(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は更に、前記被検物の深さ方向における撮影位置に応じて前記撮影光合焦手段の状態を制御することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の撮影装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態を、以下に例示する実施例に基づいて説明する。
【0009】
実施例の1つに係るAOSLO装置を説明する。
【0010】
本実施例に係るAOSLO装置では、補償光学系を備え、眼底の高横分解能の平面画像(AOSLO像)の撮像を行う装置である。この装置は、被検物の収差を測定するための測定光206−3を被検物に合焦させる測定光の合焦部を構成するフォーカスレンズ217−3と、測定光により測定された収差に基づいて状態を変更する収差補正部を構成する空間光変調器259と、を有する。また、被検物を撮影するための撮影光を被検物に合焦させる撮影光の合焦部を構成するフォーカスレンズ217−1と、収空間光変調器259及びフォーカスレンズ217−1を経由した撮影光206−1により被検物の画像を撮影するディテクタ238−1と、を有する。そして、測定光206−3のフォーカスレンズ217−3と、撮影光206−1のフォーカスレンズ217−1との状態を連動させる制御部を構成する制御PC106を更に備えている。
【0011】
また、AOSLO像の取得を補助する目的で、広画角の平面画像(WFSLO像)の撮像を行うWFSLO部、測定光の入射位置を把握するための前眼部観察部、および撮像箇所を調整するために視線を誘導する固視灯表示部が付随させることができる。
【0012】
実施例では、補償光学系として空間光変調器を用いて被検眼による光学収差を補正して平面画像を取得することができるため、被検眼の視度や、被検眼による光学収差によらず良好な平面画像が得られる。
【0013】
ここでは、高横分解能の平面画像を撮像するために、補償光学系を備えているが、高解像度を実現できる光学系の構成であれば、補償光学系を備えていなくてもよい。
【0014】
<装置全体構成>
図1に基づき、本実施例におけるAOSLO装置101の外観構成について説明する。
図1(a)はAOSLO装置101を上側から見た上面図であり、
図1(b)はAOSLO装置101を側面から見た側面図である。
【0015】
AOSLO装置101は、収差測定用の光源、AOSLO撮影用の光源やフォーカスレンズ等の光学系を内蔵するヘッド部(測定部)102、ヘッド部102を水平垂直方向に移動させるステージ部103、被検者の顔を乗せ位置を調整する顔受け部104、操作画面を表示する液晶モニタ105、およびAOSLO装置101全体を制御する制御PC106からなる。
【0016】
AOSLO装置101のヘッド部102は、フォーカスレンズ235−16、波面センサ255、空間光変調器259、光源201−1、光源201−2、フォーカスレンズ235−10、フォーカスレンズ235−14、ディテクタ238−1、ディテクタ238−2等と、これらを内蔵するための筐体を有する。またヘッド部102はステージ部103上に設置され、ジョイスティック107を倒すことによって水平方向に、回転させることによって垂直方向に移動できる。顔受け部104は、顎を乗せる顎受け108(調整部)と顎受け108を水平方向、垂直方向、前後方向に移動させる顎受けステージ部109からなる。
【0017】
ステージ部103はヘッド部(測定部)102の被検物に対する位置を変更する変更部を構成する。ジョイスティックの操作量を制御PC106で検知し、制御PC106から制御される。顎受けステージ部109は制御PC106から制御され被検者の頭部を前後方向に動かしフォーカス位置を確保することと、ステージ部103で計測光と被検眼の位置合わせを行った後の位置合わせの微調節を行う。
制御PC106は被験者の情報を制御PC内部データベース、又は外部から通信等を使用し外部データベースとの取得、保存を行う。
【0018】
<光学系の構成>
次に、
図2を用いて、ヘッド部102に内蔵される光学系について、具体的に説明する。
【0019】
光源201−1から出射した光は、光カプラー231によって参照光205と撮影光206−1とに分割される。撮影光206−1は被検物の画像を撮影するための光である。撮影光206−1は、シングルモードファイバー230−4、空間光変調器259、XYスキャナ219−1、ダイクロイックミラー270−1等を介して観察対象である被検眼207に導かれる。空間光変調器を経由することにより、収差が低減された画像を得ることができる。
【0020】
256は固視灯であり、固視灯256からの光束257は、被検眼207の固視あるいは回旋を促す役割を有する。
【0021】
撮影光206−1は、被検眼207によって反射あるいは散乱された戻り光208となり、光路を逆行し、光カプラー231を介して、ディテクタ238−1に入射される。ディテクタ238−1は、戻り光208の光強度を電圧に変換し、その信号を用いて、被検眼207の平面画像が構成される。本実施例では、光学系の全体を主にレンズを用いた屈折光学系を用いて構成しているが、レンズの代わりに球面ミラーを用いた反射光学系によっても構成することができる。
【0022】
また、本実施例では、収差補正デバイスとして反射型の空間光変調器を用いたが、透過型の空間光変調器や、可変形状ミラーを用いても構成することができる。
【0023】
<AOSLO部の光源>
つぎに、光源201−1の周辺について説明する。光源201−1は、代表的な低コヒーレント光源であるSLD(Super Luminescent Diode)である。波長は840nmバンド幅50nmである。ここでは、スペックルノイズの少ない平面画像を取得するために低コヒーレント光源を選択している。また、光源の種類は、ここでは、SLDを選択したが低コヒーレント光が出射できればよくASE(Amplified Spontaneous Emission)等も用いることができる。
【0024】
また、波長は眼を測定することを鑑みると、近赤外光が適する。さらに、波長は得られる平面画像の横方向の分解能に影響するため、なるべく短波長であることが望ましく、ここでは840nmとする。観察対象の測定部位によっては他の波長を選んでも良い。
光源201−1から出射された光は、シングルモードファイバー230−1と光カプラー231とを介して、参照光205と撮影光206−1とに90:10の割合で分割される。253は偏光コントローラである。
【0025】
<AOSLO部の参照光路>
次に、参照光205の光路について説明する。
【0026】
光カプラー231によって分割された参照光205は、光ファイバー230−2を介して、光量測定装置264に入射される。光量測定装置264は参照光205の光量を測定し、撮影光206−1の光量をモニタする用途に用いられる。
【0027】
<AOSLO部の撮影光路>
次に、撮影光206−1の光路について説明する。
【0028】
光カプラー231によって分割された撮影光206−1は、シングルモードファイバー230−4を介してレンズ235−1に導かれ、ビーム径4mmの平行光になるよう調整される。
【0029】
撮影光206−1は、ビームスプリッタ258−1を通過し、レンズ235−5〜6を通過し、空間光変調器259に入射される。
【0030】
次に、撮影光206−1は、空間光変調器259にて変調され、レンズ235−7〜8を通過し、XYスキャナ219−1のミラーに入射される。ここでは、簡単のため、XYスキャナ219−1は一つのミラーとして記したが、実際にはXスキャナとYスキャナとの2枚のミラーが近接して配置され、網膜227上を光軸に垂直な方向にラスタースキャンするものである。また、撮影光206−1の中心は、XYスキャナ219−1のミラーの回転中心と一致するように調整されている。
【0031】
ここで、Xスキャナは撮影光206−1を紙面に平行な方向に走査するスキャナであり、ここでは共振型スキャナを用いている。駆動周波数は約7.9kHzである。またYスキャナは、撮影光206−1を紙面に垂直な方向に走査するスキャナであり、ここではガルバノスキャナを用いている。駆動波形はのこぎり波であり、周波数は32Hz、デューティ比は16%である。Yスキャナの駆動周波数は、AOSLO像の撮像のフレームレートを決定する重要なパラメータである。
【0032】
ここで、XYスキャナ219−1は制御PC106からドライバ部281内の光スキャナ駆動ドライバ282を介して制御される。
【0033】
レンズ235−9〜10は、網膜227を走査するための光学系であり、撮影光206−1を被検眼207の瞳孔中心を支点として、網膜227をスキャンする役割がある。
【0034】
ここで、撮影光206−1のビーム径は4mmであるが、より高分解能な光画像を取得するためにビーム径はより大径化してもよい。
【0035】
電動ステージ217−1は
図2の矢印で図示している方向、即ち光軸方向に移動することができる。これによって電動ステージ217−1に固定されたフォーカスレンズ235−10の位置を動かし、フォーカスを調整する。このように、フォーカスレンズ235−10と電動ステージ217−1はAOSLOの撮影光を被検物に合焦させる合焦部(フォーカス部)として機能する。電動ステージ217−1は、制御PC(制御装置、制御部)106からドライバ部281内の電動ステージ駆動ドライバ283を介して制御される。レンズ235−10の位置を調整することで、被検眼207の網膜227における特定の深さ方向の位置で撮影光206−1を合焦させることができる。また、被検眼207が屈折異常を有している場合にも対応できる。
【0036】
撮影光の合焦は、眼底の撮影対象の位置に対して行われればよいため、装置起因の収差、被検眼のディオプター値に加えて、眼底における撮影対象の位置に応じて合焦位置が決定される。合焦位置の設定は後述するUIで手動により行っても良いが、例えば専用のフォーカスセンサを設けることにより自動で行うこととすれば調整工程の短縮化が図れる。さらには、
図2に示すようにAOSLOとは別の撮影光学系(WFSLO)により得られた画像の輝度値や統計値を用いることで専用のフォーカスレンズがなくとも自動フォーカス制御が可能となる。
【0037】
撮影光206−1は、被検眼207に入射すると、網膜227からの反射や散乱により、戻り光208となり再び光カプラー231に導かれ、シングルモードファイバー230−3を介してディテクタ238−1に到達する。ディテクタ238−1は、例えば高速・高感度な光センサであるAPD(Avalanche Photo Diode)やPMT(Photomultiplier Tube)が用いられる。ディテクタ238−1は、空間光変調器及び撮影光合焦部を経由した撮影光の被検物からの戻り光を検出して被検物の画像を撮影する撮影部を構成する。
【0038】
<ビーコン(収差測定)部及び収差補正部の説明>
次に、被検眼207にて発生する収差を測定するためのビーコン(収差測定)部について説明する。
【0039】
光源201−3から射出された測定光206−3は、レンズ235−15〜16、ダイクロイックミラー270−4等を介して観察対象である被検眼207に導かれる。被検眼207からの戻り光208の一部は、ダイクロイックミラー258−1、ピンホール298を介して、波面センサ255に入射され、被検眼207で発生する戻り光208の収差が測定される。
【0040】
電動ステージ217−3は
図2の矢印で図示している方向、即ち光軸方向に移動することができる。これによって電動ステージ217−3に固定されたフォーカスレンズ235−16の位置を動かし、フォーカスを調整する。このように、フォーカスレンズ235−16と電動ステージ217−3は収差を測定するための測定光206−3を被検物に合焦させる合焦部(フォーカス部)として機能する。電動ステージ217−3は、AOSLOのフォーカスレンズ217−1と同様に、制御PC(制御装置、制御部)106からドライバ部281内の電動ステージ駆動ドライバ283を介して制御される。
【0041】
測定光の合焦は眼底に対して行われればよく、装置起因の収差を除けば被検眼のディオプター値に応じて決定される。
【0042】
波面センサ255は、測定光を検出して光路中の収差を測定する収差測定部を構成する。波面センサ255は制御PC106に電気的に接続されている。波面センサ255は、シャックハルトマン方式の波面センサであり、測定レンジは−10D〜+5Dとなっている。得られた収差は、ツェルニケ多項式を用いて表現され、これは被検眼207による収差を示している。ツェルニケ多項式はチルト(傾き)の項、デフォーカスの項、アスティグマ(非点収差)の項、コマの項、トリフォイルの項等からなる。なお、光源201−3の中心波長は760nm、波長幅は20nmである。
【0043】
ここで、測定光206−3は、角膜226からの反射を避けるために、被検眼207の中心から偏心して入射される。これについては
図11および
図12を用いて後述する。またピンホール298は、戻り光208以外の不要光を遮蔽する目的で設置されており、ピンホール298を通過した測定光の戻り光が波面センサ255により検出される。これにより被検眼の眼底を経由しない光が検出される可能性を低減することができるため、精度良く収差を測定することができる。更に、上述した測定光の合焦部を設けることにより、ピンホール298を適切に通過させ、精度良く収差を測定することができる。
【0044】
ここで、角膜226とXYスキャナ219−1と波面センサ255と空間光変調器259とは光学的に共役になるようレンズ235−5〜10等が配置されている。そのため、波面センサ255は、被検眼207による収差を測定することが可能になっている。
【0045】
空間光変調器259は被検眼207または装置の光学系等に起因する収差を補正する収差補正部として機能する。例えば空間光変調器259は液晶により光の位相を変調することができるため、測定された収差を打ち消すような状態とすることで収差を補償する。空間光変調器259は、制御PC106からドライバ部281内の空間光変調器駆動ドライバ288を介して状態が制御される。これにより、撮影光206−1及びその戻り光は、光路中の収差が補償され低減された状態でディテクタ238−1の入射面に結像する。ディテクタ238−1は収差の影響が低減された戻り光を検出し、被検物の画像を撮影することができる。
【0046】
制御PC106は、測定光206−3のフォーカスレンズ235−14と、AOSLOの撮影光206−1のフォーカスレンズ235−10の状態とを連動させて制御する。フォーカス位置は被検者の視度に応じて変化するが、収差測定の光学系とAOSLOの撮影光学系を考慮することにより、各フォーカスレンズの位置を対応付けることができる。つまり、被検者の視度に合わせて一方の光を合焦させることができれば、かかる一方のフォーカスレンズの位置に対応する他方のフォーカスレンズの位置が一意に定まることとなる。係るフォーカスレンズの状態の対応関係を記憶部に記憶させておき適宜参照することにより一方の調整に応じて他方の調整が可能となる。これにより、個別の調整を行う場合に比べ、撮影準備の調整工程の手間及び時間を減らすことができる。
【0047】
更に、収差測定部として機能する波面センサ255からの出力に応じて算出される収差の値には、上述の通りデフォーカスの値が含まれている。制御PC106は、このデフォーカス値に応じて更にAOSLOのフォーカスレンズ235−10の位置を制御することができる。かかる2段階の調整により、より詳細な調整を要するAOSLOのフォーカスレンズを微調整することができる。
【0048】
<WFSLO部全体>
AOSLO装置101には、AOSLOよりも広画角の画像を撮影するためのWFSLO部を設けることができる。以下WFSLO部について説明する。
【0049】
WFSLO部は基本的にAOSLO部と同様の構成となっている。重複する部分ついては説明を省略する。
【0050】
光源201−2から出射した撮影光(WFSLOの撮影光)は、レンズ235−2、レンズ235−11〜14、XYスキャナ219−2、ダイクロイックミラー270−1〜3等を介して観察対象である被検眼207に導かれる。光源201−2は、AOSLO部と同様にSLDである。波長は920nmバンド幅20nmである。
【0051】
<WFSLO部の撮影光路>
次に、撮影光206−2の光路について説明する。
【0052】
光源201−2から射出された撮影光206−2は、レンズ235−2、レンズ235−11〜14、XYスキャナ219−2、ダイクロイックミラー270−1等を介して観察対象である被検眼207に導かれる。
【0053】
ここで、XYスキャナ219−2の構成要素であるXスキャナは、撮影光206−2を紙面に平行な方向に走査するスキャナであり、ここでは共振型スキャナを用いている。駆動周波数は約3.9kHzである。また、Yスキャナは撮影光206−2を紙面に垂直な方向に走査するスキャナであり、ここでは、ガルバノスキャナを用いている。駆動波形はのこぎり波であり、周波数は15Hz、デューティ比は16%である。Yスキャナの駆動周波数は、WFSLO像のフレームレートを決定する重要なパラメータである。
【0054】
電動ステージ217−2は
図2の矢印で図示している方向、即ち光軸方向に移動することができる。これによって電動ステージ217−2に固定されたフォーカスレンズ235−14の位置を動かし、フォーカスを調整する。このように、フォーカスレンズ235−14と電動ステージ217−2はWFSLOの撮影光を被検物に合焦させる合焦部(フォーカス部)として機能する。電動ステージ217−1は、制御PC(制御装置、制御部)106からドライバ部281内の電動ステージ駆動ドライバ283を介して制御される。
【0055】
ここで、撮影光206−2のビーム径は1mmであるが、より高分解能な光画像を取得するために、ビーム径はより大径化してもよい。
【0056】
撮影光206−2は、被検眼207に入射すると網膜227からの反射や散乱により戻り光208となりダイクロイックミラー270−1〜3、レンズ235−13〜14、レンズ235−2〜4、XYスキャナ219−2、ビームスプリッタ258−2等を介してディテクタ238−2に到達する。このディテクタ238−2がWFSLOの撮影光206−2を検出し、AOSLO画像よりも画角の広い広画角画像を撮影する撮影部を構成する。
【0057】
ここで制御PC106は、AOSLOの撮影光206−1のフォーカスレンズ234−10と、ビーコン光(測定光)206−3のフォーカスレンズ235−16と、WFSLOの撮影光206−2のフォーカスレンズ235−14とを連動させて制御する。いずれのフォーカスレンズについても被検眼の視度によりフォーカス位置が変動するが、その他の条件はおおよそ固定されているため、一のフォーカスレンズの位置が定まればその位置に応じて他のフォーカスレンズの位置を決定することができる。これにより、AOSLOと、収差の測定光と、WFSLOとのフォーカスを容易に制御することができる。
【0058】
<固視灯部>
AOSLO装置101には、被検眼に固視させるための固視灯を設けることができる。固視灯256は、発光型のディスプレイモジュールからなり表示面(□27mm、128×128画素)をXY平面に有する。ここでは、液晶、有機EL、LEDアレイ等を用いることができる。被検眼207が、固視灯256からの光束257を注視することで、被検眼207の固視あるいは回旋が促される。固視灯256の表示面には例えば
図7に示すように、任意の点灯位置265に十字のパターンが点滅して表示される。
【0059】
固視灯256からの光束257は、レンズ235−17〜18、ダイクロイックミラー270−1〜3を介して網膜227に導かれる。また、レンズ235−17、18は、固視灯256の表示面と網膜227とが光学的に共役になるよう配置される。また、固視灯256は、制御PC106からドライバ部281内の固視灯駆動ドライバ284を介して制御される。
【0060】
電動ステージ217−4は
図2の矢印で図示している方向、即ち光軸方向に移動することができる。これによって電動ステージ217−4に固定されたフォーカスレンズ235−18の位置を動かし、フォーカスを調整する。このように、フォーカスレンズ235−18と電動ステージ217−4は固視灯の固視標を被検物に合焦させる合焦部(フォーカス部)として機能する。電動ステージ217−4は、制御PC(制御装置、制御部)106からドライバ部281内の電動ステージ駆動ドライバ283を介して制御される。
【0061】
ここで制御PC106は、AOSLOの撮影光206−1のフォーカスレンズ234−10と、ビーコン光(測定光)206−3のフォーカスレンズ235−16と、WFSLOの撮影光206−2のフォーカスレンズ235−14と、固視灯のフォーカスレンズ235−18を連動させて制御する。これにより、AOSLOと、収差の測定光と、WFSLOと、固視灯のフォーカスを容易に制御することができる。
【0062】
<前眼部観察部>
次に、前眼部観察部について説明する。
【0063】
前眼部照明光源201−4から照射された光は、被検眼207を照らし、その反射光がダイクロイックミラー207−1、2、4、レンズ235−19、20を介してCCDカメラ260に入射する。光源201−4は中心波長740nmのLEDである。
【0064】
<フォーカス、シャッター、乱視補正>
以上のように、ヘッド部102に内蔵される光学系は、AOSLO部、WFSLO部、ビーコン部、固視灯部、前眼部観察部からなる。この中でAOSLO部、WFSLO部、ビーコン部、固視灯部はそれぞれ個別に電動ステージ217−1〜4を持ち、4つの電動ステージを連動させて動かしている。ただし、個別にフォーカス位置を調整したい場合には、個別に電動ステージを動かすことで調整可能である。
【0065】
特に、AOSLO以外のWFSLO部、ビーコン部、固視灯のフォーカスレンズについては、被検眼の視度によって変化するものであるため連動させることができるが、AOSLOについては視度のほか、撮影対象となる被検眼の深さ方向における撮影位置によっても変わる。そこで、AOSLOのフォーカスレンズ235−10については制御PC106からの制御によりその他のフォーカスレンズとは独立に位置を変更できるようになっている。
【0066】
また、AOSLO部、WFSLO部、ビーコン部はそれぞれシャッター(不図示)を備え、シャッターの開閉により個別に被検眼207に入射させるか否かを制御できる。ここではシャッターを用いたが、光源201−1〜3を直接ON/OFFすることにより、制御することもできる。同様に、前眼部観察部、固視灯部についても、光源201−4および固視灯256のON/OFFにより制御可能である。
【0067】
また、235−10のレンズは交換可能になっており、被検眼207による収差(屈折異常)に合わせて球面レンズやシリンドリカルレンズを用いることができる。また1個のレンズに限らず、複数のレンズを組み合わせて設置することも可能である。
【0068】
<波長>
AOSLO部、WFSLO部、ビーコン部、固視灯部、前眼部観察部に用いられている光源の波長分布を
図3に示す。それぞれの光をダイクロイックミラー270−1〜4で分けるために、それぞれ異なる波長帯になるようにしている。なお、
図3は各光源の波長の違いを示すものであり、その強度およびスペクトル形状を規定するものではない。
【0069】
<画像化>
次に、撮像画像の構成方法について説明する。
【0070】
ディテクタ238−1において入射された光は、光の強度が電圧に変換される。ディテクタ238−1で得られた電圧信号は、制御PC106内のADボード276−1にてデジタル値に変換され、制御PC106にて、XYスキャナ219−1の動作や駆動周波数と同期したデータ処理が行われ、AOSLO画像が形成される。ここで、ADボード276−1の取り込み速度は15MHzである。同様に、ディテクタ238−2で得られた電圧信号は、制御PC106内のADボード276−2にてデジタル値に変換され、WFSLO画像が形成される。
【0071】
<制御PCの詳細>
図4に基づき、制御PC106のフォーカス制御に関する構成の詳細について説明する。制御PC106は、操作取得部401と、フォーカス制御指示取得部402と、情報取得部403と、フォーカス位置特定部404と、連動判定部405と、フォーカス位置制御部406と、記憶部407と、表示制御部408とを有する。また、制御PC106はドライバ部281と、操作部451と、液晶モニタ105と接続されている。ドライバ部281には、フォーカスドライバ部として、AOSLOフォーカスドライバ部283−1、WFSLOフォーカスドライバ部283−2、Beacon(ビーコン)フォーカスドライバ部283−3、固視灯フォーカスドライバ部283−4を有する。
【0072】
操作取得部401は操作部451からの操作入力を取得する。ここで操作部451はたとえば後述する
図5に示すGUIやGUIを操作するための操作デバイス或いはタッチパネル部により構成される。
【0073】
フォーカス制御指示取得部402は操作取得部401で取得された操作入力のうち、フォーカスの調整に関する入力を取得する。例えば、フォーカスを調整するためのGUIボタンが操作される入力があった場合には、かかる入力値を取得する。
【0074】
フォーカス制御指示は、手動による制御指示だけではなく、装置によりトリガされる制御指示も含まれる。例えば、制御PC106は情報取得部403と、フォーカス位置特定部404を備えることができる。フォーカス位置特定部404はフォーカスレンズを移動させるべき位置を特定する。ここでいう、フォーカスレンズを移動させるべき位置、には、合焦位置を特定するための探索のためにフォーカスレンズの位置を移動させる場合と、外部からの入力に応じて合焦位置が特定される場合と、が含まれる。
【0075】
探索の場合には、適当な移動幅でフォーカスレンズを移動させつつ例えばWFSLOにより画像を情報取得部403が取得する。フォーカス位置特定部404は、画像のコントラストや輝度値、或いは輝度値の統計値を用いることで最適または準最適な合焦位置を特定する。特定された位置情報はフォーカス制御指示取得部402に通知される。或いは、フォーカスレンズを動かすべき方向及び量により定義されるベクトル値をフォーカス制御指示取得部402に通知することとしてもよい。
【0076】
外部からの入力に応じて合焦位置が特定される場合としては、フォーカスセンサからの入力を受けてフォーカス位置特定部404がフォーカス位置を特定し、特定された位置情報に基づくフォーカスレンズを動かすべきベクトル値をフォーカス制御指示取得部402に通知する。
【0077】
また別の場合としては、波面センサ255からのデフォーカス値に応じてフォーカスレンズを移動させる場合がある。この場合には、情報取得部403はデフォーカス値を取得し、フォーカス位置特定部404はフォーカスレンズの移動量を特定する。
【0078】
連動判定部405は、複数のフォーカスレンズを連動させるか否かを判定する。例えば、撮影位置を決定するためにAOSLOのフォーカスを動かす場合には、その他のフォーカスレンズの移動の必要はない。その様な場合に該当することを示す情報をフォーカス制御指示取得部402から取得し、連動判定部405はAOSLOのフォーカスのみ制御する判定をする。例えば、AOSLOのフォーカスのみを指示するためのGUIからの入力であった場合には、連動させない判定をする。また、別のGUIからの指示があった場合には、連動させる判定をすることができる。
【0079】
撮影のための調整を開始する局面では、複数のフォーカスレンズを被検物に合わせて連動させて制御する方が個別で調整するよりも効率が良い。そこで、被検眼のアラインメントが終了した直後に一のフォーカスレンズの制御指示を取得した場合には、連動判定部405は複数のフォーカスレンズを連動させるべき旨判定する。また、WFSLOの撮影を要さずAOSLOのみの撮影をする手技の場合には、WFSLOのみ連動させず、ビーコン光(測定光)と固視灯とAOSLOのフォーカスレンズを連動させる判定をすることができる。
【0080】
フォーカス位置制御部406は、連動させる判定と、一のフォーカスレンズの移動量に応じて、どのフォーカスレンズをどれだけ動かすべきかという対応関係を示すルックアップテーブルを記憶部407から取得する。フォーカス位置制御部406はルックアップテーブルを参照して、各フォーカスレンズの移動量を算出する。なお、対応関係を示すルックアップテーブルに替えて、対応関係を示す関数を記憶部407に記憶しておき、かかる関数を適宜参照してフォーカスレンズの移動量を算出することとしてもよい。
【0081】
フォーカス位置制御部406は、ドライバ部281のフォーカスドライバ部283−1乃至4のうち必要なユニットにフォーカスレンズの移動量、移動方向とともにフォーカスレンズを移動させる指示をする。これに応じて各フォーカスドライバ部は対応するフォーカスレンズを動かすための電動ステージ217−1〜4を駆動させる。
【0082】
このような構成により、一の合焦部の状態を変更する指示に応じて、対応する連動させるべき合焦部を判定し、フォーカスドライバ部に指示して合焦部の状態を変更させることができる。また、適応的な判定により、状況に応じて適切な合焦部の状態を変更することができる。さらには、場合によっては一の合焦部を独立して個別に制御することができる。
【0083】
上述の制御PC106の各部は専用の回路を用いて構成する事もできるが、ソフトウェアと制御PC106のハードウェアを用いて構成する事もできる。この場合、制御PC106のCPUがROMに記憶されたプログラムをRAMに展開し逐次実行することにより、
図4に記載の各部として機能し、かつ
図8乃至10を用いて後述する処理を実現することができる。
【0084】
その他、表示制御部408は、表示部を構成する液晶モニタ105に
図5を用いて後述するGUIを表示させることができる。これにより、ユーザは例えばフォーカスレンズの制御をGUI上から指示することができる。
【0085】
<制御ソフトのGUI>
次に
図5に基づいて、表示制御部408により液晶モニタ105に表示されるGUIを説明する。実行ボタン501は、本装置による撮影を開始するボタンであり、押下により前眼部の撮影光源201−4が点灯し、CCDカメラ260による検出され撮影された画像が前眼部モニタ512に表示される。ストップボタン502は撮影を終了させるためのボタンである。電動ステージボタン503は顎受けを移動させるためのボタンであり、X方向、Y方向,Z方向それぞれに対応するボタンが設けられている。ボタン503の押下に応じて顎受け駆動部109を微動させることができる。また、ヘッド部102をX,Y、Z方向に移動させるためのボタンを設けても良い。
【0086】
フォーカス調整ボタン504は、AOSLOの撮影光206−1のフォーカスレンズ235−10と、ビーコン光(測定光)206−3のフォーカスレンズ235−16と、WFSLOや固視灯がある場合にはそれらのフォーカスレンズとを連動させて移動させるためのボタン(第二の指示部)である。例えばフォーカス調整ボタン504に第一の方向にフォーカスレンズを動かすためのボタンと第二の方向にフォーカスレンズを動かすためのボタンを設けることとしてもよい。或いは、フォーカス調整ボタン504の押下に応じて自動的なフォーカス探索の開始がトリガされることとしてもよい。
【0087】
WFSLO撮影指示ボタン505は、WFSLO画像のWFSLOモニタ515への画像の表示のON/OFFを切り替えるためのボタンである。或いは、WFSLOのスキャナやディテクタの起動、起動停止を指示するボタンであっても良い。WFSLOモニタ515への画像の表示と合わせて、WFSLO強度モニタ516にWFSLO画像の強度を示す情報が表示される。例えば、横軸時間、縦軸信号強度でWFSLO部で検出された信号強度が時系列に表示される。WFSLO画像を記録させたい場合には、WFSLO記録ボタン517を押下する事で記録開始が指示され、これに応じて記憶部407にWFSLOの動画像が記憶されることとなる。或いは、静止画像または1フレームを記憶する指示ボタンを合わせて設けることとしても良い。さらには、1フレーム分だけを不図示のプリンタで紙媒体等に出力する指示をするためのボタンを設けることとしてもよい。
【0088】
なお、WFSLO撮影指示ボタン505を押下せずとも、前眼部が像を基準としたアラインメントが完了することに応じて自動的にWFSLOの撮影または画像表示を開始することとすれば、操作の手間を減らすことができる。
【0089】
収差測定ボタン506は、ビーコン光(測定光)206−3の照射を開始するとともに、波面センサ255で得られるハルトマン像を波面センサモニタ514に表示させる。また、ハルトマン像から計算された収差が収差補正モニタ511に表示される。なお、ハルトマン像の取得と収差の計算までを波面センサ255の内部のモジュールで実行されることとするが、別のモジュールを設けてハルトマン像に基づく収差の計算を行うこととしてもよい。波面センサ255は得られたハルトマン像について逐次的に収差を計算するため、空間光変調器259の状態が制御され収差が低減されると、収差補正モニタ511に表示される収差は変動する。
【0090】
自動フォーカスボタン521は、波面センサ255で得られたデフォーカス値を用いて、フォーカスレンズ235−10、14,16,18の位置を調整するためのボタン(第三の指示手段)である。かかるボタンの押下に応じて、制御PCのフォーカス位置制御部406は4つのフォーカスレンズを連動させて制御する。
【0091】
収差補正ボタン522を押下することにより、収差量が小さくなるように自動的に空間光変調器259の状態が制御される。例えば、収差量が特定の閾値よりも低くなることに応じて、AOSLOの撮影が指示されることとすれば操作の手間が低減され、迅速な撮影が行える。
【0092】
収差補正一時停止ボタン508は、収差測定ボタン506が押下された後、自動的には適切な値まで収差が低減されない場合、収差補正のための探索を一時停止するためのボタンである。
【0093】
AOSLO測定ボタン507は、AOSLOの撮影開始を指示するためのボタンである。或いは、AOSLOで撮影された画像の表示開始を指示するためのボタンであってもよい。これに応じて、AOSLO206−1のシャッターが開いて撮影光206−1が被検物に照射され、AOSLOモニタ518に収差が低減されたAOSLO画像が表示される。また、AOSLO強度モニタ519にディテクタ238−1で検出された信号強度を示す情報が表示される。この情報は、WFSLO強度モニタ516で表示される情報と同様に、横軸時間、縦軸信号強度でWFSLO部で検出された信号強度が時系列に表示される。
【0094】
深さ調整ボタン524は、AOSLOのフォーカスレンズ235−10をその他のフォーカスレンズとは独立に制御するためのボタン(第一の指示部)である。深さ調整ボタン524には、第一の方向と第二の方向にフォーカスレンズを移動させるためのボタンがそれぞれ設けられており、各ボタンの押下に応じて、制御PC106のフォーカス位置制御部406がフォーカスレンズ235−10の位置を変更することで、AOSLOの深さ方向に対する撮影位置を変更することができる。
【0095】
AOSLO記録ボタン520は、AOSLOの記録開始/終了を指示するボタンである。記録開始が指示されてから終了が指示されるまでの間に得られたAOSLOの動画像が記憶部407に記憶される。
【0096】
固視灯位置モニタ513は固視灯の位置を表示させる。
【0097】
操作条件設定ボタン523は、撮影範囲、フレームレート、撮影時間を指定するためのGUIである。それぞれ適切な撮影条件を入力することができる。
【0098】
以上、
図5に示すGUIに配置されるボタンからの入力は、全て制御PC106に入力され、かかる入力に応じてAOSLO装置の各部が制御される。
【0099】
<画像の確認>
次に、本実施例のAOSLO装置において撮像したデータを画像化して確認する方法について
図6を用いて説明する。
【0100】
撮像した画像データを可視化するビューワーソフトを起動すると、
図6に示すビューワーソフト画面が液晶モニタ105に表示される。
【0101】
保存されたWFSLOデータ、もしくはAOSLOデータを読み込んで画像化することができる。
【0102】
測定時間によって撮像枚数が変わるが、時間順に画像番号が付けられる。画像番号選択部602によって指定された画像番号の画像が画像表示部601に表示される。画質調整部603には、画像の明るさ、コントラスト、ガンマの調整を行うためのつまみがあり、左右にスライドさせることで画質を調整することができる。
【0103】
<撮像手順>
次に、本実施例のAOSLO装置における撮像手順について
図5及び
図8を用いて説明する。
【0104】
図8に撮像手順を示す。以下に、各工程について詳しく述べる。
【0105】
(ステップS801)装置を立ち上げ各種確認を行う
制御PC106及びAOSLO装置の電源を入れる。次に、測定用の制御ソフトを起動すると、
図5に示す制御ソフト画面が液晶モニタ105に表示される。ここで被検者に顔を顔受け部104にセットしてもらう。
【0106】
(ステップS802)前眼部画像を撮像する
制御ソフト画面の実行ボタン501を押すと、前眼部モニタ512に前眼部の画像が表示される。画面中央に瞳孔の中心が正しく表示されていない場合は、まずジョイスティック107を用いてヘッド部102を略正しい位置に動かす。さらに調整が必要な場合は、制御画面上の電動ステージボタン503を押し、顎受け駆動部109を微動させる。
【0107】
(ステップS803)WFSLO像を撮像する
略正しい状態で前眼部画像が表示された場合、WFSLO像がWFSLOモニタ515に表示される。固視灯位置モニタ513で固視灯を中央位置に設定し、被検眼207の視線を中心に誘導する。
【0108】
次に、WFSLO強度モニタ516を見ながら、フォーカス調整ボタン504を調整して、WFSLO強度が大きくなるように調整する。ここで、WFSLO強度モニタ516には横軸時間、縦軸信号強度でWFSLO部で検出された信号強度が時系列に表示されている。ここで、フォーカス調整ボタン504を調整することで、レンズ235−10、14、16、18の位置が同時に調整される。
【0109】
WFSLO像が鮮明に表示された場合、WFSLO記録ボタン517を押して、WFSLOデータを保存する。
【0110】
(ステップS804)第一のフォーカス調整
WFSLO像を見ながら、被検者はフォーカス調整をすることができる。このステップでは、WFSLOモニタ515に表示されたWFSLO画像や、WFSLO強度モニタ516に表示された強度の情報から、画像がより鮮明になるようにまたは強度が大きくなるように被検者はフォーカスを調整する。調整には、フォーカス調整ボタン504を押下することにより行う。フォーカス調整ボタン504の押下により、AOSLO、ビーコン光(測定光)、固視灯のフォーカスも同時に連動して調整される。
【0111】
あるいは、WFSLO画像に基づいて自動的にフォーカスレンズの位置を調整する制御を制御PC106により実行することとすれば調整の手間を減らし、迅速な撮影に資する。
【0112】
(ステップS805)AOSLO像取得位置を決定する
表示されたWFSLO像を確認し、AOSLO像を取得したい位置を後述の手段を用いて決める。次に、その位置がWFSLOモニタ515の中央にくるように被検眼207の視線を誘導する。
【0113】
AOSLO像を取得する位置を決める手段は2通りあり、一つは固視灯位置モニタ513において固視灯の位置を指示する方法、もう一つはWFSLOモニタ515において所望の位置をクリックする方法である。WFSLOモニタ515上の画素と固視灯の位置を関連付けており、固視灯の位置が自動的に移動し、視線を所望の位置に誘導することができる。
【0114】
AOSLO像を取得したい位置がWFSLOモニタ515上中央に移動したのを確認して、次のステップに移る。
【0115】
(ステップS806)デフォーカス値に基づくフォーカス調整
収差測定ボタン506を押すと、WFSLO撮影光である撮影光206−2が遮断され、ビーコン光のシャッターが開いてビーコン光である測定光206−3が被検眼207に照射される。波面センサモニター514に波面センサ255で検出されたハルトマン像が表示される。このハルトマン像から計算された収差が収差補正モニタ511に表示される。収差はデフォーカス(defocus)成分(μm単位)と、全ての収差量(μmRMS単位)に分けて表示される。ここで、ステップS803において、AOSLO撮影光とビーコン光のフォーカスレンズであるレンズ235−10、16の位置が調整されているため、この工程で収差測定の準備が整っている。具体的には、測定光206−3に対する戻り光208が、ピンホール298をけられることなく通過し、波面センサ255に到達する状態になっている。
【0116】
ここで自動フォーカスボタン521を押すと、デフォーカスの値が小さくなるようにレンズ235−10、14、16、18の位置が自動的に調整される。
【0117】
(ステップS807)収差補正を行う
次に収差補正ボタン522を押すと、収差量が小さくなる方向に自動的に空間光変調器259が調整され、リアルタイムに収差量の値が表示される。ここで、収差量の値が事前に決めておいた閾値(0.03μmRMS)以下になると自動的にAOSLO測定ボタン507が押され、次の工程に移動する。ここで、収差量の閾値は任意に設定できる。また、閾値以下にならない場合には、収差補正一時停止ボタン508を押し、収差補正を停止したのち、AOSLO測定ボタン507を押すことにより次の工程に移動する。
【0118】
(ステップS808)AOSLOのフォーカス位置変更の判定
フォーカス制御指示取得部402は、操作取得部401を介してAOSLOのフォーカス位置を他のフォーカスレンズの位置とは独立に変更する指示があるか否かを判定する。これはAOSLOの深さ方向に対する撮影位置を調整するためのステップである。例えば、深さ調整ボタン524が押下されたことを示す入力を取得した場合には、AOSLOのフォーカスを独立して変更する指示があったものと判定する。指示があったと判定された場合にはS809へ、ない場合にはS810へと進む。
【0119】
(ステップS809)AOSLOのフォーカス位置変更
フォーカス位置制御部406はAOSLOのフォーカスレンズ235−10を他のフォーカスレンズとは個別に調整する指示(第一の指示)に応じてAOSLOのフォーカスを調整する。
【0120】
(ステップS810)AOSLO像を取得する
AOSLO測定ボタン507が押されると、ビーコン光である測定光206−3が遮断され、AOSLO撮影光206−1のシャッターが開いて撮影光206−1が被検眼207に照射される。AOSLOモニタ518に収差補正済みのAOSLO像が表示される。また、AOSLO強度モニタ519に、WFSLO強度モニタ516と同様に、AOSLO部で検出された信号強度が時系列に表示される。
【0121】
信号強度が不十分な場合には、AOSLO強度モニタ519を見ながらフォーカス、顎受け位置を調整し、信号強度が大きくなるように調整する。
【0122】
また、撮像条件設定ボタン523によって、撮像画角、フレームレート、撮像時間を指定することができる。
【0123】
また、深さ調整ボタン524を調整して、レンズ235−10を移動させ、被検眼207の深さ方向の撮像範囲を調整することができる。具体的には、視細胞層や神経線維層や色素上皮層等の所望の層の像を取得することができる。
【0124】
AOSLO像が鮮明に表示された場合、AOSLO記録ボタン520を押して、AOSLOデータを保存する。その後、撮影光206−1は遮断される。
【0125】
(ステップS811)次の動作を選択する
撮像位置の変更を行う場合にはステップS805に、左右眼の切り替えを行う場合にはステップS802に戻る。撮像を終了する場合には、次の工程に移動する。
【0126】
(ステップS812)終了する
STOPボタン502を押すと、制御ソフトが停止する。
【0127】
図9に基づいて、その他の実施例に係るフォーカスレンズの調整制御について説明する。なお、
図4の構成により実行する場合として本制御を説明する。
【0128】
ステップS901でフォーカス制御指示取得部402は、操作取得部401を介して得られる操作部451からの操作入力や、自動調整機能からのフォーカスの制御指示を取得する。フォーカスの制御指示の情報は、フォーカスレンズをどの方向にどれだけの量動かすかを示す情報である。ここでフォーカスの制御指示には、指示に係るフォーカスレンズのみを個別に制御するか、あるいは他のフォーカスレンズ全てを連動させるか、を示す情報を付加する。さらには、連動対象とするフォーカスレンズを指定する情報を付加することもできる。
【0129】
ステップS902で連動判定部405はフォーカスレンズを連動させる連動モードであるか、個別の調整であるかを判定する。係る判定は制御指示に付加される情報を参照することにより行われる。連動させる場合にはS903へ進み、連動させない場合にはS905に進む。
【0130】
ステップS903で連動判定部405は、連動対象とするフォーカスレンズを選択する。仮に全フォーカスレンズを連動させる設定になっている場合には全てのフォーカスレンズが選択される。制御指示の付加情報に連動対象とするフォーカスレンズを指定する情報が付加されている場合には、当該情報に係るフォーカスレンズのみを連動させる。
【0131】
ステップS904でフォーカス位置制御部406は記憶部407の情報を参照して連動対象のフォーカスレンズの移動量を求める。その上でフォーカス位置制御部406は制御指示に係るレンズと、連動させるその他のレンズを移動させる指示信号をドライバ部のフォーカスドライバ283に出力する。
【0132】
ステップS905でフォーカス位置制御部406は制御指示に含まれる移動方向及び移動量だけ、制御指示に係るフォーカスレンズの位置を移動させる指示信号をフォーカスドライバ283に出力する。
【0133】
ステップS906で制御PC106は、ステップS904またはステップS905で送信した指示信号に対応するフォーカスレンズについて粗調整が完了したか否かを判定する。この処理は、例えばフォーカスレンズの合焦位置の探索過程であるか、既に粗調整のための探索が終了し手いるか否かを判定するものである。ここで仮に粗調整が終了した場合には、次に微調整が必要になる場合がある。例えば、複数のレンズを連動させて制御しても仮に個々のレンズのうちの1つが適切な位置にない場合が考えられる。また、特にAOSLOのフォーカスレンズについては、その他のフォーカスレンズよりも高い精度で位置を決める必要がある。このような場合には制御PC106から微調整を開始するべき旨の指示を出力し、例えば画像情報を用いてオートフォーカスを開始させる。一方で、粗調整の過程でフォーカスレンズを移動させる指示信号が出力されている場合には、その時点で微調整の開始をトリガする必要はないため、ステップS907に進まず処理を終える。
【0134】
またこのステップでは、粗調整が終了しているか否かの判定に加えて、微調整を要するか否かの判定も行う。情報取得部403でAOSLOやWFSLO画像または固視灯像、もしくはビーコン光によるハルトマン像を取得し、画像の輝度値、コントラスト、その他輝度値の統計値等を得ることにより更なる調整が必要かを判定する。ここで例えば、自動にしろ手動にしろ、WFSLOの画像を基準にフォーカス調整を行っている場合であって、WFSLOのフォーカスの粗調整が完了したとする場合でも、連動するビーコン光のフォーカスは適切でない可能性がある。この場合には、ビーコン光のフォーカスに限って更なる微調整を行うこととする。
【0135】
ステップS907でフォーカスレンズの微調整をおこなう。例えば自動で調整する場合、フォーカスレンズの合焦位置の探索幅を微調整に先立つ粗調整の探索幅よりも小さくすることで、より適切な合焦位置を得ることができる。
【0136】
図10に基づいてその他の実施形態に係るAOSLOによる撮影制御の流れを説明する。係る撮影制御の制御主体は
図4に示す制御PC106であるとして説明する。本実施形態ではフォーカス調整等の各種調整が自動で行われる。
【0137】
ステップS1001で光源201−4が点灯するとともにディテクタ260が撮影駆動を開始し、得られる動画像が前眼部モニタ512に表示される。撮影開始のトリガは、例えば顎受け部104やヘッド部102が略位置合わせされたことに応じて開始されてもよいし、開始ボタン501が押下されたことを示す操作入力に応じて開始することとしても良い。
【0138】
ステップS1002でアラインメントを開始する。アラインメントは、電動ステージボタン503の押下により手動での調整も可能であるが、制御PC106により前眼部の画像を解析し、瞳の大きさと位置が適切になるようにヘッド部102を制御することで自動的に行われる。オートアラインメントの開始タイミングは、手動で指示してもよいが、例えば前眼部画像における瞳が検出されたことに応じて開始することとすれば、調整の手間が削減できる。
【0139】
ステップS1003で制御PC106はアラインメントが完了したかを判定する。例えば、瞳の位置が基準位置からずれているか、大きさが基準から離れているかなどを画像解析により判定する。判定の結果未完了とされた場合にはステップS1002に進み再度調整が行われる。完了したと判定された場合にはステップS1004に進む。
【0140】
なお、これ以降、前眼部の画像を継続的にモニタリングし、前眼部の移動に追従してヘッド部102の位置を変更する前眼部トラッキング処理を行うこととすれば、アラインメント後の眼部とヘッド部102との位置ずれに対応することができる。
【0141】
ステップS1004でアラインメントの完了に応じてWFSLOの撮影が開始される。撮影光206−2の光源201−2を遮蔽するシャッタを開くとともに、スキャナ219−2を駆動し、ディテクタ238−2に撮影駆動を開始させる。ディテクタ238−2により得られる画像は表示制御部408により液晶モニタ105のWFSLOモニタ515に表示される。
【0142】
ここで、WFSLOの撮影開始タイミングを、アラインメントの完了前とすることもできる。例えばアラインメントが粗調整と微調整の2段階で調整される場合に、粗調整が完了したタイミングでWFSLOを撮影開始することとしてもよい。WFSLOの撮影開始タイミングが早まれば、例えば後段のフォーカス調整を早期に開始することができるため、全体としての調整時間を短縮することにつながる。
【0143】
ステップS1005でWFSLOのフォーカスレンズ235−14を被検眼の眼底に合焦させるためのフォーカス調整を開始する。フォーカス調整の開始は、S1004のWFSLOの撮影開始と略同時に開始する。WFSLOのフォーカスレンズの合焦位置を特定する処理は、画像情報や専用のフォーカスセンサからの出力に基づいて制御PC106のフォーカス位置特定部404が行う。調整は粗調整と微調整の2段階の調整を行うことができる。
【0144】
ステップS1006でWFSLOのフォーカスレンズ235−14の粗調整が完了し、微調整を開始する。
【0145】
なお、ステップS1005で開始されるフォーカス調整について、粗調整と微調整という二段階の調整を行わない場合には、当該S1006は省略されうる。
【0146】
ステップS1007で、微調整の開始に応じてAOSLO、ビーコン光(測定光)のフォーカスをWFSLOの粗調整位置に対応する位置へと移動させる制御を開始する。本ステップにおいて、収差を測定するための測定光をフォーカスレンズ235−16の状態を制御することにより被検物に合焦させる処理が行われる。また、フォーカスレンズ235−16の状態の制御に連動させてAOSLOのフォーカスレンズ235−10の状態を制御することにより被検物の画像を撮影するためのAOSLOの撮影光を被検物に合焦させる処理が行われる。
【0147】
もちろん固視灯のフォーカスも合わせて制御することとしても良い。このように、複数のフォーカスレンズを常に同時に連動させる必要はなく、一のフォーカスレンズの粗調整の完了後に時間差で他のフォーカスレンズを連動させることができる。この制御は、例えば合焦位置の探索のためにフォーカスレンズを移動させる場合には、かかる探索のための移動について連動させるのは無駄であるため、粗調整が完了したタイミングで遅延連動させることとしている。なお、微調整まで完了し合焦位置が最終的に決定したタイミングで連動させることとしてもよい。
【0148】
ステップS1008でフォーカス位置制御部406はWFSLOのフォーカス調整を完了させるとともに、これに連動させてAOSLO、ビーコン光(測定光)、固視灯のフォーカス調整を完了させる。
【0149】
ステップS1009で波面センサ255にハルトマン像の形成を開始させる。また、得られたハルトマン像を制御PC106で取得する。表示制御部407は液晶モニタ105の波面センサモニタ514にハルトマン像を表示させる。更に、波面センサ255は得られたハルトマン像について逐次、収差を計算する。制御PC106は計算された収差を取得する。表示制御部407は液晶モニタ105の収差補正モニタ511に計算された収差を表示させる。収差の計算値が出力されることに応じて、制御PC106はドライバ部281の空間光変調器ドライバ288を介して空間光変調器259の状態を変更する。制御PC106は、計算された収差を低減するように空間光変調器259により生ずる位相差を制御する。
【0150】
ここで、空間光変調器の制御は、計算により得られる収差のうちデフォーカスの項以外の項に対応して行われる。デフォーカスの項については、フォーカスレンズの位置を変更することで補償する。デフォーカスの値に応じてフォーカス位置制御部406はAOSLOのフォーカスレンズ235−10の位置を変更する。また、ビーコン光(測定光)のフォーカスレンズ235−16についてもAOSLOのフォーカスレンズ235−10の位置と連動させる。
【0151】
ステップS1010でAOSLOの撮影を開始するために、撮影光206−1の光源201−1の光を遮蔽するシャッタを開き、スキャナ219−1を駆動させ、ディテクタ238−1に撮影駆動を開始させる。これにより、空間光変調器259及びフォーカスレンズ235−10を経由した撮影光206−1の戻り光により被検物の画像を撮影する。AOSLOの撮影開始タイミングは、収差の測定及び補正の開始と前後してもよい。
【0152】
ステップS1011乃至5は、上述のオートフォーカス制御に加えて、検査者の希望にあわせた手動での調整をするための処理である。フォーカス制御指示取得部402がフォーカス制御の指示を取得したか否かを判定する。指示がない場合にはステップS1016に進み、指示があった場合にはステップS1012に進む。
【0153】
ステップS1012で連動判定部405は、ステップS1011で受けた制御指示が、一のフォーカス位置のみを他のフォーカスレンズとは独立に個別に移動させる指示であるか否かを判定する。例えばフォーカス調整ボタン504が押下されたことによる制御指示なのか、深さ調整ボタン524が押下されたことによる制御指示なのかに基づき判定する。連動させると判定された場合には、ステップS1013で複数のフォーカスレンズを連動させて調整する。連動させると判定されなかった場合には、ステップS1014で個別に調整する。
【0154】
ここで、特にAOSLOのフォーカス位置を個別に制御し目的とする(深さ方向における)撮影位置へと移動させる処理については、自動で行うこともできる。例えば、視細胞の観察を目的として撮影位置を決める場合には、AOSLO画像の周波数画像について、視細胞の繰り返しパターンに対応する特定の周波数成分にピークが現れるか否かを判定する。AOSLOのフォーカス位置を動かしながらかかる判定を行うことにより、視細胞画像が得られる位置に自動的にフォーカスを合わせることができる。その他、目的とする撮影位置について特徴的なパターンの出現を判別することにより、フォーカスを自動調整することができる。その他、ビーコン光(測定光)やWFSLOのフォーカス位置により、ワーキングディスタンスや眼軸長を考慮した眼底の概略位置を把握することができるため、より脈絡膜側を撮影したい場合には実験的にもとまる特定の値(第一の)だけ深い位置にフォーカスさせる。また硝子体側を撮影したい場合には特定の値(第二の値)だけ浅い位置にフォーカスさせる制御を行う。このように、被検物の深さ方向における撮影位置に応じてフォーカスレンズ235−10の状態を制御することにより、目的とする撮影位置またはそれに近い位置にAOSLOのフォーカスを自動的に調整することができる。
【0155】
ステップS1016で操作取得部401はAOSLO記録ボタン520が押下された旨の入力を待機する。押下されない場合にはステップS1011の手動による調整指示の待機と、記録指示の待機とを繰り返す。なお、収差が基準値以下に低減されたAOSLO画像が得られたことに応じて、制御PC106の制御により自動的に記録開始することで、高精細な眼底画像を容易に得ることができる。また別の例として、常にAOSLO画像を記録しておき、特に指示があった期間以外の期間については記録したAOSLO画像を削除するという処理を適用しても良い。このようにすることで、十分に収差が低減されたAOSLO画像が撮影されているにも関わらず記録指示をせずに記録ができない、といった可能性を減らすことができる。
【0156】
ステップS1017で制御PC106は、記録開始の指示に応じて記録を開始させる。
【0157】
ステップS1018で制御PC106は、記録終了の指示待ちを行う。記録終了の指示は、AOSLO記録ボタン520が押下され記録状態となっている場合において、再度AOSLO記録ボタン520が押下されることに応じて行われる。ステップS1019で制御PC106は記録終了の指示に応じて、記録を終了する。
【0158】
図11に基づいてビーコン光(測定光)の瞳孔に対する入射位置を説明する。
図11には、視軸(z軸)方向から被検眼の前眼部を見たとき(前眼部のxy断面)の測定光206−3の入射位置を示す。瞳孔1101は、個人差はあるが、通常の明るさの下では約φ4mm程度の円形であることが多い。入射位置1103は瞳孔に入射された各照明光の入射位置であり、瞳孔近傍で測定光が集光されていることを示している。また、破線で示された円で囲まれた領域は、撮像光学系の有効瞳1102であり、ここでは瞳孔上でφ2mmとなっている。
【0159】
一方、照明光の入射位置1103は、瞳孔1101内における撮像光学系の瞳1102の範囲外に照明光が入射されるように配置される。ここでは、それぞれ視軸から1.5mmずつ離れている。このように測定光学系と撮像光学系の瞳を分割することで、角膜表面からの反射光も除去できる。
【0160】
本実施形態では、撮影光が照明する網膜上の領域は約φ9mmとしたが、ビーム強度がガウス分布を持つ場合、撮影領域の明るさの均一度を確保しようとすると、瞳孔上では数μmにまでビームを集光しなければならない。例えばφ9mmの照射領域の、中心に対する周辺部の相対強度を60%まで確保しようとすると、瞳孔上のスポット径は約3.5μmが必要になる。
【0161】
撮像した画像の明るさを1本の照明光だけで十分に確保しようとすると、この瞳孔上での面積辺りのエネルギーが大きくなってしまう。近赤外の波長の光を用いる場合は、このエネルギーが熱となって角膜や水晶体などの組織に負担を与える可能性がある。このような負担を与えないために、本実施形態のように撮影光と測定光を瞳孔上で分離した位置に入射させれば、被検眼への負担を増すことなく網膜への照明光の光量は倍確保することができる。
【0162】
尚、本実施形態では測定光は1つとしているが、更に測定光源数を増やしてもよい。測定光をさらに入射させれば、各測定光の光量としては前眼部への負担を増加させることなく、画像の明るさを4倍にすることができ、更に画質の向上が期待できる。
【0163】
また、各測定光の光量を個別に設定可能にする機構を設け、被検眼の前眼部に疾患に
よる白濁が部分的に発生している場合に、各測定光の光量を調整することで、網膜への照明光の光量の損失を防ぐことも可能になる。例えば、通常は各測定光の光量を少し低めに設定しておき、測定光の入射位置1103近傍に白濁が存在し、そのビームが網膜に到達する効率が下がる場合には、入射位置1103でのビームを消灯する。そして、他の入射位置のそれぞれにおけるビームの光量を上げれば、網膜を照明する光量を下げずに、明るい画像を確保することが可能となる。
【0164】
また、測定光源として半導体レーザのような自然放出光に比べ可干渉性の高い光源を用いると、網膜面の粗さによって、スペックルノイズが発生することになる。これに対し、本実施形態のように複数の光源からの照明光を網膜上で重ね合わせることにより、このスペックルノイズを低減することも併せて可能となる。もし各々の照明光による撮像画像のスペックルパターンが、互いに相関を持たない場合には、スペックルのコントラストは1/√4倍に低減できる。完全に相関をなくすことは困難であるが、本実施形態によれば、照明光の網膜への入射角は互いに異なるので、これに加え各照明光の偏光を異なるものにすれば、相関は低減することができ、従ってスペックルのコントラストも低減できる。
【0165】
図12に基づいてビーコン光(測定光)を瞳孔中心に対してシフト偏心させて入射させるための光学系を説明する。
【0166】
ビーコン光の戻り光と撮影光が経由する光学系の一部分が、
図12のように構成されている。測定用光源からの測定光(ビーコン)206−3の光束(の主光線)1210は、網膜からの戻り光を制限する機能を有する穴開きミラーの、ミラー部に入射されて反射される。ここで、穴開きミラーの孔部は、第1、第2の光学系の共通部分の光軸に合わせて、角度をつけて設置されているが、
図12では見易さのため傾けずに描画されている。反射されたビーム1210は、レンズ表面S1〜SNで構成される接眼光学系1242を介して、眼球1200の瞳孔部1201に入射され、網膜1222をライン状に照明する。網膜12からの反射・後方散乱光1212は、逆に瞳孔1201から射出されて接眼光学系1242を介し、穴開きミラーの孔部を通って、結像光学系1242によって、波面センサ255に結像される。
【0167】
その他、上述の実施形態を適宜組み合わせたものについても、本発明の実施形態に含まれる。
【0168】
あるいは、本発明の一部をプログラムとハードウェアとの協働により実現する場合も本発明の実施形態に含まれる。プログラムによる実施形態では、
図8乃至10に示す処理に対応するプログラム、ならびに
図5及び6に示す表示画面に対応するプログラムを記憶部407に格納しておき、制御PC106のCPUがRAMに展開し、CPUでプログラムに含まれる指令を実行していくことにより達成される。
【0169】
上述の実施形態は例示であり、発明の範囲は上述の実施形態に限定されない。