、正常な細胞、疾病細胞、細胞の混合物、組織又は組織の混合物、腫瘍、器官、完全なヒトか、又は動物の対象物、菌類又は酵母、細菌又は細菌培養物、ウイルス又はウイルス系統(virus stock)、これらの組合せ、及び同種のものであってよい。単一の抗原又はエピトープだけに結合できる単クローン抗体とは違い、本発明に従う抗体の混合物は、従って、多クローン抗体又は少クローン抗体の混合物の多くの利点を持ち得る。
【0034】
好適例では、本発明の方法に従う宿主細胞は、ヒトの免疫グロブリンの高レベル発現が、すなわち、少なくとも1pg/細胞/日、好ましくは、少なくとも10pg/細胞/日及び更により一層好ましくは、少なくとも20pg/細胞/日又はそれよりも多くが、前記宿主細胞における重鎖及び軽鎖を暗号化する核酸分子の増幅についての必要性なしに、可能である。好ましくは、本発明に従う宿主細胞は、発現されるべき各々の組換え核酸の1及び10コピーの間をそれらのゲノムにおいて含む。この技術では、例えば、CHO細胞において、興味あるタンパク質を暗号化する核酸配列のコピー数の増幅を用いて、細胞によって組換えタンパク質の発現レベルを増加させることができる(例えば、Bendig(ベンディグ)、1988年;Cockett(コケット)等、1990年;US patent 4,399,216号を参照)。これは、現在、広く用いられる方法である。しかし、著しく時間のかかる努力が、望ましい高コピー数及び高発現レベルを有するクローンが確立される前に求められ、及び更に、発現カセットの非常に高いコピー数(何百までも)を宿すクローンは不安定であることが多い[例えば、Kim(キム)等、1998年]。したがって、本発明の好適例では、興味のある抗体の高レベル発現のためのかかる増幅戦略を要求しない宿主細胞を用いる。これは、一貫した様式において、本発明に従う抗体の混合物を発現する宿主細胞の安定したクローンの迅速な産生(generation)を可能にする。本発明者は、本発明に従う宿主細胞を得、サブクローン化し、及び更に、少なくともおよそ30の細胞分裂[population doublings(集団倍加数)]の間繁殖(propagate)させると共に、本発明に従う抗体の混合物を、安定した様式において、淘汰圧(selection pressure)の欠損下に発現させることができるという証拠を提供する。したがって、ある局面において、本発明の方法は、少なくとも20、好ましくは25、更に好ましくは、30の集団倍加数の間、細胞を培養することを包含し、及び他の局面において、本発明に従う宿主細胞は、少なくとも20、好ましくは25、更に好ましくは30の集団倍加数に耐え、及び更に、本発明に従う抗体の混合物を発現することができる。本発明はまた、免疫グロブリンの混合物を単一細胞から生産する、細胞の培養物を提供し、前記混合物は、少なくとも3種の異なる重鎖を含む。本発明はまた、少なくとも3種の異なる単一特異性の免疫グロブリンを単一細胞から生産する細胞の培養物を提供する。一定の好ましい局面では、前記培養物は、前記混合物又は前記少なくとも3種の異なる単一特異性の免疫グロブリンを、単一細胞において、20よりも多くの、好ましくは25よりも多くの、更に好ましくは30よりも多くの集団倍加数の間、生産する。
【0035】
好ましくは、本発明の方法に従う宿主細胞は、不死化されるか、又はアデノウイルスのE1配列を用いて形質転換されるヒト網膜細胞から導かれる。本発明の方法に従う特に好ましい宿主細胞は、ECACC番号第96022940の下で寄託されたようなPER.C6
TMか、又はその誘導物である。PER.C6-誘導クローンは、迅速に発生し、通常、導入遺伝子の限定数のコピー(約1〜10)を含み、及び組換え抗体の高レベル発現が可能である[Jones(ジョーンズ)等、2003年]。したがって、かかるクローンは、多くの発生にわたり安定したコピー数を維持すると期待され、それは生物薬剤(biopharmaceuticals)の生産において有利である。PER.C6
TM細胞は、広範に特徴付けられ、及び文書化されており、大規模化の良好な処理、懸濁液での増殖及び増殖因子の独立性が例証されている。更に、PER.C6
TMは、著しい再現性のある様式において懸濁液中に組み込むことができ、それを大規模生産のために特に適したようにする。この点で、PER.C6
TM細胞株は、生物反応器の増殖のために特徴付けられ、そこで、それはきわめて高い密度にまで増殖することができる。抗体の組換え生産のためのPER.C6
TMの使用は、出版物WO 00/63403号及び(Jones等、2003年)において詳しく記述されている。
【0036】
本発明の別の局面は、本発明に従う方法によって得られ得る抗体の混合物を提供することである。かかる抗体の混合物は、通常、同じ標的に対する単クローン抗体よりも有効である多クローン抗体に類似して、それが含む単独の成分よりも一層有効であると期待される。かかる混合物は、様々な標的抗原又はエピトープに対して調製することができる。
【0037】
本発明のもう一つの局面は、軽鎖を暗号化する核酸配列及び抗体の少なくとも3種の異なる重鎖を暗号化する核酸配列又は核酸配列群を含む組換え宿主細胞を提供することであり、ここでは、前記軽鎖及び重鎖が対合可能であり、好ましくは、機能的結合ドメインを形成する。対合する重鎖及び軽鎖は、標的抗原又は標的抗原群に対する機能的な抗原結合領域を形成する。本発明に従う宿主細胞は、本発明に従う方法に有用である。それらは、本発明に従う抗体の混合物を生産するのに用いることができる。
【0038】
本発明のもう一つの局面は、組換え的に生産される抗体の混合物を含む組成物を提供することであり、ここでは、少なくとも3種の異なる重鎖配列が組換え抗体の混合物において代表される。単クローン抗体は、組換え方法によってルーチン的に生産される。本発明は種々の分野における診断又は処置のために有用な抗体の混合物を開示する。本発明に従う組成物は、抗体の形態において軽鎖に対合する少なくとも3種の異なる重鎖の混合物を含む。好ましくは、前記混合物における抗体の軽鎖は、共通の軽鎖を持つ。混合物は二重特異性抗体を含むことができる。混合物は、単一の宿主細胞から、すなわち、同じ組換え核酸配列を含む細胞の集団から導かれるクローンから生産することができる。混合物は、本発明に従う方法によって得ることができ、又は発明に従う宿主細胞によって生産することができる。他の具体例では、前記混合物において代表される重鎖の数は4、5、6、7、8、9、10、又はそれよりも多い。一定の目的のための最適な混合物は、当業者に知られる方法によってか、又は本発明により提供される方法によって実験的に定めることができる。本発明に従うかかる組成物は、それらが生産される様式のため、多クローン抗体の混合物のいくつかの利点を持ち、多クローン抗体の混合物に固有に関連する欠点を伴わない。さらに、抗体の混合物が別個の単クローン抗体よりも一層効果的であることが期待される。したがって、投与量(dosage)、及びそれ故に、求められる生産能力は、単クローン抗体についてのものよりも本発明に従う抗体の混合物についてのものがより少なくてよい。
【0039】
例えば、ボツリヌスの神経毒(BoNT/A)に対する単一の単クローン抗体は、十分に毒素を中和しなかったが、3種のかかる単クローン抗体(少クローン抗体)の組合せが、450,000のBoNT/Aの50%致死量を中和し、ヒトの過免疫(hyperimmune)グロブリンよりも潜在的能力で90倍高いことが記述されている[Nowakowski(ノバコフスキ)等、2002年]。この結果は2から3種までの異なる特異性だけを含む抗体の少クローン性混合物が非常に高い潜在的能力を持ち得ることを例証する。
【0040】
さらに、本発明の混合物が標的又はエピトープの損失のために活性を失う可能性は、単一の単クローン抗体と比較するとき、減少する。特定の具体例では、本発明に従う混合物において存在する2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれよりも多い種類の抗体は、異なる特異性を持つ。前記異なる特異性は、同じ抗原上の異なるエピトープに向けられることができ、及び/又は混合物を含む1種の抗原において存在する異なる抗原に向けられることができる。また、本発明に従う組成物は、更に、同じエピトープについての異なる親和性を持つ、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれよりも多い種類の抗体を含むことができる。例えば、同じエピトープについての相違する親和性を有する抗体は、当業者に知られている、親和性の成熟(affinity maturation)の方法によって発生させることができる。
特に好ましい具体例では、本発明に従う組成物は、前記組成物において存在する各々の個々の単一特異性抗体の効果よりも大きい効果を持つ。前記効果は機能的アッセイにおいて測定することができる。本発明にかかる“機能的アッセイ”は、アッセイ条件の支配下に、抗体のか、又は抗体の混合物の1又はそれよりも多い種類の望ましいパラメータを定めるのに用いることができるアッセイである。適切な機能的アッセイは、結合アッセイ(binding assay)、アポトーシスアッセイ、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)アッセイ、補体依存性細胞障害性(CDC)アッセイ、細胞成長又は増殖の抑制(細胞分裂停止効果)アッセイ、細胞殺滅(cell killing)(細胞毒性効果)アッセイ、細胞情報伝達(cell signaling)アッセイ、標的細胞に対する病原体の結合の抑制を測定するためのアッセイ、血管内皮増殖因子(VEGF)の分泌又は他の分泌分子を測定するアッセイ、静菌、殺菌性の活性、ウイルスの中和についてのアッセイ、インシトゥの雑種形成方法、標識化方法が含まれる、抗体が結合する部位に対する免疫系の成分の誘引力を測定するアッセイ、及び同種のものでよい。明らかに、また、マウスの腫瘍モデルを含む、動物モデルのようなインビボのアッセイ、自己免疫病のモデル、ウイルス-感染か、又は細菌-感染させた齧歯動物又は霊長類モデル、及び同種のものを、この目的のために用いることができる。本発明に従う抗体の混合物の有効性は、かかるモデルにおいて、一般に当業者に知られる方法によって、個々の抗体と比較することができる。
【0041】
本発明のもう一つの局面は、抗体の混合物を生産する少なくとも1種の宿主細胞クローンを識別するための方法を提供することであり、ここでは、前記抗体の混合物は、機能的アッセイに従う望ましい効果を持ち、この方法は、次の工程を含む:(i)少なくとも1種の軽鎖を暗号化する核酸配列及び少なくとも2種の異なる重鎖を暗号化する核酸配列又は配列群を含む宿主細胞を提供する工程であり、ここで、前記重鎖及び軽鎖が互いに対合可能であり;(ii)少なくとも1種のクローンの前記宿主細胞を、前記核酸配列群の発現を助長する条件下に培養する工程;(iii)前記少なくとも1種のクローンの宿主細胞を望ましい効果を持つ抗体の混合物の生産について、機能的アッセイによって選別する工程;及び(iv)望ましい効果を持つ抗体の混合物を生産する少なくとも1種のクローンを識別する工程。好ましくは、前記宿主細胞は、上述のように、生産される抗体が共通の軽鎖を含むように、前記少なくとも2種の異なる重鎖と対合可能な共通の軽鎖を暗号化する核酸配列を含む。特定の具体例において、この方法の工程(ii)における前記培養及び工程(iii)における前記選別を少なくとも2種のクローンを用いて行う。この方法は、随意に、生産される抗体の発現レベルを測定するためのアッセイを含むことができ、そのアッセイは、この方法に従う工程(ii)の間又はその後か、又はその手法の後半でよい。かかるアッセイは、当業者によく知られ、及び、タンパク質濃度アッセイ(concentration assay)、ELISA、RIA、DELFIAのような免疫グロブリン特異的アッセイ、及び同種のものが包含される。本発明に従う前記方法の特定の具体例において、宿主細胞は、前記少なくとも1種の軽鎖と対合可能な少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれよりも多い種類の重鎖を暗号化する核酸配列又は配列群を含む。本発明に従う方法に対し有用な機能的アッセイは、アポトーシス、ADCC、CDC、細胞殺滅、増殖の抑制、ウイルスの中和、細菌のオプソニン化、受容体-媒介情報伝達、細胞情報伝達、殺菌性の活性、及び同種のもののためのアッセイでよい。例えば、抗-癌性抗体について有用な選抜アッセイは、US patent 6,180,357号に記述されている。かかるアッセイは、また、本発明の方法に従いクローンを識別するのに用いることができる。例えば、酵素結合免疫測定法(ELISAs)を、それらの標的に対する抗体結合の試験のために用いることが可能である。かかるアッセイを用いて、最も貪欲に標的抗原(又は試験されるべき抗体の混合物に対する標的の混合物)に結合する抗体混合物について選別することが可能である。探索が可能なもう一つの可能性は、直接に、細胞障害性又は細胞分裂停止効果について選別することである。かかる異なる選別により、上述のELISAに比べて、抗体の混合物を生産する他の又は同じクローンを選ぶことができる。細胞殺滅又は癌性細胞の増殖の休止についての選別を本発明に従い適切に用いることができる。細胞死は、代謝の欠損又は酵素の変性を含め、種々の終点によって測定することができる。本発明の1種の可能な具体例では、アッセイを、終点として癌性細胞に向かう細胞毒性の活性上に焦点を合わせることによって行う。このアッセイの場合、生存/死滅(live/dead)アッセイキット、例えば、Molecular Probes(モレキュラー・プローブ社)によるLIVE/DEAD
(R) (商標)(ライブ/デッド)のViability/Cytotoxicity Assay Kit(生存度/細胞障害性・アッセイ・キット)(L-3224)を、適切に用いることができる。また、トリパンブルー排除、
5lCr放出、カルセイン-AM、Alamar blue
TM(アラマーブルー)、LDH活性のような、細胞の生存度を評価する他の方法、及び同様の方法をも用いることができる。アッセイは、また、組織を含む望ましい抗原に対する特異性についての抗体の混合物の選別を含んでよい。本発明に従う抗体は、限られた組織分布を持つことができる。様々な細胞、細胞種類、又は組織に対する抗体の混合物の試験を含むことができ、好ましくは、興味ある細胞、細胞種類又は組織に結合する抗体の混合物について選別することができる。
上述のような機能的アッセイに関係なく、本発明は、また、クローンによって発現される抗体の同一性を、等電点電気泳動(iso-electric focusing)(IEF)、質量分析法(MS)、及び同種のものを用いることによって定める方向を教示する。したがって、本発明のある局面は、本発明に従い抗体の混合物を発現するクローンの選定におけるMS及び/又はIEFの使用を提供する。
単クローン抗体が組換え宿主細胞によって生産されるとき、通常、選別の工程を、発生した個々のクローンの発現レベルを評価するために行う。抗体を生産するためにより一層多くの重鎖を添加することは、抗体の生産に対してあるレベルの複雑さを加える。宿主細胞を、望ましい抗体の混合物を形成する軽鎖及び重鎖を暗号化する核酸分子を用いて形質移入するとき、独立したクローンが生じ、同じ遺伝情報を含むかもしれないが、それにもかかわらず、発現レベルで異なり、それにより、暗号化された抗体の異なった比率が生産され、同じ遺伝的レパートリから抗体の異なる混合物がもたらされる。本発明に従う方法は、一定の目的のための最適な混合物を生産するクローンを識別するのに有用である。
【0042】
工程(ii)及び(iii)に従う培養及び/又は選別は、それぞれ、高-処理の手法を用い、随意に、自動化された様式において、適切に行うことができる。クローンを、例えば、96-well(ウェル)又は他のmulti-well(マルチ-ウェル)の平板において、例えば、整列された形式において培養し、及び望ましい混合物の生産のために選別することができる。ロボット工学をこの目的のために適切に採用することができる。高-処理の培養及びアッセイを実行するための方法は、一般に入手可能であり、及び当業者に知られている。また、本発明に従うこの方法のため、タンパク質の高レベルの発現が可能な宿主細胞を用いることが有利であり、前記タンパク質を暗号化する核酸の前記細胞における増幅の必要性がないことは明確である。1具体例では、前記宿主細胞は、ヒトの胚性網膜芽細胞腫の細胞から導かれ、これは、不死化されるか、又はアデノウイルスE1配列によって形質転換される。好適例において、前記細胞はPER.C6
TM細胞から導かれる。この細胞株は、既に、培養を含む、高-処理の操作に受け入れられることが示されている(WO 99/64582号)。
【0043】
本発明の特定の具体例では、本発明に従う少なくとも1種の宿主細胞を識別する方法にかかる前記混合物の抗体は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれよりも多い種類の、異なる特異性及び/又は親和性を持つ抗体を包含する。
【0044】
この方法の潜在的な利点は、それが、多くの可能な組合せを同時に探索されるようにし、これらの組合せには、本質的に、生産される混合物における二重特異性抗体の存在が包含される。したがって、単に、精製した既知の単クローン抗体を混合することによるよりも、より一層多くの組合せを、双方の、組合せの数において及びこれらの組合せにおける異なる抗体の存在の比率において、試験することができる。
【0045】
本発明に従う方法によって識別されるクローンは、抗体の望ましい混合物を生産するのに用いることができる。したがって、本発明の他の局面は、抗体の混合物を生産する方法を提供することであり、この方法は次の工程を含む:本発明に従う抗体の混合物を生産する少なくとも1種の宿主細胞のクローンを識別する方法によって識別される宿主細胞のクローンを培養する工程であり、前記培養を、少なくとも1種の軽鎖及び少なくとも2種の異なる重鎖を暗号化する核酸分子の発現を助長する条件下で行う。生産される抗体は、宿主細胞から、及び/又は宿主細胞培養物から、例えば、培養培地から、回収することができる。抗体の混合物は、当業者に知られる様々な技術に従って回収することができる。本発明の更に別の局面は、上述の、本発明に従う方法によって得られ得る抗体の混合物を提供することである。前記混合物は、疾病の処置又は診断におけるような、様々な目的のために用いることができ、及び置換するか、又は単クローン性又は多クローン性の抗体への添加において用いることができる。
【0046】
本発明に従う方法は、抗体を暗号化する核酸分子を適切に用いることができ、ここでは、核酸分子を、インビボの、例えば、免疫化、方法又はインビトロの、例えば、ファージ提示、リボゾーム提示又はmRNA提示[C. Schaffitzel(シャフィッエル)等、In vitro selection and evolution of protein-ligand interactions by ribosome display(リボゾーム提示によるタンパク質-リガンドの相互作用のインビトロ選定及び発展)。In: Protein-Protein Interactions(イン:タンパク質-タンパク質の相互作用)。A Molecular Cloning Manual(分子クローン化マニュアル)、E. Golemis(ゴレミス)、Ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press(コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス社)、New York(米国ニューヨーク州)、2001年、pp 535-567]、及び酵母提示(例えば、WO 99/36569号)のような抗体提示方法を含む、任意の適切な方法によって得られる[A. Pluckthun(プラックトゥーン)等、In vitro selection and evolution of proteins(タンパク質のインビトロ選定及び発展)。In: Adv. Prot. Chem.(イン:アドバンシーズ・イン・プロテイン・ケミストリ), F. M. Richards(リチャーズ)等、Eds、Academic Press、 San Diego(米国サンジエゴ)、2001年、vol 55: 367-403]。ファージ提示によって、一定の標的を識別する方法は、標的が既知の抗原であっても、又は抗原性混合物において存在する未知の抗原であってもよいが、当業者に知られている。概して、抗原結合ドメイン又はその誘導物をファージの表面上に発現するファージのライブラリは、前記抗原結合ドメインが前記ファージにおいて存在する遺伝的物質によって暗号化されているが、興味のある抗原又は抗原混合物と一緒にインキュベートされ、しかる後、望ましい抗原に結合する抗原結合部位を提示するファージの亜集団(subpopulation)の結合が得られる一方、結合してない(non-binding)ファージが廃棄される。かかる選定の工程は、1、2、又はそれよりも多い回数繰り返して、興味のある抗原にとってより一層高いか、又はより低い特異性のあるファージの集団を得ることができる。抗体、その部分又は誘導体を得るためのファージ提示方法は、広範に、例えば、(CF Barbas(バルバス)III等、Phage Display(ファージ提示)。A Laboratory manual。Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、2001年)に記述されている。かかる選別のために用いるライブラリは、1又はそれより多い種類の軽鎖の遺伝情報を、複数の重鎖を暗号化する遺伝情報と結合して使用することによって発生させることができる。De Kruif等によって記述されるライブラリ(1995b)は、7種の軽鎖を含む。したがって、標的に結合するファージのパネルにおいて、それは、例えば、De Kruif等(上記);US patent 6,265,150号において記述される方法によって得られるが;7種以下の異なる軽鎖が示され、及びパネルが十分に大きければ、無関係な重鎖につながれる同じ軽鎖を有するいくつかのファージを見出すことができる。かかるファージを用い、本発明に従う方法において有用な核酸分子を得ることができる。
本発明のもう一つの局面は、標的に対する抗体の混合物を生産するための方法を提供することであり、この方法は次の工程を含む:i)抗体又は抗体断片を含む抗体提示ライブラリを、標的を含む物質と接触させる工程、ii)前記標的に結合する抗体又は抗体断片を選定する少なくとも1種の工程、iii)前記標的に結合する少なくとも2種の抗体又は抗体断片を識別する工程であり、ここで、前記少なくとも2種の抗体又は抗体断片が共通の軽鎖を含み、iv)軽鎖を暗号化する核酸配列及び前記少なくとも2種の抗体の重鎖を暗号化する核酸配列又は核酸配列群を宿主細胞中に導入する工程、v)クローンの前記宿主細胞を前記核酸配列の発現を助長する条件下で培養する工程。抗体提示ライブラリは、ファージ提示ライブラリ、リボゾーム提示ライブラリ、mRNA提示ライブラリ、又は酵母提示ライブラリでよい。工程i)及びii)は、随意に、1又はそれより多い回数繰り返すことができる。
ファージ提示、リボゾーム提示又は酵母提示方法によって得られる核酸配列は、当業者に知られる標準的な分子クローン化方法及び手段を用いて、宿主細胞中に導入する前に、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgD、IgEのような任意の望ましい抗体の形式を暗号化するように変換することができる(例えば、Boel等、2000年において記述される)。
当業者にとって、1種の軽鎖しか示さないライブラリが本発明に照らし合わせて特に有用であることは明確であり、その理由は、かかるライブラリから得ることができるすべての抗体が標的抗原の各々の重鎖との結合において機能的な共通の軽鎖を持つからである。言い換えれば、本発明の方法に従い、非機能的な軽鎖-重鎖二量体の形成が避けられる。広汎なH鎖レパートリを持つファージ抗体提示ライブラリ、及び独特な、又は極めて少ないL鎖配列が、この技術において開示されている[Nissim(ニッシム)等、1994年;Vaughan(ボーガン)等、1996年]。概して、抗体の特異性は、その重鎖によって大部分について定められると思われる。抗体の結合にあまり貢献しない軽鎖について選別し及び識別することは可能であり、そこで、軽鎖を、また、本発明に従い適切に用いることができる。また、本発明の教示に従うが、1種の重鎖を用い、及び軽鎖を変えることも可能な場合がある。しかし、共通の軽鎖及び異なる重鎖の使用は好ましいと思われ、次の観察は、抗体の特異性がその重鎖配列によって支配されるようであるという考えを支持する。受容体編集(editing)の処理において、B-細胞の機構が、それらの免疫グロブリン受容体が潜在的に有害な自己抗体を暗号化する場合を監視し、自己抗体を発現するB-細胞が、発現した重鎖を、発現した軽鎖を保持しながら別の重鎖と置き換える。したがって、新しい抗体の特異性を発生させ、これは自己抗体を暗号化しない。これは、単一の軽鎖が多数の重鎖と好首尾に二量体化し、異なる抗体の特異性を形成することを示す[Nemazee(ネマゼ)、2000年;Casellas(カセラス)等、2001年]。単一の重鎖遺伝子を異なる軽鎖遺伝子と共に用いる一連の形質移入した細胞株が報告されており、生産される抗体は、軽鎖にかかわらず、大部分についてそれらの特異性が維持される[Radic(ラディチ)等、1991年]。異なる抗体は、単一の軽鎖を用いて構築されるライブラリから得られる(Nissim等、1994年)。本発明者は、De Kruif等により記述されるライブラリ(1995年)からいくつかの抗体を得たが、それは、7種の軽鎖を用いて構築され、それは同じ軽鎖であるが、異なる特異性を持つ(例えば、例1:EpCAMに対して及びCD46に対して結合する抗体、WO 01/48485号及びWO 02/18948号において、それぞれ記述されるを参照)。標的に対するファージライブラリの選別の他に、また、ファージ提示のような、当業者に知られる方法に従い、既にその利点が証明されている抗体から始め、及びこの抗体の軽鎖を、この特定の軽鎖のみと組み合わせる重鎖のライブラリの調製において用いることも可能である。この戦略を用いて、単クローン抗体を用い、本発明に従う抗体の混合物を得ることができ、これは、同じターゲットに対する多クローン性又は少クローン性の抗体に機能的に類似する。代わりに、機能的な齧歯類の抗体に基づくヒト抗体を得るために、Jespers(イェスペルス)等(1994年)により記述されている方法によく似た方法を用いることができる。非-ヒト起源の既知抗体の重鎖を、まずクローン化し、及びファージ提示において用いるために、鋳型鎖として、ヒト軽鎖のレパートリと対合され、しかる後、ファージを抗原又は抗原の混合物への結合について選定する。選定される軽鎖を、順に、ファージ上に表示されるヒト重鎖のレパートリと対合し、及びファージを、再び選定して、軽鎖と対合するとき、興味のある抗原又は抗原の混合物に結合可能ないくつかの重鎖が見出される。これは、これまでに非-ヒト単クローン抗体しか記述されていない標的に対するヒト抗体の混合物を創出することを可能にする。個々の抗体が標的のための高い親和性を持たないとき、本発明に従う混合物が既に有利な機能的効果を持つことは可能であるが、一方、高い親和性が、有効であるべき単クローン抗体にとって求められることが多い。これは、親和性の成熟が、本発明に従う方法及び混合物について、単クローン抗体でのアプローチが予想されるときよりも、少ない例において求められ得るという利点を持つ。
【0047】
重鎖及び軽鎖のコード配列は、宿主細胞中に、同時にか、又は連続的に導入することができる。本発明のある局面は、また、抗体の軽鎖を暗号化する組換え核酸を含む宿主細胞を調製することである。かかる細胞は、例えば、前記核酸の形質移入によって得られ、及び、随意に、軽鎖の高い発現を持つクローンを識別することができる。次いで、確立されたクローンを用い、本発明の2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれよりも多い種類の重鎖を暗号化する遺伝情報を、既に軽鎖を含むクローンの細胞中にこれらを導入することによって、付加することができる。重鎖を暗号化する核酸分子は、前記宿主細胞中に付随して導入することができる。また、もちろん、それらを連続的に、例えば、異なる選択マーカを用いることにより、導入することもでき、それは、細胞が組換え核酸分子の十分なコピーを取れないので、すべての重鎖を同時に導入することができない場合に有利であり得る。組換え核酸分子を宿主細胞中に導入するための方法は、当業者によく知られており、及び形質移入、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿、ウイルス感染、及び同種のものが包含される。当業者は、興味ある核酸配列を有するより一層多くのベクタを同じ宿主細胞中に導入するいくつかの可能性を持ち、例えば、Sambrook(サンブロック)、Fritsch(フリッチェ)及びManiatis(マニアティス)、Molecular Cloning(分子クローン化):A Laboratory Manual、2
nd(第2版)、1989年;Current Protocols in Molecular Biology(分子生物学における現在のプロトコル)、Ausubel(アウスベル) FM等、eds、1987年;the series Methods in Enzymology(酵素学における一連の方法)(Academic Press, Inc.)を参照。本発明に従い核酸を真核生物の宿主細胞中に導入するための適切で有力な選択マーカは、G418又はネオマイシン[geneticin(ジェネテシン)]、ハイグロマイシン又はミコフェノール(mycophenolic)酸、ピューロマイシン、及び同種のものでよく、それらについて、抵抗性を暗号化する遺伝子は、発現ベクタ上で利用できる。更なる可能性には、例えば、DHFR
-細胞におけるメトトレキセートの存在又はグルタミン栄養要求体のグルタミンの欠損のそれぞれにおいて選定するためのDHFR遺伝子又はグルタミン酸合成酵素を含むベクタの使用が包含される。異なる選択マーカを用いる発現ベクタの使用は、それに続く興味ある重鎖配列の宿主細胞中への形質導入を可能にし、それは、既に他の選択マーカの使用によって予め導入された他の重鎖を安定に含む。また、選択マーカを用いることも可能であり、それは、例えば、それらを濃度依存性にする、突然変異、イントロン、又は弱められたプロモータを含むとき、1回より多く用いることができる(例えば、EP 0724639号;WO 01/32901号;US patent 5,733,779号)。代わりに、選択マーカを、使用の後の宿主細胞からそれを欠失させることによって、例えば、部位-特異的組換えによって、再-使用することができる。部位-特異的リコンビナーゼによって認識される配列の間に位置する選択可能なマーカ、例えば、lox(ロックス)-部位又はFRT-部位は、最初の安定した形質移入体の生成のために用いられる[Cre-loxの部位-特異的組換え、Wilson(ウイルソン)及びKola(コーラ)、2001年について参照]。次いで、選択可能なマーカを、宿主細胞のDNAから、整合する部位-特異的リコンビナーゼ、例えば、Cre又はFlpによって切除する。それに続く形質移入は、同じ選択マーカを適切に用いることができる。異なる軽鎖を暗号化する遺伝情報の各々を含む異なる宿主細胞クローンを調製することができる。抗体が抗体提示方法によって識別される場合、それ故に、いくつかの宿主細胞を調製することができ、各々は、抗体提示ライブラリにおいて存在する1種の軽鎖を含む。標的に結合する抗体を抗体提示を用いて識別した後、重鎖を暗号化する核酸分子を重鎖に対合可能な共通の軽鎖を含む宿主細胞中に導入することができる。したがって、本発明のある局面は、抗体の混合物を生産するための宿主細胞を作出する方法を提供することであり、この方法は次の工程を含む:前記宿主細胞中に、軽鎖を暗号化する核酸配列及び前記軽鎖と対合可能な、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれよりも多くの種類の異なる重鎖を暗号化する核酸配列又は配列群を導入する工程であり、ここで、前記核酸分子を連続的にか、又は同時に導入する。もちろん、また、少なくとも2種の前記核酸分子を、同時に導入すること、及び少なくとも1種の他の前記核酸分子を連続的に導入することもできる。本発明に従う更に別の局面では、抗体の混合物の生産用の組換え宿主細胞の作出のために、方法を提供し、この方法は次の工程を含む:2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれよりも多い種類の異なる重鎖を暗号化する核酸配列又は核酸配列群を、少なくとも2種の前記重鎖と対合可能な軽鎖を暗号化する核酸配列を含む組換え宿主細胞中に導入する工程。
【0048】
本発明に従う組換え宿主細胞が、発現される少なくとも2種の重鎖のすべてと二量体化するのに十分な軽鎖を発現しないと考えられる場合、軽鎖を暗号化する核酸分子の余分なコピーを細胞中に形質移入することができる。
【0049】
形質移入後のランダムな組込みの他に、導入遺伝子をゲノムの所定の位置に組み込み、好ましい発現レベルをもたらす方法を、また、本発明に従って用いることができる。かかる方法は、例えば、相同的組換えによる部位-特異的組込みを採用するか(例えば、WO 98/41645号参照)、又は部位-特異的リコンビナーゼを用いることができる[Gorman(ゴーマン)及びBullock(ブロック)、2000年]。
【0050】
本発明の更に別の局面は、軽鎖を暗号化する核酸配列及び前記軽鎖と対合可能な少なくとも2種の異なる重鎖を暗号化する核酸配列又は核酸配列群を含む、トランスジェニックな非-ヒト哺乳類又はトランスジェニック植物を提供することであり、ここでは、前記軽鎖及び重鎖を暗号化する前記核酸配列は、組織-特異的プロモータの制御下にある。植物におけるプロモータは、また、非-組織特異的であってもよく、及びCaMV 35Sプロモータ及びノパリン合成酵素ポリA付加部位のような、一般的な遺伝子発現要素も、また、用いることができる。前記軽鎖は本発明に従う共通の軽鎖である。特定の具体例では、本発明に従うトランスジェニック動物又は植物は、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれよりも多い種類の重鎖配列を含む。組換えタンパク質のための生産系としての細胞培養の他に、この技術はまた、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物の使用、及び例えば、興味ある組換えタンパク質を生産するために、卵及び同種のものにおいてタンパク質を生産するトランスジェニックニワトリをも開示する[Pollock(ポロック)等、1999年;Larrick(ラリック)及びThomas(トマス)、2001年;WO 91/08216号]。これらは、通常、興味ある1又はそれよりも多い種類のタンパク質を暗号化する組換え遺伝子又は遺伝子群を、組織-特異的プロモータと操作可能に関連して含む。例えば、組換え抗体を、トランスジェニック動物のミルクにおいて高いレベルで生産することができ、それが、重鎖及び軽鎖を暗号化する核酸を乳腺特異的プロモータの下位に含む(例えば、Pollock等、1999年;WO 95/17085号)。この点で特に有用なのは、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ラビット(ウサギ)、マウス、及び同様なものであり、及びこれらを、抗体を得るために搾乳することができる。有用なプロモータは、β-カゼインプロモータ、αS1-カゼインプロモータ、乳清酸性タンパク質(WAP)プロモータ、β-ラクトグロブリンプロモータ、α-ラクトアルブミンプロモータのような、カゼインプロモータ、及び同様のものである。生物薬剤タンパク質のトランスジェニック哺乳類の乳における生産は、広範に記述されている(例えば、Pollock 等、1999年)。乳腺特異的プロモータの他に、また、他の組織-特異的プロモータを、血液、尿、唾液、及び同様なものに対する発現に向けて用いることができる。組換え核酸分子を含むトランスジェニック動物の生成は、広く文書化されており、及び卵母細胞のマイクロ-注入[例えば、Wilmut(ウィルマット)及びClark(クラーク)、1991年参照]、形質移入後の核移植[例えば、Schnieke(シュナイケ)等、1997年]、組換えウイルスによる感染(例えば、US patent 6291740号)、及び同様のものを包含することができる。哺乳類細胞のための核移植及びクローン化方法は、当業者に知られており、及び、例えば、[Cambell(キャンベル)等、1996年;Wilmut等、1997年;Dinnyes(ディニーズ)等、2002年;WO 95/17500号;WO 98/39416号]において記述されている。今日では、これらの動物のほとんどをクローン化し、遺伝的に同一の動物の系統(line)を生じさせることが可能であり、それは、当業者にとって、望ましい混合物の抗体を生産する個々の動物が一旦識別されれば、かかる系統を創出することを可能にする。代わりに、古典的な育種方法を、トランスジェニック子孫を発生させるのに用いることができる。乳における組換えタンパク質の生産のためのトランスジェニック動物の生成のための戦略は、Brink(ブリンク)等、2000年において記述されている。
【0051】
また、抗体を生産するトランスジェニック植物又は植物細胞は、[Hiatt(ハイアット)等、1989年;Peeters(ペーテルス)等、2001年]に記述され、及びこの目的のための有用な植物には、コーン、メイズ、タバコ、ダイズ、アルファルファ、コメ、及び同様のものが包含される。構成的なプロモータ(Constitutive promoter)、例えば、植物細胞において用いることができるものは、CaMV 35S及びl9Sプロモータ、アグロバクテリウムプロモータnos及びocsである。他の有用なプロモータは、rbcSのような、ライト誘導性(light inducible)プロモータである。組織-特異的プロモータは、例えば、ゼイン、ナピン(napin) 、ベータ-ファゼオリン、ユビキチンからのプロモータのような種子-特異的であり得、又は塊茎-特異的、葉-特異的(例えば、タバコにおいて有用)、根-特異的、及び同様のものであり得る。また、色素体細胞小器官を相同的組換えにより形質転換して、植物においてタンパク質を発現させることも可能である。組換え植物又はその部分、又は組換え植物の細胞培養において、タンパク質を発現させるための方法及び手段は、当業者に知られており、及び例えば、[Giddings(ギディングズ)等、2000年;WO 01/64929号;WO 97/42313号;US patents 5888789号、6080560号; 実用的な指針について参照(See for practical guidelines): Methods In Molecular Biology(分子生物学における方法) vol. 49 “Plant Gene Transfer And Expression Protocols(植物遺伝子の移動及び発現プロトコル)”、Jones H、1995年]に記述されている。組換えタンパク質を生産するための他のトランスジェニック系は、また、組換えタンパク質を卵において生産するためのトランスジェニック鳥類の使用(例えば、WO 97/47739号)、及びトランスジェニック魚類の使用(例えば、WO 98/15627号)を含み、記述されており、及び本発明の教示と組み合わせて用いて、抗体の混合物を得ることができる。また、本発明に従い抗体の混合物の発現のために、インビトロの転写
/翻訳又はインビトロの翻訳系を用いることも可能である。当業者にとって、本発明の教示が、軽鎖及び重鎖を暗号化する組換え核酸を導入し、及び発現させることができる系において、抗体の混合物を生産させることは明確である。好ましくは、かかる系は、前記核酸配列の増幅を用いることなく、前記核酸配列によって暗号化される抗体を生産することができる。本発明の別の局面において、本発明に従うトランスジェニック非-ヒト動物又はトランスジェニック植物からの細胞を提供する。かかる細胞を用い、核移植又は単一の細胞から全生物体をクローン化する他の既知方法のような、当業者に知られている技術を用いて、本発明に従う動物又は植物を生成させることができる。本発明に従う細胞は、また、軽鎖及び少なくとも2種の重鎖配列を、非-ヒト動物又は植物の分離された細胞中に導入することによって得ることができ、それらの細胞はトランスジェニック動物又は植物の部分になることができる。かかる目的のために特に有用なのは、胚性幹細胞である。これらは、生殖系列(germ line)に寄与し、及び従って、かかる細胞中に導入される遺伝情報は将来の世代に引き継がれ得る。加えて、ワタ、トウモロコシ、トマト、ダイズ、ポテト、ペチュニア、及びタバコの植物細胞培養は、軽鎖及び重鎖を暗号化する核酸分子を用いて形質転換するとき、例えば、植物トランスフォーミング細菌の
Agrobacterium tumefaciens(アグロバクテリウム・ツメファシエンス)を用いることによるか、又は微粒子銃(particle bombardment)によってか、又は組換え植物ウイルスでの感染によって、宿主として用いられる。
【0052】
本発明のもう一つの局面は、組換え的に生産される抗体の混合物及び適切な担体を含む薬学的組成物を提供することであり、ここでは、少なくとも2種の異なる重鎖が組換え的に生産される抗体の前記混合物において代表される。本明細書において用いられるような薬学的に許容できる担体は、制限されないが、アジェバント、固形担体、水、緩衝液、又は治療上の成分を保持するためにこの技術で用いられる他の担体、又はそれらの組合せが例示される。特定の具体例において、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれよりも多い種類の異なる重鎖が、前記混合物において代表される。前記混合物は、組換え的に生産された単クローン抗体の混合によって得ることができるが、本発明に従う方法によってもまた得ることができる。したがって、前記混合物は、前記抗体のための共通の軽鎖を含むことができる。前記混合物は二重特異性抗体を含むことができる。前記混合物は、単一の宿主細胞から導かれるクローンから、すなわち、同じ組換え核酸分子を含む細胞の集団から生産することができる。本明細書で用いるように、用語“組換え的に生産”は、かかる宿主細胞又はその祖先において導入された組換え核酸によって暗号化される抗体を生産する宿主細胞による生産を示す。したがって、それには、多クローン抗体を生産する古典的な方法が含まれず、それによって、対象物が、抗原又は混合物を含む抗原で免疫化され、しかる後、この対象物によって生産される抗体を、対象物から、例えば、血液から回収する。
【0053】
本発明のもう一つの局面は、少なくとも2種の重鎖が代表される抗体の混合物を、ヒト又は動物の対象物の処置又は診断における使用のために、提供することである。別の局面では、本発明は、ヒト又や動物の対象物における疾病又は疾患の処置又は診断において用いるための薬剤の調製用に、少なくとも2種の異なる重鎖が代表される抗体の混合物の使用を提供する。特定の具体例において、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれよりも多い種類の重鎖が前記混合物において代表される。抗体の前記混合物は、本発明に従う抗体の混合物であるか、又は本発明に従う方法によって得られてもよい。前記混合物において存在する抗体は、好ましくは、共通の軽鎖を含むことができる。これらの混合物は、二重特異性抗体を含むことができ、及び単一の宿主細胞から導かれるクローンから、すなわち、同じ組換え核酸分子を含む細胞の集団から、組換え的に生産することができる。標的を用い、抗体提示ライブラリを、上述のように選別し、標的に結合する共通の軽鎖を含む2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれよりも多い種類の抗体を得、及び本発明の教示に従いこれらの混合物を生産することができる。単クローン抗体を用いることができる薬の実質上任意の領域でも、本発明に従う混合物の使用のために受け入れられる。これは、例えば、自己免疫病及び癌の処置を包含することができ、脳、頭部-及び首、胸、前立腺、大腸、肺、及び同様のものの固形腫瘍、並びにB-細胞の腫瘍のような血液学的な腫瘍を含む。本発明に従う混合物で処置することができる腫瘍性疾患には、白血病、リンパ腫、肉腫、癌腫、神経細胞腫瘍、扁平細胞癌腫、胚細胞腫瘍、転移、未分化型腫瘍、精上皮腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、混合細胞腫瘍(mixed cell tumor)、感染性因子によって生じる新形成、及び他の悪性物が包含される。抗体混合物のための標的には、制限されないが、HER-2/Neu受容体、VEGFR1及びVEGFR2受容体のような他の成長因子受容体、CD19、CD20、CD22、CD37、CD72、等のようなB-細胞マーカ、CD3、CD25、等のようなT-細胞マーカ、CD33又はHLA-DRのような他の白血球細胞表面マーカ、TNF、インターロイキンのようなサイトカイン、TNF受容体ファミリの一員のようなこれらのサイトカインのための受容体、及び同様のものが包含される。癌性組織、又は微生物又はウイルスのような細胞を含む他の複雑な多-抗原(multi-antigen)の処置における抗体のかかる混合物の使用が、単一の単クローン抗体の使用よりも、エピトープ-損失回避変異形(epitope-loss escape variant)を少なくしか発生させないことが予想される。いくつかの処置は、今日では、抗体の他クローン性混合物を用い、これらは、免疫化したヒト又は動物から導かれる。これらの処置は、本発明に従う混合物の使用によって置き換えることができる。これらの混合物の使用には、また、移植の技術において知られる、例えば、抗-胸腺細胞抗体の使用による、移植片-対-宿主の拒絶反応における使用を包含することができる。抗体の混合物が、複合抗原、又は細菌又はウイルスのような混合物を含む抗原の処置における単クローン抗体よりも優れていることは予想される。したがって、本発明に従う使用は、また、細菌及び菌類の株に対する、例えば、多種薬剤(multidrug)耐性の
S. aureus(
Staphylococcus aureus、黄色ブドウ球菌)及び同様のもののような病原性細菌、
Candida albicans(カンジダ・アルビカンス)及び
Aspergillus species(コウジカビ菌種)のような菌類、酵母及び同様のものによる感染症の処置における使用を含むことができる。本発明に従う混合物は、また、属リッサウイルス(genus Lyssavirus)の一員、例えば、狂犬病のウイルスのような、ウイルスに対する暴露後の予防(post exposure profylaxis)のためのか、又は水痘帯状疱疹ウイルス、アデノウイルス、Respiratory Syncitium Virus(呼吸器系シンシチウムウイルス)、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトMetapneumovirus(メタニューモウイルス)、インフルエンザウイルス、西ナイルウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こすウイルスのようなウイルス、及び同様のものに対する、治療上の又は予防的な使用のために用いることができる。また、本発明に従う混合物は、薬剤、細菌及びウイルスの双方に対し、及び生物学的戦争の潜在的な脅威である有毒物質に対する保護に用いることができる。したがって、本発明に従う使用には、また、
Bacillus anthracis(炭疽菌)、
Clostridium botulinum(ボツリヌス菌)毒素、Clostridium
perfringens(ウェルシュ菌)のイプシロン毒素、
Yersinia Pestis(ペスト菌)、
Francisella tulariensis(野兎病菌)、
Coxiella burnetii(コクシエラ・バーネッティ)、
Brucella(ブルセラ)菌種、
Staphylococcus(ブドウ球菌)エンテロトキシンBのような細菌の株、又は大痘瘡(Variola major)、髄膜脳炎症候群を生じさせるアルファウイルス(EEEV、VEEV、及びWEEV)、エボラ、マールブルグ及びフニンウイルスのような出血性熱をもたらすと知られるウイルスに対するか、又はニパ(Nipah)ウイルス、ハンタウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス及び黄熱病ウイルスのようなウイルスに対するか、又は毒素、例えば、
Ricinus communis(トウゴマ)からのリシン毒素(Ricin toxin)及び同様のものに対する使用を含むことができる。本発明に従う混合物の使用は、また、単細胞又は多細胞の寄生体に対する使用を含むことができる。本発明に従う抗体の組換え混合物は、受動免疫のためのヒト血清のプールからか、又は過-免疫化動物の血清から得られる多クローン抗体に対する安全な代替物になることができる。混合物は、癌、アレルギー、ウイルス疾病、慢性的な炎症、及び同様のものを含む種々の治療上の適用において、組換え単クローン抗体よりも効果的であり得る。
腫瘍-反応性(tumor-reactive)単クローン抗体のホモ二量体化が、腫瘍細胞の増殖抑制又はアポトーシスを引き起こすそれらの能力を著しく高めることが記述されている[Ghetie(ゲーティ)等、1997年]。おそらく、受容体、又は腫瘍細胞又は感染性微生物のような標的細胞上の他の表面抗原に対する抗体が、本発明に従って生産されるとき、本発明に従う混合物において存在する二重特異性抗体が、また、標的細胞の表面上の異なる受容体又は他の抗原を架橋結合することができ、したがって、かかる混合物は、かかる細胞を死滅させるのに極めて適切であり得る。代わりに、二重特異性抗体があまり好ましくないとき、本発明はまた、主として、単一特異性抗体を含む抗体の混合物を組換え的に生産する方法を提供する。抗-CD59抗体が加えられるとき、Rituximab
TM(抗-CD20単クローン抗体)での処置の有効性が高められることが記述されている[Herjunpaa(ヘルジャンパ)等、2000年]。したがって、抗体を認識するB-細胞受容体の形態において抗-腫瘍抗体を含む、本発明に従う混合物におけるCD59に対する抗体の包含が、腫瘍細胞の補体の攻撃に対する感受性を高めることが期待される。また、抗-CDl9、抗-CD22、及び抗-CD38-サポリン(saporin)の免疫毒素の三重の組合せのカクテルが免疫不全マウスモデルにおけるヒトB-細胞リンパ腫の処置において、個々の成分よりもはるかに有効であることが示されている[Flavell(フラベル)等、1997年]。また、多くの他の組合せも可能であり得、及び、当業者により設計することができる。概して、多重の(multiple)B-細胞エピトープを認識可能な抗体混合物の使用は、多分、回避変異体の発生を減らす。
もう一つの可能な標的は、貫膜チロシンキナーゼ受容体であり、Her-2/Neu(ErbB2)プロトオンコジーンによって暗号化される(例えば、抗-Her2抗体について、US patents 5,772,997号及び5,783,186号を参照)。Her-2は、非常に高い悪性の乳癌の30%で過剰発現され、及びこの標的に対する好首尾の抗体は、Herceptin
TM(Trastuzumab)の名称の下で販売され、開発されている。多重Her-2エピトープを単クローン抗体の混合物で標的にすることは、インビトロ及びインビボのヒト乳癌細胞株の増進された反増殖(antigrowth)活性をもたらすことが示されている[Spiridon(スピリドン)等、2002年]。したがって、Her-2は、本発明に従う抗体の混合物のための良好な標的であり得る。この目的のために有用な抗体は、抗体提示方法を含む、本発明において記載する方法によって得ることができる。
【0054】
ヒト抗体は、免疫効果細胞上の免疫グロブリン受容体への結合を介してエフェクタ機能を引き出すことができる。ヒトIgG、及び特にIgG
1及びIgG
3は、補体に固定し、CDCを誘導し、及びFcγ受容体と相互作用して、抗体依存性細胞媒介細胞障害性(ADCC)、食作用、エンドサイトーシス、呼吸バーストの誘導、及び炎症性媒介物及びサイトカインの放出を誘導する。ヒトIgAは、FcαRと相互作用し、また、ADCCの有効な活性化及び標的細胞の食作用をもたらす。それ故に、末梢血細胞上のFcγR及びFcαRの差動的な分布(differential distribution)のため[Huls(ヒュルス)等、1999年]、標的に対して向けられた抗体の混合物の使用及びIgG及びIgAの双方から構成することは、異なる免疫効果細胞の補充及び活性化を潜在的に最大にする。IgG及びIgA双方のかかる混合物は、2種の別々の生産細胞株を用いる別個の生産処理においてIgG及びIgA単クローン抗体を生産することによって得ることができるが、また、IgG及びIgA単クローン抗体の双方を生産する単一の細胞株から得ることもできる。これは、単一の生産処理だけを開発することですむ利点を持つ。したがって、異なる重鎖が言及されるとき、また、それらの定常領域において異なる重鎖が、本発明において包含される。共通の軽鎖を用いる原理は、また、宿主細胞からアイソタイプの混合物を生産するのに用いることができる。したがって、本発明の更に別の局面は、異なるアイソタイプを含む抗体の混合物を、宿主細胞から生産する方法を提供することであり、この方法は次の工程を含む:軽鎖を暗号化する核酸配列及び前記軽鎖と対合可能な異なるアイソタイプの少なくとも2種の重鎖を暗号化する核酸配列を含む宿主細胞を、前記核酸配列の発現を助長する条件下で培養する工程。本発明のこの局面に従い、異なる重鎖は、同一の可変領域を持ち、及びそれらの定常領域においてだけ異なることができる(即ち、異なるアイソタイプであり、及び同じ特異性を持つ)。特定の具体例では、前記アイソタイプは、少なくともIgG及びIgA 及び/又はIgM、好ましくは、IgG1又はIgG3及びIgAを含む。IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4 の他の組合せも、また、用いることができる。これらの具体例では、二重特異性抗体は、可変領域が同じであるので生産されない。
【0055】
本発明のこの局面に従う他の具体例では、重鎖の定常領域が異なるのみならず、可変領域も異なり、それにより、異なる特異性を生じさせ、同じ軽鎖と対合する。二重特異性抗体が、所定の目的のために望まれないとき、例えば、抗体の混合物が、二重特異的抗体の存在のために、あまり効果がないので、本発明に従って共通の軽鎖と組み合わせられる少なくとも2種の重鎖を用いることが可能であり、そこで、前記重鎖がそれらの定常領域において十分に異なり、異なる重鎖の間の対合を、例えば、異なるアイソタイプの重鎖、例えば、IgG1及びIgG3を用いることによって、減少させるか、又は防ぐ(模式的な表示について
図11を参照)。異なるアイソタイプの重鎖が、全然、同じ重鎖と比較して、まして有効に対合しないことが予想される。代わりに、また、ホモ二量体化がヘテロ二量体化に対して好まれるように、例えば、自己相補的な相互作用を導入することによって、それらの定常領域において異なる重鎖を設計することができる[例えば、“キャビティへの隆起(protuberance-into-cabity)”戦略(WO 96/27011号を参照)のような可能性についての、例えば、WO 98/50431号を参照]。したがって、本発明のもう一つの局面は、抗体の混合物を組換え宿主において生産する方法を提供することであり、この方法は次の工程を含む:組換え宿主細胞において、共通の軽鎖を暗号化する核酸配列、及び可変領域において異なり、及び前記共通の軽鎖と対合可能な、少なくとも2種の異なる重鎖を暗号化する核酸配列を発現させる工程であり、及びそこでは、前記重鎖は、それらの定常領域において、異なる重鎖の間の対合を減少させるか、又は防ぐのに十分に更に異なる。1具体例では、前記重鎖は異なるアイソタイプである。特定の具体例では、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれよりも多い種類の異なる重鎖を発現する。この方法により得られ得る抗体の混合物は、また、本発明においても具体化される。かかる混合物は、主として、単一特異性抗体を含む。
【0056】
また、本発明の教示は、また、新しい多重特異性抗体又はそれらの混合物を得るのに用いることができる。したがって、別の局面において、本発明は、二量体のIgAアイソタイプ{(IgA)
2}を含む抗体の混合物を組換え宿主において生産するための方法を提供し、ここでは、少なくとも一部の前記二量体IgA抗体は、各々のIgAサブユニットにおいて異なる結合領域を持ち、この方法は次の工程を含む:組換え宿主細胞において、共通の軽鎖を暗号化する核酸配列及び前記共通の軽鎖に対合可能なIgAアイソタイプの少なくとも2種の異なる重鎖を暗号化する核酸配列を発現させる工程であり、そこでは、前記異なる重鎖がそれらの可変領域において異なる。IgA分子の二量体化はJ-鎖の同時-発現によって高めることができる[Yoo(ヨー)等、1999年]。前記二量体IgA抗体は2種の特異性を持つ(混合物において生産され及び存在する1種の可能な形態の模式的な表示について
図9を参照)。更に別の局面では、本発明は少なくとも2種の異なる特異性を持つIgM抗体を含む抗体の混合物を生産するための方法を提供し、この方法は、組換え宿主細胞において、共通の軽鎖を暗号化する核酸配列及びIgMアイソタイプの少なくとも2種の異なる重鎖を暗号化する核酸配列を発現させる工程を含み、そこでは、前記重鎖が前記共通の軽鎖に対合可能であり、及び機能的な抗原結合領域を形成する。5種までの特異性をJ-鎖の存在におけるIgMの五量体において、及びJ-鎖の欠損下のIgMの六量体においての6種までを構成させることができる(Yoo等1999年)。したがって、特定の具体例において、3、4、5、又は6種のIgMの重鎖を、本発明のこの局面に従い共通の軽鎖と共に同時発現する。5種の異なる重鎖が共通の軽鎖と共に発現されるとき、本発明のこの局面に従う混合物において生産され及び存在し得る可能な形態の1種の模式的な表示について、
図10を参照。本発明は、また、少なくとも2種の異なる特異性を持つ、IgA二量体、IgM五量体又は六量体を提供する。これらの分子は、本発明に従い単一の宿主細胞のクローンから生産することができる。かかる分子は、異なる特異性を有する抗原結合領域を宿し、同じ抗原上の異なるエピトープ、1種の細胞上の異なる抗原、又は異なる細胞上の異なる抗原を結合することができ、それにより、抗原又は細胞を架橋結合する。
【0057】
本発明の更に別の局面は、望ましい効果を持つ抗体の混合物を機能的アッセイにおいて識別するための方法を提供することであり、この方法は次の工程を含む:i)抗体の混合物を機能的アッセイにおいて加える工程、及びii)前記混合物の効果を前記アッセイにおいて定める工程であり、ここでは、前記混合物の抗体が共通の軽鎖を持つ抗体を含む。好適例において、前記混合物は本発明に従う組成物において構成される。
【0058】
本発明は、また、1又はそれよりも多い種類のタンパク質の単一の宿主細胞における組換え的な発現のための方法を提供し、ここでは、少なくとも4種のポリペプチドが前記単一の宿主細胞において発現される。各ポリペプチドは、独自に発現され、及び異種のプロモータの調節下であり得る。タンパク質又はタンパク質群は、前記宿主細胞の培養物から別々にか、又は混合物として分離することができる。好ましくは、この具体例の宿主細胞は、ヒト細胞であるか、及び/又は網膜細胞、より一層好ましくは、そのゲノムにおいてアデノウイルスE1配列を含む細胞、最も好ましくは、PER.C6細胞から導くことができる。
【0059】
(例)
次の例は、本発明を例証するために提供し、及び本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。本発明の実践は、特に示さない限り、この技術の習熟内にある、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、及び組換えDNAの慣習的な技術を採用する。例えば、Sambrook, Fritsch及びManiatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2
nd Edition, 1989; Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel FM, et al, Eds, 1987; the series Methods in Enzymology(Academic Press, Inc.); PCR2: A Practical Approach、Macpherson(マクファーソン)MJ, Hams(ハムス)BD, Taylor(テイラ)GR, eds, 1995; Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow(ハーロウ)及びLane(レーン), eds, 1988年を参照。
【0060】
(例1)(共通の軽鎖及び2種の異なる重鎖可変領域を有する単クローン抗体の混合物の単一細胞における生産)
クローンUBS-54及びクローンK53を、結腸直腸の細胞株SW40(Huls等1999年)上での、及び多発性骨髄腫を患う患者の単核細胞の異種混合物(WO 02/18948号)上での、それぞれの選定により、半合成ライブラリ(de Kruif, 1995b)を用いることによって、予め分離した。更なる調査は、クローンUBS-54及びK53が、EP-CAM(カム)ホモタイプの接着分子(Huls等、1999年)及び膜補助因子タンパク質CD46(WO 02/18948号)に、それぞれ結合することを明らかにした。クローンのDNA配列決定は、それらが重鎖CDRsにおいて独特であること、しかし、それらが同一の軽鎖配列を含んでいることを明らかにした(
図3)。クローンのUBS-54及びK53のV
H及びV
Lを、本質的に記述されているような方法(Boel等、2000年)によって、HAVT20リーダ配列及びKappa(カッパー)の軽鎖を有するヒトのIgG1の定常ドメインのためのすべてのコード配列を含む発現ベクタ中に挿入し、それらは、プラスミドpUBS3000Neo及びpCD46_3000(Neo)をもたらした(
図4)。これらのプラスミドを、単独で又は組合せで、PER.C6
TM細胞において、一過性に発現させた。簡単には、各々の80cm
2のフラスコを、140μLのリポフェクタミン+10μgのDNA[pUBS3000Neo、pCD46_3000(Neo)のいずれか、又は双方の10μg]を用い、4時間、無-血清DMEM培地において37℃で、インキュベートすることによって形質移入した。4時間後、これを、DMEM+10%FBSで置き換え、及び細胞を一昼夜37℃で増殖させた。次いで、細胞をPBSで洗浄し、及び培地をExcell(エクセル) 525培地[JRH Bioscience(バイオサイエンス社)]で置き換えた。細胞を、37℃で6日間増殖させ、しかる後、細胞培養上清を収集した。ヒトIgG特異的ELISA分析(WO 00/63403号で記述)は、発現プラスミドを含むすべてのフラスコについて、およそ10μg/mLでIgGが存在することを示した。IgG1は、発現プラスミドで形質移入されない対照フラスコにおいて存在しなかった。各上清からのヒトIgGを、次いで、標準的方法に従うプロテインAアフィニティクロマトグ
ラフィ[Hightrap Protein(ハイトラップ・プロテイン) A HP、cat. no. 1-040203]を用い、製造者(Amersham Biosciences)の推薦に従って精製した。溶出後、試料をMicrocon YM30濃縮機[Amicon(アミコン社)]において濃縮し、及び10mMリン酸ナトリウム、pH6.7に緩衝液交換した。次いで、12μgの精製したIgGを、等電点電気泳動ゲル[Serva Pre-casut(セルバ・プレ‐キャスト)IEFゲル、pH範囲3〜10、cat. no. 42866]上で分析した。試料を低いpH側上に負荷し、及び集束後にコロイド性ブルーを用いて染色した(
図5)。レーン1は一過性に発現したK53を示し、レーン2は一過性に発現したUBS-54を示し、及びレーン3は細胞のIgG試料を示し、そこでは、双方の抗体が同時‐形質移入された。明瞭に、K53及びUBS-54 はそれぞれ独特なpIプロファイルを持ち、及び試料は、他の独特のイソ型を示す同時形質移入を形成し、K53及びUBS-54のそれらの間においてpIを持つ、主要なイソ型を有する。これは、また、Expasy(エクパシー)のホームページ[http://www.expasy.ch; Appel(アペル)等、1994年]で提供されるProtParam tool(プロトパラム用具)を用いて算出されるとき、理論的なpIに基づいて予想される。K53及びUBS-54は、それぞれ、8.24及び7.65の理論的なpIを持つが、1種のUBS-54重鎖及び1種のK53重鎖のヘテロ二量体を表すイソ型は、8.01の理論的なpIを持つ。かかるヘテロ二量体の組立体は、単一細胞がK53の重鎖及びUBS-54の重鎖の双方を翻訳するときにだけ生じ得、及びこれらを、共通の軽鎖と一緒に完全な長さのIgG 分子に組み立てる。
したがって、この実験は、2種の独特なヒトIgG分子を単一細胞において発現させることが可能であること、及びこれらの2種の独特な結合特異性からなるヘテロ二量体が、また、効率的に形成されることを示す。
【0061】
(例2)(ヒトB-細胞マーカに対する抗体の混合物のPER.C6
TM細胞株誘導クローンにおける生産)
本発明に従う抗体の混合物を生産するための方法は、組換え宿主細胞における、単一の軽鎖及び単一の軽鎖に対合可能で機能的な抗体を形成する3種の異なる重鎖の発現を用いるが、これは、ここにおいて実証し、及び
図6において模式的に示す。ヒトB-細胞上に存在するタンパク質、即ち、CD22、CD72及び主要組織適合複合体(MHC)クラスII(更に、HLA-DRと称される)に結合可能な抗体を暗号化するファージを、予め、半-合成ファージライブラリ[de Kruif等、1995年;van der Vuurst de Vries(ファン・デア・ビュルスト・デ・フリース)及びLogtenberg(ログテンベルグ)、1999年]から分離した。ファージクローンB28(抗-CD22)、クローンI-2(抗‐HLA-DR)及びクローンII-2(抗-CD72)のV
H及びV
L配列のDNA配列決定は、それらがすべて独特なV
H配列を含むが、同一のCDR領域を有する共通の軽鎖配列(Vλ3)を含むことを明らかにした(
図7)。
クローンB28、I-1及びII-2のV
H及びV
L配列は、重鎖を含む発現プラスミドのHAVT20リーダ配列の後方でクローン化される。かかるプラスミドの例は、ECACCで、第03041601号の下で寄託したような、pCRU-K01である(カッパ重鎖配列を含み、それは容易にラムダ重鎖配列と、所望の場合、当業者によって容易に交換することができる)。クローン化は、CD22、CD72及びHLA-DRについての結合特異性を有する完全な長さのヒトIgG
1を暗号化するプラスミドを生じさせる。これらのプラスミドは、更に、それぞれ、pCRU-CD22 、pCRU-CD72及びpCRU-HLA-DRと称される。
安定なPER.C6
TM誘導細胞株を当業者に知られる方法に従い発生させ(例えば、WO 00/63403号を参照)、これらの細胞株は、いずれかの、pCRU-CD22、pCRU-CD72又はpCRU-HLA-DR上の遺伝情報によって暗号化される抗体を発現し、及びある細胞株はすべての3種のプラスミドによって暗号化される抗体を発現する。したがって、PER.C6
TM細胞を、組織培養皿(10cmの直径)又はT80フラスコにおいて10%のFBSを加えたDMEM中、1皿につきおよそ2.5×10
6個の細胞を用いて、播種し、及び一昼夜、それらの正常な培養条件下(10%のCO
2濃度及び37℃)で保つ。翌日、形質移入を、別々の皿において、37℃で、リポフェクタミン[Invitrogen Life Technologies(インビトロゲン・ライフ・テクノロジー社)]を用いて、製造者により提供される標準的なプロトコルに従い、いずれかの、1〜2μgのpCRU-CD22、1〜2μgのpCRU-CD72、1〜2μgのpCRU-HLA-DR又は1μgの混合物のpCRU-CD22、pCRU-CD72及びpCRU-HLA-DRを用いて、実行する。形質移入の効率のための制御として、少数の皿を、LacZ調節ベクタを用いて形質移入する一方、少数の皿を形質移入させず、及び陰性対照として働かせる。
4から5時間までの後に、細胞を、DMEMで2回洗浄し、選定を伴わない新しい培地を再び与える。翌日、培地を500μg/mLのG418を含む新しい培地で置き換える。細胞を、同じ濃度のG418を含む培地で2又は3日毎にリフレッシュする。播種後、約20〜22日で、多数のコロニが現れ、及び各形質移入から少なくとも300を採集し、及び96-ウェル及び/又は24-ウェルを介し、6-ウェルの平板を介しT25フラスコまで増殖させる。この段階で、細胞を凍らせ(サブ-培養コロニ当たり少なくとも1つであるが、通常は4つのバイアル)、及び組換えヒトIgG抗体の生産レベルを、上清において、ヒトIgG
1に特異的なELISAを用いて定める(WO 00/63403号に記述)。また、この段階で、G418を培養培地から除去し、及び決して再び再適用しない。コロニの代表的な数のために、より一層大きい容量で培養し、馴化上清(conditioned supernatant)から、組換えヒトIgG
1画分を、プロテインAアフィニティクロマトグラフィを用いて、標準法に従い精製する。種々のクローンから精製したヒトIgG
1を、SDS−PAGE、等電点電気泳動法(IEF)上での分析、及び標的のCD22、CD72及びHLA-DRへの結合性を、細胞の形質移入体で、それらの細胞表面上にこれらのヒト抗原を発現するものを用いて分析する(CD72及びHLA-DRを発現する形質移入体は、van der Vuurst-de Vries及びLogtenbergによって記述されている、1999年;CD22形質移入体は、PER.C6
TMにおける同様な標準法に従い調製される)。pCRU-CD22、pCRU-CD72及びpCRU-HLA-DRでの同時-形質移入から得られるコロニを、3種の構築物のそれぞれの存在又は不存在についてのゲノムDNA上のPCRによって選別する。PCR生成物の同一性をDNA配列決定によって更に確認する。
次に、クローン細胞株が3種の結合特異性のそれぞれの生産を説明することが例証され、すなわち、単一細胞が2種よりも多い機能的なヒトIgGの混合物を生産できることを証明する。したがって、限られた数のコロニが、3種の結合特異性のそれぞれの生産について陽性で選別されるが(DNAレベルでのPCRによって並びにCD22、CD72及びHLA-DRに対する特定された結合アッセイにおいて双方で)、蛍光標示式細胞分取器(fluorescence activated cell sorter)(FACS)[Becton & Dickinson(ベクトン・ディキンソン)FACS VANTAGE SE(バンテージ・エスイー)]を用いる単一細胞の仕分けにかけられる。代わりに、コロニを0.3細胞/ウェルで播種し、クローンの成長を保証する。以後サブ-クローンと称するクローン細胞集団を、新鮮培地で週に1回リフレッシュする。サブ-クローンを増殖させ、及び96ウェルから24-及び6-ウェル平板を介してT25フラスコに移す。この段階で、サブ-クローンを凍らせ(サブ-クローン当り少なくとも1、しかし、通常4つのバイアル)、及び組換えヒトIgG
1抗体の生産レベルを、上清において、ヒトIgG
1特異的ELISAを用いて定める。サブ-クローンの代表的な数について、より一層大きな容量を培養し、組換えヒトIgG
l画分を、馴化上清から、プロテインAアフィニティクロマトグラフィを用い、標準的手法に従い精製する。
次いで、種々のサブ-クローンから精製したヒトIgG
1を、親クローンから得るヒトIgG
1について、上述のように、すなわち、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)及び標的CD22、CD72及びHLA-DRに対する結合性によって分析する。また、サブ-クローンを、3種の構築物pCRU-CD22 、pCRU-CD72及びpCRU-HLA-DRのそれぞれの存在又は不存在についてのゲノムDNA上のPCRによって選別する。さらに、PCR生成物の同一性を、DNA配列決定によって確認する。
また、サザンブロット及び/又はFISHのような他の方法を用い、3種の構築物のそれぞれがクローン細胞株において存在するかどうか定めることができる。
3種の構築物のそれぞれについてトランスジェニックであると証明されたサブ-クローンを、広範囲に及ぶ期間培養し、導入遺伝子の存在が安定かどうか、及び抗体混合物の発現が同じに残るかどうか、発現レベルについてのみならず、細胞から分泌される種々の抗体のイソ型の間の比率について定める。したがって、サブ-クローン培養を、少なくとも25の集団倍加数の時間の間、付着培養又は浮遊培養のいずれかとして維持する。4〜6の集団倍加数毎に、特異的な生産の試験を、ヒトIgG特異的ELISAを用いて行い、及びより一層大きい容量を培養し、細胞ペレット及び上清を得る。細胞ペレットを用い、ゲノムDNAにおける3種の構築物の存在を、PCR、サザンブロット及び/又はFISHによって評価する。上清を用い、上記のように組換えヒトIgG
1画分を精製する。種々の集団倍加数で得られる精製されたヒトIgG
1を、記述されているように、すなわち、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)及び標的CD22、CD72及びHLA-DRに対する結合を、これらの抗原を発現する細胞の形質移入体を用いることによって分析する。
【0062】
(例3)(機能的ヒトIgGの最も有効な混合物のための多重ヒトIgGsを発現するクローンの選別)
抗体混合物の機能性を細胞に基づくアッセイにおいて分析し、ヒトIgG
1混合物が、例えば、Ramos(ラモス)のようなB-細胞株の増殖を抑制するか、及び/又はアポトーシスを誘導するかどうかを定める。また、他の細胞株を用いることができる。加えて、抗体混合物を、抗体依存性の細胞毒性、及び、例えば、Ramos細胞の補体依存性の細胞障害性を誘導するそれらの潜在能力について分析する。
次の実験のそれぞれでは、標的CD22、CD72及びHLA-DRを認識する抗体混合物の機能性を分析し、及び個々のIgG1抗体のそれぞれに対して、及び3種の個々のIgG1の特異性の等モルの組合せに対して比較することができる。
【0063】
Ramos細胞の増殖を抑制する抗体混合物の能力を評価するために、これらの細胞を96-ウェル平板において(0.1〜1.0×10
5/mL)、CD22、CD72及びHLA-DRに対するいくつかの濃度(5〜20μg/mL)の抗体混合物を用い、24時間インキュベートする。細胞の増殖を、別の16時間の培養の間の
3H-チミジンの組込みによって測定する。増殖の抑制を、未処置の細胞(100%の基準値になる)に比較する
3H-チミジンの組込みの割合をプロットすることによって定める。
【0064】
Ramos細胞のアポトーシスの誘導を分析するために、これらの細胞を、48-ウェル平板において(0.2〜1.0×10
6/mL)、標的CD22、CD72及びHLA-DRに対するいくつかの濃度(5〜20μg/mL)の抗体混合物を用い、24又は48時間刺激する。インキュベート期間後、アポトーシスの細胞上のホスファチジルセリンの暴露を分析する[Koopman(コープマン)G等1994年]。したがって、細胞を収集し、2回PBSで洗浄し、及びアネキシンV結合緩衝液[Caltag(カルタグ)]において1:25に希釈したFITC-標識化アネキシンV(Caltag)の100μLを用い、10分間RTでインキュベートする。試料のフローサイトメトリ[FACSCalibur(ファックスキャリバー), Becton Dickinson(ベクトン・ディッキンソン)、San Jose, CA(サン・ホセ), CA(米国カリフォルニア州)]による分析に先立ち、ヨウ化プロピジウム(PI)[Sigma(シグマ社)]を、5μg/mLの終濃度まで添加し、アポトーシスの細胞(アネキシンV+/PI-、初期のアポトーシス細胞;アネキシンV+/PI+、遅発アポトーシス細胞)から壊死性細胞を区別する。
代わりのアッセイにおいて、アポトーシスを、Ramos細胞の細胞表面上のCD22、CD72及びHLA-DRに対する抗体混合物を、ヤギ-抗-ヒト(Fc-特異的)多クローン抗体[Jackson Immunoresearch Laboratories, West Grove, PA(ジャクソン免疫研究所、ウエスト・グローブ、米国ペンシルベニア州)]のF(ab)2の25μg/mLを用いるインキュベート期間中の架橋結合によって誘導する。
別の代わりとなるアッセイでは、アポトーシスを、CD22、CD72及びHLA-DRに対するいくつかの濃度(5〜20μg/mL)の抗体混合物を用い、Ramos細胞をインキュベートする一方、それらを化学感作剤(chemosensitizing agent)のドキソルビジン[Calbiochem(カルビオケム社)]又はデキサメタゾン[UMCU, Utrecht(ユトレヒト),オランダ国]と共に同時インキュベートすることによって誘導する。
【0065】
抗体混合物の抗体依存性細胞の細胞障害性(Antibody Dependent Cellular Cytotoxicity)を、効果細胞としての末梢血の単核細胞を用い、標準的な
5lCr遊離アッセイ(Huls等、1999年)において分析する。この目的のため、1〜3×10
6個のRamos細胞を、100μCi[Amersham、Buckinghamshire(バッキンガムシャー州)、英国]を用いて、37℃1時間、標識化する。3回の培地での洗浄の後、Ramos標的細胞を、U字状底の96ウェル平板において、5×10
3細胞/ウェルで平板培養する。次いで、Ficoll-hypaque(フィコール-ヒパーク)密度勾配によって健康な提供者から得られる末梢血の単核細胞を、各ウェルに、エフェクタ:標的比率で80:1から10:1に及ばせて3回添加する。細胞を、37℃で、種々の濃度の抗体混合物(5〜20μg/mL)の存在下に、200μLの最終的な容量においてインキュベートする。4時間のインユベートの後、上清の一部分を、収集し、及び
5lCr遊離を測定する。特異的な溶解の割合(percantage)を、次の式を用いて算出する:特異的溶解の%=([実験的cpm-自発のcpm]/[最大のcpm-自発のcpm]×100%)。最大の
5lCr遊離を、トリトンX-100を1%の終濃度まで標的細胞に添加することによって定め、及び自発的遊離を、培地単独での標的細胞のインキュベート後に定める。
補体依存性細胞障害性を同様のアッセイにおいて定める。効果細胞の代りに、ここでは50μLのヒト血清を標的細胞に添加する。続いて、アッセイを同じ様式において行う。
代わりに、抗体混合物のADCC及びCDCを、ユーロピウム(Europium)遊離アッセイを用いるか[Patel(パーテル)及びBoyd(ボイド)、1995年]、又はLDH遊離アッセイを用いて[Shields(シールズ)等、2001年]定める。
【0066】
(例4)[所定の標的(Her-2)に対する同一のV
L配列を有する多重ファージを分離するためのファージ提示の使用、及びこの標的を結合可能な抗体の混合物の組換え宿主細胞における生産]
同じタンパク質、例えば、上皮成長因子受容体Her-2上に存在する多数のエピトープを結合可能なscFv断片を提示するファージを、半-合成ファージライブラリ(de Kruif等、1995a, b)から分離することができる。かかるファージのいくつかを識別し、及び更に本発明に従う使用のために、同じ軽鎖配列を含むものを選定することができる。半-合成ライブラリを、7種のサブ-ライブラリで、それはそれぞれが異なる軽鎖(de Kruif等、1995a, b)を含むものであり、これらを混合することによって形成する。したがって、かかるサブ-ライブラリで、唯一の軽鎖及び多くの重鎖を含むものを、選別のために用いることは、特に実際的であり、その結果、同一のV
L配列を有する多数の抗体が得られ、及び本発明に従う抗体混合物を発現させるのに用いられる。
Her-2に対するファージの選定のために、いくつかの融合タンパク質を生じさせ、これはヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインに融合するHer-2の細胞外ドメインの異なる部分を含む。この目的のために、pCDNA3.1zeo発現ベクタ(InVitrogen)を構築し、これは、その多数のクローン化領域において、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインに先立つフレーム中のヒンジ領域におけるXhoIの制限部位を含む。Her-2cDNAクローンを鋳型として用い、PCR断片を、当業者に知られる標準的な分子生物学の技術を用いて生じさせる。これらの断片は独特な5′制限部位、開始コドンに次ぐ真核生物リーダ配列からなり、これは、Her-2の全体の細胞外(EC)ドメインへか、又はフレームにおいてXhoI制限部位によって続けられるHer-2のECドメインの一部分にフレームにおいて連結する。次いで、これらのPCR断片を、フレームにおいて、CH2-CH3のIgG1の領域を用い、pCDNA3.1zeo発現ベクタ中にクローン化する。Her-2の全体のECドメインを含む融合タンパク質に加えて、いくつかのより一層小さい融合タンパク質を生じさせ、これはHer-2のECドメインの重複してない断片を含む。Her-2-Ig融合タンパク質を暗号化するこれらの構築物を、リポフェクタミン試薬[Gibco(ギブコ社)]を用いる293T細胞の一過性の形質移入のために用いる。形質移入後5日で、293T細胞の上清を収集し、及びHer-2-Ig融合タンパク質を、プロテインAアフィニティクロマトグラフィを用いて、標準的手法に従い精製する。
Her-2のECドメインの重複してない断片を含むHer-2-Ig融合タンパク質を、2時間、37℃で、Maxisorp
TM(マキシソウプ)のプラスチック製試験管[Nunc(ヌンク社)]の表面上に、飽和濃度(0.5〜5μg/mL)で被覆する。試験管をPBS(MPBS)中に溶解させた脂肪を含まない2%の粉乳において1時間ブロックする。同時に、半-合成ファージ提示ライブラリ(上記で用いる専門用語に従うサブ-ライブラリ)の500μL(およそ10
13のcfu)で、それでは、唯一のvカッパ1の軽鎖が代表されるものを、de Kruif等(1995a,b)及びその中の参考文献群によって記述されるように調製され、及びそれを、2容量の4%MPBSに添加する。加えて、ヒト血清を、15%の終濃度にまで添加し、及びブロッキングを30〜60分間進行させる。Her-2-Ig被覆試験管を空にし、及びブロックされたファージライブラリを添加する。管を密封し、及び緩徐に1時間回転させ、次いで、回転させないで2時間インキュベートする。管を空にし、及び10回0.1%のTween(トウィーン)-20を含有するPBSにおいて洗浄し、次いで、PBSにおいて5回洗浄する。1mLのグリシン-HCl、0.05M、pH 2.2を添加し、及び管を10分間緩徐に回転させる。溶離されたファージを、500μLの1MのTris-HCl pH 7.4に添加する。この混合物に、3.5mLの指数関数的に増殖するXL-1ブルー細菌培養物を添加する。管を30分間37℃で振とうさせずにインキュベートする。続いて、細菌を、アンピシリン、テトラサイクリン及びブドウ糖を含む2TY寒天平板上で平板培養する。37℃での平板の一昼夜のインキュベートの後、コロニを平板から擦り取り、及び本質的にde Kruif(1995a)等によって記述されているように豊富なファージライブラリを調製するのに用いる。簡潔には、擦り取った細菌を、アンピシリン、テトラサイクリン及びブドウ糖を含む2TY培地に接種するのに用い、及び37℃で〜0.3のOD
600nmまで増殖させる。ヘルパファージを添加し、及び細菌に感染させ、しかる後、培地を、アンピシリン、テトラサイクリン及びカナマイシンを含む2TYに変える。インキュベートを一昼夜30℃で続ける。翌日、細菌を遠心分離によって2TY培地から除き、しかる後、ファージをポリエチレングリコール6000/NaClを用いて沈殿させる。最終的に、ファージをPBS-1%BSAの小容量において溶解させ、フィルタ-殺菌し、及び選定の次のラウンドのために用いる。選定/再-感染の手法を2回行う。選定の第2ラウンドの後、個々のE. coliコロニを、単クローンファージ抗体を調製するのに用いる。本質的に、個々のコロニを対数-相にまで増殖させ、及びヘルパファージで感染させ、しかる後、ファージ抗体の生産を一昼夜進行させる。ファージ抗体を含む上清を、96ウェルの平板に被覆されたHer-2-総EC-Igに対する結合活性についてELISAにおいて試験する。
【0067】
上述の選別において得られる選定したファージ抗体を、特異性についてのELISAによって認証する。この目的のため、Her-2のECドメインの重複がない断片を含むHer-2-Ig融合タンパク質を、MaxisorpのELISA平板に被覆する。被覆後、平板を2%のMPBSにおいてブロックする。選定したファージ抗体を、4%のMPBSの等しい容量においてインキュベートする。平板を空にし、PBSにおいて1回洗浄し、しかる後、ブロックしたファージを添加する。インキュベートを1時間進行させ、 平板をPBSの0.1%Tween-20において洗浄し、及び結合したファージを過酸化酵素に複合化する抗-M13抗体を用いて検出する。手法をチログロブリンに対して向けられる対照のファージ抗体を用いて同時に行い(de Kruif等、1995a, b)、これは、陰性対照として働く。
別のアッセイにおいて、選定されたファージ抗体を、Her-2を発現するBT474ヒト乳癌細胞に結合するそれらの能力について分析する。フローサイトメトリ分析のために、ファージ抗体を、まず、BT474細胞の染色に先立ち、4%のMPBSの等しい容量において、15分間4℃でブロックする。ファージ抗体の細胞への結合を、ビオチン化抗-M13抗体[Santa Cruz Biotechnology(サンタクルス生物工学社)]、次いでストレプトアビジン-フィコエリトリン(Caltag)を用いて視覚化する。
代わりに、Her-2上の多数のエピトープを認識するファージ抗体を、Her-2に対するファージ結合の、良く特徴付けられたネズミ抗-Her-2抗体HER50、HER66及びHER70の結合との競合に基づく方法(Spiridon等、2002年)を用いて選定する。この目的のために、2×10
6個のBT474細胞を、4℃で、およそ10
13のcfu(0.5mL)の半-合成ファージ提示ライブラリと共にインキュベートし、ここでは、1種のVカッパ1の軽鎖しか上述のように調製されないことが表わされ、及び10%のFBSを含む培地の2容量でブロックされる。混合物を緩徐に4℃で2時間密閉管において回転する。続いて、結合してないファージを、10%のFBSを含む50mLの冷培地での2回の洗浄によって除去する。以後、Her-2上の多数のエピトープを認識するファージを、BT474細胞を、飽和濃度(5〜20μg/mL)のHER50、HER66及びHER70のネズミ抗-Her-2抗体を含む1mLの冷培地において再懸濁することにより溶出させる。細胞を氷上で10分間放置し、遠沈させ、及び抗-Her-2ファージ抗体を含む上清を用い、XL1-ブルー細胞に上述のように再感染させる。
【0068】
上述の脱選別(de screens)により生じたHer-2-特異的ファージ抗体のパネルから、3種のファージ抗体を選定し、これらはHer-2タンパク質上の3種の異なる重複しないエピトープを認識する。これらのクローンのV
H配列及び独特なVカッパ1の軽鎖配列は、暫定的に、VK1HER2-1、VK1HER2-2及びVKLHER2-3と示され、これらを、発現プラスミドpCRU-K01(ECACC受託第03041601号)のHAVT20リーダ配列の後ろでか、又は同様な発現プラスミドでクローン化し、Her-2についての結合特異性を有する全長のヒトIgG
1-カッパを暗号化するプラスミドを得る。これらのプラスミドを、暫定的に、それぞれ、pCRU-VK1HER2-1、pCRU-VK1HER2-2及びPCRU-VK1HER2-3として示す。安定なPER.C6
TM誘導細胞株を、当業者に既知の方法に従い生じさせ、これらの細胞株が、pCRU-VK1HER2-1、pCRU-VK1HER2-2又はPCRU-VK1HER2-3のいずれかにおける遺伝情報によって暗号化される抗体を発現し、及びある細胞株がすべての3種のプラスミドによって暗号化される抗体を発現する。したがって、PER.C6
TM細胞を、DEMに10%FBSを加えた組織培養皿(10cm直径)か、又はT80フラスコにおいて、1皿につきおよそ2.5×10
6個の細胞を用いて播種し、及び一昼夜それらの正常な培養条件下(10%CO
2濃度及び37℃)に保つ。翌日、形質移入を、別々の皿において37℃で、リポフェクタミン(Invitrogen Life Technologies)を用い、製造者により提供される標準的プロトコルに従い、1〜2μgのpCRU-VK1HER2-1、1〜2μgのpCRU-VK1HER2-2、1〜2μgのpCRU-VK1HER2-3又は1μgのpCRU-VK1HER2-1、pCRU-VK1HER2-2及びpCRU-VK1HER2-3の混合物のいずれかで行う。形質移入の効率のための制御として、少数の皿をLacZの対照ベクタで形質移入する一方、少数の皿を形質移入させず、及び陰性対照として働かせる。
5時間後、細胞をDMEMで2回洗浄し、及び選択のない新鮮培地を補給する。翌日、培地を500μg/mLのG418を含有する新鮮培地で置換する。細胞を、2又は3日毎に、同じ濃度のG418を含有する培地でリフレッシュさせる。播種後の約20〜22日で、多数のコロニが現れ、及び各形質移入から少なくとも300種を採取し、及び96-ウェル及び/又は6-ウェルを介する24-ウェル平板を介し、T25フラスコにまで増殖させる。この段階で、細胞を凍らせ[sub-cultured(継代培養した)コロニ1個につき、少なくとも1つ、通常4つのバイアル]、及び組換えヒトIgG抗体の生産レベルを、上清において、ヒトIgG
1について特異的なELISAを用いて定める。また、この段階で、G418を培地から除去し、及び決して再度再適用しない。コロニの代表的な数のために、より一層大きな容量を培養し、組換えヒトIgG
1画分を、馴化した上清から、プロテインAアフィニティクロマトグラフィを用いて、標準的な手法に従い精製する。種々のクローンからの精製したヒトIgG
1を、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)上で分析し、及びHer-2-Ig融合タンパク質への結合をELISAによってアッセイし、及びBT474細胞の表面上のHer-2への結合についてフローサイトメトリによって分析する。
pCRU-VK1HER2-1、pCRU-VK1HER2-2及びpCRU-VK1HER2-3の同時-形質移入から得られるクローンを、3種の構築物のそれぞれの存在又は不存在についてのゲノムDNA上のPCRによって選別する。PCR生成物の同一性を、DNA配列決定によって更に確認する。
次に、クローン細胞株が3種の結合特異性のそれぞれの生産を説明することが例証される。したがって、限られた数のコロニが、3種の結合特異性のそれぞれの生産についての陽性を選別され(DNAレベルでのPCRによって並びにHer-2に対する特異的結合アッセイにおける双方で)、蛍光標示式細胞分取器(FACS)(Becton & Dickinson FACS VANTAGE SE)を用いる単一細胞の仕分けにかけられる。代わりに、コロニを0.3細胞/ウェルで播種し、クローンの成長を保証する。以後サブ-クローンと称するクローン細胞集団を、新鮮培地を用い週に1回リフレッシュさせる。サブ-クローンを増殖させ、及び96-ウェルから24-及び6-ウェル平板を介してT25フラスコに移す。この段階で、サブ-クローンを凍らせ(サブ-クローン当り少なくとも1、しかし、通常4つのバイアル)、及び組換えヒトIgG
1抗体の生産レベルを、上清において、ヒトIgG
1特異的ELISAを用いて定める。サブ-クローンの代表的な数について、より一層大きな容量を培養し、組換えヒトIgG
l画分を、馴化上清から、プロテインAアフィニティクロマトグラフィを用いて、標準的手法に従い精製する。
次いで、種々のサブ-クローンからの精製したヒトIgG
1を、親のクローンから得られるヒトIgG
1について、上述のように、すなわち、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)及びHer-2に対する結合性によって分析する。また、サブ-クローンを、3種の構築物pCRU-VK1HER-2-1、pCRU-VK1HER-2-2及びpCRU-VK1HER-2-3のそれぞれの存在又は不存在についてのゲノムDNA上のPCRによって選別する。さらに、PCR生成物の同一性をDNA配列分析によって確認する。
また、サザンブロット及び/又はFISHのような他の方法を用い、3種の構築物のそれぞれがクローン細胞株において存在するかどうか定めることができる。
3種の構築物のそれぞれについてトランスジェニックであると証明されたサブ-クローンを、広範囲に及ぶ期間培養し、導入遺伝子の存在が安定かどうか、及び抗体混合物の発現が同じに残るかどうか、発現レベルについてのみならず、細胞から分泌される種々の抗体の間の比率についても定める。したがって、サブ-クローンの培養を、少なくとも25の集団倍加数の時間の間、付着培養又は浮遊培養のいずれかとして維持する。4〜6の集団倍加数毎に、特異的な生産の試験を、ヒトIgG特異的ELISAを用いて行い、及びより一層大きな容量を培養し、細胞ペレット及び上清を得る。細胞ペレットを用い、3種の構築物の存在を、ゲノムDNAにおいて、PCR、サザンブロット及び/又はFISHのいずれかによって評価する。上清を用い、上記のように組換えヒトIgG
1画分を精製する。種々の集団倍加数で得られる精製したヒトIgG
1を、記述するように、すなわち、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)及びELISAによるHer-2に対する結合性及びBT474細胞を用いるフローサイトメトリによって分析する。
【0069】
抗-Her-2抗体の抗体混合物の機能性を細胞に基づくアッセイにおいて分析し、ヒトIgG
1混合物が、BT474細胞の増殖を抑制するか、及び/又はアポトーシスを誘導するかどうかを定める。加えて、抗体混合物を、抗体依存性細胞毒性、及び、BT474細胞の補体依存性細胞障害性を誘導するそれらの潜在能力について分析する。
【0070】
以下に記載する実験のそれぞれでは、Her-2を認識する抗体混合物の機能性を分析し、及び個々のIgG1抗体のそれぞれに対して、及び3種の個々の単一特異性IgG1分子の等モルの組合せに対して比較することができる。
【0071】
BT474細胞の増殖を抑制する抗体混合物の能力を評価するために、これらの細胞を一昼夜96-ウェル平板において付着させ(1.5×10
5/ウェル)、及び次いでいくつかの濃度(5〜20μg/mL)のHer-2に対する抗体混合物を用い、72時間インキュベートする。細胞の増殖を最後の6時間の培養の間の
3H-チミジンの組込みによって測定する。増殖の抑制を、未処置の細胞(100%の基準値になる)に比較する
3H-チミジンの組込みの割合をプロットすることによって定める。
【0072】
BT474細胞のアポトーシスの誘導を分析するために、これらの細胞を48-ウェル平板において付着させ(2.5×10
5/ウェル)、及び次いでいくつかの濃度(5〜20μg/mL)のHer-2に対する抗体混合物を用い、4時間インキュベートする。しかる後、細胞を、トリプシン処理により収集し、及び2回PBSで洗浄し、及びアネキシンV結合緩衝液(Caltag)において1:25に希釈するFITC-標識化アネキシンV(Caltag)の100μLを用い、10分間RTでインキュベートする。試料のフローサイトメトリ(FACSCalibur, Becton Dickinson, San Jose, CA)による分析に先立ち、ヨウ化プロピジウム(PI)(Sigma)を、5μg/mLの終濃度まで添加し、アポトーシスの細胞(アネキシンV
+/PI
-、初期のアポトーシス細胞;アネキシンV
+/PI
+、遅発アポトーシス細胞)から壊死性細胞(アネキシンV
-/PI
+)を区別する。
【0073】
抗体混合物の抗体依存性細胞の細胞障害性を、効果細胞としての末梢血単核細胞及び標的細胞としてのBT474細胞を用い、上述のような標準的な
5lCr遊離アッセイ(Huls等、1999年)において分析する。補体依存性細胞障害性を同様のアッセイにおいて定める。効果細胞の代りに、ここでは50μLのヒト血清を標的細胞に添加する。続いて、アッセイを上述のように行う。
代わりに、抗体混合物のADCC及びCDCを、ユーロピウム遊離アッセイを用いるか(Patel及びBoyd、1995年)、又はLDH遊離アッセイを用いて(Shields等、2001年)定める。
【0074】
また、Her-2に対する抗体混合物の機能性を、例えば、Spiridon等、2002年において記述されるような、インビボの動物モデルを用いて試験する。
【0075】
(例5)
(トランスジェニック動物の乳における異なる機能的ヒトIgGsの発現)
ヒトB-細胞上に存在するタンパク質に対するファージのV
H及びV
H配列、すなわちCD22(クローンB28)、CD72(クローンII-2)及びHLA-DR(クローンI-2)(
図7)を、発現プラスミドpBC1[pBC1 Mouse Milk Expression System(マウスミルク発現系)、Invitrogen Life Technologiesにおいて提供される]中にクローン化し、トランスジェニック動物におけるこれらのヒトIgG分子の乳-腺及び乳分泌-特異的発現を、製造者の指示に従って得る。これらの乳-腺特異的発現ベクタは、抗-CD22、抗-CD72及び抗-HLA-DRについての抗体配列を暗号化し、これらを製造者の指示に従ってネズミ生殖系列中に導入する。得られる子を、3種の構築物のそれぞれの存在について、尾部から分離されるDNA上のPCRによって選別する。子は、雄性又は雌性のいずれでもよく、3種の抗体のそれぞれについてトランスジェニックであることについて確認され、離乳され、及び成熟する。雌性のトランスジェニックマウスを、6〜8週歳で受胎させ、及び乳試料を妊娠後の複数の時間点で得る。雄性のトランスジェニックマウスを、非トランスジェニックの雌性と交尾させ、及び雌性のトランスジェニック子孫(上述のようにPCRで定められる)を交尾させ、及び雌性のトランスジェニックの初代について上述されているように搾乳する。必要とされるときは、雌性又は雄性のトランスジェニックの初代を、別の世代のために交尾させ、各初代株のためのトランスジェニック乳の十分な量を得ることができる。トランスジェニック乳を、ヒトIgGの存在について、ヒトIgG特異的ELISAを用いて分析し、これは、マウスIgG又は他のマウスの乳成分と交差反応しない。ヒトIgGを、トランスジェニックマウスの乳から、プロテインAアフィニティクロマトグラフィを用いて、標準的手法に従い精製する。精製したヒトIgGを、SDS-PAGE、等電点電気泳動及び標的CD22、CD72及びHLA-DR上への結合性において分析する。抗体混合物の機能性を、上述したように分析する。
【0076】
(例6)(PER.C6
TM誘導クローンにおける所定の標的に対するIgA/IgG混合物の生産)
ホモタイプ付着分子EP-CAMに対して向けられたファージUBS-54のV
H-V
L配列(Huls等、1999年)を、カッパの軽鎖を有するヒトIgG1の定常ドメインを暗号化するベクタ(発現ベクタpUBS3000Neo)中だけでなく、また、カッパの軽鎖を有するヒトIgA1の定常ドメインを暗号化する発現ベクタ(発現ベクタpUBS54-IgA、
図8)中にもクローン化した。それ故に、pUBS3000Neo及びpUBS54-IgAから導かれる抗体は、EPCAM上の同じエピトープに結合する。pUBS3000Neo及びpUBS54-IgAから導かれる唯一の相違する抗体は、重鎖の定常ドメインを暗号化する配列においてであり、IgG
1又はIgA
1アイソタイプのいずれでも生じる。これらの2種のベクタのカッパ軽鎖配列は同一である。
pUBS3000Neo及びpUBS54-IgA上の遺伝情報によって暗号化される抗体を発現する安定なPER.C6
TM誘導細胞株を、当業者に良く知られた手法によって生じさせる。したがって、PER.C6
TM細胞を、10%のFBSを加えたDMEMで、組織培養皿(10cm直径)又はT80のフラスコにおいて、およそ1皿につき2.5×10
6個の細胞を用いて播種し、及び一昼夜、それらの正常な培養条件下(10%のCO
2濃度及び37℃)で保つ。翌日、形質移入を、別々の皿において37℃で、リポフェクタミン(Invitrogen Life Technologies)を用い、製造者により提供される標準的なプロトコルに従い、1〜2μgのpUBS3000Neo及びpUBS54-IgAのいずれかで行う。形質移入の効率のための制御として、少数の皿をLacZの対照ベクタで形質移入する一方、少数の皿を形質移入させず、及び陰性対照として働かせる。
4〜5時間後、細胞をDMEMで2回洗浄し、及び選択のない新鮮培地を補給する。翌日、培地を500μg/mLのG418を含有する新鮮培地で置換する。細胞を、2又は3日毎に、同じ濃度のG418を含有する培地でリフレッシュさせる。播種後の約20〜22日で、多数のコロニが現れ、及び各形質移入から少なくとも300種を採取し、及び96-ウェル及び/又は6-ウェルを介する24-ウェル平板を介し、T25フラスコにまで増殖させる。この段階で、細胞を凍らせ(継代培養したコロニ当り、少なくとも1つ、しかし、通常4つのバイアル)、及び組換えヒトIgG及びヒトIgA抗体の生産レベルを、上清において、ヒトIgG1について特異的なELISA、並びにヒトIgAについて特異的なELISAを用いて定める。また、この段階で、G418を培養培地から除去し、及び決して再度再適用しない。コロニの代表的な数のために、より一層大きな容量を培養し、組換えヒトIgG
1及びヒトIgA画分を、馴化された上清から、例えば(以下の組合せ)、プロテインL又はLAアフィニティクロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、疎水的相互作用クロマトグラフィ及びゲルろ過を用いて精製する。種々のクローンから精製したヒト免疫グロブリンを、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)及びこの分子の高い発現を持つ細胞株を用いる標的EPCAMへの結合性において分析する。また、クローンを、pUBS3000Neo及びpUBS54-IgAの存在又は不存在についてのゲノムDNA上のPCRによって選別する。PCR生成物の同一性を、DNA配列決定によって更に確認する。
クローンの限られた数は、EPCAM IgG
1及びEPCAM IgAの双方の生産についての陽性を選別され、蛍光標示式細胞分取器(FACS)(Becton & Dickinson FACS VANTAGE SE)を用いる単一細胞の仕分けにかけられる。代わりに、コロニを0.3細胞/ウェルで播種し、クローンの成長を保証する。以後サブ-クローンと称するクローン細胞集団を、新鮮培地で週に1回リフレッシュする。サブ-クローンを増殖させ、及び96-ウェルから24-及び6-ウェル平板を介してT25フラスコに移す。この段階で、サブ-クローンを凍らせ(サブクローン当り少なくとも1、しかし、通常4つのバイアル)、及び組換えヒトIgG
1及びIgA抗体の生産レベルを、上清において、ヒトIgG
1特異的ELISA及びヒトIgA特異的ELISAを用いて定める。サブ-クローンの代表的な数について、より一層大きな容量を培養し、組換えヒトIgG
l及びヒトIgA画分を、馴化上清から、例えば(以下の組合せ)、プロテインL又はLAアフィニティクロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ及びゲルろ過を用いて精製する。種々のクローンから精製したヒト免疫グロブリンを、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)及びこの分子の高い発現を持つ細胞株を用いる標的EPCAMに対する結合性において分析する。また、サブ-クローンを、pUBS3000Neo及びpUBS54-IgAの存在又は不存在についてのゲノムDNA上のPCRによって選別する。さらに、PCR生成物の同一性をDNA配列決定によって確認する。
また、サザンブロット及び/又はFISHのような他の方法を用い、双方の構築物がクローン細胞株において存在するかどうか定めることができる。
【0077】
(例7)(クローンPER.C6
TM細胞株における多重標的に対するヒトIgG
1/IgG
3混合物の生産)
ファージクローンUBS-54及びクローンK53(
図3)を、例1で記載したように得た。クローンUBS-54のV
H及びV
Lを、カッパ軽鎖を有するヒトIgG
1の定常ドメインのためのHAVT20リーダ配列及びコーディング配列のすべてを含む発現ベクタ中に、本質的に記述された方法(Boel等、2000年)によって挿入した。得られるプラスミドを、pUBS3000Neoとして示した(
図4)。任意の望ましいアイソタイプの重鎖定常ドメインを含む発現ベクタを、日常的な分子生物学の方法によって、この技術で利用できるすべてのこれらの領域の配列を用いて、構築することができることは、明らかである。ファージクローンK53のV
H及びV
L配列を、カッパ軽鎖を有するヒトIgG
3の重鎖の定常ドメインのためのHAVT20リーダ配列及びコード配列のすべてを含む発現ベクタ中に、本質的に記述された方法(Boel等、2000年)によってクローン化する。この発現ベクタを、pK53IgG3として示す。
これらのプラスミドは単独で又は組合せにおいて一過性に、PER.C6
TM細胞において発現される。簡潔には、80cm
2の各フラスコを、4時間、140μLのリポフェクタミン+10μgのDNA(pUBS3000Neo、pK53IgG3又は10μgの双方)を用い、無血清DMEM培地中、37℃で、インキュベートすることによって形質移入する。4時間後、これをDMEM+10%FBSで置換し、及び細胞を一昼夜37℃で増殖させる。次いで、細胞をPBSで洗浄し、及び培地をExcell525培地(JRH Bioscience)で置換する。細胞を37℃で6日間増殖させ、しかる後、細胞培養物の上清を収集する。ヒトIgG特異的ELISA分析を、すなわち、IgGサブ-タイプすべてを測定して行い、形質移入された、及び形質移入されてないPER.C6
TM細胞におけるヒトIgGの濃度を定める。次いで、各上清からのヒトIgGを、プロテインAアフィニティクロマトグラフィ[Hightrap Protein A(ハイトラップ・プロテインA) HP、cat. no. 1-040203]を用いて、標準的手法、次いで、製造者(Amersham Biosciences)の推薦に従い精製する。溶出後、試料をMicrocon(マイクロコン)YM30の濃縮機[amicon(アミコン社)]において濃縮し、及び緩衝液を、pH 6.7の10mMリン酸ナトリウムに交換する。試料を、標的EPCAM及びCD46に対する結合性について、LS174T細胞のようなこれらの分子の高い発現を持つ細胞株を用いて分析する。次いで、精製したIgGの12μgを、いずれも、一過性に、UBS-54 IgG1、K53 IgG3又は細胞からのIgGを発現し、そこでは、双方の抗体が同時-形質移入されており、これを等電点電気泳動のゲル(Serva Pre-cast IEF gels, pH range 3-10, cat. no. 42866)上で分析する。試料を、低いpHの側部上に負荷し、及び集束の後、コロイド性ブルーで染色する。各試料について主要なイソ型のpI値を定め、UBS-54 IgGl、K53 IgG3又は二重特異性ヘテロ二量体の発現が、どのように細胞が形質移入されるかに依存してあるかどうか例示する。ヘテロ二量体の同定は、単一細胞がK53のIgG3重鎖及び
UBS-54のIgGl重鎖の双方を翻訳し、及び完全な長さのIgG分子中に共通の軽鎖と共にこれらを組み立てたことを示す。二重特異性ヘテロ二量体の不存在は、単一細胞におけるK53のIgG3重鎖及びUBS-54のIgGlの重鎖の双方を翻訳することが可能であるが、これらが共通の軽鎖と共に完全な長さのIgG分子に組み立てられず、すなわち、IgGl及びIgG3重鎖の選択的な結合があることを示す。しかし、これはまた、UBS-54 IgG
1及びK53 IgG
3の同時-発現の欠乏によって説明することができる。したがって、pUBS3000Neo及びpK53 IgG3の双方を発現する安定したクローン細胞株を、当業者に良く知られたような手法によって生じさせる。PER.C6
TM細胞を、10%のFBSを加えたDMEM中で、組織培養皿(10cm直径)又はT80フラスコにおいて、およそ1皿につき2.5×10
6個の細胞を用いて播種し、及び一昼夜、それらの正常な培養条件下(10%のCO
2濃度及び37℃)で保つ。翌日、形質移入を、別々の皿において37℃で、リポフェクタミン(Invitrogen Life Technologies)を用い、製造者により提供される標準的プロトコルに従い、1〜2μgのpUBS3000Neo、pK53IgG3又は双方のいずれかで行う。形質移入の効率のための制御として、少数の皿をLacZの対照ベクタで形質移入する一方、少数の皿を形質移入させず、及び陰性対照として働かせる。
4〜5時間後、細胞をDMEMで2回洗浄し、及び選択を伴わない新鮮培地を補給する。翌日、培地を500μg/mLのG418を含有する新鮮培地で置換する。細胞を、2又は3日毎に、同じ濃度のG418を含有する培地でリフレッシュさせる。播種後約20〜22日で、多数のコロニが現れ、及び各形質移入から少なくとも300種を採取し、及び96-ウェル及び/又は6-ウェルを介する24-ウェル平板を介し、T25フラスコにまで増殖させる。この段階で、細胞を凍らせ(継代培養したコロニ当り、少なくとも1つ、しかし、通常4つのバイアル)、及び組換えヒトIgG抗体の生産レベルを、上清において、すべてのサブ-タイプのヒトIgGについて特異的なELISAを用いて定める。また、この段階で、G418を培養培地から除去し、及び決して再度再適用しない。コロニの代表的な数のために、より一層大きな容量を培養し、組換えヒトIgGを、馴化上清から、プロテインAアフィニティクロマトグラフィ(Hightrap Protein A HP, cat. no. 1-040203)を用い、標準的手法、次いで製造者(Amersham Biosciences)の推薦に従い精製する。種々のクローンから精製したヒト免疫グロブリンを、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)及びLS174T細胞のような、これらの分子の高い発現を持つ細胞株を用いる標的EPCAM及びCD46への結合性において分析する。また、クローンを、pUBS3000Neo及びpK54IgG3の存在又は不存在についてのゲノムDNA上のPCRによって選別する。PCR生成物の同一性を、更にDNA配列決定によって確認する。クローンの限られた数は、EPCAM IgG1及びK53 IgG3の双方の生産についての陽性を選別され、蛍光標示式細胞分取器(FACS)(Becton & Dickinson FACS VANTAGE SE)を用いる単一細胞の仕分けにかけられる。代わりに、コロニを0.3細胞/ウェルで播種し、クローンの成長を保証する。以後サブ-クローンと称するクローン細胞集団を、新鮮培地で週に1回リフレッシュさせる。サブ-クローンを増殖させ、及び96-ウェルから24-及び6-ウェル平板を介してT25フラスコに移す。この段階で、サブ-クローンを凍らせ(サブ-クローン当り少なくとも1、しかし、通常4つのバイアル)、及び組換えヒトIgG抗体の生産レベルを、上清において、ヒトIgG特異的ELISAを用いて定める。サブ-クローンの代表的な数について、より一層大きな容量を培養し、組換えヒトIgG画分を、馴化上清から、プロテインAアフィニティクロマトグラフィ(Hightrap Protein A HP, cat. no. 1-040203)を用い、標準的手法、次いで製造者(Amersham Biosciences)の推薦に従い精製する。種々のクローンから精製したヒト免疫グロブリンを、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)及び例えば、LS174T細胞のような、この分子の高い発現を持つ細胞株、又はこれらの分子を発現する形質移入体を用いる標的EPCAM及びCD46に対する結合性において分析する。また、サブ-クローンを、pUBS3000Neo及びpK53IgG3の存在又は不存在についてゲノムDNA上のPCRによって選別する。さらに、PCR生成物の同一性を、DNA配列決定によって確認する。
また、サザンブロット及び/又はFISHのような他の方法を用い、双方の構築物がクローン細胞株において存在するかどうか定めることができる。
一旦、クローン性サブ-クローンが入手可能で、及びUBS-54 IgGl及びK53 IgG3の双方の発現について陽性が確認されると、機能的なK53及びUBS-54の存在は、単一細胞における共通の軽鎖を備える異なるアイソタイプを有する機能的IgG’sの混合物を生じさせることが可能であることを示す。EPCAM及びCD46の双方を結合する二重特異性抗体の発現の分析は、異なるサブタイプを持つ異なる重鎖がどんな範囲に対合し、それが、生成される二重特異性抗体の量に影響を及ぼすかを明らかにする。二重特異性抗体の全くないか又は著しく低いレベルがこの場合に見つけられることが期待される。
【0078】
(例8)[狂犬病ウイルスの糖タンパク質(RVGP)を特異的に認識する単一鎖のFv断片を所有するファージのRVGP-Ig融合タンパク質を用いる選定、及び狂犬病ウイルスに対する抗体の混合物の発現]
この例は、別の潜在的な標的として、狂犬病ウイルスに対する抗体の混合物の生産を記載する。抗原として、狂犬病ウイルス糖タンパク質(RVGP)を選ぶが、他の狂犬病の抗原を選び、又は同様にこの目的のために包含することができる。RVGPを認識するいくつかの単クローン抗体は、この技術で既に記述されており、及び多クローン抗体は、狂犬病の感染の処置において同様に有用であることが認識されている(例えば、EP 0402029号; EP 0445625号)。
抗体の断片を、US patent 6,265,150号において及びWO 98/15833号において本質的に記述されているように、抗体のファージ提示ライブラリ及びMabstract
TMの技術を用いて選定する。別に示されない限り、すべての手法は室温で行う。RVGPの配列は、当業者にとってクローン化の目的のために入手できる[例えば、Yelverton(イェルベルトン)等、1983年]。ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインに遺伝的に融合した全体のRVGPからなるRVGP-Ig融合タンパク質を、PER.C6
TMにおいて発現するベクタpcDNA3.1 Zeo-CH2-CH3を用いて生産し、及び2時間37℃で、Maxisorp
TMのプラスチック管(Nunc)上に、1.25μg/mLの濃度で被覆する。管を1時間PBS(MPBS)中に溶解した2%の無脂肪粉乳においてブロックする。同時に、本質的にde Kruif等(1995a, b)及びその中の文献により記述されたように調製する単一鎖Fvの断片(scFv’s)を発現するファージ提示ライブラリの500μL(およそ10
13cfu)を、4%のMPBSの2容量に添加する。この実験では、選定を、唯一の単一の可変的な軽鎖の遺伝子種だけを用いて組み立てられた元のライブラリの画分(例えば、‘VK1’-ライブラリ)を用いて行う。加えて、ヒト血清を15%の終濃度まで添加し、及びブロッキングを30〜60分間進行させる。RVGP-Ig-被覆管を空にし、及びブロックしたファージライブラリを添加する。管を、密閉し、及び1時間緩徐に回転させ、次いで、回転せずに2時間インキュベートする。管を空にし、及び10回0.1%のTween-20を含有するPBSで洗浄し、次いで、5回PBSにおいて洗浄する。1mLのグリシン-HCl、0.05M、pH 2.2を添加し、及び管を緩徐に10分間回転させる。溶離されたファージを、500μLの1MのTtris-HCl pH 7.4に添加する。この混合物に、3.5mLの指数関数的に増殖するXL-1ブルー細菌培養物を添加する。管を30分間37℃で振とうさせずにインキュベートする。次いで、細菌を、アンピシリン、テトラサイクリン及びブドウ糖を含有する2TYの寒天平板上に平板培養する。平板での一昼夜の37℃でのインキュベート後、コロニを平板から
擦り取り、及び本質的にDe Kruif等(1995a, b)によって記述されているように、豊富なファージライブラリを調製するのに用いる。簡潔には、擦り取った細菌を、アンピシリン、テトラサイクリン及びブドウ糖を含む2TY培地に接種するのに用い、及び37℃の温度で〜0.3のOD
600nmまで増殖させる。ヘルパファージを添加し、及び細菌に感染させ、しかる後、培地を、アンピシリン、テトラサイクリン及びカナマイシンを含む2TYに変える。インキュベートを一昼夜30℃で続ける。翌日、細菌を2TY培地から遠心分離によって除き、しかる後、ファージをポリエチレングリコール6000/NaClを用いて沈殿させる。最終的に、ファージをPBS-1%BSAの小容量において溶解させ、フィルタ-殺菌し、及び選定の次のラウンドのために用いる。選定/再-感染の手法を2回行う。選定の第2ラウンド後、個々のE. coliコロニを用い、単クローンファージ抗体を調製する。本質的に、個々のコロニを対数-相にまで増殖させ、及びヘルパファージで感染させ、しかる後、ファージ抗体の生産を一昼夜進行させる。ファージ抗体を含む上清を、96ウェル平板に被覆されたヒトRVGP-Igに対する結合活性について、ELISAにおいて試験する。
【0079】
上述の選別において得られる選定したファージ抗体を、特異性についてのELISAによって認証する。この目的のため、ヒトRVGP-Igを、MaxisorpのELISA平板に対して被覆する。被覆後、平板を2%のMPBSにおいてブロックする。選定したファージ抗体を4%のMPBSの等容量においてインキュベートする。平板を空にし、PBSにおいて1回洗浄し、しかる後、ブロックしたファージを添加する。インキュベートを1時間進行させ、平板をPBS中の0.1%のTween-20において洗浄し、及び結合したファージを過酸化酵素に複合化する抗-M13抗体を用いて検出する。対照として、手法をチログロブリンに対して向けられる対照のファージ抗体を用いて同時に行い(De Kruif等、1995a, b)、これは、陰性対照として働く。
【0080】
次いで、ヒトRVGP-Igに結合するファージ抗体を、ヒト血清IgGに対する結合性について試験し、それらが融合タンパク質のFc部分を認識する可能性を排除する。
【0081】
別のアッセイにおいて、ファージ抗体を、RVGPを発現するPER.C6
TM細胞に結合するそれらの能力について分析する。この目的のために、PER.C6
TM細胞を、RVGPを暗号化するcDNA配列を所有するプラスミドを用いて又は空ベクタ(empty vector)を用いて形質移入し、及び安定な形質移入体を、当業者に既知の標準的技術[例えば、Coligan J. E.等、(2001年) Current protocols in protein science(タンパク質科学における目下のプロトコル), volume I. John Wiley & Sons, Inc. New York]を用いて選定する。フローサイトメトリ分析のために、ファージ抗体を、まず、RVGP-及び対照の形質移入されたPER.C6
TM細胞の染色に先立ち、4%のMPBSの等容量において、15分間4℃でブロックする。ブロックしたファージを、標識化されてない対照の形質移入されたPER.C6
TM細胞及び親油性(lipophylic)染料(PKH67、Sigma)を用いて緑色に標識化されたRGVP形質移入PER.C6
TM細胞の混合物に添加する。ファージ抗体の細胞への結合を、ビオチン化抗-M13抗体(Santa Cruz Biotechnology)、次いでストレプトアビジン-フィコエリトリン(Caltag)を用いて視覚化する。抗RVGPscFvは選択的にPER.C6
TMRVGP形質移入体を染色し、一方、それらは対照の形質移入体には結合しない。
【0082】
ヒトRVGPを特異的に認識する単一鎖Fv断片を所有するファージについての選別の代わりの方法は、RVGP-形質移入PER.C6
TM細胞の使用によるものである。膜結合RVGPを発現するPER.C6
TM細胞を、上述のように生産する。ファージ選定実験を、上述のように、標的としてこれらの細胞を用いて行う。唯一の単一のscFv種を用いるscFv-ファージ粒子から構成されるファージライブラリの画分(500μL、およそ10
13cfu)を、2mLのRPMI/10%FCS/1%NHSで15’についてRTでブロックする。形質移入してないPER.C6
TM細胞(〜10*10
6細胞)を、PER.C6-RVGP細胞(〜1.0*10
6細胞)に添加する。この混合物を、ブロックした軽鎖の制限されたファージライブラリに添加し、及び2,5時間、4℃で緩徐に回転させながらインキュベートする。次いで、細胞を2回洗浄し、及び500μLのRPMI/10%FCSにおいて再懸濁させ、及びネズミ抗-RVGP抗体(Becton Dickinson)を用い、次いで、フィコエリトリン(PE)-複合化抗-マウス-IgG抗体(Calltag)によって、15’について氷上でインキュベートする。細胞を1回洗浄し、及び4mLの管に移す。細胞の仕分けを、FACSvantageの蛍光標示式細胞分取器(Becton Dickinson)上で行い、及びRVGP(PE陽性)細胞を仕分ける。仕分けた細胞を、遠心沈澱させ、上清を確保し、及び結合したファージを、細胞から、500μLの50mMのグリシンpH 2.2において細胞を再懸濁することによって、次いで、5分間室温でインキュベートすることによって溶離する。混合物を、250μLの1MのTris-HCl pH 7.4を用い中和させ、及び取り出した上清に添加する。集合的にこれらのファージを用い、豊富なファージライブラリを上述のように調製する。選定/再-感染の手法を2回行う。選定の第2ラウンド後、単クローンファージ抗体を調製し、及び上述したように、RVGP-PER.C6
TM細胞及び形質移入されてないPER.C6
TM細胞に対する結合性について試験する。次いで、RVGP-形質移入細胞上で陽性のファージを、上述のように、RVGP-IgG融合タンパク質に対する結合性について、ELISAにおいて試験する。
【0083】
選定したscFvの断片を、ヒトIgG1の形式において、この技術で既知の方法(例えば、Boel等、2000年)に従ってクローン化する。この目的のため、選定したscFvによって共有されるVL断片を、適切な制限部位を加えるオリゴのもの(oligo’s)を用いてPCR増幅する。同様の手法を、VH遺伝子のために用いる。したがって、修飾された遺伝子を、発現pCRU-K01(ECACC受託第03041601号)においてクローン化し、これは、元のファージクローンと同じ特異性を持つ完全なhuIgG1の重鎖及び完全なヒト軽鎖の遺伝子を暗号化する発現ベクタをもたらす。この方法によって、3種の異なる重鎖を別々の発現ベクタ中にクローン化し、一方、唯一のベクタが共通の軽鎖配列から構成されるのに必要である。これらの発現ベクタを、暫定的に、pCRU-RVGP-l、pCU-RVGP-2、及びpCRU-RVGP-3で示す。代わりに、これらの3種のベクタは、V
L領域を暗号化するDNAを欠くことができ、これを、次いで、重鎖を暗号化しない第4の別の発現のベクタにおいて暗号化することができる。また、異なるV
H配列を含む3種のベクタのすべての3種又は2種において存在するV
L配列を持つこともできる。
安定なPER.C6
TM誘導細胞株を、当業者に既知の手法(例えば、WO 00/63403号参照)に従い生じさせ、これらの細胞株は、pCRU-RVGP-1、pCRU-RVGP-2又はpCRU-RVGP-3上の遺伝情報によって暗号化される抗体を発現し、及びある細胞株が3種のすべてのプラスミドによって暗号化される抗体を発現する。したがって、PER.C6
TM細胞を、10%のFBSを加えたDMEMで、組織培養皿(10cm直径)又はT80のフラスコにおいて、およそ1皿につき2.5×10
6個の細胞を用いて播種し、及び一昼夜、それらの正常な培養条件下(10%CO
2濃度及び37℃)で保つ。翌日、形質移入を、別々の皿において37℃で、リポフェクタミン(Invitrogen Life Technologies)を用い、製造者により提供される標準的プロトコルに従い、1〜2μgのpCRU-RVGP-1、1〜2μgのpCRU-RVGP-2、1〜2μgのpCRU-RVGP-3又はPCRU-RVGP-1、pCRU-RVGP-2及びpCRU-RVGP-3の混合物の1μgのいずれかを用いて行う。形質移入の効率のための制御として、少数の皿をLacZの対照ベクタで形質移入する一方、少数の皿を形質移入させず、及び陰性対照として働かせる。
4〜5時間後、細胞をDMEMで2回洗浄し、及び選択を伴わない新鮮培地を補給する。翌日、培地を500μg/mLのG418を含有する新鮮培地で置換する。細胞を、2又は3日毎に、同じ濃度のG418を含有する培地でリフレッシュさせる。播種後約20〜22日で、多数のコロニが現れ、及び各形質移入から少なくとも300種を採取し、及び96-ウェル及び/又は6-ウェルを介する24-ウェル平板を介し、T25フラスコにまで増殖させる。この段階で、細胞を凍らせ(継代培養したコロニ当り、少なくとも1つ、しかし、通常4つのバイアル)、及び組換えヒトIgG抗体の生産レベルを、上清において、ヒトIgG
1について特異的なELISAを用いて定める(WO 00/63403号に記述)。また、この段階で、G418を培養培地から除去し、及び決して再度再適用しない。コロニの代表的な数のために、より一層大きな容量を培養し、組換えヒトIgG
1画分を、馴化上清から、プロテインAアフィニティクロマトグラフィを用い、標準的手法に従い精製する。種々のクローンから精製したヒトIgG
1を、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)及び上述のRVGP PER.C6-形質移入体を用いる標的RVGPへの結合性において分析する。
pCRU-RVGP-1、pCRU-RVGP-2及びpCRU-RVGP-3での同時-形質移入から得られるクローンを、3種の構築物の各々の存在又は不存在についてゲノムDNA上のPCRによって選別する。PCR生成物の同一性を、DNA配列決定によって更に確認する。
クローンの限られた数は、3種の結合特異性の各々の生産についての陽性を選別され(DNAレベルでのPCRによって、並びにRVGPに対する特異的結合アッセイにおいて双方で)、蛍光標示式細胞分取器(FACS)(Becton & Dickinson FACS VANTAGE SE)を用いる単一細胞の仕分けにかけられる。代わりに、コロニを0.3細胞/ウェルで播種し、クローンの成長を保証する。以後サブ-クローンと称するクローン細胞集団を、新鮮培地で週に1回リフレッシュする。サブ-クローンを増殖させ、及び96-ウェルから24-及び6-ウェル平板を介してT25フラスコに移す。この段階で、サブ-クローンを凍らせ(サブ-クローン当り少なくとも1つ、しかし、通常4つのバイアル)、及び組換えヒトIgG
1抗体の生産レベルを、上清において、ヒトIgG
1特異的ELISAを用いて定める。サブ-クローンの代表的な数について、より一層大きな容量を培養し、組換えヒトIgG
l画分を、馴化上清から、プロテインAアフィニティクロマトグラフィを用い、標準的手法に従い精製する。次いで、種々のサブ-クローンから精製したヒトIgG
1を、親クローンから得られるヒトIgG
1について上述のように、すなわち、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)及び標的RVGPに対する結合性によって分析する。また、サブ-クローンを、3種の構築物pCRU-RVGP-1、pCRU-RVGP-2及びpCRU-RVGP-3の各々の存在又は不存在についてゲノムDNA上のPCRによって選別する。さらに、PCR生成物の同一性を、DNA配列決定によって確認する。
また、サザンブロット及び/又はFISHのような他の方法を用い、3種の構築物の各々がクローン細胞株において存在するかどうか定めることができる。
3種の構築物のそれぞれについてトランスジェニックであると証明されたサブ-クローンを、広範囲に及ぶ期間培養し、導入遺伝子の存在が安定かどうか、及び抗体混合物の発現が同じままかどうか、発現レベルについてのみならず、細胞から分泌される様々な抗体のイソ型間の比率についても定める。したがって、サブ-クローンの培養を、少なくとも25の集団倍加数の時間の間、付着培養として又は浮遊培養としてのいずれかで維持する。4〜6の集団倍加数毎に、特異的な生産の試験を、ヒトIgG特異的ELISAを用いて行い、及びより一層大きい容量を培養し、細胞ペレット及び上清を得る。細胞ペレットを用い、ゲノムDNAにおける3種の構築物の存在を、PCR、サザンブロット及び/又はFISHのいずれかを介して評価する。上清を用い、上記のように組換えヒトIgG
1画分を精製する。種々の集団倍加数で得られる精製したヒトIgG
1を、記述されているように、すなわち、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)及び標的RVGPに対する結合性によって分析する。
狂犬病に対する抗体混合物の有効性を、インビトロの細胞培養アッセイにおいて試験し、ここでは、狂犬病ウイルスの広がりの減少を測定し、並びに、インビボの狂犬病によって感染した動物モデルにおいて試験する。かかるモデルは当業者に既知であり、及び例えば、EP 0402029号において記述されている。
【0084】
(例9)(共通の軽鎖及び3種の異なる重鎖可変領域を有する抗体の合物の単一細胞における生産)
本発明に従う抗体の混合物を生産するための方法で、組換え宿主細胞における単一の軽鎖及び単一の軽鎖に対合可能な3種の異なる重鎖の発現を用いて、機能的な抗体を形成するものは、本明細書において実証され、及び
図6において模式的に示される。
EP-CAMホモタイプ付着分子(Huls等、1999年)及び膜補助因子タンパク質CD46(WO 02/18948号)に対するヒトIgGのUBS54及びK53を、それぞれ、例1に記載する。補助因子タンパク質CD46に結合することが識別された別のクローンは、クローン02-237であった(
図12に提供するVHの配列)。このクローンのDNA配列決定は、それが、UBS54及びK53と同じ軽鎖を含むが、独特な重鎖可変配列(
図3における配列比較参照)を含むことを明らかにした。結果として、02-237の重鎖のCDR3は、K53のそれとは4種の位置で異なる(
図13の配列比較参照)。ファージ02-237の重鎖及び軽鎖可変配列を、発現プラスミドpCRU-K01中にクローン化し、[pCRU-K01は、第03041601号の下、European Collection of Cell Cultures(細胞培養物の欧州収集物)(ECACC)で寄託される]、これは、IgG1抗体についての重鎖及び軽鎖の定常ドメインを含む。得られるプラスミドをpgG102-237と示した。引き続くクローン化戦略のため、pgG102-237によって暗号化されるような、02-237の軽鎖の得られるN-末端は、pUBS3000Neo、pCD46_3000(Neo)のそれぞれ(
図3)によって示されるような、UBS54及びK53のN-末端からわずかに異なった。プラスミドpgG102-237は、ヒト293(T)細胞において一過性にか、又はPER.C6細胞において安定に生産された。精製した02-237IgGが、精製したCD46(
図14)について、K53 IgGよりも著しく高い親和性を持ち、すなわち、親和性が、K53及び02-237について、9.1×10
-7Mから2.2×10
-8Mまで、それぞれ増加したようであった。また、02-237は、ヒト大腸癌腫LS174T細胞上で、K53よりもCD46に対し著しく良好に結合した(
図15)。
ヒトIgG 02-237を暗号化するプラスミドpUBS3000Neo、pCD46_3000(Neo)及びpgG102-237の組合せを発現する安定なPER.C6
TM誘導細胞株を、当業者に既知のような方法従い生じさせた(例えば、WO 00/63403号参照)。したがって、PER.C6
TM細胞を、10%FBSを加えたDMEM中で、組織培養皿(10cm直径)において、およそ1皿につき2.5×10
6個の細胞を用いて播種し、及び一昼夜、それらの正常な培養条件下(10%CO
2濃度及び37℃)で保つ。翌日、形質移入を、別々の皿において37℃で、リポフェクタミン(Invitrogen Life Technologies)を用い、製造者により提供される標準的プロトコルに従い、pUBS3000Neo、pCD46_3000(Neo)及びpgG102-237の2μgの当モル混合物を用いて行った。選定のための陰性対照として、少数の皿を形質移入しなかった。4〜5時間後、細胞をDMEMで2回洗浄し、及び選択を伴わない新鮮培地を補給した。翌日、培地を500μg/mLのG418を含有する新鮮培地で置換した。細胞を、2又は3日毎に、同じ濃度のG418を含有する培地でリフレッシュさせた。播種後約20〜22日で、多数のコロニが現れ、及び約300種を採取し、及び96-ウェル及び/又は6-ウェルを介する24-ウェル平板を介し、T25フラスコにまで増殖させた。継代培養の間、組換えヒトIgG抗体の生産レベルを、上清において、ヒトIgG1について特異的なELISAを用いて定めた(WO 00/63403号において記述)。約25%のすべてのコロニは、この高い特異性のアッセイにおいて陽性であることが明らかであった。この段階で測定された生産レベルを、単一のIgGがPER.C6
TM細胞において発現されるときのレベル(Jones等、2003年において記述された単一IgGの発現)に匹敵した。これらの高い発現レベルを導入遺伝子の増幅のための任意の方法を用いないで得たこと、及びそれらが導入遺伝子の低コピー数で起こることを強調するのは重要である。
30種の最も良好に生産するコロニを、バイアルにおいて凍らせ、及び19種の最も高く生産するクローンを、IgGの精製のために選定した(表1)。それらをT80フラスコにおいて継代培養し、及び次いで、各クローンからのヒトIgGを、プロテインAアフィニティクロマトグラフィを用いて精製した。したがって、15〜25mLの馴化培地を5mLのプロテインA FFセファロースカラム(Amersham Biosciences)上に負荷した。カラムを、0.1Mのクエン酸塩pH 3.0での溶出の前に、4mMのリン酸緩衝食塩水、pH 7.4(PBS)を用いて洗浄した。次いで、溶離された画分を、セファデックスG25 Fine HiPrep Desalting(ファイン・ハイプレプ・デソルティング)カラム(Amersham Biotech)上でPBSに対して脱塩した。精製したIgG画分の濃度を、0.1%(w/v)の溶液についての1.4の係数を用いて280nmでの吸光度測定によって定めた(表1)。
精製したIgG試料を、非-還元性及び還元性SDS-PAGE及びIEF上で分析した。非-還元性SDS-PAGE(
図16A)は、移動したIgG試料すべてが、およそ150kDaの、組み立てられた、無傷のIgG分子のように、対照のK53又は02-237に匹敵することを示した。還元性SDS-PAGE(
図16B)では、IgG試料は、約50及び25kDaの重鎖及び軽鎖として、それぞれ移動し、対照K53又は02-237の重鎖、軽鎖に匹敵する。
IEF上では、精製したIgG画分を、まず、等しい量のK53、UBS54及び02-237の混合物と比較した(
図17)。明瞭に、精製したK53、UBS54及び02-237を含む混合物と比較するとき、いくつかの試料が独特のpIプロファイルを有するイソ型を含んでいた。いくつかの主要な独特なイソ型は、1種のハンド上でK53及びUBS54の、及び他のハンドにおいてUBS54の間におけるpIを持つ。これは、また、Expasyのホームページ(http://www.expasy.ch;Appel等、1994年)において提供されるProtParam用具を用いて算出されるとき、理論的なpIに基づき予測される。K53、02-237及びUBS54はそれぞれ、8.24、8.36及び7.65の理論的pIを持つが、1種のUBS54の重鎖及び1種のK53の重鎖のヘテロ二量体を表すイソ型は、8.01の理論的なpIを持つ。かかるヘテロ二量体の組立体は、単一細胞がK53の重鎖及びUBS54の重鎖の双方を翻訳し、及びこれらを完全な長さのIgG分子に共通の軽鎖と一緒に組み立てるときにしか起こらない場合がある。それ故に、これらの結果は、一定のクローンが2種の機能的な抗体を少なくとも発現することを示唆する。いくつかのイソ型の独特な同一性を確認するために、最も興味深いクローンの試料を、K53、UBS54及び02-237に平行して、単独でか、又は混合物において、動かした(
図18)。これは、なお、いくつかのクローンが少なくとも2種の抗体(241、282、361)を発現したことを示した。さらに、それは、いくつかのクローンが3種の機能的抗体のすべてを発現するという証拠を提供した(280及び402)。
クローンが3種の重鎖のすべてを含むIgG混合物を発現したことを確認するために、ペプチド地図作製[Garnick(ガルニック)、1992年Gelpi(ジェルピ)、1995年]を用い、多クローンのIgG画分を分析した。本発明者は、以前、ペプチド地図作製を採用し、K53のタンパク質配列の99%を回収した。
図12に提供するタンパク質配列に基づき、K53、UBS54及び02-237の理論的なトリプシンペプチドの質量を算出した(表II及びIII)。各IgGについての少数の独特なペプチドは、識別でき、すなわち、例えば、それぞれ、2116.05、2057.99及び2307.15DaのMWを有するK53、02-237及びUBS54のためのCDR3ペプチドである。次に、ポリ1-280のトリプシン消化物を調製し、及びこれをLC-MSを用いて分析した(
図19)。K53、02-237及びUBS54のそれぞれの独特なCDR3ペプチドを表す2116、2057及び2308DaのMWを有するペプチドを検出した。これらのペプチドの精密なアミノ酸配列(表IIIにリストするような)を、MS-MS分析によって確認した(表IV、V及びVI)。本発明者は、また、2580及び2554DaのそれぞれのMWを有する2種の独特なN-末端軽鎖ペプチドの存在を確認した。ペプチド地図作製データは、明白に、共通の軽鎖及び3種の異なる重鎖を含む抗体の混合物がPER.C6
TMクローンポリl-280によって発現されたことを示した。また、クローン055、241及び402を、ペプチド地図作製によって選別した。クローン241及び402はすべての3種の重鎖配列について陽性と確認されたが、クローン055のみが、K53及び02-237の重鎖の発現を示し、UBS54のものは示さなかった。これはIEF選別を確認し(
図18)、そこでは、UBS54関連バンドが試料055において見られなかった。
ポリl-280を、CD46への結合性について、BIACOREによって分析した(
図20)。CD46のためのポリl-280の親和性は2.1×10
-8Mであったが、それは、IgG混合物が単独で02-237 IgGと同じ親和性を持つCD46結合分子を包含することを示す。
【0085】
総合すれば、この実験は、単一細胞において、3種の独特な重鎖を含む機能的IgG分子の混合物を発現することが可能であること、及びホモ二量体は別にして、2種の結合特異性からなるヘテロ二量体も形成されることを示す。さらに、3種の異なる重鎖を発現するクローンの頻度は、また、少なくとも4、5又はそれより多い種類の重鎖を、同じ手法を用いて得ることも可能であることを示唆する。重鎖のより一層多い数を発現するクローンを得るのが困難な場合、本発明に従う少なくとも3種の重鎖を発現するクローンを用いて、形質移入の別のラウンドにおいて、例えば、異なる選択マーカを用いることによって、より一層多い重鎖を導入することができる。
【0086】
次に、単一細胞が2種よりも多い機能的ヒトIgGのものの混合物を生産することが可能であることを例証した。したがって、クローン241、280及び402は、IEF及びMSの双方によって3種のIgGの各々の生産について陽性で選別されたが、限界希釈にかけられ、すなわち、0.3細胞/ウェルで、96-ウェル平板において播種され、クローンの成長が保証された。
クローン細胞集団、以後サブ-クローンと称するが、これを週に1回新鮮培地を用いてリフレッシュさせた。サブ-クローンを増殖させ、及び96-ウェルから24-及び6-ウェル平板を介して、T25、T80及びT175フラスコに移した。T80の段階で、サブ-クローンを凍らせた。組換えヒトIgG
1抗体の生産レベルを、上清において、ヒトIgG
1特異的ELISAを用いて定めた。各々の親クローンに対して、3種のサブ-クローンを選び、及び少数のT175フラスコにおいて培養し、上述のように、プロテインAアフィニティクロマトグラフィを用いる精製のために十分な馴化培地を得た。
次いで、サブ-クローンから精製したヒトIgG
1を、上述のように、親クローンから得られるヒトIgG
1に対して、等電点電気泳動(IEF)によって分析した。結果を
図21に示す。クローンのポリ1-241の各々からのサブクローンは、同じパターンを持つが、親クローンとは異なり、そこでは、それらは一定のバンドを失うと思われる。クローンのポリ1-280からのサブクローンのすべては、互いに、及び親クローンと異なると思われる。親クローンのポリ1-402からのサブクローンについてIEFにより得られるパターンは、すべての3種のサブクローン及び親クローンについて同一である。これらのデータから、クローン402が安定に抗体の混合物を生産していると結論付けることができる。このことは、本発明に従う抗体の混合物を単一細胞クローンから生産することが実行可能であることを例証する。
図21において分析される物質を収集する前に、クローンを最初の分析(
図18において示す)まで選択圧力の下で形質移入の手法から約25の集団倍加数(細胞分裂)を受けさせ、及びその点から更に選択圧力のないサブ-クローン化の手法の間の約30の集団倍加数受けさせた。したがって、単一細胞からのクローンから抗体の混合物を生産することは、少なくとも30世代にわたって安定であることができる。
【0087】
親の241、280及び402のクローン及びサブクローンからの精製したIgG1を、また、CD46-及びEpCAM抗原の方の結合反応性について分析した。このために、EpCAM、CD46及び対照抗原CD38のcDNAを、発現ベクタpcDNA(Invitrogen)中にクローン化した。これらのベクタを、Fugene(フジーン)[Roche(ロシュ社)]を用い、CHO(dhfr-)細胞中に、製造者により提供されるプロトコルに従い形質移入した。細胞を10%FBS及びHT捕捉物を含有するIscove’s(アイソコベ)培地(Gibco)において培養した。2日間の培養後、細胞をトリプシン処理によって収集し、及びFACS分析に用いるためにPBS-1%BSA(PBSB)中に懸濁した。
抗体の混合物を発現するクローンの精製したIgGl、及び抗-GBSIIIの対照IgG1試料、抗-CD72抗体(02-004)、並びに、抗-EpCAMクローンUBS54及び抗-CD46クローンK53及び02-237からの抗体を、20μgのIgGl/mLの濃度にPBSBにおいて希釈した。それぞれの20μLを200.000の形質移入細胞に添加し、及び氷上で1時間インキュベートした。しかる後、細胞を氷-冷PBSBにおいて1回洗浄した。次いで、結合したIgGを、ヤギ-抗-ヒトIgG-ビオチンとのインキュベートを用い、次いで、ストレプトアビジン-PEによって検出した。最終的な洗浄工程の後、細胞を1μg/mLのヨウ化プロピジウムを含有するPBSBにおいて懸濁した。試料をFACS(FACSvantage、Becton Dickinson)上で分析した。生きている細胞をゲート制御し(gate)、平均蛍光強度(MFI)をFACSプロットから算出した。結果を
図22に示す。予想されるように、UBS54はEpCAM形質移入細胞に選択的に結合し、及び02-237及びK53はCD46形質移入体に選択的に結合する一方、無関係な抗体はこれらの形質移入体に結合しなかった。
これらの結果は、EpCAM及びCD46の方への結合活性が、本発明に従う抗体の混合物を発現するほとんどのクローンの精製したIgG1調製物(preps)において存在することを例証し、機能的抗体の混合物が30回よりも多い分裂を受け、及び単一細胞からもたらされるサブ-クローンによって生産されることを例証する。サブクローン280-015では、CD46及びEpCAMの方への結合パターンは、他のクローンと対照的に、親クローンのポリ1-280でのものと類似していた。このアッセイの量的な局面が完全に明らかでないことを述べておくべきである。日常的な選別を用い、例えば、機能的試験によって、望ましい発現プロファイルを有するクローンを見出すことができる。量的な局面は、また、かかる選別において包含することができる。かかる選別は、量的に安定した様式において所定の機能性を有する抗体の混合物を発現する望ましいクローンの同定を可能にする。
【0094】
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