特許第6049271号(P6049271)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049271
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】電気エネルギー発生装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0352 20060101AFI20161212BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20161212BHJP
   H01L 41/193 20060101ALI20161212BHJP
   H01L 41/08 20060101ALI20161212BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H01L31/04 342B
   H01L41/18 101D
   H01L41/18 101B
   H01L41/18 102
   H01L41/08 H
   H01L41/08 E
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-32795(P2012-32795)
(22)【出願日】2012年2月17日
(65)【公開番号】特開2012-186471(P2012-186471A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2015年2月12日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0019092
(32)【優先日】2011年3月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(72)【発明者】
【氏名】金 成 ▲みん▼
(72)【発明者】
【氏名】車 承 南
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02290718(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0295257(US,A1)
【文献】 国際公開第2005/091311(WO,A1)
【文献】 特開2006−319342(JP,A)
【文献】 特表2009−521203(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/076254(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0320444(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/0392
H01L 41/08
H01L 41/113
H01L 41/187
H01L 41/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電特性を有する半導体物質からなる複数のナノワイヤと、
前記ナノワイヤの一端に形成される層であり、前記ナノワイヤとp−n接合を形成する半導体層と、
前記ナノワイヤの他端に接する層であり、温度による金属−絶縁体転移(MIT)特性を有する物質からなるコンタクト層と、を含み、
前記ナノワイヤの他端と前記コンタクト層との間には、所定温度以上では、オーミック・コンタクトが形成され、所定温度以下では、ショットキー・コンタクトが形成される
電気エネルギー発生装置。
【請求項2】
前記コンタクト層は、バナジウム酸化物を含むことを特徴とする請求項に記載の電気エネルギー発生装置。
【請求項3】
前記コンタクト層は、変形自在な材質の透明基板上に形成されることを特徴とする請求項1に記載の電気エネルギー発生装置。
【請求項4】
前記ナノワイヤは、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気エネルギー発生装置。
【請求項5】
前記半導体層は、無機物及び有機物のうち少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気エネルギー発生装置。
【請求項6】
前記ナノワイヤは、n型半導体物質からなり、前記半導体層は、p型半導体物質からなることを特徴とする請求項1に記載の電気エネルギー発生装置。
【請求項7】
前記ナノワイヤは、p型半導体物質からなり、前記半導体層は、n型半導体物質からなることを特徴とする請求項1に記載の電気エネルギー発生装置。
【請求項8】
前記ナノワイヤは、前記半導体層上に垂直、または一定の角度で傾斜するように配列されることを特徴とする請求項1に記載の電気エネルギー発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギー発生装置に係り、特に、太陽光及び機械的振動を電気エネルギーに変換させるハイブリッド電気エネルギー発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、太陽光のエネルギーを電気エネルギーに変える装置であり、p型半導体物質とn型半導体物質とを利用し、電気エネルギーを発生させる。このような太陽電池に光を照らせば、その内部で、電子と正孔とが発生し、このように発生した電子及び正孔がn型電極及びp型電極に移動することによって、電気エネルギーを発生させる。最近では、太陽電池の効率を高めるために、ナノワイヤのようなナノ構造体について研究が試みられている。
【0003】
また、最近、周辺環境によって、太陽光と機械的振動とを選択的に電気エネルギーに変化させるハイブリッド電気エネルギー発生装置が開発されている。このようなハイブリッド電気エネルギー発生装置は、太陽電池素子と圧電素子とが融複合された構造を有する。前記ハイブリッド電気エネルギー発生装置では、互いに異なるエネルギー発生方式、すなわち、太陽電池方式と圧電方式とによって、それぞれ電気エネルギーが発生するが、このような太陽電池方式での電極コンタクト特性と圧電方式の電極コンタクト特性とは、互いに異なる。従って、このようなハイブリッド電気エネルギー発生装置で、さらに効率的に電気エネルギーを生産するためには、太陽電池素子では、オーミック・コンタクト(ohmic contact)を必要とし、圧電素子では、ショットキー・コンタクト(Shottky contanct)を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、太陽光及び機械的振動を効率的に電気エネルギーに変換させるハイブリッド電気エネルギー発生装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面において、圧電特性を有する半導体物質からなる複数のナノワイヤと、前記ナノワイヤの一端に形成される層であり、前記ナノワイヤとp−n接合を形成する半導体層と、前記ナノワイヤの他端に接する層であり、金属−絶縁体転移(MIT:metal-insulation transition)特性を有する物質からなるコンタクト層と、を含む電気エネルギー発生装置が提供される。
【0006】
ここで、前記コンタクト層は、温度による金属−絶縁体転移特性を有する物質からなってもよい。
【0007】
前記ナノワイヤの他端と、前記コンタクト層との間には、所定温度以上では、オーミック・コンタクト(ohmic contact)が形成され、所定温度以下では、ショットキー・コンタクト(Shottky contact)が形成される。
【0008】
前記コンタクト層は、例えば、バナジウム酸化物を含むことができる。前記コンタクト層は、変形自在な材質の透明基板上に形成されてもよい。
【0009】
前記ナノワイヤは、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含むことができる。そして、前記半導体層は、無機物及び有機物のうち少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0010】
前記ナノワイヤは、n型半導体物質からなり、前記半導体層は、p型半導体物質からなってもよい。或いは、前記ナノワイヤは、p型半導体物質からなり、前記半導体層は、n型半導体物質からなってもよい。
【0011】
前記ナノワイヤは、前記半導体層上に垂直、または一定の角度で傾斜するように配列されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、温度による金属−絶縁体転移(MIT)特性を有する物質を利用してコンタクト層を形成することにより、温度によって、ナノワイヤとコンタクト層との間にオーミック・コンタクトやショットキー・コンタクトを可変的に形成することができる。これにより、太陽エネルギーや機械的な振動エネルギーが電気エネルギーに効率的に変換される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による電気エネルギー発生装置を概略的に図示した斜視図である。
図2図1に図示されたII−II’線に沿って切り取って見た断面図である。
図3】本発明の実施形態による電気エネルギー発生装置が、太陽光によって電気エネルギーを発生させる場合を図示した図面である。
図4】本発明の実施形態による電気エネルギー発生装置が、機械的な振動によって電気エネルギーを発生させる場合を図示した図面である。
図5】VO薄膜に対する温度による抵抗値を図示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付された図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。図面で同じ参照符号は、同じ構成要素を指し、各構成要素の大きさや厚さは、説明の明瞭性のために誇張されている場合がある。
【0015】
図1は、本発明の実施形態による電気エネルギー発生装置を概略的に図示した斜視図である。そして、図2は、図1に図示されたII−II’線に沿って切り取って見た断面図である。
【0016】
図1及び図2を参照すれば、第1基板110及び第2基板150が、所定間隔をおいて離隔されて配されている。下部基板である第1基板110上には、半導体層120が形成されている。ここで、前記半導体層120は、後述するナノワイヤ130とp−n接合を形成する層であり、p型半導体物質またはn型半導体物質からなる。例えば、前記半導体層120は、GaNのようなIII−V族半導体化合物であったり、II−VI族半導体化合物からなってもよい。前記半導体層は、それ以外にも、多様な物質からなり、また無機物と有機物とのうち少なくともいずれか一つからなってもよい。
【0017】
前記半導体層120上には、複数のナノワイヤ130が形成されている。ここで、前記ナノワイヤ130は、前記半導体層120上に垂直に、または一定の角度に傾斜するように配列されている。このようなナノワイヤ130は、半導体層120とp−n接合を形成することによって、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換させる役割を行い、また圧電特性によって、機械的な振動エネルギーを電気エネルギーに変換させる役割を行う。これにより、前記ナノワイヤ130は、圧電特性を有するn型半導体物質またはp型半導体物質のいずれでもよい。具体的には、前記ナノワイヤ130が、n型半導体物質からなる場合には、前記半導体層120は、p型半導体物質からなり、前記ナノワイヤ130が、p型半導体物質からなる場合には、前記半導体層120は、n型半導体物質からなる。例えば、前記半導体層120は、p型GaNからなり、前記ナノワイヤ130は、n型酸化亜鉛(ZnO)からなってもよい。一方、それ以外にも、前記ナノワイヤ130は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:leadzirconate titanate)またはポリフッ化ビニリデン(PVDF:polyvinylidene fluoride)などを含むことができる。しかし、それらは単に例示的なものに過ぎず、前記ナノワイヤ130は、それら以外にも、多様な圧電特性を有する半導体物質を含むことができる。
【0018】
前記第2基板150の下面には、コンタクト層140が設けられている。ここで、前記第2基板150としては、例えば、変形自在な透明材質の基板が使われる。具体的には、前記第2基板150は、例えば、ポリエーテルスルホン(PES:polyether sulfone)などよりなり、それ以外にも、多様な材質を含むことができる。そして、前記第2基板150の下面には、コンタクト層140が、前記ナノワイヤ130の上端に接するように設けられている。ここで、前記コンタクト層140は、前記ナノワイヤ130とのコンタクト特性が可変する物質からなる。具体的には、前記コンタクト層140は、モット転移(Mott transition)特性、すなわち、金属−絶縁体転移(MIT:metal-insulator transition)特性を有する物質からなる。
【0019】
本実施形態で、前記コンタクト層140は、温度変化によってコンタクト特性が変化する金属−絶縁体転移(MIT)特性を有する物質からなる。例えば、所定温度以上では、前記コンタクト層140が金属特性を有することによって、前記コンタクト層140とナノワイヤ130との間に、オーミック・コンタクト(ohmic contact)を形成することができる。また、所定温度以下では、前記コンタクト層140が絶縁体特性を有することによって、前記コンタクト層140とナノワイヤ130との間に、ショットキー・コンタクト(Shottky contact)を形成することができる。このような金属−絶縁体転移(MIT)特性を有する物質として、例えば、VOまたはVのようなバナジウム酸化物を挙げることができる。このようなバナジウム酸化物では、その組成によって、ほぼ40℃〜70℃の温度範囲内で、金属−絶縁体転移が生じる。しかし、かようなバナジウム酸化物は、単に例示的なものに過ぎず、本実施形態は、それに限定されるものではなく、バナジウム酸化物以外にも、温度による金属−絶縁体転移特性を有する物質であるならば、コンタクト層140をなす物質として、いなかるものでも使用可能である。
【0020】
図5は、VO薄膜に対する温度による抵抗値を図示したグラフである。具体的には、図5は、100nm厚のVO薄膜に対する温度変化による電気抵抗値の変化を測定した結果を図示したグラフである。図5を参照すれば、50℃〜60℃の温度範囲内で、ほぼ10Ωほどの抵抗値変化が示されるということが分かる。具体的には、ほぼ55℃以上の温度範囲では、前記VO薄膜は、電気抵抗値が非常に低い金属特性を有し、55℃より低い温度範囲では、前記VO薄膜は、電気抵抗値が非常に大きい絶縁体特性を有するということが分かる。従って、かようなVO2薄膜で、前記コンタクト層140を形成すれば、55℃以上の温度範囲では、前記コンタクト層140の金属特性によって、前記コンタクト層140とナノワイヤ130との間には、オーミック・コンタクトが形成される。また、55℃より低い温度範囲では、前記コンタクト層140の絶縁体特性によって、前記コンタクト層140とナノワイヤ130との間には、ショットキー・コンタクトが形成される。
【0021】
図3は、本発明の実施形態による電気エネルギー発生装置が、太陽光によって電気エネルギーを発生させる場合を図示したものである。図3を参照すれば、前記電気エネルギー発生装置が、所定温度以上では、コンタクト層140とナノワイヤ130との界面140aで、オーミック・コンタクトが形成されることによって、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換させることができる。具体的には、前記コンタクト層140が、例えば、VO薄膜からなる場合、ほぼ55℃以上の温度では、前記コンタクト層140とナノワイヤ130との界面140aで、オーミック・コンタクトが形成される。この場合、外部の太陽光が、透明な第2基板150を介して入射されれば、p−n接合を形成する半導体層120とナノワイヤ130とから、それぞれ電子及び正孔が分離されて移動することによって、電気エネルギーを得ることができる。
【0022】
そして、図4は、本発明の実施形態による電気エネルギー発生装置が、機械的な振動によって、電気エネルギーを発生させる場合を図示したものである。図4を参照すれば、前記電気エネルギー発生装置が、所定温度以下では、コンタクト層140とナノワイヤ130と界面140aで、ショットキー・コンタクトが形成される。これにより、機械的な振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。具体的には、前記コンタクト層140が、例えば、VO薄膜からなる場合、ほぼ55℃以下の温度では、前記コンタクト層140とナノワイヤ130との間に、ショットキー・コンタクトが形成される。この場合、前記第2基板150が、外部の機械的な力によって振動すれば、前記コンタクト層140とナノワイヤ130との間の摩擦によって、電気エネルギーが発生する。すなわち、前記コンタクト層140が、前記ナノワイヤ130に対して相対的に動けば、前記ナノワイヤ130の上部は、コンタクト層140の動きによって、反りのような変形が発生する。ここで、前記ナノワイヤ130に応力が加えられれば、加えられた応力が除去される過程が反復されることになり、前記ナノワイヤ130の両端方向には、電位差が発生し、かような電位差によって発生する電子の流れによって、電気エネルギーを得ることができる。
【0023】
以上のように、本実施形態による電気エネルギー発生装置では、温度変化による金属−絶縁体転移特性を有する物質を利用して、コンタクト層140を形成することにより、周囲温度によって、コンタクト層140とナノワイヤ130との間に可変的なコンタクトを形成することができる。これにより、一定温度以上では、オーミック・コンタクトによって、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換させ、一定温度以下では、ショットキー・コンタクトによって、機械的な振動エネルギーを電気エネルギーに変換させることができので、さらに効率的に外部のエネルギーを電気エネルギーに変換させることができる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、当分野で当業者であるならば、それらから多様な変形及び均等な他実施形態が可能であるという点を理解することができるであろう。
【符号の説明】
【0025】
110 第1基板
120 半導体層
130 ナノワイヤ
140 コンタクト層
140a コンタクト層とナノワイヤとの界面
150 第2基板
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開2006−319342号公報
図1
図2
図3
図4
図5