(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態を説明する。ただし、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状及びそれらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0018】
本発明の音響波取得装置には、被検体に超音波等の音響波を送信し、被検体内部で反射し伝播した反射波(エコー波)を受信して、被検体情報を画像データとして取得する超音波エコー技術を利用したイメージング装置を含む。また、被検体に光(電磁波)を照射することにより被検体内で発生し伝播した音響波を受信して、被検体情報を画像データとして取得する光音響効果を利用したイメージング装置を含む。
【0019】
前者の超音波エコー技術を利用した装置の場合、取得される被検体情報とは、被検体内部の組織の音響インピーダンスの違いを反映した情報である。後者の光音響効果を利用した装置の場合、取得される被検体情報とは、光照射によって生じた音響波の発生源分布、被検体内の初期音圧分布、あるいは初期音圧分布から導かれる光エネルギー吸収密度分布や吸収係数分布、組織を構成する物質の濃度分布を示す。物質の濃度分布とは、例えば、酸素飽和度分布や酸化・還元ヘモグロビン濃度分布などである。
【0020】
本発明でいう音響波とは、典型的には超音波であり、音波、音響波と呼ばれる弾性波を含む。光音響効果により発生した音響波のことを、光音響波または光超音波と呼ぶ。本発明の装置は、探触子等の音響波検出器によって被検体内で発生又は反射して伝播した音響波を受信する。
【0021】
<実施形態1>
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、本発明における測定光とは、ファブリーペロー型干渉計に入射する入射光、およびファブリーペロー型干渉計で反射しアレイ型光センサに導かれる反射光を含む概念である。測定光は、光音響効果を利用して音響波を発生させるために被検体に照射する励起光とは区別される。
【0022】
図1に、本実施形態におけるイメージング装置の構成例を説明する図を示す。
本実施形態のイメージング装置は、励起光源104を備える。励起光源104は、被検体101に励起光103を照射する。その結果、被検体の内部もしくは表面における光吸収体が光のエネルギーの一部を吸収することによって、光音響波102が発生する。被検体内部の光吸収体としては腫瘍、血管などが挙げられる。
【0023】
イメージング装置は、光音響波102を検出するためのファブリーペロー型探触子105を備える。ファブリーペロー型探触子105は、測定光源107から測定光106を照射することによって、光音響波102の音圧を検出することができる。イメージング装置はまた、ファブリーペロー型探触子105に入射した測定光106の反射光量を測定し、電気信号に変換するためのアレイ型光センサ108を備える。さらに、測定光のビーム径を変化させるための光学系109と、前記ビーム径の変化を制御する制御部110を備える。以上により音響波取得装置の基本的な構成要素である。
【0024】
上記音響波取得装置に、さらに処理部111と表示部112を追加することによってイメージング装置が構成される。処理部111はアレイ型光センサ108で得られた電気信号を解析等の信号処理を施し、表示部112は処理部で得られた光学特性値分布等の被検体情報を表示する。
【0025】
測定光106を出射する測定光源107としては、波長可変レーザーを用いることが出来る。測定光106は、ファブリーペロー型探触子105を構成する2枚の各々のミラーに対して、反射率が90%以上であることが好ましい。また、測定光106の波長は、ファブリーペロー型探触子の感度が最大になる最適波長を用いることが好ましい。
【0026】
測定光106はレンズ113で拡大され、測定光のビーム径を変化させるための光学系109を通り、ファブリーペロー型探触子105への入射光となる。入射光は、ファブリーペロー型探触子で反射したのちに、再び測定光のビーム径を変化させるための光学系109を通る。このとき反射光118のビーム径は、入射光が光学系109を通る前のビーム径に戻る。その後反射光118がアレイ型光センサ108に入射することで、ファブリーペロー型探触子105上の反射強度分布を得ることが出来る。
【0027】
なお、測定光を導くための光学系として、ミラー114やハーフミラー115が用いられる。これらは、ファブリーペロー型探触子105における反射光量を測定できるような構成であればよく、ハーフミラー115の代わりに偏光ミラーと波長板を用いる構成を採ることもできる。
【0028】
ミラー114やハーフミラー115の間で、測定光のビーム径を変化させるための光学系109として、ズームレンズ光学系を用いることが可能である。ズームレンズ光学系は例えば、凸レンズや凹レンズの組み合わせから構成され、レンズ間の距離などを制御部110によって制御することで、ビーム径を自由に変えることが可能となる。
【0029】
また、ファブリーペロー型探触子の検出位置によって感度がばらつくことを防ぐためには、光学系109は物体側テレセントリック光学系であることが望ましい。この理由については後述する。
さらに、アレイ型光センサ108に光束が斜入射した際に生じる受光効率の低下を防ぐためには、光学系109は両側テレセントリック光学系であることが望ましい。なお、ファブリーペロー型探触子105上の位置と、アレイ型光センサ108上のピクセルを対応づけるためにも、光学系109は両側テレセントリック光学系であることが望ましい。
【0030】
図8にズームレンズ光学系の一例を示す。
光学系は、位置を固定された凸レンズ801と、位置を移動可能な凹レンズ802および凸レンズ803から構成される。凸レンズ801の焦点距離をf
1、凹レンズ802と凸レンズ803の合成焦点距離をf
2とする。また、図示しないが、凹レンズ802の焦点距離をf
3、凸レンズ803の焦点距離をf
4とする。このとき、f
2は凹レンズ802と凸レンズ803との間の距離dを変えることによって可変となる。
【0031】
位置を固定された凸レンズ801の焦点位置804に、可動な凹レンズ802と凸レンズ803の合成焦点が来るように、凹レンズ802と凸レンズ803を移動させる。このとき、倍率w
1/w
2、はf
1/f
2となる。
このように、凹レンズ802と凸レンズ803との間の距離dと、凹レンズ802と凸レンズ803の、凸レンズ801の焦点位置804からの距離を調節することにより、所望の倍率を得ることが出来る。
凸レンズ801の後ろ側(焦点位置804とは逆側)にファブリーペロー型探触子を配置することによって、物体側テレセントリックなズームレンズ光学系となる。
【0032】
上記の
図1において、ミラー114は平行移動したり、向きを変化したり出来ることが好ましい。これにより、ファブリーペロー型探触子105上の画像化する位置を変えることが出来る。これらの光学部品と、ズームレンズ光学系を組み合わせることにより、ファブリーペロー型探触子105上の位置と、アレイ型光センサ108上のピクセルが対応づけられる。
【0033】
光学系109を用いて入射光106のビーム径を小さくすると、光学系109を用いない場合と比べて、ファブリーペロー型探触子105に入射する入射光106の照射面積が縮小する。一方、反射光118がアレイ型光センサ108に入射する際のビーム径は、光学系109を通ることによりレーザー出射当初のサイズに戻っているので、変化しない。よって、アレイ型光センサ108上の1ピクセル当たりの、ファブリーペロー型探触子105上の対応するスポット面積が小さくなる。これにより、得られる画像の分解能は高くなる。また、ファブリーペロー型探触子105に入射している入射光106のビーム径が小さいため、撮像領域は狭くなる。
【0034】
これとは逆に、光学系109を用いて入射光106のビーム径を大きくすると、分解能は低下するが、画像の撮像領域は広くなる。
【0035】
このように、光学系109を用いて測定光106のビーム径を変えることで、分解能と撮像領域を変化させることが可能となる。測定者は所望の分解能や撮像範囲に応じて、制御部110を用いて光学系の制御(ズームレンズ光学系の場合はズーム制御)を行う。
【0036】
図7(a)に、光学系109により測定光106のビーム径を変化させた際の、入射光のビーム径(横軸)と、分解能(左側の縦軸)および撮像領域の直径(右側の縦軸)との関係の一例を示す。入射光のビーム径が小さくなるほど、分解能は高精細になる一方、撮像範囲直径は狭くなることが分かる。
【0037】
図2は光の共振を用いた音響波検出器の略図である。この図に示すような、平行な2枚の反射板の間で光を共振させる構造をファブリーペロー型干渉計という。これ以降、ファブリーペロー型干渉計を利用した音響波検出器をファブリーペロー型探触子と呼ぶ。
【0038】
ファブリーペロー型探触子は、厚みdを持つ高分子膜204が第1のミラー201と第2のミラー202で挟まれた構造をとる。第1のミラー201は測定光が入射する側のミラーであり、第2のミラー202はその反対側の音響波が入射する側のミラーである。測定光源は、第1のミラー201の側から入射光205を干渉計に照射する。
【0039】
このとき、反射光206の光量Irは次の式(1)のようになる。
【数1】
ここで、Iiは入射光205の光量、Rは第1のミラー201と第2のミラー202の
反射率、λ
0は入射光205、および反射光206の波長、dはミラー間距離、nは高分子膜204の屈折率である。φは二枚のミラー間を往復する際の位相差に相当するものであり、式(2)で表される。
【0040】
ファブリーペロー型探触子に音響波207が入射すると、ミラー間距離dが変化する。dの変化によってφが変化した結果、反射率Ir/Iiが変化する。したがって、反射光量Irの変化をフォトダイオード等で測定することにより、入射した音響波207を検出することができる。反射光量変化が大きいほど、入射した音響波207の強度は大きいということになる。
【0041】
なお、ファブリーペロー型探触子では、入射光205が当たっている位置のみの反射光量変化を測定しているため、入射光205のスポット領域が受信感度のある領域となる。
【0042】
一方、入射光205をレンズ等により絞ることで、受信面積を小さくすることができる。これにより受信感度のあるスポットが小さくなるため、再構成した際の画像の分解能が向上する。また、ファブリーペロー型探触子は、PZTを用いた探触子と比較して、音響波の受信周波数帯域が広い。これらの理由により、ファブリーペロー型探触子を用いることで分解能の高い高精細な画像を得ることが可能となる。
【0043】
図2では、入射光205が第一のミラー201のミラー面に対して垂直に入射している。しかし、もし入射光205がミラー面から角度θだけ傾いて入射した場合、ミラー間で反射を繰り返すうちにミラー間の光路長が変わるため、φは式(2)ではなく式(3)のように表される。
【数2】
【0044】
これは、ファブリーペロー型探触子に音響波207が入射する際の反射光量Irの変化が、光の入射角によって異なることを意味する。同時に、ある波長の光が共振する際のミラー間距離が、位置によって異なることになる。
【0045】
従って、入射光205が第一のミラー201のミラー面に対して入射する角度が、入射する位置によって異なってしまうと、ファブリーペロー型探触子の検出位置によって感度がばらついてしまう。さらに、角度のずれが大きい場合は、音圧を測定できなくなる。これにより、音響波の二次元分布データを正確に得ることができなくなる。
【0046】
このような理由から、ファブリーペロー型探触子に対する入射光205は、ファブリーペロー型探触子上のあらゆる位置に対して垂直入射であることが望ましい。つまり、ファブリーペロー型探触子に入射光205を導く光学系は、ファブリーペロー型探触子を物体側と定義すると、物体側テレセントリック光学系であることが望ましい。
【0047】
図3に、本実施形態におけるファブリーペロー型探触子の断面構造を説明する図を示す。第1のミラー301と第2のミラー302の材料としては誘電多層膜や金属膜を用いることができる。ミラーの間にはスペーサー膜303が存在する。スペーサー膜303としては、弾性波がファブリーペロー型探触子に入射した際のひずみが大きいものが好ましく、例えば有機高分子膜が用いられる。有機高分子膜としてはパリレン、SU8、またはポリエチレンなどを用いることが出来る。ただし、音波を受信したときに変形する膜であれば、無機膜であっても構わない。
【0048】
ファブリーペロー型探触子全体は保護膜304で保護されている。保護膜304としてはパリレンなどの有機高分子膜やSiO2などの無機膜を薄膜形成した物が用いられる。第2のミラー302が成膜される基板305はガラスやアクリルを用いることができる。その際、基板305内での光の干渉による影響を減らすために、基板305は楔形であることが好ましい。さらに、基板305表面における光の反射を避けるために、ARコート処理306を施すことが好ましい。
【0049】
アレイ型光センサ109としては二次元アレイ型、一次元アレイ型の光センサを用いることができる。例えば、CCDセンサやCMOSセンサを用いることができる。ただし、ファブリーペロー型探触子105に光音響波102が入射した際の、測定光106の反射光量を測定し電気信号に変換できるものであれば、これ以外のアレイ型光センサも使用できる。
【0050】
被検体101へ照射する励起光103は、被検体101を構成する成分のうち特定の成分に吸収される特性の波長の光を用いる。励起光103にはパルス光を用いることが出来る。パルス光は、数ピコから数百ナノ秒オーダーのものであり、被検体が生体の場合には数ナノから数十ナノ秒のパルス光を採用することが好ましい。励起光103を発生する励起光源104としてはレーザーが好ましいが、レーザーの代わりに発光ダイオードやフラッシュランプなどを用いることも可能である。
【0051】
レーザーとしては、固体レーザー、ガスレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなど様々なレーザーを使用することができる。発振する波長の変換可能な色素やOPO(Optical Parametric Oscillators)を用いれば、光学特性値分布の波長による違いを測定することも可能になる。
使用する光源の波長に関しては、生体内において吸収が少ない700nmから1100nmの領域が好ましい。しかし上記の波長領域よりも範囲の広い、例えば400nmから1600nmの波長領域、さらにはテラヘルツ波、マイクロ波、ラジオ波領域の使用も可能である。
【0052】
図1では、被検体に対して、ファブリーペロー型探触子105の影にならない方向から励起光103を照射している。しかし、励起光103としてファブリーペロー型探触子105のミラーを透過する波長を用いることにより、ファブリーペロー型探触子105側から励起光103を照射することも可能である。
【0053】
被検体101から生じる光音響波102を効率的にファブリーペロー型探触子105で検出するために、被検体101とファブリーペロー型探触子105との間には音響結合媒体を使うことが望ましい。
図1では音響結合媒体として水を用いて、水槽116中に配置された被検体101と探触子の間で音響マッチングを取っている。ただし音響結合媒体は水に限られない。例えば、被検体101とファブリーペロー型探触子105との間に、音響インピーダンスマッチングジェルを塗る構成にしてもよい。
【0054】
なお、人体の一部を被検体とする測定など、装置を医療用途に用いる際は、水槽216は使用しない。その場合、被検体つまり患部に音響インピーダンスマッチングジェルを塗り、その上にファブリーペロー型探触子205を接するように配置してイメージングを行う。この際、マッチングジェルに限らず、患部とファブリーペロー型探触子205との間に音響マッチングがとれるものであれば、音響結合媒体として用いることが可能である。
【0055】
なお、光音響波(超音波)102の取得は、フォトダイオード(PD)117が励起光103を検出したことをトリガーとして開始される。すなわち、被検体101に励起光1
03が照射されると光音響波102が発生し伝播する。一方ファブリーペロー型探触子105は光音響波102を反射光118の光量変化として検出し、アレイ型光センサ109はこの光量変化を電気信号に変換する。そこで、PD117がトリガーを検出したタイミングから所定の時間の光音響波102に基づく電気信号から、被検体で発生した被検体情報を生成することができる。
【0056】
アレイ型光センサ109における電気信号の分布は、ファブリーペロー型探触子105において測定光106が照射されている領域上に到達する光音響波102の強度分布(圧力分布)を表していることになる。
【0057】
得られた電気信号の分布から光学特性値分布等の被検体情報を得るための、処理部111の再構成アルゴリズムとしては、ユニバーサルバックプロジェクションや整相加算などを採用することができる。処理部111としては、光音響波102の強度を表す電気信号の時間変化の分布を記憶し、それを演算手段により光学特性値分布のデータに変換できるものであれば、どのようなものを用いてもよい。
【0058】
なお、素子に異物が存在するなどで膜厚が著しく異常を示す領域は、あらかじめデータとして利用できないことを考慮した上で、画像再構成処理の際にデータ欠損部を補正して画像化することも可能である。
【0059】
さらに、画像再構成を行う際に測定光106のビーム径に応じて、再構成領域とボクセルピッチを変化させることにより、適切なデータ処理が可能となり、画質を改善することが可能となる。すなわち、ビーム径が広い場合は撮像領域が広く、分解能は低い。したがって再構成領域もビームのスポット領域に相当する範囲となり、低い分解能に応じてボクセルピッチを大きく取ることができる。
【0060】
なお、励起光103として複数の波長の光を用いた場合は、それぞれの波長に関して、生体内の光学係数を算出し、それらの値と生体組織を構成する物質(グルコース、コラーゲン、酸化・還元ヘモグロビンなど)固有の波長依存性とを比較する。これによって、生体を構成する物質の濃度分布を画像化することも可能である。
【0061】
また、信号処理により得られた画像情報を表示する表示部112を備えることが望ましい。
【0062】
以上のようなイメージング装置を用いることで、ファブリーペロー型探触子105を用いて、撮像中に分解能やイメージング領域を変えながら画像を得ることが可能となる。
【0063】
<実施形態2>
図4に、本実施形態におけるイメージング装置の構成例を説明する図を示す。
本実施形態におけるイメージング装置は、ズームレンズ光学系401の配置される位置以外の装置構成などは実施形態1と同様である。すなわち、処理部411、表示部412、制御部410、ミラー414、測定光源418、レンズ413、PD419、励起光源416、水槽421は、実施形態1と同様の機能を持つため詳細な説明は省略する。また、被検体415に励起光417が照射されて光音響波420が発生し伝播する点も実施形態1と同様である。
【0064】
本実施形態では、ズームレンズ光学系からなる光学系401が、ハーフミラー402とアレイ型光センサ403の間に位置する。
この結果、光学系401により、ファブリーペロー型探触子404から反射した反射光407のビーム径は変化させることが出来る。一方、入射光405のビーム径は変化しな
い。これにより、撮像領域は変化させずに分解能のみを変化させることが可能となる。
【0065】
例えば、光学系401により反射光407のビーム径を大きくすると、アレイ型光センサ403上の1ピクセル当たりの、ファブリーペロー型探触子404上の対応するスポット面積が小さくなる。これにより、得られる画像の分解能は高くなる。
これとは逆に、光学系401により反射光407のビーム径を小さくすると、分解能は低下する。
【0066】
このように、光学系401により反射光407のビーム径を変えることで、撮像領域を一定に保ちつつ、分解能を変化させることが可能となる。測定者は所望の分解能に応じて、制御部を用いて光学系401の制御、すなわちズームレンズ光学系のズーム制御を行う。
【0067】
図7(b)に、光学系401により反射光407のビーム径を変化させた際の、反射光ビーム径(横軸)と、分解能(左側の縦軸)、および撮像領域の直径(右側の縦軸)の関係の一例を示す。図に示されたように、反射光ビーム径が小さくなると、入射光が当たっている領域(撮像範囲直径)に対応するアレイ型光センサ403上の領域が小さくなるため、分解能は低下する。
【0068】
本実施形態においては、アレイ型光センサ404に光束が斜入射した際に生じる受光効率の低下を防ぐために、ズームレンズ光学系401はテレセントリック光学系であることが望ましい。
【0069】
このような実施形態2に示されたイメージング装置を用いることで、ファブリーペロー型探触子404を用いて、撮像中に分解能を変えながら画像を得ることが可能となる。
【0070】
<実施形態3>
図5に、本実施形態におけるイメージング装置の構成例を説明する図を示す。
本実施形態におけるイメージング装置は、ズームレンズ光学系501の配置される位置以外の装置構成などは実施形態1と同様である。すなわち、処理部511、表示部512、制御部510、ミラー514、測定光源518、PD519、励起光源516、水槽521は、実施形態1と同様の機能を持つため詳細な説明は省略する。また、被検体515に励起光517が照射されて光音響波520が発生し伝播する点も実施形態1と同様である。
【0071】
本実施形態では、ズームレンズ光学系からなる光学系501がレンズ502とハーフミラー503の間に位置する。
この結果、光学系501により、入射光504はビーム径を変化させられてファブリーペロー型探触子505に入射する。ファブリーペロー型探触子505において反射した、反射光507はビーム径を変化させずに、アレイ型光センサ506に入射する。この結果、分解能は変化させずに撮像領域のみを変化させることが可能となる。
【0072】
例えば、光学系501により入射光504のビーム径を大きくすると、ファブリーペロー型探触子505に入射する入射光504の照射面積が拡大する。一方、アレイ型光センサ506上の1ピクセル当たりの、ファブリーペロー型探触子505上の対応するスポット面積は一定である。これにより、分解能は一定に保ちつつ、撮像領域は拡大する。
これとは逆に、光学系501により入射光504のビーム径を小さくすると、分解能は一定に保ちつつ、撮像領域は縮小する。
【0073】
このように、光学系501により入射光504のビーム径を変えることで、分解能を一
定に保ちつつ、撮像領域を変化させることが可能となる。測定者は所望の撮像領域に応じて、制御部を用いて光学系501の制御、すなわちズームレンズ光学系のズーム制御を行う。
【0074】
図7(c)に、光学系501により入射光504のビーム径を変化させた際の、入射光および反射光のビーム径(横軸)と、分解能(左側の縦軸)、および撮像領域直径(右側の縦軸)の関係の一例を示す。図に示されたように、ビーム径が小さくなると撮像範囲の直径が小さくなっている。
【0075】
また本実施形態では、前述したように、ファブリーペロー型探触子の検出位置によって感度がばらつくことを防ぐために、ズームレンズ光学系501は物体側テレセントリック光学系であることが望ましい。
【0076】
このような実施形態3に示されたイメージング装置を用いることで、ファブリーペロー型探触子505を用いて、撮像中に撮像領域を変えながら画像を得ることが可能となる。
【0077】
<実施形態4>
図6に、本実施形態におけるイメージング装置の構成例を説明する図を示す。
本実施形態のイメージング装置は、超音波エコー技術を用いて生体内の音響インピーダンス分布を画像化するものである。実施形態1と同様の構成については、詳細な説明は省略する。
【0078】
本実施形態のイメージング装置は、被検体601に弾性波602を照射するトランスデューサー603を備える。
イメージング装置はまた、ファブリーペロー型探触子604を備える。ファブリーペロー型探触子604は、被検体内601における腫瘍等の、音響インピーダンスの異なる組織の界面において反射した弾性波を検出する。
【0079】
ファブリーペロー型探触子604に、測定光源606から測定光605を照射することによって音圧を検出することができる。また、ファブリーペロー型探触子604に入射した測定光605の反射光量を測定し、電気信号に変換するためのアレイ型光センサ607を備える。さらに、測定光605のビーム径を変化させるための光学系608と、前記ビーム径の変化を制御する制御部609を備える。以上により音響波取得装置が構成される。
【0080】
上記音響波取得装置に、さらに処理部610と表示部611を含めることによってイメージング装置が構成される。処理部610は、アレイ型光センサ607で得られた電気信号解析する。表示部611は、得られた音響インピーダンス分布情報を表示する。
【0081】
ファブリーペロー型探触子604は、被検体601に送信された弾性波602が、被検体内または表面の音響インピーダンスの異なる界面において反射する弾性波(反射波)612を、測定光605の反射光量変化として検出する。アレイ型光センサ607は、反射光量の変化を電気信号に変換する。弾性波612の取得は、パルサー617からの電気信号をトリガー618として開始する。
【0082】
アレイ型光センサ607における電気信号の分布は、ファブリーペロー型探触子604において測定光605が照射されている領域上に到達する弾性波612の強度分布(圧力分布)を表していることになる。
得られた電気信号の分布から音響インピーダンス分布を得るための信号処理としては、整相加算などが考えられる。処理部610としては、弾性波612の強度を表す電気信号
の時間変化の分布を記憶し、それを演算手段により音響インピーダンス分布のデータに変換できるものであれば、どのようなものを用いてもよい。
【0083】
なお、素子に異物が存在するなどで膜厚が著しく異常を示す領域は、あらかじめデータとして利用できないことを考慮した上で、画像再構成処理の際にデータ欠損部を補正して画像化することも可能である。
さらに、画像再構成を行う際に入射光605のビーム径に応じて、再構成領域とボクセルピッチを変化させることにより、適切なデータ処理が可能となり、画質を改善することが可能となる。
【0084】
本実施形態では、ズームレンズ光学系からなる光学系608がハーフミラー613とミラー614の間に位置する。
この結果、光学系608により、入射光605のビーム径を変化させてファブリーペロー型探触子604に入射する。ファブリーペロー型探触子604において反射した反射光616は、光学系608により元のビーム径に戻り、アレイ型光センサ607に入射する。この結果、分解能と撮像領域を変化させることが可能となる。
【0085】
例えば、光学系608により入射光605のビーム径を小さくすると、光学系608を用いない場合と比べて、ファブリーペロー型探触子604に入射する入射光605の照射面積が縮小する。一方、反射光616がアレイ型光センサ607に入射する際のビーム径は、光学系608を通ることによりレーザー出射当所のサイズに戻っているので、光学系608を用いない場合と比べても変化しない。よって、アレイ型光センサ607上の1ピクセル当たりの、ファブリーペロー型探触子604上の対応するスポット面積が小さくなる。これにより、撮像領域を狭めて、分解能を上げることが出来る。
【0086】
このように、光学系608により測定光605のビーム径を変えることで、分解能および撮像領域を変化させることが可能となる。測定者は所望の分解能や撮像範囲に応じて、制御部210を用いて光学系608の制御、すなわちズームレンズ光学系のズーム制御を行う。
【0087】
本実施形態では、光学系608はハーフミラー613とミラー614の間に位置するが、アレイ型光センサ607とハーフミラー613とのあいだ、もしくはハーフミラー613とレンズ615の間に位置することも可能である。
【0088】
ズームレンズ光学系608は前述した理由により、物体側テレセントリック光学系または両側テレセントリック光学系であることが望ましい。
【0089】
このような実施形態4に示されたイメージング装置を用いることで、ファブリーペロー型探触子604を用いて、撮像中に分解能および撮像領域を変えながら音響インピーダンス分布画像を得ることが可能となる。
【0090】
なお、装置を医療用途に用いる際は、水槽619は使用しない。その場合、被検体つまり患部に音響インピーダンスマッチングジェルを塗り、その上にファブリーペロー型探触子604を接するように配置してイメージングを行う。この際、マッチングジェルに限らず、患部とファブリーペロー型探触子604との間に音響マッチングがとれるものであれば、音響結合媒体として用いることが可能である。
【0091】
<実施例1>
次に、本発明を実際の音響波取得に適用した実施例について説明する。本実施例のイメージング装置は、実施形態1に記した構成からなる。
本実施例では、被検体としてイントラリピッド1%水溶液を寒天により固め、その中に光を吸収する直径300μmのゴムワイヤーを配置したサンプルを用いる。サンプルは水中に配置される。
【0092】
ファブリーペロー型探触子の第1のミラーと第2のミラーには誘電多層膜を用いている。この誘電多層膜は1520−1600nmの光において反射率が95%以上となるように設計されている。また、ファブリーペロー型探触子の基板はBK7を用い、基板の誘電多層膜が成膜されている面と逆側の面には、1520−1600nmにおいて反射率が1%以下になるようにARコート処理を施されている。ミラー間のスペーサー膜はパリレンCを用い、膜厚は30μmである。さらに、探触子の保護膜としてもパリレンCを用いた。
【0093】
測定光を出射する測定光源は、波長可変光源である。この測定光源として、1520−1600nmの範囲において波長可変である、External Cavity Laserを用いた。
この測定光源から出射された測定光は、凸レンズにより拡大される。そしてハーフミラーを通過した後に、制御部により制御されたズームレンズによって、所望のビーム径になる。測定光はその後、ミラーを用いて、ファブリーペロー型探触子に入射される。
【0094】
ズームレンズ光学系は
図8のような構成の光学系を用いた。凸レンズ801の焦点距離を80mm、凹レンズ802焦点距離を−80mm、凸レンズ803の焦点距離を60mmとする。
ファブリーペロー型探触子に入射する測定光のビームサイズは、直径20mmとした。このとき、制御部により凹レンズ802と凸レンズ803との間の距離dは40mmとし、凸レンズ801の焦点位置804に、凹レンズ802と凸レンズ803の合成焦点が来るように移動した。
【0095】
ファブリーペロー型探触子において反射した測定光(反射光)は、ハーフミラーとミラーにより高速CCDカメラに入射し、測定される。高速CCDカメラのサイズは100×100ピクセルである。
【0096】
かかる装置において、励起光を被検体に照射し、光音響波の測定を開始した。なお、励起光源はチタンサファイヤーレーザーであり、出射するパルス光の繰り返し周波数は10Hz、パルス幅は10ns、波長は797nmである。
その後、検出された光音響波に基づく電気信号の分布を用いて、ユニバーサルバックプロジェクションアルゴリズムにより、画像再構成を行った。再構成の際、ボクセルピッチは0.5mmとした。これにより、直径20mmの撮像領域において、光拡散媒体であるイントラリピッド1%寒天中のゴムワイヤーがイメージングされた。
【0097】
その後、制御部により、凹レンズ802と凸レンズ803との間の距離dを10mmとし、凸レンズ801の焦点位置804に、凹レンズ802と凸レンズ803の合成焦点が来るように移動した。これにより、ファブリーペロー型探触子に入射する測定光のビームサイズは直径10mmとなった。測定後得られた光音響信号の分布を用いて画像再構成を行った。再構成の際、ボクセルピッチは0.25mmとした。この結果、直径10mmの撮像領域において、光拡散媒体であるイントラリピッド1%寒天中のゴムワイヤーが、より高分解能にイメージングされた。
【0098】
以上より、本実施例のように光学系を用いて測定光の直径を変化させることにより、ファブリーペロー型探触子を用いた光音響測定に際して撮像領域と分解能を調節できることが明らかになった。
【0099】
<実施例2>
本実施例のイメージング装置は、実施形態2に記した構成からなる。本実施例は、ズームレンズ光学系401の配置される位置以外の装置構成は実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0100】
本実施例において、測定光源(External Cavity Laser)から出射された測定光は、凸レンズにより拡大される。その後ミラーを用いて、ファブリーペロー型探触子に入射される。入射光のビーム径は20mmである。すなわち、入射光に対してはズームレンズ光学系のズーム制御は行われない。
【0101】
続いて、ファブリーペロー型探触子に入射したのち反射した測定光(反射光)は、ハーフミラーにおいて反射される。その後、制御部により制御されたズームレンズ光学系によって、ビームサイズが直径10mmに設定される。ズームレンズ光学系は両側テレセントリック光学系を用いた。
ズームレンズにて所望のビーム径にされた測定光は、高速CCDカメラに入射し、測定される。高速CCDカメラのサイズは100×100ピクセルである。
【0102】
かかる装置において、その後、励起光を被検体に照射し、光音響波の測定を開始した。
その後、測定により得られた光音響信号の分布を用いて、ユニバーサルバックプロジェクションアルゴリズムにより、画像再構成を行った。これにより、直径20mmの撮像領域において、光拡散媒体であるイントラリピッド1%寒天中のゴムワイヤーがイメージングされた。
【0103】
その後、制御部により、高速CCDカメラに入射する測定光のビームサイズを直径50mmとした。次いで、測定後得られた光音響信号の分布を用いて画像再構成を行った。この結果、撮像領域は直径20mmに固定し、光拡散媒体であるイントラリピッド1%寒天中のゴムワイヤーを高分解能にイメージングすることが可能となった。
以上より、本実施例のように光学系を用いて測定光(反射光)の直径を変化させることにより、ファブリーペロー型探触子を用いた光音響測定に際して分解能を調節できることが明らかになった。
【0104】
<実施例3>
本実施例のイメージング装置は、実施形態3に記した構成からなる。本実施例は、ズームレンズ光学系501の配置される位置以外の装置構成などは実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0105】
測定光源(External Cavity Laser)から出射された測定光は、凸レンズにより拡大される。その後、制御部により制御されたズームレンズによって、ビームサイズが直径10mmに設定される。ズームレンズ光学系は両側テレセントリック光学系を用いた。
【0106】
そして、測定光は、ミラーを用いて、ファブリーペロー型探触子に入射される。ファブリーペロー型探触子において反射した測定光(反射光)は、高速CCDカメラに入射し測定される。高速CCDカメラのサイズは100×100ピクセルである。
【0107】
かかる装置において、励起光を被検体に照射し、光音響波の測定を開始した。
その後、測定により得られた光音響信号の分布を用いて、ユニバーサルバックプロジェクションアルゴリズムにより、画像再構成を行った。これにより、直径10mmの撮像領域において、光拡散媒体であるイントラリピッド1%寒天中のゴムワイヤーがイメージン
グされた。
【0108】
その後、制御部により、高速CCDカメラに入射する測定光のビームサイズを直径50mmとした。次いで、測定後得られた光音響信号の分布を用いて画像再構成を行った。この結果、分解能を一定に固定したまま、撮像領域を直径50mmに広げ、光拡散媒体であるイントラリピッド1%寒天中のゴムワイヤーをイメージングすることが可能となった。
【0109】
以上より、本実施例のように光学系を用いて入射光の直径を変化させることにより、ファブリーペロー型探触子を用いた光音響測定に際して撮像領域を調節できることが明らかになった。
【0110】
<実施例4>
本実施例のイメージング装置は、実施形態4に記した構成からなる。本実施例のファブリーペロー型探触子、光学系、二次元アレイセンサの構成は実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0111】
本実施例は、本発明を用いて、被検体としてイントラリピッド1%水溶液を寒天により固めたものの中に配置した、直径300μmのポリエチレンワイヤーをイメージングするものである。ファントムは水中に配置した。
【0112】
測定光源(External Cavity Laser)から出射された測定光は、凸レンズにより拡大される。そしてハーフミラーを通過した後に、制御部により制御されたズームレンズによって、所望のビーム径に設定される。測定光はその後、ミラーを用いて、ファブリーペロー型探触子に入射される。ズームレンズ光学系は物体側テレセントリック光学系を用いた。
【0113】
ファブリーペロー型探触子に入射する測定光のビームサイズは、直径20mmである。ファブリーペロー型探触子において反射した測定光(反射光)は、ハーフミラーとミラーにより高速CCDカメラに入射し測定される。高速CCDカメラのサイズは100×100ピクセルである。
【0114】
かかる装置において、中心周波数20MHzのトランスデューサーを用いて被検体に弾性波を照射した。トランスデューサーは圧電型のものでPZTを材料としたものである。弾性波はパルサーを用いてパルス波として出射され、弾性波の繰り返し周波数は10Hzである。
【0115】
その後、トランスデューサーにより、弾性波が被検体内で反射したエコー波の測定を行った。そして得られた信号を用いて、整相加算を用いた再構成アルゴリズムにより、被検体内の音響インピーダンス分布を画像化した。これにより、直径20mmの撮像領域において、寒天中のポリエチレンワイヤーがイメージングされた。
【0116】
その後、制御部により、ファブリーペロー型探触子に入射する測定光のビームサイズを直径10mmとした。測定後得られた光音響信号の分布を用いて画像再構成を行った。再構成の際、ボクセルピッチは0.25mmとした。この結果、直径10mmの撮像領域において、寒天中のポリエチレンワイヤーが、より高分解能にイメージングされた。
【0117】
以上より、超音波エコー技術を用いたイメージング装置においても、本発明を適用して音響波を取得できることが明らかになった。
【0118】
以上、本発明によれば、ファブリーペロー型探触子を用いたイメージング装置において
、測定光のビーム径を変化させることにより、受信素子の受信面積や探触子の受信領域(開口)を変えることが出来る。その結果、撮像中に分解能やイメージング領域を変えながら画像を得ることが可能になる。
【0119】
したがって、生体の病変部等をイメージングする際に、分解能やイメージング範囲を撮像中に変えることができるため、病変部の同定や抽出を効率的に行うことが可能となる。たとえば、まずは分解能が低く荒い画像を広範囲に取得することで、病変部として疑わしき部分を抽出する。その後、分解能を高くして、抽出した範囲を高精細にイメージングし病変部と疑わしき部分を精査する。これにより効率的に病変部の検査を行うことができる。
【0120】
以上、本明細書中で説明したような、生体を被検体としたイメージング装置に関する構成は、例えば医療用画像診断機器として利用可能である。すなわち、腫瘍や血管疾患などの診断や化学治療の経過観察などのため、生体内の光学特性値分布及び、それらの情報から得られる生体組織を構成する物質の濃度分布の画像化が可能となる。
さらに被験体として非生体物質を対象とした非破壊検査などに応用することもできる。