【課題を解決するための手段】
【0006】
コイル部品における損失の一つとして、交流電流により生じる損失である交流損失があり、交流損失には、表皮効果に起因する損失と、近接効果に起因する損失とがある。
【0007】
本発明の発明者らは、コイル部品における交流損失について、使用する導線の断面サイズが表皮深さの4倍以下、好ましくは2倍以下である場合において、100kHz以上の周波数でコイル部品を駆動すると表皮効果が支配的となるのに対して、100kHz未満、特に50kHz以下の周波数でコイル部品を駆動した場合には、近接効果が支配的となることを見出した。
【0008】
これらを踏まえた上で本発明の発明者らは、近接効果が支配的になる状況では、導線の配置状況等に応じて以下のような交流電流分布が生じることを見出した。
1)円形断面を有する導線(即ち、丸線)が単線である場合、一般的には電流は外周部に集中するが、導線が細い場合には外周部への電流の集中は緩和する。
2)平角導線のように縦横比の異なる導線が単線である場合、断面における長手方向の両端(平角導線の場合、板厚方向と直交する方向の両端)に電流が集中する。
3)互いに直列に接続されている2本の導線が近接し且つそれらの導線に同方向の電流が流れている場合(例えば、ソレノイド状又はスパイラル状に2巻きだけ導線を巻いたコイルの一部など)、各導線の内部で他方の導線から遠ざかる方向に電流が集中し、導線間の電流密度は低下する。
4)互いに直列に接続されている3本以上の導線が一列に近接して配置され且つそれらの導線に同方向の電流が流れている場合(例えば、導線をソレノイド状又はスパイラル状に3巻き以上巻回してなるコイルの一部など)、最も外側に位置する導線においては外側に電流が集中し、それ以外の導線においては他の導線との境界部分に電流が集中する。
5)互いに並列に接続された3本以上の導線が一列に近接して配置されている場合、最も外側に位置する導線においては外側に電流が集中し、それ以外の導線においては電流の集中は生じない。
6)上記4)の条件と他の条件とが同時に成立する場合、他の条件に基づく事象が優先する。
【0009】
本発明の発明者らは、上述した1)〜6)の事象を考慮し、近接効果が支配的となるように構成して表皮効果に起因した損失を抑制する一方で、近接効果に起因した損失を低めるようにコイルを構成することとした。具体的には、本発明の発明者らは、表皮深さを考慮した上で導線の断面サイズを決定し、更に、コイルに通電した場合の交流電流分布の密度がコイルの巻き窓の表面近傍のみに集中するようにコイルを構成することでコイルの巻き窓の内部において近接効果により生じていた損失を抑制することとし、コイル部品全体における交流損失を低くすることとした。ここで、コイルの「巻き窓」とは、コイルの巻き軸を含む平面でコイルを切った場合にできる2つの断面の夫々(即ち、コイルを構成する導線の束の断面)のことをいう。かかる知見等に基づき、本発明は、低損失のコイル部品として以下に掲げるコイル部品を提供する。
【0010】
即ち、本発明は、第1のコイル部品として、
1つ又は2つのサブコイルのみからなるコイルであって単一の巻き軸を有するコイルを備えるコイル部品であって、
前記サブコイルは、1つのコイル部のみ又は2つ以上のコイル部を並列接続してなるもののみからなるものであり、
前記コイル部は、1層又は2層のソレノイド状に巻回された導線又は1層又は2層のスパイラル状に巻回された導線からなるものであり、
前記巻き軸を含む平面で切った場合の前記コイルの2つの断面からなる巻き窓のいずれにおいても、前記コイルに通電した場合の交流電流分布が表面近傍のみに集中している
コイル部品を提供する。
【0011】
また、本発明は、第2のコイル部品として、第1のコイル部品であって、
前記導線は、前記巻き軸の延びる方向又は前記巻き軸と直交する方向の少なくともいずれか一方において、前記コイル部品を駆動する駆動周波数における表皮深さの2倍以下のサイズを有しており、
コイル部品を提供する。
【0012】
また、本発明は、第3のコイル部品として、第1又は第2のコイル部品であって、
前記交流電流分布は、前記巻き軸の延びる方向における前記巻き窓の両端近傍のみ又は前記巻き軸と直交する方向における前記巻き窓の両端近傍のみに集中している
コイル部品を提供する。
【0013】
また、本発明は、第4のコイル部品として、第1乃至第3のいずれかのコイル部品であって、
前記コイルは、2個の前記サブコイルのみからなるものであり、
前記コイルは、前記サブコイルを直列接続してなるものである
コイル部品を提供する。
【0014】
また、本発明は、第5のコイル部品として、第1乃至第4のいずれかのコイル部品であって、
前記導線は、前記表皮深さの2倍以下の直径を有する丸線又は前記表皮深さの2倍以下の板厚を有する平角線からなる
コイル部品を提供する。
【0015】
また、本発明は、第6のコイル部品として、第5のコイル部品であって、
前記コイルは、1つの前記サブコイルのみからなるものであり、
前記コイル部は、前記平角線をフラットワイズ巻きしてなるものであり、
前記サブコイルを構成する前記コイル部の前記巻き軸の延びる方向における前記平角線のサイズの総和の1/2は、前記表皮深さよりも大きい
コイル部品を提供する。
【0016】
また、本発明は、第7のコイル部品として、第5のコイル部品であって、
前記コイルは、2つの前記サブコイルのみからなるものであり、
前記コイル部は、前記平角線をフラットワイズ巻きしてなるものであり、
2つの前記サブコイルにおいて、該サブコイルを構成する前記コイル部の前記巻き軸の延びる方向における前記平角線のサイズの総和の小さい方は、前記表皮深さよりも大きい
コイル部品を提供する。
【0017】
また、本発明は、第8のコイル部品として、第7のコイル部品であって、
2つの前記サブコイルにおいて、前記サイズの総和の大きい方は、前記サイズの総和の小さい方の5倍以下である
コイル部品を提供する。
【0018】
また、本発明は、第9のコイル部品として、第5のコイル部品であって、
前記コイルは、1つの前記サブコイルのみからなるものであり、
前記コイル部は、前記平角線をエッジワイズ巻きしてなるものであり、
前記サブコイルを構成する前記コイル部の前記巻き軸と直交する方向における前記平角線のサイズの総和の1/2は、前記表皮深さよりも大きい
コイル部品を提供する。
【0019】
また、本発明は、第10のコイル部品として、第5のコイル部品であって、
前記コイルは、2つの前記サブコイルのみからなるものであり、
前記巻き軸と直交する方向において、一方の前記サブコイルは、他方の前記サブコイルの外側に位置しており、
前記コイル部は、前記平角線をエッジワイズ巻きしてなるものであり、
2つの前記サブコイルにおいて、該サブコイルを構成する前記コイル部の前記巻き軸と直交する方向における前記平角線のサイズの総和の小さい方は、前記表皮深さよりも大きい
コイル部品を提供する。
【0020】
また、本発明は、第11のコイル部品として、第10のコイル部品であって、
2つの前記サブコイルにおいて、前記サイズの総和の大きい方は、前記サイズの総和の小さい方の5倍以下である
コイル部品を提供する。
【0021】
また、本発明は、第12のコイル部品として、第5のコイル部品であって、
前記サブコイルは、前記コイル部を複数備えており、
前記サブコイルを構成する前記コイル部の夫々は、前記丸線を1層又は2層のソレノイド状に巻回してなるものであって、前記巻き軸から前記丸線までの距離が他の前記コイル部と異なるものであり、
前記サブコイルを構成する前記コイル部は、前記巻き軸を中心として同心円状に配置され、且つ、互いに並列に接続されている
コイル部品を提供する。
【0022】
また、本発明は、第13のコイル部品として、第12のコイル部品であって、
前記コイルは、1つの前記サブコイルのみからなるものであり、
前記サブコイルを構成する前記コイル部の前記巻き軸と直交する方向における前記丸線の直径の総和の1/2は、前記表皮深さよりも大きい
コイル部品を提供する。
【0023】
また、本発明は、第14のコイル部品として、第12のコイル部品であって、
前記コイルは、2つの前記サブコイルのみからなるものであり、
前記巻き軸と直交する方向において、一方の前記サブコイルは、他方の前記サブコイルの外側に位置しており、
2つの前記サブコイルにおいて、該サブコイルを構成する前記コイル部の前記巻き軸と直交する方向における前記丸線の直径の総和の小さい方は、前記表皮深さよりも大きい
コイル部品を提供する。
【0024】
また、本発明は、第15のコイル部品として、第14のコイル部品であって、
2つの前記サブコイルにおいて、前記直径の総和の大きい方は、前記直径の総和の小さい方の5倍以下である
コイル部品を提供する。
【0025】
また、本発明は、第16のコイル部品として、第5のコイル部品であって、
前記サブコイルは、前記コイル部を複数備えており、
前記サブコイルを構成する前記コイル部の夫々は、前記丸線を1層又は2層のスパイラル状に巻回してなるものであり、
前記サブコイルを構成する前記コイル部は、前記巻き軸の延びる方向に沿って積層されており、且つ、互いに並列に接続されている
コイル部品を提供する。
【0026】
また、本発明は、第17のコイル部品として、第16のコイル部品であって、
前記コイルは、1つの前記サブコイルのみからなるものであり、
前記サブコイルを構成する前記コイル部の前記巻き軸の延びる方向における前記丸線の直径の総和の1/2は、前記表皮深さよりも大きい
コイル部品を提供する。
【0027】
また、本発明は、第18のコイル部品として、第16のコイル部品であって、
前記コイルは、2つの前記サブコイルのみからなるものであり、
2つの前記サブコイルにおいて、該サブコイルを構成する前記コイル部の前記巻き軸の延びる方向における前記丸線の直径の総和の小さい方は、前記表皮深さよりも大きい
コイル部品を提供する。
【0028】
また、本発明は、第19のコイル部品として、第18のコイル部品であって、
2つの前記サブコイルにおいて、前記直径の総和の大きい方は、前記直径の総和の小さい方の5倍以下である
コイル部品を提供する。
【0029】
また、本発明は、第20のコイル部品として、第6乃至第8並びに第16乃至第19のいずれかのコイル部品であって、
前記サブコイルは、前記巻き軸の延びる方向において前記サブコイルを構成する前記コイル部の接続関係が前記サブコイル間の境界を挟んで互いに対称となるように配置されている
コイル部品を提供する。
【0030】
また、本発明は、第21のコイル部品として、第9乃至第15のいずれかのコイル部品であって、
前記サブコイルは、前記巻き軸と直交する方向において前記サブコイルを構成する前記コイル部の接続関係が前記サブコイル間の境界を挟んで互いに対称となるように配置されている
コイル部品を提供する。
【0031】
また、本発明は、第22のコイル部品として、第1乃至第21のいずれかのコイル部品であって、
前記駆動周波数を50kHz以下として設計された
コイル部品を提供する。
【0032】
また、本発明は、第23のコイル部品として、第1乃至第22のいずれかのコイル部品であって、
前記巻き窓の前記表面近傍に対向するように位置するヒートシンクを更に備える
コイル部品を提供する。